説明

タッチスイッチ

【課題】指先を操作面に触れさせながら先端側に移動させるスライド入力時に、手指の伸展に応じた指先の操作面に対する当接角度の変化を抑えて検出精度を高めることができる、新規な構造のタッチスイッチを提供すること。
【解決手段】手指48が接触する導電部材14の操作面16が手指48の先端側を前方として前後方向で延びる基準面40を備えていると共に、操作面16が、基準面40から前方に向かって上傾しながら延び出して、前方側に向かって傾斜角度が大きくなる前方湾曲面42を備えており、前方湾曲面42が基準面40よりも小さな曲率半径を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の指先での入力を検出するためのタッチスイッチに係り、特に、指先のスライド動作を検出するタッチスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ナビゲーションシステムやオーディオ装置、空調装置等を操作するための入力インターフェイスとして、タッチスイッチの採用が検討されている。このタッチスイッチは、操作面に対する手指の接触の有無や、接触位置、指先を操作面に接触させながら移動させるスライド入力等を検出するようになっており、電気抵抗の変化に基づいて検出する抵抗検出型や、静電容量の変化に基づいて検出する静電容量検出型等がある。なお、特開2006−7920号公報(特許文献1)の図2に示されているのが、それである。
【0003】
ところで、特許文献1にも示されているように、タッチスイッチの操作面は、製造の容易さ等を考慮して、一般的に平らな形状とされている。
【0004】
しかしながら、このような平坦な形状のタッチスイッチにおいて、手指を屈曲させた状態から徐々に伸ばして、指先を操作面に接触させながら先端側に移動(スライド)させると、手指の操作面に対する角度が関節の伸展に従って徐々に変化する。これにより、指先における操作面への当接部位が徐々に手指の基端側に移動して、実際の指先の移動量と検出された指先の移動量との間にずれが生じ得ることから、使用者が違和感を覚えるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−7920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、指先を操作面に触れさせながら先端側に移動させるスライド入力時に、手指の伸展に応じた指先の操作面に対する当接角度の変化を抑えて検出精度を高めることができる、新規な構造のタッチスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様は、導電部材に対して電圧が印加されており、該導電部材における通電状態に基づいて手指の該導電部材上での接触移動を検出するタッチスイッチにおいて、前記手指が接触する前記導電部材の操作面が該手指の先端側を前方として前後方向で延びる基準面を備えていると共に、該操作面が、該基準面から前方に向かって上傾しながら延び出して、前方側に向かって傾斜角度が大きくなる前方湾曲面を備えており、該前方湾曲面が該基準面よりも小さな曲率半径を有していることを、特徴とする。
【0008】
このような第1の態様に従う構造とされたタッチスイッチによれば、指先が操作面上を前方に移動して手指の近位指節間関節(第2関節)が伸びた状態では、指先が操作面の前方湾曲面上に位置するようになっている。これにより、第2関節が伸びた状態から中手指節間関節を伸ばして、指先を操作面に接触させながら更に前方に移動させた場合にも、指先の操作面に対する接触部位が基端側に変化するのを防ぐことができて、実際の指先の接触移動量とセンサによって検出される指先の接触移動量との間のずれが低減される。その結果、検出精度の向上が図られて、良好な操作感と、タッチスイッチで制御される装置の正確な作動が実現される。
【0009】
また、前方湾曲面と連続した後方側には、前方湾曲面よりも大きな曲率半径を有して前後方向に延びる基準面が設けられており、手指の第2関節が曲がった状態では、各関節の曲げを調節しながら入力することで、略一定の圧力での入力が感覚的に実現できることから、良好な検出精度を得ることができる。しかも、基準面が設けられていることによって、全体が一定の曲率半径で湾曲して凹んだ操作面に比して、指先を接触移動させる際のストロークを前後方向で大きく確保し易くなって、スライド入力により適したタッチスイッチを提供することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材の前記操作面が、前記基準面から前記手指の基端側となる後方に向かって上傾しながら延び出して、後方側に向かって該基準面に対する傾斜角度が大きくなる後方湾曲面を備えているものである。
