説明

タイヤパンクシール剤

【課題】低温注入性、シール性能に優れるタイヤパンクシール剤の提供。
【解決手段】天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンとプロピレングリコールとを含むタイヤパンクシール剤において、前記プロピレングリコール/水の比が0.5〜1.1であり、かつBL型粘度計を使用したときの−20℃の粘度が回転数60rpmで100〜1200mPa・sであるタイヤパンクシール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤパンクシール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤパンクシール剤は、NRラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンにプロピレングリコールのような凍結防止剤をブレンドしたものである。従来タイヤパンクシール剤について、低温での粘度を低下させ注入性を改善するために、タイヤパンクシール剤に水を加えることによってNRラテックスや合成樹脂エマルジョンを薄める方法や、特許文献1に記載されている方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−12130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加水により液を薄める方法では、タイヤパンクシール剤の低温での粘度は低下するもののシール性能が低下してしまい、タイヤパンクシール剤の低温注入性とシール性能とを両立させることは困難であった。
また、特許文献1に記載されているような、多量のプロピレングリコールを含むタイヤパンクシール剤は低温環境での注入性について改善の余地があることを本願発明者は見出した。
そこで、本発明は低温注入性、シール性能に優れるタイヤパンクシール剤を提供することを目的とする。
【0005】
ここで、本願発明者はタイヤパンクシール剤に含まれる、プロピレングリコール(PG)と水との関係に注目した。以下添付の図面を用いてこれを説明する。図1はタイヤパンクシール剤の粘度とPG/水比率の関係を示すグラフである。図1では、天然ゴムラテックスにPGを加えて固形分25.99質量%、PG/水の比が0.3〜2.3であるタイヤパンクシール剤を製造し、これを常温(20℃)、−20℃、−40℃の条件下におき、BL型粘度計(回転数60rpm、ロータNo.3)を用いてタイヤパンクシール剤の粘度を測定して得られた結果をデータとした。図1において、−20℃、−40℃のグラフはPG/水1.7付近で粘度が低下しPG/水が1.8以上でも粘度は同等であるまたは低下する現象が観察できる。従来タイヤパンクシール剤には凍結防止の目的でPGを水より多くして添加したが、PGを多く添加することによって凍結防止をさせるとともに低温でのタイヤパンクシール剤の粘度の上昇をも抑制していたと考えられる。
また、図1において、本願発明者は、−20℃の条件下でPG/水1.1を超え1.5付近までの間にタイヤパンクシール剤の粘度が急上昇してその結果低温でのタイヤパンクシール剤の注入性が著しく低下することを見出した。そしてさらに、PG/水0.3〜1.1ではタイヤパンクシール剤の粘度が低く保たれ低温注入性に優れることを見出した。
図3はPG/水が0.8、1.2、1.5のタイヤパンクシール剤を常温(20℃)、−20℃、−40℃の条件下においてタイヤパンクシール剤の粘度を測定した結果を示すグラフである。図3に示す結果の測定に使用されたタイヤパンクシール剤は図1に示すデータを測定する際に使用された、PG/水が0.8、1.2、1.5のタイヤパンクシール剤と同様である。粘度は上記と同様の方法で測定された。図3において、常温、−20℃、−40℃のいずれの条件下おいてもPG/水0.8が最も粘度が低い。
PG/水1.7付近でタイヤパンクシール剤の粘度が低くなる現象のメカニズムについて、本願発明者は以下ように推測する。
PGのようなアルコールは、水と混ざると、水溶液中でクラスターを形成することができる。疎水性相互作用で集まったアルコール分子の回りを水分子が水素結合してカゴ状(クラスレート)構造を形成する。このことを「疎水性水和」と言う。アルコール濃度が(通常タイヤパンクシール剤中に使用されている程度まで)上がると、クラスター同士が会合し、水分子の水素結合ネットワークによるカゴ状構造が壊れ、粘度が下がると考えられる。PG/水混合系の場合、クラスター同士が会合し、水分子の水素結合ネットワークによるカゴ状構造が壊れるのがPG/水1.7付近であると考えられる。つまり、PG/水1.7付近が、水分子の水素結合ネットワークによるカゴ状構造が壊れ系内が不安定になり、クラスター同士の会合が生じ始める境界線なのではないかと思われる。PG/水1.7以上であると、クラスターが会合しやすい状態にあるため、粘度が上昇しないまた、低下する傾向がみられたと考えられる。
【0006】
