タイル
【課題】 壁面に対して直角方向に施工するタイルで、壁面への施工が容易であり、壁面からの剥離の問題を小さくすることができるタイルを提供する。
【解決手段】 タイルAは、複数の個別タイル20から構成されるタイル本体10と、タイル本体10を構成する複数の個別タイル20を結束する結束具40とを有し、タイル本体10は、結束具40によってタイルAの背面側で結束された状態となっている。個別タイル20には、穴部24と、溝部26とが形成されている。結束具40は、金属製の線状部材により形成されている。
【解決手段】 タイルAは、複数の個別タイル20から構成されるタイル本体10と、タイル本体10を構成する複数の個別タイル20を結束する結束具40とを有し、タイル本体10は、結束具40によってタイルAの背面側で結束された状態となっている。個別タイル20には、穴部24と、溝部26とが形成されている。結束具40は、金属製の線状部材により形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルに関するものであり、特に、外壁に使用するタイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外壁に使用するタイルは種々存在するが、その中でも、図13に示すように、タイルを壁面に対して直角方向に立設させた状態で施工して使用するタイルが存在する。
【0003】
つまり、タイルは、壁面に対して平行に施工するのが一般的であるが、図13に示す構成においては、タイルBは、その長辺側の端面を壁面H側としてモルタルMにより壁面Hに施工して、壁面に対して直角に施工したものである。このような構成とすることにより、隣接するタイル間の溝部の深さを深くすることができ、奥行き感のある壁面を構築することができる。
【0004】
なお、出願人は、先行技術文献の調査は行っておらず、記載すべき先行技術文献は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図13のような壁面を構成するには、タイルBを1つずつ壁面に施工していかなければならず施工が面倒であるという問題があった。また、タイルBは、端部領域において壁面側と固着されているのみであり、壁面との固着領域が小さいため、壁面から剥離するおそれがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする問題点は、壁面に対して直角方向に施工するタイルで、壁面への施工が容易であり、壁面からの剥離の問題を小さくすることができるタイルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、タイルであって、
複数の個別タイルを積層してなるタイル本体で、各個別タイルが厚み方向に貫通する穴部を有するタイル本体と、
該タイル本体を構成する個別タイルを束ねて結束するための結束具で、各個別タイルの穴部に挿通された結束具と、
を有することを特徴とする。
【0008】
この第1の構成のタイルにおいては、個別タイルが結束具によって束ねた状態となっているので、複数の個別タイルを同時に被施工面に施工することができ、個別タイルを個々に施工する必要がないので、施工を容易に行うことができる。また、タイルが被施工面に施工された状態では、各個別タイルは、被施工面に接着されているのみならず、他の個別タイルとともに結束されているので、ある個別タイルが被施工面から剥離した場合でも、落下を防止することが可能となる。なお、個別タイルは、略板状を呈するものとするのが好ましい。
【0009】
また、第2には、上記第1の構成において、上記タイル本体の正面側において、隣接する個別タイル間に溝部が形成されていることを特徴とする。よって、タイルにおけるタイル本体は個別タイルを積層した構造となっているので、個別タイル間に形成された溝部を深くすることができ、奥行き感のあるタイルを創造することができる。
【0010】
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、上記個別タイルが、板状(帯板状としてもよい)を呈し、上記穴部が設けられた基端部と、該基端部から正面側に突出して形成された突出部と、を有し、タイルにおける隣接する個別タイルにおける突出部間に溝部が形成されていることを特徴とする。よって、タイルにおけるタイル本体は個別タイルを積層した構造となっているので、個別タイル間に形成された溝部を深くすることができ、奥行き感のあるタイルを創造することができる。
【0011】
なお、第3の構成の変形例として以下の構成としてもよい。すなわち、「上記個別タイルが、帯板状を呈し、上記穴部が設けられた基端部と、該基端部から正面側に突出して形成された突出部で、該基端部の厚み方向の幅よりも小さい厚み方向の幅を有する突出部と、を有し、タイルにおける隣接する個別タイルにおける突出部間に溝部が形成されていることを特徴とする。」とする。また、上記第3の構成及び第3の構成の変形例において、基端部の上面と下面と背面と左側面と右側面とは平面状であることが好ましい
