説明

タイヤ管理システム

【課題】複数のタイヤが装着される車両の一部のタイヤに装着された電子部品から取得されるタイヤ情報に基づいて、全てのタイヤの状態を管理する。
【解決手段】電子部品500によって測定されたタイヤ110(被測定タイヤ)の内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報とタイヤの取付位置に関する情報とから、被測定タイヤのタイヤ情報から、被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を算出し、データ記憶部314に記憶されたタイヤ情報の目標値と、被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報とを比較する。被測定タイヤの内圧と目標値との差が、例えば、±5%以上乖離したとき、異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されたタイヤの内圧を少なくとも測定する電子部品と、前記タイヤの内圧を少なくとも含むタイヤ情報を管理する管理装置とを備えるタイヤ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物資源の採掘現場などで使用される大型車両に装着されるタイヤは、大型で特殊なため、バースト等の不具合が生じたとき、交換にかかるコストが高額である。このタイヤは、乗用車に装着されるタイヤに比べて発熱しやすく、内圧の変化も大きい。また、このタイヤは、過酷な路面環境及び使用頻度の下で使用される。しかし、上述した実情にも関わらず、採掘作業などの効率化などの観点から、大型車両及びタイヤの整備に十分な時間を割くことが困難なのが現状である。
【0003】
そこで、利用者(複数の車両を使用し、管理する事業者)が車両に装着されたタイヤの状態を監視することのできるタイヤ管理システムが提案されている。
【0004】
例えば、タイヤ管理システムは、車両に装着されたタイヤの内圧や温度を測定するセンサや無線機などの電子部品と、電子部品によって測定されたタイヤの内圧や温度などのタイヤ情報を管理する端末などの管理装置とによって構成される(例えば、特許文献1参照)。これにより利用者は、全車両に装着された全てのタイヤの状態を監視できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−91202号公報(第5−7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のタイヤ管理システムには、次のような問題があった。すなわち、タイヤの内圧や温度などのタイヤ情報を測定する電子部品が故障すると、故障した電子部品が装着されたタイヤのタイヤ情報を検出できない。そのため、タイヤが適切な状態で使用されているか否かを監視できなくなり、タイヤのオーバーワークによる不具合を招くおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、複数のタイヤが装着される車両の一部のタイヤに装着された電子部品から取得されるタイヤ情報に基づいて、全てのタイヤの状態を管理できるタイヤ管理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、車両(車両100)に装着されたタイヤ(タイヤ110)の内圧及び温度を少なくとも測定する電子部品(電子部品500)と、前記タイヤの内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報を管理する管理装置(管理装置301)とを備えるタイヤ管理システム(タイヤ管理システム1)であって、前記電子部品は、前記車両に装着されたタイヤのうち被測定タイヤに設けられ、前記タイヤの内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報を測定する測定部と、前記測定部で測定されたタイヤ情報と、前記被測定タイヤが取り付けられた取付位置に関する取付位置情報とを前記管理装置に出力する出力部(送信部512)とを備え、前記管理装置は、前記タイヤ情報を受信する通信部(通信部311)と、前記通信部で受信した前記タイヤ情報と前記取付位置情報とから、前記被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を算出する処理部(CPU312)と、前記被測定タイヤのタイヤ情報と、前記被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報とを表示する表示部(表示部313)とを備えることを要旨とする。
