タッチパネルの製造方法及び表示装置製造方法並びに電子機器製造方法
【課題】印刷法を用いた場合でも品質を保持して歩留まりの低下を抑制する。
【解決手段】基板1の一面側に形成され、互いに交差する方向に延在する複数の第1電極10及び複数の第2電極20を有するタッチパネルを製造する。基板上に、複数の第1電極と、第2電極を第1電極との交差部Kで分断して離間する形状の電極膜とを形成する電極成膜工程と、少なくとも交差部の第1電極上に印刷法を用いて絶縁膜30を形成する絶縁膜形成工程と、交差部で離間する第2電極の間を絶縁膜上を経由して接続するブリッジ配線21を印刷法を用いて形成するブリッジ配線形成工程とを有する。絶縁膜形成工程は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドを加熱する加熱工程と、加熱された機能液を基板に向けて吐出する吐出工程とを有する。
【解決手段】基板1の一面側に形成され、互いに交差する方向に延在する複数の第1電極10及び複数の第2電極20を有するタッチパネルを製造する。基板上に、複数の第1電極と、第2電極を第1電極との交差部Kで分断して離間する形状の電極膜とを形成する電極成膜工程と、少なくとも交差部の第1電極上に印刷法を用いて絶縁膜30を形成する絶縁膜形成工程と、交差部で離間する第2電極の間を絶縁膜上を経由して接続するブリッジ配線21を印刷法を用いて形成するブリッジ配線形成工程とを有する。絶縁膜形成工程は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドを加熱する加熱工程と、加熱された機能液を基板に向けて吐出する吐出工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの製造方法及び表示装置製造方法並びに電子機器製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電容量型のタッチスクリーンは、電極が形成されたパネルの所定位置に指などを近づけることによってパネルの電極との間に容量が形成され、このようにして形成された容量を充電する電流を検出することで、所定位置を検出するものである。静電容量型のタッチスクリーンには、例えば、以下のものが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された座標入力装置は、X電極が設けられた基板、及びY電極が設けられた基板によって液晶層が挟持された構成となっている。そして、X電極側の基板に近づけた検出ペンの電極が、X電極及びY電極との間で浮遊容量を形成し、浮遊容量を充電する際に誘起される電圧によって、検出ペンの位置を検出する(特許文献1を参照)。
【0004】
次に、特許文献2に記載された情報入出力装置は、表示部のそれぞれの画素に対応してマトリクス状に配置された電極と、それぞれの電極ごとに設けられたアクティブ素子が同一基板上に形成されている。そして、これらの電極が位置検出の際のセンシング電極として機能する(特許文献2を参照)。
【0005】
次に、特許文献3に記載された座標入力装置は、互いに交差するX電極及びY電極が、センサ基板の表面及び裏面のそれぞれに形成された構成となっている。そして、X電極側から近づけた指によって、X電極からY電極に向かう電気力線の変化に伴う電流変化によって位置を検出する(特許文献3を参照)。
【0006】
次に、特許文献4に記載された座標位置入力装置は、絶縁層を介して対向して配置され互いに交差する電極が複数設けられた構成となっている。そして、電極に近づいた操作者の指によって変化した電流を検出することによって位置検出を行う(特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−337824号公報
【特許文献2】特開平6−318136号公報
【特許文献3】特開平9−305289号公報
【特許文献4】特開平10−63403号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NATURE、389巻、1997年、p.827
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
特許文献1〜4に記載された発明においては、それぞれの方向に延在する電極、あるいは同一基板上に電極及びアクティブ回路を形成する際に、スパッタ法、フォトリソグラフィー法、及びエッチング法などを複数回繰り返すことによって配線層を積層させる構成となっているため、製造コストが上昇するという問題があった。
そこで、例えば、フレキソ、オフセットやインクジェット法といった印刷法等を用いて、上記電極やアクティブ回路を形成することが考えられ、例えば絶縁膜をこうしたX電極とY電極との交差部分に矩形で形成する方法として、流体噴射装置から絶縁膜形成インクを噴射し、絶縁膜を形成する方法を用いることで製造コストを大幅に抑えることが可能となる。しかしながら、絶縁膜を形成する材料を含む液滴を基板の面に吐出および乾燥して絶縁膜を形成する方法では、厚みを均一化した平坦な絶縁膜を形成することが困難である。つまり、平坦な基板の面の所定の領域に絶縁膜形成用の液滴を着弾させて膜を形成する場合、液滴により形成された絶縁膜形成用の液膜は、着弾して液膜になった状態では非常に薄く均一な厚みになっていても、この液膜から液性媒体が蒸発し乾燥する際に滲み上がりが生じ、不均一になってしまう。すなわち、液性媒体に溶解していた溶質である絶縁膜の材料が、形成されている膜の周縁部に集積し、結果として絶縁膜の周縁部の膜厚が他の部分よりも厚くなり、平坦な絶縁膜が形成されないという問題がある。
これは、「コーヒーリング」または「コーヒーステイン」と呼ばれる現象であり、溶質を液性媒体に溶解させた液滴を乾燥させる際に表面張力などが原因で発生する現象である。すなわち、基板に広がった液膜の外縁部つまり周縁部の蒸発量が他の部分よりも多いため、それを補うように液が周縁部に向かって流れ、その結果、乾燥後、周縁部が盛り上がった膜が形成される現象である(例えば、非特許文献1参照)。
この周縁部の膜厚は溶質の乾燥過程に依存するため、液滴のぬれ広がり形状や面積によって容易に変化するので、凹凸の高さを常に同程度に調整することが難しい。
こうした凹凸をもった絶縁膜を跨いで2つの電極を接続するためのブリッジ配線を形成すると、上記凹凸でブリッジ配線が屈曲するため抵抗値が変わったり、断線したりする可能性がある。特に、配線も配線形成用の液体材料を用いてインクジェット法で形成する場合は、絶縁膜表面の凹凸による影響をさらに受けやすく、凸部の位置に配置された配線形成用の液体材料は凹部に流動してしまうため、配線の厚みや幅をコントロールすることが困難になってしまう。
通常、絶縁膜形成インクから形成した絶縁膜には凹凸にばらつきが大きいため、このような表面に形成したブリッジ配線は厚みが不均一になりやすく、抵抗値が一定にならないために品質の安定性にも難があった。
【0010】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、印刷法を用いた場合でも品質を保持して歩留まりの低下を抑制できるタッチパネルの製造方法及び表示装置製造方法並びに電子機器製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明のタッチパネルの製造方法は、基板の一面側に形成され、互いに交差する方向に延在する複数の第1電極及び複数の第2電極を有するタッチパネルの製造方法であって、前記基板上に、複数の前記第1電極と、前記第2電極を前記第1電極との交差部で分断して離間する形状の電極膜とを形成する電極成膜工程と、少なくとも前記交差部の前記第1電極上に印刷法を用いて絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記交差部で離間する前記第2電極の間を前記絶縁膜上を経由して接続するブリッジ配線を印刷法を用いて形成するブリッジ配線形成工程とを有し、前記絶縁膜形成工程は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、前記機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドを加熱する加熱工程と、加熱された前記機能液を前記基板に向けて吐出する吐出工程とを有することを特徴とするものである。
従って、本発明のタッチパネルの製造方法では、第1電極と、第2電極となる電極膜とを同一工程において形成し、電極膜同士を接続するブリッジ配線を印刷法によって形成するようにしたことで、第1及び第2電極を形成する工数を削減することができるので、製造コストを低減したタッチパネルの製造方法を提供することができる。
また、本発明では、基板に着弾した機能液の液滴が大きく濡れ拡がらない流動特性(粘度)となる温度に吐出ヘッドを介して機能液の温度を調整することができる。吐出された液滴は基板に到達するまでに熱を奪われて高粘度化するため、本発明では、基板上の液滴が大きく濡れ拡がる前に、短時間で機能液を乾燥させて流動性を低減させ、膜端部における溶媒の乾燥で生じる滲み上がりが生じることを抑制できる。そのため、本発明では屈曲することなく絶縁膜上にブリッジ配線を成膜することができ、断線の危険性が増すことなく、高品質で歩留まりの良いタッチパネルを得ることができる。
【0012】
また、本発明では、前記機能液が、前記基板に着弾した前記液滴の前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含み、前記加熱工程では、前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含む前記機能液の吐出特性に基づいて前記吐出ヘッドを加熱する手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、基板に着弾した機能液の液滴が大きく濡れ拡がらない流動特性(粘度)となる高濃度で機能液が絶縁膜形成材料を含む場合であっても、当該機能液が吐出可能な粘度となる温度に吐出ヘッドを加熱することにより、支障なく機能液を基板に吐出させることが可能になる。
【0013】
上記の場合、前記基板の温度との差が所定温度以上となるように、前記吐出ヘッドを加熱することにより、支障なく機能液を基板に吐出させることが可能になるとともに、着弾した機能液を所定温度以下に低下させて高粘度化させることができる。
この場合、予め機能液の種類に応じて基板と吐出ヘッドとの間に必要な温度差を求めておき、それぞれの温度(すなわち温度差)を管理することにより、機能液の流動特性を制御して、製造効率の向上を図ることができる。
【0014】
そして、本発明の表示装置製造方法は、先に記載の製造方法によりタッチパネルを製造する工程を有することを特徴とするものである。
従って、本発明の表示装置製造方法では、材料費のコスト増が防止され、抵抗値の増大、断線の発生等が抑えられた高品質の表示装置を得ることができる。
【0015】
また、本発明の電子機器製造方法は、先に記載の製造方法により表示装置を製造する工程を有することを特徴とするものである。
従って、本発明の電子機器製造方法では、材料費のコスト増が防止され、抵抗値の増大、断線等に起因する不具合の発生が抑えられた高品質の電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】タッチパネル100の模式平面図である。
【図2】タッチパネル100の模式断面図である。
【図3】タッチパネル100Aの模式断面図である。
【図4】タッチパネルの製造方法に係るフローチャート図である。
【図5】液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【図6】液体材料の吐出原理を説明するための図である。
【図7】タッチパネル100の製造工程図である。
【図8】タッチパネル100の製造工程図である。
【図9】タッチパネル100の製造工程図である。
【図10】液晶表示装置500の模式平面図、及び模式断面図である。
【図11】本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のタッチパネルとその製造方法及び表示装置製造方法並びに電子機器製造方法の実施の形態を、図1ないし図11を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0018】
[タッチパネル]
図1は、本実施形態に係るタッチパネル100の模式平面図である。図2は、タッチパネル100のA−A’模式断面図である。
【0019】
タッチパネル100は、基板1、入力領域2、及び引き回し配線60を有する。
基板1は、平面視で矩形状に成形されており、その材質としてガラス、アクリル樹脂などの透明な材質が用いられる。
【0020】
入力領域2は、図1において一点鎖線で囲まれた領域であり、タッチパネルに入力される指の位置情報を検出する領域である。
入力領域2には、複数のX電極(第1電極)10及び複数のY電極(第2電極)20がそれぞれ配置されている。
X電極10は、図示でX軸方向に沿って延在し、且つX電極10は、Y軸方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。Y電極20は図示でY軸方向に沿って延在し、それぞれのY電極20は、X軸方向に互いに間隔をあけて配列されている。X電極10及びY電極20は、互いのブリッジ配線を交差させることによって入力領域2内の交差部Kで交差している。
【0021】
X電極10は、X軸方向に配列された複数の島状電極部12と、隣り合う島状電極部12同士を接続するブリッジ配線11とを備えている。島状電極部12は平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がX軸に沿うように配置されている。