また、第4には、上記第1から第3までのいずれかの構成において、上記個別タイルの背面側に結束具を収納するための溝部が設けられていることを特徴とする。これにより、各個別タイルの溝部がつながって構成される溝部内に結束具を納めることができ、結束具が背面側に突出しないので、施工の邪魔になることがない。
【0012】
また、第5には、上記第4の構成において、上記個別タイルの上面と下面には、上記穴部と上記溝部間をつなぐ第2溝部が設けられていることを特徴とする。これにより、タイルの上面側と下面側においても、結束具を第2溝部内に納めることができ、結束具が上面側と下面側に突出しないので、施工の邪魔になることがない。
【0013】
また、第6には、上記第1から第5までのいずれかの構成において、上記結束具が、線状部材から構成され、該線状部材の両端を接続することにより該線状部材がループ状にされて、個別タイルを束ねて結束していることを特徴とする。これにより、複数の個別タイルを束ねて結束することができる。なお、該結束具を構成する線状部材は金属製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に基づくタイルによれば、個別タイルが結束具によって束ねた状態となっているので、複数の個別タイルを同時に被施工面に施工することができ、個別タイルを個々に施工する必要がないので、施工を容易に行うことができる。また、タイルが被施工面に施工された状態では、各個別タイルは、被施工面に接着されているのみならず、他の個別タイルとともに結束されているので、ある個別タイルが被施工面から剥離した場合でも、落下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明においては、壁面に対して直角方向に施工するタイルで、壁面への施工が容易であり、壁面からの剥離の問題を小さくすることができるタイルを提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0016】
本発明に基づくタイルAは、図1〜図7に示されるように構成され、タイル本体10と、結束具(結束部としてもよい)40とを有している。なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。
【0017】
ここで、タイル本体10は、複数の個別タイル20を積層したものであり、図1〜図3の例では、8個の個別タイル20が積層されている。
【0018】
個別タイル20は、略帯状の略板状を呈し、基端部22と、突出部30とを有している。この基端部22は、帯板状を呈し、上面(Z2側)と下面(Z1側)と背面側(Y2側)と左側面側(X1)と右側面側(X2側)は、平面状に形成されている。すなわち、基端部22の上面と下面は、個別タイル20を積層しやすいように平面状に形成され、また、基端部22の背面は、被施工面に対する施工を容易とするため平面状に形成され、また、左側面と右側面とは、隣接するタイルAと隙間なく施工できるように平面状に形成されている。また、基端部22の正面側は、テーパ状に突出しており、その部分は断面略台形形状となっている。つまり、基端部22の断面は、方形状と台形形状とを合わせた形状となっている。
【0019】
この基端部22には、穴部24が形成されている。この穴部24は、基端部22の上面と下面とを貫通する貫通穴であり、いわば厚み方向に貫通する貫通穴である。この穴部24は、基端部22の長さ方向(X1−X2方向)に略中央で、幅方向(Y1−Y2)にも略中央の位置に設けられている。また、穴部24の径は、任意であるが、結束具40を挿通可能な大きさに形成されている。また、穴部24の横断面形状は円形であるが、他の形状(例えば、四角形状等)であってもよい。
【0020】
また、基端部22の背面側には、溝部26が形成されている。これは、結束具40で結束した場合に、結束具40がタイル本体10の背面から突出しないように形成されたものであり、この溝部26の形成位置は、穴部24に対応する位置、すなわち、長さ方向(X1−X2方向)において同じ位置、つまり、基端部22の長さ方向に略中央の位置に形成されている。溝部26の断面形状は任意であるが、図の例では、半円形状に形成されている。なお、溝部26の断面形状は他の形状(例えば、四角形状等)であってもよい。
【0021】
また、突出部30は、基端部22の正面側から突出して形成され、その厚みβは、基端部22の厚みαよりも小さく形成されている。この突出部30は、板状に形成されているが、その先端の外形は、図4〜図6等に示すように、波状に形成されている。また、突出部30の断面の先端は、図7等に示すように、テーパ状に形成され尖った形状を呈している。
【0022】