【0011】
第2の態様によれば、手指の第2関節が曲がった状態において指先が後方湾曲面上に位置することで、第2関節を更に大きく曲げる際に指先の操作面に対する接触が安定して維持されて、指先の操作面に対する接触移動が安定して検出される。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記前方湾曲面の前記基準面に対する傾斜角度の最大値:θが、5°≦θ≦60°の範囲に設定されているものである。
【0013】
第3の態様によれば、前方湾曲面が関節の屈伸による指先の移動に沿った形状とされることによって、関節の屈伸による指先の操作面に対する当接部位の変化が抑えられると共に、当接圧の変化が低減されて、スライド入力の検出精度の向上が図られる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材の前記操作面が前後方向を長手とされているものである。
【0015】
第4の態様によれば、指先の操作面に対する接触移動の量を前後方向で大きく確保することができる。それ故、使用者が入力を把握し易くなって良好な操作感を得ることができると共に、スライド入力の検出精度の向上が実現され得る。
【0016】
なお、このような前後方向を長手とされた操作面は、操作面が基準面を有していることによって容易に実現される。即ち、基準面を前後方向に延びる長手形状とすることによって、指先の移動の軌跡に応じて特定されることが望ましい前方湾曲面や後方湾曲面の形状に影響を及ぼすことなく、前後方向に長手とされた操作面を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作面が、前後方向に延びる基準面と、その前方側に連続的に設けられた前方湾曲面とを含んで構成されていることによって、指先の前方側への移動によるスライド入力時に、基準面によって十分なストロークが確保されると共に、前方湾曲面によって指先の操作面に対する接触部位の変化が抑えられて、指先の移動量が精度よく検出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態としてのタッチスイッチが自動車のドアアームレストに設けられた状態を示す図。
【図2】図1に示されたタッチスイッチを説明する図。
【図3】図1に示されたタッチスイッチの導電部材を示す平面図。
【図4】図3のIV−IV断面図。
【図5】図3のV−V断面図。
【図6】図4に示された導電部材の要部を拡大して示す図。
【図7】図2に示されたタッチスイッチの検出機構を説明する図。
【図8】図7に示されたタッチスイッチの電気回路図。
【図9】図4に示された導電部材の使用状態を説明する図。
【図10】本発明の第2の実施形態としてのタッチスイッチの導電部材を示す平面図。
【図11】図10のXI−XI断面図。
【図12】図10のXII−XII断面図。
【図13】図11に示された導電部材の要部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1,図2には、本発明の第1の実施形態としてのタッチスイッチ10が示されている。タッチスイッチ10は、自動車のドア部に設けられたアームレスト12の上面に配設されており、車窓開閉用の入力インターフェイスとされている。なお、図2、図7、図9において、タッチスイッチ10は、実際よりも手指48に対して相対的に大きく図示されている。
【0021】
より詳細には、タッチスイッチ10は、図3〜図5に示された導電部材14を含んで構成されている。導電部材14は、電気伝導率の大きい導電性材料で形成されており、本実施形態では、合成樹脂材料にカーボンブラック等の導電性フィラーを混合した導電性樹脂材料で形成されている。そして、導電部材14は、例えば電気絶縁性を有する基体(図示せず)の上面に重ね合わされて固着されている。なお、導電部材14は、調製されたゴムコンパウンドに有機溶剤を添加したものに導電性フィラーとしてのカーボンブラックを混合し、更に印刷用溶剤を添加したゴム系の導電性塗料が、スクリーン印刷やインクジェット印刷,フレキソ印刷,グラビア印刷,パッド印刷,リソグラフィー等の方法で、基体の上面に所定の形状で印刷されることによって形成されていても良い。更に、金属板等の導電体によって導電部材14を形成することも可能である。
