説明

タイヤの接地部寸法測定装置

【課題】 タイヤの接地部の寸法を簡単かつ高精度で測定する。
【解決手段】 タイヤTの接地部18を囲むように第1部材11〜第4部材14を組み立てた後に、第1、第2部材11,12の二つの第1辺11a,12aと第3、第4部材13,14とで構成される4節平行リンクを変形させ、第1、第2部材11,12の二つの第1辺11a,12aでタイヤTの接地部18の左右側辺あるいは前後辺を挟んだ状態で、第1辺11a,12aと交差する第2辺11b,12bの目盛りaを読むことで、タイヤTの接地部18の左右幅あるいは前後長を簡単かつ高精度に測定することができる。しかも第1、第2部材11,12を分解することができるので、車両を移動させることなくタイヤTの接地部18を接地部寸法測定装置の内部に位置させることができ、作業性が大幅に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの接地部の左右幅あるいは前後長を簡単に測定することができるタイヤの接地部寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの接地部は車体重量の路面反力により変形する。タイヤの接地部の形状を検出するために、接地部の周囲を囲むように設けた枠の内部にエポキシ樹脂やウレタン樹脂等の造形材を流し込んで硬化させ、硬化した造形材からタイヤを分離した後に、造形材の形状を3次元デジタイザで計測することでタイヤの接地部の形状を詳細を得るものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開2007−278818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、タイヤの接地部の面積は車両のオーバーステア特性、アンダーステア特性、操縦性、安定性等に影響を及ぼすことが知られている。そのため、接地部の左右幅および前後長を測定し、その値からタイヤの接地面積を算出する必要がある。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法でタイヤの接地部の面積を算出しようとすると、多くの時間および手間を必要とする問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、タイヤの接地部の寸法を簡単かつ高精度で測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、第1辺および第2辺よりなるL字状の第1部材と、第1辺および第2辺よりなるL字状の第2部材と、I字状の第3部材と、I字状の第4部材とを備え、前記第1部材および前記第2部材を、それらの屈曲部が対角位置となるように四角枠状に重ね合わせた状態で、前記第1部材の第1辺の先端と前記第2部材の屈曲部とを前記第3部材の両端に枢支するとともに、前記第2部材の第1辺の先端と前記第1部材の屈曲部とを前記第4部材の両端に枢支することで、前記第1、第2部材の二つの第1辺と前記第3、第4部材とで4節平行リンクを構成し、前記第3部材の少なくとも一端は相手部材に着脱自在に枢支され、前記第4部材の少なくとも一端は相手部材に着脱自在に枢支され、前記第1、第2部材の二つの第2辺の少なくとも一方に寸法を示す目盛りが設けられることを特徴とするタイヤの接地部寸法測定装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第3部材の他端は相手部材に分離不能に枢支され、前記第4部材の他端は相手部材に分離不能に枢支されることを特徴とするタイヤの接地部寸法測定装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記着脱自在な枢支部は、前記第1、第2部材のピン孔と、前記第3、第4部材のピン孔とにフランジを有するピンを貫通させ、貫通した前記ピンの先端に環状の永久磁石を装着して構成されることを特徴とするタイヤの接地部寸法測定装置が提案される。
【0009】
尚、実施の形態の第1、第2ピン孔11d,11e;12d,12eは本発明のピン孔に対応し、実施の形態の第1、第2ピン16,17は本発明のピンに対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、タイヤの接地部を囲むように第1部材〜第4部材を組み立てた後に、第1、第2部材の二つの第1辺と第3、第4部材とで構成される4節平行リンクを変形させ、第1、第2部材の二つの第1辺でタイヤの接地部の左右側辺あるいは前後辺を挟んだ状態で、第1辺と交差する第2辺の目盛りを読むことで、タイヤの接地部の左右幅あるいは前後長を簡単かつ高精度に測定することができる。しかも第1、第2部材を分解することができるので、車両を移動させることなくタイヤの接地部を接地部寸法測定装置の内部に位置させることができ、作業性が大幅に向上する。
【0011】
