説明

タッチセンサ

【課題】 集積回路化が容易なタッチセンサを提供する。
【解決手段】タッチセンサ100Aは、センサパッド22が接続されるタッチ線28と、基準容量20が接続された基準線29と、クロック信号に応じてタッチ線28を充電又は放電するインバータ13と、クロック信号に応じて、基準線29を充電及び放電するインバータ14と、タッチ線28の電圧と基準線29の電圧を比較する比較器23と、基準線29の充電又は放電の開始から基準線29の電圧が所定の電圧に到達するまでの期間にラッチパルスLPを生成するラッチパルス生成回路と、ラッチパルスLPに応じて比較器23の比較出力をラッチするラッチ回路24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサパッドに人の指等が接触したことを検知するタッチセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルや、遊技機の操作ハンドル等に人の指等が接触したことを検出するタッチセンサとしては、LC発振回路を用いたものが知られている。このタッチセンサは、LC発振を行うLC発振回路、そのLC発振回路の出力を検波する検波回路、その検波された電圧を検知する電圧検知回路、検波回路の入力部に接続されたセンサプレートと、を有し、センサプレートに指が触れることによる等価インピーダンスの低下を電圧検知回路が電圧変化として検知することによって、指がセンサプレートに接触したことを検出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−14164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のタッチセンサでは、LC発振回路はコイルを有しているため、集積回路に内蔵化することが難しい。また、LC発振回路を構成するコイルや容量等の部品を集積回路の外部に設けると、部品数、コストが増加するとともに、小型化が難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、集積回路化が容易なタッチセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタッチセンサは、センサパッドが接続されるタッチ線と、基準容量が接続された基準線と、HレベルとLレベルを交互に繰り返すクロック信号に応じて、前記タッチ線を充電し及び放電する第1の充放電回路と、前記クロック信号に応じて、前記基準線を充電し及び放電する第2の充放電回路と、前記タッチ線の電圧と前記基準線の電圧を比較する比較器と、前記基準線の充電又は放電の開始から前記基準線の電圧が所定の電圧に到達するまでの期間にラッチパルスを生成するラッチパルス生成回路と、前記ラッチパルスに応じて前記比較器の比較出力をラッチするラッチ回路とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、集積回路化が容易なタッチセンサを提供することができる。また、本発明のタッチセンサは、センサ感度が集積回路のプロセスや、電源電圧等の影響をほとんど受けないという利点も有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態のタッチセンサの回路図である。
【図2】比較器の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のタッチセンサの第1の動作波形図である。(人の指がセンサパッドに接触している場合)
【図4】本発明の第1の実施形態のタッチセンサの第2の動作波形図である。(人の指がセンサパッドに接触していない場合)
【図5】本発明の第2の実施形態のタッチセンサの回路図である。
【図6】本発明の第3の実施形態のタッチセンサの回路図である。
【図7】本発明の第3の実施形態のタッチセンサの第1の動作波形図である。
【図8】本発明の第3の実施形態のタッチセンサの第2の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を図1に基づいて説明する。タッチセンサ100Aは、リングオシレータ10、インバータ11〜17,33、NAND回路18、調整容量19、基準容量20、センサパッド22、比較器23、ラッチ回路24,25、静電破壊保護回路26、ダミー静電破壊保護回路27、タッチ線28、基準線29を含んで構成される。センサパッド22以外の構成要素は、1チップの集積回路の中に内蔵することができる。
