説明

タイヤ製造装置及び製造方法

【課題】タイヤ構成部材の折り返し加工を最適な条件で行えるようにする。
【解決手段】タイヤ構成部材の折り返し手段を備えた成形ドラム1と、前記成形ドラム1の軸方向両端部にそれぞれ備えられた側部リング30と、折り返しアーム44を枢着したアーム支持部材42を作動する作動手段と、前記側部リング30または前記アーム支持部材42を作動する作動手段の何れか一方にモータ駆動力を付与して、前記側部リング30及び前記作動手段に相対変位を発生させる作動制御手段と、を有し、前記折り返しアーム44は、膨張させたタイヤ構成部材50をビードコア20の周りで折り返して押し付けて未加硫タイヤを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造装置及び製造方法に関し、とくにタイヤ構成部材の折り返し手段を備えたタイヤ製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ等の各種のタイヤは、一般に、未加硫ゴム等からなる各タイヤ構成部材を被成形体である成形ドラムに順次配置等して未加硫タイヤを成形した後、加硫成形して製造される。この未加硫タイヤの成形時には、従来、成形ドラムにカーカスプライ等からなるタイヤ構成部材を配置し、その両端部に環状のビード部材を各々配置等した後、タイヤ構成部材の幅方向両側の端部(側部)を各ビード部材の周りに折り返すタイヤ製造装置が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
この従来のタイヤ製造装置は、図7に示すように、成形ドラム100により、重ね合わせたインナーライナやカーカスプライ等からなる円筒状のタイヤ構成部材Kと、その外周側に配置したビードコア及びビードフィラーからなるビード部材Bとを保持する。また、タイヤ製造装置は、ビードロック手段BLにより、タイヤ構成部材Kを挟んで、ビード部材Bを内周側から固定するとともに、タイヤ構成部材Kに加圧気体を導入して、その一対のビード部材B間の部分をトロイダル状に膨出させる。
【0004】
また、タイヤ製造装置は、成形ドラム100の周方向に複数配置された揺動可能な折り返しアーム102、112と、その各先端部に軸線周りに回転自在に取り付けられた折り返しローラ104、114と、複数の折り返しアーム102、112を同期してドラム軸線方向に移動させる折り返しアーム移動手段等からなる折り返し手段101、111を備えている。
【0005】
タイヤ製造装置は、複数の折り返しアーム102、112をドラム軸線方向内側に移動させ、折り返しアーム102、112に掛け渡したゴムバンド105、106、115、116の収縮力に抗して放射状に拡開させ、先端の折り返しローラ104、114により、タイヤ構成部材Kの端部KTを押し込んでビード部材Bの周りに折り返す。その後、折り返しアーム102、112を縮閉させて元の位置に復帰させ、成形ドラム100を回転させて、折り返したタイヤ構成部材Kの端部KTを、ステッチングローラ(図示せず)で周方向に沿って押圧してステッチングし、対向する部材に圧着して未加硫タイヤを成形する。
【0006】
ところで、前記折り返しアーム移動手段は空圧、油圧、ねじ軸駆動により駆動されて前記折り返しアームを開閉するものが知られている(特許文献2参照)。
空圧駆動の場合、動作速度制御が困難であるため動作速度が一定となる。この場合、とくに入念に押圧したいビード補強部周囲は、折り返しアームの押圧ローラが前記折り返しアームの開放後期に通過するため、相対的に短時間で通過することになり、ビード周辺の補強帯の固着が不十分で、品質不良となる虞がある。
【0007】
そこで、この問題を解決するため、油圧を使用して速度制御する折り返しアーム移動手段が提案された(特許文献3参照)。
しかし、このタイヤ製造装置では油漏れが発生した場合、タイヤ製造工程では品質上の懸念があり、普及するに至っていない。
そこで、油漏れのない軸駆動により折り返しアームを開閉させるタイヤ製造装置が開発された。この装置は成形ドラムの軸と平行にねじ軸を有し、このねじ軸と螺合したアーム支持部材に折り返しアームを取り付けたもので、ステッピングモータなどの駆動手段でねじ軸を回転させることにより、アーム支持部材及びアームを成形ドラムに沿ってスライドさせ、それによって折り返しアームを開閉し、折り返しアームの先端に取り付けたローラで、タイヤ構成部材の端部を押し込んでビード部材の周りに折り返すものである(特許文献4、5参照)。
【0008】
