説明

タイヤのパンク修理キット

【課題】シール剤の注入量を低減することが可能なタイヤのパンク修理キットを提供すること。
【解決手段】磁化した磁性体を混合した液状のシール剤と、該シール剤が貯えられた容器と、前記シール剤をタイヤ内部に注入する注入手段と、を備えるタイヤのパンク修理キット。注入手段は、例えばコンプレッサによってシール剤をタイヤ内部に注入する手段であり、この場合、シール剤における磁性体の混合量は、コンプレッサの性能及び目標とする注入時間によって決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクした自動車等のタイヤを修理するための、タイヤのパンク修理キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのトレッド面における釘穴等の応急的な修理を行なうと共にパンクしたタイヤの内圧を基準値まで上昇させるためのタイヤのパンク修理キットが知られている。このタイヤのパンク修理キットは、シール剤と称される液体をコンプレッサ等でタイヤ内部に注入することにより、タイヤの内側からパンクした箇所を閉塞させるものである。また、コンプレッサを用いず、ボンベ状の容器に圧縮気体とシール剤を貯えておき、ノズルからタイヤ内部にシール剤等を注入する態様のものも知られている。
【0003】
これに関連したタイヤのシーリング・ポンプアップ装置についての発明が開示されておいる(例えば、特許文献1参照)。この装置では、シーリング剤を収容する液剤容器と、液剤容器のシーリング剤をパンクタイヤへ注入するための注入ユニットと、空気を供給してパンクタイヤの内圧を昇圧する空気供給装置と、を収容する筐体と、筐体に設けられ、前記筐体を前記車両に固定するための磁石と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−173918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シール剤の注入は4輪のホイールバランスを変更してしまうため、車両挙動安定化のためになるべく注入量を少量にすることが望ましいのである。また、注入時間を長いと作業効率が低下し、コストや消費エネルギーが増大してしまう。
【0006】
しかしながら、上記従来の装置においては、こうした点についての考慮がなされていないため、シール剤の注入量を低減することができない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、シール剤の注入量を低減することが可能なタイヤのパンク修理キットを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
磁化した磁性体を混合した液状のシール剤が貯えられた貯液手段と、
前記液状のシール剤をタイヤ内部に注入する注入手段と、
を備えるタイヤのパンク修理キットである。
【0009】
この本発明の第1の態様によれば、磁化した磁性体を混合した液状のシール剤をタイヤ内部に注入するため、シール剤をパンク箇所に凝集させることが可能となり、シール剤の注入量を低減することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、
磁化していない磁性体を混合した液状のシール剤と、
該シール剤が貯えられた容器と、
前記シール剤をタイヤ内部に注入する注入手段と、
を備えるタイヤのパンク修理キットである。
【0011】
本発明の第3の態様は、
本発明の第2の態様を用いたタイヤのパンク修理方法であって、
磁石によってパンク箇所に磁場を発生させる工程と、
前記シール剤タイヤ内部に注入する工程と、
を有するタイヤのパンク修理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シール剤の注入量を低減することが可能なタイヤのパンク修理キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例に係るタイヤのパンク修理キット1の構成を簡略に示す図である。
【図2】本発明の第1実施例に係るタイヤのパンク修理キット1を用いて、パンクしたタイヤの修理が行なわれる様子を示す図である。
【図3】シール剤30の粘度と注入時間の関係を示すグラフである。
【図4】シール剤30における磁性体の混合割合とシール剤30の粘度の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施例に係るタイヤのパンク修理キット2を用いて、パンクしたタイヤの修理が行なわれる様子を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例に係るタイヤのパンク修理キット2を用いたタイヤのパンク修理方法の流れを示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0015】
