説明

タイヤの処理方法、及びタイヤ処理装置

【課題】熱可塑性材料と熱可塑性材料とは異なる材料とを含んで構成されたタイヤの、熱可塑性材料と熱可塑性材料とは異なる材料とを簡単かつ効率的に分別する。
【解決手段】熱可塑性材料からなるタイヤ10を回転させながら加熱装置44のノズル46から熱風を噴出させ、クラウン部16の表面を溶融させて、溶融した部分から螺旋状に埋設されていた熱可塑性材料とは異なる材質からなるコード26の端部を取り出し、リール58に順次巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの処理方法、及びタイヤ処理装置に関し、特には、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤからを熱可塑性材料を効率的に分別可能とするタイヤの処理方法、及びタイヤ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に用いられる空気入りタイヤとして、タイヤの骨格部分をゴムに代えて熱可塑性材料で形成した空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。タイヤの骨格部分を熱可塑性材料で形成することで、加硫ゴム製の従来タイヤ対比で製造が容易になる可能性がある。
【0003】
従来のゴム製の空気入りタイヤを廃棄処分する場合、廃タイヤをゴムと補強材(ベルト、ビード、プライ等)に分別することは困難で、手間とコストがかかり、リサイクル上で問題となる場合があった。従来のゴムタイヤの処理としては、例えば特許文献2に開示の技術がある。
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【特許文献2】特開平11−114876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑性材料は加硫ゴムとは違ってリサイクルし易く、用途も多い。そこで、熱可塑性材料を含んで形成された空気入りタイヤに関しても、材料別、例えば、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料等に分別する方法が望まれるが、熱可塑性材料を含んで構成された空気入りタイヤに関しては、熱可塑性材料を効率的に分別する処理方法、及び装置が従来無かった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤから熱可塑性材料を効率的に分別可能とするタイヤの処理方法、及びタイヤ処理装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のタイヤの処理方法は、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤの、前記熱可塑性材料の一部を加熱して溶融または軟化させる第1の工程と、前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分にて、溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記熱可塑性材料以外の材料とを分別する第2の工程と、を有する。
【0007】
次に、請求項1に記載のタイヤの処理方法を説明する。
先ず、第1の工程では、タイヤを構成している熱可塑性材料の一部を加熱して、加熱した部分を軟化または溶融させる。
【0008】
第2の工程では、熱可塑性材料の軟化または溶融した部分にて熱可塑性材料以外の材料を分別する。熱可塑性材料の一部を軟化または溶融させるので、熱可塑性材料の軟化または溶融した部分から熱可塑性材料以外の材料を簡単に分離することができ、熱可塑性材料を効率的に分別することができる。
【0009】
なお、第1の工程では、熱可塑性材料で形成されている部分の内の熱可塑性材料以外の材料が配置されている部分、即ち、タイヤ全体の一部の熱可塑性材料を加熱すれば良く、タイヤ全体を加熱して熱可塑性材料全体を軟化または溶融する必要がないので、タイヤ全体を入れて加熱するような加熱炉等の大掛かりな設備を必要とせず、また、加熱に必要とするエネルギーも最小限で済む。
なお、熱可塑性材料とは異なる材料とは、例えば、熱硬化性材料、加硫ゴム、金属、無機材料等を上げることができ、これら以外の材料であっても良い。
【0010】
請求項2に記載のタイヤの処理方法は、融点の異なる複数の熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤの前記熱可塑性材料の一部を加熱する第1の工程と、前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分と溶融または軟化していない前記熱可塑性材料とを分別する第2の工程と、を有する。
【0011】
次に、請求項2に記載のタイヤの処理方法を説明する。
