説明

タッチパネル装置およびタッチパネル装置の検出感度調整方法

【課題】検出感度を適切に設定することにより誤検出といった事態を抑制する。
【解決手段】検出判定部33は、所定の感度基準値に感度補正値を考慮して決定される検出範囲に、静電容量値検出部2により検出される静電容量値が含まれることにより、タッチパネル1に対する操作入力を検出する。また、タイマ・補正値設定部32は、静電容量値検出部2により検出される静電容量値の推移に基づいて感度補正値を設定することにより、タッチパネル1の検出感度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置およびその検出感度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばディスプレイ装置に重畳されたタッチパネルを押下操作することにより、表示画面上に表示される情報に従い入力操作を行うことが可能なタッチパネル装置が知られている。例えば、特許文献1には、厚手の手袋をしていても、手袋なしの指であっても入力操作を検出することが可能なタッチパネル装置が開示されている。具体的には、このタッチパネル装置は、検出感度を高感度から低感度へ変化させ、検出手段の検出が非検出になると、検出感度を低感度から高感度へ変化させる。そして、検出判定手段は、検出感度を低感度から高感度へ変化させて再度検出された状態が継続すると、検出と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−27034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この類のタッチパネル装置では、特許文献1に開示されているように、過度な検出や検出不能といった誤検出を抑制することが重要であるため、手袋の有無や操作者の違いといったように操作態様に応じて検出感度が適切に設定されていることが望ましい。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出感度を適切に設定することにより誤検出といった事態を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、タッチパネルにおける静電容量の変化に応じた静電容量値を検出し、所定の感度基準値に感度補正値を考慮して決定される検出範囲に静電容量値が含まれることによりタッチパネルに対する操作入力を検出し、静電容量値の推移に基づいて感度補正値を設定することによりタッチパネルの検出感度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、静電容量値の推移に応じて感度補正値が設定されるので、検出判定を行うための検出範囲が適切に設定されることとなり、これにより、操作態様に応じて検出感度を設定することができる。これにより、誤検出を抑制することができ、操作入力を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかるタッチパネル装置を模式的に示すブロック図
【図2】第1の実施形態にかかるタッチパネル1の検出動作を示すフローチャート
【図3】検出感度および静電容量値の説明図
【図4】前回の感度補正値が高感度に対応する値に保存されていたケースにおいて、手袋を装着した状態でのプッシュ操作にともなう感度補正値および静電容量値の推移を示すグラフ
【図5】前回の感度補正値が標準感度に対応する値に保存されていたケースにおいて、手袋を装着した状態でのプッシュ操作にともなう感度補正値および静電容量値の推移を示すグラフ
【図6】前回の感度補正値が高感度に対応する値に保存されていたケースにおいて、素手の状態でのプッシュ操作にともなう感度補正および静電容量値値の推移を示すグラフ
【図7】スライド操作にともなう静電容量値の推移を示すグラフ
【図8】第2の実施形態にかかるタッチパネル装置を模式的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるタッチパネル装置を模式的に示すブロック図である。このタッチパネル装置は、ディスプレイ上に表示される情報に従い入力操作を行うことが可能な装置であり、例えば車両のインストルメントパネルに配設されたディスプレイ上に重畳的に配置され、車両用機器(例えばカーナビゲーション装置、空調装置など)を操作する装置である。タッチパネル装置は、タッチパネル1と、静電容量値検出部2と、制御装置3とを主体に構成されており、本実施形態では、静電容量値の変化を検出することにより接触位置を検出する静電容量方式の装置である。
【0010】
タッチパネル1は、液晶等のディスプレイ上に積層的に配置されており、ユーザの指や専用ペンなど(以下これらを総称して「操作指」という)によって押下操作される操作面を備えている。タッチパネル1は、二次元的に配置される検出電極(図示せず)を備えており、この検出電極により、操作面への操作指の接近および押下に応じて、これらの状況を静電容量の変化として出力することができる。
