説明

タッチパネル及びそれを利用したディスプレイ

【課題】本発明は、タッチパネル及びそれを利用したディスプレイに関し、特にカーボンナノチューブフィルムを利用したタッチパネル及びそれを利用したディスプレイに関する。
【解決手段】本発明のタッチパネルは、基板と、所定距離で分離され、それぞれ前記基板の一つの表面に設置された複数の透明な導電構造体と、少なくとも一つの容量型検出回路と、それぞれ前記容量型検出回路に電気的に接続された複数の導電線と、を含む。前記透明な導電構造体は、複数のカーボンナノチューブを有するカーボンナノチューブ構造体を含む。本発明では、前記タッチパネルを利用したディスプレイも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル及びそれを利用したディスプレイに関し、特にカーボンナノチューブ構造体を利用したタッチパネル、及びそれを利用したディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、画面に指やペンなどで直接触れることで機械を操作する装置であり、LCDなど表示装置、PDAなど携帯装置、銀行のATMやPOSなど多くの装置で用いられている。タッチパネルに対して、タッチした位置の検出を電気的に行うものとして、抵抗膜方式や静電容量方式などがある。一方、電気を用いないものとして、超音波方式や赤外遮光方式、画像認識方式などがある。
【0003】
静電容量方式は、指で触れることで表示パネルの表面電荷の変化を捕らえることによる位置検出方法である。現在、静電容量方式のタッチパネルに対して、マルチタッチ技術が注目されている。マルチタッチ技術は、同時に2カ所以上の接触点を検知(多点検知)できるため、2本以上の指を使った操作が可能なものである。従来の静電容量方式のマルチタッチ型タッチパネルは、ガラス基板と、複数の透明な導電層と、容量型検出回路と、複数の検出配線を含む。前記複数の透明な導電層及び前記検出配線は、それぞれ前記ガラス基板の一つの表面に設置されている。前記複数の透明な導電層は前記ガラス基板の一つ表面の異なる領域に設置され、それぞれ検出配線で前記容量型検出回路に接続されている。前記容量型検出回路は、少なくとも一つの集積回路を含む。該集積回路は、前記複数の透明な導電層の位置を記録するために利用されている。
【0004】
前記透明な導電層及び検出配線は、それぞれITO(インジウムスズ酸化物)又はATO(三酸化アンチモン)などの透明な材料からなる。前記透明な導電層と同じ又は類似の屈性率を有する材料を利用して、隣接する前記導電層の間及び/又は隣接する前記配線の間に形成された隙間を充填することができる。従って、前記タッチパネルは均一な光透過率を有することができる。さらに、前記透明な導電層の、前記基板に隣接する面の反対側の表面に保護層を設置することができる。前記保護層は、透明な絶縁材料からなる。
【0005】
前記タッチパネルを動作させる場合、一つ以上の器具又は一本以上の指を利用して前記タッチパネルに接触する。例えば、使用者は同時に二本の指で前記タッチパネルの表面に接触すると、使用者自身の電界が原因で、前記使用者の指及び前記透明な導電層の間に結合容量が形成される。高周波電流である場合、前記結合容量が導体として機能するので、使用者の指で接触した前記タッチパネルの領域において、電流が前記領域から前記使用者の指に流出する。この場合、容量型検出回路から流れた電流は、前記使用者の指に流出した電流を補償することができる。従って、使用者の指で接触した領域を前記容量型検出回路の集積回路で識別することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在主流の方式では、全面がITO(Indium Tin Oxide)の透明導電性薄膜で構成されるために、構造が単純となり、剥離や磨耗、断線などがおきにくいために、寿命が長く、透過率も高く改善された。しかし、ITO(Indium Tin Oxide)はスパッタリング法、イオンプレーティング、塗布法などの方法により成膜されるので、製造方法が複雑である。また、ITO薄膜は、機械的及び化学的性能が良好でなく、膜質の均一性が低いという欠点がある。また、ITO薄膜の光透過性が低いので、明るい環境で表示パネルに表示される画面が見にくくなる。従って、現在のタッチパネルには、正確性や応答性が低く、光透過性が低いという課題がある。
【0007】
前記課題を解決するために、正確性や応答性が向上し、光透過性が高いタッチパネルを提供することが必要である。
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタッチパネルは、基板と、所定距離で分離され、それぞれ前記基板の一つの表面に設置された複数の透明な導電構造体と、少なくとも一つの容量型検出回路と、それぞれ前記容量型検出回路に電気的に接続された複数の導電線と、を含む。前記透明な導電構造体は、複数のカーボンナノチューブを有するカーボンナノチューブ構造体を含む。
【0009】
前記カーボンナノチューブ構造体が、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを有する。
【0010】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが等方的に配列されている。
【0011】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列されている。
【0012】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、端と端で接続されている。