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、被測定タイヤに設けられた前記電子部品によって測定されたタイヤの内圧及び温度に基づいて、直接測定していないタイヤのタイヤの内圧及び温度を算出する。このため、電子部品によって内圧及び温度を測定していないタイヤであっても、使用状態を監視することができる。これにより、タイヤのオーバーワークによる不具合の発生を低下させることができる。従って、複数のタイヤが装着される車両の一部のタイヤに装着された電子部品から取得されるタイヤ情報に基づいて、全てのタイヤの状態を管理できる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記電子部品は、複数のタイヤに設けられており、前記管理装置は、前記複数の被測定タイヤから基準となる基準タイヤを選択し、前記基準タイヤのタイヤ情報と前記基準タイヤの取付位置に関する情報とから、前記電子部品が装着されていないタイヤのタイヤ情報を算出することを要旨とする。
【0011】
本発明の第2の特徴によれば、電子部品が設けられた複数のタイヤのうち基準タイヤのタイヤ情報を用いて、電子部品が装着されていないタイヤのタイヤ情報を算出することができる。
【0012】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記管理装置は、前記車両に装着された複数のタイヤの取付位置と個々のタイヤ情報の関係とが対応付けして記憶された記憶部(データ記憶部314)を備え、前記管理装置は、前記被測定タイヤのタイヤ情報に基づいて、前記記憶部から前記被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を抽出することを要旨とする。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば、車両に装着された複数のタイヤの取付位置と個々のタイヤ情報の関係とを予め対応付けして記憶しておくため、処理部における演算による負荷を低減することができる。また、被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を表示するまでの処理期間を短縮できる。
【0014】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記管理装置は、少なくとも前記タイヤの目標とする内圧の値を記憶する目標値記憶部(データ記憶部314,目標値データベース)を備え、前記管理装置は、前記被測定タイヤのタイヤ情報に含まれる内圧と前記目標値記憶部に記憶された前記目標値とを比較し、前記被測定タイヤの内圧差が前記目標値から±5%以上乖離したとき前記表示部に警告を表示することを要旨とする。
【0015】
本発明の第4の特徴によれば、一部のタイヤに装着された電子部品から取得されるタイヤ情報に基づいて、直接測定していないタイヤの状態を予測し、管理者又は運転者に通知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のタイヤが装着される車両の一部のタイヤに装着された電子部品から取得されるタイヤ情報に基づいて、全てのタイヤの状態を管理できるタイヤ管理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るタイヤ管理システムが適用される環境を説明する模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るタイヤ管理システムを説明する構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るタイヤ管理システムにおいて、電子部品が装着されるタイヤについて説明する模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るタイヤ管理システムが電子部品が装着されていないタイヤのタイヤ情報を算出する処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明の実施形態に係るタイヤ管理システムについて説明する。具体的には、(1)作業環境の構成、(2)タイヤ管理システムの構成、(3)タイヤ管理システムの動作、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態について説明する。
【0019】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
(1)作業環境の構成
まず、タイヤ管理システム1が適用される作業環境について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、作業環境は、複数の車両100(トラックなどの大型車両)と、ショベルカー200と、タイヤ情報管理センター300(管理装置)と、整備工場400とによって大略構成されている。
