説明

タイヤ成形方法

【課題】ファイナルゴム混練とプロファイル成形の間に発生する中間在庫をなくしサイクルタイムの大幅削減を実現可能なタイヤ成形方法を提供する。
【解決手段】非加硫性ゴムを混練する工程と、この非加硫性ゴムを押出機1により連続混錬する工程と、を有するタイヤ成形方法であって、押出機1による工程は、加硫系薬品を供給し、加硫性ゴムを連続混練する工程と、加硫性ゴムを熟成する工程と、熟成された加硫性ゴムを所定の断面形状のタイヤ部材として連続押し出し成形する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非加硫性ゴムを混練する工程と、この非加硫性ゴムを押出機により連続混錬する工程と、を有するタイヤ成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤの構成部材のようなゴム製品の製造方法は、まず、バンバリーミキサー等の混練機を用いて、原料ゴムに補強剤、充填剤、可塑剤等の添加剤(但し、加硫剤や加硫促進剤を除く)を配合・混練(ノンプロゴム混練)してシート状の非加硫性ゴムを製造する。次に、この非加硫性のゴムシートをバンバリーミキサーや混練機に再供給し、加硫剤及び加硫促進剤を添加・混練(ファイナルゴム混練)し、シート状の加硫性ゴムを得る。そして、この加硫性ゴムシートを押出機に供給し、所望の断面形状にして押し出し成形(プロファイル成形)し、所望の形状のゴム製品を製造する。
【0003】
上記において、ファイナルゴム混練を行った後、直ちにプロファイル成形を行うのではなく、数時間から1日かけて熟成が行われる。これは、加硫系薬品を均一に分散させてファイナルゴムの特性を安定させるためと、必要以上の熱履歴によるゴム焼けの問題を防止するためである。また、加硫性ゴムの疲労回復と可塑度の均一化を図るためである。
【0004】
しかし、上記熟成期間をわざわざ設けることで、ファイナルゴム混練とプロファイル成形の間に中間在庫が発生し、保管場所の確保等の問題があった。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、押し出し成形機等のゴム混練装置を用いて、ベースゴムを連続的に投入し、続いてファイナル薬品を連続的に加えて、ゴム混練装置内で連続的に混合する方法を開示している。この方法によれば、ベースゴムを連続的に投入するので、ファイナルゴム混練を行うまでの中間在庫はなくすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−180264号公報(特許請求の範囲、段落0002〜0003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ファイナルゴム混練後、プロファイル成形を行うまでの間に発生する中間在庫の問題は解決されていない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、ファイナルゴム混練とプロファイル成形の間に発生する中間在庫をなくしサイクルタイムの大幅削減を実現可能なタイヤ成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係るタイヤ成形方法は、
非加硫性ゴムを混練する工程と、
この非加硫性ゴムを押出機により連続混錬する工程と、を有するタイヤ成形方法であって、
前記押出機による工程は、
加硫系薬品を供給し、加硫性ゴムを連続混練する工程と、
前記加硫性ゴムを熟成する工程と、
熟成された加硫性ゴムを所定の断面形状のタイヤ部材として連続押し出し成形する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
この構成によるタイヤ成形方法の作用・効果を説明する。まず、非加硫性ゴムを混練する工程を有し、これは、例えば、バンバリーミキサーにより混練されシート状の非加硫性ゴム(ノンプロゴム)を作製する。次に、この非加硫性ゴムを押出機に投入して混練する。この押出機で、加硫系薬品を供給し加硫性ゴムを連続混練しつつ、押出機の内部にて、熟成させ、さらに、所定の断面形状を有するゴムを押し出し成形(プロファイル成形)する。すなわち、一旦、熟成させるという工程をなくし、プロファイル成形を行うので、上記押出機によりタイヤ構成部材の成形まで行うことができる。熟成させるために必要な条件(後述)を設定することで、押出機によりファイナル混練とプロファイル成形を連続的に行うことができることを本発明者は見出した。これにより、ファイナルゴム混練とプロファイル成形の間に発生する中間在庫をなくしサイクルタイムの大幅削減を実現可能なタイヤ成形方法を提供することができる。