【0022】
Y電極20は、Y軸方向に配列された複数の島状電極部22と、隣り合う島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21とを備えている。
島状電極部22は、平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がY軸に沿うように配置されている。
島状電極部12と島状電極部22とは、X軸方向及びY軸方向において互い違いに配置(市松状配置)されており、入力領域2では、矩形状の島状電極部12、22が平面視マトリクス状に配置されている。
【0023】
X電極10及びY電極20を構成する材質としては、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物;登録商標)、ZnO、ポリチオフェン高分子膜やポリアニリン高分子膜などの透光性を有する抵抗体を採用することができる。
【0024】
引き回し配線60は、X電極10及びY電極20と接続されており、タッチパネル100の内部あるいは外部装置に設けられた駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示は省略)と接続されている。
【0025】
次に、図2の断面図について説明する。
基板1の機能面1aに、島状電極部12(図示は省略),島状電極部22,及びブリッジ配線11が設けられている。ブリッジ配線11上には、絶縁膜30が形成されている。
そして、絶縁膜30上にブリッジ配線21が配置されている。
また、基板1の機能面1aに、引き回し配線60が配置されている。引き回し配線60は、機能面1aに配置された第1層60a及び第1層60aに積層された第2層60bによって構成されている。そして、引き回し配線60を覆って配線保護膜62が形成されている。
【0026】
これらの電極及び配線を覆って、平坦化膜40が形成されている。平坦化膜40上には、接着層51を介して保護基板50が配置されている。基板1の裏面1bには、シールド層70が設けられている。
【0027】
絶縁膜30は、立体的に交差するブリッジ配線11とブリッジ配線21とを絶縁する。絶縁膜30は、ポリシロキサン、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを印刷法を用いて塗布し、それを乾燥固化して形成することができる。
ポリシロキサンを用いて形成した場合には、絶縁膜30はシリコン酸化物からなる無機絶縁膜となる。一方、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーを採用した場合には、絶縁膜30は樹脂材料からなる有機絶縁膜となる。
【0028】
絶縁膜30の構成材料には、比誘電率が4.0以下、望ましくは3.5以下である材料を採用することが好ましい。これにより、ブリッジ配線の交差部における寄生容量を低減して、タッチパネルの位置検出性能を保持することができる。
また絶縁膜30の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、使用者に絶縁膜30のパターンが見えてしまうのを防止できる。
【0029】
引き回し配線60の第1層60aは、X電極10又はY電極20を入力領域2の外側の領域まで延出したものであり、ITOやIZOなどの抵抗体によって形成されている。
第2層60bは、第1層60a上に積層形成され、引き回し配線60の配線抵抗を低減する。第2層60bは、Au、Ag、Al、Cu、Pdなどの金属、及びカーボン(グラファイト、カーボンナノチューブなどのナノカーボン)のうち1種類以上を成分とする、有機化合物、ナノ粒子、ナノワイヤーなどを用いて形成することができる。第2層60bの構成材料は、第1層60aよりもシート抵抗を小さくすることができるものであれば特に限定されない。
【0030】
引き回し配線60を覆う配線保護膜62は、絶縁膜30と同様に、ポリシロキサン、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを形成材料に用いた印刷法によって形成することができる。したがって、配線保護膜62は絶縁膜30を形成する工程で同時に形成することができる。
【0031】
平坦化膜40は、基板1の機能面1aの少なくとも入力領域2を覆って形成され、X電極10やY電極20による機能面1aの凹凸を平坦化している。平坦化膜40は、図示のように、機能面1aの略全面(外部接続端子部を除く)を覆って形成されていることが好ましい。平坦化膜40により基板1の機能面1a側が平坦化されていることで、基板1と保護基板50とをほぼ全面にわたって均一に接合することができる。
また平坦化膜40の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、X電極10やY電極20の配線パターンを見えにくくすることができる。
【0032】
保護基板50は、ガラスやプラスチックなどの透明基板である。あるいは、本実施形態のタッチパネル100が液晶パネルや有機ELパネルなどの表示装置の前面に配置される場合には、保護基板50として、表示装置の一部として用いられる光学素子基板(偏光板や位相差板など)を用いることもできる。
【0033】
シールド層70は、ITOやIZO(登録商標)などの透明導電材料を基板1の裏面1bに成膜することで形成される。あるいは、シールド層となる透明導電膜が形成されたフィルムを用意し、かかるフィルムを基板1の裏面1bに接着した構成としてもよい。
シールド層70が設けられていることで、基板1の裏面1b側において電界を遮断する。これにより、タッチパネル100の電界が表示装置等に作用したり、表示装置等の外部機器の電界がタッチパネル100に作用したりするのを防止することができる。
【0034】
なお、本実施形態では基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、図3に示すように、シールド層を基板1の機能面1a側に形成することもできる。図3は、かかる変形例のタッチパネル100Aを示す模式断面図である。
図3に示すタッチパネル100Aでは、基板1の機能面1a上にシールド層70Aが形成されており、シールド層70Aを覆って絶縁膜80Aが形成されている。絶縁膜80A上の構成は、図2に示したタッチパネル100と同様である。タッチパネル100Aでは、基板1の片面にシールド層70Aや、X電極10、Y電極20、引き回し配線60等を形成するので、製造工程が煩雑化するのを回避でき、製造性に優れたタッチパネルとすることができる。
【0035】
ここで、タッチパネル100の動作原理について簡単に説明する。
まず、図示は省略の駆動部から、引き回し配線60を介してX電極10及びY電極20に所定の電位を供給する。
なお、シールド層70には、例えばグランドの電位(接地電位)を入力する。
【0036】
上記のように電位が供給された状態で、保護基板50側から入力領域2に向けて手指を近づけると、保護基板50に近づけた手指と、接近位置付近のX電極10及びY電極20のそれぞれとの間に寄生容量が形成される。すると、寄生容量が形成されたX電極10及びY電極20では、この寄生容量を充電するために一時的な電位低下が引き起こされる。
【0037】
駆動部では、各電極の電位をセンシングしており、上述の電位低下が発生したX電極10及びY電極20を即座に検出する。そして、検出された電極の位置を電気信号変換/演算部によって解析することによって、入力領域2における指の位置情報が検出される。
具体的には、X軸方向に延在するX電極10によって、手指が接近した位置の入力領域2におけるY座標が検出され、Y軸方向に延在するY電極20によって、入力領域2におけるX座標が検出される。
【0038】
[タッチパネルの製造方法]
次に、上記のタッチパネルの製造方法について説明する。
本実施形態においては、図1及び図2に示したタッチパネル100の製造方法について図面を参照して説明する。図4は、タッチパネルの製造方法に係るフローチャート図である。
【0039】
本実施形態のタッチパネルの製造工程は、図4に示すように、基板1の機能面1aに、島状電極部12,22、ブリッジ配線11、及び引き回し配線60の第1層60aを形成する電極成膜工程S10と、引き回し配線60の第1層60aに第2層60bを積層する補助配線形成工程S20と、ブリッジ配線11上に絶縁膜30を形成するとともに、引き回し配線60を覆って配線保護膜62を形成する絶縁膜形成工程S30と、絶縁膜30上を経由して隣り合った島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21を形成するブリッジ配線形成工程S40と、基板1の機能面1a側を平坦化する平坦化膜40を形成する平坦化膜形成工程(保護膜形成工程)S50と、接着層51を介して保護基板50を平坦化膜40と接合する保護基板接合工程(接着層形成工程)S60と、基板1の裏面1bにシールド層70を形成するシールド層形成工程(導電膜形成工程)S70とを有している。
【0040】
本実施形態のタッチパネル100の製造工程は、印刷法の一種である液滴吐出法によって成膜する工程を有している。そこで、タッチパネルの製造方法の説明に先立ち、液滴吐出装置について説明する。
【0041】
図5は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)1001と、X軸方向駆動軸1004と、Y軸方向ガイド軸1005と、制御装置CONTと、ステージ1007と、クリーニング機構1008と、基台1009と、ヒータ1015、1020とを備えている。ここでは、ピエゾ素子(圧電素子)を用いた電気機械変換方式の、液滴吐出装置が用いられる。
【0042】
ステージ1007は、この液滴吐出装置IJにより液体材料(配線パターン用インク)を配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する図示は省略の固定機構を備えている。
【0043】
液滴吐出ヘッド1001は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1001の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルからは、ステージ1007に支持されている基板Pに対して、前記の導電性微粒子を含む配線パターン用インクが吐出されるようになっている。また、液滴吐出ヘッド1001には、ヒータ1020が設けられており、内部に装填される機能液が所定温度に加熱される。
【0044】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ1002が接続されている。このX軸方向駆動モータ1002は、ステッピングモータ等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1001はX軸方向に移動する。
【0045】
Y軸方向ガイド軸1005は、基台1009に対して動かないように固定されている。
ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ1003はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0046】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1001に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。
また、X軸方向駆動モータ1002に液滴吐出ヘッド1001のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ1003にステージ1007のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0047】
クリーニング機構1008は、液滴吐出ヘッド1001をクリーニングするものである。クリーニング機構1008には、図示は省略のY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸1005に沿って移動する。クリーニング機構1008の移動も制御装置CONTにより制御される。
また、クリーニング機構1008には、液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルを覆い、吐出ノズルから液体材料の蒸発を防ぐキャップ(図示は省略)を有している。
【0048】
ヒータ1015は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に配置された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ1015の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0049】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001と基板Pを支持するステージ1007とを相対的に走査しつつ、基板Pに対して、液滴吐出ヘッド1001の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0050】
