説明

タッチパネル及びその製造方法

【課題】タッチパネルの基材としてフィルム基材を用いた場合でも、タッチパネル製造工程での熱変形が少なく、基材同士の貼り合せ時のアライメントやパターニング精度が良く、カールの少ないタッチパネルとそれを作製する製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2枚の透明導電膜層付きフィルム基材を貼り合せた積層体を有し、一方のフィルム基材表面にX方向の第一の透光性電極と、他方のフィルム基材表面に前記X方向と直交するY方向の第二の透光性電極とが形成された接触感知式表示装置用のタッチパネルであって、前記2枚のフィルム基材は同一の材質・厚みを有し、かつ、前記積層体において前記一方のフィルム基材と前記他方のフィルム基材とは、平面状態でのフィルム成膜方向が互いに1度〜90度の角度で回転した状態で積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置上の入力装置として搭載されるタッチパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化、携帯端末の小型軽量化の流れの中で、使用者が行っている作業や操作が直感的にわかりやすいなどの理由から、携帯電話機や、携帯情報端末、カーナビゲーションシステムを始め、タッチパネルを液晶表示パネル等のフラットディスプレイと一体型で構成した、入力表示一体型のタッチパネル式フラットディスプレイが市場に普及してきた。これは、液晶画面の上に透明電極をおき、使用者が液晶画面の該当部分を触ったときに、透明電極の電圧の変化などを読み取ることで接触を感知するものである。
【0003】
タッチパネルには、その構造及び検出方式の違いによって光学式、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導式等の様々なタイプがある。このうち、静電容量方式のタッチパネルは、基板上に透光性導電膜(透光性電極)を有し、指またはペン等が接触(タッチ)することによって形成される静電容量を介して流れる微弱電流量の変化を検出する事によって被接触位置を特定するもので、指示される内容を入力信号として受け取り液晶表示装置等を駆動する。静電容量方式のタッチパネルはマルチタッチができ、抵抗膜型タッチパネルと比べてより高い透過率が得られる利点があり、近年急速に増えてきている。
【0004】
静電容量方式のタッチパネルには、X方向の第一の透光性電極とそれと直交するY方向の第二の光性電極の2方向の電極が必要とされ、指が触れた時の静電容量の変化を検出することで、その座標を検出してタッチ位置やタッチ動作を認識する。X電極層とY電極層同士は接することはなく、絶縁膜を介して積層されるか又は同一面で配設される。X電極とY電極には透明導電性材料が主に使われており、基材上に透明導電性材料を成膜し、パターニングして電極層を形成する。電極のパターニング形状には線状やダイヤモンド型などがある。X方向とそれと直交するY方向の2方向の電極を形成する方法としては、2枚の基材にそれぞれX方向、Y方向の電極をパターニングし、その基材を貼り合せる方法がある。また、基板の同一面上にX方向とそれと直交するY方向の2方向の電極を形成する方法がある。例えば、特許文献1及び2には、基板上に透明導電性薄膜からなる、X軸方向に等間隔に配置し相互に平行配列する複数のX軸トレース、及び、Y軸方向に等間隔に配置し相互に平行配列する複数のY軸トレースを備え、並びに、X軸トレース及びY軸トレースは、同一平面上において行列式に交差配置されており、個別のX軸トレース上の各センサユニットは相互連結し、個別のY軸トレース上の各センサユニットは連結せず間隔を空けて配列し、導電性の材料よりなるジャンパーを介して電気的に接続している静電容量方式のタッチパネルが開示されている。
【0005】
静電容量方式のタッチパネルを搭載した表示装置の構成例としては、液晶表示装置(LCD)等の表示パネル、その観察側にLCD表示パネルからのノイズを防ぐためのシールド層があり、さらにその観察側にタッチパネルが設置され、タッチパネルよりも前面に接着層等を介して指が触れる部分としてカバーレンズ等が搭載されている。
【0006】
近年、タッチ画面の大型化及び表示装置全体の薄型化が求められており、タッチパネル基材が、ガラスから薄型透明フィルムに替わる要望が増加している。また、タッチ画面を大型化することにより、画面タッチの解像度が落ちることが懸念されるため、導電面に設けられるパターンが高精細化している。これにより、2枚のフィルム基材にX方向、Y方向それぞれにパターニングし、その基材を貼り合せる際には高い寸法精度が要求される。
また、フィルム基材の同一面にパターニングする場合にも、表示パネルの画素ピッチとのマッチングを含めて高い寸法精度が要求される。
【0007】