先ず、第1の工程では、タイヤを構成している熱可塑性材料の一部を加熱して、加熱した部分を軟化または溶融させる。第1の工程では、融点の異なる熱可塑性材料同士の境界付近を、融点の高い方の熱可塑性材料を軟化または溶融させない様に、融点の低い方の熱可塑性材料を溶融または軟化するまで加熱すれば良い。
【0012】
第2の工程では、前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分にて、溶融または軟化した前記熱可塑性材料と溶融または軟化していない前記熱可塑性材料とを分別する。融点の低い方の熱可塑性材料の一部を軟化または溶融させるので、熱可塑性材料の軟化または溶融した部分にて、軟化または溶融した熱可塑性材料と、融点の高い方の軟化または溶融していない熱可塑性材料とを簡単に分別することができる。即ち、請求項2に記載のタイヤの処理方法では、熱可塑性材料の融点の違いを利用して、融点の違う熱可塑性材料を簡単に分別することができる。
【0013】
請求項2に記載のタイヤの処理方法では、熱可塑性材料の一部を加熱すれば良く、タイヤ全体を加熱する必要がないので、タイヤ全体を入れて加熱するような加熱炉等の大掛かりな設備を必要とせず、また、加熱に必要とするエネルギーも最小限で済む。
なお、熱可塑性材料と、熱可塑性材料とは異なる材料とを分別する場合には、例えば、融点の異なる熱可塑性材料を分別した後、熱可塑性材料とは異なる材料の含まれている前記熱可塑性材料の一部を溶融または軟化させることで、熱可塑性材料の軟化または溶融した部分にて、軟化または溶融した熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを簡単に分別することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記56載のタイヤの処理方法において、前記タイヤは、一方のビード部から他方のビード部に跨るタイヤ骨格部分が前記熱可塑性材料で形成されると共に、前記タイヤ骨格部分の外周部分には前記熱可塑性材料以外の材料からなるコードを含む補強層が設けられており、前記第1の工程では、前記タイヤ骨格部分の外周部分を加熱して溶融または軟化させ、前記第2の工程では、前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分から前記コードを引き出す。
【0015】
次に、請求項3に記載のタイヤの処理方法を説明する。
第1の工程ではタイヤ骨格部分の外周部分が加熱されて軟化または溶融され、第2の工程では、熱可塑性材料の軟化または溶融した部分からコードが引き出される。これにより、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部分と熱可塑性材料以外の材料からなるコードとを簡単に分別することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のタイヤの処理方法において、前記コードは、前記タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に設けられ、前記第1の工程では、前記タイヤを回転させながら前記タイヤ骨格部材の外周部分を順次溶融させ、前記第2の工程では、前記タイヤを回転させながら前記熱可塑性材料の溶融した部分から前記コードを引き出しながら巻き取る。
【0017】
次に、請求項4に記載のタイヤの処理方法を説明する。
第1の工程では、タイヤを回転させながらタイヤ骨格部材の外周部分が順次軟化または溶融される。第2の工程では、タイヤを回転させながら熱可塑性材料の軟化または溶融した部分からコードが引き出されながら巻き取られる。コードは、タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に設けられているので、本第1の工程、及び第2の工程によって、効率的にコードを取り出すことが出来る。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のタイヤの処理方法において、前記第1の工程では、熱風を当てて前記熱可塑性材料を軟化または溶融させる。
【0019】
次に、請求項5に記載のタイヤの処理方法を説明する。
第1の工程では、熱可塑性材料に熱風が当てられて熱可塑性材料が軟化または溶融される。熱可塑性材料の軟化または溶融させたい必要箇所にのみ熱風を局所的に当てて軟化または溶融させることで、加熱に必要とするエネルギーが最小限で済む。
【0020】
請求項6に記載のタイヤ処理装置は、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤを回転可能に支持するタイヤ支持手段と、前記タイヤを構成している熱可塑性材料の少なくとも一部を加熱して溶融または軟化させる加熱手段と、前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分にて前記熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを分別する分別手段と、を有する。
【0021】
次に、請求項6に記載のタイヤ処理装置の作用を説明する。