【0022】
また、導電部材14の下面が図示しない基体の上面に重ね合わされて固着されていると共に、導電部材14の上面には操作面16が設けられている。操作面16は、平面視で長円形状を呈しており、左右方向(図3中、上下)の両端が前後に延びる直線形状とされていると共に、前後方向(図3中、左右)の両端が前後方向外側に向かって凸の湾曲形状とされている。これにより、操作面16は、平面視において、前後方向が左右方向よりも長手とされた形状を有している。そして、後述する手指48の操作面16への接触および移動が、通電状態の変化に基づいて検出されるようになっている。
【0023】
また、導電部材14の一端には、第1の直流電源20が接続されており、第1の直流電源20から導電部材14の一端に直流電圧が印加されている。一方、導電部材14の他端には、第2の直流電源22が接続されており、第2の直流電源22から導電部材14の他端に直流電圧が印加されている。これら第1,第2の直流電源20,22によって、導電部材14には、同相且つ同電位の電圧が2箇所から印加されており、後述する手指48が接触していない状態では導電部材14には電流が流れない。
【0024】
また、導電部材14の一端には、第1の検出用抵抗体24が接続されている。第1の検出用抵抗体24は、導電部材14の一端と第1の直流電源20との接続経路上に配設されて、それら導電部材14および第1の直流電源20と電気的に接続されている。一方、導電部材14の他端には、第2の検出用抵抗体26が接続されている。第2の検出用抵抗体26は、導電部材14の他端と第2の直流電源22との接続経路上に配設されて、それら導電部材14および第2の直流電源22と電気的に接続されている。なお、第1,第2の検出用抵抗体24,26は、抵抗値が同じ(R’)とされている。
【0025】
また、第1の検出用抵抗体24への印加電圧を計測するための第1の電圧計28が設けられていると共に、第2の検出用抵抗体26への印加電圧を計測するための第2の電圧計30が設けられている。そして、第1,第2の電圧計28,30の計測値に基づいて導電部材14における通電状態を確認することにより、後述する手指48の導電部材14への接触の有無や接触位置等が検出されるようになっている。
【0026】
さらに、第1,第2の電圧計28,30は、有線乃至は無線によって、処理装置32に接続されている。処理装置32は、第1,第2の電圧計28,30の計測結果に基づいて後述する手指48の導電部材14への接触の有無を判定する接触確認手段34と、接触確認手段34によって手指48の導電部材14への接触が確認された場合に接触位置および接触位置の変化(スライド入力)を特定する操作特定手段36と、操作特定手段36によって特定された操作に応じた制御信号を図示しない車窓の開閉装置に出力する制御信号出力手段38とを有している。
【0027】
このような構造とされたタッチスイッチ10では、導電部材14の操作面16が基準面40を含んで構成されている。基準面40は、図3〜図5に示されているように、前後方向で直線的に延びていると共に、左右方向で外側に行くに従って上傾するように湾曲して広がっており、全体として前後方向に一定の断面で延びる溝状とされている。本実施形態において基準面40は、前後方向において水平面に対して殆ど傾斜することなく広がっている。また、基準面40は、平面視において車両の前後方向を長手方向とする長方形とされている。なお、基準面40が前後方向で直線的に延びているとは、図4に示された前後方向において曲率半径が無限大とされていることをいう。
【0028】
また、基準面40の前方側(図4中の右側)には、前方湾曲面42が連続的に設けられている。前方湾曲面42は、前方側に向かって次第に上傾する傾斜面であって、前方側に行くに従って次第に基準面40に対する相対的な傾斜角度が大きくなる円弧状の湾曲面とされている。本実施形態では、基準面40と前方湾曲面42の境界に折れ線が形成されているが、それら基準面40と前方湾曲面42は境界部分が湾曲面で構成されてなだらかに連続していても良い。
【0029】