電極基材を、ガラスから薄型透明フィルムに替えた場合、薄型フィルムはパターニングや洗浄・乾燥などの工程を通るうちに伸縮、あるいはたわみなどが入るため、パターニングした基材同士を貼り合せる際に、パターンが重なってしまいタッチパネルとしての体をなさないものが出来上がることがある。これを回避するためにさらなるアライメント精度の向上が要求され、自動化した際に作製の全工程でボトルネックとなる危険性がある。また、基材フィルムの材質や導電材・パターニングの方法によっては、パターニングした時点でカールが発生してしまい、貼り合せが困難になってしまうケースもある。これに関連して、特許文献3や特許文献4には、熱収縮特性等寸法変化が少なく、光学フィルムや精密印刷用途に適したポリエチレンテレフタレート(PET)系フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】登録実用新案第3144563号公報
【特許文献2】登録実用新案第3144241号公報
【特許文献3】特開2009−149065号公報
【特許文献4】特開2009−149066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、基材フィルムとして、上記したようなPET基材を使ったとしても、タッチパネル製造工程で高い熱をかけることでわずかながら変形が起こり、それがパターニングやその後の貼り合せに影響を与える。また使用する基材の厚みや導電材に使用する材料によっては、乾燥工程を経た際にカールしてしまうことがある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、タッチパネルの基材としてフィルム基材を用いた場合でも、タッチパネル製造工程での熱変形が少なく、基材同士の貼り合せ時のアライメントやパターニング精度が良く、カールの少ないタッチパネルとそれを作製する製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも2枚の透明導電膜層付きフィルム基材を貼り合せた積層体を有し、一方のフィルム基材表面にX方向の第一の透光性電極と、他方のフィルム基材表面に前記X方向と直交するY方向の第二の透光性電極とが形成された接触感知式表示装置用のタッチパネルであって、
前記2枚のフィルム基材は同一の材質・厚みを有し、かつ、前記積層体において前記一方のフィルム基材と前記他方のフィルム基材とは、平面状態でのフィルム成膜方向が互いに1度〜90度の角度で回転した状態で積層されていることを特徴とするタッチパネルである。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記積層体において、前記一方のフィルム基材と前記他方のフィルム基材とは、平面状態でのフィルム成膜方向が互いに90度の角度で回転した状態で積層されていることを特徴とする請求項1に記載するタッチパネルである

【0013】
次に、本発明の請求項3に係る発明は、少なくとも2枚のフィルム基材を貼り合せた積層体を有し、一方のフィルム基材表面にX方向の第一の透光性電極を有し、他方のフィルム基材表面に前記X方向と直交するY方向の第二の透光性電極を有する接触感知式表示装置用のタッチパネルの製造方法であって、
少なくとも1面に透明導電膜層を持つフィルム基材2枚を、それぞれの前記透明導電膜層を外側にして、前記一方のフィルム基材と前記他方のフィルム基材との平面状態でのフィルム成膜方向が互いに1度〜90度の角度で回転した状態で貼り合せて両面透明導電膜層形成構成の積層体とする積層工程と、
前記積層工程の後で、前記一方のフィルム基材表面の透明導電膜層をパターニングしてX方向の第一の透光性電極を形成する第一電極形成工程と、
次いで、前記他方のフィルム基材表面の透明導電膜層をパターニングしてY方向の第二の透光性電極を形成する第二電極形成工程と、を含むことを特徴とするタッチパネルの製造方法である。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記積層工程と前記第一電極形成工程との間に、前記積層体を、前記第一電極形成工程以降の工程で前記フィルム基材にかかる温度以上の加熱温度で加熱し室温で冷却する、加熱・冷却工程を含むことを特徴とする請求項3に記載するタッチパネルの製造方法である。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記加熱温度が130℃〜150℃の範囲であることを特徴とする請求項4に記載するタッチパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少なくとも2枚の透明導電膜層付きフィルム基材を貼り合せた積層体を有し、しかも、パターニング工程の前に2枚の透明導電膜層付きフィルム基材が角度をずらしてあらかじめ貼り合せられている。そのため、タッチパネルの基材としてプラスチックフィルムを用いた場合でも、パターニング後に貼り合せる工程をなくすることにより、パターニング時に基材が変形しても貼り合せるアライメント工程は通過しなくて良くなる。さらに2つのフィルム基材が角度をずらして回転させて貼り付けられていることにより、パターニング時のフィルム基材の変形を表と裏でキャンセルする効果があり、基材のカールを減らすことが出来る。また、パターニング前に高い温度で加熱しておくことで、以降の工程で基材を変形させるほどの熱がかかることがあっても、温度が下がることで最初に加熱した時の状態に戻すことが出来、パターニングの困難さが解消される。すなわち、本発明によれば、タッチパネル製造工程での熱変形が少なく、基材同士の貼り合せ時のアライメントやパターニング精度が良く、カールの少ないタッチパネルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る接触感知式表示装置の構成例を断面で示す説明図である。