【0011】
静電容量値検出部2は、タッチパネル1から出力される静電容量の変化を静電容量値として検出する。また、静電容量値検出部2は、検出した静電容量値をその検出位置と関連づけた上で、これを検出結果として制御装置3に出力する。
【0012】
制御装置3は、タッチパネル装置を統合的に制御する機能を担っている。制御装置3としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0013】
制御装置3は、静電容量値検出部2の検出結果に基づいて、タッチパネル1への有効な操作入力の有無をオンまたはオフとして判断する。そして、制御装置3は、この判断結果を、アプリケーションソフトに応じて車両用機器を制御する外部コントロ−ラ4に対して出力する。また、本実施形態との関係において、制御装置3は、操作指に対するタッチパネル1の検出感度を自動的に調整(補正)する機能を備えている。
【0014】
制御装置3は、これを機能的に捉えた場合、補正値保存メモリ31と、タイマ・補正値設定部32と、検出判定部33と、検出結果出力部34とを有している。
【0015】
補正値保存メモリ31は、検出感度を補正するための感度補正値αを格納している。補正値保存メモリ31に格納される感度補正値αは、タイマ・補正値設定部32により読み込まれたり、新たな値により更新されたりする。
【0016】
タイマ・補正値設定部32は、補正値保存メモリ31から感度補正値αを読み出し、この感度補正値αを検出判定部33へ出力する。また、タイマ・補正値設定部32は静電容量値検出部2より出力された静電容量値をモニタリングする。そして、タイマ・補正値設定部32は、静電容量値の推移に基づいて、静電容量値の変化量から操作状態であるか否かを判定し、この判定結果に応じて検出感度の補正、具体的には、感度補正値αを設定す
る。
【0017】
タイマ・補正値設定部32は、設定された感度補正値αを補正値保存メモリ31へ格納する。この補正値保存メモリ31に格納された感度補正値αは、次回の操作時における感度補正値αとして機能する。
【0018】
また、タイマ・補正値設定部32は、検出結果出力部34からの出力結果と、検出位置の位置的な変化とに基づいて、操作指が特定距離以上移動しているか否か、すなわち、スライド操作を行っているか否かを判断する。タイマ・補正値設定部32は、この判断結果に基づいて、プッシュ操作用の補正値に代えてスライド操作用の補正値を感度補正値αとして設定する。
【0019】
検出判定部33は、タイマ・補正値設定部32から出力される感度補正値αを判定閾値へ反映させる。そして、検出判定部33は、静電容量値検出部2より出力された静電容量値をモニタリングしつつ、この静電容量値と判定閾値とを比較する。これにより、検出判定部33は、判定閾値以上の静電容量値を検出したか否か、すなわち、タッチパネル1に対する操作入力を検出したか否かを判定し、この判定結果を検出結果出力部34に出力する。
【0020】
検出結果出力部34は、検出判定部33から判定結果をオンオフで出力する。具体的には、検出結果出力部34は、タッチパネル1に対する操作入力を検出したと判定された場合には検出結果をオンとし、タッチパネル1に対する操作入力を検出していないと判定された場合には検出結果をオフとする。検出結果出力部34によるオン・オフ状態は、外部コントローラ4およびタイマ・補正値設定部32に対して出力される。
【0021】
外部コントローラ4は、検出結果出力部34からの出力情報に基づいて、タッチパネル1に対する操作指の操作に応じて機能を実行する。なお、前述の検出結果出力部34は、検出結果をオンとする場合、外部コンローラに検出結果と併せて検出位置も出力することができる。
【0022】
図2は、本実施形態にかかるタッチパネル1の検出動作を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、制御装置3により実行される。
【0023】
ステップ1(S1)において、タイマ・補正値設定部32は、補正値保存メモリに感度補正値αが格納されている否かを判定する。このステップ1において否定判定された場合、すなわち、感度補正値αが格納されていない場合には、ステップ2(S2)に進む。一方、ステップ1において肯定判定された場合、すなわち、感度補正値αが格納されている場合には、ステップ3(S3)に進む。
【0024】
ステップ2において、タイマ・補正値設定部32は、予め設定されている初期値を感度補正値αに設定する。これに対して、ステップ3において、タイマ・補正値設定部32は、補正値保存メモリ31に格納されている値(前回の処理サイクルにおいて演算された感度補正値α値)を感度補正値αとして設定する。
