タッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法
【課題】小型軽量化を図りつつ、高温多湿環境下等においてXY電極間絶縁抵抗値の低下が生じた場合においても、タッチパネルの操作有無判定の精度を良好に維持することができる「タッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法」を提供すること。
【解決手段】非印加状態の下で、X電極8,9とY電極16,17との間の絶縁抵抗値を検出した上で、検出された絶縁抵抗値に応じた操作有無判定用の検出電圧の閾値を設定すること。
【解決手段】非印加状態の下で、X電極8,9とY電極16,17との間の絶縁抵抗値を検出した上で、検出された絶縁抵抗値に応じた操作有無判定用の検出電圧の閾値を設定すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法に係り、特に、タッチパネルの操作が行われたか否かを判定するのに好適なタッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載器等の電子機器を操作対象とした入力装置として、ユーザが手指等の操作体を接触させることによる入力操作が可能とされたタッチパネルが用いられていた。
【0003】
このようなタッチパネルの一つとして、基板上にITO(酸化インジウムスズ)等からなる透明導電膜(抵抗膜)が形成された互いに対向する二枚の電極板を有し、これら両電極板の一方の透明導電膜に電圧を印加した状態で他方の透明導電膜を通じて操作位置に応じた電圧を検出することによって、操作位置の座標を検出するアナログ抵抗膜方式のタッチパネルが知られていた。
【0004】
この種のアナログ抵抗膜方式のタッチパネルには、二枚の電極板の双方の基板をガラス製としたもの(G/G)、一方をフィルム(樹脂)製、他方をガラス製としたもの(F/G)または双方をフィルム製としたもの(F/F)等があったが、いずれも、基本構成は以下に示すようになっていた。
【0005】
すなわち、図7および図8に示すように、アナログ抵抗膜方式のタッチパネル1は、厚み方向(図7における上下方向)において互いに対向するX電極板2とY電極板3との2枚の電極板2,3を有しており、これら両電極板2,3は、これらの周縁部同士の間に配置された矩形枠状のシール材4によって、両電極板2,3間の空間を封止するようにして接着されている。また、図7に示すように、両電極板2,3間の空間内には、両電極板2,3間の間隙を確保するためのスペーサ5が配置されている。
【0006】
より具体的には、図7に示すように、X電極板2は、例えばフィルムからなる透明な矩形のX側基板6と、このX側基板6の内側表面(図7における下面)上に全面的に形成されたITO等からなるX側透明導電膜7とを有している。また、図8に示すように、X側透明導電膜7上には、銀ペースト等からなるY方向(図8における上下方向)に長尺な左側X電極8と右側X電極9とが、互いにX方向(図8における左右方向)に所定の間隔を設けて形成されている。また、図8に示すように、両X電極8,9には、それぞれの引き廻し配線8a,9aが端子部側まで至るように連設されており、両X電極8,9の引き廻し配線8a,9aは、端子部において可撓配線基板(FPC)10の配線11,12にそれぞれ電気的に接続されている。なお、この接続は、シール材4に混入された導電性物質を介して行われる場合もある。さらに、図8に示すように、両X電極8,9は、いずれもシール材4よりも内側に配置されている。
【0007】
一方、図7に示すように、Y電極板3は、例えばガラスからなる透明な矩形のY側基板14と、このY側基板14の内側表面(図7における上面)上に全面的に形成されたITO等からなるY側透明導電膜15とを有している。また、図8に示すように、Y側透明導電膜15上には、銀ペースト等からなるX方向に長尺な上側Y電極16と下側Y電極17とが、互いにY方向に所定の間隔を設けて形成されている。また、図8に示すように、両Y電極16,17には、それぞれの引き廻し配線16a,17aが端子部まで至るように連設されており、両Y電極16,17の引き廻し配線16a,17aは、端子部において可撓配線基板10の配線18,19にそれぞれ電気的に接続されている。さらに、図8に示すように、両Y電極16,17は、いずれもシール材4よりも内側に配置されている。
【0008】
また、図8に示すように、タッチパネル1には、両X電極8,9および両Y電極16,17によって恰も四方から囲繞されたような平面形状が矩形状の領域Aが形成されているが、この領域Aは、タッチパネル1に連動する(タッチパネル1が搭載される)不図示の表示装置における画像(タッチパネルの操作画面等)が表示される表示領域に対応する領域となっている。したがって、両X電極8,9および両Y電極16,17は、当該表示装置における表示領域外に対応する透明導電膜7,15上の位置に配置されていることになる。
【0009】
そして、このようなタッチパネル1において、X電極板2を可動電極板、Y電極板3を固定電極板とした場合に、ユーザは、X電極板2を図7における上方から押し下げてX側透明導電膜7をY側透明導電膜15上に点接触させることによって、タッチパネル1の操作(入力操作)を行うことが可能とされている。
【0010】
すなわち、X側透明導電膜7とY側透明導電膜15との接触点がタッチパネル1の操作位置Pとなり、タッチパネル1に可撓配線基板10を介して電気的に接続されたマイコン22(図9、図10参照)側において、このような操作位置PのX座標およびY座標が交互に検出されるようになっている。
【0011】
具体的には、操作位置PのX座標を検出する際には、図9(a)に示すように、X電極板2の両X電極8,9間のみに電圧を印加した状態において、タッチパネル1の操作によってX側透明導電膜7に生じた電位勾配を、電極間電圧が印加されていないY電極板3側の電極17を介して検出するようになっている。なお、図9(a)においては、右側X電極9を正電極、左側X電極8を負電極としている。ここで、図9(a)に示すように、両X電極8,9間に印加された電圧をE〔V〕、X側透明導電膜7における操作位置Pと右側X電極9との間のX方向の等価抵抗をRX1〔Ω〕、X側透明導電膜7における操作位置Pと左側X電極8との間のX方向の等価抵抗をRX2〔Ω〕とすると、下側Y電極17を介して{RX2/(RX1+RX2)}×E〔V〕の電圧(以下、X座標電圧と称する)が検出されるようになっている。図9(b)は、このときの等価回路を示したものである。この等価回路においては、E〔V〕の電源21に連設された第1のスイッチSW1およびアースに連設された第2のスイッチSW2が、マイコン22の制御によって右側X電極9および左側X電極8にそれぞれ接続されている。また、この等価回路においては、マイコン22のアナログ入力端子に連設された第3のスイッチSW3が、マイコン22の制御によって下側Y電極17に接続されている。そして、このような等価回路において、マイコン22のアナログ入力端子には、X座標電圧の電圧値を示すアナログ信号が、下側Y電極17から入力されるようになっている。そして、マイコン22は、入力された当該アナログ信号に基づいて、X座標電圧に対応するX座標を、例えば、X座標電圧値とX座標値との対応関係が記述されたテーブルから抽出すること等によって検出するようになっている。ただし、マイコン22は、このX座標電圧を内蔵のA/Dコンバータ(ADC)23によるA/D変換を介してデジタル量EX〔V〕として検出するようになっている。
【0012】
一方、操作位置PのY座標を検出する際には、図10(a)に示すように、Y電極板3の両Y電極16,17間のみに電圧を印加した状態において、タッチパネル1の操作によってY側透明導電膜15に生じた電位勾配を、電極間電圧が印加されていないX電極板2側の電極8を介して検出するようになっている。なお、図10(a)においては、上側Y電極16を正電極、下側Y電極17を負電極としている。ここで、図10(a)に示すように、両Y電極16,17間に印加された電圧をE〔V〕、Y側透明導電膜15における操作位置Pと上側Y電極16との間のY方向の等価抵抗をRY1〔Ω〕、Y側透明導電膜15における操作位置Pと下側Y電極17との間のY方向の等価抵抗をRY2〔Ω〕とすると、左側X電極8を介して{RY2/(RY1+RY2)}×E〔V〕の電圧(以下、Y座標電圧と称する)が検出されるようになっている。図10(b)は、このときの等価回路を示したものである。この等価回路においては、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2の接続状態が図9(b)の状態から切り替わっており、両スイッチSW1,SW2が、マイコン22の制御によって上側Y電極16および下側Y電極17にそれぞれ接続されている。また、この等価回路においては、第3のスイッチSW3の接続状態が図9(b)の状態から切り替わっており、マイコン22の制御によって左側X電極8に接続されている。そして、このような等価回路において、マイコン22のアナログ入力端子には、Y座標電圧の電圧値を示すアナログ信号が、左側X電極8から入力されるようになっている。そして、マイコン22は、入力された当該アナログ信号に基づいて、Y座標電圧に対応するY座標を、例えば、Y座標電圧値とY座標値との対応関係が記述されたテーブルから抽出すること等によって検出するようになっている。ただし、マイコン22は、このY座標電圧をA/Dコンバータ23によるA/D変換を介してデジタル量EY〔V〕として検出するようになっている。
【0013】
なお、マイコン22は、スイッチSW1〜SW3の接続状態を、タッチパネル1の操作の有無にかかわらず図9(b)の状態と図10(b)の状態との間で交互に切り替えるようになっている。
【0014】
ところで、従来から、タッチパネル1の操作位置の座標を検出する際には、検出されたX座標電圧またはY座標電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、タッチパネル1の操作が行われたか否かの操作有無判定を行うようになっていた。そして、このような操作有無判定においてタッチパネル1の操作が行われた旨の肯定的な判定結果が得られた場合すなわちX/Y座標電圧の値が閾値以上である場合に、このX/Y座標電圧の値に対応したX/Y座標を割り出すようになっていた。
【0015】
これまでにも、このような操作有無判定を行うアナログ抵抗膜方式のタッチパネルに関する技術として、例えば、特許文献1に示すような技術が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−324787号公報
【特許文献2】特開2005−251692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、タッチパネル1を高温多湿の環境下に長時間置いた場合には、タッチパネル1の操作が行われなくても操作有無判定において操作が行われた旨の誤判定がなされてしまう問題が生じていた。そのメカニズムは以下に例示する通りである。
【0018】
すなわち、高温多湿環境下では、図11(a)および図11(b)に示すように、シール材4の部分からタッチパネル1の内部に徐々に水分が侵入することになる。
【0019】