この軸駆動によるタイヤ製造装置は、例えばステッピングモータの速度を変更することにより折り返し速度と位置を任意に設定可能であるため、とくに入念に押圧したいビード補強部周囲を望ましい低速で折り返すことができ、タイヤ成形に最適な動作を実現することができる。しかし、このタイヤ製造装置では、ドラム主軸内部の構造が複雑であるほか、そのスペースが限られているため、強度不足の問題があり、かつ、既存の成形ドラムとの互換性もないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−202577号公報
【特許文献2】特開2005−246823号公報
【特許文献3】特開2002−81404号公報
【特許文献4】特開平9−226020号公報
【特許文献5】US2009/0133842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来の軸駆動によるタイヤ製造装置では、ドラム主軸内に駆動用のねじ軸を配置していたことによる構造の繁雑さ、或いはスペースに起因する強度不足の問題があるため、この問題を解決すると共に、既存の成形ドラムに互換性をもって容易に適合できる折り返しアーム駆動装置を備えたタイヤ製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タイヤ構成部材の折り返し手段を備えた成形ドラムと、前記成形ドラムの軸方向両端部にそれぞれ備えられた側部リングと、折り返しアームを枢着したアーム支持部材を作動する作動手段と、前記側部リングまたは前記アーム支持部材を作動する作動手段の何れか一方にモータ駆動力を付与して、前記側部リング及び前記作動手段に相対変位を発生させる作動制御手段と、を有し、前記折り返しアームは、膨張させたタイヤ構成部材をビードコアの周りで折り返して押し付けて未加硫タイヤを製造するタイヤ製造装置である。
本発明は、軸方向両端部にそれぞれ側部リングを備えた成形ドラムを用い、膨張させたタイヤ構成部材を折り返しアームでビードコアの周りで折り返しかつ押し付けるタイヤ製造方法であって、前記側部リングまたは前記折り返しアームが枢着されたアーム支持部材の何れか一方にモータ駆動力を付与し、前記側部リング及びアーム支持部材を作動する作動手段を相対変位させる工程と、前記相対変位に基づき、前記折り返しアームを成形ドラムの中央面方向に移動して前記タイヤ構成部材を折り返す工程と、を有するタイヤ製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、折り返しアームの動作速度制御が容易であるため、ビード周辺の補強体(スティフナー部材)の固着が十分に行える。また、油圧を使用しないため油漏れの虞がなく、また、軸駆動によるタイヤ成形のための最適動作を実現するため、従来のようにドラム主軸内部の複雑な構造が不要であり、強度不足の問題もない。また、折り返しアームの動作速度制御が外付けの装置で可能であり、しかも既存のタイヤ製造装置(成形ドラム)に容易に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るタイヤ製造装置の側面図である。
【図2】駆動機構と成形ドラムとの関係を説明するための要部斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るタイヤ製造装置の側面図である。
【図4】図4Aは、第2の実施形態のアーム支持部材の作動制御を行うための作動制御手段であるブレーキキャリパと、成形ドラムとの関係を説明するための要部斜視図、図4Bはブレーキキャリパとブレーキディスクを示す拡大斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るタイヤ製造装置の断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るタイヤ製造装置の断面図である。
【図7】従来のタイヤ製造装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るタイヤ製造装置について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るタイヤ製造装置は、シングルステージ成形ドラムの両側に設けた側部リングと作動制御手段とを協働させることでアーム支持部材の作動を制御し、折り返しアームと折り返しローラを作動させて、成形ドラムに巻き付けたタイヤ構成部材の端部を折り返してグリーンタイヤを成形するものである。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るタイヤ製造装置の側面図である。