【0021】
車両100は、採鉱現場A(または採鉱現場B)において、鉱物資源を該当する目的地まで運搬する。ショベルカー200は、鉱物資源を車両100に積載する。タイヤ情報管理センター300は、複数の車両100のタイヤに装着された電子部品500(図1には不図示)から送信されたタイヤ情報を受信する。タイヤ情報の詳細は後述する。
【0022】
タイヤ情報管理センター300は、車両100に装着されたタイヤのタイヤ情報を管理する。タイヤ情報管理センター300は、例えば、タイヤに異常が発生したことを知らせる異常情報や、整備工場400でタイヤ110の点検を行うように指示する情報(情報I1)をタイヤ情報の送信元の車両100に送信する。また、タイヤ情報管理センター300は、車両100が現在位置から目的地まで向うための複数の走行経路のうちの最もタイヤに負担が掛からない走行経路を知らせる情報(情報I2)などを送信する。
【0023】
整備工場400は、車両100及び車両100に装着されたタイヤ110の点検や整備を行う工場である。整備工場400は、車両100またはタイヤ110の点検日時等を管理する整備工場内管理センター410を備える。
【0024】
(2)タイヤ管理システムの構成
タイヤ管理システム1の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、タイヤ管理システム1の構成を説明する図である。タイヤ管理システム1は、車両100に装着されたタイヤ110の内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報を測定する電子部品500と、電子部品500から送られたタイヤ情報を管理する管理装置301とを備える。
【0025】
電子部品500は、タイヤ110の内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報を測定する測定部を備える。また、測定部で測定されたタイヤ情報は、車両100に設置された通信装置501に送られる。通信装置501は、管理装置301に送信するための送信部(図3に示す送信部512参照)を含む(図2には、測定部は不図示)。実施形態において、送信部は、出力部を構成する。
【0026】
本実施形態では、電子部品500は、タイヤ110のサイドウォール部の内壁面、またはタイヤ110が組み付けられているリムRに固定される。測定部は、タイヤ110の内圧、タイヤ110の温度(例えば、タイヤ110の内部の空気温度、タイヤ110自体の温度)などを測定することができる。
【0027】
通信装置501は、電子部品500において測定されたタイヤ情報をタイヤ情報管理センター300に送信する。通信装置501は、タイヤ情報管理センター300又は整備工場内管理センター410から送られた情報を受信する場合もある。なお、通信装置501は、送信するタイヤ情報や、受信する各種情報などを記憶する記憶部を備えていてもよい。
【0028】
タイヤ情報には、タイヤ110の内圧や温度のみならず、車両100を個々に識別するための固有の情報である車両識別情報(例えば、車両ID、シリアル番号)、タイヤ110を個々に識別するための固有の情報であるタイヤ識別情報(例えば、名称・サイズや製造年月日、タイヤID、シリアル番号、ロッド番号)、タイヤ110が装着されている位置の情報であるタイヤ位置情報(例えば、右前輪、左前輪)などが含まれる。電子部品500は、車両100に装着されたタイヤ110のうち選択されたタイヤに設けられていてもよい。
【0029】
次に、管理装置301を詳細に説明する。管理装置301は、タイヤ情報管理センター300に設けられる。管理装置301は、通信装置501を介して電子部品500からタイヤ情報を受信する通信部311と、通信部311で受信したタイヤ情報に基づく処理を行うCPU312とを備える。実施形態では、CPU312は、処理部を構成する。また、管理装置301は、被測定タイヤのタイヤ情報と、被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報とを表示する表示部313を備える。また、各種データを記憶するデータ記憶部314とを備える。
【0030】
通信部311は、電子部品500からタイヤ情報を含む各種情報を受信する。また、通信部311は、CPU312がタイヤ情報の異常を判定した場合に、異常と判定したタイヤ情報の送信元である車両100に、異常であることを示す情報を送信する。また、通信部311は、図1に示す情報I1、I2などを車両311に送信する。
【0031】
CPU312は、電子部品500が装着された複数のタイヤ110から基準となる基準タイヤを選択する。すなわち、基準タイヤ選択部として機能する。また、CPU312は、基準タイヤのタイヤ情報と基準タイヤの取付位置に関する情報とから、電子部品500が装着されていないタイヤのタイヤ情報を算出する。