さらに、図6に示された前方湾曲面42の基準面40に対する相対的な傾斜角度の最大値:θは、5°≦θ≦60°の範囲に設定されることが望ましく、本実施形態ではθ=60°に設定されている。また、前方湾曲面42は、図6に示された曲率半径:rが、10mm≦r≦3000mmの範囲に設定されることが望ましく、本実施形態ではr=30mmに設定されている。更に、前方湾曲面42の曲率半径は、無限大に設定された基準面40の曲率半径よりも小さくされている。なお、図6では、見易さのために、前方湾曲面42の曲率半径:rが実際よりも小さく描かれている。
【0030】
また、基準面40の後方側(図4中の左側)には、後方湾曲面44が連続的に設けられている。後方湾曲面44は、後方側に向かって次第に上傾する傾斜面であって、後方側に行くに従って次第に基準面40に対する相対的な傾斜角度が大きくなる円弧状の湾曲面とされている。なお、本実施形態では、後方湾曲面44が前方湾曲面42と略同じ曲率半径および基準面40に対する相対的な傾斜角度で形成されているが、後方湾曲面44が指先の移動軌跡の違い等に応じて前方湾曲面42とは異なる形状の湾曲面とされていても良い。
【0031】
また、操作面16は、左右方向(図3中、上下方向)で全体が湾曲して外方に向かって上傾している。これにより、導電部材14には、操作面16を底面とする長手凹形状の操作凹所46が上面に開口して形成されている。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態の操作面16は、長手とされた前後方向で最大寸法が25mmとされていると共に、短手とされた左右方向で最大寸法が10mmとされており、手指48の屈伸によってスライド入力が容易に実行され得るサイズとされている。
【0032】
そして、図7に示されているように、手指48が導電部材14の操作凹所46に挿入されて指先が操作面16に接触すると、導電部材14が手指48を含む人体を通じて接地されることから、導電部材14および第1,第2の検出用抵抗体24,26に電流:I1 ,I2 が流れる。
【0033】
第1,第2の検出用抵抗体24,26に電流:I1 ,I2 が流れると、第1,第2の電圧計28,30において第1,第2の検出用抵抗体24,26に流れる電流に応じた電圧値:Vm1 ,Vm2 が計測される。そして、処理装置32の接触確認手段34は、第1,第2の電圧計28,30の各計測値:Vm1 ,Vm2 が所定の数値以上である場合に、導電部材14に対する手指48(被検出導電体)の接触を検出する。なお、接触確認手段34は、例えば第1,第2の電圧計28,30の計測値が予め設定された閾値以上であるか否かを判定するものであって、計測値が閾値以上であると判定された場合に導電部材14の操作面16に対する手指48の接触が検知される。
【0034】
そして、導電部材14の操作面16に対する手指48の接触が検知されると、処理装置32の操作特定手段36が、第1,第2の電圧計28,30の計測値に基づいて手指48の操作面16に対する当接位置を特定する。即ち、図7に示されているように、全体の抵抗値をRとされた導電部材14の中間部分に手指48が接触すると、抵抗体としての導電部材14は、一方の端(図7中、左端)から手指48の接触位置までの第1の抵抗体50(抵抗値はR1 )と、他方の端(図7中、右端)から手指48の接触位置までの第2の抵抗体52(抵抗値はR2 )とに実質的に分割される。これら第1の抵抗体50の抵抗値:R1 と、第2の抵抗体52の抵抗値:R2 の比は、導電部材14の一方の端から手指48の接触位置までの距離と、導電部材14の他方の端から手指48の接触位置までの距離との比と略同じになることから、R1 とR2 の比を求めることによって、手指48の導電部材14に対する接触位置が特定される。なお、導電部材14に手指48が接触した状態を電気回路図として示したのが、図8である。
【0035】
なお、第1,第2の電圧計28,30による電圧値の計測は所定の時間間隔で繰り返されており、操作特定手段36が手指48の導電部材14に対する接触位置の変化を連続的に検出している。これにより、手指48の先端部分(指先)を導電部材14の表面(操作面16)に接触させながら移動させた場合に、手指48の変位方向と変位量が特定されるようになっている。
【0036】
