説明

タッチスイッチ

【課題】 本発明は、操作者の接触によるスイッチ操作を的確に検出することができるタッチスイッチの提供を目的とする。
【解決手段】 ステアリングスイッチ11a〜11fに接触検知センサを有し、接触状態により変動する接触検知センサの出力値が所定条件を満たすと接触検知センサにより検知された接触を操作者によるステアリングスイッチ11a〜11fの操作として確定するタッチスイッチであって、ステアリングスイッチ11a〜11fと異なる位置に設置された副接触検知センサ12a,bと、接触状態により変動する副接触検知センサ12a,bの出力値に応じて前記所定条件を補正する条件補正手段とを備えることを特徴とするタッチスイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者の接触に基づいてスイッチ操作を確定するタッチスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、操作者のスイッチ操作をそのスイッチ操作を受け付ける操作部への接触状態に応じて確定するスイッチ操作に関する技術が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらのスイッチ操作に関する技術は、操作部への接触状態を検出するために、操作者の指などの接触に基づく操作部の静電容量の変化を利用するものである。
【0003】
静電容量の変化を利用する場合には、例えば、操作部を触っていない状態で一定の閾値を設けておき、静電容量がその閾値を超えると操作者が操作部に触れているといった接触検出が行われている。
【特許文献1】特開2001−113981号公報
【特許文献2】実公昭63−31470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術のように一定の閾値を設けて接触検出を実施する場合、手袋を着用した状態で操作部を触れても、静電容量の変化量が小さく、操作部に触っているか否かを判定することができないことがある。また、人が触れることによる静電容量の変化量には個人差があるので、その個人差によって操作部に触っているか否かを判定することができないこともある。
【0005】
そこで、本発明は、操作者の接触によるスイッチ操作を的確に検出することができるタッチスイッチの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
操作者の接触を検知する検知手段を有し、
接触状態により変動する前記検知手段の出力値が所定条件を満たすと前記検知手段により検知された接触を操作者のスイッチ操作として確定するタッチスイッチであって、
前記検知手段と異なる位置に設置された操作者の接触を検知する副検知手段と、
接触状態により変動する前記副検知手段の出力値に応じて前記所定条件を補正する条件補正手段とを備えることを特徴とするタッチスイッチが提供される。
【0007】
本局面においては、操作者がスイッチ操作をしたことによる接触を検知する検知手段と異なる位置に、操作者の接触を検知する副検知手段を設けており、接触状態を互いに独立して検出する構成となっている。したがって、副検知手段により検知される操作者の接触状態を用いて、スイッチ操作による接触を検知する検知手段側におけるスイッチ操作を確定するための条件を補正することができるため、操作者のスイッチ操作を的確に検出することができるようになる。
【0008】
また、前記所定条件は接触判定閾値であって、前記条件補正手段は、非接触状態での前記副検知手段の出力値と接触状態での前記副検知手段の出力値との間に前記接触判定閾値を設定することが好適である。したがって、非接触状態と接触状態のそれぞれにおける出力値に挟まれた範囲内に接触判定閾値を補正すれば、操作者のスイッチ操作を的確に検出することができるようになる。このとき、前記検知手段と前記副検知手段は、接触を静電容量の変化により検知することが好適である。
【0009】
また、本局面において、前記検知手段を車両のステアリングホイール、特にそのスポーク部に取り付け、前記副検知手段をその把持部に取り付ける態様でもよい。つまり、本発明をいわゆるステアリングホイールに取り付けたステアリングスイッチとして用いる。これにより、運転者がステアリングホイールを把持したままスイッチ操作を行うことができるようになる。
【0010】
このとき、前記副検知手段により接触が検知されている場合のみ前記条件補正手段による補正が行われるようにしてもよい。これにより、ステアリングホイールを把持した状態でしか補正が行われず、そのときの接触状態に応じた補正が把持する度に行われるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作者の接触によるスイッチ操作を的確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明におけるタッチスイッチを車両のステアリングホイールに適用した場合(ステアリングスイッチ)の一実施例を示す図である。
