説明

タイヤの製造方法、トレッド部材及びタイヤ

【課題】樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材を有するタイヤにおいて、転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材とタイヤ骨格部材との間の接着性を高めるタイヤ製造方法及び、タイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部材10の横主溝16(溝)の底部16Aに、接地面12と反対側に貫通した通気孔18を形成しておくことで、トレッド部材10をタイヤ骨格部材24に接着する際に、該トレッド部材10と該タイヤ骨格部材24との間の空気を、該通気孔18を通じて該横主溝16(溝)内へ円滑に排出されるようにする。特に、トレッド部材10の体積を少なくするために横主溝16(溝)の底部16AのゲージGが薄くなっている場合に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法、トレッド部材及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
リムに装着されるタイヤにおいて、ビードコアが埋着される1つのビードと該ビードに連なるサイドウォールと該サイドウォールに連なる張出し片とを備えかつ高分子材料により一体成形されると共に張出し片を互いに接合させることによりトレッド底部を形成しうる一対の半環状のタイヤ片からなるタイヤ本体に、該タイヤ本体のトレッド底部のタイヤ半径方向外面に補強コードをタイヤ円周方向に連続して螺旋状に巻回した少なくとも1層の補強層と、該補強層の外側に添着されるトレッドゴムとを、加硫金型内の加硫により一体化する構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−143701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来例のように、トレッド部材における溝の底部のゲージが比較的厚い場合には、該溝の底部が高剛性であるため、トレッド部材をタイヤ本体に一体化する際に、トレッド部材とタイヤ本体との間の空気を、外部へ押し出すことができた。
【0005】
しかしながら、トレッド部材における溝の底部のゲージを厚くすると、該トレッド部材の体積が大きくなり、転がり抵抗の面で不利となる。またトレッド部材の溝の底部のゲージが薄い場合には、該溝の底部の剛性が低く変形し易いことから、トレッド部材をタイヤ骨格部材に接着する際に、トレッド部材とタイヤ骨格部材との間の空気の一部が、該溝の底部の位置に集中して残留し易くなると考えられる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、トレッド部材の体積を少なくして転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材とタイヤ骨格部材との間の接着性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明(タイヤの製造方法)は、樹脂材料を用いてタイヤ骨格部材を形成し、接地面側に溝が形成され、該溝の底部に前記接地面と反対側に貫通した通気孔が形成されたトレッド部材を、前記タイヤ骨格部材のタイヤ直径方向外側に配置し、前記タイヤ骨格部材の外周面と前記トレッド部材との間に接着部材を配置し、該トレッド部材を前記タイヤ骨格部材に接着する。
【0008】
請求項1に記載のタイヤの製造方法では、トレッド部材の溝の底部に、接地面と反対側に貫通した通気孔を形成しておくので、トレッド部材をタイヤ骨格部材に接着する際に、該トレッド部材と該タイヤ骨格部材との間の空気を、該通気孔を通じて該溝内へ円滑に排出することができる。特に、トレッド部材の体積を少なくするために溝の底部のゲージが薄くなっている場合に有効である。このため、トレッド部材の体積を少なくして転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材とタイヤ骨格部材との間の接着性を高めることができる。
【0009】
請求項2の発明(タイヤの製造方法)は、請求項1に記載のタイヤの製造方法において、前記通気孔は、前記トレッド部材の成形時に形成される。
【0010】
請求項2に記載のタイヤの製造方法では、溝の底部の通気孔がトレッド部材の成形時に形成されるので、工数の増加を抑制することができる。
【0011】
請求項3の発明(タイヤの製造方法)は、請求項1又は請求項2に記載のタイヤの製造方法において、前記通気孔は、前記トレッド部材の成形後、前記タイヤ骨格部材への接着の前に穿孔される。
