説明

タグの三次元位置検出システム

【課題】タグの三次元位置を確実に検出可能なタグの三次元位置検出システムを提供する。
【解決手段】タグの三次元位置検出システムは、平面上に設けられ、所定のトリガ信号を出力するトリガアンテナ16と、トリガアンテナ16の出力したトリガ信号の一部をキャンセルするキャンセル信号を出力するキャンセルアンテナ17、キャンセル信号によって一部がキャンセルされたトリガ信号を用いて、トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を検出する制御部11とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はタグの三次元位置を検出可能なタグの三次元位置検出システムに関し、特に誤検出が生じないタグの三次元位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタグの三次元位置の検出が可能なシステムが、たとえば、特開2007−170818号公報(特許文献1)に開示されている。同公報によれば、平面上の異なる位置に複数のアンテナを設け、そのアンテナからの出力を切換えることにより、無線タグの位置を三次元で検出している。
【特許文献1】特開2007−170818号公報(要約、段落番号0029等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のタグの三次元位置の検出が可能なシステムは上記のように構成されていた。アンテナからの出力を切換えて無線タグとの交信の可否によって三次元の位置を検出していた。しかしながら、アンテナからの出力による交信範囲は、特許文献1に示すようなドーム状とならず、実際にはその両側に小さなドーム状の交信範囲が生じる。この点について以下に説明する。
【0004】
図12は平面上において、1mの間隔を開けて配置された1対のアンテナの中央において高さ2.5mの位置にタグを配置して交信可能とするトリガ信号のレベルをアンテナから出力したときの交信可能領域を示す図である。横軸および縦軸はタグの直下部で、アンテナの位置する平面上の点を原点として、そこからの距離を表している。図12に示すように、トリガ信号は原点の直上部においてピークレベルを示しているが、その直下及びその両サイド(原点から約2m離れた位置)においてもタグを検出可能である。この例では、交信可能領域内のタグ(たとえば、ピーク値近傍に位置するタグ)と選択的に交信する必要があるにも拘わらず、両サイドの検出レベルは中央部のピーク値の約1/3もあるため、この位置に存在するタグとも交信可能である。したがって、このようなレベルを有するトリガ信号であれば、原点近傍の上方に限らず、そこから離れた位置に存在するタグを検出する可能性がある。すなわち、従来のシステムであれば、原点近傍の検出したくないタグと不要な交信を行う必要があったり、トリガ信号のレベルによっては、本来は検出されるべきでないタグが検出されることによる誤検出が生じるという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、タグの三次元位置を効率的かつ確実に検出可能なタグの三次元位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るタグの三次元位置検出システムは、平面上に設けられ、所定のトリガ信号を出力するトリガ信号出力手段と、トリガ信号出力手段の出力したトリガ信号の一部をキャンセルするキャンセル信号出力手段と、キャンセル信号出力手段によって一部がキャンセルされたトリガ信号を用いて、トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を検出する上方向位置検出手段とを含む。
【0007】
この発明においては、本来検出してはいけない部分が反応しないようにトリガ信号の一部をキャンセルするキャンセル信号を設けたため、タグの三次元位置を確実に検出可能なタグの三次元位置検出システムを提供できる。
【0008】
好ましくは、キャンセル信号出力手段はキャンセル信号の出力を変更して、トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を制限する制限手段を含む。
【0009】
なお、トリガ信号出力手段は、平面上に設けられ、所定の範囲を囲むトリガアンテナであり、キャンセル手段は、トリガアンテナの近傍に設けられ、キャンセル信号を出力するキャンセルアンテナである。
【0010】