図1において、本タイヤ製造装置の成形ドラム1は水平な円筒状のドラム主軸10を有する。このドラム主軸10は、図中右端部において図示されていない、例えばステッピングモータを備えた成形ドラムの駆動部に連結されており、成形ドラム1はその駆動部によりドラム主軸10の回りで回転する。
ドラム主軸10内には、従来と同様にドラム主軸10とは独立に駆動されるねじ軸12が同軸に配置されている。
【0016】
前記成形ドラム1の両側部には側部リング30が一体に設けられており、一対の側部リング30の外周面にはそれぞれリードが逆向きのねじ(雄ねじ)部30aが形成されている。この側部リング30の左右(軸方向)端部にはそれぞれ外周に歯車の歯が形成された従動リング35が一体に形成されている。
側部リング30には、アーム支持部材42がその外周面上に等間隔で複数配置されており、アーム支持部材42には、それぞれタイヤ構成部材をビードコア20の回りで折り返す折り返しアーム44がその一端部に枢着されている。アーム支持部材42の内周面側にはねじ(雌ねじ)部42aが設けられており、このねじ部42aは側部リング30の外周面に設けたねじ(雄ねじ)部30aと螺合している。つまり、各アーム支持部材42は側部リング30とねじ係合しているため、側部リング30に対して相対回転するとドラム主軸10方向に相対変位するようになっている。
【0017】
アーム支持部材42が相対変位して、ドラム主軸10方向つまり成形ドラム1の中央面CLに向かって移動し膨張したタイヤ構成部材の側面に到達した後、折り返しアーム44は、それに掛け渡された図示しないゴムバンドによる付勢力に抗して拡開し、折り返しアーム44の先端に枢着された折り返しローラ46でタイヤ構成部材を折り返す。
なお、この折り返しローラ46、折り返しアーム44及びアーム支持部材42を総称してここでは折り返し手段40という。
【0018】
ドラム主軸10内に同軸に配置されたねじ軸12は、例えば、ボールネジ機構を構成し、成形ドラム中央面CLを挟んで、互いにリードが逆向きの一対のねじ(雄ねじ)部12aを有し、各ねじ部12aに、それぞれ複数のボール等を挟んで噛合するナット部材24aが、ドラム主軸10の中空部を通して移動可能に取り付けられている。即ち、各ナット部材24aの外周には、複数の連結ブロック24が放射状に固定され、その各々が、ドラム主軸10のドラム軸線方向に延びる各スリット10aを通して配置されている。また、各連結ブロック24の一端にはビードロック手段22を拡縮径するリンク26が枢着されている。ここで、ビードロック手段22は、成形ドラム1の周方向に沿って環状に配置された複数のビードロックセグメント(ビードロックシュー)からなっている。なお、これらの構造は従来のものと同様である。
【0019】
本実施形態は、成形ドラム1の前記側部リング30及びアーム支持部材42を相対回転運動させて、アーム支持部材42を成形ドラム中央面CLに向かって移動させるものであるが、その相対回転運動を発生させ、かつアーム支持部材42の移動制御を行うための作動制御手段として、ここでは、成形ドラム1の従動リング35と協働する駆動機構60が成形ドラム1と別体に設けられている。
【0020】
駆動機構60は、図示のように、駆動源である例えばステッピングモータMと、ステッピングモータMの回転軸61aに取り付けられた伝動歯車群、即ち、いずれも平歯車である、第1の歯車61、第1の歯車61と噛合する第2の歯車62、第2の歯車62の回転軸62aの他端に取り付けられた第3の歯車63、第3の歯車63と噛合する第4の歯車64、第4の歯車64の回転軸64aの他端に取り付けられた第5の歯車65とを備えている。
【0021】
なお、ここでは、第1の歯車61と第5の歯車65が等速回転するように、第1〜第5の歯車61〜65のピッチ円を全て同一にしているが、これに限らず、要は成形ドラム1側の従動リング35に対応する歯車が等速となればよい。また、駆動機構60は前記構成に限ることなく、周囲環境に応じて、例えば、第4、5歯車64、65を省略して第1〜第3の歯車61〜63で構成してもよい。また、歯車は平歯車に限らず、さらにステッピングモータの回転が成形ドラム1側に回転力を伝達できるのであれば、任意の伝動機構を用いることができる。
【0022】
図2は、駆動機構60と成形ドラム1との関係を説明するための要部斜視図である。ここでは簡略化のために、歯車群は、第1〜第3の歯車61〜63で構成されているとして示している。