図6は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明する図である。図6において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室1021に隣接してピエゾ素子1022が設置されている。液体室1021には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系1023を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子1022は駆動回路1024に接続されており、この駆動回路1024を介してピエゾ素子1022に電圧を印加し、ピエゾ素子1022を変形させることにより、液体室1021が変形し、吐出ノズル1025から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0051】
ここで、タッチパネルの製造方法の説明に戻る。図7及び図8は、タッチパネル100の製造工程を示す図である。これらの工程図は、図2に示した構造(ブリッジ配線の交差部及び引き回し配線60)を形成する工程を示している。
【0052】
まず、電極成膜工程S10について説明する。
電極成膜工程S10では、例えばガラス基板である基板1上に、図5に示した液滴吐出装置IJによって、例えばITO粒子を含む液体材料の液滴を選択的に配置する。具体的には、基板1上に、島状電極部12とブリッジ配線11とからなるX電極10を形成し(第1電極形成工程)、また、Y電極20の一部である島状電極部22を形成し(第2電極形成工程)、そして、島状電極部12及び島状電極部22から延出された引き回し配線60の第1層60aとからなる液体材料のパターンを形成する。その後、基板1上に配置された液体材料(液滴)を乾燥させる。これにより、図7(a)に示すように、基板1上に、ITO粒子の集合体からなるX電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aが形成される。
【0053】
本実施形態の電極成膜工程S10においては、ITO粒子を含有する液滴を吐出することによって、ITO膜を形成しているが、この他にも、IZO(登録商標)の粒子を含有する液滴を用いてIZO(登録商標)からなる透明導電膜を形成してもよい。
また、電極成膜工程S10では、液滴吐出法ではなく、フォトリソグラフィー法を用いたパターン形成方法も用いることができる。すなわち、スパッタ法などにより基板1の機能面1aのほぼ全面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてITO膜をパターニングすることで、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aを形成するようにしてもよい。
【0054】
次に、補助配線形成工程S20に移行する。
補助配線形成工程S20では、液滴吐出装置IJによって、引き回し配線60の第2層60bの構成材料を含む液体材料の液滴を第1層60a上に吐出配置する。第2層60bを形成するための液体材料としては、例えば、銀粒子を含む液体材料を用いることができる。その後、吐出配置した液滴を乾燥させる。これにより、図7(b)に示すように、第1層60a上に低抵抗の第2層60bが形成され、2層構造の引き回し配線60が入力領域2の外側の基板1上に形成される。
【0055】
引き回し配線60の第2層60bを形成する液体材料としては、銀粒子を含む液体材料のほか、例えば、Au、Al、Cu、Pdなどの金属粒子を含む液体材料や、グラファイトやカーボンナノチューブを含む液体材料を用いることができる。金属粒子やカーボン粒子は、ナノ粒子やナノワイヤーの形態で液体材料中に分散される。また、第2層60bを金属膜とする場合には、有機金属化合物を含む液体材料を用いてもよい。
【0056】
次に、絶縁膜形成工程S30及びブリッジ配線形成工程S40が順次実行される。
図9は、絶縁膜形成工程S30及びブリッジ配線形成工程S40をさらに具体的に示す説明図である。図9(b)は、図7(c)に対応する平面図であって、ブリッジ配線21の形成領域を示す図である。図9(c)は、図7(d)に対応する平面図である。
【0057】
以下では、図7及び図9を参照しつつ説明する。
絶縁膜形成工程S30は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、吐出ヘッド1001を加熱する加熱工程と、加熱された機能液を基板1に向けて吐出する液滴吐出工程とを有している。
【0058】
具体的には、加熱工程では、基板1に着弾した絶縁膜形成材料を含む機能液が大きく濡れ拡がる(流動する)ことなく短時間で乾燥させて流動性を低減させるべく、絶縁膜形成材料が高濃度で含まれる機能液を用いた場合に、機能液の粘度が大きくて液滴吐出ヘッド1001からの吐出に支障を来さないように、吐出時における機能液の粘度を小さくするために、ヒータ1020を作動させて液滴吐出ヘッド1001を加熱する。また、液滴吐出ヘッド1001の温度(機能液の温度)としては、基板1の温度が所定温度以上(ここでは20℃以上)となるように設定される。
【0059】
吐出工程では、ヒータ1020による液滴吐出ヘッド1001の加熱により粘度が低下した機能液の液滴を、液滴吐出装置IJによって、図7(c)及び図9(b)に示すように、交差部KにおけるX電極10のブリッジ配線11を埋めるように島状電極部12、22の間の隙間に絶縁膜形成材料を含む液状体(機能液)の液滴Lを選択的に配置する。
【0060】
ここで、液滴吐出ヘッド1001から機能液の液滴は、基板1に到達するまでに熱が奪われるとともに、液滴吐出ヘッド1001よりも約20℃以上も低温の基板1に着弾するため、温度低下により短時間で粘度が大きくなって流動性が低減し、大きく濡れ拡がることなく乾燥が進ことによって滲み上がりが抑制される。
このとき、機能液の粘度は加熱によって8〜20mPasとなるように調整することで、液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、かつ、基板1に到達するまでに急激に粘度が上昇することでぬれ広がらない程度に流動性が低下するようになる。また、液滴吐出ヘッド1001の温度(機能液の温度)と基板1の温度差が大きい場合には、機能液が基板1の表面で全く濡れ広がらないために平坦性が損なわれてしまうので、機能液の温度と基板1の温度差は50℃以下が望ましい。
その後、基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、ブリッジ配線11上を含んで表面が高い平坦性を有する絶縁膜30が形成される。
【0061】
なお、絶縁膜30を形成するに際しては、少なくともブリッジ配線11上の領域において液滴を隙間無く配置することが好ましい。これにより、ブリッジ配線11に達する孔やクラックのない絶縁膜30を形成することができ、絶縁膜30における絶縁不良やブリッジ配線21の断線が防止される。
また、液滴吐出ヘッド1001の加熱中は、液滴吐出工程の前後においてクリーニング機構1008のキャップにより吐出ノズルを覆うことで、吐出ノズルからの機能液の蒸発を防止することができる。
【0062】
続いて、図7(c)に示すように、引き回し配線60上の領域に対しても液滴を選択的に配置する。その後、基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、引き回し配線60を覆う配線保護膜62が形成される。
上記液体材料としては、例えば、ポリシロキサンを含む液体材料や、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、又はアクリルモノマーを含む液体材料を用いることができる。
絶縁膜形成インクを構成する液性媒体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート、γ−ブチロラクトン、Nメチル−ピロリドン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
中でも、液性媒体としては、炭酸エチレン(以下、適宜、EC、と称する)、炭酸プロピレン(以下、適宜、PC、と称する)、オクタン酸エチル(以下、適宜、EO、と称する)、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(以下、適宜、BCA、と称する)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(以下、適宜、BMGAと称する)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、適宜、PEGMEA、と称する)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、適宜、EDM、と称する)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(以下、適宜、BDM、と称する)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(以下、適宜、BDB、と称する)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(以下、適宜、BTM、と称する)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、適宜、DPMA、と称する)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、適宜、TPM、と称する)、エチレングリコールブチルエーテル(以下、適宜、BC、と称する)、ジアセトンアルコール(以下、適宜、DAA、と称する)よりなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むことがより好ましい。
【0064】
これらの化合物は、比重が0.9から1.2程度であり、粘度が低く、上述したような絶縁膜形成材料との親和性が高い。このため、絶絶縁膜形成材料は液性媒体に好適に溶解/分散することができる。また、液性媒体が上記のような低粘度の化合物で構成されたものであると、加熱した状態において流動性が向上するため液性媒体の供給が滞ることなく、液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができる。
また、上述した中でも、液性媒体が沸点の高いBMGA、BCA、EC、PC、BDM、BDB、BTM、TPM、EO、BDB,DPMAを含むものである場合、絶縁膜形成用インクがノズルの近傍で非常に乾燥しにくくなり、インク付与工程における飛行曲がりの発生がより効果的に抑制される。
【0065】
液性媒体の大気圧(1気圧)下における沸点は、180〜300℃であるのが好ましく、180〜290℃であるのがより好ましく、200〜280℃であるのがさらに好ましい。液性媒体の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、縁膜形成用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける乾燥による目詰まり等をより効果的に防止することができ、生産性を特に優れたものとすることができる。
【0066】
また、液性媒体の25℃における蒸気圧は、0.7mmHg以下であるのが好ましく、0.1mmHg以下であるのがより好ましい。液性媒体の蒸気圧が前記範囲内と値であると、絶縁膜形成用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける乾燥による目詰まり等をより効果的に防止することができ、絶縁膜の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0067】
絶縁膜形成用インク中における液性媒体の含有率は、2〜90wt%であるのが好ましく、10〜85wt%であるのがより好ましく、30〜80wt%であるのがさらに好ましい。液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、縁膜形成用インクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとしつつ、製造される絶縁膜の厚みを均等に整えることが可能であり、耐久性を優れたものとすることができる。
【0068】
次に、ブリッジ配線形成工程S40に移行する。
ブリッジ配線形成工程S40では、図7(d)及び図9(c)に示すように、隣り合って配置された島状電極部22上と絶縁膜30上とにわたって、ITO粒子を含む液体材料の液滴を配線形状に配置する。その後、基板1上の液体材料を乾燥固化する。これにより、島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21が形成される。ブリッジ配線21の形成に用いる液体材料としては、上記したITO粒子を含む液体材料のほか、IZO(登録商標)粒子や、ZnO粒子を含む液体材料を用いて形成することもできる。また、ポリチオフェン、ポリアニリン系の有機高分子からなる透明導電膜を形成してもよく、有機高分子が水や溶剤に溶解した液体を配置した場合は120℃で30分程度の低温での焼成が必要である。
【0069】
ブリッジ配線21を形成するに際しては、図9(c)に示すように、ブリッジ配線形成工程S40で、電極成膜工程S10と同一の液体材料を用いてブリッジ配線21を形成することが好ましい。すなわち、ブリッジ配線21の構成材料には、X電極10や島状電極部22の構成材料と同一の材料を用いることが好ましい。
【0070】
次に、平坦化膜形成工程S50に移行する。
平坦化膜形成工程S50では、図8(a)に示すように、基板1の機能面1aを平坦化させる目的で、絶縁材料からなる平坦化膜40を機能面1aのほぼ全面に形成する。
平坦化膜40は、絶縁膜形成工程S30で用いた絶縁膜30形成用の液体材料と同様の液体材料を用いて形成することができるが、基板1表面の平坦化を目的としているため、樹脂材料を用いて形成することが好ましい。