さらに好ましくは、キャンセル信号のデータとトリガ信号データとは相互に補数の関係にある。
【0011】
トリガアンテナは平面上において第1方向に相互に間隔をあけて設けられ、相互に異なるトリガ信号を出力する複数のアンテナを含んでもよい。
【0012】
トリガアンテナは平面上において第1方向と交わる第2方向に相互に間隔をあけて設けられ、相互に異なるトリガ信号を出力する複数のアンテナを含む。
【0013】
キャンセル信号出力手段は、異なるトリガ信号を出力する複数のトリガ信号出力手段を含み、上方向位置検出手段は、複数のトリガ信号出力手段からの信号に応答したタグを検出することによって、トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を検出してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1はタグの三次元位置検出システムの構成を示す模式図である。図1を参照して、タグの三次元位置検出システムは、アクティブ型のタグシステムであって、所定のID(Identification)信号を出力するIDタグ(以下、「タグ」と省略する)20と、タグ20の三次元位置を検出するタグ位置検出装置10を含む。タグ位置検出装置10は、装置全体を制御する制御部11と、固有のID信号を生成するトリガ信号送信部12と、タグからの応答を受信する受信部13と、トリガ信号送信部12からのトリガ信号の一部をキャンセルするキャンセル信号を出力するキャンセル信号送信部(キャンセル信号出力手段)14と、受信部13が受信したデータに基づいて、検出したタグのID等を表示する表示部15と、トリガ信号送信部12からのトリガ信号を発信するコイル状のトリガアンテナ(トリガ信号出力手段)16と、キャンセル信号送信部14からのキャンセル信号を発信するコイル状のキャンセルアンテナ(キャンセル信号出力手段)17とを含む。トリガアンテナ16およびキャンセルアンテナ17はコイル状であり、そこに流れる高周波電流によって、コイルの周囲に磁界が発生する。タグ20は、この磁界に反応して自分のIDを出力し、それを受信部13が受信する。このとき、タグ20は自己の有する電池のエネルギーによって、例えば、数m秒から数十m秒間隔でID情報の含まれる電波を発信する。
【0015】
トリガアンテナ16およびキャンセルアンテナ17の形状は任意であり、一辺が1mの大きさの矩形ループアンテナあるいは直径が1mの円形ループアンテナとして構成されてもよい。トリガアンテナ16およびキャンセルアンテナ17はほぼ同じ位置に設けられている。
【0016】
なお、タグ位置検出装置10の制御部11は、タグ20からの受信部13で検出したデータを読み取ることによって、トリガアンテナ16の磁界にさらされたタグ20のID情報(タグIDとトリガIDまたはエリアID)を取得する。ここで、トリガIDはトリガアンテナ16を特定するIDであり、エリアIDとは位置を特定するIDである。トリガアンテナ16を特定すれば、位置を特定することが可能である。
【0017】
すなわち、トリガアンテナ16は、タグ20を起動するトリガ信号を出力する。トリガアンテナ16からトリガIDを含むトリガ信号が出力されると、その信号に応答してタグ20は、受信したトリガアンテナ16のID(または、エリアID)とともに自分の有するIDを出力する。これらの情報を受信部13が受信して制御部11はタグ20の存在するエリアを知る。
【0018】
次に、タグ20の構成について説明する。図2はタグ20の概略構成を示すブロック図である。図2を参照して、タグ20は、トリガアンテナ16から出力されるトリガ信号等を検出するアンテナ22と、発信回路23と、CPU21と、増幅器24と、トリガ信号を検出する検出回路25とを含む。CPU21はタグ20全体の動作を制御し、電池26で駆動される。検出回路25がアンテナ22を介して外部からトリガ信号を検出すると、図示のないメモリに記憶されたタグIDを発信回路23で発信し、アンテナ22を介して外部へトリガIDとともに出力する。これを受信部13が受信する。
【0019】