【0013】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、所定方向、同じ方向又は異なる方向に沿ってに配列されている。
【0014】
前記カーボンナノチューブ構造体において、隣接するカーボンナノチューブが相互に絡み合って、微多孔構造に形成されている。
【0015】
前記カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブフィルムを有する。隣接するカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、それぞれ0°〜90°の角度で交叉して設置されている。
【0016】
本発明のディスプレイは、タッチパネルと、該タッチパネルに近接する表示素子と、を含む。ここで、前記タッチパネルは、基板と、所定距離で分離され、それぞれ前記基板の一つの表面に設置された複数の透明な導電構造体と、少なくとも一つの容量型検出回路と、それぞれ前記容量型検出回路に電気的に接続された複数の導電線と、を含む。前記透明な導電構造体は、複数のカーボンナノチューブを有するカーボンナノチューブ構造体を含む。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比べると、本発明のタッチパネルは、次の優れた点を有する。本発明のタッチパネルに利用されるカーボンナノチューブフィルムは、良好な機械性及び強靱性、均一な導電性を有するので、本発明のタッチパネル及びディスプレイは、優れた導電性及び耐久性がある。さらに、本発明のカーボンナノチューブ構造体の製造方法は簡単である。従って、本発明の製造方法により、前記タッチパネル及びディスプレイの大量生産が実現でき、前記タッチパネル及びディスプレイのコストが低減することができる。さらに、本発明のカーボンナノチューブ構造体を利用することにより、前記電極及び導電層の間の接触抵抗を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1及び図2を参照すると、本実施形態のタッチパネル100は、基板110と、複数の透明な導電構造体120と、複数の導電線130と、少なくとも一つの容量型検出回路140と、透明な保護層150と、充填部160と、を含む。ここで、前記基板110は第一表面112と、該第一表面112に対向する第二表面114と、を有する。前記透明な導電構造体120及び前記導電線130は、前記基板110の第一表面112に設置されている。前記複数の透明な導電構造体120は、絶縁の状態を保持するように、それぞれ所定距離で分離されて設置されている。即ち、隣接する前記透明な導電構造体120の間に隙間(図示せず)を形成し、前記複数の透明な導電構造体120をマトリクス形状に配列している。本実施形態において、前記基板110の第一表面112の対向する端部にそれぞれ一つの前記容量型検出回路140を設置している。前記透明な導電構造体120及び前記容量型検出回路140を電気的に接続させるために、前記透明な導電構造体120の間に形成された隙間に前記導電線130を設置する。前記透明な導電構造体120及び前記導電線130の間に、前記充填部160を形成する。前記透明な導電構造体120と、前記導電線130と、前記充填部160と、を被覆するように、前記保護層150を形成する。
【0020】
前記基板110はガラス、石英、ダイヤモンドなどの硬質材料、又はポリマー又は樹脂のようなフレキシブル材料からなる。具体的には、前記基板110がフレキシブル材料である場合、前記基板110はポリカーボネート(PC)、ポリメチル・メタクリレート(PMMA)、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリエステル、アクリル樹脂のいずれか一種からなる。前記基板110の厚さは1mm〜1cmにされている。本実施形態において、前記基板110はPETからなり、その厚さは2mmにされることが好ましい。前記基板110は前記透明な導電構造部を支持するために利用されている。
【0021】
さらに、前記タッチパネル100の接触領域の形状に対応した形状に、前記基板110を設けることができる。例えば、前記基板110は矩形又は三角形に形成されることができる。本実施形態において、前記タッチパネル100の接触領域は、矩形に形成されるので、前記基板110は矩形に形成されている。
【0022】
前記透明な導電構造体120は、配向して又は配向せず前記基板110の第一表面112に設置されている。各々の透明な導電構造体120は、前記タッチパネル100の接触点に対応して設置されている。前記透明な導電構造体120が配向して設置される場合、前記透明な導電構造体120の設置位置は座標系に関係する。例えば、デカルト座標系である場合、前記透明な導電構造体120は列及び行の配列方式によって設置されている。また、極座標系である場合、前記透明な導電構造体120は同心又は放射状に配列されている。前記透明な導電構造体120は、矩形、円形、楕円形、正方形、三角形又は多角形に形成されている。それぞれの前記透明な導電構造体120の形状又は寸法は、同じでも異なっても設けられることができる。前記タッチパネル100の分解率を高めるために、前記透明な導電構造体120の寸法が小さい場合、前記透明な導電構造体120の数量が多くように設置されている。一般、前記透明な導電構造体120の寸法は使用者の指先より小さく設けられている。例えば、各々の前記透明な導電構造体120の寸法は、4〜5mmに設けられている。接触領域を最大にし、隣接する前記透明な導電構造体120の間に形成された隙間の幅を最小にするように、前記透明な導電構造体120の形状を設けることができる。一般的に、隣接する前記透明な導電構造体120の間に形成された隙間の幅は1μm〜5mmである。