【図2】本発明のタッチパネルに係る、透明導電膜層付きフィルム基材の構成例を断面で示す説明図である。
【図3】本発明に係る、透明導電膜層付きフィルム基材を回転させて積層する説明図である。
【図4】本発明に係る、両面透明導電層形成構成の積層基材の構成例を断面で示す説明図である。
【図5】本発明のタッチパネルに係る、第一の透光性電極のパターニング例の平面図である。
【図6】本発明に係る、タッチパネルの構成例を断面で示す説明図である。
【図7】本発明に係る、タッチパネルの一例の平面図である。
【図8】本発明のタッチパネルに係る、シールド層の構成例を断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のタッチパネルを、一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のタッチパネルに係る接触感知式表示装置の構成例を断面で示す説明図である。図1に示すように、この表示装置は、LCD表示パネル30と、観察側に構成されるタッチパネル10と、タッチパネル10のさらに観察側の面に接着剤層50を介して積層されるフロントパネル層40と、LCD表示パネルとタッチパネル10の間に介在するシールド層20から成る。シールド層20は、図1に示すように、タッチパネル10と離れていてもよいし、タッチパネル10に粘着剤等を介して貼り合わせてあってもよい。
【0020】
図2(a)に、タッチパネル10を構成している1枚の透明導電膜層付きフィルム基材15の構成を断面で示し、図2(b)に、2枚のフィルム基材15を、透明導電膜層14を外側にして粘着材(または接着剤)18を介して積層した積層体19の構成を断面で示す。フィルム基材15の一般的な製造方法として、まず基材フィルム11上に硬化樹脂層12を積層する。硬化樹脂層12は基材フィルム11の片側および両側のどちらでも積層されてよい。図2には基材11の片側に硬化樹脂層12を設けた場合を示してある。硬化樹脂層12の上には電極となる透明導電膜層14が積層される。硬化樹脂層12と透明導電膜層14の間に光学機能層13を設けることも好ましく行われる。
【0021】
本発明のタッチパネル10は、少なくとも2枚のフィルム基材15を貼り合せた積層体19を有し、一方のフィルム基材表面にX方向の第一の透光性電極24を有し、他方のフィルム基材表面にX方向と直交するY方向の第二の透光性電極25を有する。この積層体19を構成する2枚のフィルム基材15は同一の材質・厚みを有し、かつ、一方のフィルム基材と他方のフィルム基材とは、平面状態でのフィルム成膜方向が互いに1°〜90°の角度で回転した状態で積層されていることを特徴としている。
【0022】
図3には、フィルム基材15の貼り合せの様子を示す。基材フィルム11に硬化樹脂層12、ITO(酸化インジウム・錫)等の透明導電膜層14が予め成膜されている上記したフィルム基材15を用意し、同じ方向16に切り出したフィルム基材15を、貼り合せ時には片方の基材を回転角度17だけ回転させて貼り合わせる。同じ方向とは、硬化樹脂層12を形成する際の塗工方向であり、平面状態でのフィルム成膜方向と一致する方向である。図3では90°回転させて貼り合せる場合の図を示している。
【0023】
この貼り合わせの回転角度17は、透明導電膜層14を形成する基材フィルム11の種類、貼り合せの後工程の条件、貼り合せ後の干渉縞の有無によって適宜変更することができ、1°〜90°の範囲で設定することができる。特に、90°回転させて貼り合せる場合、積層体19のカールをより減らすことができる。また、本発明では、貼り合せ以降でパターニングを実施するため、貼り合せは必ず導電面と反対側同士を貼り合せる。貼り合せた後に十分な温度と時間設定で加熱する。このときの温度は以降の工程でフィルムにかかる温度以上にしておく必要がある。具体的には、用いるフィルムのガラス転移点等を考慮すると、150℃以下が好ましく、130〜150℃の範囲が好ましい。また、加熱後
冷却する際は、室温で冷却することが好ましい。
【0024】