図2に示すように、駆動機構60は成形ドラム1と係脱自在に構成されている。つまり、駆動機構60は図示しない移動手段により駆動機構60の歯車61、63(又は、歯車61、65)を成形ドラム1の従動リング35の歯35aに噛合させる位置と、従動リング35の歯35aとの係合を外した待機位置間で移動できるように構成されている。
【0023】
ここで、移動手段は例えば一種のクラッチ機構として構成し、切り替えレバーを手動又は自動で操作することにより、駆動機構60と成形ドラム1側とを係脱することができる。
【0024】
次に、以上で説明した第1の実施形態のタイヤ製造装置の動作について図1を主に参考にして説明する。
まず、図示しない駆動装置で成形ドラム1を回転させ、例えば、インナーライナゴム部材と、ゴムチェーファ部材と一体に押出したサイドウォールゴム部材とを成形ドラム1に巻き付け、巻き付けが終了した部材の表面に1枚以上のカーカスプライ部材(カーカスバンド)を巻き付けて張り合わせ、張り合わせが終了した段階で成形ドラム1の回転を停止する。その後、張合せたタイヤ構成部材の所定位置に、ビードフィラー部材21とビードコア20を合体したビード補強部材を配置する。
【0025】
続いて、例えば図示しない成形ドラム駆動用ステッピングモータをクラッチで切り替えてドラム主軸10内のねじ軸12を回転させると、ねじ軸12に螺合したナット部材24aは成形ドラム1の中心に向けて移動する。この移動により、連結ブロック24に枢着されたリンク26が外方に向かって押し上げてビードロック手段22を拡径させ、ビードコア20に対してタイヤ構成部材を内側から押圧してロック状態に固定する。同時にビードコア20のロック状態を保持した状態で、タイヤ構成部材50を膨張させる。この間、タイヤ構成部材50の膨張に合わせて、ドラム主軸10内のねじ軸12を回転させ、ビードロック手段22を成形ドラム1の中央面CLに向かって移動させる。つまり、膨張するタイヤ構成部材の足幅を狭める。
【0026】
タイヤ構成部材50を膨張させた後、図2に示すように、駆動機構60を待機位置から移動させて、第2の歯車62と第3の歯車63(又は第5の歯車65)を、成形ドラム1の側部リング30の端部の従動リング35の歯35aに噛合させる。
その状態で、駆動機構60のステッピングモータMを駆動すると、ステッピングモータMの回転により、第1及び第3の歯車61、63(又は第5の歯車65)を介して成形ドラム1の前記従動リング35、従って側部リング30が回転する。
【0027】
他方、側部リング30にねじ係合したアーム支持部材42は、成形ドラム1のドラム主軸10のスリット10aに嵌合されて回転停止状態の連結ブロック24により回転できないため、アーム支持部材42のねじ部42aと、駆動機構60により回転駆動される側部リング30のねじ部30aとの間に相対回転が生じる。この相対回転によりアーム支持部材42はドラム主軸10に沿って成形ドラム1の中央面CL方向に移動する。
この移動により、アーム支持部材42の一端部に枢着された折り返しアーム44の先端(折り返しローラ46)が膨張したタイヤ構成部材50の側面に到達すると、その後は図示しないゴムバンドの収縮力に抗して拡開し、タイヤ構成部材50をビードコア20の周りで折り返し、折り返した部分を折り返しアーム44の先端に回転自在に枢着された折り返しローラ46で押圧する。
【0028】
本実施形態によれば、アーム支持部材42の移動位置(即ち折り返しアーム44の移動位置)に応じて、駆動機構60のステッピングモータMの回転速度を制御することでその摺動速度を自由に変更することができる。
したがって、ビードフィラー部材21の周りをとくに念入りに押圧するときは、その位置で前記ステッピングモータMの回転速度を減速し、折り返しアーム44を低速で拡開しながら、その先端の折り返しローラ46で念入りに押さえ込んでいくことができる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るタイヤ製造装置について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係るタイヤ製造装置の側面図である。また、図4Aは、第2の実施形態のアーム支持部材42の作動制御を行うための作動制御手段であるブレーキキャリパ70と、成形ドラム1との関係を説明するための要部斜視図、図4Bはブレーキキャリパ70とブレーキディスク36を示す拡大斜視図である。
【0030】
