説明

タッチパネル装置

【課題】送信電極に印可する駆動信号による電流が引出し線に流れることによる誘導作用が原因で受信電極に発生する誘導ノイズを低減する。
【解決手段】パネル本体4が、タッチ面51が形成されて送信電極2及び受信電極3の前面側に配置された表面板52と、導電性材料で形成されて送信電極及び受信電極の背面側に配置された背面板53とを有し、この背面板に送信基板61が固定されると共に、この送信基板と送信電極とを結ぶ引出し線71が、送信電極から引き出された後に背面側に折り返されて背面板に沿うように配設されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極が格子状に配置されて、タッチ操作に応じた静電容量の変化に伴う電極の出力信号の変化に基づいてタッチ位置を検出する静電容量方式のタッチパネル装置、特に送信電極を印加した駆動信号に応答して受信電極に流れる充放電電流信号を受信してその充放電電流信号に基づいてタッチ位置を検出する相互容量方式のタッチパネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置には、タッチ位置を検出する原理が異なる種々の方式があるが、抵抗膜方式や静電容量方式のように多数の電極をパネル内に配設した構成のものでは、電極がアンテナとして作用するため、外来ノイズの影響を受け易くなる。特に静電容量方式では、導電性物体(例えば人体)が接近あるいは接触することによる電極近傍の微小な静電容量の変化を利用してタッチ位置を検出することから、ノイズがタッチ位置の検出精度に大きく影響するため、有効なノイズ対策が望まれる。
【0003】
このようなタッチパネル装置に関するノイズ対策に関して、従来、静電容量方式のタッチパネル装置において、タッチパネル装置と組み合わせて用いられる表示装置に起因するノイズを除去する技術が知られている(特許文献1、2参照)。また、静電容量方式のタッチパネル装置において、外部から侵入するノイズの影響をシールド線で防止する技術が知られている(特許文献3参照)。また、抵抗膜方式のタッチパネル装置において、操作者の指による誘導電圧に起因する誘導ノイズを除去する技術が知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−174120号公報
【特許文献2】特開2010−009439号公報
【特許文献3】特開2009−237673号公報
【特許文献4】特開平2−176922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タッチパネル装置は、パソコンや携帯情報端末の分野で広く普及しているが、このタッチパネル装置を、大画面の表示装置と組み合わせることで、多人数を対象にしたプレゼンテーションや講義で使用することができるようにした、いわゆるインタラクティブホワイトボードとして用いることができ、この場合、タッチパネル装置に、静電容量方式、特に相互容量方式を採用すると、同時に複数のタッチ位置を検出する、いわゆるマルチタッチ(多点検出)が可能となることから、利便性を高めることができる。
【0006】
しかしながら、相互容量方式では、受信電極に流れる微小電流でタッチ位置を検出するため、受信側のインピーダンスが高く、もともと外来ノイズの影響を受け易いが、タッチパネル装置の大型化に伴って電極が長くなると、より一層外来ノイズの影響を受け易くなる。
【0007】
特に、送信電極に印加する駆動信号を生成する送信基板と送信電極とを結ぶ引出し線も、タッチパネル装置の大型化に伴って長くなり、さらに送信基板の数を減らすために、少数の送信基板に向けて引出し線が集合するように引出し線を配設すると、引出し線が受信電極に対して平行に近い角度となる。このため、送信電極に印可する駆動信号による電流が引出し線に流れることによる誘導作用の影響を受信電極が受け易くなり、大きな誘導ノイズが発生する。このような送信電極の引出し線が原因で受信電極に発生する誘導ノイズに対して、前記の従来のノイズ対策はなんら有効な解決策とはならない。
【0008】
