説明

タッチパネル

【課題】制御回路なしに任意の場所を振動させることができ、薄型化が可能で、加工性や透明性に優れた触感呈示型のタッチパネル用の薄膜を開発し、入力を受け付けたことを知らせることのできる操作性に優れた触感呈示型のタッチパネルの提供。
【解決手段】架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための電圧印加用電極とを持つ振動発生部を有し、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記振動発生部を振動させることを特徴としたタッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネルに関する。本発明は、詳細には、架橋点が可動する架橋ポリロタキサンを含有する架橋ポリロタキサンゲルの薄膜において、その薄膜に電圧(特に直流電圧)を印加することにより薄膜上の所望の場所を振動させることができることを新たに見出し、その現象をタッチパネルのディスプレイ表面部分に適用することにより、従来の問題点を解決した触感呈示型のタッチパネルを提供するものである。すなわち、架橋点が可動する架橋ポリロタキサンを含有する架橋ポリロタキサンゲルを用いた触感呈示型の本発明のタッチパネル(入力デバイス)は、操作者が情報の入力操作を行った際、操作者に入力操作に対するフィードバックを部分的な振動により与えることができる。さらに、本発明のタッチパネル(デバイス)は、振動の付与に対して複雑な制御回路を必要とせず、部品点数も大幅に削減できるため、触感呈示を必要とする小型携帯機器の薄型化に大きく貢献する材料デバイスとなり得るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末をはじめとする小型電子機器には、操作者が情報の入力操作を行うための入力装置としてタッチパネルが広く用いられるようになっている。この入力装置は、機器に組み込まれた多様な機能を利用するための操作性という観点からは優れた特長を有しているが、操作者が情報の入力操作を行う際、従来のメカニカルな入力装置と比較して入力行為の実行の有無を実感しにくいといった課題を有している。
この点を改善するため、操作者が入力操作を行った際、振動により操作者への入力操作に対するフィードバックを示すものがいくつか提案されている。しかしながら、これらの提案の原理のほとんどは振動モータ等でタッチパネル全体を振動させるものであるため入力装置全体が振動してしまい、誤入力の原因のひとつとして問題視されはじめている(たとえば、画面に複数ボタンが配置されている場合、目的のボタンあるいは目的とは異なるボタンのどちらを押したのか正確に認識できない)。この問題を解決するためたとえば、入力操作を行った場所のみを振動させることで操作者にフィードバックを与える発明が提案されている(特許文献1)。しかしながら、これらの提案は複数個の微細な振動源が必要となり、またそれらを駆動するための回路も複雑になるなど、タッチパネルの構造をより複雑なものにしてしまう問題が新たに生じてしまい、小型化や薄型化を目指す電子機器開発には適さないデバイス構成となってしまう。
一方、入力デバイスの機構部品基材には、材料の持つ柔軟性や加工性に加え、金属材料に比べて軽量であるといった特長から高分子材料が注目され、高分子ゲルの相転移による体積変化(膨張)を利用したアクチュエータ機能を利用した入力デバイスが提案されている(特許文献2)。また本願出願人はこれまでに導電性高分子薄膜を用いるタッチ式入力装置を提案した(特許文献3)。
しかしながら、高分子ゲルを用いた入力デバイスでは、高分子ゲルが、物理架橋や化学架橋により不均一な三次元網目構造のため、溶媒の保持にある程度の膜厚(通常、1mm以上)が必要となり、デバイスの薄膜化(<1mm)と高速応答性が実現できない。また、振動運動を起こす高分子ゲルについても、いくつかの提案があるが(非特許文献1)、いずれも電圧の向きを切り替えるための回路が必要となる。
また高分子材料として、本願出願人はこれまでに、例えばポリエチレングリコールとシクロデキストリンからなるポリロタキサンを用いて、シクロデキストリン部分の架橋により架橋点が可動する架橋ポリロタキサンを含有する架橋ポリロタキサンゲルを提案した(特許文献4)。このゲルは、滑車状の構造を持つ架橋点を有することで優れた触感、耐久性、繰り返し特性を示すゲルとして多くの注目を集めている。
また本願出願人はこれまでにイオン交換能を有する官能基を有する架橋ポリロタキサンゲルを用いる薄膜アクチュエータを提案した(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−65456号公報
【特許文献2】特開平5−333171号公報
【特許文献3】特開2005−284482号公報
【特許文献4】国際公開第2005/080469号
【特許文献5】特開2010−86864号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】志賀亨他,高分子論文集,46,709(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、制御回路なしに任意の場所を振動させることができ、薄型化が可能で、加工性や透明性に優れた触感呈示型のタッチパネル用の薄膜を開発し、入力を受け付けたことを知らせることのできる操作性に優れた触感呈示型のタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、架橋ポリロタキサンゲルが含有する架橋ポリロタキサンの架橋点が可逆的に動くという特徴は、化学ゲルや物理ゲルと比較して、外力による変形に対して均一な網目構造を保持しやすく、このことは振動発生部が薄膜である(<1mm)場合においても架橋ポリロタキサンゲル中の溶媒の保持と溶媒移動の制御を容易にするのではないかと考えた。そして、架橋ポリロタキサンゲルに対して電場等の外部刺激に応じて所望の場所を振動させることができれば、上記の問題を解決する薄型のタッチパネルが提供できるものとの発想に至った。
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、タッチパネルが、架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための電圧印加用電極とを持つ振動発生部を有し、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記振動発生部を振動させることによって、制御回路なしに任意の場所を振動させることができ、薄型化が可能で、加工性や透明性に優れ、入力を受け付けたことを操作者に知らせることのできる操作性に優れた触感呈示型のタッチパネルとなりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記1〜16を提供する。
1. 架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための電圧印加用電極とを持つ振動発生部を有し、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記振動発生部を振動させることを特徴としたタッチパネル。
2. 前記振動発生部の初期の弾性率がヤング率として30kPa以下である上記1に記載のタッチパネル。
3. 前記溶媒が水である上記1または2に記載のタッチパネル。
4. 前記印加による振動発生部の振動数が0.4〜100Hzであり、前記印加による振動発生部の変位の変化量が0.01mm以上である上記1〜3のいずれかに記載のタッチパネル。
5. 前記電圧が直流電圧である上記1〜4のいずれかに記載のタッチパネル。
6. 前記架橋ポリロタキサンが、
シクロデキストリン分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接され且つ該シクロデキストリン分子が脱離しないように前記直鎖状分子の両末端にブロック基が配置されるポリロタキサンの少なくとも2分子と、架橋剤とを反応させることによって製造され、
前記ポリロタキサンの量が前記架橋剤1質量部に対して1.5〜8質量部である上記1〜5のいずれかに記載のタッチパネル。
7. 前記溶媒と前記架橋ポリロタキサンとの質量比(溶媒:架橋ポリロタキサン)が99:1〜70:30である上記1〜6のいずれかに記載のタッチパネル。
8. 前記架橋ポリロタキサンゲルに含有される架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される架橋剤が、アルキレンジオールジグリシジルエーテルである上記1〜7のいずれかに記載のタッチパネル。
9. 前記架橋ポリロタキサンゲルに含有される架橋ポリロタキサンを構成する直鎖状分子の末端が非イオン性のブロック基で封鎖されている上記1〜8のいずれかに記載のタッチパネル。
10. 前記架橋ポリロタキサンゲルのヤング率が30kPa以下である上記1〜9のいずれかに記載のタッチパネル。
11. さらに、操作時の接触を検出する接触検出部を有する上記1〜10のいずれかに記載のタッチパネル。
12. 前記振動発生部がシート状であり、さらに、操作時の接触を検出するシート状の接触検出部と、表示画面とを有し、
該シート状の振動発生部と前記シート状の接触検出部とを前記表示画面上に順次積層し、