【0010】
リングオシレータ10は、奇数個(例えば、3個)のインバータを直列に接続し、最終段のインバータの出力端を初段のインバータの入力端に帰還入力して構成される。リングオシレータ10はHレベルとLレベルを交互に繰り返すクロック信号を生成する。Hレベルは電源電圧Vccのレベルであり、Lレベルは接地電圧Vssのレベルである。リングオシレータ10の周波数は、インバータに供給される電源電圧Vddに依存し、例えば数10KHz〜数MHz(Vdd=3〜7V)である。リングオシレータ10は簡単な構成でクロック信号を生成することができるが、その代わりに、RC発振回路などを用いることもできる。
【0011】
インバータ11,12は、リングオシレータ10により生成されたクロック信号の波形を整形するためのインバータであり、リングオシレータ10の出力端に直列に接続されている。インバータ13,14はそれぞれ第1及び第2の充放電回路を構成し、それぞれの入力端にインバータ12により整形されたクロック信号ROが印加される。即ち、インバータ13,14は、クロック信号ROがLレベルの時はそれぞれタッチ線28及び基準線29をHレベルに充電し、クロック信号ROがHレベルの時はそれぞれタッチ線28及び基準線29をLレベルに放電する。
【0012】
タッチ線28は、インバータ13の出力端に接続された配線である。センサパッド22は、人の指が触れる電極であって、容量値C1を有する調整容量19を介してタッチ線28に接続されている。接触容量21は、センサパッド22と接地の間に形成される一種の可変容量と考えることができる。人の指がセンサパッド22に接触している場合には、接触容量21の容量値はCx、人の指がセンサパッド22に接触していない場合にはその容量値は0である。
【0013】
この場合、タッチ線28に接続される接触容量21と調整容量19の合計容量の容量値C2は、C2=C1・Cx/(C1+Cx)である。人の指がセンサパッド22に触れていない場合には、Cx=0なので、C2=0である。人の指がセンサパッド22に接触している場合には、Cxは45〜80pFであり、C1を例えば100pFとすると、C2=30〜45pFである。
【0014】
このように、調整容量19を設けることにより、タッチ線28に接続される接触容量21の容量値Cxを見かけ上ある程度小さくなるように調整することができるが、調整容量19を設けず、センサパッド22をタッチ線28に直接接続することもできる。
【0015】
基準線29は、インバータ14の出力端に接続された配線である。基準容量20は基準線29に接続されている。基準容量20の容量値をC3とすると、0<C3<C2、となるように選ばれる。C2は、人の指がセンサパッド22に接触している場合の容量値である。基準容量20は可変容量であることが好ましい。容量値C3を可変することにより、タッチセンサ100Aの感度を調整することができるからである。
【0016】
静電破壊保護回路26は、人の指がセンサパッド22に接触した時のサージ電圧によりインバータ13、次段の比較器23等が破壊されるのを防止するための回路である。静電破壊保護回路26は、タッチ線28からサージ電圧を抜くために、タッチ線28と電源電圧Vccを供給する電源線の間に接続された第1のダイオードと、タッチ線28と接地線と間に接続された第2のダイオードからなる。
【0017】
静電破壊保護回路26はこれに限らず、トランジスタ等の他の素子を用いて構成することもできる。この静電破壊保護回路26は、容量値C4(例えば、10pF)を持っており、この容量値C4がタッチ線28に付加されることになる。そこで、静電破壊保護回路26の持っている容量値C4のタッチ線28への影響をキャンセルするために、基準線29に静電破壊保護回路26と同じ容量値C4を持ったダミー静電破壊保護回路27が接続されている。
【0018】
そうすると、人の指がセンサパッド22に接触している場合には、タッチ線28に接続された容量の合計容量値はC2+C4であり、基準線29に接続された容量の合計容量値はC3+C4である。また、前述のようにC2>C3である。したがって、この場合、タッチ線28は基準線29より大きな容量を持っている。一方、人の指がセンサパッド22に触れていない場合には、タッチ線28に接続された容量の合計容量値はC4であり、基準線29に接続された容量の合計容量値C3+C4であるから、この場合、タッチ線28は基準線29より小さい容量を持っていることになる。