操作特定手段36によって手指48の接触位置や接触しながらの移動(スライド入力)が検知されると、処理装置32の制御信号出力手段38は、手指48の操作面16に対する接触位置や操作面16に接触しながらの移動量および移動方向等に応じた制御信号を、車両の装置に出力する。タッチスイッチ10の操作によって制御される装置は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば、図示しない車窓の開閉装置が制御されるようになっており、タッチスイッチ10への指先によるスライド入力に応じて車窓の開閉動作が実行される。なお、本実施形態では、手指48を操作面16に接触させながら操作凹所46の長手方向で移動させることにより、移動方向(図2中、左方向又は右方向)に応じて開作動と閉作動が識別されると共に、移動量に応じて車窓の開閉動作量が設定されて、制御信号出力手段38から車窓の開閉装置に制御信号として出力される。
【0037】
このようなスライド入力時に、タッチスイッチ10では、手指48の屈伸による指先の操作面16への当接状態の変化が生じ難くなっており、検出精度の向上が図られている。
【0038】
すなわち、図9の(a)に示されているように、手指48の近位指節間関節(第2関節)が屈曲した状態では、指先が基準面40に当接しており、各関節の屈曲角度等を調節しながら指先を前後方向に移動させることで、略一定の当接圧でスライド入力を行うことができる。
【0039】
次に、手指48の第2関節が徐々に伸びると、図9の(b)、(c)のように、指先が前方湾曲面42上に至るようになっている。そして、関節の曲がりが小さくなってからの指先の円弧状移動に対応して、操作面16(前方湾曲面42)が円弧状に湾曲していることから、指先が操作面16から離隔することなく接触状態に維持されて、指先の操作面16に対する接触移動が安定して検出される。
【0040】
一方、図9の(a)の状態から、手指48の関節がより大きく屈曲されると、指先が使用者の手前側(後方側)に変位して後方湾曲面44上に至るようになっている。そして、関節の曲がりが大きくなってからの指先の円弧状移動に対応して、操作面16(後方湾曲面44)が円弧状に湾曲していることから、指先が操作面16から離隔することなく接触状態に維持されて、指先の操作面16に対する接触移動が安定して検出される。
【0041】
このように、操作面16が、基準面40と、その前方側に連続する前方湾曲面42と、後方側に連続する後方湾曲面44とを含んで構成されて、手指48の屈伸による指先の移動軌跡を考慮した形状とされていることにより、前後方向のスライド入力時に、操作面16において入力を充分な精度で検出可能な領域を大きく確保することができる。特に、操作面16の前端と後端において、指先が操作面16から離れて検出不能になったり、指先の操作面16に対する当接部位が変化して検出結果が実際の指先の動きと異なったりといった不具合が回避されることから、操作面16の全体で安定して高精度な検出が実現される。
【0042】
また、前方湾曲面42と後方湾曲面44との間に前後方向に延びる基準面40が設けられていることによって、前後方向のスライド入力のストロークが大きく確保されている。これにより、スライド入力時に指先の移動量が大きくなって、使用者が入力を体感し易くなると共に、検出精度の向上が図られ得る。特に、平面視において、基準面40が前後方向で長手形状とされており、操作面16が前後方向で長手形状とされていることから、操作面16を必要以上に大きく設けることなく、前後方向での入力ストロークが効率的に確保される。
【0043】
また、前方湾曲面42の基準面40に対する相対的な傾斜角度の最大値:θが60°とされており、5°≦θ≦60°の範囲に設定されている。これにより、手指48の伸展に対して指先の操作面16に対する接触部位の変化を効果的に抑えることができて、接触部位の変化による検出精度の低下が防止される。
【0044】
また、前方湾曲面42の曲率半径:rが30mmとされており、10mm≦r≦3000mmの範囲に設定されている。これにより、手指48の伸展に対して指先の操作面16に対する接触状態が安定して維持されて、略一定の圧力での入力を容易に行うことができることから、検出精度の向上が図られる。
【0045】
なお、後方湾曲面44の基準面40に対する相対的な傾斜角度の最大値および後方湾曲面44の曲率半径は、前方湾曲面42のそれらと同じとされていることから、前方湾曲面42と同様に、検出精度の向上が実現される。
【0046】