前記シート状の振動発生部は前記電圧印加用電極を前記架橋ポリロタキサンゲルの表面と裏面とに有し、前記表面および前記裏面において前記電圧印加用電極はそれぞれ複数の帯状に等間隔で設けられ、前記表面における前記電圧印加用電極と前記裏面における前記電圧印加用電極とが90度ずれるものであり、
前記電圧印加用電極は、前記接触に応じて前記振動発生部を部分的に振動させるためのコントローラに接続され、
操作時の接触を前記接触検出部で検出すると前記コントローラによって前記シート状の振動発生部に部分的に直流電流が印加され、前記シート状の振動発生部が部分的に振動することにより感触を操作者にフィードバックすることを特徴とした上記1〜11のいずれかに記載のタッチパネル。
13. 前記振動発生部がシート状であり、前記電圧印加用電極が1対の電圧印加用電極であり、前記シート状の振動発生部を複数有し、2つの隣り合う振動発生部の間に隔壁を有し、
該シート状の振動発生部と、隔壁とを、シート状の接触検出部の上に順次配置し、
操作時の接触を前記接触検出部で検出すると前記シート状の振動発生部に直流電流が印加され、前記シート状の振動発生部が振動することにより感触を操作者にフィードバックすることを特徴とした上記1〜11のいずれかに記載のタッチパネル。
14. 前記振動発生部がシート状であり、前記シート状の振動発生部を複数有し、2つの隣り合う振動発生部の間に隔壁を有し、
該シート状の振動発生部と、隔壁とを、シート状の接触検出部の上に順次配置し、
前記電圧印加用電極は1対の電圧印加用電極であり、前記1対の電圧印加用電極はそれぞれ垂直方向に平面状の部分を少なくとも有する形状であり、前記シート状の振動発生部は前記1対の電圧印加用電極が有する前記垂直方向に平面状の部分をシート状の架橋ポリロタキサンゲルに対して垂直方向に有し、前記1対の電圧印加用電極の間に前記シート状の架橋ポリロタキサンゲルの少なくとも一部または全部があり、前記1対の電圧印加用電極の間にある架橋ポリロタキサンゲルの表面に突起部を有し、前記1対の電圧印加用電極に前記電圧が印加されると前記振動発生部および前記突起部が振動する上記1〜11のいずれかに記載のタッチパネル。
15. 前記シート状の接触検出部の下にさらに表示画面を有する上記13または14に記載のタッチパネル。
16. 前記振動発生部の上にさらに保護シートを有する上記1〜15のいずれかに記載のタッチパネル。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタッチパネルは、制御回路なしに任意の場所を振動させることができ、薄型化が可能で、加工性や透明性に優れ、入力を受け付けたことを知らせることのできる操作性に優れた触感呈示型のタッチパネルである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の一実施形態の概略を模式的に表す斜視図である。
【図2】図2は振動発生部2の振動回数と変位の変化率との関係を示すグラフである。
【図3】図3は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。
【図4】図4は本発明のタッチパネルを用いて構成される入力デバイスの一実施形態を模式的に示す概略図である。
【図5】図5は図4に示す入力デバイス500に使用されるタッチパネル400を模式的に示す分解斜視図である。
【図6】図6は図4に示す入力デバイス500に使用されるタッチパネル400を模式的に表す断面図である。
【図7】図7は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。
【図8】図8は本発明のタッチパネルを用いて構成される入力デバイスの別の一実施形態を模式的に示す概略図である。
【図9】図9は図8に示すボタン719の一実施形態の概略を模式的に示す分解斜視図である。
【図10】図10は図8に示すタッチパネル821を模式的に表す縦方向の断面図である。
【図11】図11は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。
【図12】図12は図8に示すボタンの別の一実施形態の概略を模式的に示す分解斜視図である。
【図13】図13は本発明のタッチパネルの別の一実施形態を模式的に示す横方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のタッチパネルは、
架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための電圧印加用電極とを持つ振動発生部を有し、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記振動発生部を振動させることを特徴としたタッチパネルである。
【0011】
振動発生部について以下に説明する。本発明のタッチパネルが有する振動発生部は、架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための電圧印加用電極とを持ち、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記架橋ポリロタキサンゲルを振動させる。
【0012】
架橋ポリロタキサンゲルについて以下に説明する。振動発生部に使用される架橋ポリロタキサンゲルは、架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有するゲルである。
本発明において使用された架橋ポリロタキサンは、2個以上のポリロタキサン分子を有してなり、ポリロタキサン分子が有する環状分子同士が化学結合を介して架橋する架橋ポリロタキサンである。
架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用されるポリロタキサン分子は「回転子」としての2つ以上の環状分子、該環状分子の開口部を串刺し状にして包接される「軸」としての直鎖状分子、及び該串刺し状の環状分子が脱離しないように該直鎖状分子の両端に位置するブロック基を有する。
架橋ポリロタキサンが非イオン性であるとは、詳細には、架橋ポリロタキサンゲルを構成するブロック基が非イオン性である(例えば、ブロック基自体が非イオン性である、ブロック基が有する置換基が非イオン性である)ことを意味する。本発明において、架橋ポリロタキサンが有するブロック基は、イオン性の官能基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、これらの塩)ではなく、イオン性の官能基を有さない。
【0013】
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される直鎖状分子(架橋ポリロタキサンの主鎖を構成する。)としては、例えば、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体のような親水性ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のような疎水性ポリマー;及びこれらの誘導体又は変性体(例えば、末端がカルボン酸変性されたもの)を挙げることができる。
これらのうち、再現安定性(振動の発生を再現する安定性。以下同様)に優れるという観点から、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが好ましく、特にポリエチレングリコールであるのが好ましい。
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される原料としての直鎖状分子の重量平均分子量は、再現安定性に優れるという観点から、1万以上であるのがよく、好ましくは2万以上、より好ましくは3.5万以上であるのがよい。直鎖状分子の重量平均分子量は20万以下とすることができる。本発明において直鎖状分子の重量平均分子量は、ジメチルスルホキシドを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレンオキシド換算で表わされるものである。
【0014】
架橋ポリロタキサンを構成するブロック基としては、例えば、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。より具体的には、環状分子としてα−シクロデキストリン、及び直鎖状分子としてポリエチレングリコールを用いる場合、ブロック基を、シクロデキストリン類、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体とすることができる。
また、架橋ポリロタキサンを構成する直鎖状分子の末端は非イオン性のブロック基で封鎖されているのが好ましい態様の1つとして挙げられる。架橋ポリロタキサンを構成する直鎖状分子はその末端において、例えば、エステル結合、アミド結合を介してブロック基と結合することができる。ブロック基は、再現安定性に優れるという観点から、非イオン性のもの、かさ高いものであるのが好ましく、アダマンタン基類がより好ましい。非イオン性のブロック基、かさ高いブロック基としては上記のブロック基と同様のものが挙げられる。
【0015】