次に、この実施の形態における、トリガ信号をキャンセルするキャンセル信号を出力するキャンセルアンテナ17について説明する。キャンセルアンテナ17は、磁気フィールドにおける受信エリアの制限方法を用いている。相互に重なって干渉する高周波磁界同士は、パルスコード変調信号を重ねると相互の信号の隙間を埋め合わせるような補数関係にあるパルスコード変調信号となる。したがって、トリガアンテナ16とキャンセルアンテナ17とからこのような干渉する高周波磁界を発生させれば、高周波磁気フィールドの重なった重畳エリアの内、磁界の強度が近似しているエリア部分はパルスコード変調信号が近似した電位レベルで相互に隙間を埋め合わされるために、制御部11は、高周波磁界に含まれるパルスコード変調信号を検出することができない。つまり、この範囲(高周波磁気フィールドの重なった重畳エリアの内で磁界の強度が近似している重畳エリアの範囲)は高周波磁気フィールドのエリアであっても検知不可能な無効なエリア(検知不感エリア)となる。これによって、トリガアンテナ16のコイルで作る高周波磁界の検知可能なエリアを制限して、トリガ信号をキャンセルするキャンセル信号とすることができる。
【0020】
なお、キャンセル信号はトリガアンテナ16からトリガ信号のレベルを変更(たとえば、低下)して出力しても良い。このようにすれば、受信部11はこのトリガ信号をキャンセル信号として選択的に受信できるし、キャンセルアンテナも不要になる。
【0021】
次に、図面を参照しながら高周波磁界の検知可能なエリアを制限する手法について具体的に説明する。図3はタグの三次元位置検出システムにおいて、隣接した3個のトリガアンテナ31〜33、および、3個のキャンセルアンテナ41〜43の配置を示す図である。図においては、トリガアンテナとキャンセルアンテナとはずらして表示しているが、実際には重なっていてもよい。なお、トリガアンテナ31を構成する矩形のアンテナには、その両端子311、312が所定の電流が流れる。キャンセルアンテナ41〜43についても同様である。
【0022】
次にこの実施の形態に係るタグ検出システムにおけるキャンセルトリガについて説明する。図4はこの実施の形態におけるキャンセルトリガ信号を説明するための図であり、図3において中央に位置するトリガアンテナ32とキャンセルアンテナ42とから出力され、磁気領域を形成する磁気フィールド32a〜32c,42a〜42cを示している。なお、この両側にトリガアンテナ31a〜31c,33a〜33cと、キャンセルアンテナ41a〜41c,43a〜43cとから出力される同様の磁気フィールドが形成される。
【0023】
図4を参照して、所定のトリガ信号を発生するトリガアンテナ32で囲まれたトリガ領域において、トリガアンテナ32に電流を流すとトリガアンテナ32の周囲に磁気フィールドが発生する。磁気フィールドは中央部に磁気フィールド32aを有し、その両サイドに図4に示したような付加的な磁気フィールド32b,32cを有する。この磁気フィールド32b,32cは不要であるため、この実施の形態においては、この付加的な磁気フィールド32b,32cを上記した、高周波磁気フィールドの制限方法を用いてキャンセルする。なお、図において、トリガアンテナ32は端子321,322を有し、キャンセルアンテナ42は端子421,422を有する。
【0024】
磁気フィールド42a〜42cはこのキャンセルのために発生された磁界である。この磁気フィールドは、中央に磁気フィールド42aを有し、その両サイドに磁気フィールド42b,42cを有する。磁気フィールド42aは図4に示すように、磁気フィールド32aよりも全体にわたって磁界の強度が多少小さくなっている。このような磁気フィールド42aを磁気フィールド32aのキャンセル用に用いれば、トリガアンテナ32で囲まれたトリガ領域の中では上方に位置するタグのみを反応させることが可能になる。
【0025】
すなわち、所定のエリアを特定するエリアIDを含むトリガIDを、受信可能エリアではタグはエリアIDデータのみを検出でき、キャンセルエリアではエリアIDデータとキャンセル用の磁界のどちらもタグは検出するためエリアIDデータとならない無効な信号を検出することになる。その結果、トリガアンテナから特定の距離まで離隔したタグのみを検出することが出来る。
【0026】
なお、トリガ信号の出力順序としては、キャンセルアンテナからキャンセル用磁界を所定の強さまで先に出力し、その後、トリガアンテナからエリアIDデータを有するトリガ磁界を出力する。これによりトリガ磁気データのレベル変動中の間違ったタグの起動が防げる。
【0027】
また、キャンセルアンテナはキャンセル信号の出力を変更して、トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を制限するようにしてもよい。この場合、制御部11とキャンセルアンテナとは制限手段として作動する。
【0028】