なお、タイル本体10を構成する各個別タイル20は同様の構成であり、特に、個別タイル20における基端部22の構成は同様で、穴部24や溝部26の形成位置は、同じ位置に形成されている。なお、図1〜図3の例では、タイル本体10を構成する各個別タイル20の突出部30は同様の構成として説明したが、波状の形状を各個別タイル20ごとに異なる形状とすることによりタイルAの正面側の形状を面白く表現することができる。なお、積層する個別タイル20において、1つおきに同一の形状の(つまり、突出部30の波形状も同じである)個別タイル20を配設してもよい。これにより、隣接する個別タイル20においては、波形状が異なり、タイルAの正面側の形状を面白く表現することができる。
【0023】
また、結束具40は、金属製の線状部材(具体的には、針金)により形成され、タイル本体10を構成する各個別タイル20の穴部24に挿通した後に、該線状部材の両端部を接続して繋げたものである。結束具40の両端部を接続するに当たっては、両側の先端部分を平行に揃えた状態で捻って接続部42を構成することにより行われている。以上のようにして、タイルAの背面側において、個別タイル20が束ねられて、タイル本体10が結束具40により結束された状態となっている。この接続部42は、各個別タイル20の溝部26がつながって構成される溝部内に納めることにより、この接続部42がタイルAの背面側に突出しないようにしている。
【0024】
上記構成のタイルAの製造工程を簡単に説明すると、まず、個別タイル20を製造する。個別タイル20の製造に当たっては、各個別タイル20の素地を成形した(例えば、成形型により成形する)後に焼成することにより製造する方法もあるが、図8に示すように、2つの個別タイルを対向された状態のタイル素体を成形した後に焼成して、分割前のタイル素体Sを製造し、その後、波状の分割線を介して分割する方法も考えられる。なお、該タイル素体の成形に当たっては、成形型により成形してもよいし、押出し成形によりその断面形状がタイル素体の断面形状を有する部材を成形し、その後、穴部24と溝部26とを構成するようにしてもよい。また、タイル素体を焼成してから分割するとしたが、焼成前に分割して、その後、焼成してもよい。
【0025】
個別タイル20を製造したら、図9に示すように、複数の(図9の例では、8つ)個別タイル20を積層した状態とする。つまり、ここで、1つのタイルにおいて、個別タイル20は同一の形状の個別タイルを用いてもよいし、異なる形状の個別タイルを用いてもよい。つまり、個別タイル20の突出部30の形状を含めて同一の個別タイルを用いてもよいし、突出部30の形状が異なる個別タイルを用いてもよい。例えば、図8の例では、1つのタイル素体から2つの個別タイルが製造されるが、突出部30の波形状が異なるので、同一の形状の個別タイルを用いる場合には、タイル素体から形成された2つの個別タイルのうちの一方のみを集めてタイル本体10を構成することになる。
【0026】
複数の個別タイル20を積層させたら、図10に示すように、結束具40を各個別タイル20の穴部24に通す。つまり、穴部24は、各個別タイル20において同じ位置に形成されているので、容易に結束具40を通すことができる。なお、この場合の結束具40は、直線状の状態のものを用いるのが好ましい。
【0027】
次に、結束具40の両側をタイル本体10の背面側に曲げて、結束具40の両端を対向させ、両側の先端部分を平行に揃えた状態で捻って接続部42を構成して、結束具40をループ状に形成して、図11に示すように、タイル本体10を構成する複数の個別タイル20を束ねて結束した状態とする。なお、結束具40は、タイルAの背面側においては、個別タイル20に構成された溝部26がつながって構成された溝部内に収納させて、結束具40がタイルAの背面側に突出しないようにする。以上のようにして、上記構成のタイルAが製造される。
【0028】
上記構成のタイルAを施工する際には、タイルAの背面側(すなわち、図面におけるY2側)を被施工面側(例えば、壁面側)として施工する。つまり、被施工面とタイルAの背面間に接着剤又はモルタルを設けて被施工面にタイルAを接着させる。
【0029】
また、複数のタイルAの施工状態としては、隣接するタイルA同士を接した状態として、隣接するタイルA間の隙間を形成せずに施工してもよいし、隣接するタイルA間に隙間を形成して、隣接するタイルA間に目地を形成するようにしてもよい。
【0030】
なお、タイルAを被施工面に施工する際に、タイルAにおける個別タイル20には、溝部26が設けられているので、各個別タイル20の溝部26がつながって構成される溝部内に結束具40を納めることができ、結束具40が背面側に突出しないので、施工の邪魔になることがない。
【0031】
上記構成のタイルAによれば、個別タイル20が結束具40によって束ねた状態となっているので、複数の個別タイル20を同時に被施工面に施工することができ、個別タイル20を個々に施工する必要がないので、施工を容易に行うことができる。
【0032】
また、タイルAが被施工面に施工された状態では、各個別タイル20は、被施工面に接着されているのみならず、他の個別タイル20とともに結束されているので、ある個別タイル20が被施工面から剥離した場合でも、落下を防止することが可能となる。