【0025】
ステップ4(S4)において、タイマ・補正値設定部32および検出判定部33は、静電容量値の計測を開始する。
【0026】
ステップ5(S5)において、タイマ・補正値設定部32は、静電容量値を検出したか否かを判断する。一般に、タッチパネル1に対する入力操作が行われると、これに対応して静電容量値は増加する。このステップ5では、図3に示すように、静電容量値検出部2
からの静電容量値が、制御装置3において設定される検出可能範囲Cds(Cdth1≦Cds≦Cdth4)に到達しているか否かが判断される。このステップ5において肯定判定された場合、すなわち、静電容量値が検出可能範囲Cdsに到達している場合には、ステップ6(S6)に進む。一方、ステップ5において否定判定された場合、すなわち、静電容量値が検出可能範囲Cdsに到達していない場合には、ステップ4に戻る。
【0027】
ステップ6において、タイマ・補正値設定部32は、静電容量値の増加量Cetupが規定値Ceth1以下か否かを判断する。ここで、静電容量値の増加量Cetupは、ステップ5において静電容量値を検出したタイミングから一定時間(初期検出期間)経過後の静電容量値の増加量である。換言すれば、この増加量Cetupは、タッチパネル1への操作開始に伴う静電容量値の初期的な変化をトリガーとした所定期間での静電容量値の推移における増加量に該当する。静電容量値が短時間で急激に大きく変化する場合、ノイズなどの影響が考えられるので、このような変化を判定するためにステップ6の判断が設けられている。したがって、このステップ6の処理により、タッチパネル1への操作に伴う静電容量値の変化特性の有無が判断されることとなる。
【0028】
このステップ6において否定判定された場合、静電容量値の増加量Cetupが規定値Ceth1よりも大きい場合には、ステップ7(S7)に進む。一方、ステップ6において肯定判定された場合、静電容量値の増加量Cetupが規定値Ceth1以下の場合には、ステップ8(S8)に進む。
【0029】
ステップ7において、タイマ・補正値設定部32は、検出された静電容量値はノイズとは判断する。そして、ステップ4以降の処理を再度実行する。
【0030】
ステップ8において、タイマ・補正値設定部32は、静電容量値が現在設定されている検出感度の範囲内に存在しているか否かを判断する。
【0031】
例えば、ユーザが手袋を嵌めた状態でタッチパネル1を操作したり、タッチパネル1を押下する力が弱かったりする場合には、通常の操作態様と比較して、静電容量値の増加幅が小さくなるという傾向がある。逆に、タッチパネル1を押下する力が強い場合には、通常の操作態様と比較して、静電容量値の増加幅が大きくなるという傾向がある。このような操作態様を考慮して、検出感度を可変することができるようになっており、静電容量値が、個々の検出感度に応じて設定される判定閾値以上となることを条件に、操作入力を検知する。この判定閾値は感度基準値Sbに感度補正値αを考慮して決定される。図3では、例えば高感度、標準感度、低感度といった3つのレベルを検出感度として例示している。
【0032】
標準感度は、感度基準値Sbと対応する基準容量値Cdth2以上、検出可能範囲Cdsの上限値である上限容量値Cdth4以下となる範囲の静電容量値を検出可能とする。つぎに、高感度は、感度基準値Sbに感度補正値(正の値)αを加えた範囲(同図の例では、検出可能範囲Cdsの下限値である下限容量値Cdth1から上限容量値Cdth4までの範囲)の静電容量値を検出可能とする。これに対して、低感度は、感度基準値Sbから感度補正値(負の値)αを減じた範囲(同図の例では、基準容量値Cdth2よりも大きい容量値Cdth3から上限容量値Cdth4までの範囲)の静電容量値を検出可能とする。ここで、同図において、「+」は操作入力として検知する静電容量値を示し、「*」は操作入力として検知しない静電容量値を示している。なお、検出感度は、3つのレベルに限定されるものではなく、より細分化した多段的なレベルに応じて感度補正値αを設定してもよいし、静電容量値のピーク値をベースに感度補正値αを設定してもよい。
【0033】
このステップ8では、検出判定部33は、静電容量値と感度基準値Sbに感度補正値α
を考慮した判定閾値とを比較し、現在設定されている検出感度の範囲に静電容量値が含まれているいか否かを判断する。ステップ8において否定判定された場合、すなわち、静電容量値が検出感度の範囲に含まれていない場合には、ステップ9(S9)に進む。一方、ステップ8において肯定判定された場合、すなわち、静電容量値が設定感度の範囲に含まれている場合には、ステップ12(S12)に進む。
【0034】