図4には、一方のフィルム基材15の透明導電膜層14をパターニングした積層体19の断面図を示す。透明導電膜層のパターニングは例えばレジスト塗布、露光、エッチング、レジスト剥離という工程を経て、導電性パターン部と非導電性パターン部が形成される。パターニング方法としてはフォトリソ、スクリーン印刷、レーザーによるパターニングなどどの方法を用いても構わない。また、レジストも感光性のものでなく、乾燥により硬化するものでも構わない。その場合露光工程は乾燥工程に置き換わる。電極のパターニング例として、図5に、導電膜層を菱形状にパターニングしたものを上から見た図を示す。
【0025】
図6は、図3で貼り合せた2枚の積層体15の各導電面に対しパターニングを行った後の断面図を示したものである。これが一方のフィルム基材表面にX方向の第一の透光性電極24を有し、他方のフィルム基材表面にX方向と直交するY方向の第二の透光性電極25を有するタッチパネル10となる。静電容量式タッチパネルを作製する場合、上下のパターンが重ならないように導電面にパターンを形成しなければならない。図5のように菱形のパターンを用いる場合、各ダイヤモンドが重ならないようにパターニングすると図7のようになる。これによりどちらか一方がX方向の静電容量変化を検知し、もう一方がY方向の変化を検知することが可能となる。
【0026】
基材フィルム11としては、プラスチックフィルムを用いる。プラスチックフィルムとしては、成膜工程および後工程において十分な強度があり、表面が平滑なものであれば特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。これらの基材には酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、易接着剤などの添加剤が含まれていても構わない。また、密着性を良くする為にコロナ処理、低温プラズマ処理を施しても構わない。
【0027】
硬化樹脂層12としては透明性と適度な硬度および強度があれば特に限定されるものではない。望ましくは基材フィルム11と屈折率が同等もしくは近似しているものを選択する。硬化樹脂層12としてはUV硬化樹脂、EB硬化樹脂だけでなく、熱硬化樹脂等も使用することが可能である。
【0028】
光学機能層13としては、無機化合物を用いる場合、酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物などが挙げられる。具体的には酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタルなどが挙げられる。これら無機化合物はその材料および膜厚により屈折率が異なるため、目的に合わせた材料を特定の膜厚で形成することにより光学特性を調整することが可能となる。光学機能層13は1層だけに留まらず、複数層あってもよい。
【0029】
透明導電膜層14としては酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのいずれか、またはこれらの混合酸化物、さらにはその他添加剤が加えられた物等が挙げられ、目的・用途によって選択可能で特に限定されるものではない。タッチパネルにおいて最もよく用いられているのは酸化インジウムスズ(ITO)である。
【0030】
図1に示すように、タッチパネル10とLCD表示パネル30はシールド層20を介して組み立てられる。シールド層20はLCD表示パネルからの電気的なノイズをタッチパネル部10に与えないために組み込まれる層であり、透明かつ導電性を備えている必要がある。図8に示すように、基材21上に導電膜層22が積層される。基材21と導電膜層
22の間には、必要に応じてUV硬化樹脂等からなるコーティング層23を積層する。
【0031】
基材21としては、透明なガラスおよびプラスチックフィルムが用いられる。プラスチックフィルムとしては、成膜工程および後工程において十分な強度があり、表面が平滑なものであれば特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。これらの基材には酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、易接着剤などの添加剤が含まれていても構わない。また、密着性を良くする為にコロナ処理、低温プラズマ処理を施しても構わない。
【0032】
導電膜層22に用いる導電性材料としては、本発明では導電性ポリマーが好ましく用いることができる。導電性ポリマーとしてはπ共役系高分子が用いられる。例えばポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリフェニレンスルフィド、ポリピリジルビニレン、及びポリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもポリエチレンジオキシチオフェンは表面抵抗値が数百Ω/□程度で透明性が比較的良好であり、表色系のCIE 1976(L)空間で、b値がマイナスであり若干青味を帯びていることからシールド層として用いた場合に表示パネル全体の色味を悪化させないものとして好適に用いることが可能である。
【0033】