次いで、このようにして侵入した水分によって、X電極8,9とY電極16,17との間の絶縁抵抗値(以下、XY電極間絶縁抵抗値と称する)が低下することになる。なお、図12の例で言えば、図12の一点鎖線枠に示すように、右側X電極9とこの近傍に配置された上側Y電極16の引き廻し配線16aとの間に付着した水分による両電極9,16間のXY電極間絶縁抵抗値の低下および右側X電極9の引き廻し配線9aとこの近傍に配置された下側Y電極17との間に付着した水分による両電極9,17間のXY電極間絶縁抵抗値の低下が特に顕著になる。ただし、引き廻し配線パターンや端子部の位置に応じては、XY電極間絶縁抵抗値の低下が顕著となるX電極8,9とY電極16,17との組合わせは異なってくる。
【0020】
次いで、このようにしてXY電極間絶縁抵抗値が低下すると、タッチパネル1の非操作状態におけるX座標電圧およびY座標電圧が、XY電極間絶縁抵抗値の低下前においては図13(a)に示すようにともに0〔V〕であったのに対して、XY電極間絶縁抵抗値の低下後においては、図13(b)に示すようにともに低下前よりも上昇した0.5〔V〕になる。
【0021】
このとき、操作有無判定における閾値が0.2〔V〕である場合には、XY電極間絶縁抵抗値の低下後においては、タッチパネル1の非操作状態にかかわらず閾値を超える電圧値のX座標電圧およびY座標電圧が検出されることになる。そして、このことが操作有無判定における誤判定に繋がることになる。
【0022】
実際に、現行モデルのタッチパネルを、温度85℃、湿度85%の高温多湿環境下に240時間放置して、放置前および放置後のXY電極間絶縁抵抗値を測定する試験を行ったところ、放置前のXY電極間絶縁抵抗値が100MΩ以上であるのに対して、放置後のXY電極間絶縁抵抗値が1MΩ以下となる試験結果が得られた。
【0023】
このようなXY電極間絶縁抵抗値の低下を原因とした操作有無判定の誤判定は、実際の操作状態(非操作)と剥離した無駄なX/Y座標の割り出し処理を招くため、有効な防止策が求められていた。
【0024】
ここで、特許文献2においては、高温多湿環境下に対応した技術が提案されているが、この技術は、高温多湿環境下における引き廻し配線のマイグレーションの発生を抑制するための技術であり、操作有無判定の誤判定の問題に対処することはできない。
【0025】
また、仮に、シール材4の幅を広くすれば、高温多湿環境下におけるタッチパネル1の内部への水分の侵入を抑制することができるため、操作有無判定の誤判定の問題への対策として一見有効に思える。しかるに、このような構成は、従来から表示装置に求められていた狭額縁化とは逆行するような構成であり、製品の小型軽量化が困難となってしまう。
【0026】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、小型軽量化を図りつつ、高温多湿環境下等においてXY電極間絶縁抵抗値の低下が生じた場合においても、タッチパネルの操作有無判定の精度を良好に維持することができるタッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前述した目的を達成するため、本発明に係るタッチパネル装置は、第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルと、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する座標検出手段と、この座標検出手段による前記座標の検出の際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行う操作有無判定手段とを備え、前記座標検出手段は、前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、その際の判定対象となった前記検出電圧に対応した前記座標を割り出すタッチパネル装置であって、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗値検出手段と、この絶縁抵抗値検出手段によって検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する閾値設定手段とを備えたことを特徴としている。
【0028】
また、本発明に係るタッチパネル操作有無判定方法は、第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルにおいて、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行うタッチパネル操作有無判定方法であって、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態を形成する第1のステップと、この第1のステップにおいて形成された前記非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する第2のステップと、この第2のステップにおいて検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する第3のステップと、前記検出電圧が前記第3のステップにおいて設定された前記閾値以上であるか否かに基づいて前記操作有無判定を行う第4のステップとを含むことを特徴としている。
【0029】
このような本発明によれば、非印加状態の下で、XY電極間絶縁抵抗値を適正に検出した上で、検出されたXY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定用の検出電圧の閾値を設定することができるので、XY電極間絶縁抵抗値が低下した場合においても、この低下に応じて閾値を好適な値に上げることによって操作有無判定の誤判定を有効に防止することができる。また、このような誤判定の防止を、シール材4の幅を広げることなく行うことができる。
【0030】
さらに、前記非印加状態を、前記タッチパネルの起動直後の状態としてもよい。このようにすれば、非印加状態を形成するための特別な電気制御を要しないので、XY電極間絶縁抵抗値を簡便に検出することができる。また、タッチパネル操作が確実に行われない時機を選ぶことができるので、XY電極間絶縁抵抗値をより正確に検出することができる。
【0031】
さらにまた、前記タッチパネル装置において、前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、前記検出電圧の値が表示領域内に対応する既知の所定電圧範囲内の値であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの前記表示領域外に対応する部位に異常が発生しているか否かの異常有無判定を行う異常有無判定手段を備え、前記閾値設定手段は、前記閾値として、前記絶縁抵抗値の正常値に対応する低電圧側の第1の閾値と、前記正常値から低下した前記絶縁抵抗値に対応する高電圧側の第2の閾値とを、前記絶縁抵抗値に応じて選択的に設定し、前記第1の閾値を、前記所定電圧範囲内の値における下限値よりも所定値以上小さい値としてもよい。このようにすれば、XY電極間絶縁抵抗値が低下していない場合の異常有無判定が可能なタッチパネルにおける表示領域外に対応する部位の範囲を広くとることができるので、当該表示領域外に対応する部位の異常を迅速に検知することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、小型軽量化を図りつつ、高温多湿環境下等においてXY電極間絶縁抵抗値の低下が生じた場合においても、タッチパネルの操作有無判定の精度を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態を示す等価回路図
【図2】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、ADC測定電圧とXY電極間絶縁抵抗値との対応関係が記述されたテーブルを示す概念図
【図3】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、具体的なXY電極間絶縁抵抗値を求めるための詳細な等価回路図
【図4】本発明に係るタッチパネル操作有無判定方法の実施形態を示すフローチャート
【図5】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、XY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定閾値の設定例を示す模式図
【図6】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、タッチパネルの各位置ごとの検出電圧の一例を示す模式図
【図7】従来から採用されていたタッチパネルを模式的に示す断面図
【図8】図7の概略平面透視図
【図9】操作位置のX座標の検出動作を説明するための説明図
【図10】操作位置のY座標の検出動作を説明するための説明図
【図11】従来の問題点を説明するための第1の説明図
【図12】従来の問題点を説明するための第2の説明図
【図13】従来の問題点を説明するための第3の説明図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るタッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法の実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0035】
なお、従来と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0036】
本実施形態におけるタッチパネル装置は、図7および図8に示した従来と同様のタッチパネル1を備えている。
【0037】
ここで、タッチパネル1を構成するX電極板2は、本発明における第1の電極板に相当する。具体的には、X電極板2におけるX側基板6は、本発明における第1の基板に相当する。また、X電極板2におけるX側透明導電膜7は、本発明における第1の透明導電膜に相当する。さらに、X電極板2における左側X電極8および右側X電極9は、本発明における一対のX電極に相当する。
【0038】
一方、タッチパネル1を構成するY電極板3は、本発明における第2の電極板に相当する。具体的には、Y電極板3におけるY側基板14は、本発明における第2の基板に相当する。また、Y電極板3におけるY側透明導電膜15は、本発明における第2の透明導電膜に相当する。さらに、Y電極板3における上側Y電極16および下側Y電極17は、本発明における一対のY電極に相当する。
【0039】
また、シール材4は、本発明における枠状のシール材に相当する。さらに、本実施形態においても、両電極板2,3の一方を可動電極板、他方を固定電極板としたタッチパネル1の操作が行われるようになっている。
【0040】
さらに、本実施形態におけるタッチパネル装置は、図9(b)および図10(b)の等価回路に示した構成と同様の構成を備えている。すなわち、図1の等価回路に示すように、本実施形態におけるタッチパネル装置30は、電源21、マイコン22、A/Dコンバータ23および第1〜第3のスイッチSW1〜SW3を備えている。
【0041】