ステップ9において、タイマ・補正値設定部32は、静電容量値の推移を観測し、検出可能範囲Cdsで一定時間が経過したか否かを判断する。このステップ9において肯定判定された場合、すなわち、検出可能範囲Cdsで一定時間が経過した場合には、ステップ10(S10)に進む。一方、ステップ9において否定判定された場合、すなわち、検出可能範囲Cdsで一定時間が経過していない場合には、前述のステップ7に進む。
【0035】
ステップ10において、タイマ・補正値設定部32は、感度補正値αを修正する。具体的には、現在の感度補正値αとして、低感度用の感度補正値αが設定されている場合には、このステップ10により、感度補正値αは、標準感度用の感度補正値αに設定される。あるいは、現在の感度補正値αとして、標準感度用の感度補正値αが設定されている場合には、このステップ10により、感度補正値αは、高感度用の感度補正値α(例えば、正の所定値)に設定される。
【0036】
ステップ11(S11)において、タイマ・補正値設定部32は、ステップ10において設定された感度補正値αを補正値保存メモリ31に保存する。これにより、従前に格納されて感度補正値αは、今回設定された値によって更新される。
【0037】
ステップ12において、タイマ・補正値設定部32は、現在の検出感度を低下させるか否かを判断する。例えば、ユーザの操作態様と比較して、検出感度が高すぎる場合には、ユーザの意図しない操作入力が検出されてしまう可能性がある。そこで、タイマ・補正値設定部32は、ユーザの操作態様、すなわち、現在の静電容量値と、各容量値Cdth1〜Cdth4とを比較する。そして、タイマ・補正値設定部32は、現在の静電容量値が現在の検出感度よりも低い検出感度を規定する容量値Cdth1〜Cdth4よりも大きい場合には、設定感度の低下を判定する。例えば、現在の検出感度が高感度である場合、タイマ・補正値設定部32は、現在の静電容量値が、標準感度を規定する基準容量値Cdth2よりも大きい場合には、検出感度の低下を判定するといった如くである。
【0038】
このステップ12において肯定判定された場合、すなわち、検出感度を低下させる場合には、ステップ10に進む。この場合、ステップ10では、前述の処理とは異なり、低下させる検出感度に応じた感度補正値αが設定される。一方、ステップ12において否定判定された場合、すなわち、検出感度を低下させない場合には、ステップ13(S13)に進む。
【0039】
ステップ13において、検出結果出力部34は検出結果をオンとする。
【0040】
ステップ14(S14)において、タイマ・補正値設定部32は、検出位置が移動しているか否かを判断する。このステップ14において否定判定された場合、すなわち、検出位置が移動していない場合には、ステップ15(S15)に進む。一方、ステップ14において肯定判定された場合、すなわち、検出位置が移動している場合には、ステップ16(S16)に進む。
【0041】
ステップ15において、タイマ・補正値設定部32は、プッシュ操作の補正値を設定する。
【0042】
ステップ16(S16)において、タイマ・補正値設定部32は、検出位置の移動距離が特定距離以上であるか否かを判断する。この特定距離は、操作指によるスライド操作が行われたか否かを判定するための距離であり、実験やシミュレーションを通じて最適値が予め設定されている。このステップ16において否定判定された場合、すなわち、検出位置の移動距離が特定距離以上でない場合には、ステップ15に進む。一方、ステップ16において肯定判定された場合、すなわち、検出位置の移動距離が特定距離以上である場合には、ステップ17(S17)に進む。
【0043】
ステップ17において、タイマ・補正値設定部32は、スライド操作の補正値を設定する。
【0044】
ステップ18(S18)において、検出判定部33は、静電容量値の減少値Cetdownが第2の判定値Ceth2以上であるか否かを判断する。このステップ18において肯定判定された場合、すなわち、静電容量値の減少値Cetdownが第2の判定値Ceth2以上である場合には、ステップ19(S19)に進む。一方、ステップ18において否定判定された場合、すなわち、静電容量値の減少値Cetdownが第2の判定値Ceth2よりも小さい場合には、ステップ13の処理に戻る。
【0045】
ステップ19において、検出結果出力部34は検出結果をオフとする。
【0046】
図4は、前回の感度補正値αが高感度に対応する値に保存されていたケースにおいて、手袋を装着した状態でのプッシュ操作にともなう静電容量値および感度補正値αの推移を示すグラフである。同図において「+」は静電容量値の推移を示している。同図に示すように、手袋を装着した状態での操作は、タッチパネル1に触れた状態であっても、静電容量値の増加量が小さい。このため、静電容量値の推移は、検出可能範囲Cds外から検出可能範囲Cds内に到達するものの、検出感度の高い位置でピークとなる。静電容量値の検出から一定時間(初期検出期間)経過後に、検出結果をオンとして、静電容量値が検出範囲外になるまでの操作状態を検出する。