【0033】
また、上記構成のタイルAにおいては、個別タイル20間(具体的には、個別タイル20の突出部30間)に形成される溝部50(図3参照)を深くすることができ、奥行き感のある壁面を構築することができる。
【0034】
特に、タイルAのように深い溝部50を有するタイルを1枚もののタイルとして形成するのは不可能であり、本実施例のタイルAによれば、そのような深い溝部を形成しつつ、全体に1つのタイルとして扱うことができるので、その点で特に至便であるといえる。
【0035】
なお、本実施例のタイルAは、上記の構成であるとして説明したが、図12に示すように、穴部24と溝部26の間に、穴部24と溝部26とをつなぐ溝部(第2溝部)28を形成するようにしてもよい。つまり、個別タイル20の基端部22の上面と下面において、穴部24と溝部26とをつなぐ溝部28を形成する。つまり、溝部28は、基端部22の長手方向に直角方向に設けられる。このように溝部28を形成することにより、結束具40がタイルAの上面と下面において突出するのを防止することができ、隣接するタイルAと接した状態で施工する場合に、結束具40が支障になることがない。なお、溝部28の断面形状は任意であるが、図の例では、半円形状に形成されている。なお、溝部28の断面形状は他の形状(例えば、四角形状等)であってもよい。
【0036】
また、上記の説明においては、結束具40は、金属製の線状部材であるとしたが、金属製でなくてもよく(例えば、合成樹脂製でもよい)、また、結束具40は、複数の個別タイル20を束ねて結束できる部材であれば、他の構成であってもよい。
【0037】
また、上記の説明においては、結束具40を設けるために各個別タイル20に穴部24を設けるとして説明したが、穴部ではなく結束具40を係止するための切欠部を設けるようにしてもよい。つまり、鉤状の切欠部を設けて、この切欠部の最深部において結束具40を結束するようにしてもよい。
【0038】
また、個別タイル20の形状は、上記の形状には限らず、略板状を呈していて、上面と下面とを貫通する穴部24を有するとともに、背面側に溝部26が設けられている形状であれば、他の形状であってもよい。なお、この場合にも、穴部24と溝部26とをつなぐ溝部28を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に基づくタイルの前方斜視図である。
【図2】本発明の実施例に基づくタイルの後方斜視図である。
【図3】本発明の実施例に基づくタイルの側面図である。
【図4】個別タイルの前方斜視図である。
【図5】個別タイルの後方斜視図である。
【図6】個別タイルの平面図である。
【図7】個別タイルの側面図である。
【図8】個別タイルの製造方法の一例を示す説明図である。
【図9】タイルの組立て工程を示す斜視図である。
【図10】タイルの組立て工程を示す斜視図である。
【図11】タイルの組立て工程を示す斜視図である。
【図12】個別タイルの他の例を示す後方斜視図である。
【図13】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
A タイル
10 タイル本体
20 個別タイル
22 基端部
24 穴部
26、28、50 溝部
30 突出部
40 結束具
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルに関するものであり、特に、外壁に使用するタイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外壁に使用するタイルは種々存在するが、その中でも、図13に示すように、タイルを壁面に対して直角方向に立設させた状態で施工して使用するタイルが存在する。
【0003】
つまり、タイルは、壁面に対して平行に施工するのが一般的であるが、図13に示す構成においては、タイルBは、その長辺側の端面を壁面H側としてモルタルMにより壁面Hに施工して、壁面に対して直角に施工したものである。このような構成とすることにより、隣接するタイル間の溝部の深さを深くすることができ、奥行き感のある壁面を構築することができる。
【0004】
なお、出願人は、先行技術文献の調査は行っておらず、記載すべき先行技術文献は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図13のような壁面を構成するには、タイルBを1つずつ壁面に施工していかなければならず施工が面倒であるという問題があった。また、タイルBは、端部領域において壁面側と固着されているのみであり、壁面との固着領域が小さいため、壁面から剥離するおそれがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする問題点は、壁面に対して直角方向に施工するタイルで、壁面への施工が容易であり、壁面からの剥離の問題を小さくすることができるタイルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、タイルであって、
