説明

タッチセンサ

【課題】素手状態及び手袋装着状態のいずれでも、操作入力を検知できるようにする。
【解決手段】タッチセンサ1は、ユーザーの指が接触する被タッチ面2を有する第1の誘電体3と、この誘電体3の前記被タッチ面2と反対側に設けられた第1の電極4と、この第1の電極4と第2の誘電体5を介して対向する第2の電極6とを備え、前記第1の誘電体3及び第1の電極4を、前記被タッチ面2が指で押圧されたときに弾性的に前記第2の電極6方向へ湾曲変形可能に構成し、前記第2の誘電体5を、第1の誘電体3及び第1の電極4の第2の電極6方向への湾曲変形を許容する構成とし、被タッチ面2と前記第1の電極4との間の静電容量変化と、前記第1の電極4と第2の電極6との間の静電容量変化とによりユーザーの指のタッチ操作を検知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のタッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式のタッチセンサは、タッチ面に素手や専用タッチペンで触れることによりタッチ面と電極との間の静電容量変化を検出し、これにて、操作入力を検出するようにしている(特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−173067号公報
【特許文献2】特開2007−115440号公報
【特許文献3】特開2006−343795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザーにおいては、通常は、素手であることが多いが、使用環境や、季節などによっては、手に手袋を装着することがあり、又、手袋を装着したり外したりする場合もある。しかし、従来のタッチセンサでは、手に手袋をした状態では、静電容量が変化しないため、操作入力を検知できず、逐一手袋を外す必要がある。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、素手状態及び手袋装着状態のいずれでも、操作入力を検知できるタッチセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ユーザーの指が接触する被タッチ面を有する第1の誘電体と、この誘電体の前記被タッチ面と反対側に設けられた第1の電極と、この第1の電極と第2の誘電体を介して対向する第2の電極とを備え、前記第1の誘電体及び第1の電極を、前記被タッチ面が指で押圧されたときに弾性的に前記第2の電極方向へ湾曲変形可能に構成し、前記第2の誘電体を、前記第1の誘電体及び第1の電極の前記第2の電極方向への湾曲変形を許容する構成とし、前記被タッチ面と前記第1の電極との間の静電容量変化と、前記第1の電極と第2の電極との間の静電容量変化とによりユーザーの指のタッチ操作を検知するようにしたところに特徴を有する。
【0007】
この請求項1の発明においては、ユーザーの指が被タッチ面に接触していない場合には、第1の電極は回路的に開放しており、この第1の電極と被タッチ面と第1の誘電体とは実質コンデンサとして作用しておらず、静電容量は無視できる程度に小さい。又、第1の電極と第2の電極と第2の誘電体とによりコンデンサ(以下、便宜上電極間コンデンサという)が形成されている。センサ検知手段は、このときの電極間コンデンサの静電容量に応じてユーザーが非タッチ状態であることが検知する。
【0008】
そして、ユーザーが素手で被タッチ面に接触すると被タッチ面とユーザーとが導通状態となり、前記第1の電極と被タッチ面(すなわち導通状態の指先)と第1の誘電体とによりコンデンサ(以下、便宜上人体間コンデンサという)が形成され、この人体間コンデンサにより大きな静電容量が発生し、つまり第1の電極と被タッチ面との間の静電容量が大きく変化する。この静電容量変化と前記電極間コンデンサの静電容量とに応じてユーザーの指のタッチ操作が検知される。又、ユーザーが例えば手袋をした指で被タッチ面に接触すると、手袋が被タッチ面に対して絶縁体として作用し、前記第1の電極は回路的に開放したままとなり(人体間コンデンサは形成されず)、指のタッチ操作は検出されない。この場合、ユーザーは、タッチ操作したにもかかわらずタッチ操作検出がされないことに気付き、指を被タッチ面にさらに押圧する。すると、第1の誘電体及び第1の電極が第2の電極方向へ湾曲し、第1の電極と第2の電極との距離が縮まって電極間コンデンサの静電容量が変化し、この変化によりユーザーの指のタッチ操作が検知される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタッチセンサによれば、素手状態及び手袋装着状態のいずれでも、操作入力を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示し、タッチセンサの縦断側面図