また請求項2の構成によれば、第3部材の他端を相手部材に分離不能に枢支し、第4部材の他端を相手部材に分離不能に枢支したので、四つの部材よりなる接地部寸法測定装置が二つの部分にしか分解できなくなり、部材の紛失が防止されるとともに保管が容易になる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、着脱自在な枢支部を、第1、第2部材のピン孔と、第3、第4部材のピン孔とにフランジを有するピンを貫通させ、貫通したピンの先端に環状の永久磁石を装着して構成したので、ピンの部分で第1、第2部材と第3、第4部材とが外れ難くすることで作業性を高めることができる。しかも第1、第2部材と第3、第4部材とは永久磁石の磁着力よりも大きい力で引っ張れば分離するので、接地部寸法測定装置を簡単に分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図5は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1は接地部寸法測定装置の組立状態での平面図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は接地部寸法測定装置の組立過程の説明図、図4は接地部の左右幅の測定時の作用説明図、図5は接地部の前後長の測定時の作用説明図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、タイヤの接地部寸法測定装置は、アルミニウム等の非磁性体で構成された第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14の4個の部材で構成されており、第1、第2部材11,12は互換可能な同一部材であり、第3、第4部材13,14は互換可能な同一部材である。
【0016】
第1、第2部材11,12は、第1辺11a,12aおよび第2辺11b,12bを直角な屈曲部11c,12cで接続したL字状の部材であり、長い側の第1辺11a,12aの先端に第1ピン孔11d,12dが形成され、屈曲部11c,12cに第2ピン孔11e,12eが形成され、かつ短い側の第2辺11b,12bに物差し状の目盛りが形成される。
【0017】
第3、第4部材13,14はI字状の部材であって、その両端にそれぞれピン孔13a,13a;14a,14aが形成される。
【0018】
前記第1、第2部材11,12と、前記第3、第4部材13,14とは、4個の環状の永久磁石15…と、フランジ16a,16aを有する2本の第1ピン16,16と、フランジ17a,17aを有する2本の第2ピン17,17とを用いて組み立てられる。尚、第1ピン16,16および第2ピン17,17は互換可能な同一部材であり、永久磁石15…が吸着可能な鉄等の磁性体で構成される。
【0019】
次に、上記構成を備えた第1の実施の形態の作用を説明する。
【0020】
図3(A)に示すように、先ずタイヤTの接地部18(図4および図5参照)を囲むように、第1ピン16,16および第2ピン17,17を、それらのフランジ16a,16a;17a,17aを下にして地面あるいは床面に置く。次に、図3(B)に示すように、第1部材11を、その第1、第2ピン孔11d,11eに前記第1ピン16および第2ピン17がそれぞれ嵌合するように地面あるいは床面に置き、更に第2部材12を、その第1、第2ピン孔12d,12eに前記第1ピン16および第2ピン17がそれぞれ嵌合するように地面あるいは床面に置く。このとき、第1、第2部材11,12の二つの第1辺11a,12aが平行になり、二つの第2辺11b,12bが平行になり、二つの屈曲部11c,12cが対角位置になるようにする。
【0021】
続いて、図3(C)に示すように、第1部材11の第1辺11aの先端の第1ピン孔11dと第2部材12の屈曲部12cの第2ピン孔12eとに、第3部材13の両端のピン孔13a,13aを上から下に嵌合させ、かつ第2部材12の第1辺12aの先端の第1ピン孔12dと第1部材11の屈曲部11cの第2ピン孔11eとに、第4部材14の両端のピン孔14a,14aを上から下に嵌合させることで、第1、第2部材11,12の第1辺11a,12aと第2、第3部材13,14で4節平行リンクを構成する。
【0022】
この状態で、上向きに突出する2本の第1ピン16,16および2本の第2ピン17,17の先端に、それぞれ永久磁石15を磁着することで、第1、第2ピン16,16;17,17のフランジ16a,16a;17a,17aおよび永久磁石15…間に第1、第2部材11,12および第2、第3部材13,14を挟んで接地部寸法測定装置の組立を完了する。
【0023】
続いて、図4に示すように、第1、第2部材11,12の二つの第1辺11a,12aが接近するように4節平行リンクを変形させ、前記二つの第1辺11a,12aをタイヤTの接地部18の左右の側辺に当接させる。この状態で、第1部材11の第2辺11bに第2部材12の第1辺12aが交差する部分の目盛りa、あるいは第2部材12の第2辺12bに第1部材11の第1辺11aが交差する部分の目盛りaを読むことにより、タイヤTの接地部18の左右幅W1を簡単かつ高精度に測定することができる。
【0024】
また図5に示すように、タイヤTに対する接地部寸法測定装置の角度を90°回転させた状態で、上述したのと同様して目盛りbを読むことで、タイヤTの接地部18の前後長W2を測定することができる。
【0025】
そして測定の終了後に、永久磁石15…をその磁着力を超える力で第1、第2ピン16,16;17,17から引き抜くことで、接地部寸法測定装置を分解することができる。このように、第1、第2部材11,12を分離して接地部寸法測定装置を分解することができるので、車両を移動させることなく接地部寸法測定装置をタイヤTの下にセットすることが可能になって作業性が向上する。