また、引出し線の長さは、送信電極と送信基板との位置関係に応じて異なり、送信電極と送信基板との離間距離が大きくなるほど引出し線が長くなり、その引出し線の長さが長くなるのに応じて誘導ノイズが大きくなる。このため、誘導ノイズの大きさが位置に応じて異なり、タッチ位置を検知する感度に大きなばらつきが発生するという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、送信電極に印可する駆動信号による電流が引出し線に流れることによる誘導作用が原因で受信電極に発生する誘導ノイズを低減することができるように構成されたタッチパネル装置を提供することにある。さらに、本発明は、送信電極と送信基板とを結ぶ引出し線の長さに応じて受信電極に発生する誘導ノイズの大きさが異なることに起因するタッチ位置検出の感度のばらつきを低減することができるように構成されたタッチパネル装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のタッチパネル装置は、互いに並走する複数の送信電極及び互いに並走する複数の受信電極が格子状に配置されたパネル本体と、前記送信電極に対して駆動信号を印加する送信部と、前記送信電極に印加された駆動信号に応答した前記受信電極の充放電電流信号を受信して電極交点ごとのレベル信号を出力する受信部と、を有し、前記パネル本体は、タッチ面が形成されて前記送信電極及び前記受信電極の前面側に配置された表面板と、導電性材料で形成されて前記送信電極及び前記受信電極の背面側に配置された背面板とを有し、この背面板に前記送信部が固定されると共に、この送信部と前記送信電極とを結ぶ引出し線が、前記送信電極から引き出された後に背面側に折り返されて前記背面板に沿うように配設された構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性の背面板に引出し線が近接することで、引出し線に付随する静電容量を増大して、送信電極に印可する駆動信号による電流が引出し線に流れることによる誘導作用を抑制することができ、これに導電性の背面板が磁界を遮るシールド効果が加わって、引出し線の誘導作用の影響を受信電極が受け難くなるため、受信電極の誘導ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるタッチパネル装置を示す全体構成図
【図2】図1に示した送信部の概略構成図
【図3】図1に示した受信部の概略構成図
【図4】図3に示した受信信号処理部の概略構成図
【図5】図1に示したパネル本体を構成する電極シートを示す平面図
【図6】図1に示したパネル本体の断面図
【図7】図1に示したパネル本体の背面図
【図8】図5に示した電極シートの送信側引出し部を詳細に示す平面図
【図9】図5に示した電極シートの受信側引出し部を詳細に示す平面図
【図10】図5に示した電極シートの送信側引出し部の配線パターン及び変形例を示す模式的な平面図
【図11】送信側引出し部と背面板との離間距離の違いによる受信感度のばらつき度合いの違いを示す図
【図12】送信側の引出し線を背面板に近接させることにより受信感度のばらつき度合いを改善する効果を平面的に示す図
【図13】図1に示したパネル本体の変形例を示す模式的な断面図
【図14】図1に示したパネル本体の変形例を示す模式的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、互いに並走する複数の送信電極及び互いに並走する複数の受信電極が格子状に配置されたパネル本体と、前記送信電極に対して駆動信号を印加する送信部と、前記送信電極に印加された駆動信号に応答した前記受信電極の充放電電流信号を受信して電極交点ごとのレベル信号を出力する受信部と、を有し、前記パネル本体は、タッチ面が形成されて前記送信電極及び前記受信電極の前面側に配置された表面板と、導電性材料で形成されて前記送信電極及び前記受信電極の背面側に配置された背面板とを有し、この背面板に前記送信部が固定されると共に、この送信部と前記送信電極とを結ぶ引出し線が、前記送信電極から引き出された後に背面側に折り返されて前記背面板に沿うように配設された構成とする。
【0014】
これによると、引出し線が導電性の背面板に近接することで、引出し線に付随する静電容量が増大して、送信電極に印可する駆動信号による電流が引出し線に流れることによる誘導作用を抑制することができ、これに導電性の背面板が磁界を遮るシールド効果が加わって、引出し線の誘導作用の影響を受信電極が受け難くなるため、受信電極の誘導ノイズを低減することができる。
【0015】
この場合、背面板は接地されるとよい。これにより、誘導ノイズ低減の効果が高められる。また、背面板に固定される送信部の接地を背面板で行うことができる。
【0016】