【0013】
図1の例では、ステアリングホイール10は、概ね、スポーク部13と把持部14から構成される。ステアリングスイッチ11は左スイッチ群と右スイッチ群から構成され、スポーク部13の運転者と対向する面に取り付けられている。ステアリングホイール10の左側に位置するスポーク部13aには、左スイッチ群としてステアリングスイッチ11a,11b,11cが配置される。一方、ステアリングホイール10の右側に位置するスポーク部13bには、右スイッチ群としてステアリングスイッチ11d,11e,11fが配置されている。つまり、ステアリングスイッチ11a,11b,11cは、ステアリングホイール10を把持したままの左手(特に、左親指)での操作を可能にした位置に配置されている。一方、ステアリングスイッチ11d,11e,11fは、ステアリングホイール10を把持したままの右手(特に、右親指)での操作を可能にした位置に配置されている。
【0014】
したがって、運転者がこのように配置されたステアリングスイッチ11を操作することによって、ステアリングホイール10から手を離さずに各ステアリングスイッチ11に対応する車載機器を作動させることができるようになる。なお、車載機器には、エアコン、オーディオ、カーナビゲーション、通話装置、トランスミッション装置等が挙げられるが、本発明は特にこのスイッチの用途を限定するものではない。
【0015】
本実施例のこれらの6つのステアリングスイッチ11には、操作者(運転者)の接触を検知する検知手段である接触検知センサが内蔵もしくは接続されている(ステアリングスイッチ11が接触検知センサそのものとも言えるので、改めて図示はしていない)。接触検知センサは、運転者がスイッチ操作のためにステアリングスイッチ11に触れたことによる静電容量や押圧力や温度等の変化を利用して、スイッチ操作の有無(接触の有無)を検知するものである。
【0016】
図2は、接触検知センサの代表例として静電容量センサを利用したタッチスイッチを示す図である。静電容量センサは、概ね、センサ電極35とセンサ回路部30を有している。センサ電極35がスイッチ操作(接触)を検出できるようにステアリングスイッチ11に内蔵されている。センサ回路部30は、負荷抵抗31、周波数fのサイン波を発生するサイン波発生器32、検出ダイオード33及びローパスフィルタ34を備えている。接触検出は、センサ電極35と人体の静電結合(コンデンサ)容量を検出することにより行われる。誘電率ε[F/m]、結合面積S[m]、センサ電極35との距離d[m]とすると、リアクタンスXc[Ω]は『Xc=1/(2πf・Cd)』、静電結合容量Cd[F]は『Cd=ε・S/d』と表すことができる。なお、接触検出の原理については周知技術であるため、更なる詳細な説明は省略する。静電容量センサの出力値はスイッチ操作の判定・確定を行うスイッチ操作確定部36に入力される。
【0017】
スイッチ操作確定部36は、スイッチ操作を確定するための所定条件を有しており、静電容量センサの出力値がその所定条件を満たすと静電容量センサにより検知された接触を操作者のスイッチ操作として確定する。スイッチ操作を確定するための所定条件は、例えば、接触判定閾値、接触判定演算式、接触判定マップによって定められる。したがって、運転者がスイッチ操作のためにいずれかのステアリングスイッチ11に触れると、スイッチ操作確定部36によりスイッチ操作の確定が行われ、その確定したスイッチに対応する各種車載機器の所定動作が実行される。なお、押圧力や温度の変化を利用する接触検知センサの場合も上述の静電容量センサの場合と同様に、検知された押圧力や温度についての出力値がスイッチ操作確定部36に入力され、スイッチ操作確定部36がスイッチ操作を確定する。
【0018】
図1において、ステアリングスイッチ11の操作をすると、その操作に応じて表示器20に操作状態が表示される。表示器20には、例えば、フロントガラス前方に表示像が見えるように表示するヘッドアップディスプレイ、速度等の表示を行うメータクラスタ、インストルメントパネルに設置されたディスプレイが挙げられる。表示器20には点灯部21a〜21fが備えられている。点灯部21a〜21fのそれぞれは、ステアリングスイッチ11a〜11fのそれぞれに対応付けられており、ステアリングスイッチ11の操作状態が表示される。例えば、ステアリングスイッチ11eを操作すると点灯部11eが点灯し、ステアリングスイッチ11eの操作が行われたことが視覚的に運転者に伝わる。単なる点灯ではなく、色や輝度の変更、点滅、ビープ音等の音声の出力が行われるようにしてもよい。
【0019】