【0012】
請求項3に記載のタイヤの製造方法では、溝壁の通気孔が、トレッド部材の成形後、タイヤ骨格部材への接着の前に穿孔されるので、通気孔の位置や数、大きさ等を任意に設定することができる。このため、低コストで多様な通気孔を有するトレッド部材を製造することができる。
【0013】
請求項4の発明(トレッド部材)は、接地面側に溝が形成され、該溝の底部に該接地面と反対側に貫通した通気孔が形成されている。
【0014】
請求項4に記載のトレッド部材では、このような構成によって、タイヤ骨格部材の外周面に接着される際に、トレッド部材と該タイヤ骨格部材との間の空気を、溝の底部の通気孔を通じて該溝内へ円滑に排出することができる。
【0015】
請求項5の発明(タイヤ)は、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材と、接地面側に溝が形成され、該溝の底部に通気孔が形成され、前記タイヤ骨格部材のタイヤ直径方向外側に配置されたトレッド部材と、前記タイヤ骨格部材の外周面と前記トレッド部材との間に配置されて前記トレッド部材と前記タイヤ骨格部材とを接着すると共に、前記トレッドの前記通気孔を塞ぐ接着部材と、を有している。
【0016】
請求項5に記載のタイヤでは、溝の底部に通気孔が形成されたトレッド部材が、タイヤ骨格部材の外周面に接着部材によって接着されており、通気孔は該接着部材により塞がれているので、溝の底部の位置におけるトレッド部材とタイヤ骨格部材との間に空気が残留しない。トレッド部材の体積が少なく、溝の底部のゲージが薄い場合でも同様である。このため、トレッド部材の体積を小さくしてタイヤの転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材とタイヤ骨格部材との間の接着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のタイヤの製造方法によれば、トレッド部材の体積を少なくして転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材とタイヤ骨格部材との接着性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0018】
請求項2に記載のタイヤの製造方法によれば、工数の増加を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0019】
請求項3に記載のタイヤの製造方法によれば、低コストで多様な通気孔を有するトレッド部材を製造することができる、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項4に記載のトレッド部材によれば、タイヤ骨格部材の外周面に接着される際に、トレッド部材と該タイヤ骨格部材との間の空気を、溝の底部の通気孔を通じて該溝内へ円滑に排出することができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項5に記載のタイヤによれば、トレッド部材の体積を小さくしてタイヤの転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材とタイヤ骨格部材との接着性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トレッド部材を示す平面図である。
【図2】タイヤ製造時の仮組品を示す断面図である。
【図3】トレッド部材をタイヤ骨格部材に加硫接着している状態を示す、図1における3−3矢視に相当する拡大断面図である。
【図4】通気孔が接着部材により塞がれた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0024】
(トレッド部材)
図1において、本実施の形態に係るトレッド部材10は、例えばゴムを用いて構成されたPCT(Pre-Cured Tread)である。ゴムとして、例えばSBR(スチレン−ブタジエンゴム)が用いられる。
【0025】
このトレッド部材10の接地面12側には、溝の一例たる周方向主溝14及び横主溝16を有するトレッドパターンが形成されている。このトレッドパターンを形成するため、未加硫ゴムをPCT用金型内で加硫して、トレッド部材10を成型してもよい。
【0026】
トレッド部材10をタイヤ骨格部材24の外周に配置するに際しては、帯状の該トレッド部材10を円環状に巻き付けるようにしてもよいし、また予め円環状に形成されたトレッド部材10を一時的に拡径して、タイヤ骨格部材24の外周面24Aに嵌合させるようにしてもよい。
【0027】