【図2】タッチ検出回路の電気回路図
【図3】作用説明のための図1相当図
【図4】図3の場合のタッチ検出回路の電気回路図
【図5】別の作用説明のための図1相当図
【図6】図5の場合のタッチ検出回路の電気回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1において、タッチセンサ1は、タッチ面2を有する第1の誘電体3と、第1の電極4と、第2の誘電体5と、第2の電極6と、基板7と、タッチ検出回路8(図2参照)とを備えて構成されている。
【0012】
前記第1の誘電体3と第1の電極4とは、フレキシブル基板9により形成されている。このフレキシブル基板9は、絶縁性があって弾性変形が可能な基板本体に導体パターンを印刷形成したものであり、基板本体により前記第1の誘電体3が形成され、導体パターンにより前記第1の電極4が形成されている。そして、前記被タッチ面2は薄肉のシリコンゴムにより形成されていて、前記第1の誘電体3上に配設されている。ここで、前記第1の電極4は、この第1の誘電体3の前記被タッチ面2と反対側に設けられた形態となっている。前記第1の誘電体3及び第1の電極4は、前記被タッチ面2が指で押圧されたときに、弾性的に第2の電極6方向へ湾曲変形可能である。
【0013】
前記基板7上面には前記2の電極6が導体パターンにより形成されており、この第2の電極6に対向するように前記第1の電極4がスペーサ10、10を介して配設されている。この第2の電極6はGND電位となっている。この第1の電極4と第2の電極6との間に前記第2の誘電体5が形成されており、この場合、この第2の誘電体5は空気層から構成されている。従って、この第2の誘電体5は、前記第1の誘電体3及び第1の電極4が図3に示すように湾曲変形することを許容している。
【0014】
タッチ検出手段たる前記タッチ検出回路8について、図2を参照して説明する。このタッチ検出回路8は一般的な静電容量検出回路であり、高周波信号を出力する発振部11、負荷抵抗12、前記第1の電極4、高周波信号の検波及び平滑を行う検波部13、オペアンプ14を備えて構成されている。発振部11の出力端子には、負荷抵抗12を介して第1の電極4が接続されている。
【0015】
検波部13は、ダイオード及びコンデンサなどからなり、発振部11からの高周波信号が入力されている。また、検波部13の出力はオペアンプ14を介して、増幅及びオフセットされた信号Voutとして制御装置に入力されている。なお、発振部11、負荷抵抗12、検波部13、オペアンプ14は、パッケージ化され静電容量検出IC15を構成している。又、前記第2の電極6はGNDに接続されている。
【0016】
上記構成において、図2に示すように、ユーザーの指が被タッチ面2に接触していない場合には、第1の電極4は回路的に開放している。この第1の電極4と被タッチ面2と第1の誘電体3とは実質コンデンサとして作用しておらず、静電容量は無視できる程度に小さい。又、この場合、第1の電極4と第2の電極6と第2の誘電体5とにより電極間コンデンサCaが形成されており、この電極間コンデンサCaのみが有効化されている。このとき、発振部11から出力された高周波信号は、第1の電極4及び第2の電極6により形成された電極間コンデンサCa(静電容量Ca1)のインピーダンスと負荷抵抗12とで分圧されて検波部13に入力される。この結果、検波部13及びオペアンプ14を介して出力される信号Voutは、前記コンデンサCaの静電容量Ca1に応じたレベルV1となる。この信号V1をもってユーザーのタッチ操作が無いことが検知される。なお、図示しないが、ユーザーのタッチ操作の有無に応じて図示しない表示手段あるいは報知手段が有無を表示あるいは報知するようになっている。もしくは、タッチ操作の有りに応じて何らかの設定を行う場合には、その設定に関する表示が図示しない表示手段に表示されるようになっている。
【0017】