先ず最初に、処理するタイヤをタイヤ支持手段に回転可能に支持する。
そして、例えば、熱可塑性材料以外の材料が接着乃至埋設されている部分の熱可塑性材料を加熱手段で加熱し軟化または溶融させる。
熱可塑性材料以外の材料の周囲の熱可塑性材料を軟化または溶融させた後、熱可塑性材料の軟化または溶融した部分にて熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを分別手段を用いて分別する。
【0022】
なお、熱可塑性材料以外の材料が、例えば、タイヤ外周部分に螺旋状に設けられたコードである場合、タイヤを回転させながらタイヤ外周部分を加熱手段で軟化または溶融し、タイヤを回転させながら熱可塑性材料の軟化または溶融した部分からコードを引き出しながら巻き取ることができ、効率的に熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料からなるコードとを容易に分別することができる。
【0023】
請求項7に記載のタイヤ処理装置は、融点の異なる複数の熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤを回転可能に支持するタイヤ支持手段と、前記タイヤを構成している熱可塑性材料の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分と溶融または軟化していない前記熱可塑性材料とを分別する分別手段と、を有する。
【0024】
次に、請求項7に記載のタイヤ処理装置の作用を説明する。
先ず最初に、処理するタイヤをタイヤ支持手段に回転可能に支持する。
そして、例えば、融点の異なる熱可塑性材料同士が接合されている部分の熱可塑性材料を加熱手段で加熱し軟化または溶融させる。
熱可塑性材料を軟化または溶融させた後、熱可塑性材料の軟化または溶融した部分にて、軟化または溶融した熱可塑性材料と、軟化または溶融していない熱可塑性材料とを分別手段を用いて容易に分別することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように請求項1のタイヤの処理方法によれば、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤを、効率的かつ簡単に熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とに分別することができる。
【0026】
請求項2のタイヤの処理方法によれば、融点の異なる熱可塑性材料を含んで構成される他を、効率的かつ簡単に融点の異なる熱可塑性材料別に分別することができる。
【0027】
請求項3に記載のタイヤの処理方法によれば、タイヤ骨格部分とコードとを効率的に分別することができる。
【0028】
請求項4に記載のタイヤの処理方法によれば、効率的にコードを取り出すことが出来る。
【0029】
請求項5に記載のタイヤの処理方法によれば、熱可塑性材料の軟化または溶融させたい必要箇所にのみ熱風を当てて軟化または溶融させることで、加熱に必要とするエネルギーが最小限で済む。
【0030】
請求項6に記載のタイヤ処理装置によれば、効率的かつ簡単にタイヤを熱可塑性材料と熱可塑性材料とは異なる材料とに分別することができる。
【0031】
請求項7に記載のタイヤ処理装置によれば、効率的かつ簡単にタイヤを融点の異なる熱可塑性材料別に分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】タイヤ処理装置の斜視図である。
【図2】タイヤの一部を断面とした斜視図である。
【図3】(A)は最小径としたタイヤ支持部の斜視図であり、(B)は最大径としたタイヤ支持部の斜視図である。
【図4】加熱装置付近の拡大斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、図面にしたがって本発明のタイヤの処理方法、及びタイヤ処理装置を説明する。
図2には、タイヤ骨格部分を熱可塑性材料で構成したタイヤ10が示されている。本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
【0034】
タイヤ10は、図示しないリムのビードシート部、及びリムフランジに接触する1対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16からなるタイヤケース17を備えている。なお、このタイヤケース17が、本発明のタイヤ骨格部分に相当する。
【0035】
本実施形態のタイヤケース17は、熱可塑性材料で形成されている。
本実施形態のタイヤケース17は、一つのビード部12、一つのサイド部14、及び半幅のクラウン部16が一体としてモールド等で成形された同一形状とされた円環状のタイヤ半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で溶着等によって接合することで形成されている。なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成しても良く、1対のビード部12、1対のサイド部14、及びクラウン部16を一体で成形したものであっても良い。