横主溝16の底部16Aには、接地面12と反対側(図3の内周面13)に貫通した通気孔18が形成されている。周方向主溝14は、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側に、例えば1本ずつ計2本形成されている。この2本の周方向主溝14の間には、センター陸部列20が形成されている。また各周方向主溝14のタイヤ幅方向外側には、ショルダー陸部列22が夫々形成されている。横主溝16は、例えば該ショルダー陸部列22に形成されている。
【0028】
通気孔18は、該通気孔18が亀裂の発生起点となることを抑制する観点から、例えば円形とされている。通気孔18の直径は、横主溝16の底部16AのゲージG(図3)の20〜300%である。ここで、数値範囲の下限を20%としたのはこれを下回ると、トレッド部材10をタイヤ骨格部材24(図3)の外周面24Aに接着する際に、該タイヤ骨格部材24とトレッド部材10との間の空気が通気孔18を通じて排出され難くなるからである。また数値範囲の上限を300%としたのは、これを上回ると、通気孔18が起点とした亀裂が生ずるおそれがあるからである。一例として、横主溝16の底部16AのゲージGが1mmである場合、通気孔18の直径を1mm程度とすることが望ましい。
【0029】
通気孔18は、トレッド部材10の成形時に形成されるか、又はトレッド部材10の成形後、タイヤ骨格部材24(図2,図3)への接着の前に穿孔される。通気孔18をトレッド部材10の成形時に形成する場合、工数の増加を抑制することができる。また通気孔18を、トレッド部材10の成形後、タイヤ骨格部材24への接着の前に穿孔する場合、該通気孔18の位置や数、大きさ等を任意に設定することができ、低コストで多様な通気孔18を有するトレッド部材10を製造することができる。
【0030】
通気孔18の形状は、亀裂の発生起点となり難い形状であればよく、円形以外であってもよい。通気孔18の数や位置は任意であり、周方向主溝14に通気孔18が形成されていてもよい。
【0031】
(タイヤの製造方法)
図2,図3において、本実施の形態に係るタイヤの製造方法は、樹脂材料を用いてタイヤ骨格部材24を形成し、接地面12側に溝の一例たる周方向主溝14及び横主溝16が形成され、該横主溝16の底部16Aに接地面12と反対側に貫通した通気孔18が形成されたトレッド部材10を、タイヤ骨格部材24のタイヤ直径方向外側に配置し、タイヤ骨格部材24の外周面24Aとトレッド部材10との間に接着部材26を配置し、該トレッド部材10をタイヤ骨格部材24に接着する方法である。
【0032】
通気孔18は、トレッド部材10の成形時に形成されるか、又はトレッド部材10の成形後、タイヤ骨格部材24(図2)への接着の前に穿孔される。なお、ある程度の通気孔18をトレッド部材10の成形時に形成した上で、タイヤ骨格部材24(図2)への接着の前に、追加の通気孔18を穿孔してもよい。
【0033】
図3において、タイヤ骨格部材24は、樹脂材料の一例たる熱可塑性材料を用いて、例えばタイヤ30のクラウン部32に対応した形状と、該クラウン部32のタイヤ軸方向両側から夫々タイヤ径方向内側に連なるサイド部34に対応した形状と、該サイド部34のタイヤ径方向内側に連なるビード部36に対応した形状とを有するように成型される。ビード部36には、ビードコア38が埋設される。このビードコア38の材料には、例えば金属、有機繊維、有機繊維を樹脂で被覆したもの、又は硬質樹脂が用いられる。なお、ビード部36の剛性が確保され、リム(図示せず)との嵌合に問題がなければ、ビードコア38を省略してもよい。
【0034】
なお、熱可塑性材料としては、ゴム様の弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時の弾性と製造時の成形性を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
【0035】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
【0036】
また熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0037】
更にこれらの熱可塑性材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78℃以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏点伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130℃以上であるものを用いることができる。
【0038】