次に、本願発明者はPG水溶液における粘度とPG/水比率の関係を検討した。結果を図2に示す。図2はPG水溶液における粘度とPG/水比率の関係を示すグラフである。図2ではプロピレングリコールと水とをPG/水:0.9〜2.3で混合し得られたPG水溶液を−20℃、−40℃において上記と同様にして粘度を測定した結果をデータとした。図2(a)、図2(b)においてPG/水1.7付近で粘度が低下しているのが観察できる。これは図1におけるタイヤパンクシール剤(−20℃、−40℃)の結果と同様の傾向にある。また図2(a)、図2(b)においてPG/水1.1を超え1.6付近の間でPG水溶液の粘度が急上昇する現象が見られた。
PG/水1.1を超え1.6付近の間でPG水溶液の粘度が急上昇する現象のメカニズムについて、本願発明者は以下ように推測する。
上述のとおりPGのようなアルコールは、水と混ざると、水溶液中でクラスターを形成することができる。疎水性相互作用で集まったアルコール分子の回りを水分子が水素結合してカゴ状構造を形成する。クラスターの会合が起こるまで(つまりPG/水系では1.7付近未満の範囲、1.1を超え1.6付近の間)は、クラスレート構造を形成するため、粘度が上昇すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、プロピレングリコール/水の比が0.5〜1.1であり、粘度が100〜1200mPa・sであることによって、タイヤパンクシール剤の低温注入性、シール性能が優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記1〜4を提供する。
1. 天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンとプロピレングリコールとを含むタイヤパンクシール剤において、前記プロピレングリコール/水の比が0.5〜1.1であり、かつBL型粘度計を使用したときの−20℃の粘度が回転数60rpmで100〜1200mPa・sであるタイヤパンクシール剤。
2. 前記天然ゴムラテックス及び/又は前記合成樹脂エマルジョンの固形分が20〜40%(質量%)である上記1に記載のタイヤパンクシール剤。
3. 前記天然ゴムラテックスと前記合成樹脂エマルジョンとを含み、前記天然ゴムラテックスの固形分/前記合成樹脂エマルジョンの固形分の比(質量比)が90/10〜30/70である上記1または2に記載のタイヤパンクシール剤。
4. 前記合成樹脂エマルジョンに含有される合成樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有する上記1〜3のいずれかに記載のタイヤパンクシール剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤパンクシール剤は低温注入性、シール性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はタイヤパンクシール剤の粘度とPG/水比率の関係を示すグラフである。
【図2】図2はPG水溶液における粘度とPG/水比率の関係を示すグラフである。
【図3】図3はPG/水が0.8、1.2、1.5のタイヤパンクシール剤を常温(20℃)、−20℃、−40℃の条件下においてタイヤパンクシール剤の粘度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明は、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンとプロピレングリコールとを含むタイヤパンクシール剤において、前記プロピレングリコール(PG)/水の比が0.5〜1.1であり、かつBL型粘度計を使用したときの−20℃の粘度が回転数60rpmで100〜1200mPa・sであるタイヤパンクシール剤である。
本発明のタイヤパンクシール剤は、PG/水の比(PG/水比、質量比)が0.5〜1.1であり、BL型粘度計を使用したときの−20℃の粘度が回転数60rpmで100〜1200mPa・sであることによって、低温注入性、シール性能、保管性能に優れる。
【0012】
本発明のタイヤパンクシール剤に含むことができる天然ゴムラテックスは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。天然ゴムラテックスとして天然ゴムラテックスからタンパク質を除去した脱蛋白天然ゴムラテックスを使用するのが好ましい。タンパク質が少ないと、アンモニアの発生量を少なくすることができ、アンモニアによるスチールコードへの腐食損傷および刺激臭の発生を防止するという理由からである。具体的には、例えば、脱蛋白天然ゴムラテックス(SeLatexシリーズ、SRIハイブリッド社製)、脱蛋白天然ゴムラテックス(HA、野村貿易社製)、超低アンモニア天然ゴムラテックス(ULACOL、レヂテックス社製)等が挙げられる。
天然ゴムラテックスはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のタイヤパンクシール剤は、天然ゴムラテックスの他にさらに合成ゴムラテックスを含むことができる。合成ゴムラテックスとしては例えば、SBRラテックス、NBRラテックス、カルボキシ変性NBRラテックス、カルボキシ変性SBRラテックスが挙げられる。
【0013】