前記課題を解決するためになされた第2の発明は、前記第1の発明において、前記引出し線が、前記送信電極から引き出された一端側から前記送信部に接続される他端側に向けて略放射状に集合するように配設されると共に、この略放射状に集合する部分の少なくとも一部が、前記背面板に沿うように配設された構成とする。
【0017】
これによると、引出し線の全長を短くすることができる。その上、引出し線の全長が長く、受信電極に大きさな誘導ノイズを発生させるものほど、導電性の背面板に沿う部分が長くなり、誘導ノイズを低減する効果が大きくなる。このため、受信電極の誘導ノイズを小さく且つ均一にすることができ、これによりタッチ位置検出の感度のばらつきを低減することができる。
【0018】
前記課題を解決するためになされた第3の発明は、前記第1若しくは第2の発明において、前記パネル本体は、前記送信電極及び前記受信電極と前記背面板との間に配置された支持体を有し、前記背面板は、前記支持体の背面に沿う本体部から前記支持体の側面側に折り曲げられた態様で設けられた側板部を有する構成とする。
【0019】
これによると、背面板の剛性が高くなるため、パネル本体全体の剛性を高めてパネル本体の変形を防止することができる。しかも、導電性の背面板に沿う引出し線の部分が長くなるため、受信電極の誘導ノイズをより一層低減することができる。
【0020】
前記課題を解決するためになされた第4の発明は、前記第1乃至第3の発明において、前記パネル本体は、可撓性を有する合成樹脂材料で形成された支持シートに前記送信電極及び前記受信電極が配設された電極シートを有し、この電極シートに、前記支持シートの延出部分に前記引出し線を配設した態様の引出し部が一体的に設けられた構成とする。
【0021】
これによると、電極と同一の工程で引出し線を形成することができ、また、電極シートの引出し部を撓ませるだけで引出し線を背面側に折り返すことができるため、製造が容易になり、製造コストを削減することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明によるタッチパネル装置を示す全体構成図である。このタッチパネル装置1は、互いに並走する複数の送信電極2と互いに並走する複数の受信電極3とが格子状に配置されたパネル本体4と、送信電極2に対して駆動信号(パルス信号)を印加する送信部5と、送信電極2に印加された駆動信号に応答した受信電極3の充放電電流信号を受信して、送信電極2と受信電極3とが交差する電極交点ごとのレベル信号を出力する受信部6と、この受信部6から出力されるレベル信号に基づいてタッチ位置を検出すると共に送信部5及び受信部6の動作を制御する制御部7とを備えている。
【0024】
このタッチパネル装置1は、大画面の表示装置と組み合わせることで、プレゼンテーションや講義に用いることができるようにした、いわゆるインタラクティブホワイトボードとして用いられ、特にここでは、プロジェクタ装置と組み合わせて用いられ、タッチパネル装置1のタッチ面がプロジェクタ用のスクリーンとなる。
【0025】
タッチパネル装置1から出力されるタッチ位置情報は、パソコンなどの外部機器8に入力され、外部機器8から出力される表示画面データに基づいてプロジェクタ装置9によりタッチパネル装置1のタッチ面上に投影表示される表示画面上に、タッチパネル装置1のタッチ面上でユーザが指示物(ユーザの指先及びスタイラスや指示棒等の導電体)で行ったタッチ操作に対応した画像が表示され、タッチパネル装置のタッチ面にマーカーで直接描画をするのと同様の感覚で所要の画像を表示させることができ、また表示画面に表示されたボタンなどを操作することができる。さらに、タッチ操作で描かれた画像を消去するイレーサを用いることもできる。
【0026】
送信電極2及び受信電極3は同一の配置ピッチ(例えば10mm)で配置されており、その本数はパネル本体4のアスペクト比に応じて異なり、送信電極2が例えば120本、受信電極3が例えば186本配置される。
【0027】
送信電極2と受信電極3とは、絶縁層(後述する支持シート)を挟んで重なり合う態様で交差しており、この送信電極2と受信電極3とが交差する電極交点にはコンデンサが形成され、ユーザが指示物でタッチ操作を行うと、これに応じて電極交点の静電容量が実質的に減少することで、タッチ操作の有無を検出することができる。
【0028】