このタイヤ骨格部材24は、まず、例えばタイヤ30のタイヤ幅方向の中心部、即ちタイヤ赤道面CL、又はその近傍面を中心とした半割り形状に成型され、クラウン部32の端部同士を接合することにより構成される。この接合には、例えば同種又は異種の熱可塑性材料や接着剤等の接合部材42が用いられる。
【0039】
クラウン部32には、補強用のコード44が例えば螺旋状に巻回されている。このコード44としては、例えばスチールコードや、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)を用いるとよい。コード44としてスチールコードを用いる場合、例えばクラウン部32のタイヤ直径方向外側に、熱可塑性材料からなるシート(図示せず)を貼り付けておき、コード44を加熱しながら、該シートに対してタイヤ周方向に螺旋巻きして埋設して行くことができる。このとき、コード44とシートの双方を加熱するようにしてもよい。
【0040】
このように、クラウン部32に対して、補強用のコード44を、タイヤ周方向に螺旋巻きすることで、該クラウン部32のタイヤ周方向の剛性を向上させると共に、該クラウン部32の耐破壊性を向上させることができる。またこれによって、タイヤ30のクラウン部32における耐パンク性を高めることができる。なお、クラウン部32を補強するに際し、コード44をタイヤ周方向に螺旋状に巻回することが、製造上容易であるため好ましいが、該コード44をタイヤ幅方向において不連続としてもよい。またタイヤ骨格部材24(例えば、ビード部36、サイド部34、クラウン部32等)に、更なる補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布)を埋設配置し、該補強材でタイヤ骨格部材24を補強してもよい。
【0041】
接着部材26は、例えば未加硫ゴムであり、加硫接着により、トレッド部材10をタイヤ骨格部材24の外周面24Aに接着することができる。このトレッド部材10の接着に先立って、接着部材26は、タイヤ骨格部材24の外周面24A及びトレッド部材10の内周面13(接地面12と反対側の面)の少なくとも一方に配置される。なお、タイヤ骨格部材24の外周面24Aには、予め凹凸部(図示せず)を設けておき、該外周面24Aとトレッド部材10の接着時に、接着部材26が該凹凸部と嵌まり合うようにすることが好ましい。
【0042】
タイヤ骨格部材24の外周面24Aに接着部材26を配置する際には、該外周面24Aに例えば1層又は2層の他の接着剤(図示せず)を塗布することが好ましい。同様に、トレッド部材10の内周面13に接着部材26を配置する際には、該内周面13に例えば1層又は2層の他の接着剤(図示せず)を塗布することが好ましい。この接着剤の塗布は、湿度70%以下の雰囲気で行うことが好ましい。この接着剤は、特定の種類に限定されるものではないが、例えばトリアジンチオール系のものを用いることができ、他には塩化ゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤等も用いることができる。
【0043】
また、接着剤を塗布する面(タイヤ骨格部材24の外周面24Aやトレッド部材10の内周面13)を、予めショットブラストで粗化処理しておくことが好ましい。接着剤がより付き易くなるからである。更に、バフ掛け後の面をアルコール等で洗浄して脱脂しておくことが好ましい。また粗化処理後の面に対し、コロナ処理や紫外線照射処理を行うことが好ましい。
【0044】
タイヤ骨格部材24の外周面24Aに接着部材26を配置した後に、トレッド部材10を該接着部材26のタイヤ直径方向外側に配置する場合には、該トレッド部材10の内周面13側や該接着部材26の外周面側に、粘着性を有する例えばゴムセメント組成物(図示せず)を塗布しておくことが好ましい。トレッド部材10が接着部材26に貼り付くことで仮止め状態となり、作業性が向上するからである。
【0045】
トレッド部材10の材質として、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)を用いる場合には、ゴムセメント組成物として、例えばSBR系のスプライスセメントを用いることが好ましい。また、トレッド部材10の材質として、NR(天然ゴム)の配合比の高いSBR系ゴムを用いる場合には、SBR系のスプライスセメントにBR(ブタジエンゴム)を配合したものを用いることが好ましい。この他、ゴムセメント組成物として、液状BR等の液状エラストマーを配合した無溶剤セメントや、IR(イソプレンゴム)−SBRのブレンドを主成分とするセメントを用いることが可能である。
【0046】