次に、具体的なトリガ信号のキャンセル方法について説明する。図5はエリアIDデータを出力するトリガ信号(A)と、そのエリアIDをキャンセルするキャンセル信号を出力するキャンセル信号(B)と、トリガ信号とキャンセル信号とを加えた信号(C)とを示す模式図である。図において、縦線を有する矩形で示す部分が信号1であり、間隙部分が信号0を示す。領域を特定するエリアIDデータは、一定の長さ(nビット)の信号1からなるプリアンブル部と、1ビットごとに信号1および0を繰り返す部分とを含む。
【0029】
キャンセルデータは1ビットごとに信号1および0を繰り返す信号である。すなわち、トリガ信号(A)はキャンセル信号(B)に対してデータ1ビット分だけシフトしている。
【0030】
図5(C)に示す、トリガ信号とキャンセル信号とを加えた信号は、データ1の連続した信号となり、この信号の検出されている範囲ではトリガ信号が構成されなくなり、トリガ信号として認識されない。なお、このキャンセル信号の強度を調整することによってトリガ信号を完全にキャンセルすることも可能である。また、キャンセルアンテナの配置を工夫することにより、中央部のみ(たとえば、32aのみ)とか、両端部のみ(たとえば、32b,32cのみ)といった任意の位置のトリガ信号をキャンセル可能である。
【0031】
次に、キャンセル信号の他の実施の形態について説明する。図6はキャンセル信号の他の実施の形態を示す図である。図3および図4に示す実施の形態においては、各領域にトリガアンテナ31〜33とキャンセルアンテナ41〜43を設けてその領域内で不要なトリガ信号をキャンセルした。この実施の形態においては、検出したくない領域に生じた余分なトリガ信号を、その領域のキャンセルアンテナを用いてキャンセルする。
【0032】
図6は、この実施の形態における動作を説明するための図である。図6(A)は図4に対応する図であり、図6(B)は領域A〜Cの重なり状態を示し、図6(C)は図6(B)に示した領域Bにおいてタグ検出を行なったときの領域A〜Cにおけるトリガ信号の状態を示す図であり、図6(D)は図6(B)に示した領域Aにおいてタグ検出を行なったときの領域A〜Cにおけるトリガ信号の状態を示す図である。なお、図6(B)に示した各領域A〜Cは図6(B)、(C)におけるトリガアンテナ611a〜613aおよびキャンセルアンテナ611b〜613bによるトリガ領域、および、キャンセル領域に対応する。なお、図においては、両アンテナを区別しないで表示している。
【0033】
図6(A)を参照して、トリガ信号によるタグ検出トリガの強度を縦方向の実線で示し、キャンセルトリガの強度を縦方向の点線で示す。図4で説明したように、実線部分と点線部分との差(斜線で示した部分)が実質的なタグ検出信号であり、これが存在する部分がタグ検出エリアとなる。ここでは、本来タグを検出すべき領域(図中a1で示す)以外の領域(図中a2,a3で示す)にタグ検出エリアが発生している。そこで、この実施の形態においては、この本来検出すべきでない領域をキャンセルする。
【0034】
図6(C)を参照して、領域Bにおいてタグを検出するものとする。アンテナ612a、612bからトリガ信号とキャンセル信号とが出力され、タグ検出エリアが形成される(図中a1〜a3)。図6(C)に示すように、タグ検出エリアa1は領域B内に、タグ検出エリアa3は領域C内に形成される。ここでは、タグが領域Bや領域C内で検出されると困るため、領域Aのキャンセルアンテナ611bからキャンセル信号を出力してタグ検出エリアa2をキャンセルする。ここで、図に示すように、領域Aのキャンセル信号b1の強度はa2の強度より大きいため、タグ検出エリアa2はキャンセルされる。なお、領域Cにおいても同様である。
【0035】
タグ検出エリアとして領域Aを選んだ場合は、タグ検出トリガおよびキャンセルトリガの状態は図6(D)に示すとおりである。
【0036】
次に、上記したキャンセルアンテナを用いて、タグの三次元位置を検出する方法について説明する。図7はこの実施の形態における平面上の位置を検出するためのトリガアンテナの配置を示す図である。この実施の形態においては、先に説明した実施の形態で用いたキャンセル信号を用いて高さ方向の位置を検出するとともに、平面状の位置も併せて特定するように、特許文献1と同様に、平面状の位置を検出するためのトリガ信号を出力するトリガアンテナを設けている。
【0037】