<第1実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施例に係るタイヤのパンク修理キット1、及びこれを用いたタイヤのパンク修理方法について説明する。タイヤのパンク修理キット1は、トレッド面における釘穴等の応急的な修理を行なうと共にパンクしたタイヤの内圧を基準値まで上昇させるためのものであり、スペアタイヤに代替(又は補助)可能なものとして車両に搭載され又は修理店等に設置される。
【0016】
図1は、本発明の第1実施例に係るタイヤのパンク修理キット1の構成を簡略に示す図である。タイヤのパンク修理キット1は、主要な構成として、各パーツを収容する筐体10と、コンプレッサ20と、シール剤30が貯えられた容器40と、を備える。また、タイヤの内圧を測定するための圧力ゲージ50が取り付けられている。
【0017】
コンプレッサ20は、駆動モータ等を内蔵し、電源ケーブル22や作動スイッチ等が取り付けられている。電源ケーブル22が車両のシガレットライター等の電力供給部に接続されると、駆動モータが作動可能となる。
【0018】
コンプレッサ20は、エア流路24によって容器40の内部と連通している。容器40からは、パンクしたタイヤのバルブに取り付けられるアダプタ44を有する注入ホース42が外部に延出している。
【0019】
係る構成により、パンクしたタイヤのバルブにアダプタ44が取り付けられた状態でコンプレッサ20を作動させると、シール剤30や空気がパンクしたタイヤの内部に注入される。これにより、シール剤30がパンクした箇所を閉塞させると共に、シール剤30や空気がタイヤの内圧を基準値まで上昇させる。
【0020】
シール剤30は、磁化した磁性体を混合した液状のシール剤である。磁性体は、例えばフェライト系磁石の粉体を用いる。これを界面活性剤と水で液体化し、シール剤に混合している。
【0021】
図2は、本発明の第1実施例に係るタイヤのパンク修理キット1を用いて、パンクしたタイヤの修理が行なわれる様子を示す図である。ここでは、タイヤに釘が刺さったことによるパンクを想定している。本実施例では磁化させた磁性体を混合したシール剤30を用いているため、図示するように、釘の周辺にシール剤30が凝集することになる。これによって、シール剤30が効率良くパンクした箇所を閉塞させることになり、シール剤30の注入量を低減することができる。シール剤30の注入は4輪のホイールバランスを変更してしまうため、車両挙動安定化のためになるべく注入量を少量にすることが望ましいのである。また、注入時間を短縮して作業効率を向上させることや、シール剤30の節約により省コスト、省エネルギーを実現することもできる。
【0022】
また、係る効果は、金属以外の異物が刺さったことによるパンクに対しても有効である。一般的なタイヤは、スチールベルトと称される金属の補強剤を有しており、トレッド面からタイヤ内部まで異物が貫通した場合、タイヤの内面にスチールベルトが露出することになるからである。
【0023】
ここで、磁性体の混合量について説明する。シール剤30における磁性体の混合量は、コンプレッサ20の性能及び目標とする注入時間によって決定するのが望ましい。
【0024】
図3は、シール剤30の粘度と注入時間の関係を示すグラフである。図示するように、シール剤30の粘度が高くなるほど注入に時間を要する。また、図4は、シール剤30における磁性体の混合割合とシール剤30の粘度の関係を示すグラフである。図示するように、磁性体の混合割合が高くなるほどシール剤30の粘度が高くなる。従って、磁性体の混合割合が高くなるほど注入に時間を要することになる。
【0025】
例えば目標注入時間を9[分]以下にしたい場合、シール剤30の粘度は900[mPa・s]以下とする。そして、シール剤30の粘度は900[mPa・s]となるような磁性体の混合割合とする。
【0026】
なお、シール剤30の凝集程度は、磁性体の混合割合に比例するため、磁性体の混合割合に比例してシール剤30の注入量を低減することができる。
【0027】
以上説明した本実施例のタイヤのパンク修理キット1によれば、磁化した磁性体を混合した液状のシール剤30を用いているため、シール剤30をパンク箇所に凝集させることが可能となり、シール剤30の注入量を低減することができる。
【0028】
<第2実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第2実施例に係るタイヤのパンク修理キット2、及びこれを用いたタイヤのパンク修理方法について説明する。タイヤのパンク修理キット2は、トレッド面における釘穴等の応急的な修理を行なうと共にパンクしたタイヤの内圧を基準値まで上昇させるためのものであり、スペアタイヤに代替(又は補助)可能なものとして車両に搭載される。
【0029】
本実施例に係るタイヤのパンク修理キット2は、主要な構成において第1実施例と共通するため、図1を参照することとして、共通する構成要素についての説明は省略する。
【0030】
本実施例に係るシール剤30は、磁化していない磁性体を混合した液状のシール剤である。磁性体は、例えば強磁性体微粒子(マグネタイト、マンガン亜鉛フェライト等、直径10[nm]程度のもの)を用いる。これを界面活性剤と水で液体化し、シール剤に混合している。