図2に示されるように、トレッド部材10をタイヤ骨格部材24の外周面24Aに接着する際には、タイヤ骨格部材24とトレッド部材10との間に接着部材26を配置した状態で、少なくとも該トレッド部材10の接地面12側をエンベロープ46で覆って仮組品48を構成する。エンベロープ46は、気密性及び伸縮性を有し、熱及び化学的に適度に安定で、適度な強度を有する例えばゴム製の被覆部材である。エンベロープ46には、該エンベロープ46で覆われた領域内を加圧した状態又は真空引きした状態に保持できるようにするための弁50が設けられている。
【0047】
図2に示される例では、タイヤ骨格部材24が、リムに近い構造を有する環状の支持部材40に組み付けられており、ビード部36が該支持部材40のフランジ部40Fに密着している。エンベロープ46は、タイヤ骨格部材24における両側のサイド部34の外面と、トレッド部材10とを覆い、タイヤ直径方向内側の端縁(図示せず)は、ビード部36とフランジ部40Fとの間に挟み込まれている。支持部材40の内周面には貫通孔52が設けられている。
【0048】
仮組品48において、エンベロープ46内は、弁50を通じて所定の圧力(例えば500kPa)に加圧される。この圧力は、後述する容器(図示せず)内での加硫時の圧力よりも低く、その圧力差によりトレッド部材10がタイヤ骨格部材24側に押し付けられるようになっている。
【0049】
一方、仮組品48の状態で、弁50から真空引きを行うことで、エンベロープ46をトレッド部材10及びタイヤ骨格部材24に密着させて、該トレッド部材10をタイヤ骨格部材24側に押し付けるようにしてもよい。
【0050】
タイヤ骨格部材24が、エンベロープ46内の真空引き時に変形しない程度の十分な剛性を有している場合には、上記支持部材40を用いずに、トレッド部材10、及びタイヤ骨格部材24の外面側だけでなく、内面側までエンベロープ46で覆うようにしてもよい。
【0051】
そして、仮組品48を所定の容器(図示せず)内に収容し、該容器内の加熱及び加圧を行って加硫を行う。この容器は、所謂加硫缶であるが、仮組品48を収容する容量を有し、加硫時の加熱及び加圧に耐えうる容器であればよく、形式は問わない。図3において、加硫条件は、例えば温度が120℃、圧力pが600kPa、時間が1時間である。この圧力pは、エンベロープ46側からトレッド部材10に作用すると共に、図2に示されるように、支持部材40の貫通孔52を通じてタイヤ骨格部材24の内面側にも作用する。仮組品48の内部は500kPaに加圧されているので、その差100kPaにより、トレッド部材10がタイヤ骨格部材24側に押し付けられる。
【0052】
ここで、加硫促進剤としては、硫黄若しくはパーオキサイドを用いることができる。また接着部材26の補強剤には、カーボンブラック又はシリカを用いることができ、シリカがより好ましい。更に、カップリング剤には、アミノシラン又はポリスルフィドを用いることができる。
【0053】
タイヤ骨格部材24に用いられる樹脂材料が熱可塑性材料である場合、加硫温度は100℃以上160℃未満であることが好ましい。160℃以上であると、熱可塑性材料の熱収縮により、コード44により補強されたクラウン部32が座屈してしまう可能性があるからである。また100℃未満であると、接着部材26の加硫度が不十分となる場合があるからである。
【0054】
このように容器内の温度を設定すると共に、容器内の圧力を加硫に適した圧力に設定し、所定時間加硫を行うことで、接着部材26が加硫され、トレッド部材10がタイヤ骨格部材24の外周面24Aに加硫接着されて、タイヤ30となる。半加硫状態のトレッド部材10を用いた場合には、該トレッド部材10も更に加硫されて最終製品の加硫度に至る。
【0055】
この際、本実施形態では、トレッド部材10における横主溝16の底部16Aに、接地面12と反対側(内周面13)に貫通した通気孔18を形成しているので、トレッド部材10とタイヤ骨格部材24との間の空気は、該通気孔18を通じて横主溝16へ、矢印A方向に円滑に排出される。具体的には、トレッド部材10とタイヤ骨格部材24との間の空気は、接着部材26が加硫されて硬化して行く過程で、通気孔18を通じて通気孔18内へ排出される。なお、この空気の排出経路は、通気孔18に限られず、タイヤ幅方法におけるトレッド部材10の端部とタイヤ骨格部材24との間からも排出される。
【0056】
また接着部材26は、加熱により流動するので、トレッド部材10とタイヤ骨格部材24との間の空気が通気孔18内に排出された後、該通気孔18内に入り込んで硬化する。これにより、図4に示されるように、通気孔18が接着部材26により塞がれた状態となる。
【0057】