【0036】
熱可塑性材料としては、ゴム様の弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0037】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が上げられる。
【0038】
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が上げられる。
なお、熱可塑性材料は、上述した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー以外のものであっても良い。
【0039】
熱可塑性材料からなるタイヤ半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができ、ゴムで成形(加硫)する場合に比較して、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間も短くて済む。
【0040】
また、本実施形態では、タイヤ半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤ半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットがある。
【0041】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されているが、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければビードコア18は省略しても良い。なお、ビードコア18は、有機繊維コード等、スチール以外のコードで形成されていても良い。本実施形態のビードコア18は、本発明の熱可塑性材料とは異なる材料に相当するものである。
【0042】
タイヤケース17のクラウン部16には、螺旋状に巻回されたスチールのコード26からなるクラウン部補強層28が埋設されている。なお、コード26は、全体がクラウン部16に埋設されていても良く、一部分がクラウン部16に埋設されていても良い。このクラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。本実施形態のコード26は、本発明の熱可塑性材料とは異なる材料に相当するものである。
【0043】
クラウン部補強層28の外周側には、熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層30が配置されている。トレッドゴム層30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、サイド部14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料からなるトレッド層をクラウン部補強層28の外周部に設けても良い。なお、本実施形態のトレッドゴム層30は、本発明の熱可塑性材料とは異なる材料に相当するものである。
【0044】
(タイヤ処理装置)
次に、本実施形態のタイヤ10の処理を行うタイヤ処理装置32を説明する。
図1には、タイヤ10を形成する際に用いるタイヤ処理装置32の要部が斜視図にて示されている。タイヤ処理装置32は、タイヤ支持装置33を備えている。タイヤ支持装置33は、床面に接地された台座34の上部に、水平に配置された軸36が回転可能に支持されている。なお、この軸36は、図示しないモータにより回転される。
【0045】
図1及び図3に示すように、軸36の端部側には、タイヤ支持部40が設けられている。タイヤ支持部40は、軸36に固定されたシリンダブロック38を備え、シリンダブロック38には径方向外側に延びる複数のシリンダロッド41が周方向に等間隔に設けられている。
【0046】
シリンダロッド41の先端には、外面がタイヤ内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面42Aを有するタイヤ支持片42が設けられている。
図3(A)は、シリンダロッド41の突出量が最も小さい状態(タイヤ支持部40が最小径の状態)を示しており、図3(B)はシリンダロッド41の突出量が最も大きい状態(タイヤ支持部40が最大径の状態)を示している。各シリンダロッド41は連動して同一方向に同一量移動可能となっている。
【0047】
図1に示すように、タイヤ支持装置33の近傍には、熱風を噴出す加熱装置44が配置されている。図4に示すように、加熱装置44は、内部にファン44A、ファン44Aを回転させるモータ44B、電熱ヒーター44C等が内蔵されており、下端には熱風をタイヤ10に向けて噴出するノズル46を備えている。
【0048】
図1に示すように、台座34の上部には、支柱48が取り付けられており、この支柱48の側面に、上下の位置を変更可能に、図示しないボルト等でシリンダ50が取り付けられている。シリンダ50は、軸36と平行に配置されており、シリンダロッド50Aの先端に加熱装置44が取り付けられている。