これらの構成部21,22,23,SW1〜SW3は、本発明における座標検出手段として機能するようになっている。すなわち、タッチパネル装置30は、マイコン22の制御によってスイッチSW1〜SW3の接続状態を図9(b)の状態と図10(b)の状態との間で交互に切り替えることによって、両X電極8,9間および両Y電極16,17に交互に電源21の電圧を印加するようになっている。このような電圧の印加は、タッチパネル1の操作の有無に関係なく行うようになっている。また、タッチパネル装置30は、このような電圧の印加状態の下で、ユーザによってタッチパネル1の操作が行われた場合には、電圧が印加されている側の透明導電膜(図9の場合はX側透明導電膜7、図10の場合はY側透明導電膜15)に発生した操作位置に応じた電位勾配を検出するようになっている。この電位勾配は、電圧が印加されていない電極(図9の場合は下側Y電極17、図10の場合は左側X電極8)を介して、検出電圧としてのX座標電圧(図9の場合)またはY座標電圧(図10の場合)として検出されるようになっている。このとき、X座標電圧およびY座標電圧は、電圧が印加されていない電極からマイコン22のアナログ入力端子に各電圧の電圧値を示すアナログ信号として入力された後に、マイコン22に内蔵のA/Dコンバータ23によるA/D変換によってデジタル量として検出されるようになっている。そして、マイコン22は、座標検出の最終処理として、検出されたX/Y座標電圧に対応する操作位置のX/Y座標を、前述したテーブルからの抽出等によって割り出す処理を行うようになっている。
【0042】
また、マイコン22は、本発明における操作有無判定手段としても機能するようになっている。すなわち、マイコン22は、操作位置のX/Y座標の検出の際に、検出されたX/Y座標電圧の値が設定された閾値(以下、操作有無判定閾値と称する)以上であるか否かに基づいて、タッチパネル1の操作が行われたか否かの操作有無判定を行うようになっている。
【0043】
マイコン22は、このような操作有無判定において肯定的な判定結果が得られた場合すなわちX/Y座標電圧の値が操作有無判定閾値以上である場合に、その際に判定対象となったX/Y座標電圧に対応したX/Y座標の割り出しを行うようになっている。一方、操作有無判定において否定的な判定結果が得られた場合すなわちX/Y座標電圧の値が操作有無判定閾値未満である場合には、マイコン22は、X/Y座標の割り出しを行わないようになっている。
【0044】
そして、このような構成を備えた上で、タッチパネル装置30には、従来にない本発明に特徴的な構成が追加されている。すなわち、図1に示すように、タッチパネル装置30は、本発明における絶縁抵抗値検出手段の一部として機能する追加回路32を備えている。
【0045】
ここで、図1に示すように追加回路32は、抵抗RADDおよび第4のスイッチSW4を有しているとともに、回路32の一端が電源21および第1のスイッチSW1に、回路32の他端が第3のスイッチSW3およびA/Dコンバータ23に、それぞれ接続されている。なお、回路32の他端は、A/Dコンバータ23への不定入力を防止するためのプルダウン抵抗RDWにも接続されている。
【0046】
また、本実施形態において、マイコン22は、追加回路32とともに絶縁抵抗値検出手段として機能するようになっている。すなわち、マイコン22は、両X電極8,9間および両Y電極16,17間のいずれにも電源21の電圧が印加されていない非印加状態の下で、追加回路32と協働してXY電極間絶縁抵抗値を検出するようになっている。
【0047】
具体的には、マイコン22は、非印加状態において、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下を測定するための電圧降下測定回路を形成するようになっている。
【0048】
すなわち、図1においては、非印加状態として、第1のスイッチSW1がオフされた状態(フローティング状態)になっている。そして、このような非印加状態の下で、マイコン22は、例えば、第2のスイッチSW2を下側Y電極17に接続(オン)し、第3のスイッチSW3を左側X電極8に接続(オン)し、第4のスイッチSW4をオンするスイッチ制御を行うことによって、前記電圧降下測定回路を形成するようになっている。この電圧降下測定回路は、電源21が追加回路32を介してXY電極間絶縁抵抗に直列接続されるとともに、XY電極間絶縁抵抗にA/Dコンバータ23が並列接続された回路構成となる(図3参照)。このような回路構成によれば、A/Dコンバータ23をテスタ(電圧計)のように機能させて、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下を測定することができる。ただし、透明導電膜7,15による電圧降下は、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下に比べて極めて小さいため無視することができる。
【0049】
そして、このようにして前記電圧降下測定回路を用いたXY電極間絶縁抵抗による電圧降下の測定を行った上で、マイコン22は、A/Dコンバータ23によって取得された当該電圧降下の測定値に基づいて、XY電極間絶縁抵抗値を検出するようになっている。このとき、マイコン22は、前述したX/Y座標電圧に基づく操作位置のX/Y座標の割り出しの場合と同様に、図2に示すように、当該電圧降下の測定値(ADC測定電圧)とXY電極間絶縁抵抗値との対応関係が記述されたテーブルに基づいて、XY電極間絶縁抵抗値を割り出すようにしてもよい。その場合に、当該テーブルは、マイコン22に内蔵または外付けの不図示の記憶部に記憶させておけばよい。また、各XY電極間絶縁抵抗値にそれぞれ対応する当該電圧降下の測定値は、それぞれ一定の数値幅(オフセット)を有するものであってもよい。ただし、テーブル以外の方法によってXY電極間絶縁抵抗値を求めてもよい。
【0050】
なお、図1および図3においては、左側X電極8と下側Y電極17との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出するための等価回路(電圧降下測定回路)が示されているが、両X電極8,9の正負の関係および両Y電極16,17の正負の関係の少なくとも一方が図1とは逆転した構成を採用すれば、他の3つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値のいずれかを検出することができる。具体的には、例えば、図1とは異なり、第1のスイッチSW1を、左側X電極8と上側Y電極16との間での接続の切り替えが可能に構成するとともに、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を、右側X電極9と下側Y電極17との間での接続の切り替えが可能に構成した上で、第1のスイッチSW1をオフ、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を右側X電極9に接続することによって、両X電極8,9の正負の関係を図1と逆転させれば、右側X電極9と下側Y電極17との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出することができる。また、例えば、図1とは異なり、第1のスイッチSW1を、右側X電極9と下側Y電極17との間での接続の切り替えが可能に構成するとともに、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を、左側X電極8と上側Y電極16との間での接続の切り替えが可能に構成した上で、第1のスイッチSW1をオフ、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を上側Y電極16に接続することによって、両Y電極16,17の正負の関係を図1と逆転させれば、左側X電極8と上側Y電極16との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出することができる。さらに、同様の要領で両X電極8,9の正負の関係および両Y電極16,17の正負の関係を図1と逆転させれば、右側X電極9と上側Y電極16との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出することができる。以上の4つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値のうち、どのパターンのXY電極間絶縁抵抗値を検出すべきかは、例えば、引き廻し配線パターンや端子部の位置に応じて水分の付着等によってXY電極間絶縁抵抗値の低下が顕著となるXY電極の組み合わせ等のコンセプトに応じた選択を行えばよい。また、4つのパターンのすべてのXY電極間絶縁抵抗値を検出できるように、両X電極8,9の正負の関係および両Y電極16,17の正負の関係の少なくとも一方を図1と逆転させるような電圧印加制御(スイッチ切り替え制御)を可能に構成してもよい。具体的には、例えば、各スイッチSW1〜SW3が接続可能なXY電極(接点)を、図1の各2電極ずつから各4電極ずつにしてもよい。この場合、4つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値の平均値を求めても良い。尤も、4つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値がいずれも同一とみなせる場合には、任意の1つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値のみを検出する電圧降下測定回路を構成すればよい。
【0051】
さらに、本実施形態において、マイコン22は、閾値設定手段としても機能し、絶縁抵抗値検出手段としての機能によって検出されたXY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定閾値を設定するようになっている。このとき設定される操作有無判定閾値は、XY電極間絶縁抵抗値が小さいほど大きな値となる。
【0052】
なお、前記非印加状態は、タッチパネル1の起動直後の状態としてもよい。このようにすれば、タッチパネル1の起動直後においては両X電極8,9間および両Y電極16,17間のいずれにも電圧が印加されないという既存の技術をそのまま適用することができるので、非印加状態を形成するための特別な電気制御(スイッチ制御)を要することなく、XY電極間絶縁抵抗値を簡便に検出することができる。また、XY電極間絶縁抵抗値の検出タイミングとして、タッチパネル1の操作(押し下げ操作)が確実に行われないタイミングを選択することができるので、タッチパネル1の押し下げによって正確なXY電極間絶縁抵抗値の検出が妨げられることを回避することができる。
【0053】
次に、図3は、具体的なXY電極間絶縁抵抗値を検出するための等価回路(電圧降下測定回路)の一例を示したものである。
【0054】
図3において、RISOは、XY電極間絶縁抵抗(図2においては、左側X電極8と下側Y電極17との間のXY電極間絶縁抵抗)であり、RZは、A/Dコンバータ23の入力インピーダンスである。その他の抵抗の意義は、図1に示したものと同様である。また、各抵抗の具体的な抵抗値〔Ω〕は図2にそれぞれ示す通りである。図3においては、RY2、RISOおよびRX2の直列接続された3抵抗が、RDWおよびRZとそれぞれ並列接続されている。また、当該3抵抗、RDWおよびRZは、それぞれRADDと直列接続されている。ただし、RY2およびRX2は、RISOに比べて極めて小さいので、RZでの電圧降下は、RISOでの電圧降下に等しいとみなすことができる。