【0019】
インバータ17,33、NAND回路18はラッチパルス生成回路を構成する。インバータ33には、第2の充放電回路であるインバータ14の出力が入力される。NAND回路18にはインバータ33の出力及びインバータ11の出力が印加される。NAND回路18の出力は、インバータ17に印加される。そして、インバータ17の出力端からラッチパルス生成回路のラッチパルスLPが得られる。
【0020】
即ち、ラッチパルス生成回路の出力(ラッチパルスLP)は、インバータ11の出力がLレベルからHレベルに立ち上がると、Hレベルに立ち上がり、インバータ14の出力がLレベルから所定の電圧(例えば、1/2Vcc)に立ち上がると、Lレベルに立ち下がる。つまり、ラッチパルスLPは、第2の充放電回路であるインバータ14により、基準線29の充電が開始された時点でHレベルに立ち上がり、その後、基準線29が所定の電圧に到達するとLレベルに立ち下がる。
【0021】
比較器23は、タッチ線28と基準線29の電圧を比較する回路であり、正入力端子(+)にタッチ線28が接続され、負入力端子(−)に基準線29が接続されている。比較器23の出力信号COUTは、タッチ線28の電圧が基準線29の電圧より高い場合には、Hレベルであり、逆に、タッチ線28の電圧が基準線29の電圧より低い場合にはLレベルである。比較器23は動作を安定化させるために、正入力端子(+)と負入力端子(−)の電圧がほぼHレベルの時は、出力信号COUTはHレベルにリセットされるように構成されている。また、比較器23は、低消費電力化のために、前記ラッチパルス生成回路のラッチパルスLPが発生している期間のみ動作するように構成されている。
【0022】
比較器23の出力信号COUTは、波形整形用のインバータ15,16を通して、ラッチ回路24のデータ入力端子Dに印加される。また、ラッチパルスLPは、ラッチ回路24のクロック入力端子に印加される。ラッチ回路24の出力は、次段のラッチ回路25のデータ入力端子Dに印加される。インバータ11の出力はラッチ回路25のデータ入力端子Dに印加される。
【0023】
これにより、基準線29の電圧が所定の電圧に到達した時点における比較器23の出力信号COUTがラッチ回路24に取り込まれ、かつ保持される。ラッチ回路24に保持された比較器23の出力信号COUTは、インバータ11の出力に応じて、次段のラッチ回路25に転送され保持されるようになっている。そして、ラッチ回路25の出力端Qから判定出力信号OUTが得られる。
【0024】
図2は比較器23の構成例を示す回路図である。比較器23は、カレントミラー回路を構成するPチャネル型MOSトランジスタM1,M2、このカレントミラー回路に直列に接続され、一対の差動トランジスタを構成するNチャネル型MOSトランジスタM3,M4、及び動作スイッチを構成するNチャネル型MOSトランジスタM5を含んで構成されている。
【0025】
Nチャネル型MOSトランジスタM3のゲートは比較器23の正入力端子(+)に相当し、タッチ線28が接続されている。Nチャネル型MOSトランジスタM4のゲートは比較器23の負入力端子(−)に相当し、基準線29が接続されている。Nチャネル型MOSトランジスタM5は、Nチャネル型MOSトランジスタM3,M4の共通ソースと接地線との間に接続され、そのゲートにラッチパルスLPが印加される。
【0026】
したがって、ラッチパルスLPがHレベルの時にはチャネル型MOSトランジスタM5
はオンし、比較器23は動作状態となり、Pチャネル型MOSトランジスタM2とNチャネル型MOSトランジスタM4との接続点から比較器23の出力信号COUTが得られる。
【0027】
ラッチパルスLPがLレベルの時にはNチャネル型MOSトランジスタM5はオフし、比較器23は動作停止状態となる。図2では、Nチャネル入力型のカレントミラーを例にとって説明したが、比較器23の回路構成はこれに限定されるものではなく、Pチャネル入力型のカレントミラーであっても良い。また、カスコード型やプッシュプル型などの別の構成であっても良い。
【0028】
次に、タッチセンサ100Aの動作例を説明する。図3は、人の指がセンサパッド22に接触している場合の動作波形図である。この場合、ラッチパルス生成回路のインバータ33のしきい値は1/2Vccに設定されており、ラッチパルスLPは基準線29の電圧が1/2Vccに到達した時に、Lレベルに立ち下がるとする。
【0029】