図7を参照して、XY平面上には、X方向にX1、X2,X3の3つのトリガアンテナが配置され、Y方向にはY1,Y2,Y3,Y4の4つのトリガアンテナがX方向のトリガアンテナと重なるように配置されている。それぞれのトリガアンテナは、相互に異なるエリアIDを出力している。この実施の形態においては、このようにして出力されたエリアIDに基づいてXY平面上の位置を検出し、同時に、それぞれのトリガアンテナに流す電流値を変更することによってZ軸方向の位置を検出して三次元におけるRFIDタグの位置を検出可能である。この電流値の変更は、タグ位置検出装置10に設けられた図示のない電流値変更スイッチで行う。また、タグ位置検出装置10はタグの上方向の位置を検出する上方向位置検出手段として作動する。
【0038】
この実施の形態においては、特許文献1の場合と異なり、Z軸方向(高さ方向)における余分なトリガ信号を図示のないキャンセルアンテナからのキャンセル信号を用いてキャンセルできるため、誤検知は生じない。
【0039】
次に、Z軸方向における位置を検出するためのトリガアンテナについて説明する。図8(A)はZ軸方向の位置を検出するトリガアンテナの平面上の配置を示す図であり、図8(B)はトリガアンテナが出力するトリガ信号の強度を示す図であり、図8(C)は、トリガアンテナから出力されるトリガ信号の磁界の強さとアンテナコイル面からの距離との関係を示す。
【0040】
図8(A)を参照して、平面上に近辺用のジグザグ状に配置されたアンテナ51と、アンテナ51の周囲を囲むように配置された遠方用の矩形状のアンテナ52とが配置される。それぞれのアンテナからのトリガ信号の強度は図8(B)に示すとおりであり、コイル近辺用のアンテナ51からの出力51aに対して、遠方用のアンテナ52からの出力52aの到達距離は約2倍になっている。これらの磁界強度51aと52aとは図8(C)に示すように、アンテナコイル面からの高さがほぼ中央で交差しており、それぞれのトリガー信号レベルは所定の高さにおいてレベルの比が逆転する。すなわち、コイル面からの高さが所定の範囲内ではアンテナ51からの磁界強度51aのみがタグによって検出され、その範囲を超えるとアンテナ52からの磁界強度52aのみがタグによって検出される。
【0041】
なお、ここでは、Z軸方向について2段の位置にタグが存在するか否かを判断する場合について説明したが、これに限らず、所望のレベルを検出するようにアンテナの出力強度を調整すれば、任意の位置におけるタグを検出できる。
【0042】
次に、複数の平面トリガアンテナを用いて、所望の位置のみにタグが存在するか否かを検出する方法について説明する。図8はこの方法を示す図である。図9(A)は、相互に異なるトリガ信号を示す図であり、図9(B)はこれらのトリガ信号を用いて特定の位置を検出する方法を示す図である。
【0043】
図9(A)に示すように、相互に異なるエリアIDを含むトリガ信号55,56,57を用いて、これらのトリガ信号が出力される特定の範囲を検出する。図9(B)を参照して、今、領域58aにタグが存在するか否かを検出するものとする。この場合は、領域58aを形成するように、トリガ信号55が出力される領域55aと、トリガ信号56が出力される領域56aと、トリガ信号57が出力される領域57aを配置する。領域58aに存在するタグは3つのトリガ信号の全てそろって応答可能になる。トリガ信号の動作する範囲を変更して領域を移動させることによって、任意の範囲での検出や、エリアの絞込みが可能になる。
【0044】
次に、Z軸方向の任意の位置においてタグの位置を検出する方法について説明する。図10はこの方法を示す図である。Z軸方向の上下両端部にトリガ信号を出力するトリガアンテナ61,62を設ける。このトリガアンテナ61,62からのトリガ信号の出力の強度は調整が可能であり、トリガアンテナ61からの出力61aを調整することによって、トリガ信号の到達する距離を変更できる。同様に、トリガアンテナ62からの出力62aも調整が可能である。図9に示す状態では、Z軸方向における領域63に位置するタグを検出可能になる。
【0045】
なお、この強度の調整は、図1に示したタグ位置検出装置10によって行なう。
【0046】
このような検出方法はZ軸方向に限らず、XY方向においても同様である。図11はXY方向においてトリガアンテナ65,66を設け、それぞれのトリガ信号の強度を調整することによってXY方向の所定の位置にタグが位置するか否かを検出できる。
【0047】
また、上記実施の形態においては、キャンセル信号を所定のトリガ信号の隙間を埋める信号を出力することによって発生させる場合について説明したがキャンセル信号がトリガ信号と時間的に分離できる限りはトリガ信号を出力するアンテナからキャンセル信号を出力しても良い。
【0048】
