説明

タイル貼りパネル及びその設置方法

【課題】ボウウィンドウやボウバルコニーなどの鈍角となる出隅部に容易に配置できるタイル貼りパネルを提供する。
【解決手段】板状のパネル本体22とその表面に貼り付けられる複数枚のタイル21,・・・とを備えたタイル貼りパネル2である。
そして、パネル本体は、内角が鈍角になるように屈曲されるとともに、その両側縁に取付部23,23が形成されており、取付部を介してタッピンビス4によって外壁側下地材13に固定される。
ここで、取付部23は、外壁側下地材13の形状に対して先端が離隔する形状に成形されるとともに、タッピンビス4によって外壁側下地材に沿って固定されるように構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のタイルが貼り付けられたタイル貼りパネル、及びその設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁にタイルを貼り付ける際に、予め工場で複数枚のタイルを貼り付けたパネルを製作し、現場での施工を省力化する工法が知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
また、特許文献1には、外壁が直交する出隅部に配置される、防水性能に優れた軽量のタイル貼りパネルが開示されている。
【特許文献1】特許第3020288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、サンルーム、出窓、バルコニーなどを弓形に張り出させて、外観を際立たせるとともに、雰囲気のある室内空間を形成するボウウィンドウやボウバルコニーが知られている。
【0005】
これらのボウウィンドウやボウバルコニーには、直角にならない出隅部が発生することになり、そのような出隅部に配置するためのタイル貼りパネルが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、ボウウィンドウやボウバルコニーなどの鈍角となる出隅部に容易に配置できるタイル貼りパネル、及びその設置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のタイル貼りパネルは、板状のパネル本体とその表面に貼り付けられる複数枚のタイルとを備えたタイル貼りパネルであって、前記パネル本体は、内角が鈍角になるように屈曲されるとともに、その両側縁に取付部が形成されており、前記取付部を介して固定手段によって被取付部に固定されることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記取付部は、前記被取付部の形状に対して先端が離隔する形状に成形されるとともに、前記固定手段によって前記被取付部に沿って固定されるように構成することができる。
【0009】
また、前記パネル本体の両側縁には、前記タイルが貼り付けられる面に略直交する長尺状の縁部が延設され、前記取付部は、その縁部に対して前記パネル本体の外側に向けて屈曲されている構成としてもよい。
【0010】
さらに、前記取付部の外側に前記固定手段による固定の後に嵌合される見切りカバーを備えることができる。
【0011】
また、本発明のタイル貼りパネルの設置方法は、上記いずれかのタイル貼りパネルを取り付けるタイル貼りパネルの設置方法であって、前記被取付部に対して前記取付部を外側に開いた状態で前記タイル貼りパネルを嵌める工程と、前記取付部を内側に変形させて前記固定手段によって前記被取付部に固定する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明のタイル貼りパネルは、内角が鈍角になるようにパネル本体が屈曲されており、その表面に複数枚のタイルが貼り付けられている。また、パネル本体の両側縁には取付部が形成されている。
【0013】
このため、表面にタイルが貼り付けられたパネルを、被取付部に取付部を介して固定手段で固定するだけで、容易に鈍角となる出隅部にタイルを貼った外壁を設けることができる。
【0014】
また、取付部の形状を、被取付部の形状に対して先端が離隔する形状に成形しておくことで、タイル貼りパネルを容易に被取付部に嵌めることができる。
【0015】
特に、パネル本体の側縁に縁部を設けることによって、パネル本体の剛性を高めることができるので、タイル貼りパネルを軽量化することができる。
【0016】
さらに、外側に露出する取付部に対して、見切りカバーを配置することによって、その露出部を覆い隠して外観を良くすることができる。
【0017】
また、取付部を外側に開いた状態でタイル貼りパネルを嵌める工程と、取付部を内側に変形させて被取付部に固定する工程とによってタイル貼りパネルを設置する方法であれば、被取付部を傷つけることなく、迅速にタイル貼りパネルを設置することができるうえに、タイル貼りパネルを確実に被取付部に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図2は、本実施の形態のタイル貼りパネル2,5を出隅部に取り付けるサンルーム1の斜視図である。
【0020】
このサンルーム1は、窓部11,・・・を多角形に配置することによって弓形に張り出したボウウィンドウが形成されている。
【0021】
また、サンルーム1の屋根は、二等辺三角形状の屋根パネル12,・・・によって多角形に形成されており、その形状に沿って窓部11,・・・が配置されている。そして、窓部11,11間には、平面視山形のタイル貼りパネル2が取り付けられ、サンルーム1の側縁に配置された窓部11に隣接して平面視へ字形のタイル貼りパネル5が取り付けられる。
【0022】
図1は、この平面視山形のタイル貼りパネル2を、窓部11,11間に取り付けた構成を示した断面図である。
【0023】