【0049】
また、タイヤ処理装置32は、コード巻取装置56を備えている。コード巻取装置56は、コード26を巻き付けるリール58、リール58を回転させるモータ60を備えている。
【0050】
(タイヤの処理工程)
(1) 先ず、径を縮小したタイヤ支持部40の外周側に、タイヤ10を配置し、その後、タイヤ支持部40の径を拡大して、タイヤ10の内周面に複数のタイヤ支持片42を接触させて、複数のタイヤ支持片42によってタイヤ10を内側から保持する。
(2) 次に、一般の更生タイヤと同様にして、カッタ、バフ等を用いてトレッドゴム層30を除去する。
【0051】
(3) 次に、加熱装置44をタイヤ10のクラウン部16の幅方向の何れか一方の端部側に移動し、タイヤ10を矢印A方向に回転させながら、ノズル46から熱風を噴出させ、クラウン部16の一方の幅方向端部表面を溶融させる(本発明の第1の工程)。そして、溶融した部分から螺旋状に埋設されていたコード26の端部を取り出し、該端部をリール58に係止する。なお、熱可塑性樹脂を溶融させるためには、当然ながら、溶融させる部分の温度を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する必要がある。
【0052】
(4) そして、図1に示すように、タイヤ10を矢印A方向に回転させながら、ノズル46から熱風を噴出させてクラウン部16の表面を順次溶融させ(本発明の第1の工程)、これと同時にリール58を回転させることで、溶融した部分からコード26が順次引き出されてリール58に順次巻き取られる(本発明の第2の工程)。
【0053】
本実施形態のタイヤ処理装置32では、コード26が螺旋状に埋設されているので、タイヤ10の回転に同期して加熱装置44を軸方向へ移動させる。
このようにして、本実施形態では、タイヤケース17のクラウン部16の必要箇所のみを溶融させ、タイヤケース17からコード26を簡単に取り出すことができる。
【0054】
なお、環状のビードコア18を取り出す場合は、加熱装置44の熱風で、例えばビード部12の外面を溶融し(1周分)、溶融した部分からビードコア18を取り出せば良い。
このようにして、熱可塑性材料以外の材料を全て取り除いたタイヤケース17は、再び溶融してリサイクルすることが可能となる。
【0055】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、熱風でタイヤケース17を溶融させたが、本発明はこれに限らず、熱可塑性材料を溶融できれば、加熱の方法は熱風に限らない。例えば、ヒーター等からの赤外線を照射して溶融しても良く、レーザー光源から(赤外線)レーザービームを照射させて溶融させても良い。
【0056】
また、ヒーター等で加熱した熱鏝を熱可塑性材料であるタイヤケース17に接触させて表面を溶融させても良い。さらに、本実施形態の様にコード26がスチール等の金属であれば、電磁誘導加熱(IH)等でコード自体を発熱させ、コード周辺の熱可塑性材料を溶融させることもできる。
トレッドゴム層30を備えたタイヤ10をコイルの中に配置し、電磁誘導加熱でコード26を発熱させてトレッドゴム層30内側部分(タイヤケース17のクラウン部16)の熱可塑性樹脂を溶融させれば、タイヤケース17からトレッドゴム層30を軸方向外側へ分離することも可能である。なお、タイヤケース17のクラウン部16の外周面全体が溶融していれば、螺旋状とされたコード26全体を軸方向外側へ取り出すことも可能である。
【0057】
上記実施形態では、単一の熱可塑性材料からなるタイヤケース17と、ゴムからなるトレッドゴム層30と、スチールからなるコード26と、スチールからなるビードコア18を含んで構成されていたが、例えば、トレッドゴム層30を、タイヤケース17とは融点の異なる熱可塑性材料で形成したトレッド層に代えることもできる。これにより、トレッド部分を加熱し、融点の低い方の熱可塑性材料を溶融または軟化させ、融点の低い方の熱可塑性材料と融点の高い方の熱可塑性材料とに分別する、即ち、タイヤケース17とトレッド層とを容易に分別することも可能である。なお、トレッド層を構成する熱可塑性材料の融点は、タイヤケース17を構成する熱可塑性材料の融点よりも高くても良く、低くても良い。即ち、各々の熱可塑性材料の融点が異なっていれば良い。
【0058】
また、上記実施形態では、タイヤケース17が単一の熱可塑性材料で形成されていたが、融点の異なる熱可塑性材料からなる複数の部材を溶着してタイヤケース17を構成しても良い。この場合、融点の異なる熱可塑性材料の境界(接合部)付近を加熱し、融点の低い方の熱可塑性材料を溶融または軟化させ、融点の高い方の熱可塑性材料を溶融または軟化させなければ、融点の低い方の熱可塑性材料と融点の高い方の熱可塑性材料とに容易に分別することが可能である。
【0059】
上記実施形態では、コード26、ビードコア18を取り出す例を説明したが、熱可塑性材料とは異なる材料は、コード26及びビードコア18に限らず、タイヤ構成部材であれば何でも良く、熱硬化性樹脂、有機繊維、加硫ゴム、無機材料等であっても良く、その材質は問わない。