架橋ポリロタキサンを構成する環状分子は、ポリロタキサン分子が有する環状分子同士(少なくとも2個の環状分子)が化学結合(単結合、有機基)を介して架橋するものを含む。有機基は特に制限されない。有機基は例えば、脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせのいずれであってもよく、不飽和結合を有することができる。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせのいずれであってもよく、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。有機基としては、例えば、下記の架橋剤と、ポリロタキサンが有する環状分子が持つ、架橋剤と反応可能な官能基との反応により形成されるものが挙げられる。
架橋ポリロタキサンを構成する環状分子は少なくともその一部が架橋剤によって架橋されていればよい。また、架橋剤はその官能基の1つだけが架橋ポリロタキサンを構成する環状分子と反応することができる。この場合架橋剤が有する残りの官能基は環状分子とは未反応なので、1つの架橋剤は1つの環状分子を修飾するのみであり、環状分子同士を架橋しない。
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される環状分子は、環状構造、および架橋剤と反応し得る官能基を有する化合物であれば特に制限されない。架橋剤と反応し得る官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基が挙げられる。環状分子は具体的には例えば、種々のシクロデキストリン類(例えばα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン及びグルコシルシクロデキストリン、これらの誘導体又は変性体など)、クラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、及びジシクロヘキサノクラウン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。これらのうち、架橋反応に利用できる水酸基が豊富に存在するという点、再現安定性に優れるという観点から、シクロデキストリン類が好ましく、特に、α−シクロデキストリンであることが好ましい。
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用されるポリロタキサンの包接率は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による振動がより大きく、再現安定性に優れるという観点から、0.01〜0.6であるのが好ましく、0.01〜0.5であるのがより好ましい。本発明において、包接率は環状分子が直鎖状分子に串刺し状に包接される際に直鎖状分子に包接される環状分子の個数について、直鎖状分子が環状分子を最大限に包接できる個数(計算値)を1(基準値)とした場合の基準値に対する値である。実際に製造されたポリロタキサン中の環状分子の数はNMRによって測定することができる。
なお、架橋ポリロタキサンを構成する環状分子は非イオン性基によって修飾されていてもよい。環状分子(例えばシクロデキストリン)を修飾する非イオン性基、環状分子(例えばシクロデキストリン)を非イオン性基で修飾する方法については、例えば、国際公開第2005/080469号に記載されたものが挙げられる。
【0016】
架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用される架橋剤は、環状分子が有する官能基と反応可能な基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。環状分子が有する官能基と反応可能な基としては、例えば、ハロゲン原子、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、イソシアネート基、イミダゾール基、ビニル基が挙げられる。架橋剤としては具体的には例えば、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレン(例えば2,4−ジイソシアン酸トリレン)、1,1′-カルボニルジイミダゾール、ジグリシジルエーテル(例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなアルキレンジオールジグリシジルエーテル)及びジビニルスルホンなどを挙げることができる。
なかでも、再現安定性に優れ、水溶性の溶媒と相溶できる点で好ましいことから、アルキレンジオールジグリシジルエーテルが好ましく、ブタンジオールジグリシジルエーテルがより好ましい。
【0017】
原料としてのポリロタキサンの量は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による振動がより大きくなり、再現安定性に優れるという観点から、架橋剤1質量部に対して、1.5〜8.0質量部であるのが好ましく、2.0〜6.0質量部であるのがより好ましい。
【0018】
架橋ポリロタキサンは、再現安定性に優れるという観点から、直鎖状分子(架橋ポリロタキサンの主鎖)が、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ブロック基がアダマンタン基類であり、直鎖状分子の末端はエステル結合および/またはアミド結合を介してブロック基と結合し、環状分子がシクロデキストリンであり、環状分子の少なくとも一部がアルキレンジオールジグリシジルエーテルによって架橋されているのが好ましい。
【0019】
架橋ポリロタキサンゲルはその製造について特に制限されない。例えば、シクロデキストリン分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接され且つ該シクロデキストリン分子が脱離しないように前記直鎖状分子の両末端にブロック基が配置されるポリロタキサンの少なくとも2分子と、架橋剤とを反応させることによって製造する方法が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0020】
また、ポリロタキサンを架橋させる架橋反応と、得られた架橋ポリロタキサンのゲル化を1つの工程で行う方法としては、例えば、原料としてのポリロタキサンと架橋剤との反応を溶媒中において行う方法が挙げられる。具体的には例えば、モールドにゲル化時の溶媒(例えば、水、水酸化ナトリウム水溶液)、ポリロタキサン、および架橋剤を入れて、室温〜50℃の条件下において10〜30時間架橋反応およびゲル化を行う方法が挙げられる。架橋反応後、必要に応じて、モールドから架橋ポリロタキサンゲルを取り出し、これを水で洗浄し、2日間水置換を行うことができる。
なお、本発明において溶媒量および系内における架橋剤濃度を一定にして、ポリロタキサンの量を変更することで、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を制御することができる。この架橋系において架橋剤はポリロタキサンと反応しながら、溶媒によっても失活する。つまり、速度論的に、反応できるポリロタキサンサイトが多ければ、架橋剤はポリロタキサンとより多く反応し、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度をより高くすることができる。本発明において、溶媒として1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液3.5mLを使用し、系内の架橋剤濃度を0.21モル/L(架橋剤がブタンジオールジグリシジルエーテルである場合その使用量:140μL)とし、系内のポリロタキサンの量を0.2〜1.2gとすることによって架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を調製することができる。本発明において使用される架橋ポリロタキサンゲルは、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を制御することができ、架橋密度が高く振動をより顕著にすることができるという観点から、上記の方法で架橋されたものであるのが好ましい。
【0021】
本発明において、得られた架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を表す指標として、架橋ポリロタキサンゲルのヤング率を採用した。架橋ポリロタキサンゲルの製造の際、一定濃度の架橋剤に対して使用するポリロタキサンの量が多いほど、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を高くすることができ、架橋ポリロタキサンゲルのヤング率を高くすることができる。架橋ポリロタキサンゲルのヤング率については後述する。
【0022】
ポリロタキサンと架橋剤との反応もしくはゲル化に使用することができる溶媒、および/または架橋ポリロタキサンゲルを膨潤させる溶媒としてはプロトン性の極性溶媒を用いることができる。すなわち、水、エタノール、メタノール、2級および3級のアルコール類、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。なかでも、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による振動がより大きく、再現安定性に優れるという観点から、特に水が好ましい。ポリロタキサンと架橋剤との反応に使用することができる溶媒として水を使用する場合、水は水酸化ナトリウムのようなアルカリを含有することができる。