【0047】
図5は、前回の感度補正値αが標準感度に対応する値に保存されていたケースにおいて、手袋を装着した状態でのプッシュ操作にともなう静電容量値および感度補正値αの推移を示すグラフである。タイマ・補正値設定部32は、初期検出期間で静電容量値を検出し、ピークが低いことを判定すると、高感度、すなわち、検出感度を高めるように感度補正値αの設定を行う。感度補正値αの修正を行った結果、検出結果出力部34は、検出結果をオンとして操作状態を検出することができる。
【0048】
図6は、素手の状態の操作で、前回の感度補正値αが高感度に対応する値に保存されていたケースにおいて、プッシュ操作にともなう静電容量値および感度補正値αの推移を示すグラフである。タイマ・補正値設定部32は、初期検出期間で静電容量値を検出し、ピークが高いことを判定し、検出感度を標準感度にするように感度補正値αの修正を行う。その後、検出結果出力部34は、操作を完了し指が離れてゆくことを判定すると、検出結果をオフとする。
【0049】
図7は、スライド操作に伴う静電容量値の推移を示すグラフである。タイマ・補正値設定部32は、初期検出期間で、ピーク値が低いことを判定して検出感度を高感度にするように感度補正値αpの修正を行い検出結果を行い、検出結果をオンとする。その後、静電容量検出位置と検出感度の変動量を検出しスライド操作が行われていると判断する。そして、スライド操作の感度補正値αsに設定し、設定された静電容量値になるまで検出結果のオン出力を継続する。
【0050】
このように本実施形態のタッチパネル装置において、制御装置3(検出判定部33)は、所定の感度基準値に感度補正値αを考慮して決定される検出範囲に、静電容量値検出部2により検出される静電容量値が含まれることにより、タッチパネル1に対する操作入力を検出する(検出判定部)。また、制御装置3(タイマ・補正値設定部32)は、静電容量値検出部2により検出される静電容量値の推移に基づいて感度補正値αを設定することにより、タッチパネル1の検出感度を制御する(感度制御部)。
【0051】
かかる構成によれば、静電容量値の推移に応じて感度補正値αを設定することにより、操作態様に応じた検出感度を設定することができる。これにより、誤検出を抑制することができるので、操作入力を正確に検出することができる。
【0052】
また、本実施形態において、タイマ・補正値設定部32は、タッチパネル1への操作開始に伴う静電容量値の初期的な変化をトリガーとした所定期間(初期検出期間)における静電容量値の推移に基づいて感度補正値αを設定している。
【0053】
かかる構成によれば、一定の初期検出期間において感度補正値αの設定が行われるので、感度調整に要する時間がばらつくといった事態が抑制される。これにより、手袋の有無といった操作態様に違いによる感度調整の時間ばらつきが低減されるので、ユーザが違和感を覚えるといった事態を抑制することができる。
【0054】
本実施形態において、検出判定部33は、静電容量値検出部2により検出される静電容量値の推移に基づいて、タッチパネル1への操作に伴う静電容量値の変化特性を判断した場合には、タッチパネル1に対する操作入力の検出判定を行う。
【0055】
かかる構成によれば、また、操作指の接近または押下による静電容量値の変化特性を判断することにより、ノイズによる急激な静電容量値の変化や、意図しない人体の近接による静電容量値の変化を、操作入力として検出するといった事態を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態において、図7に示すように、タイマ・補正値設定部32は、静電容量値検出部2によって検出された検出位置の移動量からスライド操作であることを検出した場合には、プッシュ操作用の補正値に代えてスライド操作用の補正値を感度補正値αとして設定する。
【0057】
かかる構成によれば、スライド操作時に検出される静電容量値の変化に対応して検出感度の補正が行われる。そのため、操作しながら指を移動させるスライド操作を途切れることなく検出できる。
【0058】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態にかかるタッチパネル装置を模式的に示すブロック図である。第2の実施形態にかかるタッチパネル装置が、第1の実施形態のそれと相違する点は、操作者に対応した感度補正を行う点である。以下、第1の実施形態と重複する構成についての説明は省略し、相違点を中心に説明を行うこととする。
【0059】
本実施形態のタッチパネル装置は、車両情報入力部5をさらに有している。この車両情報入力部5は、スマートキー、シートポジション、体重、携帯電話といった車両情報を制御装置3に対して入力する。
【0060】