【0031】
図5は、本発明の第2実施例に係るタイヤのパンク修理キット2を用いて、パンクしたタイヤの修理が行なわれる様子を示す図である。第1実施例と同様、タイヤに釘が刺さったことによるパンクを想定している。本実施例では磁化していない磁性体を混合したシール剤30を用いているため、図示するように、トレッド面における釘が刺さった箇所に、まず磁石60を取り付けてから(磁力によって固定されてもよいし、両面テープ等によって貼り付けてもよい)シール剤30等の注入を開始する。磁石60は、永久磁石を用いてもよいし、電磁石を用いてもよい。
【0032】
これによって、釘の周辺に磁場が生じてシール剤30が凝集することになり、シール剤30が効率良くパンクした箇所を閉塞させる。従って、シール剤30の注入量を低減することができる。シール剤30の注入は4輪のホイールバランスを変更してしまうため、車両挙動安定化のためになるべく注入量を少量にすることが望ましいのである。また、注入時間を短縮して作業効率を向上させることや、シール剤30の節約により省コスト、省エネルギーを実現することもできる。
【0033】
また、係る効果は、金属以外の異物が刺さったことによるパンクに対しても有効である。一般的なタイヤは、スチールベルトと称される金属の補強剤を有しており、トレッド面からタイヤ内部まで異物が貫通した場合、タイヤの内面にスチールベルトが露出することになるからである。本実施例の場合、磁石を取り付けた箇所の周辺のスチールベルトが磁化し、これによってシール剤30を凝集させる。
【0034】
図6は、本発明の第2実施例に係るタイヤのパンク修理キット2を用いたタイヤのパンク修理方法の流れを示す工程図である。
【0035】
まず、修理者(運転者等)が、磁石60をタイヤのパンクした箇所に取り付け、パンクした箇所に磁場を発生させる(S100)。
【0036】
次に、アダプタ44をパンクしたタイヤのバルブに取り付ける(S102)。
【0037】
そして、コンプレッサ20の作動スイッチをオン状態とし、コンプレッサ20を作動させる(S104)。
【0038】
コンプレッサ20の作動によりシール剤30や空気がパンクしたタイヤの内部に注入される。すると、タイヤの内圧が上昇して圧力ゲージ50の示す値が上昇する。修理者は、圧力ゲージ50の示す値が基準値まで上昇したタイミングでコンプレッサ20を停止させる(S106)。なお、係る工程は、圧力ゲージ50の示す値が基準値まで上昇すると自動的にコンプレッサ20が停止するものであってもよい。
【0039】
シール剤30の粘度と注入時間の関係、及びシール剤30における磁性体の混合割合とシール剤30の粘度の関係は、第1実施例と同様であり、図3及び図4に示した通りである。図示するように、シール剤30の粘度が高くなるほど注入に時間を要し、磁性体の混合割合が高くなるほどシール剤30の粘度が高くなる。従って、磁性体の混合割合が高くなるほど注入に時間を要することになる。
【0040】
例えば目標注入時間を9[分]以下にしたい場合、シール剤30の粘度は900[mPa・s]以下とする。そして、シール剤30の粘度は900[mPa・s]となるような磁性体の混合割合とする。
【0041】
なお、シール剤30の凝集程度は、磁性体の混合割合に比例するため、磁性体の混合割合に比例してシール剤30の注入量を低減することができる。
【0042】
以上説明した本実施例のタイヤのパンク修理キット2及びこれを用いたタイヤのパンク修理方法によれば、タイヤのパンク箇所に磁石を取り付けて磁場を発生させた上で磁性体を混合した液状のシール剤30を注入するため、シール剤30をパンク箇所に凝集させることが可能となり、シール剤30の注入量を低減することができる。
【0043】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0044】
例えば、実施例の如くコンプレッサ20を用いてシール剤30をタイヤ内部に注入する態様に限らず、例えば、ボンベ状の容器に圧縮気体とシール剤を貯えておき、ノズルでタイヤ内部に注入する態様であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1、2 タイヤのパンク修理キット
10 筐体
20 コンプレッサ
22 電源ケーブル
30 シール剤
40 容器
42 注入ホース
44 アダプタ
50 圧力ゲージ
60 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化した磁性体を混合した液状のシール剤と、
該シール剤が貯えられた容器と、
前記シール剤をタイヤ内部に注入する注入手段と、
を備えるタイヤのパンク修理キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194957(P2010−194957A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44336(P2009−44336)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】