インバータ12のクロック信号ROがHレベルからLレベルに立ち下がると、インバータ13,14はそれぞれタッチ線28及び基準線29の充電を行う。タッチ線28は基準線29より大きい容量を持っているので、タッチ線28の電圧の立ち上がりは、基準線29に比べてゆっくりである。そのため、タッチ線28のタッチ電圧VTOは、基準線29の基準電圧VREFより低くなる。(図4において、タッチ電圧VTOの曲線は実線で、基準電圧VREFの曲線は一点鎖線で示されている)すると、比較器23の出力信号COUTは、HレベルからLレベルに変化する。
【0030】
その後、基準線29の基準電圧VREFが1/2Vccに到達すると、ラッチパルスLPはLレベルに立ち下がり、その時点での比較器23の出力信号COUT(Lレベル)がラッチ回路24にラッチされる。クロック信号ROがLレベルの間は、タッチ線28及び基準線29の充電は継続され、基準電圧VREFはHレベル(=Vcc)に到達し、タッチ電圧VTOはそれより遅れて、ほぼHレベルに到達する。この時、比較器23の出力信号COUTはHレベルにリセットされる。
【0031】
その後、インバータ12のクロック信号ROがLレベルからHレベルに立ち上がると、インバータ13,14はそれぞれタッチ線28及び基準線29の放電を行う。この場合も、タッチ線28は基準線29より大きい容量を持っているので、タッチ線28の電圧の立ち下がりは、基準線29に比べてゆっくりである。
【0032】
そして、再び、インバータ12のクロック信号ROがHレベルからLレベルに立ち下がると、インバータ13,14はそれぞれタッチ線28及び基準線29の充電を行う。以下、同じ動作が繰り返される。この結果、ラッチ回路25から判定出力信号OUT(Lレベル)が得られる。
【0033】
図4は、人の指がセンサパッド22に接触していない場合の動作波形図である。この場合についても、ラッチパルス発生回路のインバータ33のしきい値は1/2Vccに設定されており、ラッチパルスLPは基準線29の電圧が1/2Vccに到達した時に、Lレベルに立ち下がるとする。
【0034】
インバータ12のクロック信号ROがHレベルからLレベルに立ち下がると、インバータ13,14はそれぞれタッチ線28及び基準線29の充電を行う。この場合は、タッチ線28は基準線29より小さい容量を持っているので、タッチ線28の電圧の立ち上がりは、基準線29に比べて急である。そのため、タッチ線28のタッチ電圧VTOは、基準線29の基準電圧VREFより高くなる。したがって、比較器23の出力信号COUTは、Hレベルである。
【0035】
その後、基準線29の基準電圧VREFが1/2Vccに到達すると、ラッチパルスLPはLレベルに立ち下がり、その時点での比較器23の出力信号COUT(Hレベル)がラッチ回路24にラッチされる。クロック信号ROがLレベルの間は、タッチ線28及び基準線29の充電は継続され、タッチ電圧VTOはHレベルに到達し、基準電圧VREFはそれより遅れてHレベルに到達する。
【0036】
その後、インバータ12のクロック信号ROがLレベルからHレベルに立ち上がると、インバータ13,14は、それぞれタッチ線28及び基準線29の放電を行う。この場合も、タッチ線28は基準線29より小さい容量を持っているので、タッチ線28の電圧の立ち下がりは、基準線29に比べて急である。
【0037】
そして、再び、インバータ12のクロック信号ROがHレベルからLレベルに立ち下がると、インバータ13,14はそれぞれタッチ線28及び基準線29の充電を行う。以下、同じ動作が繰り返される。この結果、判定出力信号OUT(Hレベル)が得られる。
【0038】
このように、タッチセンサ100Aによれば、タッチ線28と基準線29の充電速度の違いを利用して、基準線29が所定の電圧に到達した時点での両者の電圧を比較器23により比較することにより、センサパッド22に人の指が接触したことを検知している。また、このタッチセンサ100Aは、負荷容量だけが違う、全く同じ構成の2系統の充放電回路の出力電圧値の差分を比較する構成のため、ロバスト性能が良く、集積回路に内蔵するのが容易である。つまり、たとえ検出回路自体の特性変化があっても、2系統の出力電圧値の差分をとるため、2系統で同様に生じる特性変化の影響はキャンセルされ、検出すべき負荷容量の違いだけを良好に検出できる特長を持っている。実際、回路シミュレーションでも、センサ感度が集積回路のプロセスや電源電圧(Vcc=3V〜7V)等の影響をほとんど受けないことが確認されている。