【0032】
管理装置301は、少なくともタイヤ110の内圧の目標値を記憶する目標値データベースをデータ記憶部314に記憶している。すなわち、データ記憶部314は、目標値記憶部として機能する。管理装置301は、被測定タイヤのタイヤ情報に含まれる内圧と、目標値記憶部に記憶された目標値とを比較する。管理装置301は、被測定タイヤの内圧と目標値との差が±5%以上乖離したとき、表示部313に警告を表示する。
【0033】
また、管理装置301は、車両100に装着された複数のタイヤの取付位置と個々のタイヤ情報の関係とを関連付けてデータ記憶部314に記憶していてもよい。この場合、管理装置301は、データ記憶部314に記憶されたデータベースに基づいて、基準タイヤのタイヤ情報から基準タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を抽出する。
【0034】
表示部313は、CPU312によって算出された結果、結果に基づく情報などを表示する。
【0035】
データ記憶部314は、上述のように、基準タイヤのタイヤ情報に対して取付位置毎のタイヤ情報が関連付けされたテーブル、タイヤ情報の目標値(タイヤ正規情報という)などを格納する。テーブル記憶部314は、タイヤ情報を所定の期間蓄積することができる。
【0036】
次に、本実施形態に係るタイヤ管理システム1において、電子部品500が設置されるタイヤ110を説明する。図3は、電子部品500が設置されるタイヤ110を説明する図である。本実施形態に係るタイヤ管理システム1では、タイヤ情報を取得する電子部品500は、全タイヤのうち一部のタイヤ110に装着されるものとする。
【0037】
例えば、電子部品500は、左前輪FL(ポジション1という)、左後輪外RLO(ポジション3という)、左後輪内RLI(ポジション4という)に配置される。ポジション1に装着されるタイヤ110には、電子部品500FLが設置される。ポジション3に装着されるタイヤ110には、電子部品500RLOが設置される。ポジション4に装着されるタイヤ110には、電子部品500RLIが設置される。このほか、右前輪FF(ポジション2)、右後輪外RRO(ポジション5)、右後輪内RRI(ポジション6)という。
【0038】
これらの電子部品500FL,500RLO,500RLIにおいて測定されたタイヤ温度及び内圧は、受信アンテナ511f、511rから通信装置501に送られる。通信装置501は、測定されたタイヤ温度及び内圧を、送信部512を介してタイヤ情報管理センター300に設置された管理装置301に送信する。
【0039】
(3)タイヤ管理システムの動作
次に、電子部品500が装着されていないタイヤのタイヤ情報を算出する処理について説明する。図4は、タイヤ情報を算出する処理を説明するフローチャートである。
【0040】
図4に示すように、ステップS1において、電子部品500は、タイヤ110の内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報を測定する。ステップS2において、電子部品500は、測定されたタイヤ情報、車両100を個々に識別するための固有の情報である車両識別情報、タイヤ110が装着されている位置の情報であるタイヤ位置情報などを車両100に設置された通信装置501に送信する。通信装置501は、タイヤ情報を管理装置301に送信する。
【0041】
ステップS3において、管理装置301は、通信装置501を介して電子部品500からタイヤ情報を受信する。
【0042】
ステップS4において、管理装置301のCPU312は、電子部品500が装着された複数のタイヤ110から基準となる基準タイヤを選択する。また、CPU312は、基準タイヤのタイヤ情報と基準タイヤの取付位置に関する情報とから、被測定タイヤのタイヤ情報から、被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を算出する。電子部品500が配置されていないタイヤの内圧は、定期的に、例えば給油時などに算出し、更新されるようにしてもよい。
【0043】
ステップS5において、管理装置301のCPU312は、データ記憶部314に記憶されたタイヤ情報の目標値と、被測定タイヤのタイヤ情報及び被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報とを比較する。
【0044】
ステップS6において、CPU312は、タイヤ情報の異常を判定した場合に、異常と判定したタイヤ情報の送信元である車両100に、異常であることを示す情報を送信する。または、表示部313に警告を表示する。例えば、管理装置301は、被測定タイヤの内圧と目標値との差が±5%以上乖離したとき、異常と判定する。ステップS7において、通信装置501は、タイヤ情報が異常であることを車両100に設けられた図示しない表示部に表示する。