【0055】
このような等価回路においては、電源VCC=3.3Vの条件の下、RISO=100MΩのときは1.571Vが、RISO=10MΩのときは1.564Vが、RISO=1MΩのときは1.500Vが、A/Dコンバータ23によってそれぞれ測定されることになる。したがって、このような各測定電圧とそれらに対応するXY電極間絶縁抵抗値との対応関係を予めマイコン22側でテーブル(図2参照)等の手段によって把握しておけば、測定電圧に対応したXY電極間絶縁抵抗値を即時に割り出すことができる。
【0056】
そして、このような各XY電極間絶縁抵抗値に対して、例えば、RISO=10MΩの場合には、操作有無判定閾値0.2Vを、RISO=1MΩの場合には、操作有無判定閾値0.51Vを、それぞれ設定してもよい。このとき、マイコン22側で、XY電極間絶縁抵抗値と、これに応じて設定されるべき最適な操作有無判定閾値との既知の対応関係を予めテーブルとして記憶させておき、このテーブルに基づいてXY電極間絶縁抵抗値に対応する操作有無判定閾値を選択して設定してもよい。
【0057】
次に、前述したタッチパネル装置30を適用した本発明に係るタッチパネル操作有無判定方法の実施形態について、図4を参照して説明する。
【0058】
なお、初期状態において、タッチパネル装置30(タッチパネル1)は起動されておらず、第1〜第4のスイッチSW1〜SW4は、いずれもオフになっているものとする。
【0059】
そして、初期状態から、図4のステップ1(ST1)において、タッチパネル装置30を起動する。この起動時においては、第1のスイッチSW1は初期状態を維持しており、両X電極8,9間および両Y電極16,17間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態が形成されている。また、このとき、第2〜第4のスイッチSW2〜SW4も初期状態を維持しており、前記電圧降下測定回路は形成されていない。
【0060】
次いで、ステップ2(ST2)において、マイコン22の制御により、第2〜第4のスイッチSW2〜SW4をオンにすることによって、電圧降下測定回路を形成する。
【0061】
次いで、ステップ3(ST3)において、マイコン22により、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下を、A/Dコンバータ23による測定値として取得する。
【0062】
次いで、ステップ4(ST4)において、マイコン22により、予め記憶されたXY電極間絶縁抵抗による電圧降下(ADC測定電圧)とXY電極間絶縁抵抗値との対応関係(図2参照)に基づいて、ステップ3(ST3)において取得された測定値に対応するXY電極間絶縁抵抗値を割り出す。
【0063】
次いで、ステップ5(ST5)において、マイコン22により、予め記憶されたXY電極間絶縁抵抗値と操作有無判定閾値との対応関係に基づいて、ステップ4(ST4)において求められたXY電極間絶縁抵抗値に対応する操作有無判定閾値を設定する。
【0064】
次いで、ステップ6(ST6)において、マイコン22の制御により、第4のスイッチSW4をオフにして電圧降下測定回路を解除(開路)するとともに、第1のスイッチSW1をオンにして、X電極8,9間およびY電極16,17への交互の電圧の印加を開始する。
【0065】
次いで、ステップ7(ST7)において、マイコン22により、ステップ5(ST5)において設定された操作有無判定閾値に基づいた操作有無判定を開始する。
【0066】
以上述べたように、本発明によれば、非印加状態の下で、電圧降下測定回路を形成してXY電極間絶縁抵抗値を適正に検出した上で、検出されたXY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定閾値を設定することができる。これにより、シール材4からのタッチパネル1の内部への水分の侵入によってXY電極間絶縁抵抗値が低下した場合においても、この低下に応じて操作有無判定閾値を好適な値に引き上げることができる。
【0067】
例えば、図5(a)に示すように、XY電極間絶縁抵抗値が正常値(同図では10MΩ以上)の場合には、操作有無判定閾値を低電圧側の値(0.2V)とするのに対して、図5(b)に示すように、正常値から低下した場合(同図では1MΩ)には、操作有無判定閾値を高電圧側の値(0.51V)とすることができる。
【0068】
この結果、操作有無判定の誤判定を有効に防止することができ、XY電極間絶縁抵抗値が正常値から低下した場合においても操作有無判定の精度を良好に維持することができる。
【0069】
また、タッチパネル1の内部への水分の侵入を防止するためにシール材4の幅を広くすることや、XY電極間への水分の付着を防止するためにXY電極間のクリアランスを広くすることを要しないので、狭額縁化に対応することができ、小型軽量化を図ることができる。
【0070】
ところで、操作有無判定閾値を常に高い値に設定すれば、XY電極間絶縁抵抗値の低下にともなって上昇したX/Y座標電圧よりも常に操作有無判定閾値を高くすることも可能になるので、操作有無判定の誤判定を防止するために最適であるように思える。
【0071】
しかるに、このような構成は、操作有無判定において肯定的な判定結果が得られた後に、タッチパネル1の表示領域外に対応する部位に異常が発生しているか否かの異常有無判定を行う観点から好ましい構成とは言えない。
【0072】
ここで、タッチパネル1の表示領域外に対応する部位は、意匠のノーズ部品などによって遮蔽されているため、変形や破損が生じている場合であってもこれを目視確認することができない。異常有無判定は、このような目視確認できない部位の異常の有無を、タッチパネル1からのX/Y座標電圧が表示領域内に対応する既知の所定電圧範囲内の値であるか否かに基づいて電気的に判定する処理である。この異常有無判定は、マイコン22を異常有無判定手段として機能させることによって行うことができる。具体的には、表示領域内に対応するX/Y座標電圧は、表示領域内に対応するタッチパネル1の操作位置ごとに予めテーブル等によって決められているが、これらの電圧の下限から上限に亘る前記所定電圧範囲は、図6の例で言えば0.55〜2.75Vとなる。一方、図6の例において、表示領域外に対応するX/Y座標電圧の電圧範囲は、低電圧側が0〜0.55V、高電圧側が2.75〜3.3Vとなる。
【0073】
このとき、操作有無判定閾値を0.2Vとした場合には、座標検出の際にX/Y座標電圧が0.2〜0.55Vの範囲内の値を示した場合に、この範囲に対応するタッチパネル1の部位の異常を検知することができる。しかし、操作有無判定閾値を常に高い0.51Vに設定した場合には、0.51〜0.55Vの範囲に対応する部位しか異常を検知することができなくなる。
【0074】
したがって、このような異常有無判定の判定可能部位を広くとるためには、前述した実施形態のように、XY電極間絶縁抵抗値が正常値である場合には、操作有無判定閾値を低く設定することが望ましい。より好ましくは、XY電極間絶縁抵抗値が正常値の場合における操作有無判定閾値を、前記所定電圧範囲の下限値よりも所定値(例えば、0.3V)以上小さい値とする。ただし、電圧の印加状態を図6と逆転させることによって、0〜0.55Vの範囲内とされていた部位を2.75〜3.3Vの範囲内の部位に変換して、この部位の異常の有無を確認をすることも可能である。
【0075】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 タッチパネル
2 X電極板
3 Y電極板
4 シール材
6 X側基板
7 X側透明導電膜
8 左側X電極
9 右側X電極
14 Y側基板
15 Y側透明導電膜
16 上側Y電極
17 下側Y電極
21 電源
22 マイコン
23 A/Dコンバータ
30 タッチパネル装置
32 追加回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法に係り、特に、タッチパネルの操作が行われたか否かを判定するのに好適なタッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載器等の電子機器を操作対象とした入力装置として、ユーザが手指等の操作体を接触させることによる入力操作が可能とされたタッチパネルが用いられていた。
【0003】
このようなタッチパネルの一つとして、基板上にITO(酸化インジウムスズ)等からなる透明導電膜(抵抗膜)が形成された互いに対向する二枚の電極板を有し、これら両電極板の一方の透明導電膜に電圧を印加した状態で他方の透明導電膜を通じて操作位置に応じた電圧を検出することによって、操作位置の座標を検出するアナログ抵抗膜方式のタッチパネルが知られていた。
【0004】
この種のアナログ抵抗膜方式のタッチパネルには、二枚の電極板の双方の基板をガラス製としたもの(G/G)、一方をフィルム(樹脂)製、他方をガラス製としたもの(F/G)または双方をフィルム製としたもの(F/F)等があったが、いずれも、基本構成は以下に示すようになっていた。
【0005】
すなわち、図7および図8に示すように、アナログ抵抗膜方式のタッチパネル1は、厚み方向(図7における上下方向)において互いに対向するX電極板2とY電極板3との2枚の電極板2,3を有しており、これら両電極板2,3は、これらの周縁部同士の間に配置された矩形枠状のシール材4によって、両電極板2,3間の空間を封止するようにして接着されている。また、図7に示すように、両電極板2,3間の空間内には、両電極板2,3間の間隙を確保するためのスペーサ5が配置されている。
【0006】
より具体的には、図7に示すように、X電極板2は、例えばフィルムからなる透明な矩形のX側基板6と、このX側基板6の内側表面(図7における下面)上に全面的に形成されたITO等からなるX側透明導電膜7とを有している。また、図8に示すように、X側透明導電膜7上には、銀ペースト等からなるY方向(図8における上下方向)に長尺な左側X電極8と右側X電極9とが、互いにX方向(図8における左右方向)に所定の間隔を設けて形成されている。また、図8に示すように、両X電極8,9には、それぞれの引き廻し配線8a,9aが端子部側まで至るように連設されており、両X電極8,9の引き廻し配線8a,9aは、端子部において可撓配線基板(FPC)10の配線11,12にそれぞれ電気的に接続されている。なお、この接続は、シール材4に混入された導電性物質を介して行われる場合もある。さらに、図8に示すように、両X電極8,9は、いずれもシール材4よりも内側に配置されている。
【0007】
一方、図7に示すように、Y電極板3は、例えばガラスからなる透明な矩形のY側基板14と、このY側基板14の内側表面(図7における上面)上に全面的に形成されたITO等からなるY側透明導電膜15とを有している。また、図8に示すように、Y側透明導電膜15上には、銀ペースト等からなるX方向に長尺な上側Y電極16と下側Y電極17とが、互いにY方向に所定の間隔を設けて形成されている。また、図8に示すように、両Y電極16,17には、それぞれの引き廻し配線16a,17aが端子部まで至るように連設されており、両Y電極16,17の引き廻し配線16a,17aは、端子部において可撓配線基板10の配線18,19にそれぞれ電気的に接続されている。さらに、図8に示すように、両Y電極16,17は、いずれもシール材4よりも内側に配置されている。