【0039】
また、タッチ線28と基準線29の充電速度の代わりに、タッチ線28と基準線29の放電速度の違いを利用して、基準線29が所定の電圧に到達した時点での両者の電圧を比較器23により比較することにより、センサパッド22に人の指が接触したことを検知することができる。この場合は、ラッチパルス生成回路は、タッチ線28及び基準線29の充電時ではなく、放電時にラッチパルスLPを生成するように変更される。即ち、ラッチパルスLPは、第2の充放電回路であるインバータ14により、基準線29の放電が開始された時点でHレベルに立ち上がり、その後、基準線29が所定の電圧に到達するとLレベルに立ち下がる。
【0040】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を図5に基づいて説明する。図5は、タッチセンサ100Bの回路図である。タッチセンサ100Bにおいては、第1の実施形態のタッチセンサ100Aのインバータ13,14の代わりに、定電流源30,31を用いている。その他の構成は、第1の実施形態のタッチセンサ100Aと同じである。
【0041】
即ち、定電流源30は、インバータ12のクロック信号ROがLレベルの時に、タッチ線28に充電電流を供給し、クロック信号ROがHレベルの時に、タッチ線28に放電電流を供給する。また、定電流源31は、インバータ12のクロック信号ROがLレベルの時に、基準線29に充電電流を供給し、クロック信号ROがHレベルの時に、基準線29に放電電流を供給する。充電電流と放電電流は定電流であることから、タッチ線28のタッチ電圧VTOと基準線29の基準電圧VREFは、それぞれリニアに変化する。これにより、比較器23によるタッチ電圧VTOと基準電圧VREFとの比較の精度を向上することができる。
【0042】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を図6に基づいて説明する。図6は、タッチセンサ100Cの回路図である。タッチセンサ100Cは、クロック信号CLKを生成する発振器40、D型フリップフロップ(遅延型フリップフロップ)41,42,43、インバータ45〜50、NAND回路51,52、遅延回路53,54,55、静電破壊保護回路56,ダミー静電破壊保護回路57、センサパッド58、タッチ線59、基準線60を含んで構成される。センサパッド58以外の構成要素は、1チップの集積回路の中に内蔵することができる。
【0043】
第1及び第2の実施形態のタッチセンサ100A,100Bは、タッチ線28と基準線29の電圧を充電時又は放電時のある時点で比較器23により比較することにより、人の指がセンサパッド22に接触したことを検知している。本実施形態では、一対の相補クロック信号を作成し、人の指がセンサパッド58に接触した場合に一方の相補クロック信号の遅延時間が長くなるように回路を構成し、他方の相補クロック信号のレベルが変化した時点で、遅延された相補クロック信号のレベルをD型フリップフロップ43に取り込むことで人の指がセンサパッド22に接触したことを検知するものである。
【0044】
発振器40は、HレベルとLレベルを交互に繰り返すクロック信号を生成する回路であり、第1の実施形態のリングオシレータ10と同じ回路を用いることができる。D型フリップフロップ41,42及びインバータ45,46は、クロック信号CLKに基づいて、一対の相補クロック信号を生成する相補クロック生成回路を構成する。
【0045】
クロック信号CLKはD型フリップフロップ41,42のクロック入力端子CKに入力される。D型フリップフロップ41の出力端子Qからの出力は、D型フリップフロップ42のデータ入力端子Dに入力される。また、D型フリップフロップ41の出力端子Qの出力はインバータ45によって反転されて、D型フリップフロップ41のデータ入力端子Dに入力される。D型フリップフロップ42の出力端子Qは、ダミーのインバータ46の入力端子に接続されている。これは、D型フリップフロップ41,42のそれぞれの出力端子の負荷容量を同じにするためである。
【0046】
これにより、D型フリップフロップ41,42のそれぞれの出力端子からは、互いにレベルが反転された一対の相補クロック信号が得られる。
【0047】
NAND回路51,52及び遅延回路53,54は、D型フリップフロップ41,42から出力された一対の相補クロック信号に基づき、Hレベルが互いに重畳しない、一対の非重畳相補クロック信号VA,VBを生成する非重畳相補クロック生成回路を構成する。