複数の個別タイルを積層してなるタイル本体で、各個別タイルが厚み方向に貫通する穴部を有するタイル本体と、
該タイル本体を構成する個別タイルを束ねて結束するための結束具で、各個別タイルの穴部に挿通された結束具と、
を有することを特徴とする。
【0008】
この第1の構成のタイルにおいては、個別タイルが結束具によって束ねた状態となっているので、複数の個別タイルを同時に被施工面に施工することができ、個別タイルを個々に施工する必要がないので、施工を容易に行うことができる。また、タイルが被施工面に施工された状態では、各個別タイルは、被施工面に接着されているのみならず、他の個別タイルとともに結束されているので、ある個別タイルが被施工面から剥離した場合でも、落下を防止することが可能となる。なお、個別タイルは、略板状を呈するものとするのが好ましい。
【0009】
また、第2には、上記第1の構成において、上記タイル本体の正面側において、隣接する個別タイル間に溝部が形成されていることを特徴とする。よって、タイルにおけるタイル本体は個別タイルを積層した構造となっているので、個別タイル間に形成された溝部を深くすることができ、奥行き感のあるタイルを創造することができる。
【0010】
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、上記個別タイルが、板状(帯板状としてもよい)を呈し、上記穴部が設けられた基端部と、該基端部から正面側に突出して形成された突出部と、を有し、タイルにおける隣接する個別タイルにおける突出部間に溝部が形成されていることを特徴とする。よって、タイルにおけるタイル本体は個別タイルを積層した構造となっているので、個別タイル間に形成された溝部を深くすることができ、奥行き感のあるタイルを創造することができる。
【0011】
なお、第3の構成の変形例として以下の構成としてもよい。すなわち、「上記個別タイルが、帯板状を呈し、上記穴部が設けられた基端部と、該基端部から正面側に突出して形成された突出部で、該基端部の厚み方向の幅よりも小さい厚み方向の幅を有する突出部と、を有し、タイルにおける隣接する個別タイルにおける突出部間に溝部が形成されていることを特徴とする。」とする。また、上記第3の構成及び第3の構成の変形例において、基端部の上面と下面と背面と左側面と右側面とは平面状であることが好ましい
また、第4には、上記第1から第3までのいずれかの構成において、上記個別タイルの背面側に結束具を収納するための溝部が設けられていることを特徴とする。これにより、各個別タイルの溝部がつながって構成される溝部内に結束具を納めることができ、結束具が背面側に突出しないので、施工の邪魔になることがない。
【0012】
また、第5には、上記第4の構成において、上記個別タイルの上面と下面には、上記穴部と上記溝部間をつなぐ第2溝部が設けられていることを特徴とする。これにより、タイルの上面側と下面側においても、結束具を第2溝部内に納めることができ、結束具が上面側と下面側に突出しないので、施工の邪魔になることがない。
【0013】
また、第6には、上記第1から第5までのいずれかの構成において、上記結束具が、線状部材から構成され、該線状部材の両端を接続することにより該線状部材がループ状にされて、個別タイルを束ねて結束していることを特徴とする。これにより、複数の個別タイルを束ねて結束することができる。なお、該結束具を構成する線状部材は金属製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に基づくタイルによれば、個別タイルが結束具によって束ねた状態となっているので、複数の個別タイルを同時に被施工面に施工することができ、個別タイルを個々に施工する必要がないので、施工を容易に行うことができる。また、タイルが被施工面に施工された状態では、各個別タイルは、被施工面に接着されているのみならず、他の個別タイルとともに結束されているので、ある個別タイルが被施工面から剥離した場合でも、落下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明においては、壁面に対して直角方向に施工するタイルで、壁面への施工が容易であり、壁面からの剥離の問題を小さくすることができるタイルを提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0016】
本発明に基づくタイルAは、図1〜図7に示されるように構成され、タイル本体10と、結束具(結束部としてもよい)40とを有している。なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。
【0017】
ここで、タイル本体10は、複数の個別タイル20を積層したものであり、図1〜図3の例では、8個の個別タイル20が積層されている。