特にここでは、相互容量方式が採用され、送信電極2に駆動信号を印加すると、これに応答して受信電極3に充放電電流が流れ、このとき、ユーザのタッチ操作に応じて電極交点の静電容量が変化すると、受信電極3の充放電電流が変化し、この充放電電流の変化量を受信部6で電極交点ごとのレベル信号(ディジタル信号)に変換して制御部7に出力し、制御部7では、電極交点ごとのレベル信号に基づいてタッチ位置が算出される。この相互容量方式では、同時に複数のタッチ位置を検出する、いわゆるマルチタッチ(多点検出)が可能である。
【0029】
制御部7は、受信部6から出力される電極交点ごとのレベル信号から所定の演算処理によってタッチ位置(タッチ領域の中心座標)を求める。このタッチ位置の演算では、X方向(送信電極2の延在方向)とY方向(受信電極3の延在方向)とでそれぞれ隣接する複数(例えば4×4)の電極交点ごとのレベル信号から所要の補間法(例えば重心法)を用いてタッチ位置を求める。これにより、送信電極2及び受信電極3の配置ピッチ(10mm)より高い分解能(例えば1mm以下)でタッチ位置を検出することができる。
【0030】
図2は、図1に示した送信部5の概略構成図である。送信部5は、駆動信号発生部11と電極選択部12とを備えている。駆動信号発生部11では、制御部7から出力されるタイミング信号に同期して駆動信号(パルス信号)を生成する。電極選択部12では、送信電極2ごとにスイッチング素子が接続されており、送信電極2を1本ずつ選択して、駆動信号発生部11から出力される駆動信号を送信電極2に順次印加する。
【0031】
図3は、図1に示した受信部6の概略構成図である。受信部6は、電極選択部21と受信信号処理部22とを備えている。電極選択部21では、受信電極3ごとにスイッチング素子が接続されており、送信電極2の1本に駆動信号を印加する間に、受信電極3を1本ずつ選択して、受信電極3からの充放電電流信号を受信信号処理部22に順次入力させる。これにより、全ての電極交点ごとの充放電電流信号を取り出すことができる。
【0032】
受信電極3及び電極選択部21のスイッチング素子SWは、所定数(例えば24本)ごとにグループ化され、各グループに属するスイッチング素子SWの互いに対応するもの同士が並行してオン/オフ制御される。また、各グループごとに受信信号処理部22が設けられている。各グループではスイッチング素子SWが1つずつ順にオンとなるように制御され、残りのスイッチング素子SWはオフに制御されており、スイッチング素子SWをオンとすることで選択された1本の受信電極3の充放電電流信号が受信信号処理部22に入力される。
【0033】
このように、スイッチング素子SWのスイッチング動作が複数のグループ間で並行して行われるため、全ての受信電極3の充放電電流信号を受信するのに要する時間を短縮することができる。また、受信部6での充放電電流信号の処理をグループごとに分割して行うことができるため、ハードウエア構成の大型化を抑えることができる。
【0034】
なお、受信電極3のグループ化では、各グループに属する受信電極3の本数を同一とする必要はなく、例えば受信電極3が186本の場合、7つのグループA〜Gを24本とし、最後のグループHを18本とすればよい。
【0035】
図4は、図3に示した受信信号処理部22の概略構成図である。この受信信号処理部22は、IV変換部31と、バンドパスフィルタ32と、絶対値検出部33と、積分部34と、サンプルホールド部35と、AD変換部36とを備えている。
【0036】
IV変換部31では、スイッチング素子SWを介して入力される受信電極3の充放電電流信号(アナログ信号)が電圧信号に変換される。バンドパスフィルタ32では、IV変換部31の出力信号に対して、送信電極2に印加される駆動信号の周波数以外の周波数成分を有する信号を除去する処理が行われる。絶対値検出部(整流部)33では、バンドパスフィルタ32の出力信号に対して全波整流が行われる。積分部34では、絶対値検出部33の出力信号を時間軸方向に積分する処理が行われる。サンプルホールド部35では、積分部34の出力信号を所定のタイミングでサンプリングする処理が行われる。AD変換部36では、サンプルホールド部35の出力信号をAD変換してレベル信号(ディジタル信号)を出力する。
【0037】
図5は、図1に示したパネル本体4を構成する電極シート42を示す平面図である。送信電極2及び受信電極3は、可撓性を有する合成樹脂材料で形成された支持シート41の表裏各面にそれぞれ配設されており、この支持シート41と送信電極2及び受信電極3とが一体化されて電極シート42を構成している。
【0038】