図10〜図12には、本発明の第2の実施形態のタッチスイッチを構成する導電部材60が示されている。導電部材60は、第1の実施形態の導電部材14と同様に、合成樹脂材料にカーボンブラック等の導電性フィラーを混合した導電性樹脂材料等によって形成されている。なお、以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、同一の符号を付すことで説明を省略する。また、本実施形態のタッチスイッチにおいて、図中に示されていない部分については、第1の実施形態のタッチスイッチ10と実質的に同一である。
【0047】
また、導電部材60には、操作面62が形成されている。この操作面62は、導電部材60の上面に開口する操作凹所64の底面として形成されており、基準面66を含んで構成されている。
【0048】
基準面66は、操作面62の前後方向中間部分に設けられており、図11に示されているように、前後方向において外方に向かって上傾する円弧状の湾曲形状を呈している。また、基準面66は、図12に示されているように、左右方向においても外方に向かって上傾する円弧状の湾曲形状を呈している。
【0049】
また、基準面66の前方側には、前方湾曲面68が設けられている。前方湾曲面68は、基準面66の前端から前方に向かって延びるように連続して設けられており、前方に向かって上傾していると共に、前方側に行くに従って傾斜角度が大きくなる円弧状の湾曲面とされている。更に、前方湾曲面68は、基準面66と同様に、左右方向で外方に向かって上傾するように湾曲している。
【0050】
また、基準面66の後方側には、後方湾曲面70が設けられている。後方湾曲面70は、基準面66の後端から後方に向かって延びるように連続して設けられており、後方に向かって上傾していると共に、後方側に行くに従って傾斜角度が大きくなる円弧状の湾曲面とされている。更に、後方湾曲面70は、基準面66および前方湾曲面68と同様に、左右方向で外方に向かって上傾するように湾曲している。
【0051】
図13に示されているように、基準面66の曲率半径:r1 は、前方湾曲面68の曲率半径:r2 に比して大きくされており、本実施形態では、基準面66の曲率半径:r1 が前方湾曲面68の曲率半径:r2 に対して略2倍とされている。更に、後方湾曲面70の曲率半径は、前方湾曲面68の曲率半径と同じr2 とされている。
【0052】
さらに、前方湾曲面68の基準面66に対する傾斜角度の最大値:θ(図13参照)は、5°≦θ≦60°の範囲に設定されており、本実施形態ではθ=20°に設定されている。
【0053】
このような構造とされた導電部材60を備えたタッチスイッチによれば、第1の実施形態のタッチスイッチ10と同様に、手指48の先端部分(指先)の動きに沿った形状の操作面62が実現されている。特に、前方湾曲面68が形成されていることによって、手指48の関節が伸展した状態での入力操作において検出精度の低下が防止されると共に、後方湾曲面70が形成されていることによって、手指48の関節が屈曲した状態での入力操作において検出精度の低下が防止される。
【0054】
また、本実施形態のタッチスイッチでは、基準面66が前後方向で湾曲しながら延びる円弧状の凹面とされている。これにより、手指48の屈伸による指先の移動がよりスムーズに許容されて、指先の操作面62に対する当接位置の変化がより効果的に低減されることから、スライド入力の検出精度が一層高められる
【0055】
さらに、基準面66の曲率半径:r1 が前方湾曲面68および後方湾曲面70の曲率半径:r2 に比して大きくされている。それ故、操作面の全体が一様の曲率半径で形成されている場合に比して、手指48の伸展状態および屈曲状態におけるスライド入力の検出精度を確保しつつ、操作面62の前後方向でのサイズが確保されることによる操作感の向上を実現することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態の操作面16,62は、前方湾曲面42,68と後方湾曲面44,70の両方を備えていたが、後方湾曲面44,70は必須ではない。
【0057】
また、前方湾曲面42,68は、必ずしも一定の曲率半径で円弧状に湾曲しているものに限定されず、曲率半径が変化していても良い。このように前方湾曲面42,68の曲率半径が変化している場合には、曲率半径の平均値:r’が10mm≦r’≦3000mmの範囲に設定されることが望ましい。このことは、後方湾曲面44,70についても同様である。なお、曲率半径の平均値:r’は、曲率半径が一定とされた部分の中心角を前方湾曲面42,68の中心角:α(図6参照)で除した値に、その部分の曲率半径を乗算したものをそれぞれ算出し、各部分の数値を和したものを言う。より好ましくは、前方湾曲面42,68(後方湾曲面44,70)が、全体において上記の数値範囲を満たす曲率半径で形成される。