導電膜層22を基材21に積層する方法としては、スピンコート法、ローラコート法、バーコート法、ディップコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、ニーダーコート法等の塗布法や、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法等の印刷法等が挙げられ、コーティング・塗布して成膜することで積層される。
【0034】
導電膜層22に用いる導電性ポリマーは、上記塗工方法からして液状になっていることが好ましい。液状にするためには、水、または有機溶媒、例えばアルコール、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アミドなどに溶解または分散させて用いることが好ましい。中でも水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールといった溶媒がコスト的にも容易に用いることが可能である。この時、ポリマーの分散性をよくするために分散剤や界面活性剤等の添加剤を加えても構わないし、導電膜の膜強度を強くするために添加剤を加えたり、膜硬化を促進するための硬化剤を加えても構わない。導電膜22の膜の硬化方法としては、用いるπ共役系高分子の種類や添加している硬化剤の種類によって熱硬化もしくはUV硬化等により硬化させる。
【0035】
前記したπ共役系高分子ではそれ単独では導電性が発現せず、ドーパントを添加することによりプラスまたはマイナスの電荷がπ共役系高分子に付与されて導電性を持つ場合もある。従ってドーパントを加えることも好ましく行われる。例えばポリジオキシチオフェンの場合はポリスチレンスルホン酸がドーパントとして添加されることが一般的である。
【0036】
導電膜層22の透過b値はマイナス方向に値が大きいほど透過色の青味が強いものとなり、黄色味を抑制する効果がある。b値は導電性ポリマー膜の膜厚を変化させることで、制御可能であり、タッチパネルの透過色の黄色味の程度によって、最も適切な膜厚の導電性ポリマー膜を塗工することが可能である。
【0037】
コーティング層23はその下部の基材21からのオリゴマー析出を防止するために設ける層である。シールド層を構成する導電層の材質により適切な材料、膜厚、硬化方法を選
ぶことで、オリゴマー析出を防止しつつ、高い透過率を保ったシールド層を形成することができる。例えば上記ポリエチレンジオキシチオフェンを導電層として用いる場合は、アクリル系のUV硬化樹脂により、3μmの層を形成することで達成することができる。
【0038】
コーティング層23の形成方法としては、導電性ポリマー層の形成と同様にスピンコート法、ローラコート法、バーコート法、ディップコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、ニーダーコート法等の塗布法や、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法等の印刷法コート等によるコーティングで行うことが出来る。
【0039】
LCD表示パネル30の構造としては、液晶を駆動させるためのスイッチング素子が配置され電極層が設けられた基板(アレイ基板)と、対向する電極層が形成されたカラーフィルター基板とが液晶層を挟んで構成されており、アレイ基板とカラーフィルター基板にはそれぞれ偏光板が取付けられているような極一般的なLCD表示パネルを用いることができる。またLCD表示パネル30の駆動方式としては特に限定されるものではなく、IPS(In Plane Switching)方式、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Allignment)方式等のLCD表示装置が用いられる。
【0040】
以下に、本発明の具体的実施例及び比較例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、発明の趣旨に反しない限り以下の実施例に限られるものではない。
【0041】
<実施例1>
基材フィルムとしてPET基材(厚み125μm)をロールで準備し、基材上両面にダイコーターによりUV硬化樹脂を塗布・硬化させた。その片面に光学機能層としてNb(膜厚10nm)、SiO(膜厚50nm)を真空成膜し、さらに透明導電膜層としてITO(膜厚40nm)を成膜してフィルム基材を作製した。このフィルム基材ロールからUV硬化樹脂の塗工方向に2枚のフィルム基材を300mm角で切り出した。切り出した一方のフィルム基材のITO面とは反対側の面に接着層を貼り付け、他方のフィルム基材を90°回転させて貼り合せた。次いでフィルム基材を貼り合せた積層体を、150℃で1時間加熱し室温で十分冷ました。次にスクリーン印刷機に、電極パターンのアライメントマークを登録させる。今回は、あらかじめ基準判定用の「捨てフィルム」にスクリーン印刷を行うことでスクリーン印刷機に電極パターンのアライメントマークを登録させた。スクリーン版の位置を変えない限り、印刷位置は変わらない。次いでスクリーン印刷機で一方の導電面にレジストを塗布し、熱乾燥により硬化した。室温で十分冷ました後レジストが印刷されてない他方の面をスクリーン印刷機にセットしたところ、あらかじめ登録しておいた位置にアライメントマークが来ており、基材の熱変形によるアライメント不良が起こらず以降の工程を問題なく通せることがわかった。