【0011】
本発明において、前記押し出し成形されるゴムの温度が80℃以下に設定されていること画好ましい。
【0012】
かかる温度に設定することで、熟成期間を単独に設定しなくても、所望の物性が得られることを見出した。これにより、サイクルタイムの大幅削減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るタイヤ成形方法を行うための設備を示す図
【図2】ギアポンプ周辺の構成を示す拡大図
【図3】第1実施形態の成形手順を示すフローチャート
【図4】ギアポンプ回転数、スクリュー回転数、ギアポンプ入口圧力の関係を示す表
【図5】滞留空間の効果を示す図
【図6】バレルとスクリューの羽根の間の空間でゴムが混練される様子を示す図
【図7】第2実施形態に係るタイヤ成形方法を行うための設備を示す図
【図8】従来技術における成形手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るタイヤ成形方法の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係るタイヤ成形方法を行うための設備を示す図である。
【0015】
<第1実施形態>
図1において、押出機1は、スクリュー10を有し駆動装置11により駆動される。スクリュー10が収容されるバレル12には、ホッパー13が設けられており、薬品供給機14から加硫系薬品とノンプロゴムが投入される。ここで、ノンプロゴムとは、非加硫性ゴムのことであり、ノンプロゴム自体は、例えば、バンバリーミキサーにより混練される。得られたノンプロゴムは所定断面形状のシート状に形成される。
【0016】
バレル12の内壁面にはピン17が多数植設されている。ピン17は、スクリュー10の羽根と羽根の間に位置しており、ゴムを混練するときの圧力を高めることができる。ピン17の配置場所や個数については、選択的に行うことができる。ピン17の形状は円柱状であるが、形状や大きさについては、適宜決めることができる。
【0017】
図2は、ギアポンプ15の周辺の構成を示す詳細な断面図である。ギアポンプ15は、一対のギヤ15a,15bを備えており、図2の矢印方向に回転し、下流側へゴムの定量供給を行うことができる。ギヤ15a,15bの回転数を制御することで、ギアポンプ15から排出されるゴムの量を制御することができる。
【0018】
ギアポンプ15と金型16の間のゴム流路に濾過機構18が設けられている。この濾過機構18は、上流側に配置されるメッシュ180と、下流側に配置されるブレーカープレート181により構成される。メッシュ180は、ブレーカープレート181に形成された凹部181aにはめ込まれている。メッシュ180は金属製であり、微細な網の目が多数形成されている。ブレーカープレート181には、多数の貫通孔181bが形成されており、濾過されたゴムが通過する。
【0019】
加硫系薬品とは、加硫剤や加硫促進剤のことを指し、ペレット状に形成された加硫系薬品がシート状のノンプロゴムと共に供給される。スクリュー10の先端側にはギヤーポンプ15と金型16が設けられる。金型16は、タイヤ構成部材に対応した所定断面形状を有しており、連続的に押し出し成形されたタイヤ構成部材は、コンベア2により引き取られる。
【0020】
図3は、成形手順を示すフローチャートである。ノンプロゴム混練は、従来と同じであるが、押出機による連続混練は従来と異なる。従来は、図8に示すように、ファイナル混練と熟成とプロファイル押出しは、別々の独立した工程であった。しかし、本発明においては、ファイナル混練からプロファイル押出しまで、押出機1において行われる。従って、熟成を行うための中間在庫は発生しない。
【0021】
<熟成工程を押出機内部でできる理由>
本発明に係る成形方法において、従来技術のように熟成工程を省略できるのは、押出機1の内部で熟成を行うことができるからである。そこで、熟成を行う理由の1つである「加硫性ゴム中の加硫系薬品(配合剤)の均一分散性の向上」が可能な理由は、次の通りである。
【0022】
ギアポンプ15の回転数と、スクリュー10の回転数を調整し、ギアポンプ15の入口(上流側)圧力をゴム混練に最適な条件にしている。図4に示す表において、条件(1)(2)(3)のように回転数を変えた場合の、ギアポンプ15の入口圧力は、6MPa,12MPa,18MPaのように変化する。ギアポンプ15の入口側のゴムの分散や物性を測定したところ、条件(3)が最も混練に適していた。
【0023】