送信電極2及び受信電極3は例えば0.6mmの幅で形成される。この送信電極2及び受信電極3は、電極形成材料を所定のパターンで支持シート41に付着させて、電極形成材料の硬化を促進するベイク処理を施すことで形成される。電極形成材料を支持シート41に付着させるには例えばスクリーン印刷法を用いるとよいが、この他に、インクジェット工法やノズルプリンティング工法も可能である。
【0039】
送信電極2及び受信電極3を形成する電極形成材料は、いわゆる導電性インクであり、金属パウダなどの導電性を付与する導電性フィラー、これを均一に分散させるためのバインダ樹脂、スクリーン印刷に適した流動性を得るための有機溶剤、付着状態を確認するための顔料などからなる。この電極形成材料には、導電性フィラーにAgを用いたAgペーストが好適である。
【0040】
支持シート41は、送信電極2と受信電極3との間に介在して両者を絶縁する絶縁層として機能し、可撓性を有すると共に絶縁性の高い合成樹脂材料にて形成される。この支持シート41の合成樹脂材料としてはPET(Polyethylene terephthalate)が好適である。また、支持シート41の厚さで、電極交点に形成されるコンデンサの静電容量を管理することができ、支持シート41の厚さは例えば0.1〜0.2mm程度とすると良い。
【0041】
電極シート42には、支持シート41の左側縁部から延出させた部分に送信電極2の各々と送信部5とを結ぶ引出し線が配設された態様の送信側引出し部43が一体的に設けられている。また、電極シート42には、支持シート41の下縁部から延出させた部分に受信電極3の各々と受信部6とを結ぶ引出し線が配設された態様の受信側引出し部44が一体的に設けられている。ここでは、送信側引出し部43が1つ、受信側引出し部44が2つ設けられている。
【0042】
送信側引出し部43及び受信側引出し部44の引出し線の配線状況は後に詳述するが、この引出し線は、前記の送信電極2及び受信電極3と同一の工程で支持シート41上に形成され、スクリーン印刷法などにより、送信電極2及び受信電極3を延伸させた態様で、送信電極2及び受信電極3と同じ導電性インク(電極形成材料)で形成される。
【0043】
図6は、図1に示したパネル本体4の断面図である。パネル本体4は、タッチ面51を備え、電極シート42の前面側に配置される表面板52と、電極シート42の背面側に配置される背面板53と、電極シート42と背面板53との間に配置される支持体54とを備えている。表面板52は、指示物によるタッチ操作の検出感度を高めるために誘電率の高い合成樹脂材料、例えばメラミン樹脂にて形成される。支持体54は、電極シート42を適度な弾性をもって支持すると共に、電極シート42と背面板53との間に介在して両者を絶縁するものであり、弾性を有する合成樹脂材料、例えば発泡ウレタン樹脂にて形成される。
【0044】
図7は、図1に示したパネル本体4の背面図である。背面板53には、送信部5を構成する1つの送信基板61と、受信部6を構成する2つの受信基板62とが設けられている。背面板53は、導電性材料で形成されると共に接地されており、背面板53で送信基板61及び受信基板62の接地が行われる。電極シート42の送信側引出し部43及び受信側引出し部44は、パネル本体4の背面側に折り返されて送信基板61及び受信基板62のコネクタ63、64に接続される。
【0045】
特にここでは背面板53が、鋼板などの金属材料にて形成されている。これにより、パネル本体4全体の剛性を高めてパネル本体の変形を防止することができる。また、背面板53を導電性材料で形成することで、後に詳述するように、受信電極3の誘導ノイズを低減することができる。
【0046】
図8は、図5に示した電極シート42の送信側引出し部43を詳細に示す平面図である。送信側引出し部43には、送信電極2の各々と送信基板61とを結ぶ引出し線71が配設されている。この引出し線71は、送信基板61のコネクタ63の幅に適合するように、送信電極2から引き出された一端側から送信基板61に接続される他端側に向けて略放射状に集合するように配設されている。
【0047】
送信側引出し部43における送信電極2側の部分72では、引出し線71が送信電極2の延在方向に対して大きく傾斜した方向に延び、引出し線71が受信電極3と概ね平行となる。このように引出し線71が受信電極3と概ね平行となることで、引出し線71に駆動信号が流れることで発生する磁界により、受信電極3に誘導ノイズが発生する。
【0048】