したがって、ステアリングスイッチ11を操作する際に運転者がスイッチ位置・種類を視認するために視線を車両前方(遠方)から手元のステアリングホール10(近傍)に移動させる必要がなくなる。すなわち、運転者がステアリングスイッチ11を直接視認せずとも操作中のスイッチや他のスイッチの場所が容易にわかるようになり(いわゆるブラインド操作)、ステアリングスイッチ11の操作性の向上と運転者の視点移動の軽減を図ることができる。
【0020】
ところで、操作者が静電容量センサのセンサ電極35に触れると、図3に示されるように、静電容量変化によって検出電圧Vcは変動(センサ電極35への接触により区間AにおいてVc電圧波形の振幅が小さくなっている)し、その結果、センサ本体からの出力値(OUT電圧)の変化も生ずる(区間AにおいてOUT電圧値が小さくなっている)。スイッチ操作確定部36は、この変化を検出することによってセンサ電極35に操作者が触っているか否か(すなわち、スイッチ操作をしているか否か)を判定する。その判定を行うための条件として接触判定閾値がスイッチ操作確定部36側に設定されている。操作者がセンサ電極35に触れて、OUT電圧に変化Iが生じ、OUT電圧がDのように下がると仮定した場合、接触判定閾値がBの位置に設定されていることによって、スイッチ操作の有無を判定することができるようになる。
【0021】
しかしながら、スイッチ操作を判定するために接触判定閾値Bを固定値にしてしまうと、手袋の着用や個人差や指先の状態(汗や傷)によって、操作者がセンサ電極35に触っているか否かを判定することができない場合がある。例えば、手袋の着用していない場合は、OUT電圧はDのように変化するが、手袋を着用している場合には、OUT電圧はEのように変化する。したがって、手袋を着用している場合に、接触判定閾値がBの位置に設定されていると、OUT電圧の変化を検出できず、スイッチ操作の確定ができないことになる。同様に、人が触れることによる静電容量の変化量には個人差があるので、OUT電圧が接触判定閾値Bまで下がらないことがある。
【0022】
そこで、本発明のタッチスイッチは、スイッチ操作による接触を検知する接触検知センサと異なる位置に操作者の接触を検知する副検知手段として副接触検知センサを設けている。本実施例では、図1に示されるように、ステアリングホイール10の把持部14に副接触検知センサ12a,12bが備えられている。ステアリングホイール10を把持したまま左スイッチ群のステアリングスイッチ11a,11b,11c(接触検知センサ)を左手で操作可能な把持姿勢でステアリングホイール10を把持したときに運転者の左手が必ず接触する把持部14に副接触検知センサ12aが備えられることが望ましく、ステアリングホイール10を把持したまま右スイッチ群のステアリングスイッチ11d,11e,11f(接触検知センサ)を右手で操作可能な把持姿勢でステアリングホイール10を把持したときに運転者の右手が必ず接触する把持部14に副接触検知センサ12bが備えられることが望ましい。
【0023】
副接触検知センサ12a,12bは、上述の接触検知センサと同様に、運転者が触れたことによる静電容量や押圧力や温度等の変化を利用して、接触の有無を検知するものである。接触検知センサと副接触検知センサ12a,bは、同じ種類のセンサを使用する。接触検知センサに静電容量センサを採用したならば、副接触検知センサ12a,12bも静電容量センサを採用し、接触検知センサに温度センサを採用したならば、副接触検知センサ12a,12bも温度センサを採用する。
【0024】
副接触検知センサ12a,bとステアリングスイッチ11に備えられている接触検知センサは互いに独立に接触のセンシングをしている。したがって、副接触検知センサ12により検知される運転者の接触状態を用いて、スイッチ操作による接触を検知する接触検知センサ側におけるスイッチ操作を確定するための接触判定閾値を調整することができるため、操作者のスイッチ操作を的確に検出することができるようになる。
【0025】
つまり、図3によれば、副接触検知センサ12によってOUT電圧がEのように検出された場合、スイッチ操作確定部36は、条件補正手段として、接触判定閾値をBの位置から変化Hの間のCの位置に補正する。
【0026】
このとき、副接触検知センサにより接触が検知されている場合のみスイッチ操作確定部36による補正が行われる。これにより、運転者がステアリングホイール10を把持する度に接触判定閾値の補正が行われることになる。したがって、汗のかき方や体調の変化は運転中でも常時変化し、それに応じて検知される接触状態も変化する(例えば、静電容量が変化する)ため、その変化に対応してそのときの接触状態に最適な接触判定閾値の補正が行うことができる。
【0027】
また、補正された接触判定閾値を、スイッチ操作確定部36は揮発性メモリもしくは不揮発性メモリに記憶するようにしてもよい。これにより、補正された接触判定閾値は運転者がステアリングホイール10から一時的に手を離しても保持されたままにすることができる。
【0028】