NAND回路51の出力は遅延回路53を通してNAND回路52の入力端に入力され、NAND回路52の出力は遅延回路54を通してNAND回路51の入力端に入力される。
【0048】
すると、遅延回路53の出力端から非重畳相補クロック信号VAが得られ、遅延回路54の出力端から非重畳相補クロック信号VBが得られる。遅延回路53,54は、複数のインバータを直列接続して形成することができる。この時、非重畳相補クロック信号VA,VBのレベル変化のタイミングは、遅延回路53,54による遅延時間tdだけずれることになる。非重畳相補クロック信号VAは、インバータ48の入力端子に入力され、非重畳相補クロック信号VBは、インバータ47の入力端子に入力される。タッチ線59は、インバータ48の出力端子に接続され、基準線60は、インバータ47の出力端子に接続されている。
【0049】
センサパッド58は、人の指が触れる電極であって、タッチ線59に接続されている。接触容量61は、センサパッド58と接地の間に形成される一種の可変容量と考えることができる。人の指がセンサパッド58に接触している場合には、接触容量61は0ではない容量値C10を持つが、人の指がセンサパッド58に接触していない場合にはその容量値は0である。
【0050】
静電破壊保護回路56は、人の指がセンサパッド58に接触した時のサージ電圧によりインバータ48や次段のインバータ49が破壊されるのを防止するための回路である。静電破壊保護回路56は、タッチ線59からサージ電圧を抜くために、タッチ線59と電源電圧Vccを供給する電源線の間に接続された第1のダイオードと、タッチ線59と接地線と間に接続された第2のダイオードからなる。
【0051】
静電破壊保護回路56はこれに限らず、トランジスタ等の他の素子を用いて構成することもできる。この静電破壊保護回路56は、容量値C11(例えば、10pF)を持っており、この容量値C11がタッチ線59に付加されることになる。そこで、静電破壊保護回路56の持っている容量値C11のタッチ線59への影響をキャンセルするために、基準線60に静電破壊保護回路56と同じ容量値C11を持ったダミー静電破壊保護回路57が接続されている。
【0052】
人の指がセンサパッド58に接触している場合には、タッチ線59に接続された容量の合計容量値はC10+C11であり、基準線60に接続された容量の合計容量値はC10である。したがって、この場合、タッチ線59は基準線60より大きな容量を持っている。一方、人の指がセンサパッド58に触れていない場合には、タッチ線59と基準線60は同じ容量値C11を持っていることになる。
【0053】
そして、インバータ48の出力は、波形整形用のインバータ49,50を通してD型フリップフロップ43のデータ入力端子Dに入力される。インバータ47の出力は、遅延回路55を通して、D型フリップフロップ43のクロック入力端子CKに入力される。遅延回路55は、遅延回路53,54と同様に、複数のインバータを直列接続して形成することができる。
【0054】
インバータ50の出力信号が遅延クロック信号VA’であり、遅延回路55の出力信号が遅延クロック信号VB’である。即ち、遅延クロック信号VA’は、遅延クロック信号VB’の立ち上がりのタイミングで、D型フリップフロップ43に取り込まれ、かつ保持される。そして、D型フリップフロップ43の出力から判定出力信号Voutが得られる。
【0055】
次に、タッチセンサ100Cの動作例を図7、図8に基づいて説明する。
【0056】
<遅延回路55による遅延時間td’=0の場合>
遅延回路55による遅延時間td’=0、つまり、遅延回路55を設けない場合の動作例を図7に基づいて説明する。人の指がセンサパッド58に触れていない状態では、遅延クロック信号VA’,VB’の位相関係は、非重畳相補クロック信号VA,VBの位相関係と同じであり、レベル変化のタイミングは遅延時間tdだけずれている。
【0057】
したがって、遅延クロック信号VB’がLレベルからHレベルに立ち上がる時点で、遅延クロック信号VA’のレベルはLレベルである。したがって、Lレベルの信号がD型フリップフロップ43に取り込まれ、判定出力信号Vout(Lレベル)が出力される。
【0058】