【0008】
また、図8に示すように、タッチパネル1には、両X電極8,9および両Y電極16,17によって恰も四方から囲繞されたような平面形状が矩形状の領域Aが形成されているが、この領域Aは、タッチパネル1に連動する(タッチパネル1が搭載される)不図示の表示装置における画像(タッチパネルの操作画面等)が表示される表示領域に対応する領域となっている。したがって、両X電極8,9および両Y電極16,17は、当該表示装置における表示領域外に対応する透明導電膜7,15上の位置に配置されていることになる。
【0009】
そして、このようなタッチパネル1において、X電極板2を可動電極板、Y電極板3を固定電極板とした場合に、ユーザは、X電極板2を図7における上方から押し下げてX側透明導電膜7をY側透明導電膜15上に点接触させることによって、タッチパネル1の操作(入力操作)を行うことが可能とされている。
【0010】
すなわち、X側透明導電膜7とY側透明導電膜15との接触点がタッチパネル1の操作位置Pとなり、タッチパネル1に可撓配線基板10を介して電気的に接続されたマイコン22(図9、図10参照)側において、このような操作位置PのX座標およびY座標が交互に検出されるようになっている。
【0011】
具体的には、操作位置PのX座標を検出する際には、図9(a)に示すように、X電極板2の両X電極8,9間のみに電圧を印加した状態において、タッチパネル1の操作によってX側透明導電膜7に生じた電位勾配を、電極間電圧が印加されていないY電極板3側の電極17を介して検出するようになっている。なお、図9(a)においては、右側X電極9を正電極、左側X電極8を負電極としている。ここで、図9(a)に示すように、両X電極8,9間に印加された電圧をE〔V〕、X側透明導電膜7における操作位置Pと右側X電極9との間のX方向の等価抵抗をRX1〔Ω〕、X側透明導電膜7における操作位置Pと左側X電極8との間のX方向の等価抵抗をRX2〔Ω〕とすると、下側Y電極17を介して{RX2/(RX1+RX2)}×E〔V〕の電圧(以下、X座標電圧と称する)が検出されるようになっている。図9(b)は、このときの等価回路を示したものである。この等価回路においては、E〔V〕の電源21に連設された第1のスイッチSW1およびアースに連設された第2のスイッチSW2が、マイコン22の制御によって右側X電極9および左側X電極8にそれぞれ接続されている。また、この等価回路においては、マイコン22のアナログ入力端子に連設された第3のスイッチSW3が、マイコン22の制御によって下側Y電極17に接続されている。そして、このような等価回路において、マイコン22のアナログ入力端子には、X座標電圧の電圧値を示すアナログ信号が、下側Y電極17から入力されるようになっている。そして、マイコン22は、入力された当該アナログ信号に基づいて、X座標電圧に対応するX座標を、例えば、X座標電圧値とX座標値との対応関係が記述されたテーブルから抽出すること等によって検出するようになっている。ただし、マイコン22は、このX座標電圧を内蔵のA/Dコンバータ(ADC)23によるA/D変換を介してデジタル量EX〔V〕として検出するようになっている。
【0012】
一方、操作位置PのY座標を検出する際には、図10(a)に示すように、Y電極板3の両Y電極16,17間のみに電圧を印加した状態において、タッチパネル1の操作によってY側透明導電膜15に生じた電位勾配を、電極間電圧が印加されていないX電極板2側の電極8を介して検出するようになっている。なお、図10(a)においては、上側Y電極16を正電極、下側Y電極17を負電極としている。ここで、図10(a)に示すように、両Y電極16,17間に印加された電圧をE〔V〕、Y側透明導電膜15における操作位置Pと上側Y電極16との間のY方向の等価抵抗をRY1〔Ω〕、Y側透明導電膜15における操作位置Pと下側Y電極17との間のY方向の等価抵抗をRY2〔Ω〕とすると、左側X電極8を介して{RY2/(RY1+RY2)}×E〔V〕の電圧(以下、Y座標電圧と称する)が検出されるようになっている。図10(b)は、このときの等価回路を示したものである。この等価回路においては、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2の接続状態が図9(b)の状態から切り替わっており、両スイッチSW1,SW2が、マイコン22の制御によって上側Y電極16および下側Y電極17にそれぞれ接続されている。また、この等価回路においては、第3のスイッチSW3の接続状態が図9(b)の状態から切り替わっており、マイコン22の制御によって左側X電極8に接続されている。そして、このような等価回路において、マイコン22のアナログ入力端子には、Y座標電圧の電圧値を示すアナログ信号が、左側X電極8から入力されるようになっている。そして、マイコン22は、入力された当該アナログ信号に基づいて、Y座標電圧に対応するY座標を、例えば、Y座標電圧値とY座標値との対応関係が記述されたテーブルから抽出すること等によって検出するようになっている。ただし、マイコン22は、このY座標電圧をA/Dコンバータ23によるA/D変換を介してデジタル量EY〔V〕として検出するようになっている。
【0013】
なお、マイコン22は、スイッチSW1〜SW3の接続状態を、タッチパネル1の操作の有無にかかわらず図9(b)の状態と図10(b)の状態との間で交互に切り替えるようになっている。
【0014】
ところで、従来から、タッチパネル1の操作位置の座標を検出する際には、検出されたX座標電圧またはY座標電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、タッチパネル1の操作が行われたか否かの操作有無判定を行うようになっていた。そして、このような操作有無判定においてタッチパネル1の操作が行われた旨の肯定的な判定結果が得られた場合すなわちX/Y座標電圧の値が閾値以上である場合に、このX/Y座標電圧の値に対応したX/Y座標を割り出すようになっていた。
【0015】
これまでにも、このような操作有無判定を行うアナログ抵抗膜方式のタッチパネルに関する技術として、例えば、特許文献1に示すような技術が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−324787号公報
【特許文献2】特開2005−251692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、タッチパネル1を高温多湿の環境下に長時間置いた場合には、タッチパネル1の操作が行われなくても操作有無判定において操作が行われた旨の誤判定がなされてしまう問題が生じていた。そのメカニズムは以下に例示する通りである。
【0018】
すなわち、高温多湿環境下では、図11(a)および図11(b)に示すように、シール材4の部分からタッチパネル1の内部に徐々に水分が侵入することになる。
【0019】
次いで、このようにして侵入した水分によって、X電極8,9とY電極16,17との間の絶縁抵抗値(以下、XY電極間絶縁抵抗値と称する)が低下することになる。なお、図12の例で言えば、図12の一点鎖線枠に示すように、右側X電極9とこの近傍に配置された上側Y電極16の引き廻し配線16aとの間に付着した水分による両電極9,16間のXY電極間絶縁抵抗値の低下および右側X電極9の引き廻し配線9aとこの近傍に配置された下側Y電極17との間に付着した水分による両電極9,17間のXY電極間絶縁抵抗値の低下が特に顕著になる。ただし、引き廻し配線パターンや端子部の位置に応じては、XY電極間絶縁抵抗値の低下が顕著となるX電極8,9とY電極16,17との組合わせは異なってくる。
【0020】
次いで、このようにしてXY電極間絶縁抵抗値が低下すると、タッチパネル1の非操作状態におけるX座標電圧およびY座標電圧が、XY電極間絶縁抵抗値の低下前においては図13(a)に示すようにともに0〔V〕であったのに対して、XY電極間絶縁抵抗値の低下後においては、図13(b)に示すようにともに低下前よりも上昇した0.5〔V〕になる。
【0021】
このとき、操作有無判定における閾値が0.2〔V〕である場合には、XY電極間絶縁抵抗値の低下後においては、タッチパネル1の非操作状態にかかわらず閾値を超える電圧値のX座標電圧およびY座標電圧が検出されることになる。そして、このことが操作有無判定における誤判定に繋がることになる。
【0022】
実際に、現行モデルのタッチパネルを、温度85℃、湿度85%の高温多湿環境下に240時間放置して、放置前および放置後のXY電極間絶縁抵抗値を測定する試験を行ったところ、放置前のXY電極間絶縁抵抗値が100MΩ以上であるのに対して、放置後のXY電極間絶縁抵抗値が1MΩ以下となる試験結果が得られた。
【0023】
このようなXY電極間絶縁抵抗値の低下を原因とした操作有無判定の誤判定は、実際の操作状態(非操作)と剥離した無駄なX/Y座標の割り出し処理を招くため、有効な防止策が求められていた。
【0024】
ここで、特許文献2においては、高温多湿環境下に対応した技術が提案されているが、この技術は、高温多湿環境下における引き廻し配線のマイグレーションの発生を抑制するための技術であり、操作有無判定の誤判定の問題に対処することはできない。
【0025】
また、仮に、シール材4の幅を広くすれば、高温多湿環境下におけるタッチパネル1の内部への水分の侵入を抑制することができるため、操作有無判定の誤判定の問題への対策として一見有効に思える。しかるに、このような構成は、従来から表示装置に求められていた狭額縁化とは逆行するような構成であり、製品の小型軽量化が困難となってしまう。
【0026】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、小型軽量化を図りつつ、高温多湿環境下等においてXY電極間絶縁抵抗値の低下が生じた場合においても、タッチパネルの操作有無判定の精度を良好に維持することができるタッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前述した目的を達成するため、本発明に係るタッチパネル装置は、第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルと、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する座標検出手段と、この座標検出手段による前記座標の検出の際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行う操作有無判定手段とを備え、前記座標検出手段は、前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、その際の判定対象となった前記検出電圧に対応した前記座標を割り出すタッチパネル装置であって、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗値検出手段と、この絶縁抵抗値検出手段によって検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する閾値設定手段とを備えたことを特徴としている。