【0023】
本実施形態において、前記透明な導電構造体120は正方形に形成され、列及び行の配列方式によって配列されている。前記透明な導電構造体120の各々の辺の長さが5mmである。隣接する列に配列した前記透明な導電構造体120の間の距離は1μm〜5mmであり、隣接する行に配列した前記透明な導電構造体120の間の距離は、100μmである。
【0024】
各々の前記透明な導電構造体120はカーボンナノチューブ構造体(図示せず)を含む。さらに、前記カーボンナノチューブ構造体は、配向して又は配向せずに(つまり、等方的に)配列された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0025】
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含むことが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、前記カーボンナノチューブフィルムは隙間がなく平行に並列されて、大寸法のカーボンナノチューブフィルムに形成されることができる。又は、前記数枚のカーボンナノチューブフィルムはそれぞれ同じ角度又は異なる角度で積み重ねて成ることができる。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、配向して又は配向せずに配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムが配向して配列された複数のカーボンナノチューブを含む場合、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行し、同じ方向又は所定方向に沿って配列されている。配向して配列された複数のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムを、積み重ねる場合、隣接するカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブは0°〜90°で交叉して設置されている。前記カーボンナノチューブフィルムが配向せずに配列された複数のカーボンナノチューブを含む場合、前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、多くの微小な穴を有するカーボンナノチューブネットに形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径は10μm以下になる。
【0026】
実際の用途に応じて、前記透明な導電構造体120に利用されたカーボンナノチューブフィルムの長さ及び幅を調整することができる。また、必要な光透過度が確保される限り、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さを調整することができる。ここで、前記カーボンナノチューブフィルムの幅は1μm〜10mm、厚さは0.5nm〜100μmであることが好ましい。前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである場合、単一のカーボンナノチューブの直径はそれぞれ0.5nm〜50nm、1nm〜50nm、1.5nm〜50nmの範囲に設定される。
【0027】
本実施形態において、単一のカーボンナノチューブ構造体は、積み重ねた複数のカーボンナノチューブフィルムを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に設置されている(即ち、前記複数のカーボンナノチューブは配向して配列されている)。図3を参照すると、大部分の前記カーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列され、極僅かなカーボンナノチューブのみが異なる方向に沿って配列されている。
【0028】
前記カーボンナノチューブフィルムは次の工程により製造される。
【0029】
第一段階では、カーボンナノチューブアレイを提供する。超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)であることが好ましい。
【0030】
本実施形態において、化学気相堆積法(CVD)法により前記カーボンナノチューブアレイを成長させる。まず、基材を提供する。該基材としては、P型又はN型のシリコン基材、又は表面に酸化物が形成されたシリコン基材が利用される。本実施形態において、厚さが4インチのシリコン基材を提供する。次に、前記基材の表面に触媒層を蒸着させる。該触媒層は、Fe、Co、Ni又はそれらの合金である。次に、前記触媒層が蒸着された前記基材を、700〜900℃、空気の雰囲気において30〜90分間アニーリングする。最後に、前記基材を反応装置内に置いて、保護ガスを導入すると同時に前記基材を500〜700℃に加熱して、5〜30分間カーボンを含むガスを導入する。これにより、高さが200〜400μmの超配列カーボンナノチューブアレイが形成される。前記超配列カーボンナノチューブアレイは、相互に平行で基材に垂直に成長した複数のカーボンナノチューブからなる。前記方法により、前記超配列カーボンナノチューブアレイにアモルファスカーボン又は触媒剤である金属粒子などの不純物が残らず、純粋なカーボンナノチューブアレイが得られる。
【0031】
本実施形態において、前記カーボンを含むガスはアセチレンなどの炭化水素であり、保護ガスは窒素やアンモニアなどの不活性ガスである。勿論、前記カーボンナノチューブアレイは、アーク放電法又はレーザー蒸発法により得られることができる。
【0032】