【0026】
次に、図6に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0027】
第1の実施の形態の接地部寸法測定装置は、第1部材11〜第4部材14をばらばらに分解可能であるが、第2の実施の形態では一体化された第1部材11および第4部材14と、一体化された第2部材12および第3部材13とが分離可能になっている。そのために、第1部材11および第4部材14の枢支部と、第2部材12および第3部材13の枢支部とに設けられた第2ピン17,17の先端がカシメにより抜け止めされている。
【0028】
この第2の実施の形態によれば、不使用時に接地部寸法測定装置が二つに分解されるので、四つに分解される第1の実施の形態に比べて、接地部寸法測定装置の保管が容易になるだけでなく、部材の紛失の可能性を減少させることができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0030】
例えば、実施の形態では第1、第2部材11,12の第2辺11b,12bに共に目盛りを設けているが、その一方だけに目盛りを設けても良い。
【0031】
また第2の実施の形態では一体化された第1部材11および第4部材14と、一体化された第2部材12および第3部材13とを分離可能にしているが、一体化された第1部材11および第3部材13と、一体化された第2部材12および第4部材14とを分離可能にしても良い。
【0032】
また第1、第2ピン16,16;17,17を第1、第2部材11,12の第1、第2ピン孔11d,11e;12d,12eに圧入等で固定しても良く、このようにすれば第1、第2ピン16,16;17,17の紛失を防止することができる。
【0033】
また永久磁石15…を第3、第4部材13,14のピン孔13a,13a;14a,14aの外周を囲むように固定しても良く、このようにすれば永久磁石15…の紛失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施の形態の接地部寸法測定装置の組立状態での平面図
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】接地部寸法測定装置の組立過程の説明図
【図4】接地部の左右幅の測定時の作用説明図
【図5】接地部の前後長の測定時の作用説明図
【図6】第2の実施の形態に係る、前記図2に対応する図
【符号の説明】
【0035】
11 第1部材
11a 第1辺
11b 第2辺
11c 屈曲部
11d 第1ピン孔(ピン孔)
11e 第2ピン孔(ピン孔)
12 第2部材
12a 第1辺
12b 第2辺
12c 屈曲部
12d 第1ピン孔(ピン孔)
12e 第2ピン孔(ピン孔)
13 第3部材
13a ピン孔
14 第4部材
14a ピン孔
15 永久磁石
16 第1ピン(ピン)
17 第2ピン(ピン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1辺(11a)および第2辺(11b)よりなるL字状の第1部材(11)と、第1辺(12a)および第2辺(12b)よりなるL字状の第2部材(12)と、I字状の第3部材(13)と、I字状の第4部材(14)とを備え、
前記第1部材(11)および前記第2部材(12)を、それらの屈曲部(11c,12c)が対角位置となるように四角枠状に重ね合わせた状態で、前記第1部材(11)の第1辺(11a)の先端と前記第2部材(12)の屈曲部(12c)とを前記第3部材(13)の両端に枢支するとともに、前記第2部材(12)の第1辺(12a)の先端と前記第1部材(11)の屈曲部(11c)とを前記第4部材(14)の両端に枢支することで、前記第1、第2部材(11,12)の二つの第1辺(11a,12a)と前記第3、第4部材(13,14)とで4節平行リンクを構成し、
前記第3部材(13)の少なくとも一端は相手部材に着脱自在に枢支され、前記第4部材(14)の少なくとも一端は相手部材に着脱自在に枢支され、
前記第1、第2部材(11,12)の二つの第2辺(11b,12b)の少なくとも一方に寸法を示す目盛りが設けられることを特徴とするタイヤの接地部寸法測定装置。
【請求項2】
前記第3部材(13)の他端は相手部材に分離不能に枢支され、前記第4部材(14)の他端は相手部材に分離不能に枢支されることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤの接地部寸法測定装置。
【請求項3】
前記着脱自在な枢支部は、前記第1、第2部材(11,12)のピン孔(11d,11e;12d,12e)と、前記第3、第4部材(13,14)のピン孔(13a,14a)とにフランジ(16a,17a)を有するピン(16,17)を貫通させ、貫通した前記ピン(16,17)の先端に環状の永久磁石(15)を装着して構成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のタイヤの接地部寸法測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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