本実施形態では、成形ドラム1の軸方向両端部の側部リング30の軸方向外側端部には、ブレーキディスク36が設けられている。他方、アーム支持部材42の作動制御を行うための作動制御手段として、このブレーキディスク36と協働するブレーキキャリパ70が設けられている。即ち、成形ドラム1の外部に前記ブレーキディスク36の周縁を挟み込んで制動するブレーキキャリパ70が、前記ブレーキディスク36に対応して左右一対設けられている。
ここで、ブレーキキャリパ70は、ブレーキディスク36を挿入したとき、ブレーキディスク36に対向する位置に設けられた摩擦材から成るブレーキパッドと、このブレーキパッドをブレーキディスク36に押し付けるためのピストンとを備えており、待機位置と作動位置間で図示しない移動手段により移動できるように、図示しない適宜の手段で移動可能となっている。
なお、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0031】
作動制御手段の作動時には、ブレーキディスク36をブレーキキャリパ70の二股状部分に挿入して、ブレーキキャリパ70のピストンを作動させて、ブレーキパッドをブレーキディスク36側に突出させ、ブレーキパッド間でブレーキディスク36を挟み込み、ブレーキディスク36と上記ブレーキパッド間に発生する摩擦力でブレーキディスク36の回転を拘束する。
【0032】
ブレーキキャリパ70を作動させると、自動又は手動の適宜の手段でブレーキキャリパ70を成形ドラム1に向かって移動させ、前記ブレーキディスク36を両側から挟み込んで回転しないように拘束する。
また、ブレーキキャリパ70の作動を停止すると、ブレーキキャリパ70はブレーキディスク36を解放し、予め定めた待機位置に退却するように構成されている。
【0033】
次に、第2の実施形態に係る折り返し装置を備えたタイヤ製造装置の動作について説明する。
折り返しアーム44を作動させる前までの動作は、第1の実施形態について説明したと同様であるので、ここではその説明を援用する。
第2の実施形態では、ブレーキキャリパ70を、成形ドラム1と共に回転を停止しているブレーキディスク36に接近させて、ブレーキキャリパ70の二股状部分を、ブレーキディスク36を挟み込むように挿入し、続いて、ブレーキパッドをブレーキディスク36の両面に押し付けてブレーキディスク36を拘束する。
【0034】
ブレーキディスク36を拘束した状態で、成形ドラム1の駆動装置、例えばステッピングモータを駆動すると、アーム支持部材42は、回転する成形ドラム1のドラム主軸10と共に回転するが、側部リング30はブレーキキャリパ70により拘束されているため回転しない。そのため両者に相対回転が生じる。この相対回転に伴って、アーム支持部材42は回転が拘束された側部リング30上を成形ドラム1の中央面CLの方向に移動する。このアーム支持部材42の移動に伴って、折り返しアーム44が膨張したタイヤ構成部材に到達した後はゴムバンドの収縮力に抗して拡開していく。
【0035】
この第2の実施形態においては、アーム支持部材42の移動速度は成形ドラム1の回転速度、したがってその駆動源であるモータ(例えばステッピングモータ)の回転速度を調節することで容易に制御可能である。即ち、ここでは、成形ドラムのブレーキディスク36の回転を拘束した状態で、成形ドラム1の駆動モータの回転速度を変更することで、アーム支持部材42の移動速度、したがって折り返し速度を自由に変更することができる。
本実施形態においても、とくにビードコア20の補強部の周りに対するタイヤ構成部材50の折り返しと貼り付けを最適な条件で行い、エア抜き等の不良発生予防処理を完全に行い確実に貼り付けることができる。
【0036】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図5は本発明の第3の実施形態に係るタイヤ製造装置の断面図である。
第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の駆動機構60を備えたものであるが、ここでは、アーム支持部材42の移動制御を行うための作動制御手段として以下で説明するように、従動リング35、スライダ75及びサポートリンク45と協働する駆動機構60が設けられている。
【0037】
即ち、第1の実施形態の側部リング30がその外周面にねじ部30aが形成されていたのに対して、本実施形態ではその外周面ではなく内周面にねじ部30bが形成されている。このねじ部30bは、その内周側に配置されたスライダ75の外周面に形成されたねじ部75aと螺合している。このスライダ75には折り返しアーム44に対して、その両端部間の成形ドラム1の中央面CL寄りの位置に一端が枢着されたサポートリンク45の他端が枢着されている。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0038】