送信側引出し部43における送信基板61側の部分73では、引出し線71が送信電極2の延在方向に延びている。ここでは、引出し線71が、送信基板61に設けられた複数(ここでは3つ)のコネクタ63に分けて接続される。すなわち、送信側引出し部43を複数に分岐させた態様の接続部74が設けられており、この接続部74が送信基板61の各コネクタ63に挿入される。
【0049】
このように引出し線71を略放射状に集合するように配設することで、各引出し線71が、最短距離に近い経路で送信電極2と送信基板61とを結ぶため、各引出し線71の全長を短くすることができる。
【0050】
また、各引出し線71の全長は、送信基板61と送信電極2との位置関係に応じて異なり、送信基板61と送信電極2との離間距離が大きくなるほど引出し線71の全長が長くなる。ここでは、Y方向(送信電極2の配列方向)の端に位置する送信電極2に対応するもので最も長く、Y方向の中心部に向かうのに従って次第に短くなり、Y方向の中心部で最短となる。
【0051】
なお、図8には、送信側引出し部43の中心部から上方の部分を示すが、下方の部分はこれと略上下対称に現れる。
【0052】
図9は、図5に示した電極シート42の受信側引出し部44を詳細に示す平面図である。受信側引出し部44には、受信電極3の各々と受信基板62とを結ぶ引出し線75が配設されている。この引出し線75は、受信基板62のコネクタ64の幅に適合するように、受信電極3から引き出された一端側から受信基板62に接続される他端側に向けて略放射状に集合するように配設されている。
【0053】
受信側引出し部44における受信電極3側の部分76では、引出し線75が受信電極3の延在方向に対して大きく傾斜した方向に延び、引出し線75が送信電極2と概ね平行となる。このように引出し線75が送信電極2と概ね平行となることで、送信電極2に駆動信号が流れることで発生する磁界により、引出し線75に誘導ノイズが発生する。
【0054】
受信側引出し部43における受信基板62側の部分77では、引出し線75が受信電極3の延在方向に延びている。ここでは、引出し線75が、受信基板62に設けられた複数(ここでは3つ)のコネクタ64に分けて接続される。すなわち、受信側引出し部44を複数に分岐させた態様の接続部78が設けられており、この接続部78が受信基板62の各コネクタ64に挿入される。
【0055】
なお、図9には、一方の受信側引出し部44を示すが、他方の受信側引出し部44はこれと概ね左右対称に現れる。
【0056】
ところで、図6に示したように、電極シート42の送信側引出し部43を背面板53側に折り返すことで、背面板53に引出し線71が近接するが、このように引出し線71が導電性の背面板53に近接すると、引出し線71に付随する静電容量が増大して、送信電極2に印可する駆動信号による電流が引出し線71に流れることによる誘導作用を抑制することができる。したがって、導電性の背面板53に沿う引出し線71の部分が長くなるように構成することで、誘導ノイズを低減する効果を増大させて、受信電極3に発生する誘導ノイズを低減することができる。
【0057】
一方、引出し線71は、図8に示したように、略放射状に集合するように配設することで、引出し線71の全長が異なり、引出し線71の全長が長くなるほど、大きさな誘導ノイズを発生させる。このため、引出し線71の全長が長くなるほど、導電性の背面板53に沿う部分が長くなるように構成すると、誘導ノイズの大きさに応じて、誘導ノイズを低減する効果を増大させることができる。
【0058】
図10(A)は、図5に示した電極シート42の送信側引出し部43の配線パターンを示す模式的な平面図である。前記のように、電極シート42の送信側引出し部43を背面板53側に折り返すことで、引出し線71が略放射状に集合する部分の少なくとも一部が、背面板53に沿うように配置されると、引出し線71の全長が長く、大きさな誘導ノイズを発生させるものほど、導電性の背面板53に沿う部分が長くなり、誘導ノイズを低減する効果が大きくなる。このため、受信電極3の誘導ノイズを小さく且つ均一にすることができる。
【0059】
図10(B)は、図5に示した電極シート42の送信側引出し部43の配線パターンの変形例を示す模式的な平面図である。ここでは、引出し線71が、直角に折り曲げた態様で配設されている。この構成では、接続部74と送信電極2との離間距離に応じて引出し線71の全長が長くなるが、送信側引出し部43を背面板53側に折り返すことで引出し線71の背面板53に沿う部分の長さは、引出し線71の長さに関係なく全ての引出し線71で同一となる。このため、図10(A)のように引出し線71の長さに応じて誘導ノイズ低減の効果が高くなる利点は得られない。