架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用されるポリロタキサンはその製造について特に制限されない。例えば国際公開第2005/052026号、国際公開第2005/080469号に記載された方法によって製造することができる。
架橋ポリロタキサンゲルおよびその製造方法については例えば国際公開第2005/080469号を本願明細書に援用しこれに記載されたものを本発明において使用することができる。
【0023】
得られた架橋ポリロタキサンゲルにおいて、前記溶媒と前記架橋ポリロタキサンとの質量比(溶媒:架橋ポリロタキサン)は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による振動がより大きく、再現安定性に優れるという観点から、99:1〜70:30であるのが好ましく、95:5〜80:20であるのがより好ましく、90:10〜85:15であるのがさらに好ましい。
架橋ポリロタキサンは溶媒を含むことにより膨潤することができる。膨潤時又は膨潤前の架橋ポリロタキサン濃度、即ち、架橋ポリロタキサンゲルの単位体積あたりの架橋ポリロタキサンの量は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による振動がより大きく、再現安定性に優れるという観点から、0.02〜0.40g/cm3、好ましくは0.04〜0.30g/cm3、より好ましくは0.08〜0.20g/cm3であるのがよい。
架橋ポリロタキサンゲルはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
架橋ポリロタキサンゲルの厚さは1mm以下とすることができ、1mm未満であるのが好ましい。また機械的強度を確保できるという観点から0.3mm以上であるのが好ましい。
架橋ポリロタキサンゲルの弾性率(印加なしの条件下)は、再現安定性に優れるという観点から、ヤング率として30kPa以下であるのが好ましい。本願発明者らは、架橋ポリロタキサンゲルの弾性率が上記のような範囲である場合、電圧を印加することによって架橋ポリロタキサンゲルがより振動しやすいことを見出した。
【0024】
振動発生部に使用される電極について以下に説明する。振動発生部に使用される電極はその材料について特に制限されない。例えば、(i)活性炭、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維等の炭素材料、(ii)金、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、銀、銅、ニッケルなどの金属類、(iii)酸化ルテニウム、酸化チタン、酸化スズ、二酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化モリブデンなどの金属酸化物、(iv)ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びこれらの誘導体などのπ共役系導電性高分子などを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を組み合わせてもよい。
電極の厚さは特に制限されない。10μm以下とすることができる。
本発明のタッチパネルに使用される架橋ポリロタキサンゲルの特徴のひとつとして、その高い透明性が挙げられる。前記電極材料として取り上げた酸化インジウムに少量の酸化スズを混ぜたITOやπ共役系導電性高分子を用いた電極は透明性も高いため、これらの電極を付与することで透明な触感呈示型の振動発生部を得ることができる。
電極の形成方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。すなわち、真空蒸着法、スパッタリング法、電解メッキ法、無電解メッキ法、印刷法、適切なバインダー中に電極材料を溶解もしくは分散させたインキを架橋ポリロタキサンゲル上に塗布する方法、架橋ポリロタキサンゲルと別途作製した電極シート又は金属箔膜とを圧着または溶着により貼り合せる方法、金属板(例えばL字状などの形状のもの、薄膜のもの)を架橋ポリロタキサンゲルに差し込む方法などが挙げられる。特に、金を用いた無電解メッキ法は、電極形成の容易性と形成された電極の安定性の観点から、好適に用いられる。金を用いた無電解メッキ法は従来公知のものが挙げられ、例えば、電極は以下に示す(a)〜(e)の工程を、3〜5回繰り返すことで作製することができる。
(a)架橋ポリロタキサンゲルの洗浄工程、(b)架橋ポリロタキサンゲルの膨潤工程、(c)架橋ポリロタキサンゲルへの金属イオンの吸着工程、(d)金属イオンの還元工程、(e)電極を有する架橋ポリロタキサンゲルの洗浄工程
振動発生部は架橋ポリロタキサンゲルと電圧印加用電極とを持つものであれば特に制限されない。電圧印加用電極は例えば、1対[1つの電極(正極)に対して1つの電極(負極)]として、または複数の電極(正極)に対して複数の電極(負極)を配置することができる。電圧印加用電極の位置は、例えば、架橋ポリロタキサンゲルの表面上の左右の端部、架橋ポリロタキサンゲルの上下面、架橋ポリロタキサンゲルの両側面、架橋ポリロタキサンゲルの内部とすることができる。
電圧印加用電極の位置が架橋ポリロタキサンゲルの上下面である場合、電圧印加用電極の間の距離は1mm以下とすることができ、1mm未満であるのが好ましい。
電圧印加用電極の位置が架橋ポリロタキサンゲルの表面上の左右の端部、架橋ポリロタキサンゲルの両側面、架橋ポリロタキサンゲルの内部である場合、電圧印加用電極の間の距離は5mm以下とすることができる。
なお正極および/または負極の電極を複数有する場合、隣り合う同じ極の電極の間の距離は特に制限されず、1.5〜19mmとすることができる。
【0025】
本発明のタッチパネルは、架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記架橋ポリロタキサンゲルを、つまりは振動発生部を振動させる。
本発明において、架橋ポリロタキサンゲルまたは振動発生部のヤング率は原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)を用いて測定された。ある架橋ポリロタキサンゲルとこの架橋ポリロタキサンゲルを持つ振動発生部とにおいて、両者の初期(印加なし)のヤング率はAFMによる測定の場合同じまたはほぼ同等とすることができる。
本発明において、振動発生部(架橋ポリロタキサンゲル)に印加するための電圧は直流電圧であるのが好ましい(この場合電源は直流電源とすることができる。)。電源は−3〜+3Vの電圧を電極間に印加することができる。電圧は、電圧印加による架橋ポリロタキサンゲル(振動発生部)の振動を大きくすることができるという観点から、電圧の絶対値が大きいことが好ましく、電圧の絶対値が2Vを超えるのがより好ましい。電圧の印加は、接触操作に関する、機器の回路からの制御信号に応じてコントローラを用いて制御することができる。
【0026】
振動発生部の初期(電圧を印加しない状態)の弾性率は、電圧印加による振動がより大きく、再現安定性に優れるという観点から、ヤング率として30kPa以下であるのが好ましい。
初期(電圧を印加しない状態)における振動発生部の弾性率が上記のような範囲である場合、振動発生部が電圧の印加によってより振動することができる。
【0027】
印加による振動発生部(架橋ポリロタキサンゲル)の振動数は、操作者が振動を明確に感知できるという観点から、0.4〜100Hzであるのが好ましく、0.40〜0.55Hzであるのがより好ましい。
印加による振動発生部(架橋ポリロタキサンゲル)の変位の変化量(電圧印加時に架橋ポリロタキサンゲルが振動で変形したときの変位と、変形していないときとの変位の差)は、操作者が振動を明確に感知できるという観点から、0.01mm以上であるのが好ましい。
【0028】
振動発生部(または架橋ポリロタキサンゲル)はその形状について特に制限されない。例えば、平板状(平板状)、ドーム状、円筒状、半円筒状、シート状とすることができる。架橋ポリロタキサンゲルを上記の形状に対応するモールド内で製造することによって、所望の形状を有する架橋ポリロタキサンゲルを得ることができる。
【0029】
振動発生部における電圧印加用電極の形状として例えば、平板状(平面状)、帯状のものが挙げられる。電圧印加用電極の形状が帯状である場合、片方の電極の配置をもう片方の電極に対して90度ずらすことができる。電極は架橋ポリロタキサンゲルの、例えば、上下、左右に配置することができる。電圧印加用電極の形状が帯状である場合、正極の電極および/または負極の電極を複数とすることができる。
【0030】
本発明のタッチパネルはさらに、操作時の接触を検出する接触検出部および/または表示画面を有するのが好ましい態様として挙げられる。
本発明のタッチパネルにおいて、接触検出部(操作者による入力を検知するセンサー)としてはタッチパネルを用いることができる。本発明のタッチパネルにおいて、接触検出部として使用されるタッチパネルは、パネルに接触した操作者の指を検出して操作者による入力を検知する入力手段である。接触検出部として使用されるタッチパネルの具体的構成としては、接触圧力が加わった位置を検出する抵抗膜感圧方式のもの、および接触により表面を伝播する表面弾性波を検出する表面弾性波方式のものを使用しても良い。さらに、赤外線発光ダイオードとフォトトランジスタからなるセンサーを多数設けた赤外線検出方式のタッチパネルを使用することもできる。