まず、構成から説明すると、このタイル貼りパネル2は、図3,4に示すように、複数枚のタイル21,・・・と、それらを表面に貼り付ける板状のパネル本体22と、パネル本体22の裏側に取り付けられる裏打ち材24,24と、パネル本体22の側縁に形成される取付部23と、その取付部23を覆う見切りカバー25(図1参照)とから主に構成されている。
【0024】
このパネル本体22は、アルミ板などを折り曲げて平面視山形に成形されており、その略中央に設置時の上下方向に延設される屈曲部22aは、図1,4に示すように、内角が90度より広く180度より狭い鈍角に形成されている。そして、複数枚のタイル21,・・・は、このパネル本体22の表面に接着剤で貼り付けられている。
【0025】
また、パネル本体22の裏面には、屈曲部22aを挟んだ2面に裏打ち材24,24が取り付けられる。この裏打ち材24,24は、例えば防水性の合板である。
【0026】
さらに、図4及び図3(b)に示すように、平面視山形のパネル本体22の両側縁には、タイル21,・・・が貼り付けられる面に略直交する長尺状の縁部22b,22bが上下方向に延設されている。
【0027】
また、その縁部22bには、図3(b)に示すように、設置する際に上下方向となる方向に間隔を置いて、複数の片が取付部23,・・・として設けられている。
【0028】
さらに、この取付部23には、固定手段としてのネジ状部材であるタッピンビス4を挿通させるためのビス穴23aが穿孔されている。
【0029】
また、取付部23,23は、図4に示すように、縁部22b,22bからその突出方向よりもパネル本体22の外側に向けて開くように屈曲されている。
【0030】
さらに、縁部22bの取付部23,23間には、図3(b)に示すように、見切りカバー25を嵌合させる取付金具25aを取り付けるための金具用切欠き25cが形成されている。
【0031】
このように形成されたタイル貼りパネル2は、図1に示すように、窓部11,11間の出隅部に配置される。このタイル貼りパネル2を取り付けるサンルーム1側の被取付部としての外壁側下地材13は、硬質木片セメント板によって、出隅部の下地となる平面視山形の面とその両側縁の袖部13a,13aとによって平面視王冠状に形成されている。
【0032】
また、この外壁側下地材13は、集成材などによって構成される支柱部14に取り付けられ、その支柱部14の室内側には内壁材15が貼り付けられている。
【0033】
そして、タイル貼りパネル2の取付部23は、図1の右側の窓部11との間に図示したように、タッピンビス4によって袖部13aに固定されている。
【0034】
また、縁部22bの金具用切欠き25cには、図1の左側の窓部11との間に図示したように、取付金具25aが配置され、袖部13aに取付ビス25bによって固定されている。そして、取付金具25aの爪に外側から見切りカバー25の裏面の爪を嵌合させることによって、タイル貼りパネル2の両側縁を見切りカバー25,25によって被覆する。
【0035】
また、窓部11の下部には水切り材3が取り付けられている。
【0036】
一方、図2の右側に示したように、サンルーム1の側縁の窓部11と建物本体(図示せず)との間には、平面視へ字形のタイル貼りパネル5と見切りカバー55が取り付けられる。
【0037】
このタイル貼りパネル5は、図5に示すように、平面視逆へ字形に折り曲げられたパネル本体52と、その表面に接着剤で貼り付けられる複数枚のタイル51,・・・と、パネル本体52の裏面に取り付けられる裏打ち材54,54と、パネル本体52の縁部52b,52bに設けられる取付部531,532とを備えている。
【0038】
この取付部531は、上述したタイル貼りパネル2の取付部23と同様に、縁部52bからパネル本体52の外側に向けて屈曲されている。他方、図5の左側に示した取付部532は、縁部52bから直角に折り曲げられて建物本体側に固定できるようになっている。また、これらの取付部531,532には、固定手段としてのタッピンビス4を挿通させるためのビス穴53a,53aがそれぞれ穿孔されている。
【0039】
次に、本実施の形態のタイル貼りパネル2の設置方法について、図6を参照しながら説明する。
【0040】
まず、工場で上述したタイル貼りパネル2を製作する。そして、同じく工場において、図2に示すように、サンルーム1の窓部11,・・・、屋根パネル12,・・・などを組み立てる。
【0041】
そして、図6(a)は、窓部11,11間に設けられる平面視王冠状の外壁側下地材13に、タイル貼りパネル2を嵌める工程を説明する図である。
【0042】
このタイル貼りパネル2は、外壁側下地材13の正面から水平移動させて嵌めることになるが、このとき、取付部23,23が外壁側下地材13の外形よりも開いた状態であるため、取付部23,23の先端が外壁側下地材13の表面に当接することがなく、スムーズに嵌めることができる。
【0043】
そして、図6(b)に示すように、取付部23,23のビス穴23a,23aに向けてタッピンビス4,4をそれぞれ打ち込み、取付部23,23を二点鎖線で示すように外壁側下地材13側に変形させて、袖部13a,13aに沿って固定をおこなう(図1の右側部分参照)。
【0044】
次に、本実施の形態のタイル貼りパネル2,5、及びその設置方法の作用について説明する。
【0045】
このように構成された本実施の形態のタイル貼りパネル2,5は、平面視で内角が鈍角になるようにパネル本体22,52が屈曲されて屈曲部22a,52aが形成されており、その表面に複数枚のタイル21,51が貼り付けられている。また、パネル本体22,52の両側縁には、取付部23,531,532が形成されている。
【0046】