上記実施形態では、コード26を取り出す際に熱可塑性材料を溶融させたが、コード26を取り出す際に大きな力を必要としなければ、場合によってはコード26を取り出す部分の熱可塑性材料は軟化した状態であっても良い。同様に、他の部分にて材料を分別する際にも、熱可塑性材料は必ずしも溶融させる必要は無く、場合によっては軟化させた状態であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
10 タイヤ
12 ビード部(タイヤ骨格部分、熱可塑性材料)
14 サイド部(タイヤ骨格部分、熱可塑性材料)
16 クラウン部(タイヤ骨格部分、熱可塑性材料)
17 タイヤケース(タイヤ骨格部分、熱可塑性材料)
18 ビードコア(熱可塑性材料とは異なる材料)
26 コード(熱可塑性材料とは異なる材料)
28 クラウン部補強層(補強層)
30 トレッドゴム層(熱可塑性材料とは異なる材料)
32 タイヤ処理装置
33 タイヤ支持装置(タイヤ支持手段)
44 加熱装置(加熱手段)
56 コード巻取装置(分別手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤの、前記熱可塑性材料の一部を加熱して溶融または軟化させる第1の工程と、
前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分にて、溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記熱可塑性材料以外の材料とを分別する第2の工程と、
を有するタイヤの処理方法。
【請求項2】
融点の異なる複数の熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤの前記熱可塑性材料の一部を加熱する第1の工程と、
前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分と溶融または軟化していない前記熱可塑性材料とを分別する第2の工程と、
を有するタイヤの処理方法。
【請求項3】
前記タイヤは、一方のビード部から他方のビード部に跨るタイヤ骨格部分が前記熱可塑性材料で形成されると共に、前記タイヤ骨格部分の外周部分には前記熱可塑性材料以外の材料からなるコードを含む補強層が設けられており、
前記第1の工程では、前記タイヤ骨格部分の外周部分を加熱して溶融または軟化させ、
前記第2の工程では、前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分から前記コードを引き出す、
請求項1または請求項2に記載のタイヤの処理方法。
【請求項4】
前記コードは、前記タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に設けられ、
前記第1の工程では、前記タイヤを回転させながら前記タイヤ骨格部材の外周部分を順次溶融させ、
前記第2の工程では、前記タイヤを回転させながら前記熱可塑性材料の溶融した部分から前記コードを引き出しながら巻き取る、請求項3に記載のタイヤの処理方法。
【請求項5】
前記第1の工程では、熱風を当てて前記熱可塑性材料を溶融または軟化させる、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のタイヤの処理方法。
【請求項6】
熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤを回転可能に支持するタイヤ支持手段と、
前記タイヤを構成している熱可塑性材料の少なくとも一部を加熱して溶融または軟化させる加熱手段と、
前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分にて前記熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを分別する分別手段と、
を有するタイヤ処理装置。
【請求項7】
融点の異なる複数の熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されるタイヤを回転可能に支持するタイヤ支持手段と、
前記タイヤを構成している熱可塑性材料の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、
前記熱可塑性材料の溶融または軟化した部分と溶融または軟化していない前記熱可塑性材料とを分別する分別手段と、
を有するタイヤ処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−40821(P2012−40821A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185649(P2010−185649)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】