したがって、スイッチ操作確定部36は、例えば手袋をしたままではステアリングスイッチ11に触ってもスイッチ操作が確定されない場合であっても、副接触検知センサ12によってスイッチ操作を確定する接触判定閾値を調整することができるので、的確にスイッチ操作を確定することができる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0030】
例えば、副接触検知センサにより接触が検知されている場合のみスイッチ操作の確定が行われるようにしてもよい。これにより、ステアリングスイッチ11を操作しようとする運転者による意図的な接触以外の例えば運転者の手が意図せずにステアリングスイッチ11に触れてしまった場合や、運転者がステアリングホイール10を適正な姿勢で把持した状態でない場合には、表示器20に操作状態が表示されないようにしたり、車載機器が作動しないようにしたりすることができる。
【0031】
また、例えば、図1では、ステアリングスイッチ11の操作を行う指が親指に限定されるような位置に描かれているが、親指以外の指でも操作可能な位置に配置してもよい。例えば、スポーク部13の裏面(フロントガラス側)に配置してもよい。また、ターンレバーやワイパーレバー等のコラムレバーや、シフト操作やスイッチ操作等を行うことを可能にするステアリングパッドに配置してもよい。
【0032】
また、副接触検知センサ12の設置場所を、シフトノブ、アームレスト、ドアグリップ、エンジンスタートスイッチ、始動キーにしてもよい。運転者が把持することが比較的多い場所に設けるようにしている。この場合、ステアリングホイール10から離れた位置にあり手が一度離れることになるので、接触を検知した副接触検知センサ12からの出力値は一時的に揮発性メモリ等に保持される。そして、スイッチ操作確定部36は、その保持された出力値に基づいて、上述のように接触判定閾値を補正すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明におけるタッチスイッチを車両のステアリングホイールに適用した場合の一実施例を示す図である。
【図2】接触検知センサの代表例として静電容量センサを利用したタッチスイッチを示す図である。
【図3】接触検知センサの電圧波形図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ステアリングホイール
11 ステアリングスイッチ
12 接触検知センサ
13 スポーク部
14 把持部
20 表示器
21 点灯部
30 センサ回路部
35 センサ電極
36 スイッチ操作確定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の接触を検知する検知手段を有し、
接触状態により変動する前記検知手段の出力値が所定条件を満たすと前記検知手段により検知された接触を操作者のスイッチ操作として確定するタッチスイッチであって、
前記検知手段と異なる位置に設置された操作者の接触を検知する副検知手段と、
接触状態により変動する前記副検知手段の出力値に応じて前記所定条件を補正する条件補正手段とを備えることを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項2】
前記所定条件は接触判定閾値であって、
前記条件補正手段は、非接触状態での前記副検知手段の出力値と接触状態での前記副検知手段の出力値との間に前記接触判定閾値を設定する、請求項1記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
前記検知手段と前記副検知手段は、接触を静電容量の変化により検知する、請求項1記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記検知手段を車両のステアリングホイールに取り付けた、請求項1記載のタッチスイッチ。
【請求項5】
前記検知手段が前記ステアリングホイールのスポーク部に位置する、請求項4記載のタッチスイッチ。
【請求項6】
前記副検知手段が前記ステアリングホイールの把持部に位置する、請求項4または5記載のタッチスイッチ。
【請求項7】
前記副検知手段により接触が検知されている場合のみ前記条件補正手段による補正が行われる、請求項6記載のタッチスイッチ。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載のタッチスイッチを備える車両用ステアリングホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−347215(P2006−347215A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172490(P2005−172490)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】