【0060】
図11は、図6に示した送信側引出し部43と背面板53との離間距離Dの違いによる受信感度のばらつき度合いの違いを示す図である。図11(A)は送信側引出し部43、すなわち送信側の引出し線71を背面板53に近接させた場合(第1例)を示し、図11(B)は引出し線71を背面板53と離間させた場合(第2例)を示し、両者は送信側引出し部43と背面板53との離間距離Dに10mmの差がある(図6参照)。
【0061】
ここで、横軸は、Y方向(送信電極2の配列方向)の位置を示す。縦軸は、送信電極2に駆動信号(パルス信号)を印加するのに応じて受信電極3に流れる充放電電流信号をIV変換して得られる受信電圧を示し、ここでは、端から30本目、60本目、90本目、及び120本目の受信電極(X=30、60、90、120)の受信電圧を示す。
【0062】
図12は、送信側の引出し線71を背面板53に近接させることにより受信感度のばらつき度合いを改善する効果を平面的に示す図である。これは、図11(A)に示す第1例、すなわち引出し線71を背面板53に近接させた場合の受信電圧と、図11(B)に示す第2例、すなわち引出し線71を背面板53と離間させた場合の受信電圧との差δを、X方向(受信電極3の配列方向)とY方向(送信電極2の配列方向)とで平面的に示す。
【0063】
図11(A)に示すように、引出し線71が背面板53に近接している場合には、受信電圧が全体的に低く、図11(B)に示すように、引出し線71が背面板53から離間している場合には、受信電圧が全体的に高くなる。これは、引出し線71を背面板53に近付けることで誘導ノイズが全体的に低減することを示している。
【0064】
また、受信電圧はY方向(送信電極2の配列方向)の端部で高く、Y方向の中心部で低くなる。これは、本来は略均一であるべき受信電圧が誘導ノイズの影響でばらつき、誘導ノイズがY方向の端部で大きく、Y方向の中心部で小さくなっていることを示している。この誘導ノイズの大きさの違いは、Y方向の位置に応じて引出し線71の長さが異なることに起因するものであり、引出し線71が長くなるY方向の端部で誘導ノイズが大きくなり、引出し線71が短くなるY方向の中心部で誘導ノイズが小さくなる。
【0065】
図示するδ1は、Y方向の端部で最も高い値を示す受信電圧に関する第1例と第2例の受信電圧の差であり、δ2は、Y方向の中心部で最も低い値を示す受信電圧に関する第1例と第2例の受信電圧の差であり、δ1はδ2より大きい(δ1>δ2)。これは、誘導ノイズが大きいY方向の端部で誘導ノイズが大きく低減し、誘導ノイズが小さいY方向の中心部で誘導ノイズが小さく低減していることを示している(図12参照)。
【0066】
このように引出し線71を背面板53に近接させると、誘導ノイズを低減させることができ、しかもY方向の位置に関して大きな誘導ノイズが発生するところほど、誘導ノイズを低減する効果が大きくなるため、誘導ノイズを小さく且つ均一にすることができ、これによりタッチ位置検出の感度のばらつきを低減することができる。
【0067】
なお、導電性の背面板53は、磁界を遮るシールド効果があり、このシールド効果により受信電極3に発生する誘導ノイズが低減される。具体的には、送信側引出し部43では、導電性の背面板53が引出し線71の周囲に発生する磁界を遮り、受信電極3に発生する誘導ノイズを低減する。また、受信側引出し部44では、導電性の背面板53が送信電極2の周囲に発生する磁界を遮り、受信側の引出し線75に発生する誘導ノイズを低減する。
【0068】
図13は、図1に示したパネル本体4の変形例を示す模式的な断面図である。ここでは、図6に示した例と同様に、背面板91が、導電性材料(例えば鋼板などの金属材料)にて形成されているが、特にここでは、背面板91が、支持体54の背面に沿う本体部92から支持体54の側面側に折り曲げられた態様で設けられた側板部93を有している。側板部93は、背面板91の上下左右の4辺に設けられ、背面板91は全体として有底箱形をなしている。
【0069】
このように構成すると、背面板91の剛性が高くなるため、パネル本体4全体の剛性を高めてパネル本体4の変形を防止することができる。しかも、引出し線71が、本体部92に加えて側板部93にも沿った状態となり、背面板91の外面に沿う引出し線71の部分が長くなるため、受信電極3の誘導ノイズをより一層低減することができる。