【0018】
個別タイル20は、略帯状の略板状を呈し、基端部22と、突出部30とを有している。この基端部22は、帯板状を呈し、上面(Z2側)と下面(Z1側)と背面側(Y2側)と左側面側(X1)と右側面側(X2側)は、平面状に形成されている。すなわち、基端部22の上面と下面は、個別タイル20を積層しやすいように平面状に形成され、また、基端部22の背面は、被施工面に対する施工を容易とするため平面状に形成され、また、左側面と右側面とは、隣接するタイルAと隙間なく施工できるように平面状に形成されている。また、基端部22の正面側は、テーパ状に突出しており、その部分は断面略台形形状となっている。つまり、基端部22の断面は、方形状と台形形状とを合わせた形状となっている。
【0019】
この基端部22には、穴部24が形成されている。この穴部24は、基端部22の上面と下面とを貫通する貫通穴であり、いわば厚み方向に貫通する貫通穴である。この穴部24は、基端部22の長さ方向(X1−X2方向)に略中央で、幅方向(Y1−Y2)にも略中央の位置に設けられている。また、穴部24の径は、任意であるが、結束具40を挿通可能な大きさに形成されている。また、穴部24の横断面形状は円形であるが、他の形状(例えば、四角形状等)であってもよい。
【0020】
また、基端部22の背面側には、溝部26が形成されている。これは、結束具40で結束した場合に、結束具40がタイル本体10の背面から突出しないように形成されたものであり、この溝部26の形成位置は、穴部24に対応する位置、すなわち、長さ方向(X1−X2方向)において同じ位置、つまり、基端部22の長さ方向に略中央の位置に形成されている。溝部26の断面形状は任意であるが、図の例では、半円形状に形成されている。なお、溝部26の断面形状は他の形状(例えば、四角形状等)であってもよい。
【0021】
また、突出部30は、基端部22の正面側から突出して形成され、その厚みβは、基端部22の厚みαよりも小さく形成されている。この突出部30は、板状に形成されているが、その先端の外形は、図4〜図6等に示すように、波状に形成されている。また、突出部30の断面の先端は、図7等に示すように、テーパ状に形成され尖った形状を呈している。
【0022】
なお、タイル本体10を構成する各個別タイル20は同様の構成であり、特に、個別タイル20における基端部22の構成は同様で、穴部24や溝部26の形成位置は、同じ位置に形成されている。なお、図1〜図3の例では、タイル本体10を構成する各個別タイル20の突出部30は同様の構成として説明したが、波状の形状を各個別タイル20ごとに異なる形状とすることによりタイルAの正面側の形状を面白く表現することができる。なお、積層する個別タイル20において、1つおきに同一の形状の(つまり、突出部30の波形状も同じである)個別タイル20を配設してもよい。これにより、隣接する個別タイル20においては、波形状が異なり、タイルAの正面側の形状を面白く表現することができる。
【0023】
また、結束具40は、金属製の線状部材(具体的には、針金)により形成され、タイル本体10を構成する各個別タイル20の穴部24に挿通した後に、該線状部材の両端部を接続して繋げたものである。結束具40の両端部を接続するに当たっては、両側の先端部分を平行に揃えた状態で捻って接続部42を構成することにより行われている。以上のようにして、タイルAの背面側において、個別タイル20が束ねられて、タイル本体10が結束具40により結束された状態となっている。この接続部42は、各個別タイル20の溝部26がつながって構成される溝部内に納めることにより、この接続部42がタイルAの背面側に突出しないようにしている。
【0024】
上記構成のタイルAの製造工程を簡単に説明すると、まず、個別タイル20を製造する。個別タイル20の製造に当たっては、各個別タイル20の素地を成形した(例えば、成形型により成形する)後に焼成することにより製造する方法もあるが、図8に示すように、2つの個別タイルを対向された状態のタイル素体を成形した後に焼成して、分割前のタイル素体Sを製造し、その後、波状の分割線を介して分割する方法も考えられる。なお、該タイル素体の成形に当たっては、成形型により成形してもよいし、押出し成形によりその断面形状がタイル素体の断面形状を有する部材を成形し、その後、穴部24と溝部26とを構成するようにしてもよい。また、タイル素体を焼成してから分割するとしたが、焼成前に分割して、その後、焼成してもよい。
【0025】
個別タイル20を製造したら、図9に示すように、複数の(図9の例では、8つ)個別タイル20を積層した状態とする。つまり、ここで、1つのタイルにおいて、個別タイル20は同一の形状の個別タイルを用いてもよいし、異なる形状の個別タイルを用いてもよい。つまり、個別タイル20の突出部30の形状を含めて同一の個別タイルを用いてもよいし、突出部30の形状が異なる個別タイルを用いてもよい。例えば、図8の例では、1つのタイル素体から2つの個別タイルが製造されるが、突出部30の波形状が異なるので、同一の形状の個別タイルを用いる場合には、タイル素体から形成された2つの個別タイルのうちの一方のみを集めてタイル本体10を構成することになる。