本実施形態に係るタイヤの製造方法は、特に、トレッド部材10の体積を少なくするために横主溝16の底部16AのゲージGが薄くなっている場合に有効である。このため、トレッド部材10の体積を少なくして転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材10とタイヤ骨格部材24との間の接着性を高めることができる。
【0058】
(タイヤ)
図2において、本実施の形態に係るタイヤ30は、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材24と、接地面12側に溝の一例たる周方向主溝14及び横主溝16が形成され、該横主溝16の底部16Aに通気孔18が形成され、タイヤ骨格部材24のタイヤ直径方向外側に配置されたトレッド部材10と、タイヤ骨格部材24の外周面24Aとトレッド部材10との間に配置されてトレッド部材10とタイヤ骨格部材24とを接着すると共に、トレッドの通気孔18を塞ぐ接着部材26と、を有している。
【0059】
このタイヤ30では、横主溝16の底部16Aに通気孔18が形成されたトレッド部材10が、タイヤ骨格部材24の外周面24Aに接着部材26によって接着されており、通気孔18は該接着部材26により塞がれているので、横主溝16の底部16Aの位置におけるトレッド部材10とタイヤ骨格部材24との間に空気が残留しない。トレッド部材10の体積が少なく、横主溝16の底部16AのゲージG(図3)が薄い場合でも同様である。このため、トレッド部材10の体積を小さくしてタイヤの転がり抵抗を小さくしつつ、トレッド部材10とタイヤ骨格部材24との間の接着性を高めることができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、トレッド部材10が、ゴムを用いて構成されるものとしたが、トレッド部材10の材質はゴムに限られず、ゴムと同等の特性を有する他の材料を用いてもよい。
【0061】
またタイヤ骨格部材24に用いられる樹脂材料として、熱可塑性材料を挙げたが、これに限られず、例えば熱硬化性材料を用いてもよい。
【0062】
更に上記実施形態に係るタイヤ30は、ビードコア38付きのタイヤ骨格部材24を用いたチューブレスタイプのタイヤであったが、タイヤ30の構成はこれに限られるものではない。図示は省略するが、樹脂材料を用いたタイヤ骨格部材24として、タイヤ周方向に円環状に形成され、リムの外周部に配置される中空のチューブ体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 トレッド部材
12 接地面
14 周方向主溝(溝)
16 横主溝(溝)
16A 底部
18 通気孔
24 タイヤ骨格部材
24A 外周面
26 接着部材
30 タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を用いてタイヤ骨格部材を形成し、
接地面側に溝が形成され、該溝の底部に前記接地面と反対側に貫通した通気孔が形成されたトレッド部材を、前記タイヤ骨格部材のタイヤ直径方向外側に配置し、
前記タイヤ骨格部材の外周面と前記トレッド部材との間に接着部材を配置し、該トレッド部材を前記タイヤ骨格部材に接着するタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記通気孔は、前記トレッド部材の成形時に形成される請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記通気孔は、前記トレッド部材の成形後、前記タイヤ骨格部材への接着の前に穿孔される請求項1又は請求項2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
接地面側に溝が形成され、該溝の底部に該接地面と反対側に貫通した通気孔が形成されたトレッド部材。
【請求項5】
樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材と、
接地面側に溝が形成され、該溝の底部に通気孔が形成され、前記タイヤ骨格部材のタイヤ直径方向外側に配置されたトレッド部材と、
前記タイヤ骨格部材の外周面と前記トレッド部材との間に配置されて前記トレッド部材と前記タイヤ骨格部材とを接着すると共に、前記トレッドの前記通気孔を塞ぐ接着部材と、
を有するタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−35499(P2012−35499A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177640(P2010−177640)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】