【0070】
特に、図10に示したように、引出し線71が略放射状に集合する部分が、支持体54の側面に対向する領域に入るようにすると、ここには背面板91の側板部93が位置するため、引出し線71が略放射状に集合する部分が導電性の背面板91に沿った状態となる領域が拡大する。このため、引出し線71の全長に応じた誘導ノイズ低減の効果がより一層向上する。
【0071】
図14は、図1に示したパネル本体4の変形例を示す模式的な断面図である。ここでは、パネル本体4の側縁部に、電極シート42の送信側引出し部43を覆うカバー部材101が設けられている。このカバー部材101は、導電性材料で形成されると共に接地されている。なお、カバー部材101は、導電性を有する合成樹脂材料で形成するとよいが、導電性塗料の塗布などにより導電性を付与する構成も可能である。
【0072】
この構成では、導電性のカバー部材101が引出し線71に近接するため、駆動信号による電流が引出し線71に流れることによる誘導作用の影響を受信電極3が受け難くなり、受信電極3の誘導ノイズをより一層低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明にかかるタッチパネル装置は、送信電極に印可する駆動信号による電流が引出し線に流れることによる誘導作用が原因で受信電極に発生する誘導ノイズを低減することができる効果を有し、静電容量方式、特に相互容量方式によりタッチ位置を検出するタッチパネル装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 タッチパネル装置
2 送信電極
3 受信電極
4 パネル本体
5 送信部
6 受信部
7 制御部
41 支持シート
42 電極シート
43 送信側引出し部
44 受信側引出し部
51 タッチ面
52 表面板
53 背面板
54 支持体
61 送信基板
62 受信基板
71 送信側の引出し線
75 受信側の引出し線
91 背面板
92 本体部
93 側板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並走する複数の送信電極及び互いに並走する複数の受信電極が格子状に配置されたパネル本体と、
前記送信電極に対して駆動信号を印加する送信部と、
前記送信電極に印加された駆動信号に応答した前記受信電極の充放電電流信号を受信して電極交点ごとのレベル信号を出力する受信部と、を有し、
前記パネル本体は、タッチ面が形成されて前記送信電極及び前記受信電極の前面側に配置された表面板と、導電性材料で形成されて前記送信電極及び前記受信電極の背面側に配置された背面板とを有し、この背面板に前記送信部が固定されると共に、この送信部と前記送信電極とを結ぶ引出し線が、前記送信電極から引き出された後に背面側に折り返されて前記背面板に沿うように配設されたことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記引出し線が、前記送信電極から引き出された一端側から前記送信部に接続される他端側に向けて略放射状に集合するように配設されると共に、この略放射状に集合する部分の少なくとも一部が、前記背面板に沿うように配設されたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記パネル本体は、前記送信電極及び前記受信電極と前記背面板との間に配置された支持体を有し、
前記背面板は、前記支持体の背面に沿う本体部から前記支持体の側面側に折り曲げられた態様で設けられた側板部を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記パネル本体は、可撓性を有する合成樹脂材料で形成された支持シートに前記送信電極及び前記受信電極が配設された電極シートを有し、この電極シートに、前記支持シートの延出部分に前記引出し線を配設した態様の引出し部が一体的に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−221947(P2011−221947A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93097(P2010−93097)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】