【0071】
次に、保護基板接合工程S60に移行する。
保護基板接合工程S60では、図8(b)に示すように、別途用意した保護基板50と平坦化膜40との間に接着剤を配置し、かかる接着剤からなる接着層51を介して保護基板50と平坦化膜40とを貼り合わせる。保護基板50は、ガラスやプラスチック等からなる透明基板のほか、偏光板や位相差板などの光学素子基板であってもよい。接着層51を構成する接着剤としては、透明な樹脂材料などを用いることができる。
【0072】
次に、シールド層形成工程S70に移行する。
シールド層形成工程S70では、図8(c)に示すように、基板1の裏面1b(機能面1aとは反対側の面)に導電膜で構成されたシールド層70を形成する。シールド層70は、真空成膜法、スクリーン印刷法、オフセット法、液滴吐出法などの公知の成膜法を用いて形成することができる。例えばシールド層70を液滴吐出法などの印刷法を用いて形成する場合には、電極成膜工程S10、及びブリッジ配線形成工程S40で使用されるITO粒子等を含む液体材料を用いることができる。
また、基板1に対する成膜によりシールド層70を形成する方法のほかにも、一面又は両面に導電膜が成膜されたフィルムを別途用意し、かかるフィルムを基板1の裏面1bに貼り合わせることでフィルム上の導電膜をシールド層70としてもよい。
【0073】
なお、本実施形態では、シールド層70をタッチパネル製造工程の最後に実施することとしているが、シールド層70は任意のタイミングで形成することができる。例えば、予めシールド層70が形成された基板1を電極成膜工程S10以降の工程に供することもできる。また、電極成膜工程S10〜保護基板接合工程S60までの任意の工程の間にシールド層形成工程を配してもよい。
【0074】
また、本実施形態においては、基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、図3に示した変形例に係るタッチパネル100Aのように基板1の機能面1a側にシールド層70Aを形成する場合には、電極成膜工程S10に先立って、シールド層70Aを形成する工程と、絶縁膜80Aを形成する工程とを実行する。この場合にも、シールド層70Aは、シールド層形成工程S70と同様の手法によって形成することができる。また、絶縁膜80Aの形成工程は、例えば絶縁膜形成工程S30と同様とすることができる。
【0075】
以上に詳細に説明したタッチパネル100の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
まず、本実施形態の製造方法では、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)と、Y電極20を構成する島状電極部22とを基板1上の同一面に形成し、その後に、ブリッジ配線11上の領域に液滴吐出法を用いて絶縁膜30を形成し、その後さらに液滴吐出法を用いて島状電極部22を接続するブリッジ配線21を形成する。このようにX電極10と交差するY電極20の接続構造を、印刷法である液滴吐出法を用いて形成することで、従来に比して工数を削減することができ、タッチパネルの製造コストを抑えることができる。
【0076】
さらに詳しく説明すると、従来の接続構造の形成工程では、図7(a)に示した工程の後に、(1)X電極10及び島状電極部22を覆う層間絶縁膜を形成する工程と、(2)隣り合う島状電極部22にブリッジ配線を架設するためのコンタクトホールを層間絶縁膜に形成する工程と、(3)コンタクトホールを含む領域にブリッジ配線をパターン形成して島状電極部22同士を接続する工程と、を実施していた。
【0077】
上述した従来工程と本実施形態の工程とを比較すれば明らかなように、本実施形態に係る製造方法では、従来工程における層間絶縁膜にコンタクトホールを形成するためのフォトリソグラフィー工程(及びエッチング工程)が不要になり、さらに、ブリッジ配線をパターン形成するためのフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程も不要になる。
したがって、本実施形態の製造方法によれば、特にコストのかかるフォトリソグラフィー工程を削減することができ、タッチパネルの製造コストを低減することができる。また、液滴吐出法では、それぞれの膜を形成する領域にのみ選択的に液滴を配置するので、材料の使用量を抑えることができ、原材料費の点でも製造コスト低減に寄与する。
【0078】
(実施例)
(1)絶縁膜形成材料(分子量2500) が濃度36%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を50℃に加熱したときの機能液は粘度13.5mPa・Sであった。また、温度が室温(例えば23℃)の基板1上における上記機能液の粘度は45mPa・sであった。
(2)上記(1)と同じ絶縁膜形成材料が濃度45%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を55℃に加熱したときの機能液は粘度12.1mPa・Sであった。また、温度が30℃の基板1上における上記機能液の粘度は70mPa・sであった。
(3)絶縁膜形成材料(分子量1200) が濃度65%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を48℃に加熱したときの機能液は粘度14.0mPa・Sであった。また、温度が20℃の基板1上における上記機能液の粘度は140mPa・sであった。
上記の実施例(1)〜(3)ではいずれの場合も液滴吐出ヘッド1001から支障なく機能液の液滴を吐出でき、また平坦性に優れた絶縁膜30を形成することができた。
(比較例1)絶縁膜形成材料(分子量2500) が濃度28%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を35℃に加熱したときの機能液は粘度17.2mPa・Sであったが、機能液の粘度が高く吐出安定性に関して不良であった。
【0079】
このように、本実施形態では、基板1での流動特性を考慮して高濃度で絶縁膜形成材料が含まれる機能液を吐出する場合でも、液滴吐出ヘッド1001を加熱するため、高濃度で絶縁膜形成材料を含む機能液を用いる場合でも、支障なく液滴として吐出することが可能となる。そのため、本実施形態では、吐出した機能液を大きく濡れ拡がらせる前に短時間で乾燥させて流動性を低減させることが可能となり、膜端部における溶媒の乾燥で生じる滲み上がりが生じることを抑制できる。そのため、本実施形態では屈曲することなく絶縁膜30上にブリッジ配線21を形成することができ、断線の危険性が増すことなく、高品質で歩留まりの良いタッチパネルを得ることができる。
【0080】
また、本実施形態では、基板1の温度との差が所定温度以上となるように、液滴吐出ヘッド1001を加熱することにより、支障なく機能液を基板に吐出させることが可能になるとともに、着弾した機能液を所定温度以下に低下させて高粘度化させることができる。
この場合、予め機能液の種類に応じて基板1と液滴吐出ヘッド1001との間に必要な温度差を求めておき、それぞれの温度(すなわち温度差)を管理することにより、機能液の流動特性を制御して、製造効率の向上を図ることができる。
【0081】
[表示装置]
次に、本発明のタッチパネルを備えた表示装置について説明する。本実施形態では、表示装置の一例として、タッチパネルを備えた液晶表示装置について説明する。図10は本発明の1実施形態である液晶表示装置500の模式図であり、(a)平面図(b)平面図におけるH−H’断面図を示している。
【0082】
液晶表示装置500は、図10(a)に示すように、素子基板410、対向基板420、及び画像表示領域410aを有している。
素子基板410は対向基板420に比して広い平面領域を有した矩形状の基板である。
対向基板420は液晶表示装置500における画像表示側であり、ガラスやアクリル樹脂などで形成された透明な基板である。対向基板420は、シール材452を介して素子基板410の中央部に接合されている。
画像表示領域10aは、対応基板420の平面領域であって、シール材452の内周に沿って設けられた周辺見切り453の内側領域である。
【0083】
素子基板410における対向基板420の周辺には、データ線駆動回路401、走査線駆動回路404、データ線駆動回路401及び走査線駆動回路404と接続された接続端子402、及び対向基板420に対して対向して配置された走査線駆動回路404同士を接続する配線405などが配置されている。
【0084】
次に、液晶表示装置500の断面について説明する。
素子基板410の液晶層450側の面には、画素電極409及び配向膜418などが積層されている。
対向基板420の液晶層450側の面には、遮光膜(ブラックマトリクス)423、カラーフィルタ422、共通電極425、及び配向膜429などが積層されている。
液晶層450が、素子基板410及び対向基板420によって挟持されている。
そして、対向基板420の外側(液晶層450反対側)の面には、接着層101を挟んで本発明のタッチパネル100が配置されている。
【0085】
以上説明した液晶表示装置によれば、以下の効果を得ることができる。
液晶表示装置500に設けられたタッチパネル100は、液滴吐出法によって位置検出用の電極及び電極を交差させる絶縁膜が形成されている。これにより、タッチパネルの製造に係るコストが低減されているので、製造コストを抑えた液晶表示装置とすることができる。
また、液晶表示装置に設けるタッチパネルは、第1の実施形態の変形例であるタッチパネル100A、あるいは第2の実施形態のタッチパネル200であってもよい。これらのタッチパネルも、液滴吐出法によって成膜する工程によって製造されており、製造コストが低減されている。したがって、液晶表示装置の製造コストを抑えることができる。
【0086】
また本実施形態の液晶表示装置においては、対向基板420の外側(液晶層450と反対側)の面にタッチパネルの各層が形成されていることが好ましい。これによれば、液晶表示装置の対向基板420とタッチパネルの基板1とを共通化することができ、より製造コストを低減することができるとともに、液晶表示装置を軽量化することができる。
また、本実施形態においては、液晶表示装置について説明したが、この以外にも、有機EL装置、電気泳動表示装置などの表示装置においても、本発明のタッチパネルを好適に用いることができる。
【0087】
次に、本発明のタッチパネル又はタッチパネルを備えた液晶表示装置を有する電子機器の例について説明する。図11は、モバイル型パーソナルコンピュータ1100を示す斜視図である。モバイル型パーソナルコンピュータ1100は、表示部1101と、キーボード1102を有する本体部1103とを備えている。モバイル型パーソナルコンピュータ1100は、上記実施形態の液晶表示装置500を表示部1101に備えている。
このような構成を備えたモバイル型パーソナルコンピュータ1100によれば、本発明のタッチパネルが表示部に用いられているので、製造コストを抑えた電子機器とすることができる。
【0088】
なお、上記の電子機器は、本発明の電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)などの表示部にも本発明に係るタッチパネルを好適に用いることができる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態で示した材料・加熱温度等は一例であり、基板1に吐出した機能液が大きく濡れ拡がらず滲み上がりが生じない高濃度の機能液を用いる場合に、液滴として吐出可能な温度に液滴吐出ヘッド1001を加熱するのであれば他の条件を用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…基板、 10…X電極(第1電極)、 11…ブリッジ配線、 20…Y電極(第2電極)、 22…島状電極部(電極膜)、 30…絶縁膜、 100…タッチパネル、 1001…液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)、 K…交差部
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの製造方法及び表示装置製造方法並びに電子機器製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電容量型のタッチスクリーンは、電極が形成されたパネルの所定位置に指などを近づけることによってパネルの電極との間に容量が形成され、このようにして形成された容量を充電する電流を検出することで、所定位置を検出するものである。静電容量型のタッチスクリーンには、例えば、以下のものが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された座標入力装置は、X電極が設けられた基板、及びY電極が設けられた基板によって液晶層が挟持された構成となっている。そして、X電極側の基板に近づけた検出ペンの電極が、X電極及びY電極との間で浮遊容量を形成し、浮遊容量を充電する際に誘起される電圧によって、検出ペンの位置を検出する(特許文献1を参照)。
【0004】
次に、特許文献2に記載された情報入出力装置は、表示部のそれぞれの画素に対応してマトリクス状に配置された電極と、それぞれの電極ごとに設けられたアクティブ素子が同一基板上に形成されている。そして、これらの電極が位置検出の際のセンシング電極として機能する(特許文献2を参照)。
【0005】
次に、特許文献3に記載された座標入力装置は、互いに交差するX電極及びY電極が、センサ基板の表面及び裏面のそれぞれに形成された構成となっている。そして、X電極側から近づけた指によって、X電極からY電極に向かう電気力線の変化に伴う電流変化によって位置を検出する(特許文献3を参照)。