第二段階では、前記カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを引き出す。
【0033】
まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。本実施形態において、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続的なカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0034】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメントが端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される。図4を参照すると、単一のカーボンナノチューブセグメント143は、長さが同じ複数のカーボンナノチューブ145を含む。該複数のカーボンナノチューブ143は、相互に平行に並列し、分子間力で接合されるように配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブセグメントを含む。前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブフィルムを引く方向に平行に並列されている。図3は、前記カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。図3に示すように、前記カーボンナノチューブフィルムは、所定の方向に沿って配列し、端と端で接合される複数のカーボンナノチューブからなる一定の幅を有するフィルムである。前記カーボンナノチューブフィルムは、均一な導電性及び均一な厚さを有する。このカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、高効率又は簡単であり、工業的に実用される。
【0035】
本実施形態において、前記カーボンナノチューブ構造体は、一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。該カーボンナノフィルムは複数のカーボンナノチューブセグメント、即ち、同じ方向に沿って配列される複数のカーボンナノチューブを含む。前記同じ方向は、前記カーボンナノチューブを引く方向である。
【0036】
カーボンナノチューブは比表面積が高く、前記超配列カーボンナノチューブアレイには不純物がないという特性があるので、前記カーボンナノチューブフィルムは強い接着性がある。従って、前記カーボンナノチューブフィルムを含む前記透明な導電構造体120は、直接前記基板110に接着することができる。
【0037】
さらに、複数の前記カーボンナノチューブフィルムを積み重ねて前記カーボンナノチューブ構造体を形成することができる。実用の要求に応じて、前記カーボンナノチューブフィルムの枚数を設定することができる。前記複数のカーボンナノチューブにおけるカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列されることができる。また、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブはそれぞれ角度αで交叉して形成されることができる。ここで、該角度αは、0〜90°である。
【0038】
さらに、実用の条件に応じて、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤で処理して加工することができる。前記有機溶剤は蒸発性溶剤であり、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムのいずれか一種である。本実施形態において、前記有機溶剤はエタノールである。まず、前記カーボンナノチューブフィルムに前記有機溶剤を滴下して前記カーボンナノチューブフィルムを浸漬させる。前記有機溶剤の表面張力が原因で、有機溶剤で浸漬された複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブ束に収縮される。従って、前記カーボンナノチューブフィルムは、接着性が低くなり、機械強度及び強靭性が強くなるという優れた点がある。
【0039】
ITOフィルムの製造方法と比べると、本実施形態の製造方法に真空環境及び加熱工程が必要でなく、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブを引き出す工程により、カーボンナノチューブフィルムを製造することができる。従って、本実施形態のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、コストが低く、製造効率が高く、環境安全性が高いという優れた点がある。
【0040】
前記導電線130は、隣接する前記透明な導電構造体120の間に設置されている。本実施形態において、前記導電線130は、前記透明な導電構造体120から、前記タッチパネル100の対向する両方の端部に設置され、前記透明な導電構造体120に対応する容量型検出回路140までの方向に沿って設置されている。一般、前記導電線130の間に形成された抵抗を低減させるために、前記透明な導電構造体120から容量型検出回路140までの距離が最短である路線に沿って、前記導電線130を設置することが好ましい。前記導電線130はITO、ATO、導電樹脂のいずれか一種である。パターニング方法(例えば、堆積、エッチング、印刷)を利用して、前記導電線130を前記基板110の第一表面112に設置することができる。前記導電線130の直径は100μm以下である。本実施形態において、前記導電線130は複数のカーボンナノチューブワイヤからなる。前記カーボンナノチューブワイヤの製造方法は上述のカーボンナノチューブフィルムの製造方法に類似する。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は0.5nm〜100μmである。前記カーボンナノチューブワイヤは、端と端で接続された複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブの比表面積が大きく、前記超配列カーボンナノチューブアレイに不純物が残らないので、前記カーボンナノチューブワイヤ自体が良好な接着性を有する。従って、前記カーボンナノチューブワイヤを直接前記基板110の第一表面112に接着させることができる。