【0026】
複数の個別タイル20を積層させたら、図10に示すように、結束具40を各個別タイル20の穴部24に通す。つまり、穴部24は、各個別タイル20において同じ位置に形成されているので、容易に結束具40を通すことができる。なお、この場合の結束具40は、直線状の状態のものを用いるのが好ましい。
【0027】
次に、結束具40の両側をタイル本体10の背面側に曲げて、結束具40の両端を対向させ、両側の先端部分を平行に揃えた状態で捻って接続部42を構成して、結束具40をループ状に形成して、図11に示すように、タイル本体10を構成する複数の個別タイル20を束ねて結束した状態とする。なお、結束具40は、タイルAの背面側においては、個別タイル20に構成された溝部26がつながって構成された溝部内に収納させて、結束具40がタイルAの背面側に突出しないようにする。以上のようにして、上記構成のタイルAが製造される。
【0028】
上記構成のタイルAを施工する際には、タイルAの背面側(すなわち、図面におけるY2側)を被施工面側(例えば、壁面側)として施工する。つまり、被施工面とタイルAの背面間に接着剤又はモルタルを設けて被施工面にタイルAを接着させる。
【0029】
また、複数のタイルAの施工状態としては、隣接するタイルA同士を接した状態として、隣接するタイルA間の隙間を形成せずに施工してもよいし、隣接するタイルA間に隙間を形成して、隣接するタイルA間に目地を形成するようにしてもよい。
【0030】
なお、タイルAを被施工面に施工する際に、タイルAにおける個別タイル20には、溝部26が設けられているので、各個別タイル20の溝部26がつながって構成される溝部内に結束具40を納めることができ、結束具40が背面側に突出しないので、施工の邪魔になることがない。
【0031】
上記構成のタイルAによれば、個別タイル20が結束具40によって束ねた状態となっているので、複数の個別タイル20を同時に被施工面に施工することができ、個別タイル20を個々に施工する必要がないので、施工を容易に行うことができる。
【0032】
また、タイルAが被施工面に施工された状態では、各個別タイル20は、被施工面に接着されているのみならず、他の個別タイル20とともに結束されているので、ある個別タイル20が被施工面から剥離した場合でも、落下を防止することが可能となる。
【0033】
また、上記構成のタイルAにおいては、個別タイル20間(具体的には、個別タイル20の突出部30間)に形成される溝部50(図3参照)を深くすることができ、奥行き感のある壁面を構築することができる。
【0034】
特に、タイルAのように深い溝部50を有するタイルを1枚もののタイルとして形成するのは不可能であり、本実施例のタイルAによれば、そのような深い溝部を形成しつつ、全体に1つのタイルとして扱うことができるので、その点で特に至便であるといえる。
【0035】
なお、本実施例のタイルAは、上記の構成であるとして説明したが、図12に示すように、穴部24と溝部26の間に、穴部24と溝部26とをつなぐ溝部(第2溝部)28を形成するようにしてもよい。つまり、個別タイル20の基端部22の上面と下面において、穴部24と溝部26とをつなぐ溝部28を形成する。つまり、溝部28は、基端部22の長手方向に直角方向に設けられる。このように溝部28を形成することにより、結束具40がタイルAの上面と下面において突出するのを防止することができ、隣接するタイルAと接した状態で施工する場合に、結束具40が支障になることがない。なお、溝部28の断面形状は任意であるが、図の例では、半円形状に形成されている。なお、溝部28の断面形状は他の形状(例えば、四角形状等)であってもよい。
【0036】
また、上記の説明においては、結束具40は、金属製の線状部材であるとしたが、金属製でなくてもよく(例えば、合成樹脂製でもよい)、また、結束具40は、複数の個別タイル20を束ねて結束できる部材であれば、他の構成であってもよい。
【0037】
また、上記の説明においては、結束具40を設けるために各個別タイル20に穴部24を設けるとして説明したが、穴部ではなく結束具40を係止するための切欠部を設けるようにしてもよい。つまり、鉤状の切欠部を設けて、この切欠部の最深部において結束具40を結束するようにしてもよい。
【0038】
また、個別タイル20の形状は、上記の形状には限らず、略板状を呈していて、上面と下面とを貫通する穴部24を有するとともに、背面側に溝部26が設けられている形状であれば、他の形状であってもよい。なお、この場合にも、穴部24と溝部26とをつなぐ溝部28を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に基づくタイルの前方斜視図である。