【0006】
次に、特許文献4に記載された座標位置入力装置は、絶縁層を介して対向して配置され互いに交差する電極が複数設けられた構成となっている。そして、電極に近づいた操作者の指によって変化した電流を検出することによって位置検出を行う(特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−337824号公報
【特許文献2】特開平6−318136号公報
【特許文献3】特開平9−305289号公報
【特許文献4】特開平10−63403号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NATURE、389巻、1997年、p.827
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
特許文献1〜4に記載された発明においては、それぞれの方向に延在する電極、あるいは同一基板上に電極及びアクティブ回路を形成する際に、スパッタ法、フォトリソグラフィー法、及びエッチング法などを複数回繰り返すことによって配線層を積層させる構成となっているため、製造コストが上昇するという問題があった。
そこで、例えば、フレキソ、オフセットやインクジェット法といった印刷法等を用いて、上記電極やアクティブ回路を形成することが考えられ、例えば絶縁膜をこうしたX電極とY電極との交差部分に矩形で形成する方法として、流体噴射装置から絶縁膜形成インクを噴射し、絶縁膜を形成する方法を用いることで製造コストを大幅に抑えることが可能となる。しかしながら、絶縁膜を形成する材料を含む液滴を基板の面に吐出および乾燥して絶縁膜を形成する方法では、厚みを均一化した平坦な絶縁膜を形成することが困難である。つまり、平坦な基板の面の所定の領域に絶縁膜形成用の液滴を着弾させて膜を形成する場合、液滴により形成された絶縁膜形成用の液膜は、着弾して液膜になった状態では非常に薄く均一な厚みになっていても、この液膜から液性媒体が蒸発し乾燥する際に滲み上がりが生じ、不均一になってしまう。すなわち、液性媒体に溶解していた溶質である絶縁膜の材料が、形成されている膜の周縁部に集積し、結果として絶縁膜の周縁部の膜厚が他の部分よりも厚くなり、平坦な絶縁膜が形成されないという問題がある。
これは、「コーヒーリング」または「コーヒーステイン」と呼ばれる現象であり、溶質を液性媒体に溶解させた液滴を乾燥させる際に表面張力などが原因で発生する現象である。すなわち、基板に広がった液膜の外縁部つまり周縁部の蒸発量が他の部分よりも多いため、それを補うように液が周縁部に向かって流れ、その結果、乾燥後、周縁部が盛り上がった膜が形成される現象である(例えば、非特許文献1参照)。
この周縁部の膜厚は溶質の乾燥過程に依存するため、液滴のぬれ広がり形状や面積によって容易に変化するので、凹凸の高さを常に同程度に調整することが難しい。
こうした凹凸をもった絶縁膜を跨いで2つの電極を接続するためのブリッジ配線を形成すると、上記凹凸でブリッジ配線が屈曲するため抵抗値が変わったり、断線したりする可能性がある。特に、配線も配線形成用の液体材料を用いてインクジェット法で形成する場合は、絶縁膜表面の凹凸による影響をさらに受けやすく、凸部の位置に配置された配線形成用の液体材料は凹部に流動してしまうため、配線の厚みや幅をコントロールすることが困難になってしまう。
通常、絶縁膜形成インクから形成した絶縁膜には凹凸にばらつきが大きいため、このような表面に形成したブリッジ配線は厚みが不均一になりやすく、抵抗値が一定にならないために品質の安定性にも難があった。
【0010】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、印刷法を用いた場合でも品質を保持して歩留まりの低下を抑制できるタッチパネルの製造方法及び表示装置製造方法並びに電子機器製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明のタッチパネルの製造方法は、基板の一面側に形成され、互いに交差する方向に延在する複数の第1電極及び複数の第2電極を有するタッチパネルの製造方法であって、前記基板上に、複数の前記第1電極と、前記第2電極を前記第1電極との交差部で分断して離間する形状の電極膜とを形成する電極成膜工程と、少なくとも前記交差部の前記第1電極上に印刷法を用いて絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記交差部で離間する前記第2電極の間を前記絶縁膜上を経由して接続するブリッジ配線を印刷法を用いて形成するブリッジ配線形成工程とを有し、前記絶縁膜形成工程は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、前記機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドを加熱する加熱工程と、加熱された前記機能液を前記基板に向けて吐出する吐出工程とを有することを特徴とするものである。
従って、本発明のタッチパネルの製造方法では、第1電極と、第2電極となる電極膜とを同一工程において形成し、電極膜同士を接続するブリッジ配線を印刷法によって形成するようにしたことで、第1及び第2電極を形成する工数を削減することができるので、製造コストを低減したタッチパネルの製造方法を提供することができる。
また、本発明では、基板に着弾した機能液の液滴が大きく濡れ拡がらない流動特性(粘度)となる温度に吐出ヘッドを介して機能液の温度を調整することができる。吐出された液滴は基板に到達するまでに熱を奪われて高粘度化するため、本発明では、基板上の液滴が大きく濡れ拡がる前に、短時間で機能液を乾燥させて流動性を低減させ、膜端部における溶媒の乾燥で生じる滲み上がりが生じることを抑制できる。そのため、本発明では屈曲することなく絶縁膜上にブリッジ配線を成膜することができ、断線の危険性が増すことなく、高品質で歩留まりの良いタッチパネルを得ることができる。
【0012】
また、本発明では、前記機能液が、前記基板に着弾した前記液滴の前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含み、前記加熱工程では、前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含む前記機能液の吐出特性に基づいて前記吐出ヘッドを加熱する手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、基板に着弾した機能液の液滴が大きく濡れ拡がらない流動特性(粘度)となる高濃度で機能液が絶縁膜形成材料を含む場合であっても、当該機能液が吐出可能な粘度となる温度に吐出ヘッドを加熱することにより、支障なく機能液を基板に吐出させることが可能になる。
【0013】
上記の場合、前記基板の温度との差が所定温度以上となるように、前記吐出ヘッドを加熱することにより、支障なく機能液を基板に吐出させることが可能になるとともに、着弾した機能液を所定温度以下に低下させて高粘度化させることができる。
この場合、予め機能液の種類に応じて基板と吐出ヘッドとの間に必要な温度差を求めておき、それぞれの温度(すなわち温度差)を管理することにより、機能液の流動特性を制御して、製造効率の向上を図ることができる。
【0014】
そして、本発明の表示装置製造方法は、先に記載の製造方法によりタッチパネルを製造する工程を有することを特徴とするものである。
従って、本発明の表示装置製造方法では、材料費のコスト増が防止され、抵抗値の増大、断線の発生等が抑えられた高品質の表示装置を得ることができる。
【0015】
また、本発明の電子機器製造方法は、先に記載の製造方法により表示装置を製造する工程を有することを特徴とするものである。
従って、本発明の電子機器製造方法では、材料費のコスト増が防止され、抵抗値の増大、断線等に起因する不具合の発生が抑えられた高品質の電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】タッチパネル100の模式平面図である。
【図2】タッチパネル100の模式断面図である。
【図3】タッチパネル100Aの模式断面図である。
【図4】タッチパネルの製造方法に係るフローチャート図である。
【図5】液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【図6】液体材料の吐出原理を説明するための図である。
【図7】タッチパネル100の製造工程図である。
【図8】タッチパネル100の製造工程図である。
【図9】タッチパネル100の製造工程図である。
【図10】液晶表示装置500の模式平面図、及び模式断面図である。
【図11】本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のタッチパネルとその製造方法及び表示装置製造方法並びに電子機器製造方法の実施の形態を、図1ないし図11を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0018】
[タッチパネル]
図1は、本実施形態に係るタッチパネル100の模式平面図である。図2は、タッチパネル100のA−A’模式断面図である。
【0019】
タッチパネル100は、基板1、入力領域2、及び引き回し配線60を有する。
基板1は、平面視で矩形状に成形されており、その材質としてガラス、アクリル樹脂などの透明な材質が用いられる。
【0020】
入力領域2は、図1において一点鎖線で囲まれた領域であり、タッチパネルに入力される指の位置情報を検出する領域である。
入力領域2には、複数のX電極(第1電極)10及び複数のY電極(第2電極)20がそれぞれ配置されている。
X電極10は、図示でX軸方向に沿って延在し、且つX電極10は、Y軸方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。Y電極20は図示でY軸方向に沿って延在し、それぞれのY電極20は、X軸方向に互いに間隔をあけて配列されている。X電極10及びY電極20は、互いのブリッジ配線を交差させることによって入力領域2内の交差部Kで交差している。
【0021】
X電極10は、X軸方向に配列された複数の島状電極部12と、隣り合う島状電極部12同士を接続するブリッジ配線11とを備えている。島状電極部12は平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がX軸に沿うように配置されている。
【0022】
Y電極20は、Y軸方向に配列された複数の島状電極部22と、隣り合う島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21とを備えている。
島状電極部22は、平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がY軸に沿うように配置されている。
島状電極部12と島状電極部22とは、X軸方向及びY軸方向において互い違いに配置(市松状配置)されており、入力領域2では、矩形状の島状電極部12、22が平面視マトリクス状に配置されている。
【0023】
X電極10及びY電極20を構成する材質としては、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物;登録商標)、ZnO、ポリチオフェン高分子膜やポリアニリン高分子膜などの透光性を有する抵抗体を採用することができる。
【0024】
引き回し配線60は、X電極10及びY電極20と接続されており、タッチパネル100の内部あるいは外部装置に設けられた駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示は省略)と接続されている。
【0025】
次に、図2の断面図について説明する。
基板1の機能面1aに、島状電極部12(図示は省略),島状電極部22,及びブリッジ配線11が設けられている。ブリッジ配線11上には、絶縁膜30が形成されている。
そして、絶縁膜30上にブリッジ配線21が配置されている。
また、基板1の機能面1aに、引き回し配線60が配置されている。引き回し配線60は、機能面1aに配置された第1層60a及び第1層60aに積層された第2層60bによって構成されている。そして、引き回し配線60を覆って配線保護膜62が形成されている。
【0026】
これらの電極及び配線を覆って、平坦化膜40が形成されている。平坦化膜40上には、接着層51を介して保護基板50が配置されている。基板1の裏面1bには、シールド層70が設けられている。
【0027】
絶縁膜30は、立体的に交差するブリッジ配線11とブリッジ配線21とを絶縁する。絶縁膜30は、ポリシロキサン、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを印刷法を用いて塗布し、それを乾燥固化して形成することができる。
ポリシロキサンを用いて形成した場合には、絶縁膜30はシリコン酸化物からなる無機絶縁膜となる。一方、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーを採用した場合には、絶縁膜30は樹脂材料からなる有機絶縁膜となる。
【0028】
絶縁膜30の構成材料には、比誘電率が4.0以下、望ましくは3.5以下である材料を採用することが好ましい。これにより、ブリッジ配線の交差部における寄生容量を低減して、タッチパネルの位置検出性能を保持することができる。
また絶縁膜30の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、使用者に絶縁膜30のパターンが見えてしまうのを防止できる。
【0029】