このため、表面にタイル21,51が貼り付けられたパネルを、外壁側下地材13の袖部13aなどに取付部23,531,532を介してタッピンビス4で固定するだけで、容易に鈍角となる出隅部にタイル21,51を貼った外壁を設けることができる。
【0047】
また、取付部23,531,532の形状を、外壁側下地材13などの形状に対して先端が離隔する形状に成形しておくことで、タイル貼りパネル2,5を容易に外壁側下地材13などに嵌めることができる。
【0048】
すなわち、取付部23,531が、縁部22b,52bと同じ方向に延設されていると、平面視王冠状の外壁側下地材13に嵌める際に、取付部23,531の先端との隙間が少なく、施工誤差などがあれば、取付部23,531の先端が外壁側下地材13に当たって、設置が困難になったり、外壁側下地材13を傷つけたりするおそれがある。
【0049】
これに対して、取付部23,531,532の形状を、外壁側下地材13などの形状に対して先端が離隔する形状に成形しておけば、取付部23,531,532がガイドになって、外壁側下地材13を傷つけることなく容易にタイル貼りパネル2,5を嵌めることができる。
【0050】
特に、パネル本体22,52の側縁に縁部22b,52bを設けることによって、パネル本体22,52の剛性を高めることができるので、パネル本体22,52の板厚を薄くしてタイル貼りパネル2,5を軽量化することができる。
【0051】
さらに、固定手段がタッピンビス4などのネジ状部材である場合は、外側から取付部23,531を固定した場合にネジ頭部などが外部に露出することになるが、見切りカバー25,55を配置することによって、タッピンビス4の頭部などを覆い隠して外観を良くすることができる。
【0052】
また、取付部23,531を外側に開いた状態でタイル貼りパネル2,5を嵌める工程と、取付部23,531を内側に変形させて外壁側下地材13に固定する工程とによってタイル貼りパネル2,5を設置する方法であれば、外壁側下地材13を傷つけることなく、迅速にタイル貼りパネル2,5を設置することができるうえに、取付部23,531を密着させるなどしてタイル貼りパネル2,5を確実に外壁側下地材13に固定することができる。
【0053】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0054】
例えば、前記実施の形態では、片状の取付部23,531,532を間隔を置いて複数設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば長尺状の縁部22b,52bを穿孔して取付部としてもよい。
【0055】
また、前記実施の形態では、固定手段としてタッピンビス4について説明したが、これに限定されるものではなく、ボルト、釘、接着剤、ステプラーなどを固定手段として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の最良の実施の形態のタイル貼りパネルを設置した構成を説明する断面図である。
【図2】サンルームにタイル貼りパネルを設置する工程を説明する斜視図である。
【図3】(a)はタイル貼りパネルの正面図、(b)はタイル貼りパネルの側縁を見た側面図である。
【図4】タイル貼りパネルを図3(a)のA−A矢視方向で見た断面図である。
【図5】サンルームの側縁に配置されるタイル貼りパネルの構成を示した断面図である。
【図6】タイル貼りパネルの設置方法を説明する図であって、(a)はタイル貼りパネルを嵌める工程の説明図、(b)は取付部を被取付部に固定する工程の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
13 外壁側下地材(被取付部)
2,5 タイル貼りパネル
21,51 タイル
22,52 パネル本体
22a,52a 屈曲部
23,531 取付部
4 タッピンビス(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のパネル本体とその表面に貼り付けられる複数枚のタイルとを備えたタイル貼りパネルであって、
前記パネル本体は、内角が鈍角になるように屈曲されるとともに、その両側縁に取付部が形成されており、前記取付部を介して固定手段によって被取付部に固定されることを特徴とするタイル貼りパネル。
【請求項2】
前記取付部は、前記被取付部の形状に対して先端が離隔する形状に成形されるとともに、前記固定手段によって前記被取付部に沿って固定されることを特徴とする請求項1に記載のタイル貼りパネル。
【請求項3】
前記パネル本体の両側縁には、前記タイルが貼り付けられる面に略直交する長尺状の縁部が延設され、前記取付部は、その縁部に対して前記パネル本体の外側に向けて屈曲されていることを特徴とする請求項1に記載のタイル貼りパネル。
【請求項4】
前記取付部の外側に前記固定手段による固定の後に嵌合される見切りカバーを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のタイル貼りパネル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のタイル貼りパネルを取り付けるタイル貼りパネルの設置方法であって、
前記被取付部に対して前記取付部を外側に開いた状態で前記タイル貼りパネルを嵌める工程と、
前記取付部を内側に変形させて前記固定手段によって前記被取付部に固定する工程とを備えたことを特徴とするタイル貼りパネルの設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−74329(P2009−74329A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246763(P2007−246763)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】