【図2】本発明の実施例に基づくタイルの後方斜視図である。
【図3】本発明の実施例に基づくタイルの側面図である。
【図4】個別タイルの前方斜視図である。
【図5】個別タイルの後方斜視図である。
【図6】個別タイルの平面図である。
【図7】個別タイルの側面図である。
【図8】個別タイルの製造方法の一例を示す説明図である。
【図9】タイルの組立て工程を示す斜視図である。
【図10】タイルの組立て工程を示す斜視図である。
【図11】タイルの組立て工程を示す斜視図である。
【図12】個別タイルの他の例を示す後方斜視図である。
【図13】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
A タイル
10 タイル本体
20 個別タイル
22 基端部
24 穴部
26、28、50 溝部
30 突出部
40 結束具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイルであって、
複数の個別タイルを積層してなるタイル本体で、各個別タイルが厚み方向に貫通する穴部を有するタイル本体と、
該タイル本体を構成する個別タイルを束ねて結束するための結束具で、各個別タイルの穴部に挿通された結束具と、
を有することを特徴とするタイル。
【請求項2】
上記タイル本体の正面側において、隣接する個別タイル間に溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイル。
【請求項3】
上記個別タイルが、
板状を呈し、上記穴部が設けられた基端部と、
該基端部から正面側に突出して形成された突出部と、を有し、
タイルにおける隣接する個別タイルにおける突出部間に溝部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイル。
【請求項4】
上記個別タイルの背面側に結束具を収納するための溝部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のタイル。
【請求項5】
上記個別タイルの上面と下面には、上記穴部と上記溝部間をつなぐ第2溝部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のタイル。
【請求項6】
上記結束具が、線状部材から構成され、該線状部材の両端を接続することにより該線状部材がループ状にされて、個別タイルを束ねて結束していることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5に記載のタイル。
【請求項1】
タイルであって、
複数の個別タイルを積層してなるタイル本体で、各個別タイルが厚み方向に貫通する穴部を有するタイル本体と、
該タイル本体を構成する個別タイルを束ねて結束するための結束具で、各個別タイルの穴部に挿通された結束具と、
を有することを特徴とするタイル。
【請求項2】
上記タイル本体の正面側において、隣接する個別タイル間に溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイル。
【請求項3】
上記個別タイルが、
板状を呈し、上記穴部が設けられた基端部と、
該基端部から正面側に突出して形成された突出部と、を有し、
タイルにおける隣接する個別タイルにおける突出部間に溝部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイル。
【請求項4】
上記個別タイルの背面側に結束具を収納するための溝部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のタイル。
【請求項5】
上記個別タイルの上面と下面には、上記穴部と上記溝部間をつなぐ第2溝部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のタイル。
【請求項6】
上記結束具が、線状部材から構成され、該線状部材の両端を接続することにより該線状部材がループ状にされて、個別タイルを束ねて結束していることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5に記載のタイル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−63946(P2007−63946A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254896(P2005−254896)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(593100503)杉江製陶株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(593100503)杉江製陶株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]