引き回し配線60の第1層60aは、X電極10又はY電極20を入力領域2の外側の領域まで延出したものであり、ITOやIZOなどの抵抗体によって形成されている。
第2層60bは、第1層60a上に積層形成され、引き回し配線60の配線抵抗を低減する。第2層60bは、Au、Ag、Al、Cu、Pdなどの金属、及びカーボン(グラファイト、カーボンナノチューブなどのナノカーボン)のうち1種類以上を成分とする、有機化合物、ナノ粒子、ナノワイヤーなどを用いて形成することができる。第2層60bの構成材料は、第1層60aよりもシート抵抗を小さくすることができるものであれば特に限定されない。
【0030】
引き回し配線60を覆う配線保護膜62は、絶縁膜30と同様に、ポリシロキサン、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを形成材料に用いた印刷法によって形成することができる。したがって、配線保護膜62は絶縁膜30を形成する工程で同時に形成することができる。
【0031】
平坦化膜40は、基板1の機能面1aの少なくとも入力領域2を覆って形成され、X電極10やY電極20による機能面1aの凹凸を平坦化している。平坦化膜40は、図示のように、機能面1aの略全面(外部接続端子部を除く)を覆って形成されていることが好ましい。平坦化膜40により基板1の機能面1a側が平坦化されていることで、基板1と保護基板50とをほぼ全面にわたって均一に接合することができる。
また平坦化膜40の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、X電極10やY電極20の配線パターンを見えにくくすることができる。
【0032】
保護基板50は、ガラスやプラスチックなどの透明基板である。あるいは、本実施形態のタッチパネル100が液晶パネルや有機ELパネルなどの表示装置の前面に配置される場合には、保護基板50として、表示装置の一部として用いられる光学素子基板(偏光板や位相差板など)を用いることもできる。
【0033】
シールド層70は、ITOやIZO(登録商標)などの透明導電材料を基板1の裏面1bに成膜することで形成される。あるいは、シールド層となる透明導電膜が形成されたフィルムを用意し、かかるフィルムを基板1の裏面1bに接着した構成としてもよい。
シールド層70が設けられていることで、基板1の裏面1b側において電界を遮断する。これにより、タッチパネル100の電界が表示装置等に作用したり、表示装置等の外部機器の電界がタッチパネル100に作用したりするのを防止することができる。
【0034】
なお、本実施形態では基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、図3に示すように、シールド層を基板1の機能面1a側に形成することもできる。図3は、かかる変形例のタッチパネル100Aを示す模式断面図である。
図3に示すタッチパネル100Aでは、基板1の機能面1a上にシールド層70Aが形成されており、シールド層70Aを覆って絶縁膜80Aが形成されている。絶縁膜80A上の構成は、図2に示したタッチパネル100と同様である。タッチパネル100Aでは、基板1の片面にシールド層70Aや、X電極10、Y電極20、引き回し配線60等を形成するので、製造工程が煩雑化するのを回避でき、製造性に優れたタッチパネルとすることができる。
【0035】
ここで、タッチパネル100の動作原理について簡単に説明する。
まず、図示は省略の駆動部から、引き回し配線60を介してX電極10及びY電極20に所定の電位を供給する。
なお、シールド層70には、例えばグランドの電位(接地電位)を入力する。
【0036】
上記のように電位が供給された状態で、保護基板50側から入力領域2に向けて手指を近づけると、保護基板50に近づけた手指と、接近位置付近のX電極10及びY電極20のそれぞれとの間に寄生容量が形成される。すると、寄生容量が形成されたX電極10及びY電極20では、この寄生容量を充電するために一時的な電位低下が引き起こされる。
【0037】
駆動部では、各電極の電位をセンシングしており、上述の電位低下が発生したX電極10及びY電極20を即座に検出する。そして、検出された電極の位置を電気信号変換/演算部によって解析することによって、入力領域2における指の位置情報が検出される。
具体的には、X軸方向に延在するX電極10によって、手指が接近した位置の入力領域2におけるY座標が検出され、Y軸方向に延在するY電極20によって、入力領域2におけるX座標が検出される。
【0038】
[タッチパネルの製造方法]
次に、上記のタッチパネルの製造方法について説明する。
本実施形態においては、図1及び図2に示したタッチパネル100の製造方法について図面を参照して説明する。図4は、タッチパネルの製造方法に係るフローチャート図である。
【0039】
本実施形態のタッチパネルの製造工程は、図4に示すように、基板1の機能面1aに、島状電極部12,22、ブリッジ配線11、及び引き回し配線60の第1層60aを形成する電極成膜工程S10と、引き回し配線60の第1層60aに第2層60bを積層する補助配線形成工程S20と、ブリッジ配線11上に絶縁膜30を形成するとともに、引き回し配線60を覆って配線保護膜62を形成する絶縁膜形成工程S30と、絶縁膜30上を経由して隣り合った島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21を形成するブリッジ配線形成工程S40と、基板1の機能面1a側を平坦化する平坦化膜40を形成する平坦化膜形成工程(保護膜形成工程)S50と、接着層51を介して保護基板50を平坦化膜40と接合する保護基板接合工程(接着層形成工程)S60と、基板1の裏面1bにシールド層70を形成するシールド層形成工程(導電膜形成工程)S70とを有している。
【0040】
本実施形態のタッチパネル100の製造工程は、印刷法の一種である液滴吐出法によって成膜する工程を有している。そこで、タッチパネルの製造方法の説明に先立ち、液滴吐出装置について説明する。
【0041】
図5は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)1001と、X軸方向駆動軸1004と、Y軸方向ガイド軸1005と、制御装置CONTと、ステージ1007と、クリーニング機構1008と、基台1009と、ヒータ1015、1020とを備えている。ここでは、ピエゾ素子(圧電素子)を用いた電気機械変換方式の、液滴吐出装置が用いられる。
【0042】
ステージ1007は、この液滴吐出装置IJにより液体材料(配線パターン用インク)を配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する図示は省略の固定機構を備えている。
【0043】
液滴吐出ヘッド1001は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1001の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルからは、ステージ1007に支持されている基板Pに対して、前記の導電性微粒子を含む配線パターン用インクが吐出されるようになっている。また、液滴吐出ヘッド1001には、ヒータ1020が設けられており、内部に装填される機能液が所定温度に加熱される。
【0044】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ1002が接続されている。このX軸方向駆動モータ1002は、ステッピングモータ等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1001はX軸方向に移動する。
【0045】
Y軸方向ガイド軸1005は、基台1009に対して動かないように固定されている。
ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ1003はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0046】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1001に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。
また、X軸方向駆動モータ1002に液滴吐出ヘッド1001のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ1003にステージ1007のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0047】
クリーニング機構1008は、液滴吐出ヘッド1001をクリーニングするものである。クリーニング機構1008には、図示は省略のY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸1005に沿って移動する。クリーニング機構1008の移動も制御装置CONTにより制御される。
また、クリーニング機構1008には、液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルを覆い、吐出ノズルから液体材料の蒸発を防ぐキャップ(図示は省略)を有している。
【0048】
ヒータ1015は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に配置された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ1015の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0049】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001と基板Pを支持するステージ1007とを相対的に走査しつつ、基板Pに対して、液滴吐出ヘッド1001の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0050】
図6は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明する図である。図6において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室1021に隣接してピエゾ素子1022が設置されている。液体室1021には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系1023を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子1022は駆動回路1024に接続されており、この駆動回路1024を介してピエゾ素子1022に電圧を印加し、ピエゾ素子1022を変形させることにより、液体室1021が変形し、吐出ノズル1025から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0051】
ここで、タッチパネルの製造方法の説明に戻る。図7及び図8は、タッチパネル100の製造工程を示す図である。これらの工程図は、図2に示した構造(ブリッジ配線の交差部及び引き回し配線60)を形成する工程を示している。
【0052】
まず、電極成膜工程S10について説明する。
電極成膜工程S10では、例えばガラス基板である基板1上に、図5に示した液滴吐出装置IJによって、例えばITO粒子を含む液体材料の液滴を選択的に配置する。具体的には、基板1上に、島状電極部12とブリッジ配線11とからなるX電極10を形成し(第1電極形成工程)、また、Y電極20の一部である島状電極部22を形成し(第2電極形成工程)、そして、島状電極部12及び島状電極部22から延出された引き回し配線60の第1層60aとからなる液体材料のパターンを形成する。その後、基板1上に配置された液体材料(液滴)を乾燥させる。これにより、図7(a)に示すように、基板1上に、ITO粒子の集合体からなるX電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aが形成される。
【0053】
本実施形態の電極成膜工程S10においては、ITO粒子を含有する液滴を吐出することによって、ITO膜を形成しているが、この他にも、IZO(登録商標)の粒子を含有する液滴を用いてIZO(登録商標)からなる透明導電膜を形成してもよい。
また、電極成膜工程S10では、液滴吐出法ではなく、フォトリソグラフィー法を用いたパターン形成方法も用いることができる。すなわち、スパッタ法などにより基板1の機能面1aのほぼ全面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてITO膜をパターニングすることで、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aを形成するようにしてもよい。
【0054】
次に、補助配線形成工程S20に移行する。
補助配線形成工程S20では、液滴吐出装置IJによって、引き回し配線60の第2層60bの構成材料を含む液体材料の液滴を第1層60a上に吐出配置する。第2層60bを形成するための液体材料としては、例えば、銀粒子を含む液体材料を用いることができる。その後、吐出配置した液滴を乾燥させる。これにより、図7(b)に示すように、第1層60a上に低抵抗の第2層60bが形成され、2層構造の引き回し配線60が入力領域2の外側の基板1上に形成される。
【0055】