【0042】
<比較例1>
実施例1で作製したフィルム基材のロールからUV硬化樹脂の塗工方向に2枚のフィルム基材を300mm角で切り出した。切り出した一方のフィルム基材のITO面とは反対側の面に接着層を貼り付け、他方のフィルム基材を回転させずに貼り合せた。次いでフィルム基材を貼り合せた積層体を、150℃で1時間加熱し十分室温で冷ますと、積層体が大きくカールしていたため、その後のスクリーン印刷が不可能であった。
【0043】
<比較例2>
実施例1で作製したフィルム基材のロールからUV硬化樹脂の塗工方向に2枚のフィルム基材を300mm角で切り出した。切り出した一方のフィルム基材のITO面とは反対側の面に接着層を貼り付け、他方のフィルム基材を回転させずに貼り合せた。その後アニー
ルせずにスクリーン印刷によりパターニングし、レジストを熱乾燥させた。次にパネルを裏返してスクリーン印刷機にセットしたところ、登録したい位置から、アライメントマークが150μm程度ずれていた。このため、以降の工程が通せず、タッチパネルが作れなかった。
【0044】
以上の実施例1及び比較例1、2の結果を表1にまとめ示す。
【0045】
【表1】

以上述べた結果から、本発明の有効性を確認できた。
【符号の説明】
【0046】
10・・タッチパネル 11・・基材フィルム 12・・硬化樹脂層
13・・光学機能層 14・・透明導電膜層 15・・フィルム基材
16・・フィルム切り出し方向 17・・貼り合せ時フィルム回転角度
18・・粘着層 19・・積層体 20・・シールド層 21・・基材
22・・導電膜層 23・・コーティング層 24・・第一の透光性電極
25・・第二の透光性電極 30:LCD表示パネル 40・・フロントパネル 50・・接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の透明導電膜層付きフィルム基材を貼り合せた積層体を有し、一方のフィルム基材表面にX方向の第一の透光性電極と、他方のフィルム基材表面に前記X方向と直交するY方向の第二の透光性電極とが形成された接触感知式表示装置用のタッチパネルであって、
前記2枚のフィルム基材は同一の材質・厚みを有し、かつ、前記積層体において前記一方のフィルム基材と前記他方のフィルム基材とは、平面状態でのフィルム成膜方向が互いに1度〜90度の角度で回転した状態で積層されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記積層体において、前記一方のフィルム基材と前記他方のフィルム基材とは、平面状態でのフィルム成膜方向が互いに90度の角度で回転した状態で積層されていることを特徴とする請求項1に記載するタッチパネル。
【請求項3】
少なくとも2枚のフィルム基材を貼り合せた積層体を有し、一方のフィルム基材表面にX方向の第一の透光性電極を有し、他方のフィルム基材表面に前記X方向と直交するY方向の第二の透光性電極を有する接触感知式表示装置用のタッチパネルの製造方法であって、
少なくとも1面に透明導電膜層を持つフィルム基材2枚を、それぞれの前記透明導電膜層を外側にして、前記一方のフィルム基材と前記他方のフィルム基材との平面状態でのフィルム成膜方向が互いに1度〜90度の角度で回転した状態で貼り合せて両面透明導電膜層形成構成の積層体とする積層工程と、
前記積層工程の後で、前記一方のフィルム基材表面の透明導電膜層をパターニングしてX方向の第一の透光性電極を形成する第一電極形成工程と、
次いで、前記他方のフィルム基材表面の透明導電膜層をパターニングしてY方向の第二の透光性電極を形成する第二電極形成工程と、
を含むことを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項4】
前記積層工程と前記第一電極形成工程との間に、前記積層体を、前記第一電極形成工程以降の工程で前記フィルム基材にかかる温度以上の加熱温度で加熱し室温で冷却する、加熱・冷却工程を含むことを特徴とする請求項3に記載するタッチパネルの製造方法。
【請求項5】
前記加熱温度が130℃〜150℃の範囲であることを特徴とする請求項4に記載するタッチパネルの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41446(P2013−41446A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178288(P2011−178288)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】