【0028】
また、本発明に係るタッチパネル操作有無判定方法は、第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルにおいて、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行うタッチパネル操作有無判定方法であって、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態を形成する第1のステップと、この第1のステップにおいて形成された前記非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する第2のステップと、この第2のステップにおいて検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する第3のステップと、前記検出電圧が前記第3のステップにおいて設定された前記閾値以上であるか否かに基づいて前記操作有無判定を行う第4のステップとを含むことを特徴としている。
【0029】
このような本発明によれば、非印加状態の下で、XY電極間絶縁抵抗値を適正に検出した上で、検出されたXY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定用の検出電圧の閾値を設定することができるので、XY電極間絶縁抵抗値が低下した場合においても、この低下に応じて閾値を好適な値に上げることによって操作有無判定の誤判定を有効に防止することができる。また、このような誤判定の防止を、シール材4の幅を広げることなく行うことができる。
【0030】
さらに、前記非印加状態を、前記タッチパネルの起動直後の状態としてもよい。このようにすれば、非印加状態を形成するための特別な電気制御を要しないので、XY電極間絶縁抵抗値を簡便に検出することができる。また、タッチパネル操作が確実に行われない時機を選ぶことができるので、XY電極間絶縁抵抗値をより正確に検出することができる。
【0031】
さらにまた、前記タッチパネル装置において、前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、前記検出電圧の値が表示領域内に対応する既知の所定電圧範囲内の値であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの前記表示領域外に対応する部位に異常が発生しているか否かの異常有無判定を行う異常有無判定手段を備え、前記閾値設定手段は、前記閾値として、前記絶縁抵抗値の正常値に対応する低電圧側の第1の閾値と、前記正常値から低下した前記絶縁抵抗値に対応する高電圧側の第2の閾値とを、前記絶縁抵抗値に応じて選択的に設定し、前記第1の閾値を、前記所定電圧範囲内の値における下限値よりも所定値以上小さい値としてもよい。このようにすれば、XY電極間絶縁抵抗値が低下していない場合の異常有無判定が可能なタッチパネルにおける表示領域外に対応する部位の範囲を広くとることができるので、当該表示領域外に対応する部位の異常を迅速に検知することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、小型軽量化を図りつつ、高温多湿環境下等においてXY電極間絶縁抵抗値の低下が生じた場合においても、タッチパネルの操作有無判定の精度を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態を示す等価回路図
【図2】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、ADC測定電圧とXY電極間絶縁抵抗値との対応関係が記述されたテーブルを示す概念図
【図3】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、具体的なXY電極間絶縁抵抗値を求めるための詳細な等価回路図
【図4】本発明に係るタッチパネル操作有無判定方法の実施形態を示すフローチャート
【図5】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、XY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定閾値の設定例を示す模式図
【図6】本発明に係るタッチパネル装置の実施形態において、タッチパネルの各位置ごとの検出電圧の一例を示す模式図
【図7】従来から採用されていたタッチパネルを模式的に示す断面図
【図8】図7の概略平面透視図
【図9】操作位置のX座標の検出動作を説明するための説明図
【図10】操作位置のY座標の検出動作を説明するための説明図
【図11】従来の問題点を説明するための第1の説明図
【図12】従来の問題点を説明するための第2の説明図
【図13】従来の問題点を説明するための第3の説明図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るタッチパネル装置およびタッチパネル操作有無判定方法の実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0035】
なお、従来と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0036】
本実施形態におけるタッチパネル装置は、図7および図8に示した従来と同様のタッチパネル1を備えている。
【0037】
ここで、タッチパネル1を構成するX電極板2は、本発明における第1の電極板に相当する。具体的には、X電極板2におけるX側基板6は、本発明における第1の基板に相当する。また、X電極板2におけるX側透明導電膜7は、本発明における第1の透明導電膜に相当する。さらに、X電極板2における左側X電極8および右側X電極9は、本発明における一対のX電極に相当する。
【0038】
一方、タッチパネル1を構成するY電極板3は、本発明における第2の電極板に相当する。具体的には、Y電極板3におけるY側基板14は、本発明における第2の基板に相当する。また、Y電極板3におけるY側透明導電膜15は、本発明における第2の透明導電膜に相当する。さらに、Y電極板3における上側Y電極16および下側Y電極17は、本発明における一対のY電極に相当する。
【0039】
また、シール材4は、本発明における枠状のシール材に相当する。さらに、本実施形態においても、両電極板2,3の一方を可動電極板、他方を固定電極板としたタッチパネル1の操作が行われるようになっている。
【0040】
さらに、本実施形態におけるタッチパネル装置は、図9(b)および図10(b)の等価回路に示した構成と同様の構成を備えている。すなわち、図1の等価回路に示すように、本実施形態におけるタッチパネル装置30は、電源21、マイコン22、A/Dコンバータ23および第1〜第3のスイッチSW1〜SW3を備えている。
【0041】
これらの構成部21,22,23,SW1〜SW3は、本発明における座標検出手段として機能するようになっている。すなわち、タッチパネル装置30は、マイコン22の制御によってスイッチSW1〜SW3の接続状態を図9(b)の状態と図10(b)の状態との間で交互に切り替えることによって、両X電極8,9間および両Y電極16,17に交互に電源21の電圧を印加するようになっている。このような電圧の印加は、タッチパネル1の操作の有無に関係なく行うようになっている。また、タッチパネル装置30は、このような電圧の印加状態の下で、ユーザによってタッチパネル1の操作が行われた場合には、電圧が印加されている側の透明導電膜(図9の場合はX側透明導電膜7、図10の場合はY側透明導電膜15)に発生した操作位置に応じた電位勾配を検出するようになっている。この電位勾配は、電圧が印加されていない電極(図9の場合は下側Y電極17、図10の場合は左側X電極8)を介して、検出電圧としてのX座標電圧(図9の場合)またはY座標電圧(図10の場合)として検出されるようになっている。このとき、X座標電圧およびY座標電圧は、電圧が印加されていない電極からマイコン22のアナログ入力端子に各電圧の電圧値を示すアナログ信号として入力された後に、マイコン22に内蔵のA/Dコンバータ23によるA/D変換によってデジタル量として検出されるようになっている。そして、マイコン22は、座標検出の最終処理として、検出されたX/Y座標電圧に対応する操作位置のX/Y座標を、前述したテーブルからの抽出等によって割り出す処理を行うようになっている。
【0042】
また、マイコン22は、本発明における操作有無判定手段としても機能するようになっている。すなわち、マイコン22は、操作位置のX/Y座標の検出の際に、検出されたX/Y座標電圧の値が設定された閾値(以下、操作有無判定閾値と称する)以上であるか否かに基づいて、タッチパネル1の操作が行われたか否かの操作有無判定を行うようになっている。
【0043】
マイコン22は、このような操作有無判定において肯定的な判定結果が得られた場合すなわちX/Y座標電圧の値が操作有無判定閾値以上である場合に、その際に判定対象となったX/Y座標電圧に対応したX/Y座標の割り出しを行うようになっている。一方、操作有無判定において否定的な判定結果が得られた場合すなわちX/Y座標電圧の値が操作有無判定閾値未満である場合には、マイコン22は、X/Y座標の割り出しを行わないようになっている。
【0044】
そして、このような構成を備えた上で、タッチパネル装置30には、従来にない本発明に特徴的な構成が追加されている。すなわち、図1に示すように、タッチパネル装置30は、本発明における絶縁抵抗値検出手段の一部として機能する追加回路32を備えている。
【0045】
ここで、図1に示すように追加回路32は、抵抗RADDおよび第4のスイッチSW4を有しているとともに、回路32の一端が電源21および第1のスイッチSW1に、回路32の他端が第3のスイッチSW3およびA/Dコンバータ23に、それぞれ接続されている。なお、回路32の他端は、A/Dコンバータ23への不定入力を防止するためのプルダウン抵抗RDWにも接続されている。
【0046】
また、本実施形態において、マイコン22は、追加回路32とともに絶縁抵抗値検出手段として機能するようになっている。すなわち、マイコン22は、両X電極8,9間および両Y電極16,17間のいずれにも電源21の電圧が印加されていない非印加状態の下で、追加回路32と協働してXY電極間絶縁抵抗値を検出するようになっている。
【0047】
具体的には、マイコン22は、非印加状態において、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下を測定するための電圧降下測定回路を形成するようになっている。
【0048】
すなわち、図1においては、非印加状態として、第1のスイッチSW1がオフされた状態(フローティング状態)になっている。そして、このような非印加状態の下で、マイコン22は、例えば、第2のスイッチSW2を下側Y電極17に接続(オン)し、第3のスイッチSW3を左側X電極8に接続(オン)し、第4のスイッチSW4をオンするスイッチ制御を行うことによって、前記電圧降下測定回路を形成するようになっている。この電圧降下測定回路は、電源21が追加回路32を介してXY電極間絶縁抵抗に直列接続されるとともに、XY電極間絶縁抵抗にA/Dコンバータ23が並列接続された回路構成となる(図3参照)。このような回路構成によれば、A/Dコンバータ23をテスタ(電圧計)のように機能させて、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下を測定することができる。ただし、透明導電膜7,15による電圧降下は、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下に比べて極めて小さいため無視することができる。