【0041】
本実施形態において、前記基板110の第一表面112は第一端部(図示せず)、及び該第一端部に対向する第二端部(図示せず)を有する。前記第一端部及び第二端部にそれぞれ一つの容量型検出回路140を設置する。前記導電線130は、隣接する行に設置する透明な導電構造体120の間に形成された隙間に設置されている。前記第一端部の方に近い前記透明な導電構造体120は、前記第一端部に設置された前記容量型検出回路140に接続され、前記第二端部の方に近い前記透明な導電構造体120は、前記第二端部に設置された前記容量型検出回路140に接続される。なお、少なくとも一つの前記容量型検出回路140は、前記タッチパネル100の少なくとも一つの辺部又は隅に設置されることができる。例えば、前記透明な導電構造体120及び前記容量型検出回路140の間の距離を最短にさせるように、複数の前記容量型検出回路140を前記タッチパネル100の辺部又は隅に設置することができる。
【0042】
単一の容量型検出回路140は、少なくとも一つの集積回路(図示せず)を含む。該集積回路は前記透明な導電構造体120の位置座標を記憶し、前記透明な導電構造体120に生じた容量を検出することができる。さらに、前記集積回路は、前記容量変化及び位置座標の情報を他の電子装置へ伝送することができる。
【0043】
さらに、前記透明な導電構造体120及び前記導電線130の間に形成された隙間は、前記透明な導電構造体120及び前記導電線130と同じ屈性率及び透過率を有しないので、前記タッチパネル100の透過性を均一にさせるために、前記透明な導電構造体120及び導電線130の間に形成された隙間に材料を充填して、充填部160を形成する。前記充填部160は、前記透明な導電構造体120と同じ又は類似する透過率及び屈性率を有する材料からなる。
【0044】
さらに、前記タッチパネル100の動作時間を延長させ、抵抗・容量結合を制限させるために、前記充填部160及び前記透明な導電構造体120の表面に、透明な保護膜150を設置することができる。前記透明な保護膜150は、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリエステル又はアクリル酸などのいずれか一種からなる。さらに、前記透明な保護膜150は、表面硬化処理によるプラスチック膜(例えば、PET)であることができる。
【0045】
前記基板110の第二表面114に遮蔽層170を設置することができる。前記遮蔽層170はITO、ATO、導電樹脂、カーボンナノチューブなどのいずれか一種からなる。本実施形態において、前記遮蔽層170はカーボンナノチューブフィルムである。該カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが所定方向、同じ方向又は異なる方向に沿って配列されている。例えば電磁妨害を防止するために、前記カーボンナノチューブフィルムを接地させるように設置させることができる。
【0046】
図5及び図6を参照すると、本実施形態のディスプレイ200は、前記タッチパネル100と、表示素子210と、第一制御素子250と、中央処理装置(CPU)270と、第二制御素子260と、を含む。前記タッチパネル100は前記表示素子210に近接して設置され、また、外部回路(図示せず)で前記第一制御素子250に電気的に接続されている。前記タッチパネル100は、所定の空間で分離されて前記表示素子210に接続され、又は、直接前記表示素子210に密接に接続されていてもよい。本実施形態において、前記タッチパネル100は、空間106で分離されて前記表示素子210に電気的に接続されている。前記第一制御素子250及び前記中央処理装置270は、それぞれ前記第二制御素子260に電気的に接続されている。前記中央処理装置270は、前記表示素子210を制御することができる。
【0047】
前記表示素子210は、例えばE−ペーパー(マイクロカプセル入り電気泳動式表示装置,Microencapsulated Electrophoretic Display)、フレキシブル液晶表示装置、フレキシブル有機発光表示装置(Flexible Organic Light Emitting Display,OLED)などのいずれか一種である。また、前記表示素子210は、従来の液晶表示装置、電界放出型表示装置、プラズマ表示装置、電子発光表示装置、真空蛍光ディスプレイ、陰極線管などの表示装置のいずれか一種であることができる。
【0048】
前記基板110の第二表面114に遮蔽層170を設置した場合、前記遮蔽層170の前記基板110に近接する表面とは反対側の表面に表面安定層220を設置する。前記表面安定層220は、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリエステル、アクリル樹脂、テレフタル酸ポリエチレン(PET)のいずれか一種からなる。複数のスペーサー240を利用することにより、前記表面安定層220を所定の距離で分離させて前記表示素子210の上方に設置し、前記表面安定層220及び前記表示素子210の間に隙間230を形成する。前記表面安定層220は、化学又は物理反応で前記表示素子210が損傷を受けること防止することができる。