引き回し配線60の第2層60bを形成する液体材料としては、銀粒子を含む液体材料のほか、例えば、Au、Al、Cu、Pdなどの金属粒子を含む液体材料や、グラファイトやカーボンナノチューブを含む液体材料を用いることができる。金属粒子やカーボン粒子は、ナノ粒子やナノワイヤーの形態で液体材料中に分散される。また、第2層60bを金属膜とする場合には、有機金属化合物を含む液体材料を用いてもよい。
【0056】
次に、絶縁膜形成工程S30及びブリッジ配線形成工程S40が順次実行される。
図9は、絶縁膜形成工程S30及びブリッジ配線形成工程S40をさらに具体的に示す説明図である。図9(b)は、図7(c)に対応する平面図であって、ブリッジ配線21の形成領域を示す図である。図9(c)は、図7(d)に対応する平面図である。
【0057】
以下では、図7及び図9を参照しつつ説明する。
絶縁膜形成工程S30は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、吐出ヘッド1001を加熱する加熱工程と、加熱された機能液を基板1に向けて吐出する液滴吐出工程とを有している。
【0058】
具体的には、加熱工程では、基板1に着弾した絶縁膜形成材料を含む機能液が大きく濡れ拡がる(流動する)ことなく短時間で乾燥させて流動性を低減させるべく、絶縁膜形成材料が高濃度で含まれる機能液を用いた場合に、機能液の粘度が大きくて液滴吐出ヘッド1001からの吐出に支障を来さないように、吐出時における機能液の粘度を小さくするために、ヒータ1020を作動させて液滴吐出ヘッド1001を加熱する。また、液滴吐出ヘッド1001の温度(機能液の温度)としては、基板1の温度が所定温度以上(ここでは20℃以上)となるように設定される。
【0059】
吐出工程では、ヒータ1020による液滴吐出ヘッド1001の加熱により粘度が低下した機能液の液滴を、液滴吐出装置IJによって、図7(c)及び図9(b)に示すように、交差部KにおけるX電極10のブリッジ配線11を埋めるように島状電極部12、22の間の隙間に絶縁膜形成材料を含む液状体(機能液)の液滴Lを選択的に配置する。
【0060】
ここで、液滴吐出ヘッド1001から機能液の液滴は、基板1に到達するまでに熱が奪われるとともに、液滴吐出ヘッド1001よりも約20℃以上も低温の基板1に着弾するため、温度低下により短時間で粘度が大きくなって流動性が低減し、大きく濡れ拡がることなく乾燥が進ことによって滲み上がりが抑制される。
このとき、機能液の粘度は加熱によって8〜20mPasとなるように調整することで、液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、かつ、基板1に到達するまでに急激に粘度が上昇することでぬれ広がらない程度に流動性が低下するようになる。また、液滴吐出ヘッド1001の温度(機能液の温度)と基板1の温度差が大きい場合には、機能液が基板1の表面で全く濡れ広がらないために平坦性が損なわれてしまうので、機能液の温度と基板1の温度差は50℃以下が望ましい。
その後、基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、ブリッジ配線11上を含んで表面が高い平坦性を有する絶縁膜30が形成される。
【0061】
なお、絶縁膜30を形成するに際しては、少なくともブリッジ配線11上の領域において液滴を隙間無く配置することが好ましい。これにより、ブリッジ配線11に達する孔やクラックのない絶縁膜30を形成することができ、絶縁膜30における絶縁不良やブリッジ配線21の断線が防止される。
また、液滴吐出ヘッド1001の加熱中は、液滴吐出工程の前後においてクリーニング機構1008のキャップにより吐出ノズルを覆うことで、吐出ノズルからの機能液の蒸発を防止することができる。
【0062】
続いて、図7(c)に示すように、引き回し配線60上の領域に対しても液滴を選択的に配置する。その後、基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、引き回し配線60を覆う配線保護膜62が形成される。
上記液体材料としては、例えば、ポリシロキサンを含む液体材料や、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、又はアクリルモノマーを含む液体材料を用いることができる。
絶縁膜形成インクを構成する液性媒体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート、γ−ブチロラクトン、Nメチル−ピロリドン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
中でも、液性媒体としては、炭酸エチレン(以下、適宜、EC、と称する)、炭酸プロピレン(以下、適宜、PC、と称する)、オクタン酸エチル(以下、適宜、EO、と称する)、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(以下、適宜、BCA、と称する)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(以下、適宜、BMGAと称する)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、適宜、PEGMEA、と称する)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、適宜、EDM、と称する)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(以下、適宜、BDM、と称する)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(以下、適宜、BDB、と称する)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(以下、適宜、BTM、と称する)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、適宜、DPMA、と称する)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、適宜、TPM、と称する)、エチレングリコールブチルエーテル(以下、適宜、BC、と称する)、ジアセトンアルコール(以下、適宜、DAA、と称する)よりなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むことがより好ましい。
【0064】
これらの化合物は、比重が0.9から1.2程度であり、粘度が低く、上述したような絶縁膜形成材料との親和性が高い。このため、絶絶縁膜形成材料は液性媒体に好適に溶解/分散することができる。また、液性媒体が上記のような低粘度の化合物で構成されたものであると、加熱した状態において流動性が向上するため液性媒体の供給が滞ることなく、液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができる。
また、上述した中でも、液性媒体が沸点の高いBMGA、BCA、EC、PC、BDM、BDB、BTM、TPM、EO、BDB,DPMAを含むものである場合、絶縁膜形成用インクがノズルの近傍で非常に乾燥しにくくなり、インク付与工程における飛行曲がりの発生がより効果的に抑制される。
【0065】
液性媒体の大気圧(1気圧)下における沸点は、180〜300℃であるのが好ましく、180〜290℃であるのがより好ましく、200〜280℃であるのがさらに好ましい。液性媒体の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、縁膜形成用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける乾燥による目詰まり等をより効果的に防止することができ、生産性を特に優れたものとすることができる。
【0066】
また、液性媒体の25℃における蒸気圧は、0.7mmHg以下であるのが好ましく、0.1mmHg以下であるのがより好ましい。液性媒体の蒸気圧が前記範囲内と値であると、絶縁膜形成用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける乾燥による目詰まり等をより効果的に防止することができ、絶縁膜の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0067】
絶縁膜形成用インク中における液性媒体の含有率は、2〜90wt%であるのが好ましく、10〜85wt%であるのがより好ましく、30〜80wt%であるのがさらに好ましい。液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、縁膜形成用インクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとしつつ、製造される絶縁膜の厚みを均等に整えることが可能であり、耐久性を優れたものとすることができる。
【0068】
次に、ブリッジ配線形成工程S40に移行する。
ブリッジ配線形成工程S40では、図7(d)及び図9(c)に示すように、隣り合って配置された島状電極部22上と絶縁膜30上とにわたって、ITO粒子を含む液体材料の液滴を配線形状に配置する。その後、基板1上の液体材料を乾燥固化する。これにより、島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21が形成される。ブリッジ配線21の形成に用いる液体材料としては、上記したITO粒子を含む液体材料のほか、IZO(登録商標)粒子や、ZnO粒子を含む液体材料を用いて形成することもできる。また、ポリチオフェン、ポリアニリン系の有機高分子からなる透明導電膜を形成してもよく、有機高分子が水や溶剤に溶解した液体を配置した場合は120℃で30分程度の低温での焼成が必要である。
【0069】
ブリッジ配線21を形成するに際しては、図9(c)に示すように、ブリッジ配線形成工程S40で、電極成膜工程S10と同一の液体材料を用いてブリッジ配線21を形成することが好ましい。すなわち、ブリッジ配線21の構成材料には、X電極10や島状電極部22の構成材料と同一の材料を用いることが好ましい。
【0070】
次に、平坦化膜形成工程S50に移行する。
平坦化膜形成工程S50では、図8(a)に示すように、基板1の機能面1aを平坦化させる目的で、絶縁材料からなる平坦化膜40を機能面1aのほぼ全面に形成する。
平坦化膜40は、絶縁膜形成工程S30で用いた絶縁膜30形成用の液体材料と同様の液体材料を用いて形成することができるが、基板1表面の平坦化を目的としているため、樹脂材料を用いて形成することが好ましい。
【0071】
次に、保護基板接合工程S60に移行する。
保護基板接合工程S60では、図8(b)に示すように、別途用意した保護基板50と平坦化膜40との間に接着剤を配置し、かかる接着剤からなる接着層51を介して保護基板50と平坦化膜40とを貼り合わせる。保護基板50は、ガラスやプラスチック等からなる透明基板のほか、偏光板や位相差板などの光学素子基板であってもよい。接着層51を構成する接着剤としては、透明な樹脂材料などを用いることができる。
【0072】
次に、シールド層形成工程S70に移行する。
シールド層形成工程S70では、図8(c)に示すように、基板1の裏面1b(機能面1aとは反対側の面)に導電膜で構成されたシールド層70を形成する。シールド層70は、真空成膜法、スクリーン印刷法、オフセット法、液滴吐出法などの公知の成膜法を用いて形成することができる。例えばシールド層70を液滴吐出法などの印刷法を用いて形成する場合には、電極成膜工程S10、及びブリッジ配線形成工程S40で使用されるITO粒子等を含む液体材料を用いることができる。
また、基板1に対する成膜によりシールド層70を形成する方法のほかにも、一面又は両面に導電膜が成膜されたフィルムを別途用意し、かかるフィルムを基板1の裏面1bに貼り合わせることでフィルム上の導電膜をシールド層70としてもよい。
【0073】
なお、本実施形態では、シールド層70をタッチパネル製造工程の最後に実施することとしているが、シールド層70は任意のタイミングで形成することができる。例えば、予めシールド層70が形成された基板1を電極成膜工程S10以降の工程に供することもできる。また、電極成膜工程S10〜保護基板接合工程S60までの任意の工程の間にシールド層形成工程を配してもよい。
【0074】
また、本実施形態においては、基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、図3に示した変形例に係るタッチパネル100Aのように基板1の機能面1a側にシールド層70Aを形成する場合には、電極成膜工程S10に先立って、シールド層70Aを形成する工程と、絶縁膜80Aを形成する工程とを実行する。この場合にも、シールド層70Aは、シールド層形成工程S70と同様の手法によって形成することができる。また、絶縁膜80Aの形成工程は、例えば絶縁膜形成工程S30と同様とすることができる。
【0075】
以上に詳細に説明したタッチパネル100の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
まず、本実施形態の製造方法では、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)と、Y電極20を構成する島状電極部22とを基板1上の同一面に形成し、その後に、ブリッジ配線11上の領域に液滴吐出法を用いて絶縁膜30を形成し、その後さらに液滴吐出法を用いて島状電極部22を接続するブリッジ配線21を形成する。このようにX電極10と交差するY電極20の接続構造を、印刷法である液滴吐出法を用いて形成することで、従来に比して工数を削減することができ、タッチパネルの製造コストを抑えることができる。
【0076】