【0049】
そして、このようにして前記電圧降下測定回路を用いたXY電極間絶縁抵抗による電圧降下の測定を行った上で、マイコン22は、A/Dコンバータ23によって取得された当該電圧降下の測定値に基づいて、XY電極間絶縁抵抗値を検出するようになっている。このとき、マイコン22は、前述したX/Y座標電圧に基づく操作位置のX/Y座標の割り出しの場合と同様に、図2に示すように、当該電圧降下の測定値(ADC測定電圧)とXY電極間絶縁抵抗値との対応関係が記述されたテーブルに基づいて、XY電極間絶縁抵抗値を割り出すようにしてもよい。その場合に、当該テーブルは、マイコン22に内蔵または外付けの不図示の記憶部に記憶させておけばよい。また、各XY電極間絶縁抵抗値にそれぞれ対応する当該電圧降下の測定値は、それぞれ一定の数値幅(オフセット)を有するものであってもよい。ただし、テーブル以外の方法によってXY電極間絶縁抵抗値を求めてもよい。
【0050】
なお、図1および図3においては、左側X電極8と下側Y電極17との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出するための等価回路(電圧降下測定回路)が示されているが、両X電極8,9の正負の関係および両Y電極16,17の正負の関係の少なくとも一方が図1とは逆転した構成を採用すれば、他の3つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値のいずれかを検出することができる。具体的には、例えば、図1とは異なり、第1のスイッチSW1を、左側X電極8と上側Y電極16との間での接続の切り替えが可能に構成するとともに、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を、右側X電極9と下側Y電極17との間での接続の切り替えが可能に構成した上で、第1のスイッチSW1をオフ、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を右側X電極9に接続することによって、両X電極8,9の正負の関係を図1と逆転させれば、右側X電極9と下側Y電極17との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出することができる。また、例えば、図1とは異なり、第1のスイッチSW1を、右側X電極9と下側Y電極17との間での接続の切り替えが可能に構成するとともに、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を、左側X電極8と上側Y電極16との間での接続の切り替えが可能に構成した上で、第1のスイッチSW1をオフ、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3を上側Y電極16に接続することによって、両Y電極16,17の正負の関係を図1と逆転させれば、左側X電極8と上側Y電極16との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出することができる。さらに、同様の要領で両X電極8,9の正負の関係および両Y電極16,17の正負の関係を図1と逆転させれば、右側X電極9と上側Y電極16との間のXY電極間絶縁抵抗値を検出することができる。以上の4つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値のうち、どのパターンのXY電極間絶縁抵抗値を検出すべきかは、例えば、引き廻し配線パターンや端子部の位置に応じて水分の付着等によってXY電極間絶縁抵抗値の低下が顕著となるXY電極の組み合わせ等のコンセプトに応じた選択を行えばよい。また、4つのパターンのすべてのXY電極間絶縁抵抗値を検出できるように、両X電極8,9の正負の関係および両Y電極16,17の正負の関係の少なくとも一方を図1と逆転させるような電圧印加制御(スイッチ切り替え制御)を可能に構成してもよい。具体的には、例えば、各スイッチSW1〜SW3が接続可能なXY電極(接点)を、図1の各2電極ずつから各4電極ずつにしてもよい。この場合、4つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値の平均値を求めても良い。尤も、4つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値がいずれも同一とみなせる場合には、任意の1つのパターンのXY電極間絶縁抵抗値のみを検出する電圧降下測定回路を構成すればよい。
【0051】
さらに、本実施形態において、マイコン22は、閾値設定手段としても機能し、絶縁抵抗値検出手段としての機能によって検出されたXY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定閾値を設定するようになっている。このとき設定される操作有無判定閾値は、XY電極間絶縁抵抗値が小さいほど大きな値となる。
【0052】
なお、前記非印加状態は、タッチパネル1の起動直後の状態としてもよい。このようにすれば、タッチパネル1の起動直後においては両X電極8,9間および両Y電極16,17間のいずれにも電圧が印加されないという既存の技術をそのまま適用することができるので、非印加状態を形成するための特別な電気制御(スイッチ制御)を要することなく、XY電極間絶縁抵抗値を簡便に検出することができる。また、XY電極間絶縁抵抗値の検出タイミングとして、タッチパネル1の操作(押し下げ操作)が確実に行われないタイミングを選択することができるので、タッチパネル1の押し下げによって正確なXY電極間絶縁抵抗値の検出が妨げられることを回避することができる。
【0053】
次に、図3は、具体的なXY電極間絶縁抵抗値を検出するための等価回路(電圧降下測定回路)の一例を示したものである。
【0054】
図3において、RISOは、XY電極間絶縁抵抗(図2においては、左側X電極8と下側Y電極17との間のXY電極間絶縁抵抗)であり、RZは、A/Dコンバータ23の入力インピーダンスである。その他の抵抗の意義は、図1に示したものと同様である。また、各抵抗の具体的な抵抗値〔Ω〕は図2にそれぞれ示す通りである。図3においては、RY2、RISOおよびRX2の直列接続された3抵抗が、RDWおよびRZとそれぞれ並列接続されている。また、当該3抵抗、RDWおよびRZは、それぞれRADDと直列接続されている。ただし、RY2およびRX2は、RISOに比べて極めて小さいので、RZでの電圧降下は、RISOでの電圧降下に等しいとみなすことができる。
【0055】
このような等価回路においては、電源VCC=3.3Vの条件の下、RISO=100MΩのときは1.571Vが、RISO=10MΩのときは1.564Vが、RISO=1MΩのときは1.500Vが、A/Dコンバータ23によってそれぞれ測定されることになる。したがって、このような各測定電圧とそれらに対応するXY電極間絶縁抵抗値との対応関係を予めマイコン22側でテーブル(図2参照)等の手段によって把握しておけば、測定電圧に対応したXY電極間絶縁抵抗値を即時に割り出すことができる。
【0056】
そして、このような各XY電極間絶縁抵抗値に対して、例えば、RISO=10MΩの場合には、操作有無判定閾値0.2Vを、RISO=1MΩの場合には、操作有無判定閾値0.51Vを、それぞれ設定してもよい。このとき、マイコン22側で、XY電極間絶縁抵抗値と、これに応じて設定されるべき最適な操作有無判定閾値との既知の対応関係を予めテーブルとして記憶させておき、このテーブルに基づいてXY電極間絶縁抵抗値に対応する操作有無判定閾値を選択して設定してもよい。
【0057】
次に、前述したタッチパネル装置30を適用した本発明に係るタッチパネル操作有無判定方法の実施形態について、図4を参照して説明する。
【0058】
なお、初期状態において、タッチパネル装置30(タッチパネル1)は起動されておらず、第1〜第4のスイッチSW1〜SW4は、いずれもオフになっているものとする。
【0059】
そして、初期状態から、図4のステップ1(ST1)において、タッチパネル装置30を起動する。この起動時においては、第1のスイッチSW1は初期状態を維持しており、両X電極8,9間および両Y電極16,17間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態が形成されている。また、このとき、第2〜第4のスイッチSW2〜SW4も初期状態を維持しており、前記電圧降下測定回路は形成されていない。
【0060】
次いで、ステップ2(ST2)において、マイコン22の制御により、第2〜第4のスイッチSW2〜SW4をオンにすることによって、電圧降下測定回路を形成する。
【0061】
次いで、ステップ3(ST3)において、マイコン22により、XY電極間絶縁抵抗による電圧降下を、A/Dコンバータ23による測定値として取得する。
【0062】
次いで、ステップ4(ST4)において、マイコン22により、予め記憶されたXY電極間絶縁抵抗による電圧降下(ADC測定電圧)とXY電極間絶縁抵抗値との対応関係(図2参照)に基づいて、ステップ3(ST3)において取得された測定値に対応するXY電極間絶縁抵抗値を割り出す。
【0063】
次いで、ステップ5(ST5)において、マイコン22により、予め記憶されたXY電極間絶縁抵抗値と操作有無判定閾値との対応関係に基づいて、ステップ4(ST4)において求められたXY電極間絶縁抵抗値に対応する操作有無判定閾値を設定する。
【0064】
次いで、ステップ6(ST6)において、マイコン22の制御により、第4のスイッチSW4をオフにして電圧降下測定回路を解除(開路)するとともに、第1のスイッチSW1をオンにして、X電極8,9間およびY電極16,17への交互の電圧の印加を開始する。
【0065】
次いで、ステップ7(ST7)において、マイコン22により、ステップ5(ST5)において設定された操作有無判定閾値に基づいた操作有無判定を開始する。
【0066】
以上述べたように、本発明によれば、非印加状態の下で、電圧降下測定回路を形成してXY電極間絶縁抵抗値を適正に検出した上で、検出されたXY電極間絶縁抵抗値に応じた操作有無判定閾値を設定することができる。これにより、シール材4からのタッチパネル1の内部への水分の侵入によってXY電極間絶縁抵抗値が低下した場合においても、この低下に応じて操作有無判定閾値を好適な値に引き上げることができる。
【0067】
例えば、図5(a)に示すように、XY電極間絶縁抵抗値が正常値(同図では10MΩ以上)の場合には、操作有無判定閾値を低電圧側の値(0.2V)とするのに対して、図5(b)に示すように、正常値から低下した場合(同図では1MΩ)には、操作有無判定閾値を高電圧側の値(0.51V)とすることができる。
【0068】