また、本発明のタッチパネルはさらにコントローラを有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。コントローラは、検知した操作者の押圧に応じて所望の場所(振動発生部)を振動させるために、電極に電圧をかける場所をコントロールして瞬時(1秒以内)に振動発生部(電極システム)に電圧を印加し、架橋ポリロタキサンゲル(薄膜)を振動させる。これにより操作者はタッチパネルを押したことを知覚することができる。
【0031】
本発明のタッチパネルは振動発生部を部分的に振動させることができる。具体的には例えば、1つのタッチパネルが1つの振動発生部を有する場合振動発生部の1部分を振動させる態様、1つのタッチパネルが複数の振動発生部を有する場合個々の振動発生部を振動させる態様が挙げられる。
【0032】
振動発生部を添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明は添付の図面に制限されない。
図1は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の一実施形態の概略を模式的に表す斜視図である。図1において、振動発生部(電極システム)100はシート状の架橋ポリロタキサンゲル101と、架橋ポリロタキサンゲル101の上下面の端部(図示せず)にあり架橋ポリロタキサンゲル101に電圧を印加するための1対の電圧印加用電極103、105と、1対の電圧印加用電極103、105に電圧を印加する電源107とを有する。振動発生部100の動作は、まず、操作者の接触操作に関する機器の回路(図示せず。)からの制御信号によって電源107が1対の電圧印加用電極103、105を介して電圧を架橋ポリロタキサンゲル101に印加し、架橋ポリロタキサンゲル101が振動し、操作者が振動発生部100の振動を感知することができる。
【0033】
図3は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。図3において、振動発生部(電極システム)300はシート状であり、シート状の架橋ポリロタキサンゲル301(厚さ1mm以下)と、電圧印加用電極303、305を架橋ポリロタキサンゲル301の表面と裏面とにそれぞれ有し、電圧印加用電極303、305はそれぞれ複数の帯状に等間隔で設けられ、電圧印加用電極303と電圧印加用電極305とはその配置が90度ずれており、電圧印加用電極303、305に電圧を印加するための電源307(直流電源)とを有し、所望の場所を振動させるために電圧印加用電極303、305に電圧をかける場所をコントロールするコントローラ309を有する。
帯状の電極の幅(L1)は0.4〜4.8mmであるのが好ましい。
隣り合う帯状の電極の間(L2)は1.5〜19.0mmであるのが好ましい。
振動発生部300の動作は、まず、操作者の接触操作に関する機器の回路(図示せず。)からの制御信号によってコントローラ309が作動し所望の場所を振動させるように電源307から電圧印加用電極303のいずれかの帯と、電圧印加用電極305のいずれかの帯との間に選択的に電圧を印加して、架橋ポリロタキサンゲル301のなかの所望の部分(操作者が接触した部分)が振動して、操作者が振動発生部300の部分的な振動を感知することができる。
【0034】
図7は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。図7において、振動発生部700(電極システム)は、架橋ポリロタキサンゲル701(厚さ1mm以下)と、架橋ポリロタキサンゲル701の両表面に平板状(平面状)に設けられた1対の電圧印加用電極703、705、電圧を印加する直流電源707から構成される。
振動発生部700の動作は、まず、操作者の接触操作に関する機器の回路(図示せず。)からの制御信号によって電源707から1対の電圧印加用電極703、705を介して電圧を架橋ポリロタキサンゲル701に印加し、架橋ポリロタキサンゲル701が振動して、操作者が振動発生部700の振動を感知することができる。
【0035】
図11は本発明のタッチパネルに使用される振動発生部の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。図11において、振動発生部915は架橋ポリロタキサンゲル925(厚さ1mm以下)と、1対の電圧印加用電極903、905、電圧を印加する直流電源907から構成される。また1対の電圧印加用電極903、905はそれぞれ垂直方向に平面状の部分を少なくとも有する形状(図11においてはL字型)であり、シート状の振動発生部915は1対の電圧印加用電極903、905をシート状の架橋ポリロタキサンゲル925に対して垂直方向に有し、1対の電圧印加用電極903、905の間にシート状の架橋ポリロタキサンゲル925の少なくとも一部または全部があり、1対の電圧印加用電極903、905の間にある架橋ポリロタキサンゲル901の表面に突起部929を有する。架橋ポリロタキサンゲル901がその表面に突起部929を有することによって操作者が振動を顕著に感じることができる。符号921、923の部分を架橋ポリロタキサンゲル以外の材料とすることができる。架橋ポリロタキサンゲル925は符号921、923の部分を有さなくてもよい。突起部929は架橋ポリロタキサンゲル925と一体的に形成することができる。突起部929は架橋ポリロタキサンゲル929と同じ材質でも異なる材質であってもよい。
振動発生部915の動作は、まず、操作者の接触操作に関する機器の回路(図示せず。)からの制御信号によって電源907から1対の電圧印加用電極903、905を介して電圧を架橋ポリロタキサンゲル925または901に印加し、1対の電圧印加用電極903、905に電圧が印加されると架橋ポリロタキサンゲル925および突起部929が振動して、操作者が振動発生部915および突起部929の振動を感知することができる。
【0036】
本発明のタッチパネルは触感呈示型の入力デバイスを構成する素子構造として使用することができる。
本発明のタッチパネル、およびこれを用いて構成される入力デバイスについて添付の図面を用いて以下に説明する。本発明は添付の図面に制限されない。
図4は本発明のタッチパネルを用いて構成される入力デバイス(装置構成)の一実施形態を模式的に示す概略図である。図4において、入力デバイス500はタッチパネル400(本発明のタッチパネル)を1つ有する。
図5は図4に示す入力デバイス500に使用されるタッチパネル400を模式的に示す分解斜視図であり、図6は図4に示す入力デバイス500に使用されるタッチパネル400を模式的に表す断面図である。
【0037】
図5(図6)において、タッチパネル400は、振動発生部415がシート状であり、シート状の振動発生部415と、さらに、操作時の接触を検出するシート状の接触検出部413と、表示画面411とを有し、
シート状の振動発生部415とシート状の接触検出部413とを表示画面411上に順次積層し、
シート状の振動発生部415は電圧印加用電極403、405を架橋ポリロタキサンゲル401の表面と裏面とに有し、前記表面および前記裏面において電圧印加用電極403、405はそれぞれ複数の帯状に等間隔で設けられ、前記表面における電圧印加用電極403と前記裏面における電圧印加用電極405とが90度ずれるものであり、
前記電圧印加用電極403、405は、前記接触に応じて振動発生部415を部分的に振動させるためのコントローラ409に接続され、
操作時の接触を接触検出部413で検出するとコントローラ409によって電源407からシート状の振動発生部415に部分的に直流電流が印加され、シート状の振動発生部415が部分的に振動することにより感触を操作者にフィードバックすることができる。
振動発生部415には図3に示す振動発生部300を用いる。振動発生部415の上に必要に応じて保護シート417を配置することができる。
タッチパネル400の動作は、まず、操作時の接触を接触検出部413で検出すると、操作者の接触操作に関する機器の回路(図示せず。)からの制御信号によってコントローラ409が作動し所望の場所を振動させるように電源407から電圧印加用電極403のいずれかの帯と、電圧印加用電極405のいずれかの帯との間に選択的に電圧を印加して、振動発生部415(架橋ポリロタキサンゲル401)のなかの所望の部分(操作者が接触した部分)が振動して、感触を操作者にフィードバックすることができる。
【0038】
本発明において、コントローラは、検知した操作者の押圧に応じて瞬時(1秒以内)に電極システムに部分的に電圧を印加し、架橋ポリロタキサンゲル(薄膜)を部分的に振動させることができる。これにより操作者はタッチパネルを押したことを知覚することができる。
【0039】
図8は本発明のタッチパネルを用いて構成される入力デバイス(装置構成)の別の一実施形態を模式的に示す概略図である。図8において、入力デバイス800はボタン719(振動発生部715)を複数有し、2つの隣り合うボタン719(振動発生部715)の間に隔壁819を有するタッチパネル821を持つ。図8に示すタッチパネル821は複数のボタン719(振動発生部715)と隔壁819とを有することによって各振動発生部715(架橋ポリロタキサンゲル701)を振動させることができ、これによって部分的なタッチパネルの振動を実現することができる。