【0058】
また、前記実施形態では、操作面16,62が左右方向で湾曲していたが、左右方向の湾曲は必須ではなく、例えば、基準面40,66が平面で構成されていても良い。また、操作面16,62は、入力のストロークを効率的に確保するために、前後方向で長手の平面形状を有していることが望ましいが、必須ではなく、例えば平面視で円形や正方形の操作面も採用され得る。
【0059】
また、導電部材14の表面に薄肉の絶縁体層が被着形成されて、操作面16,62が絶縁体で被覆されていても良い。この場合には、手指48と導電部材14の直接的な接触が生じ得ないが、交流電圧を印加することで、絶縁体層を誘電体とすると共に手指48および導電部材14を一対の電極とするコンデンサが構成されることから、静電容量の変化を検出することによって、手指48の動作を入力として検出することができる。要するに、本発明に係るタッチスイッチにおいて、入力の検出方法は特に限定されない。なお、絶縁体層を持たない構造のタッチスイッチに交流電圧を印加しても良く、その場合にも目的とするスライド入力の検出が実現され得る。
【0060】
また、前記実施形態では、導電部材14に対して複数箇所(2箇所)から電圧が印加された構造が示されているが、例えば導電部材14に対して1箇所に電圧が印加されていても良く、電圧の印加部分と指先の接触部分との間の抵抗変化に基づいて、指先の接触位置の変化を検出することができる。なお、電圧が3箇所以上の複数箇所から印加されていても良いことは言うまでもない。
【0061】
また、例えば、アームレスト12に接地された導電部が設けられて、導電部を親指で触りながら人差指で導電部材14の操作面16,62に触れてスライド入力することにより、入力が検出されるようになっていても良い。これにより、電気抵抗が低減されて、検出精度の向上と安定化が図られ得る。
【0062】
また、本発明に係るタッチスイッチの適用範囲は、車窓開閉用インターフェイスに限定されるものではなく、例えばオーディオやエアーコンディショナ等を操作するための入力インターフェイス等、各種の入力インターフェイスも適用範囲に含まれる。更に、本発明のタッチスイッチは、自動車用に限定されるものでもない。
【符号の説明】
【0063】
10:タッチスイッチ、14,60:導電部材、16,62:操作面、40,66:基準面、42,68:前方湾曲面、44,70:後方湾曲面、48:手指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材に対して電圧が印加されており、該導電部材における通電状態に基づいて手指の該導電部材上での接触移動を検出するタッチスイッチにおいて、
前記手指が接触する前記導電部材の操作面が該手指の先端側を前方として前後方向で延びる基準面を備えていると共に、該操作面が、該基準面から前方に向かって上傾しながら延び出して、前方側に向かって傾斜角度が大きくなる前方湾曲面を備えており、該前方湾曲面が該基準面よりも小さな曲率半径を有していることを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項2】
前記導電部材の前記操作面が、前記基準面から前記手指の基端側となる後方に向かって上傾しながら延び出して、後方側に向かって該基準面に対する傾斜角度が大きくなる後方湾曲面を備えている請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
前記前方湾曲面の前記基準面に対する傾斜角度の最大値:θが、5°≦θ≦60°の範囲に設定されている請求項1又は2に記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記導電部材の前記操作面が前後方向を長手とされている請求項1〜3の何れか1項に記載のタッチスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−88904(P2013−88904A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226767(P2011−226767)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】