この結果、操作有無判定の誤判定を有効に防止することができ、XY電極間絶縁抵抗値が正常値から低下した場合においても操作有無判定の精度を良好に維持することができる。
【0069】
また、タッチパネル1の内部への水分の侵入を防止するためにシール材4の幅を広くすることや、XY電極間への水分の付着を防止するためにXY電極間のクリアランスを広くすることを要しないので、狭額縁化に対応することができ、小型軽量化を図ることができる。
【0070】
ところで、操作有無判定閾値を常に高い値に設定すれば、XY電極間絶縁抵抗値の低下にともなって上昇したX/Y座標電圧よりも常に操作有無判定閾値を高くすることも可能になるので、操作有無判定の誤判定を防止するために最適であるように思える。
【0071】
しかるに、このような構成は、操作有無判定において肯定的な判定結果が得られた後に、タッチパネル1の表示領域外に対応する部位に異常が発生しているか否かの異常有無判定を行う観点から好ましい構成とは言えない。
【0072】
ここで、タッチパネル1の表示領域外に対応する部位は、意匠のノーズ部品などによって遮蔽されているため、変形や破損が生じている場合であってもこれを目視確認することができない。異常有無判定は、このような目視確認できない部位の異常の有無を、タッチパネル1からのX/Y座標電圧が表示領域内に対応する既知の所定電圧範囲内の値であるか否かに基づいて電気的に判定する処理である。この異常有無判定は、マイコン22を異常有無判定手段として機能させることによって行うことができる。具体的には、表示領域内に対応するX/Y座標電圧は、表示領域内に対応するタッチパネル1の操作位置ごとに予めテーブル等によって決められているが、これらの電圧の下限から上限に亘る前記所定電圧範囲は、図6の例で言えば0.55〜2.75Vとなる。一方、図6の例において、表示領域外に対応するX/Y座標電圧の電圧範囲は、低電圧側が0〜0.55V、高電圧側が2.75〜3.3Vとなる。
【0073】
このとき、操作有無判定閾値を0.2Vとした場合には、座標検出の際にX/Y座標電圧が0.2〜0.55Vの範囲内の値を示した場合に、この範囲に対応するタッチパネル1の部位の異常を検知することができる。しかし、操作有無判定閾値を常に高い0.51Vに設定した場合には、0.51〜0.55Vの範囲に対応する部位しか異常を検知することができなくなる。
【0074】
したがって、このような異常有無判定の判定可能部位を広くとるためには、前述した実施形態のように、XY電極間絶縁抵抗値が正常値である場合には、操作有無判定閾値を低く設定することが望ましい。より好ましくは、XY電極間絶縁抵抗値が正常値の場合における操作有無判定閾値を、前記所定電圧範囲の下限値よりも所定値(例えば、0.3V)以上小さい値とする。ただし、電圧の印加状態を図6と逆転させることによって、0〜0.55Vの範囲内とされていた部位を2.75〜3.3Vの範囲内の部位に変換して、この部位の異常の有無を確認をすることも可能である。
【0075】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 タッチパネル
2 X電極板
3 Y電極板
4 シール材
6 X側基板
7 X側透明導電膜
8 左側X電極
9 右側X電極
14 Y側基板
15 Y側透明導電膜
16 上側Y電極
17 下側Y電極
21 電源
22 マイコン
23 A/Dコンバータ
30 タッチパネル装置
32 追加回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルと、
前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する座標検出手段と、
この座標検出手段による前記座標の検出の際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行う操作有無判定手段と
を備え、
前記座標検出手段は、前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、その際の判定対象となった前記検出電圧に対応した前記座標を割り出すタッチパネル装置であって、
前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗値検出手段と、
この絶縁抵抗値検出手段によって検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する閾値設定手段と
を備えたことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記非印加状態は、前記タッチパネルの起動直後の状態とされていること
を特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、前記検出電圧の値が表示領域内に対応する既知の所定電圧範囲内の値であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの前記表示領域外に対応する部位に異常が発生しているか否かの異常有無判定を行う異常有無判定手段を備え、
前記閾値設定手段は、前記閾値として、前記絶縁抵抗値の正常値に対応する低電圧側の第1の閾値と、前記正常値から低下した前記絶縁抵抗値に対応する高電圧側の第2の閾値とを、前記絶縁抵抗値に応じて選択的に設定し、前記第1の閾値を、前記所定電圧範囲内の値における下限値よりも所定値以上小さい値とすること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルにおいて、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行うタッチパネル操作有無判定方法であって、
前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態を形成する第1のステップと、
この第1のステップにおいて形成された前記非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する第2のステップと、
この第2のステップにおいて検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する第3のステップと、
前記検出電圧が前記第3のステップにおいて設定された前記閾値以上であるか否かに基づいて前記操作有無判定を行う第4のステップと
を含むことを特徴とするタッチパネル操作有無判定方法。
【請求項5】
前記第1のステップにおいて、前記非印加状態を、前記タッチパネルの起動によって形成される前記タッチパネルの起動直後の状態とすること
を特徴とする請求項4に記載のタッチパネル操作有無判定方法。
【請求項1】
第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルと、
前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する座標検出手段と、
この座標検出手段による前記座標の検出の際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行う操作有無判定手段と
を備え、
前記座標検出手段は、前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、その際の判定対象となった前記検出電圧に対応した前記座標を割り出すタッチパネル装置であって、
前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗値検出手段と、
この絶縁抵抗値検出手段によって検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する閾値設定手段と
を備えたことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記非印加状態は、前記タッチパネルの起動直後の状態とされていること
を特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記操作有無判定手段によって肯定的な判定結果が得られた場合に、前記検出電圧の値が表示領域内に対応する既知の所定電圧範囲内の値であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの前記表示領域外に対応する部位に異常が発生しているか否かの異常有無判定を行う異常有無判定手段を備え、
前記閾値設定手段は、前記閾値として、前記絶縁抵抗値の正常値に対応する低電圧側の第1の閾値と、前記正常値から低下した前記絶縁抵抗値に対応する高電圧側の第2の閾値とを、前記絶縁抵抗値に応じて選択的に設定し、前記第1の閾値を、前記所定電圧範囲内の値における下限値よりも所定値以上小さい値とすること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
第1の基板の内側表面上に第1の透明導電膜が形成され、前記第1の透明導電膜上における表示領域外に対応する位置に、X方向に間隔を設けて一対のX電極が形成された第1の電極板と、第2の基板の内側表面上に第2の透明導電膜が形成され、前記第2の透明導電膜上における前記表示領域外に対応する位置に、Y方向に間隔を設けて一対のY電極が形成された第2の電極板とが、互いに対向された状態で前記両電極板の周縁部同士の間に配置された枠状のシール材を介して接着され、前記両電極板の一方が可動電極板、他方が固定電極板とされたタッチパネルにおいて、前記一対のX電極間および前記一対のY電極間に交互に電圧を印加しつつ、前記タッチパネルの操作位置のX座標およびY座標を、前記電圧が印加されていない前記電極を介して検出される検出電圧に基づいて交互に検出する際に、前記検出電圧の値が設定された閾値以上であるか否かに基づいて、前記タッチパネルの操作が行われたか否かの操作有無判定を行うタッチパネル操作有無判定方法であって、
前記一対のX電極間および前記一対のY電極間のいずれにも電圧が印加されていない非印加状態を形成する第1のステップと、
この第1のステップにおいて形成された前記非印加状態の下で、前記X電極と前記Y電極との間の絶縁抵抗値を検出する第2のステップと、
この第2のステップにおいて検出された前記絶縁抵抗値に応じた前記閾値を設定する第3のステップと、
前記検出電圧が前記第3のステップにおいて設定された前記閾値以上であるか否かに基づいて前記操作有無判定を行う第4のステップと
を含むことを特徴とするタッチパネル操作有無判定方法。
【請求項5】
前記第1のステップにおいて、前記非印加状態を、前記タッチパネルの起動によって形成される前記タッチパネルの起動直後の状態とすること
を特徴とする請求項4に記載のタッチパネル操作有無判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−38137(P2012−38137A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178492(P2010−178492)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
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