本願明細書において隔壁は少なくとも隣り合う振動発生部の間に配置されればよく、隣り合うボタンの間に配置することもできる。
【0040】
図9は図8に示すボタン719の一実施形態の概略を模式的に示す分解斜視図であり、図10は図8に示すタッチパネル821を模式的に表す縦方向の断面図である。
図9において、ボタン719は、振動発生部715(700)とシート状の接触検出部713とを順次配置(積層)する。振動発生部715はシート状であり、振動発生部715には図7に示す振動発生部700を用いる。振動発生部715の上に必要に応じて保護シート717を配置することができる。接触検出部713の下に必要に応じて表示画面(図示せず。)を配置することができる。
ボタン719の動作は、まず、操作時の接触を接触検出部713で検出すると1対の電圧印加用電極703、705を介してシート状の振動発生部715に直流電流が印加され、シート状の振動発生部715(架橋ポリロタキサンゲル701)が振動することにより感触を操作者にフィードバックすることができる。
図10において、タッチパネル821は、振動発生部715がシート状であり、電圧印加用電極が1対の電圧印加用電極703、705であり、シート状の振動発生部715を複数有し、2つの隣り合う振動発生部715の間に隔壁819を有し、
シート状の振動発生部715と、隔壁819とを、シート状の接触検出部713の上に順次配置し、
操作時の接触を接触検出部713で検出するとシート状の振動発生部715に直流電流が印加され、シート状の振動発生部715が振動することにより感触を操作者にフィードバックすることができる。
タッチパネル821は2つの隣り合う振動発生部715(少なくとも隣り合う架橋ポリロタキサンゲル701)の間に隔壁819を有する。本発明において、保護シートはフィルム状の絶縁材から形成されている。接触検出部713の下に必要に応じて表示画面(図示せず。)を配置することができる。
【0041】
図13は本発明のタッチパネルの別の一実施形態を模式的に示す横方向の断面図である。図13は、図8に示すボタン719に使用される振動発生部に、図11に示す振動発生部を適用したケースである。
図13において、タッチパネル821は、振動発生部915がシート状(ほぼシート状)であり、シート状の振動発生部915を複数有し、2つの隣り合う振動発生部915の間に隔壁919を有し、
シート状の振動発生部915と、隔壁919とを、シート状の接触検出部913の上に順次配置し、
電圧印加用電極は1対の電圧印加用電極903、905であり、1対の電圧印加用電極903、905はそれぞれ垂直方向に平面状の部分を少なくとも有する形状(L字型)であり、シート状の振動発生部915は1対の電圧印加用電極903、905が有する前記垂直方向に平面状の部分をシート状の架橋ポリロタキサンゲル925に対して垂直方向に有し、1対の電圧印加用電極903、905の間にシート状の架橋ポリロタキサンゲル925の少なくとも一部または全部があり、1対の電圧印加用電極903、905の間にある架橋ポリロタキサンゲル925の表面に突起部929を有し、1対の電圧印加用電極903、905に電圧が印加されると振動発生部915(架橋ポリロタキサンゲル925)および突起部929が振動することができる。
図13において、タッチパネル821は振動発生部915を複数有し、2つの隣り合う振動発生部915(または少なくとも架橋ポリロタキサンゲル925)の間に隔壁919を有し、振動発生部915と、隔壁919とをシート状の接触検出部913の上に順次配置(積層)する。必要に応じて保護シート917、表示画面911を有することができる。タッチパネル821は複数の振動発生部915と隔壁919とを有することによって部分的に振動発生部915(架橋ポリロタキサンゲル925)を振動させることができる。タッチパネル821は個々の振動発生部915を1つのボタン935として有することができる。
【0042】
図12は図8に示すボタンの別の一実施形態の概略を模式的に示す分解斜視図である。
図12において、ボタン935(719)は、振動発生部915と、保護シート917を順次シート状の接触検出部913の上に配置(積層)する。振動発生部925は、垂直方向に平面状の部分を有する1対の電圧印加用電極903、905(L字型)を有し、シート状の振動発生部925は1対の電圧印加用電極903、905が有する垂直方向に平面状部分をシート状の架橋ポリロタキサンゲル925に対して垂直方向に有し、1対の電圧印加用電極903、905の間にシート状の架橋ポリロタキサンゲルの少なくとも一部または全部があり、1対の電圧印加用電極903、905の間にある架橋ポリロタキサンゲル901の表面に突起部929を有する。振動発生部915は符号921、符号923の部分において架橋ポリロタキサンゲルを有さなくてもよい。この場合符号921の部分だけを架橋ポリロタキサンゲルとすることができる。接触検出部913の下に必要に応じて表示画面(図示せず。)を配置することができる。
ボタン935の動作は、まず、操作時の接触を接触検出部913で検出すると1対の電圧印加用電極903、905に電圧が印加され、振動発生部915および突起部929が振動して感触を操作者にフィードバックすることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
[架橋ポリロタキサンゲルの製造]
1.未架橋ポリロタキサンの合成
ポリロタキサンの合成例:
<ポリエチレングリコールのTEMPO酸化によるPEG−カルボン酸の調製>
ポリエチレングリコール(PEG)(重量平均分子量:10万)10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)50mg、及び臭化ナトリウム0.25gを水110mlに溶解した。得られた溶液に市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度約5%)2.5mlを添加し、室温で攪拌しながら反応させた。反応が進行すると添加直後から系のpHは急激に減少するが、なるべくpH:10〜11を保つように1N−NaOHを添加して調製した。pHの低下は概ね3分以内に見られなくなったが、さらに10分間攪拌した。過剰量のエタノールを添加して反応を終了させた。塩化メチレン50mlでの抽出を3回繰返して無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレータで塩化メチレンを留去した。温エタノール250mlに溶解させた後、−4℃の冷凍庫に一晩おいてPEG−カルボン酸、即ちPEGの両末端をカルボン酸(−COOH)に置換したもの、を析出させた。析出したPEG−カルボン酸を遠心分離で回収した。この温エタノール溶解−析出−遠心分離のサイクルを数回繰り返し、最後に真空乾燥で乾燥させてPEG−カルボン酸を得た。収率95%以上。カルボキシル化率95%以上。
<PEG−カルボン酸とα−シクロデキストリンを用いた包接錯体の調製>
上記で調製したPEG−カルボン酸6g及びα−シクロデキストリン(α−CD)24gをそれぞれ別々に用意した70℃の温水100mlに溶解させた後、両者を混合し、その後、冷蔵庫(4℃)中で3日間静置した。クリーム状に析出した包接錯体を凍結乾燥し回収した。
<アダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖>
上記包接錯体にアダマンタンアミン0.26g、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)0.60g、ジイソプロピルエチルアミン0.28mlを脱水ジメチルホルムアミド(DMF)120mlに溶解した溶液を加え、よく振り混ぜた後、冷蔵庫中で一晩静置した。その後、メタノール120mlを加え、攪拌、遠心分離、上澄みの除去、を行った。次いで、DMF/メタノール=1:1混合溶液200mlを加え、同様の操作を2回行った。さらにメタノール200mlを用いて同様の操作を2回行い、得られた沈澱を真空乾燥した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)140mlに溶解した。この溶液を純水1400ml中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥した。さらに同様の再沈澱操作を行い、ポリロタキサン16gを得た。得られたポリロタキサンをNMR測定した結果、CDとPEGモノマーとの比(モル比)は、CD:PEGモノマー=13.5:100であった(包接率:0.27)。なお、包接率より、理論計算上、該ポリロタキサン1gにつき、シクロデキストリンが0.76ミリモル包接される。得られたポリロタキサンをポリロタキサン1とする。
【0044】
2.ポリロタキサン1の架橋および架橋ポリロタキサンのゲル化
上記のようにして得られたポリロタキサン1:0.35g、0.45g、0.53g、0.60g、0.70gをそれぞれ3.5mlの1.5N−NaOH水溶液に溶解し、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを140μl(架橋剤の濃度として0.21mol/L)添加し、撹拌した。均一になった溶液を厚み0.5mmのシート状のモールドに注入し、25℃、20時間反応させた後、モールドから取り出し、水で洗浄し、2日間水置換を行った。得られた架橋ポリロタキサンゲルを上記のポリロタキサン1の使用量の順に架橋ポリロタキサンゲル1〜5とする。なお、水で膨潤させて得られた架橋ポリロタキサンゲル1の重量を1とした場合、架橋ポリロタキサンゲル1の含水率は0.91となる。同様に架橋ポリロタキサンゲル2〜5含水率はそれぞれ0.88、0.86、0.83、0.80になる。