次に、第3の実施形態のタイヤ製造装置の動作について説明する。
第3の実施形態では、駆動機構60を待機位置から移動させて、第1の歯車61と第5の歯車65を、成形ドラム1の側部リング30の端部の従動リング35の歯35aに噛合させ、その状態で、駆動機構60のステッピングモータMを始動する。ステッピングモータMが始動するとその回転により、第1及び第5の歯車61、65、従動リング35を介して成形ドラム1の側部リング30が回転する。
【0039】
ここで、スライダ75はその連結ブロック24がドラム主軸10のスリット10aに挿入されているため、成形ドラム1と同様回転が拘束されている。そのため、側部リング30が回転すると、側部リング30と、回転が拘束されたスライダ75とのねじ部30b、75a間に回転相対運動が生じ、その回転相対運動に応じてスライダ75が成形ドラム1のドラム主軸10のスリット10aを通してその中央面CLに向かって摺動する。
【0040】
スライダ75が摺動すると、スライダ75の成形ドラム1の中心側端部に枢着されたサポートリンク45も成形ドラム1の中央面CLに向かって摺動する。
ここで、サポートリンク45は折り返しアーム44に軸方向の力を発生するため、折り返しアーム44及び折り返しアーム44の外端が枢着されたアーム支持部材42も、サポートリンク45に牽引されて成形ドラム1の中央面CL方向に摺動する。
折り返しアーム44の先端の折り返しローラ46が、折り返したタイヤ構成部材50を介して膨張したタイヤ構成部材50の側部に当接した後は、拡開しながら折り返しローラ46により折り返した部分をタイヤ側面に貼り付けていく。
本実施形態では、サポートリンク45により折り返しアーム44軸方向に押圧力を発生することができるため、タイヤ側面が平面或いは逆テーパー状を成す場合であっても、タイヤ構成部材50を折り返して貼り付けることができる。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るタイヤ製造装置の動作について説明する。
ここでは、アーム支持部材42の移動制御を行うための作動制御手段として以下で説明するように、ブレーキディスク36、スライダ75及びサポートリンク45と協働するブレーキキャリパ70が設けられている。その他の構成は第3の実施形態と同様である。
【0042】
図6は本発明の第4の実施形態に係るタイヤ製造装置の断面図である。
折り返しアーム44を作動させる前までの動作は、第3の実施形態について説明したと同様であるので、ここではその説明を援用する。
第4の実施形態では、ブレーキキャリパ70を、成形ドラム1と共に回転が停止したブレーキディスク36に接近させて、ブレーキキャリパ70の二股状部分を、ブレーキディスク36を挟み込むように挿入する。続いて、ブレーキパッドをブレーキディスクの両面に押し付け、これによってブレーキディスク36を拘束する。
【0043】
次に、ブレーキキャリパ70により、ブレーキディスク36、したがって側部リング30の回転を拘束した状態で、成形ドラム1の駆動装置、例えば図示しないステッピングモータを始動する。ステッピングモータが始動すると、成形ドラム1が回転し、そのドラム主軸10のスリット10aに挿通された連結ブロック24によりスライダ75も一体に回転する。スライダ75が回転すると、スライダ75のねじ部75aと回転が拘束された側部リング30のねじ部30aとの間で相対回転が生じる。この相対回転に伴って、スライダ75がドラム主軸10のスリット10aに沿って成形ドラム1の中央面CLに向かって摺動する。
【0044】
スライダ75が摺動すると、スライダ75の成形ドラム1の中央面CL側端部に枢着されたサポートリンク45が成形ドラム1の中央面CLに向かって摺動する。
このサポートリンク45の摺動により折り返しアーム44及び折り返しアーム44の外端が枢着されたアーム支持部材42も、第3の実施形態と同様にサポートリンク45に牽引されて成形ドラム1の中央面CL方向に摺動する。
【0045】
折り返しアーム44の先端の折り返しローラ46が、膨張したタイヤ構成部材50の側部に折り返したタイヤ構成部材50に当接した後、折り返しローラ46を拡開して折り返した部分をタイヤ側面に押し付ける。
本実施形態では、第3の実施形態と同様に、サポートリンク45により折り返しアーム44の軸方向に押圧力を発生するため、タイヤ側面が平面或いは逆テーパー状を呈する場合であっても、タイヤ構成部材50を折り返して貼り付けることができる。