上記のことから、ギアポンプ15の回転数と、スクリュー10の回転数を検出する回転数検出センサーを夫々設け、また、ギアポンプ15の入口側に圧力センサーを設けて、所望の圧力になるように、上記回転数を制御する制御部を設けておくことが好ましい。
【0024】
ちなみに、図2においてSで示されるのは滞留空間である。ギアポンプ15によるゴム排出量(回転数に依存)と、スクリュー10によるゴムの供給量(回転数に依存)の差で、滞留空間Sにゴムの滞留が発生する。ここに圧力センサーを配置すれば、上記ギアポンプ15の入口における圧力変動となって検出される。
【0025】
また、熟成を行うもう1つの理由である「加硫性ゴムの疲労回復および可塑度の均一性の向上」が可能な理由は次の通りである。従来は、バンバリーミキサーで配合しており、すりつぶす等の過度の応力をその時々で局所的に与えていた。そのため、排出時に可塑度の不均一により、別途、熟成工程を設ける必要があった。しかし、本発明の場合は、押出機1によるプロファイル押し出し時に可塑度の均一化が可能になった。
【0026】
具体的には、ギアポンプ15を設けていること、および、バレル12の内壁面にピン17を植設していることから、ギアポンプ15の入口において、ゴムに均一な圧力をかけることができるためである。また、滞留空間Sを形成することで、ゴムの可塑度の時間的なばらつきを減少させることができるためである。
【0027】
これを図5に示す。滞留空間Sがない場合は、(a)に示すように、時系列的に可塑度が異なるゴムが混練された場合、滞留しないので、前後のゴムの混ざりがなく(ゾーン(2)のゴムが前後のゾーン(1,3)のゴムと混ざることがなく)、可塑度は時間的にばらついたままである。一方、滞留空間Sがある場合は、(b)に示すように、ゾーン(1,2,3)が混ざり合い、前後の可塑度の差がなくなる。すなわち、上記の現象が連続的に発生することで、時間的に可塑度の均一なゴムを押し出すことができる。さらに、濾過機構18を設けていることで、上記の効果をより促進させることができる。
【0028】
金型16から押し出されるタイヤ構成部材の温度は、80℃以下の温度になるように制御される。これにより、熟成期間を置かなくても、要求される特性を有するタイヤ構成部材を得ることができる。従って、サイクルタイムの大幅削減が可能になる。
【0029】
具体的には、スクリュー10、バレル12、ギアポンプ15等の温度の調整を行っているためである。図6は、バレル12とスクリュー10の羽根の間の空間でゴムが混練される様子を示す図である。
【0030】
スクリュー10側の温度と、バレル12の温度とギアポンプ15の温度に差(10〜20℃)をつけることで、冷却効果によりゴムがバレル12の内壁面に引っかかり、ゴムによる剪断力が作用し、粘度低下を促進し、混練効果が向上すると考えられる。例えば、バレル12を60℃、スクリュー10を80℃、ギアポンプ15を80℃に設定する。
【0031】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係るタイヤ成形方法を行うための設備を示す図である。第1実施形態と異なる点は、成形ドラムに直接ゴムを貼り付けていく設備である。具体的には、金型16から、帯状のストリップゴムを押し出し成形し、直接成形ドラムに貼り付ける。
【0032】
この場合も第1実施形態と同様に中間在庫は発生しない。
【符号の説明】
【0033】
1 押出機
2 ベルトコンベア
3 成形ドラム
10 スクリュー
12 バレル
13 ホッパー
14 薬品供給機
15 ギアポンプ
16 金型
17 ピン
18 濾過機構
180 メッシュ
181 ブレーカープレート
S 滞留空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非加硫性ゴムを混練する工程と、
この非加硫性ゴムを押出機により連続混錬する工程と、を有するタイヤ成形方法であって、
前記押出機による工程は、
加硫系薬品を供給し、加硫性ゴムを連続混練する工程と、
前記加硫性ゴムを熟成する工程と、
熟成された加硫性ゴムを所定の断面形状のタイヤ部材として連続押し出し成形する工程と、を有することを特徴とするタイヤ成形方法。
【請求項2】
前記押し出し成形されるゴムの温度が80℃以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200949(P2012−200949A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66412(P2011−66412)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】