なお、上記実施の形態においては、タグとして、RFIDタグを例にあげて説明したが、これに限らず、電池を内蔵するアクティブタグ、パッシブタグなど、任意のタグを使用できる。
【0049】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】RFIDタグを検出するタグ検出システムの構成を示す模式図である。
【図2】RFIDタグに搭載された専用の集積回路(IC)の構成図である。
【図3】3個のトリガアンテナによる高周波磁気フィールドのエリア制限の動作を示す概念図である。
【図4】キャンセルトリガ信号を説明するための図である。
【図5】エリアIDデータとキャンセルデータを示す図である。
【図6】エリアIDデータとキャンセルデータの他の例を示す図である。
【図7】三次元位置検出システムにおける平面位置を検出するためのトリガアンテナの配置を示す図である。
【図8】Z軸方向において異なる位置を検出するためのトリガアンテナの配置、および、出力例を示す図である。
【図9】XY平面上特定の位置にタグが存在するか否かを検出する場合のトリガアンテナの配置例を示す図である。
【図10】Z軸方向の任意の位置にタグが存在するか否かを検出する他の方法を示す図である。
【図11】XY平面上の所定の位置にタグが存在するか否かを検出するためのトリガアンテナの配置例を示す図である。
【図12】従来のタグの三次元位置を検出する方法における問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0051】
10 タグ検出装置、11 制御部、12 トリガ信号送信部、13 受信部、14 キャンセル信号送信部、15 表示部、16 トリガアンテナ、17 キャンセルアンテナ、20 タグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に設けられ、所定のトリガ信号を出力するトリガ信号出力手段と、
前記トリガ信号出力手段の出力したトリガ信号の一部をキャンセルするキャンセル信号を出力するキャンセル信号出力手段と、
前記キャンセル信号出力手段によって一部がキャンセルされた前記トリガ信号を用いて、前記トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を検出する上方向位置検出手段とを含む、タグの三次元位置検出システム。
【請求項2】
前記キャンセル信号出力手段は前記キャンセル信号の出力を変更して、前記トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を制限する制限手段を含む、請求項1に記載のタグの三次元位置検出システム。
【請求項3】
前記トリガ信号出力手段は、前記平面上に設けられ、所定の範囲を囲むトリガアンテナであり、
前記キャンセル手段は、前記トリガアンテナの近傍に設けられ、前記キャンセル信号を出力するキャンセルアンテナである、請求項1または2に記載のタグの三次元位置検出システム。
【請求項4】
前記キャンセル信号のデータと前記トリガ信号のデータとは相互に補数の関係にある、請求項1から3のいずれかに記載のタグの三次元位置検出システム。
【請求項5】
前記トリガアンテナは前記平面上において第1方向に相互に間隔をあけて設けられ、相互に異なるトリガ信号を出力する複数のアンテナを含む、請求項3または4に記載のタグの三次元位置検出システム。
【請求項6】
前記トリガアンテナは平面上において前記第1方向と交わる第2方向に相互に間隔をあけて設けられ、相互に異なるトリガ信号を出力する複数のアンテナを含む、請求項3から5のいずれかに記載のタグの三次元位置検出システム。
【請求項7】
前記キャンセル信号出力手段は、異なるトリガ信号を出力する複数のトリガ信号出力手段を含み、
前記上方向位置検出手段は、前記複数のトリガ信号出力手段からの信号に応答したタグを検出することによって、前記トリガ信号に応答するタグの上方向の位置を検出する、請求項1から6のいずれかに記載のタグの三次元位置検出システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−54227(P2010−54227A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216835(P2008−216835)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(501429531)株式会社マトリックス (14)
【Fターム(参考)】