【0045】
[ハイドロゲルの製造]
(株)クラレ製、PVA−124、重合度2400、ケン化度98〜99mol%のポリビニルアルコール(PVA)を水に溶解して、濃度6%のPVA水溶液を作製した。この水溶液を厚さ0.5mm、幅4mm、長さ4mmのシリコン型に流し込み、−15℃の温度下で10時間放置して水溶液を凍結させた後、5℃の温度下に24時間放置して氷を融解し、ポリビニルアルコールゲル(PVAゲル)を得た。得られたPVAゲルをハイドロゲルとする。
[オルガノゲルの製造]
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製TSE3070を厚さ0.5mm、幅4mm、長さ4mmのシリコン型に流し込み、80℃の温度下で3時間放置し、シリコーンゲルを得た。得られたシリコーンゲルをオルガノゲルとする。
[イオン性架橋ポリロタキサンゲル]
3,5−ジメルカプトメチルピリジンで架橋されたα−シクロデキストリン2量体(1g)とポリエチレングリコール(重量平均分子量:1,500、シグマアルドリッチ社製)(5mg)とを水(10ml)に加え、超音波を照射しながら室温で混合した。2時間後沈殿物としてα−シクロデキストリン2量体による架橋ポリロタキサンを得た。
次に得られた架橋ポリロタキサン1gと過酸化水素水10mLとを混合し、0℃の条件下で反応させてポリエチレングリコールの末端のヒドロキシ基を酸化させてカルボキシル基とし、その後カルボキシル基と水酸化ナトリウムとを反応させることによって、カルボキシル基をナトリウム塩に変換させ、カルボン酸ナトリウム塩で変性された架橋ポリロタキサンを得た。得られた架橋ポリロタキサンをゲル化してこれをイオン性変性架橋ポリロタキサンゲルとして使用した。
【0046】
[ヤング率の測定]
本発明において、架橋ポリロタキサンゲル、振動発生部のヤング率は、原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製 Nano ScopeIIIa Dimension3000)を用い、室温下で測定された。
架橋ポリロタキサンゲルのヤング率は、架橋ポリロタキサンゲルを印加なしの条件下でゲル表面のフォースボリューム測定を行い、得られたフォースディスタンスカーブより決定された。
振動発生部のヤング率は、振動発生部に、印加なしまたは+3Vの直流電圧を加えながらの条件下で、振動発生部の表面(振動発生部の上面の電極)上におけるフォースボリューム測定を行い、得られたフォースディスタンスカーブより決定された。結果を第1表に示す。
架橋ポリロタキサンゲルのヤング率は、上記のようにして得られた架橋ポリロタキサンゲル1〜5をそれぞれ厚さ0.5mm、幅4mm、長さ4mmの平板状とし、この高分子薄膜を純水で1日膨潤させたものをヤング率の評価サンプルとして用いた。
振動発生部のヤング率は、下記のようにして得られた振動発生部を用いて測定された。
【0047】
[振動発生部の作製]
上記のようにして得られた架橋ポリロタキサンゲル1〜5を用いて図1に示す振動発生部を作製した。
まず、架橋ポリロタキサンゲル(高分子薄膜)101として上記のとおり得られた架橋ポリロタキサンゲル1〜3を厚さ0.5mm、幅4mm、長さ8mmの短冊状に切り取り、純水で1日膨潤させた後、試料片の上下面において端部から2mm幅(L1)の部分を以下の方法(金を用いた無電解メッキ法による金メッキ)により電極化し、1対の電圧印加用電極103、105を架橋ポリロタキサンゲル101に付与した。電圧印加用電極103、105の厚さは1ミクロン(μm)である。
金を用いた無電解メッキ法による金メッキは、上記のようにして得られた架橋ポリロタキサンゲル1〜5を基材としこれに対し、金フェナントロリン錯体溶液(2〜10g/L)中に室温下で基材の上下表面において同じ端部から1mm幅の部分をそれぞれ6時間浸漬した。還元液として、アスコルビン酸ナトリウム水溶液(4〜6mM)を50mL程度作製し、40℃の金フェナントロリン錯体溶液に5mL加えた。その後30分かけて5℃昇温した時点で還元液を5mL加えた。同様の添加を反応液が60℃に達するまで行い、液温が60℃に達した時点で生成したメッキ液をすべて投入し、2時間ほど還元反応を進行させた。生成したメッキ膜を蒸留水で洗浄し、再びメッキ溶液に浸透させた。この操作を3回繰り返すことにより、金メッキした架橋ポリロタキサンゲル(振動発生部)を得た。得られた振動発生部を振動発生部1〜5とする。
【0048】
上記のようにして得られた振動発生部1〜3(電極システム)を用いて高分子薄膜の電場応答性を調べた。
[振動数、変位の測定]
得られた振動発生部1〜3に+3Vの直流電圧を印加し、レーザー変位計(SUNX社製 ANR1257)を用いて、固定端から4mmの位置の変位と振動数を測定した。
図1に示す振動発生部(電極システム)として上記のとおり製造した振動発生部1〜3を用い、架橋ポリロタキサンゲルのヤング率と振動数および変位の関係を調べた。架橋ポリロタキサンゲルのヤング率、振動発生部1〜3の振動数および変位の関係を第1表に示す。
【0049】
【表1】

なお架橋ポリロタキサン4および振動発生部4のヤング率は14.7kPaであり、架橋ポリロタキサン5および振動発生部5のヤング率は23.8kPaであった。
また第1表においてポリロタキサン使用量は各架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用されたポリロタキサン1の量である。第2表〜第4表についても同様である。
【0050】
第1表に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用せず架橋ポリロタキサンゲル以外の材料(一般的なハイドロゲル、オルガノゲル、イオン性架橋ポリロタキサンゲル)を用いたサンプル(比較例1〜3)ではいずれのサンプルも電圧を印加しても振動現象は認められなかった。
これに対して、実施例1〜3(ヤング率が30kPa以下の架橋ポリロタキサンゲルを使用する振動発生部)は、電圧の印加によって振動することができる。またこれらの振動発生部は、振動数が0.4Hz以上100Hz以下で、かつ、変位の変化量が0.01mm以上の値を満たすことができ、タッチパネルに使用される振動発生部として特に好適である。
また第1表に示す結果から、架橋ポリロタキサンゲルのヤング率が大きくなるほど(架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度が大きくなるほど)、(データはないが初めは振動数が上昇すると予想されその後)振動数が減少すること、電圧印加前後での変位の変化量が増大しその後減少することを見出した。
【0051】
つづいて、振動発生部2に直流電圧(+3V)を印加した場合の振動回数と変位の変化率(1回目の振動時の変位量に対する2回目以降の変位の変化率)の関係について調査した。結果を図2に示す。図2は振動発生部2の振動回数と変位の変化率との関係を示すグラフである。図2に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用する振動発生部は振動回数が増えても変位の変化率の低下が認められなかった。このことから、架橋ポリロタキサンゲルが繰り返し特性に優れていることが示された。PVAゲル、シリコーンゲルは電圧を印加しても振動現象は認められなかった。
【0052】
[触感呈示型の入力デバイスへの適用(その1)]
図3に示す振動発生部(電極システム)を用いて図5に示すタッチパネルを作製しこれを用いて図4に示す入力デバイスを作製し、その電場応答性を調べた。
測定には、上記のとおり得られた架橋ポリロタキサンゲル1、2(高分子薄膜)を厚さ0.5mm、幅100mm、長さ100mmの短冊状に切り取り、純水で1日膨潤させた後、幅1mmの複数の電圧印加用電極を1mm間隔で高分子薄膜の表面と裏面に90度ずれるように上述のメッキ手法により電極化し、振動発生部を製造した。得られた振動発生部を振動発生部4〜5とする。得られた振動発生部4、5を用いて入力デバイスを作製し、これに+3Vの直流電圧を印加したときに実際の指に感じるフィードバックの触感の有無を調べた。結果を第2表に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
第2表に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用せず架橋ポリロタキサンゲル以外の材料を使用する比較例4〜6はいずれのサンプルもフィードバックの触感は得られなかった。
これに対して実施例4、5は良好なフィードバックの触感が得られた。特に実施例5はその触感が顕著であった。
【0055】
[触感呈示型の入力デバイスへの適用(その2)]
図7に示す振動発生部(電極システム)を用いて図9に示すボタンを作製しこれを用いて図8に示す、タッチパネル、入力デバイスを作製し、その電場応答性を調べた。