本発明のタイヤパンクシール剤が含むことができる合成樹脂エマルジョンは特に制限されない。例えば、ウレタンエマルジョン、(メタ)アクリル樹脂エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂エマルジョンが挙げられる。なかでも、合成樹脂エマルジョンに含有される合成樹脂は、シール性能により優れ、保管性能に優れるという観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するのが好ましく、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂を含有するのがより好ましい。
合成樹脂エマルジョンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上の合成樹脂を含有する合成樹脂エマルジョンは、例えば、2種以上の合成樹脂エマルジョンを混合して得ることができる。合成樹脂が共重合体である場合、共重合体は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト重合体とすることができる。
【0014】
合成樹脂エマルジョンに含有されるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂は、エチレンおよび酢酸ビニルをモノマー単位として含む共重合樹脂であれば特に限定されない。エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル2元共重合樹脂(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂(VEVA)、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂が挙げられる。
EVA(2元共重合体)を構成するモノマー比(エチレン:酢酸ビニル)は、保管性能に優れるという観点から、質量比で20:80〜40:60であるのが好ましい。
VEVAを構成するモノマー比(エチレン:酢酸ビニル:バーサチック酸ビニル)はシール性能および保管性能に優れるという観点から、質量比で5:5:90〜10:5:85であるのが好ましい。
【0015】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンとしては、具体的には、例えば、スミカフレックス408HQE、401HQ、400HQ(以上、住化ケムテックス社製)が挙げられる。
エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル系VAエマルジョンとしては、具体的には、例えば、スミカフレックス950HQ、951HQ(以上、住化ケムテックス社製)が挙げられる。
【0016】
天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分(質量%。天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンを併用する場合天然ゴム、合成樹脂の合計量)は、低温注入性、シール性能により優れ、シール性能と保管性能が両立できるという観点から、タイヤパンクシール剤の20〜40%であるのが好ましく、25〜35%であるのがより好ましい。
低温注入性、シール性能により優れ、シール性能と保管性能が両立できるという観点から、タイヤパンクシール剤の−20℃の粘度が100mPa・s以上400mPa・s未満であり、かつ天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分(質量%)が25〜35%であるのが好ましい。
本発明において、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分はタイヤパンクシール剤の加熱残分である。加熱残分は天然ゴム及び/又は合成樹脂である。天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分は、タイヤパンクシール剤全量中の、タイヤパンクシール剤を200℃で1時間加熱した後に得られる残存物の量の比率(質量%)である。
【0017】
本発明のタイヤパンクシール剤は、保管性能に優れるという観点から、天然ゴムラテックスと合成樹脂エマルジョンとを含むのが好ましい。タイヤパンクシール剤が天然ゴムラテックスと合成樹脂エマルジョンとを含む場合、天然ゴムラテックスの固形分/合成樹脂エマルジョンの固形分の比(質量比)は、−20℃で特に低粘度とすることができ、優れた低温注入性とシール性能とを両立できることから、90/10〜30/70であるのが好ましく、70/30〜50/50であるのがより好ましい。
【0018】
本発明において、PGと水との合計量は、−20℃における粘度、固形分の量比を適切な範囲とし、低温注入性、シール性能により優れ、保管性能に優れるという観点から、タイヤパンクシール剤全量中の60〜80質量%であるのが好ましく、65〜75質量%であるのがより好ましい。
【0019】
本発明のタイヤパンクシール剤は凍結防止剤としてプロピレングリコールを含む。本発明において、プロピレングリコールは凍結防止剤として機能するほか、水との量比(プロピレングリコール/水の比)が0.5〜1.1であることによって、タイヤパンクシール剤の低温注入性、シール性能を優れたものとすることができる。プロプレングリコール/水比が0.5未満である場合タイヤパンクシール剤は凍結する。プロピレングリコール/水比が1.1より大きい場合タイヤパンクシール剤の粘度が高くなり注入困難となる。