また、制御装置3は、乗員判定部35と、乗員特性判定部36とをさらに有しており、これらの要素は、タッチパネルを操作する操作者を特定する操作者特定部として機能する。乗員判定部35は、車両情報入力部5からの車両情報に基づいて、タッチパネル1の操
作者たる乗員を判定する。乗員特性判定部36は、乗員の操作特性(例えば、運転席側からの操作であるのか、それとも助手席側からの操作であるのかといった特性)を判定する。また、タイマ・補正値設定部32は、特定された操作者に応じて感度補正値αを設定する。判定された乗員の情報、および、当該乗員の操作特性の情報は、設定された感度補正値αに関連づけて補正値保存メモリ31に格納される。これにより、本実施形態において、タイマ・補正値設定部32は、補正値保存メモリ31を参照することにより、操作者に対応する感度補正値αを設定する。
【0061】
かかる構成によれば、操作者たる乗員を特定することにより、大人・子供(操作する手の大きさ)の違いや、操作方法の癖(爪操作や親指操作、人差し指操作、圧力をかけて操作、軽くなぞるように操作)の違いを識別することができる。これにより、操作者の特性(静電容量値)の違いに合わせた感度補正値αを設定することができるので、操作者にとって最適な感度での検出が可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施形態にかかるタッチパネル装置およびその検出感度調整方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 タッチパネル
2 静電容量値検出部
3 制御装置
31 補正値保存メモリ
32 タイマ・補正値設定部
33 検出判定部
34 検出結果出力部
35 乗員判定部
36 乗員特性判定部
4 外部コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型のタッチパネルと、
前記タッチパネルにおける静電容量の変化に応じた静電容量値を検出する静電容量値検出部と、
所定の感度基準値に感度補正値を考慮して決定される判定閾値と、前記静電容量値検出部により検出される静電容量値とを比較することにより、前記タッチパネルに対する操作入力を検出する検出判定部と、
前記静電容量値検出部により検出される静電容量値の推移に基づいて前記感度補正値を設定することにより、前記タッチパネルの検出感度を制御する感度制御部と
を有することを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記感度制御部は、前記タッチパネルへの操作開始に伴う前記静電容量値の初期的な変化をトリガーとして、所定期間における前記静電容量値の推移から前記感度補正値を設定することを特徴とする請求項1に記載されたタッチパネル装置。
【請求項3】
前記検出判定部は、前記静電容量値検出部により検出される静電容量値の推移に基づいて、前記タッチパネルへの操作に伴う前記静電容量値の変化特性を判断した場合には、前記タッチパネルに対する操作入力の検出判定を行うことを特徴とする請求項1または2に記載されたタッチパネル装置。
【請求項4】
前記感度制御部は、前記静電容量値検出部によって検出された検出位置の移動量からスライド操作であることを検出した場合には、プッシュ操作用の補正値に代えてスライド操作用の補正値を前記感度補正値として設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載されたタッチパネル装置。
【請求項5】
前記タッチパネルを操作する操作者を特定する操作者特定部と、
前記感度補正値を格納する記憶部とをさらに有し、
前記感度制御部は、前記操作者特性部により特定された操作者に応じて前記感度補正値を設定するとともに、前記操作者と前記感動補正値とを対応付けて前記記憶部に格納することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載されたタッチパネル装置。
【請求項6】
静電容量型のタッチパネルにおける静電容量の変化に応じた静電容量値を検出するステップと、
前記検出される静電容量値の推移に基づいて感度補正値を設定することにより、前記タッチパネルの検出感度を制御するステップと、
所定の感度基準値に前記感度補正値を考慮して決定される判定閾値と、前記検出される静電容量値とを比較することにより、前記タッチパネルに対する操作入力を検出するステップと、
を有することを特徴とするタッチパネル装置の検出感度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−103995(P2012−103995A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253361(P2010−253361)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】