そして、図3に示すように、ユーザーが素手で被タッチ面2に接触すると、図4に示すように、ユーザー自身がGNDとして作用し、前記第1の電極4と被タッチ面2(指先)との間に静電容量Cb1の人体間コンデンサCbが形成され、つまり、前記第1の電極4と被タッチ面2との間の静電容量が大きく変化する。この人体間コンデンサCbと電極間コンデンサCaとの合成静電容量は「Ca1+Cb1」となり、これに応じて、前記信号VoutはV2となり、この信号V2をもって、ユーザーの指のタッチ操作が有ったと検知される。
【0018】
又、図5に示すように、ユーザーが例えば手袋をした指で被タッチ面2に接触すると、手袋が被タッチ面2に対して絶縁体として作用し、図6に示すように、前記第1の電極4は回路的に開放したままとなり、図1と同様、指のタッチ操作は検出されない。この場合、ユーザーは、タッチ操作したにもかかわらずタッチ操作検出がされないことに気付き、指を被タッチ面2にさらに押圧する。すると、第1の誘電体3及び第1の電極4が第2の電極6方向へ湾曲し、第1の電極4と第2の電極6との距離が縮まって電極間コンデンサCaの静電容量がCa1からCa2へ変化し、信号Voutが信号V3に変化する。この信号V3をもって、ユーザーの指のタッチ操作が有ったと検知される。
【0019】
この結果、本実施形態によれば、素手状態及び手袋装着状態のいずれでも、操作入力を検知できる。
又、本実施形態によれば、第1の誘電体3を、フレキシブル基板9の基板本体により構成し、且つ、前記第1の電極4を当該基板本体に印刷形成された導体パターンから構成したから、弾性変形が可能な第1の誘電体3及び第1の電極4を簡単に形成することができる。
【0020】
又、本実施形態によれば、第1の電極4と第2の電極6とはそれぞれの両端部が電気絶縁性スペーサ10、10により離間し、これら第1の電極4及び第2の電極6間の第2の誘電体5を空気層としているから、第1の誘電体3及び第1の電極4の湾曲変形を許容する構成を簡単に実現できる。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、次のように変更して実施しても良い。
第1の誘電体は電気絶縁性ゴムにより形成し、第1の電極は導電ゴムにより形成しても良い。又、タッチ検出回路としては、第1の電極と被タッチ面との静電容量変化を検出するタッチ検出回路と、第1の電極及び第2の電極間の静電容量の変化を検出するタッチ検出回路とを、別々に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0022】
図面中、1はタッチセンサ、2は被タッチ面、3は第1の誘電体、4は第1の電極、5は第2の誘電体、6は第2の電極、8はタッチ検出回路、9はフレキシブル基板を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの指が接触する被タッチ面を有する第1の誘電体と、
この誘電体の前記被タッチ面と反対側に設けられた第1の電極と、
この第1の電極と第2の誘電体を介して対向する第2の電極とを備え、
前記第1の誘電体及び第1の電極を、前記被タッチ面が指で押圧されたときに弾性的に前記第2の電極方向へ湾曲変形可能に構成し、
前記第2の誘電体を、前記第1の誘電体及び第1の電極の前記第2の電極方向への湾曲変形を許容する構成とし、
前記被タッチ面と前記第1の電極との間の静電容量変化と、前記第1の電極と第2の電極との間の静電容量変化とによりユーザーの指のタッチ操作を検知することを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記第1の誘電体はフレキシブル基板の基板本体により構成され、且つ、前記第1の電極は当該基板本体に印刷形成された導体パターンから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記第1の電極と第2の電極とはそれぞれの両端部が電気絶縁性スペーサにより離間し、これら第1の電極及び第2の電極間の第2の誘電体は空気層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタッチセンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−14280(P2011−14280A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155221(P2009−155221)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】