プロピレングリコール/水の比は、低温注入性、シール性能により優れ、保管性能に優れるという観点から、0.5〜0.8であるのが好ましく、0.6〜0.8であるのがより好ましい。
また、プロピレングリコール/水の比が0.5〜0.8でありかつタイヤパンクシール剤の−20℃の粘度が100mPa・s以上400mPa・s未満であるものが低温特性がより向上することから好ましい。
【0020】
本発明のタイヤパンクシール材は、上述した各成分以外に必要に応じて所望により添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては例えば、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤が挙げられる。添加剤の量は特に制限されない。
【0021】
本発明のタイヤパンクシール剤はその製造について特に制限されない。例えば、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョン、プロピレングリコール、所望により添加することができる添加剤を減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混合することによってタイヤパンクシール剤を製造する方法が挙げられる。
【0022】
本発明のタイヤパンクシール剤の−20℃での粘度は、BL型粘度計(ロータNo.3)を使用し、回転数60rpmの条件下で100〜1200mPa・sである。粘度がこのような範囲であることによって、本発明のタイヤパンクシール剤は、低温注入性、シール性能、保管性能に優れる。本発明のタイヤパンクシール剤の粘度は、低温注入性、シール性能により優れ、保管性能に優れるという観点から、100mPa・s以上400mPa・s未満であるのが好ましく、200〜400mPa・sであるのがより好ましい。
【0023】
本発明のタイヤパンクシール材の使用方法としては、例えば、まず、本発明のタイヤパンクシール材をタイヤの空気充填部からタイヤ内に注入する。本発明のタイヤパンクシール材をタイヤ内に注入する方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、シリンジ、スプレー缶等を用いる方法が挙げられる。タイヤ内に注入されるタイヤパンクシール材の量は、特に限定されず、パンク穴の大きさ等に応じて適宜選択される。次に、所定の空気圧までタイヤに空気を充填する。その後、車を走行させる。タイヤが回転接地する際に受ける圧縮力や剪断力によって天然ゴム及び/又は合成樹脂の粒子等による凝集体を形成し、パンク穴をシールすることができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<評価>
下記のとおり得られたタイヤパンクシール剤について以下の評価を行った。結果を下記表に示す。
・粘度
タイヤパンクシール剤の粘度は−20℃の条件下においてBL型粘度計(ローターNo.3)を用いて回転数60rpmで測定された。
・シール性能
タイヤのショルダー部に直径4mmの大きさのパンク穴を再現し、ドラム試験を実施した。上述のとおり再現したパンク穴を有するタイヤのバルブ口からタイヤパンクシール剤を注入し、タイヤ内圧が200kPaになるように空気を充填した。ドラム試験において、荷重350kg、走行速度30km/h、走行時間1分とし、これを1サイクルとする。ドラム試験は25℃(常温)の条件下で行った。
シール性能の評価基準は、10サイクル以内でシールできた場合を「◎」、11〜15サイクルでシールできた場合を「○」、16サイクル以上でシールできた場合を「△」、シールしない場合を「×」とした。
・保管性能
80℃雰囲気下において、上述のとおり得られたタイヤパンクシール剤に20Hz、振幅±3mmの振動を168時間与える試験を実施した。
保管性能の評価基準は、クリームの発生なしで安定している場合を「◎」、クリームが発生したがタイヤパンクシール剤を撹拌すればクリームが消失し均一となった場合を「○」、凝集物が発生した場合を「×」とした。
・低温注入性
−20℃におけるタイヤパンクシール剤の粘度が、100mPa・s以上400mPa・s未満の場合を「◎」、400〜1200mPa・sの場合を「○」、1200mPa・sより大きく2000mPa・s未満の場合を「△」、2000mPa・s以上または測定不能の場合を「×」とした。
【0025】
<タイヤパンクシール剤の製造>
各表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いてこれらを混合することによってタイヤパンクシール剤を製造した。タイヤパンクシール剤を製造する際必要に応じて水を添加した。各表での配合組成における水の量はタイヤパンクシール剤全量中に含まれるトータルの水の量である。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
各表に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・ゴムラテックス NR:天然ゴムラテックス(Hytex HA、野村貿易社製、固形分約60質量%)