【0045】
受信したタイヤ情報が目標値を上回る場合には、送信元の車両100に対して、タイヤ110のタイヤの点検を促す情報、車両の積載量を減少させることを促す情報、車両の速度を減少させることを促す情報、又はタイヤの内圧の調整が必要な旨を通知する情報などを送信してもよい。
【0046】
例えば、ポジション3に装着されたタイヤ110にのみ電子部品500RLOが装着され、タイヤ110の内圧・温度が測定できる場合について説明する。タイヤ110の内圧は、タイヤ110の内部の空気温度により変化する。また、タイヤ110の内部の空気温度は、タイヤの使用条件(負荷加重、車両の走行スピード、外気温度)などにより変化する。そのため、タイヤ110の撓みを一定に保ち、最大限の性能を発揮するような目標値を定める。
【0047】
本実施形態においては、タイヤが使用される環境の気温が25℃で一定であるとする。このとき、タイヤ温度の目標値は85℃以下、ポジション1とポジション2のタイヤ110の内圧の目標値は110psi、ポジション3,4,5,6の内圧の目標値は100psiで運用する場合について説明する。
【0048】
ポジション1に装着されたタイヤ110のタイヤ温度をT1とする。ポジション2に装着されたタイヤ110のタイヤ温度をT2とする。ポジション3に装着されたタイヤ110のタイヤ温度をT3とする。ポジション4に装着されたタイヤ110のタイヤ温度をT4とする。ポジション5に装着されたタイヤ110のタイヤ温度をT5とする。ポジション6に装着されたタイヤ110のタイヤ温度をT6とする。
【0049】
このとき、各タイヤの間には、ポジション3に装着されたタイヤ110の温度T3を基準として、以下のような温度関係がある。
T1=T3−9X(T3−25)/60
T2=T3−12X(T3−25)/60
T4=T3+11X(T3−25)/60
T5=T3+5X(T3−25)/60
T6=T3−5X(T3−25)/60
【0050】
上記式を満足するようなポジション3のタイヤ110の温度は、75.7℃以下である。実際にポジション3に装着されたタイヤ110において測定された内圧PXと、タイヤの内部の空気温度TX、測定された内圧PXを外気温25℃に換算したときの換算内圧IPAとする。
【0051】
使用時の内圧をPXとする。実測に基づく換算内圧IPAと、内圧の目標値とを比較し、±5psiの許容差で管理する。
【0052】
タイヤ内部にタイヤクーラントを充填した場合、電子部品で測定した内圧PX,温度TXとすると、外気温度25℃に対する実測に基づく換算内圧をIPAとすると、以下のようになる。
【0053】
IPA=[PX−{10×(TX)+5×10−6×(TX)+10−4×(TX)+11×10−3×(TX)+W}]×(273+25)/(273+TX)+{10−7×(25)+5×10−6×(25)+10−4×(25)+11×10−3×25+W
但し、−0.8147<W<1.1853(W:換算式の係数)
【0054】
また、タイヤ内部にクーラントを充填しない場合、電子部品で測定した内圧PX,温度TXとすると、外気温度25℃に対する実測に基づく換算圧力をIPAとすると、以下のようになる。
IPA=[PX−{4×10−8×(TX)+2×10×(TX)+4×10−5×(TX)+33×10−4×(TX)+Y}]×(273+25)/(273+TX)+{4×10−8×(25)+2×10−6×(25)+4×10−5×(25)+33×10−4×25+Y
但し、−0.9437<Y<1.0563(Y:換算式の係数)
【0055】
(4)作用・効果
タイヤ管理システム1によれば、車両100に装着された全てのタイヤのうち、所定の被測定タイヤに設けられた電子部品500によって測定されたタイヤの内圧及び温度から、直接測定していないタイヤの内圧及び温度を算出することができる。このため、電子部品500を設置していないタイヤの使用状態も監視できる。
【0056】
従って、仮に、電子部品500が故障した場合であっても、測定が可能な他のタイヤに装着された電子部品500から取得されたタイヤ情報から全てのタイヤの使用状態を監視できる。タイヤ情報を測定できなくなった電子部品500が装着されたタイヤのタイヤ情報は、他のタイヤのタイヤ情報から算出することができるため、不測の事態に早期に対応可能である。
【0057】
また、本実施形態によれば、電子部品500を全てのタイヤ110に装着しなくてもよい。電子部品500を装着していないタイヤ110のオーバーワークによる不具合の発生を防ぐことができる。
【0058】