【0049】
前記タッチパネル100を利用したディスプレイ200の作動方式について説明する。一つ以上の接触手段300(例えば、使用者の指)を利用して同時に前記タッチパネル100の一つの表面を押す場合、前記接触手段300及び前記透明な導電構造体120の間に一定の結合容量が形成される。高周波電流が形成されると、前記結合容量が導体として機能するので、前記接触手段300で接触した前記タッチパネル100の領域において、電流が前記領域から前記接触手段300に流出する。この場合、前記容量型検出回路140から流れた電流は、前記接触手段300に流出した電流を補償することができる。従って、前記接触手段300で接触した領域を前記容量型検出回路140の集積回路で識別することができる。前記識別情報がアナログデータとして前記第一制御素子250に送信されると、前記第一制御素子250が前記アナログデータとしての識別情報及び位置座標をデジタルデータに変換する。前記中央処理装置270は前記デジタルデータを受信して前記第二制御素子260に送信して、前記表示素子210を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態のタッチパネルの平面図である。
【図2】本発明の実施形態のタッチパネルの断面図である。
【図3】本発明の実施形態のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】本発明の実施形態のカーボンナノチューブセグメントを示す図である。
【図5】本発明の実施形態のタッチパネルを利用したディスプレイを示す図である。
【図6】本発明の実施形態のタッチパネルを利用したディスプレイを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
100 タッチパネル
110 基板
112 第一表面
114 第二表面
120 透明な導電構造体
130 導電線
140 容量型検出回路
143 カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
150 保護層
160 充填部
170 遮蔽層
200 ディスプレイ
210 表示素子
220 表面安定層
230 隙間
240 スペーサー
250 第一制御素子
260 第二制御素子
270 中央処理装置
300 接触手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
所定距離で分離され、それぞれ前記基板の一つの表面に設置された複数の透明な導電構造体と、
少なくとも一つの容量型検出回路と、
それぞれ前記容量型検出回路に電気的に接続された複数の導電線と、
を含むタッチパネルにおいて、
前記透明な導電構造体が、複数のカーボンナノチューブを有するカーボンナノチューブ構造体を含むことを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体が、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを有することを特徴とする、請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが等方的に配列されていることを特徴とする、請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列されていることを特徴とする、請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、端と端で接続されていることを特徴とする、請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、所定方向、同じ方向又は異なる方向に沿ってに配列されていることを特徴とする、請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブ構造体において、隣接するカーボンナノチューブが相互に絡み合って、微多孔構造に形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブフィルムを有し、
隣接するカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブが、それぞれ0°〜90°の角度で交叉して設置されていることを特徴とする、請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項9】
タッチパネルと、該タッチパネルに近接する表示素子と、を含むディスプレイにおいて、
前記タッチパネルが、
基板と、
所定距離で分離され、それぞれ前記基板の一つの表面に設置された複数の透明な導電構造体と、
少なくとも一つの容量型検出回路と、
それぞれ前記容量型検出回路に電気的に接続された複数の導電線と、
を含み、
前記透明な導電構造体が、複数のカーボンナノチューブを有するカーボンナノチューブ構造体を含むことを特徴とするディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−146419(P2009−146419A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317355(P2008−317355)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】