・合成樹脂Em EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン(スミカフレックス408HQE、住化ケムテックス社製、エチレン:酢酸ビニル=40:60、固形分約50質量%)
・合成樹脂Em アクリル:アクリル系エマルジョン(アクロナールA378、BASF社製、固形分約50質量%)
・合成樹脂Em VEVA:エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂エマルジョン(スミカフレックス950HQ、住化ケムテックス社製、エチレン:酢酸ビニル:バーサチック酸ビニル=10:5:85、固形分53質量%)
・プロピレングリコール:試薬1級、和光純薬社製
・エチレングリコール:三共化学社製
【0032】
表に示す結果から明らかなように、表1(NRラテックス固形分100質量部、PG/水比を変動、固形分固定)において、PG/水の比が0.5未満である比較例1は−20℃において凍結し低温注入性が悪く、シール性能が低かった。PG/水の比が1.1を超える比較例2、3は−20℃での粘度が1200mPa・sを超え、低温注入性、保管性能が低かった。これに対して実施例1〜4は低温注入性、シール性能、保管性能に優れる。実施例4と比較例2とを比較すると、比較例2(PG/水の比1.2)では著しく粘度が増加している。
表2(NRラテックス固形分100質量部、PG/水比固定、固形分変動)では、−20℃における粘度が100mPa・s未満である比較例4はシール性能が低かった。−20℃における粘度が1200mPa・sを超える比較例5は低温注入性、保管性能が低かった。これに対して、実施例5〜7は低温注入性、シール性能、保管性能に優れる。実施例5〜7の結果から、天然ゴム及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分を20〜40%とすることによっても、−20℃の粘度を100〜1200mPa・sとすることができる。
表3(NRラテックス及び合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部、PG/水比変動、固形分固定)では、PG/水の比が0.5未満である比較例6は−20℃において凍結し低温注入性が悪く、シール性能が低かった。PG/水の比が1.1を超える比較例7、8は−20℃での粘度が1200mPa・sを超え、低温注入性が低かった。これに対して実施例8〜11は低温注入性、シール性能、保管性能に優れる。実施例11と比較例7とを比較すると、比較例7(PG/水の比1.2)では著しく粘度が増加している。
表4(エチレングリコール仕様)では、PGの代わりにエチレングリコールを使用する比較例9〜11はシール性能が低かった。
表5(NRラテックス及び合成樹脂エマルジョン、または合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部、PG/水比固定、固形分変動)において、比較例12、13と実施例13〜15、18、19とを比較すると、−20℃における粘度が100mPa・s未満である比較例12はシール性能が低かった。−20℃における粘度が1200mPa・sを超える比較例13は低温注入性、保管性能が低かった。これに対して、実施例13〜15、18、19は低温注入性、シール性能、保管性能に優れる。実施例13〜15の結果から、天然ゴム及び/又は合成樹脂エマルジョンの固形分を20〜40%とすることによっても、−20℃の粘度を100〜1200mPa・sとすることができる。
実施例2、12〜17と比較例14、15とを比較すると、−20℃における粘度が1200mPa・sを超える比較例14、15は低温注入性、シール性能が低かった。これに対して、実施例2、12〜17は低温注入性、シール性能、保管性能に優れる。
【0033】
本発明のタイヤパンクシール剤は優れた低温注入性とシール性能を両立させることができ、保管性能にも優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンとプロピレングリコールとを含むタイヤパンクシール剤において、前記プロピレングリコール/水の比が0.5〜1.1であり、かつBL型粘度計を使用したときの−20℃の粘度が回転数60rpmで100〜1200mPa・sであるタイヤパンクシール剤。
【請求項2】
前記天然ゴムラテックス及び/又は前記合成樹脂エマルジョンの固形分が20〜40%である請求項1に記載のタイヤパンクシール剤。
【請求項3】
前記天然ゴムラテックスと前記合成樹脂エマルジョンとを含み、前記天然ゴムラテックスの固形分/前記合成樹脂エマルジョンの固形分の比が90/10〜30/70である請求項1または2に記載のタイヤパンクシール剤。
【請求項4】
前記合成樹脂エマルジョンに含有される合成樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤパンクシール剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−40297(P2013−40297A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179055(P2011−179055)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】