【0046】
この第4の実施形態においても、アーム支持部材42の移動速度は成形ドラム1の回転速度を変更することで容易に調整可能である。即ち、ここでは、成形ドラム1の回転速度(つまり成形ドラム1を駆動する、例えばステッピングモータの回転速度)を変更することで、その変更に応じてアーム支持部材42の移動速度を変更することができる。
したがって、本実施形態によっても、タイヤ構成部材50の折り返し工程を最適な状態で実行することができ、とくにビードフィラー部材21の周りで折り返したタイヤ構成部材50の押し付けを十分に行うことができる。そのため従来のように品質不良を起こす虞がない。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態の作動制御手段は、既存の折り返し手段付きの成形ドラムに対して、わずかな構成変更を施すことで互換性をもって容易に適用可能である。
また、いずれもステッピングモータなどの速度制御が容易なモータの速度制御を行うだけで、折り返しアーム44による折り返し作業の作業速度を自由に変更可能であり、折り返しアーム44を任意の位置で停止することも逆進させることも可能であるので、タイヤ成形を最適な条件で行うことができる。また、作動制御手段を外付けとしたため、ドラム主軸内に収容する場合に比してスペースの制約がなく、したがってスペースから来る強度不良の問題も解消することができる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・成形ドラム、10・・・ドラム主軸、10a・・・スリット、12・・・ねじ軸、12a・・・ねじ部、20・・・ビードコア、21・・・ビードフィラー部材、22・・・ビードロック手段、24・・・連結ブロック、24a・・・ナット部材、26・・・リンク、30・・・側部リング、30a・・・ねじ部、35・・・従動リング、35a・・・歯、36・・・ブレーキディスク、40・・・折り返し手段、42・・・アーム支持部材、42a・・・ねじ部、44・・・折り返しアーム、45・・・サポートリンク、46・・・折り返しローラ、50・・・タイヤ構成部材、60・・・駆動機構、61〜65・・・第1〜第5歯車、70・・・ブレーキキャリパ、75・・・スライダ、M・・・ステッピングモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ構成部材の折り返し手段を備えた成形ドラムと、前記成形ドラムの軸方向両端部にそれぞれ備えられた側部リングと、折り返しアームを枢着したアーム支持部材を作動する作動手段と、前記側部リングまたは前記アーム支持部材を作動する作動手段の何れか一方にモータ駆動力を付与して、前記側部リング及び前記作動手段に相対変位を発生させる作動制御手段と、
を有し、
前記折り返しアームは、膨張させたタイヤ構成部材をビードコアの周りで折り返して押し付けて未加硫タイヤを製造するタイヤ製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたタイヤ製造装置であって、
前記側部リングは軸方向外側端部に従動リングを有し、
前記作動手段は、前記側部リングの外周面に設けたねじ部に螺合するねじ部を内周面に備えた前記アーム支持部材を備え、
前記作動制御手段は、前記成形ドラムの回転停止中、前記従動リングに回転駆動力を伝達する駆動機構を備えたタイヤ製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたタイヤ製造装置であって、
前記側部リングは軸方向外側端部にブレーキディスクを有し、
前記作動手段は、前記側部リングの外周面に設けたねじ部に螺合するねじ部を内周面に備えた前記アーム支持部材を備え、
前記作動制御手段は、前記ブレーキディスクに係合して、前記成形ドラムの回転中前記ブレーキディスクの回転を拘束するブレーキキャリパを備えたタイヤ製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたタイヤ製造装置であって、
前記側部リングは軸方向外側端部に従動リングを有し、
前記作動手段は、前記側部リングの内周面に設けたねじ部に螺合するねじ部を外周面に備えたスライダと、前記アーム支持部材に枢着されたアームと、前記スライダに枢着され、前記アームの端部間に枢着されたサポートリンクを備え、
前記作動制御手段は、前記成形ドラムの回転停止中、前記従動リングに回転駆動力を伝達する駆動機構を備えたタイヤ製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載されたタイヤ製造装置であって、