また、本実施形態では、上述のように、例えば、前輪の一方、後輪の内側タイヤの一方、外側タイヤの一方のように、特徴的なタイヤにのみ設置すれば、残りのタイヤのタイヤ情報も取得できるため、電子部品500を減らすことができ、タイヤ情報を管理するタイヤ管理システム1を導入する際における、初期投資を抑えることができる。
【0059】
管理装置301は、被測定タイヤのタイヤ情報を車両100に装着された複数のタイヤの取付位置と個々のタイヤ情報の関係とを対応付けして予めデータ記憶部314に記憶しておくことにより、CPU312における演算負荷を低減できる。
【0060】
本実施形態に係るタイヤ管理システム1によれば、管理装置301は、測定値が目標値から許容される値を超えている場合には、タイヤの点検を算出し、整備工場400の整備工場内管理センター410に通知できる。これにより、整備工場400では、点検時期を予め把握でき、点検の準備ができるため、点検作業、交換作業などの作業効率を高めることができ、ロスの少ない運搬計画を建てることができる。
【0061】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0062】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。本実施形態では、電子部品500は、左前輪FL、左後輪外RLO、左後輪内RLIに配置されると説明した。しかし、この位置に限定されない。右前輪FR、左後輪外RRO、左後輪内RRIであってもよい。
【0063】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…タイヤ管理システム、 100…車両、 110…タイヤ、 200…ショベルカー、 300…タイヤ情報管理センター、 301…管理装置、 311…車両、 311…通信部、 312…CPU、 313…表示部、 314…テーブル記憶部、 314…データ記憶部、 400…整備工場、 410…整備工場内管理センター、 500…電子部品、 500FL,500RLO,500RLI…電子部品、 501…通信装置、 511f,511r…受信アンテナ、 512…送信部、 A…採鉱現場、 B…採鉱現場、 I1…情報、 I2…情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤの内圧及び温度を少なくとも測定する電子部品と、
前記タイヤの内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報を管理する管理装置と
を備えるタイヤ管理システムであって、
前記電子部品は、
前記車両に装着されたタイヤのうち被測定タイヤに設けられ、
前記タイヤの内圧及び温度を少なくとも含むタイヤ情報を測定する測定部と、
前記測定部で測定されたタイヤ情報と、前記被測定タイヤが取り付けられた取付位置に関する取付位置情報とを前記管理装置に出力する出力部と
を備え、
前記管理装置は、
前記タイヤ情報を受信する通信部と、
前記通信部で受信した前記タイヤ情報と前記取付位置情報とから、前記被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を算出する処理部と、
前記被測定タイヤのタイヤ情報と、前記被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報とを表示する表示部とを備えるタイヤ管理システム。
【請求項2】
前記電子部品は、複数のタイヤに設けられており、
前記管理装置は、
前記複数の被測定タイヤから基準となる基準タイヤを選択し、
前記基準タイヤのタイヤ情報と前記基準タイヤの取付位置情報とから、前記電子部品が装着されていないタイヤのタイヤ情報を算出する請求項1に記載のタイヤ管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記車両に装着された複数のタイヤの取付位置と個々のタイヤ情報の関係とが対応付けして記憶された記憶部を備え、
前記管理装置は、
前記被測定タイヤのタイヤ情報に基づいて、前記記憶部から前記被測定タイヤ以外のタイヤのタイヤ情報を抽出する請求項1に記載のタイヤ管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、
少なくとも前記タイヤの内圧の目標値を記憶する目標値記憶部を備え、
前記管理装置は、
前記被測定タイヤのタイヤ情報に含まれる内圧と前記目標値記憶部に記憶された前記目標値とを比較し、
前記被測定タイヤの内圧差が前記目標値から±5%以上乖離したとき前記表示部に警告を表示する請求項1に記載のタイヤ管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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