これに対して、人の指がセンサパッド58に触れている状態では、タッチ線59の容量値が増加し、遅延時間が長くなるので、遅延クロック信号VA’はその分だけ遅延される。図7において、人の指がセンサパッド58に触れている期間をVA’(接触)のクロック波形の上に図示している。遅延クロック信号VA’の遅延量が遅延時間td以上であると、遅延クロック信号VB’がLレベルからHレベルに立ち上がる時点で、遅延クロック信号VA’のレベルはHレベルである。したがって、Hレベルの信号がD型フリップフロップ43に取り込まれ、判定出力信号Vout(Hレベル)が出力される。即ち、遅延時間tdが接触判定の閾値となる。
【0059】
<遅延回路55による遅延時間td’≠0の場合>
遅延回路55による遅延時間td’≠0、つまり、遅延回路55を設ける場合の動作例を図8に基づいて説明する。図8においても、人の指がセンサパッド58に触れている期間をVA’(接触)のクロック波形の上に図示している。遅延回路55を設けることにより、その遅延時間td’が遅延クロック信号VB’の遅延時間tdに加算される。
【0060】
この場合、接触判定の閾値は(td+td’)となる。即ち、遅延回路55の遅延時間td’を制御することで、接触判定の閾値を制御することができる。図8の例の場合には、接触判定の閾値(td+td’)は、人の指がセンサパッド58に触れている状態における遅延クロック信号VA’の遅延量より大きいので判定出力信号VoutはLレベルになっている。
【符号の説明】
【0061】
10 リングオシレータ 11〜17,33 インバータ
18 NAND回路 19 調整容量
20 基準容量 21 接触容量 22 センサパッド
23 比較器 24,25 ラッチ回路
26 静電破壊保護回路 27 ダミー静電破壊保護回路
28 タッチ線 29 基準線
30,31 定電流源
40 発振器 41,42,43 D型フリップフロップ
45〜50 インバータ 51,52 NAND回路
53,54,55 遅延回路
56 静電破壊保護回路 57 ダミー静電破壊保護回路
58 センサパッド 59 タッチ線
60 基準線 61 接触容量
100A,100B,100C タッチセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサパッドが接続されるタッチ線と、
基準容量が接続された基準線と、
HレベルとLレベルを交互に繰り返すクロック信号に応じて、前記タッチ線を充電し及び放電する第1の充放電回路と、
前記クロック信号に応じて、前記基準線を充電し及び放電する第2の充放電回路と、
前記タッチ線の電圧と前記基準線の電圧を比較する比較器と、
前記基準線の充電又は放電の開始から前記基準線の電圧が所定の電圧に到達するまでの期間にラッチパルスを生成するラッチパルス生成回路と、
前記ラッチパルスに応じて前記比較器の比較出力をラッチするラッチ回路とを備えることを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記第1及び第2の充放電回路は、前記クロック信号が入力されたインバータからなることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記第1及び第2の充放電回路は、前記クロック信号に応じて一定の充電電流又は放電電流を供給する定電流回路からなることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記比較器は、前記ラッチパルスの発生期間のみ動作するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記タッチ線に接続された静電破壊保護回路と、前記基準線に接続されたダミー静電破壊保護回路とを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のタッチセンサ。
【請求項6】
前記タッチ線と前記タッチパッドの間に接続され、前記タッチ線に人の指が接触した時に付加される容量値を調整するための調整容量を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のタッチセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−244370(P2011−244370A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116904(P2010−116904)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】