さらに詳しく説明すると、従来の接続構造の形成工程では、図7(a)に示した工程の後に、(1)X電極10及び島状電極部22を覆う層間絶縁膜を形成する工程と、(2)隣り合う島状電極部22にブリッジ配線を架設するためのコンタクトホールを層間絶縁膜に形成する工程と、(3)コンタクトホールを含む領域にブリッジ配線をパターン形成して島状電極部22同士を接続する工程と、を実施していた。
【0077】
上述した従来工程と本実施形態の工程とを比較すれば明らかなように、本実施形態に係る製造方法では、従来工程における層間絶縁膜にコンタクトホールを形成するためのフォトリソグラフィー工程(及びエッチング工程)が不要になり、さらに、ブリッジ配線をパターン形成するためのフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程も不要になる。
したがって、本実施形態の製造方法によれば、特にコストのかかるフォトリソグラフィー工程を削減することができ、タッチパネルの製造コストを低減することができる。また、液滴吐出法では、それぞれの膜を形成する領域にのみ選択的に液滴を配置するので、材料の使用量を抑えることができ、原材料費の点でも製造コスト低減に寄与する。
【0078】
(実施例)
(1)絶縁膜形成材料(分子量2500) が濃度36%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を50℃に加熱したときの機能液は粘度13.5mPa・Sであった。また、温度が室温(例えば23℃)の基板1上における上記機能液の粘度は45mPa・sであった。
(2)上記(1)と同じ絶縁膜形成材料が濃度45%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を55℃に加熱したときの機能液は粘度12.1mPa・Sであった。また、温度が30℃の基板1上における上記機能液の粘度は70mPa・sであった。
(3)絶縁膜形成材料(分子量1200) が濃度65%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を48℃に加熱したときの機能液は粘度14.0mPa・Sであった。また、温度が20℃の基板1上における上記機能液の粘度は140mPa・sであった。
上記の実施例(1)〜(3)ではいずれの場合も液滴吐出ヘッド1001から支障なく機能液の液滴を吐出でき、また平坦性に優れた絶縁膜30を形成することができた。
(比較例1)絶縁膜形成材料(分子量2500) が濃度28%の機能液を用い、液滴吐出ヘッド1001を35℃に加熱したときの機能液は粘度17.2mPa・Sであったが、機能液の粘度が高く吐出安定性に関して不良であった。
【0079】
このように、本実施形態では、基板1での流動特性を考慮して高濃度で絶縁膜形成材料が含まれる機能液を吐出する場合でも、液滴吐出ヘッド1001を加熱するため、高濃度で絶縁膜形成材料を含む機能液を用いる場合でも、支障なく液滴として吐出することが可能となる。そのため、本実施形態では、吐出した機能液を大きく濡れ拡がらせる前に短時間で乾燥させて流動性を低減させることが可能となり、膜端部における溶媒の乾燥で生じる滲み上がりが生じることを抑制できる。そのため、本実施形態では屈曲することなく絶縁膜30上にブリッジ配線21を形成することができ、断線の危険性が増すことなく、高品質で歩留まりの良いタッチパネルを得ることができる。
【0080】
また、本実施形態では、基板1の温度との差が所定温度以上となるように、液滴吐出ヘッド1001を加熱することにより、支障なく機能液を基板に吐出させることが可能になるとともに、着弾した機能液を所定温度以下に低下させて高粘度化させることができる。
この場合、予め機能液の種類に応じて基板1と液滴吐出ヘッド1001との間に必要な温度差を求めておき、それぞれの温度(すなわち温度差)を管理することにより、機能液の流動特性を制御して、製造効率の向上を図ることができる。
【0081】
[表示装置]
次に、本発明のタッチパネルを備えた表示装置について説明する。本実施形態では、表示装置の一例として、タッチパネルを備えた液晶表示装置について説明する。図10は本発明の1実施形態である液晶表示装置500の模式図であり、(a)平面図(b)平面図におけるH−H’断面図を示している。
【0082】
液晶表示装置500は、図10(a)に示すように、素子基板410、対向基板420、及び画像表示領域410aを有している。
素子基板410は対向基板420に比して広い平面領域を有した矩形状の基板である。
対向基板420は液晶表示装置500における画像表示側であり、ガラスやアクリル樹脂などで形成された透明な基板である。対向基板420は、シール材452を介して素子基板410の中央部に接合されている。
画像表示領域10aは、対応基板420の平面領域であって、シール材452の内周に沿って設けられた周辺見切り453の内側領域である。
【0083】
素子基板410における対向基板420の周辺には、データ線駆動回路401、走査線駆動回路404、データ線駆動回路401及び走査線駆動回路404と接続された接続端子402、及び対向基板420に対して対向して配置された走査線駆動回路404同士を接続する配線405などが配置されている。
【0084】
次に、液晶表示装置500の断面について説明する。
素子基板410の液晶層450側の面には、画素電極409及び配向膜418などが積層されている。
対向基板420の液晶層450側の面には、遮光膜(ブラックマトリクス)423、カラーフィルタ422、共通電極425、及び配向膜429などが積層されている。
液晶層450が、素子基板410及び対向基板420によって挟持されている。
そして、対向基板420の外側(液晶層450反対側)の面には、接着層101を挟んで本発明のタッチパネル100が配置されている。
【0085】
以上説明した液晶表示装置によれば、以下の効果を得ることができる。
液晶表示装置500に設けられたタッチパネル100は、液滴吐出法によって位置検出用の電極及び電極を交差させる絶縁膜が形成されている。これにより、タッチパネルの製造に係るコストが低減されているので、製造コストを抑えた液晶表示装置とすることができる。
また、液晶表示装置に設けるタッチパネルは、第1の実施形態の変形例であるタッチパネル100A、あるいは第2の実施形態のタッチパネル200であってもよい。これらのタッチパネルも、液滴吐出法によって成膜する工程によって製造されており、製造コストが低減されている。したがって、液晶表示装置の製造コストを抑えることができる。
【0086】
また本実施形態の液晶表示装置においては、対向基板420の外側(液晶層450と反対側)の面にタッチパネルの各層が形成されていることが好ましい。これによれば、液晶表示装置の対向基板420とタッチパネルの基板1とを共通化することができ、より製造コストを低減することができるとともに、液晶表示装置を軽量化することができる。
また、本実施形態においては、液晶表示装置について説明したが、この以外にも、有機EL装置、電気泳動表示装置などの表示装置においても、本発明のタッチパネルを好適に用いることができる。
【0087】
次に、本発明のタッチパネル又はタッチパネルを備えた液晶表示装置を有する電子機器の例について説明する。図11は、モバイル型パーソナルコンピュータ1100を示す斜視図である。モバイル型パーソナルコンピュータ1100は、表示部1101と、キーボード1102を有する本体部1103とを備えている。モバイル型パーソナルコンピュータ1100は、上記実施形態の液晶表示装置500を表示部1101に備えている。
このような構成を備えたモバイル型パーソナルコンピュータ1100によれば、本発明のタッチパネルが表示部に用いられているので、製造コストを抑えた電子機器とすることができる。
【0088】
なお、上記の電子機器は、本発明の電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)などの表示部にも本発明に係るタッチパネルを好適に用いることができる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態で示した材料・加熱温度等は一例であり、基板1に吐出した機能液が大きく濡れ拡がらず滲み上がりが生じない高濃度の機能液を用いる場合に、液滴として吐出可能な温度に液滴吐出ヘッド1001を加熱するのであれば他の条件を用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…基板、 10…X電極(第1電極)、 11…ブリッジ配線、 20…Y電極(第2電極)、 22…島状電極部(電極膜)、 30…絶縁膜、 100…タッチパネル、 1001…液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)、 K…交差部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一面側に形成され、互いに交差する方向に延在する複数の第1電極及び複数の第2電極を有するタッチパネルの製造方法であって、
前記基板上に、複数の前記第1電極と、前記第2電極を前記第1電極との交差部で分断して離間する形状の電極膜とを形成する電極成膜工程と、
少なくとも前記交差部の前記第1電極上に印刷法を用いて絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記交差部で離間する前記第2電極の間を前記絶縁膜上を経由して接続するブリッジ配線を印刷法を用いて形成するブリッジ配線形成工程とを有し、
前記絶縁膜形成工程は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、前記機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドを加熱する加熱工程と、
加熱された前記機能液を前記基板に向けて吐出する吐出工程とを有することを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のタッチパネルの製造方法において、
前記機能液は、前記基板に着弾した前記液滴の前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含み、
前記加熱工程では、前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含む前記機能液の吐出特性に基づいて、前記吐出ヘッドを加熱することを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のタッチパネルの製造方法において、
前記基板の温度との差が所定温度以上となるように、前記吐出ヘッドを加熱することを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法によりタッチパネルを製造する工程を有することを特徴とする表示装置製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法により表示装置を製造する工程を有することを特徴とする電子機器製造方法。
【請求項1】
基板の一面側に形成され、互いに交差する方向に延在する複数の第1電極及び複数の第2電極を有するタッチパネルの製造方法であって、
前記基板上に、複数の前記第1電極と、前記第2電極を前記第1電極との交差部で分断して離間する形状の電極膜とを形成する電極成膜工程と、
少なくとも前記交差部の前記第1電極上に印刷法を用いて絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記交差部で離間する前記第2電極の間を前記絶縁膜上を経由して接続するブリッジ配線を印刷法を用いて形成するブリッジ配線形成工程とを有し、
前記絶縁膜形成工程は、絶縁膜形成材料を含む機能液の流動特性に基づいて、前記機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドを加熱する加熱工程と、
加熱された前記機能液を前記基板に向けて吐出する吐出工程とを有することを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のタッチパネルの製造方法において、
前記機能液は、前記基板に着弾した前記液滴の前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含み、
前記加熱工程では、前記流動特性に基づく濃度で前記絶縁膜形成材料を含む前記機能液の吐出特性に基づいて、前記吐出ヘッドを加熱することを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のタッチパネルの製造方法において、
前記基板の温度との差が所定温度以上となるように、前記吐出ヘッドを加熱することを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法によりタッチパネルを製造する工程を有することを特徴とする表示装置製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法により表示装置を製造する工程を有することを特徴とする電子機器製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−267223(P2010−267223A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120226(P2009−120226)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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