前記側部リングは軸方向外側端部にブレーキディスクを有し、
前記作動手段は、前記側部リングの内周面に設けたねじ部に螺合するねじ部を外周面に備えたスライダと、前記アーム支持部材に枢着されたアームと、一端部が前記スライダに枢着され、他端部が前記折り返しアームの端部間に枢着されたサポートリンクを備え、
前記作動制御手段は、前記ブレーキディスクに係合して、前記成形ドラムの回転中前記ブレーキディスクの回転を拘束するブレーキキャリパを備えたタイヤ製造装置。
【請求項6】
請求項2又は4に記載されたタイヤ製造装置であって、
前記従動リングはその外周に歯車部を備え、
前記駆動機構は駆動用のモータと、前記歯車部に噛合して前記従動リングを回転駆動する歯車伝動部を備えたタイヤ製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたタイヤ製造装置であって、
前記駆動機構は、前記歯車部に噛合して前記側部リングを回転駆動する駆動位置と、前記歯車部から離れた待機位置間で移動可能であるタイヤ製造装置。
【請求項8】
請求項3又は5に記載されたタイヤ製造装置であって、
前記ブレーキキャリパは、前記ブレーキディスクの回転を拘束する動作位置と、
拘束を解除する待機位置間で移動可能であるタイヤ製造装置。
【請求項9】
軸方向両端部にそれぞれ側部リングを備えた成形ドラムを用い、膨張させたタイヤ構成部材を折り返しアームでビードコアの周りで折り返しかつ押し付けるタイヤ製造方法であって、
前記側部リングまたは前記折り返しアームが枢着されたアーム支持部材の何れか一方にモータ駆動力を付与し、前記側部リング及びアーム支持部材を作動する作動手段を相対変位させる工程と、
前記相対変位に基づき、前記折り返しアームを成形ドラムの中央面方向に移動して前記タイヤ構成部材を折り返す工程と、
を有するタイヤ製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたタイヤ製造方法であって、
前記相対変位させる工程は、前記側部リングの外周面に設けたねじ部と、前記ねじ部に前記アーム支持部材の内周面に備えたねじ部を螺合させる工程と、
前記成形ドラムの回転停止中、前記側部リングの軸方向外側端部に設けた従動リングに回転駆動力を伝達する工程と、
を有するタイヤ製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載されたタイヤ製造方法であって、
前記相対変位させる工程は、前記側部リングの外周面に設けたねじ部と、前記ねじ部に前記アーム支持部材の内周面に備えたねじ部を螺合させる工程と、
前記側部リングの軸方向外側端部に設けたブレーキディスクにブレーキキャリパを係合して、前記成形ドラムの回転中前記ブレーキディスクの回転を拘束する工程と、
を有するタイヤ製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載されたタイヤ製造方法であって、
前記相対変位させる工程は、前記側部リングの内周面に設けたねじ部にスライダの外周面に設けたスライダのねじ部を螺合させる工程と、
前記成形ドラムの回転停止中、前記側部リングの軸方向外側端部に設けた従動リングに回転駆動力を伝達する工程と、前記スライダに枢着され前記アームの端部間に枢着されたサポートリンクで前記アーム支持部材を牽引する工程と、
を有するタイヤ製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載されたタイヤ製造方法であって、
前記相対変位させる工程は、前記側部リングの内周面に設けたねじ部にスライダの外周面に設けたスライダのねじ部を螺合させる工程と、
前記側部リングの軸方向外側端部に設けたブレーキディスクに、ブレーキキャリパを係合して前記成形ドラムの回転中前記ブレーキディスクの回転を拘束する工程と、
前記スライダに枢着されかつ前記アームの端部間に枢着されたサポートリンクで前記アーム支持部材を牽引する工程と、
を有するタイヤ製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−56445(P2013−56445A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195302(P2011−195302)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】