測定には、上記のとおり得られた架橋ポリロタキサンゲル1、2(高分子薄膜)を厚さ0.5mm、幅10mm、長さ10mmの短冊状に切り取り、純水で1日膨潤させた後、高分子薄膜の両面を上述のメッキ手法により電極化し、振動発生部を製造した。得られた振動発生部を振動発生部6〜7とする。得られた振動発生部6、7を用いて入力デバイスを作製し、これに+3Vの直流電圧を印加したときに実際の指に感じるフィードバックの触感の有無を調べた。結果を第3表に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
第3表に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用せず架橋ポリロタキサンゲル以外の材料用いた比較例7〜9はいずれのサンプルもフィードバックの触感は得られなかった。
これに対して実施例6、7は良好なフィードバックの触感が得られた。特に実施例7はその触感が顕著であった。
【0058】
[触感呈示型の入力デバイスへの適用(その3)]
図11に示す振動発生部(電極システム)を用いて図12に示すボタンを作製しこれを用いて図13に示すタッチパネル、図8に示す入力デバイスを作製し、その電場応答性を調べた。
測定には、上記のとおり得られた架橋ポリロタキサンゲル1、2(高分子薄膜)を厚さ0.5mm、幅10mm、長さ10mmの短冊状に切り取り、純水で1日膨潤させた後、高分子薄膜にL字型の1対の電圧印加用電極を差し込んで、振動発生部を製造した。本実施例において、架橋ポリロタキサンゲルは符号925の部分である。図11においてL3(1対の電圧印加用電極903、905の間の距離)は1mmである。得られた振動発生部を振動発生部8、9とする。得られた振動発生部8、9を用いて入力デバイスを作製し、これに+3Vの直流電圧を印加したときに実際の指に感じるフィードバックの触感の有無を調べた。結果を第4表に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
第4表に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用せず架橋ポリロタキサンゲル以外の材料を用いた比較例10〜12はいずれのサンプルもフィードバックの触感は得られなかった。
これに対して実施例8、9は良好なフィードバックの触感が得られた。特に実施例9はその触感が顕著であった。
【符号の説明】
【0061】
100、300、415、700、715、915 振動発生部
101、301、701、901、925(901、921、923) 架橋ポリロタキサンゲル
103、105、703、705、903、905 1対の電圧印加用電極
303、305、403、405 電圧印加用電極
107、307、407、707、907 電源
309、409 コントローラ
400、821 タッチパネル
719、935 ボタン
411、911 表示画面
413、713、913 接触検出部
417、717、917 保護シート
500、800 入力デバイス
819、919 隔壁
929 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための電圧印加用電極とを持つ振動発生部を有し、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記振動発生部を振動させることを特徴としたタッチパネル。
【請求項2】
前記振動発生部の初期の弾性率がヤング率として30kPa以下である請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記溶媒が水である請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記印加による振動発生部の振動数が0.4〜100Hzであり、前記印加による振動発生部の変位の変化量が0.01mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記電圧が直流電圧である請求項1〜4のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記架橋ポリロタキサンが、
シクロデキストリン分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接され且つ該シクロデキストリン分子が脱離しないように前記直鎖状分子の両末端にブロック基が配置されるポリロタキサンの少なくとも2分子と、架橋剤とを反応させることによって製造され、
前記ポリロタキサンの量が前記架橋剤1質量部に対して1.5〜8質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記溶媒と前記架橋ポリロタキサンとの質量比(溶媒:架橋ポリロタキサン)が99:1〜70:30である請求項1〜6のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記架橋ポリロタキサンゲルに含有される架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される架橋剤が、アルキレンジオールジグリシジルエーテルである請求項1〜7のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記架橋ポリロタキサンゲルに含有される架橋ポリロタキサンを構成する直鎖状分子の末端が非イオン性のブロック基で封鎖されている請求項1〜8のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記架橋ポリロタキサンゲルのヤング率が30kPa以下である請求項1〜9のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項11】
さらに、操作時の接触を検出する接触検出部を有する請求項1〜10のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項12】
前記振動発生部がシート状であり、さらに、操作時の接触を検出するシート状の接触検出部と、表示画面とを有し、
該シート状の振動発生部と前記シート状の接触検出部とを前記表示画面上に順次積層し、
前記シート状の振動発生部は前記電圧印加用電極を前記架橋ポリロタキサンゲルの表面と裏面とに有し、前記表面および前記裏面において前記電圧印加用電極はそれぞれ複数の帯状に等間隔で設けられ、前記表面における前記電圧印加用電極と前記裏面における前記電圧印加用電極とが90度ずれるものであり、
前記電圧印加用電極は、前記接触に応じて前記振動発生部を部分的に振動させるためのコントローラに接続され、
操作時の接触を前記接触検出部で検出すると前記コントローラによって前記シート状の振動発生部に部分的に直流電流が印加され、前記シート状の振動発生部が部分的に振動することにより感触を操作者にフィードバックすることを特徴とした請求項1〜11のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項13】
前記振動発生部がシート状であり、前記電圧印加用電極が1対の電圧印加用電極であり、前記シート状の振動発生部を複数有し、2つの隣り合う振動発生部の間に隔壁を有し、
該シート状の振動発生部と、隔壁とを、シート状の接触検出部の上に順次配置し、
操作時の接触を前記接触検出部で検出すると前記シート状の振動発生部に直流電流が印加され、前記シート状の振動発生部が振動することにより感触を操作者にフィードバックすることを特徴とした請求項1〜11のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項14】
前記振動発生部がシート状であり、前記シート状の振動発生部を複数有し、2つの隣り合う振動発生部の間に隔壁を有し、
該シート状の振動発生部と、隔壁とを、シート状の接触検出部の上に順次配置し、
前記電圧印加用電極は1対の電圧印加用電極であり、前記1対の電圧印加用電極はそれぞれ垂直方向に平面状の部分を少なくとも有する形状であり、前記シート状の振動発生部は前記1対の電圧印加用電極が有する前記垂直方向に平面状の部分をシート状の架橋ポリロタキサンゲルに対して垂直方向に有し、前記1対の電圧印加用電極の間に前記シート状の架橋ポリロタキサンゲルの少なくとも一部または全部があり、前記1対の電圧印加用電極の間にある架橋ポリロタキサンゲルの表面に突起部を有し、前記1対の電圧印加用電極に前記電圧が印加されると前記振動発生部および前記突起部が振動する請求項1〜11のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項15】
前記シート状の接触検出部の下にさらに表示画面を有する請求項13または14に記載のタッチパネル。
【請求項16】
前記振動発生部の上にさらに保護シートを有する請求項1〜15のいずれかに記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−155683(P2012−155683A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16865(P2011−16865)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【出願人】(505136963)アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】