説明

タンクの液位計測装置

【課題】計測器本体の重心及び浮心位置を適切に設定することで、計測器本体が落下した場合、液中を沈降する計測器本体の液中での沈降姿勢を比較的広い面積の部分が下に向くようにし、沈降速度を遅くすると共に計測器本体がタンク底部に衝突した際の衝撃力を小さくしたタンクの液位計測装置を提供する
【解決手段】タンク1内に索3を介して吊り下げられ、タンク1内の液位を測定するセンサ9を有する計測器本体4と、計測器本体4に備えられ、計測器本体4が落下した場合、この計測器本体4がタンク1内の液体6を沈降する際の速度を減速するための浮力体4aと、計測器本体4に形成された幅広部10及びそれより幅が狭い幅狭部11とを有し、幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の浮心Fまでの距離Aが、幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の重心Gまでの距離Bよりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に索を介して吊り下げられ、タンク内の液位を測定するタンクの液位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、LNG等の液体が収容されたタンク1内の天井部2に、索(ロープ)3を介して、タンク1内の液位を測定するセンサを有する計測器本体4Jを吊り下げた液位計測装置が知られている。センサは、例えば、自身から液面5までの距離を測定する距離センサ等からなり、求めた距離に基づき図示しない演算部によってタンク1内の液位が算出されるようになっている。
【0003】
なお、タンク1の液位計測装置として特許文献1、2等に開示されたものが知られているが、これらは計測器本体をタンク内の天井部に索を介して吊り下げたものではなく本発明と直接的な関係はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−337721号公報
【特許文献2】特開2000−56064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図1にて、計測器本体4Jを吊り下げている索3が調整作業中の作業ミス等で切れる場合があり、計測器本体4Jが落下した場合タンク1内の液体6を沈降する。従来の計測器本体4Jは、その重心及び浮心位置に関し、特に考慮されていなかった。
【0006】
このため、計測器本体4Jは、液体6に落下した後の沈降姿勢が定まらず、その形状や重心及び浮心位置によっては、最も抵抗が少なく速度が高くなる姿勢で沈降したり、タンク底部7に衝突する際に圧力が一点に集中するような姿勢(計測器本体4Jの角部がタンク底部7に衝突する姿勢)で沈降してしまう可能性があった。計測器本体4Jが高速度でタンク底部7に衝突したり、計測器本体4Jの角部がタンク底部7に衝突すると、衝突の際の衝撃力が大きくなり、タンク底部7や計測器本体4Jが損傷する虞がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、計測器本体の重心及び浮心位置を適切に設定することで、計測器本体の液中での沈降姿勢を比較的広い面積の部分が下に向くようにし、沈降速度を遅くすると共に計測器本体がタンク底部に衝突した際の衝撃力を小さくしたタンクの液位計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係るタンクの液位計測装置は、タンク内に索を介して吊り下げられ、タンク内の液位を測定するセンサを有する計測器本体と、該計測器本体に備えられ、上記計測器本体が落下した場合、この計測器本体が上記タンク内の液体を沈降する際の速度を減速するための浮力体と、上記計測器本体に形成された幅広部及びそれより幅が狭い幅狭部とを有し、上記幅広部の外面から上記計測器本体全体の浮心までの距離が、上記幅広部の外面から上記計測器本体全体の重心までの距離よりも長いことを特徴とするものである。
【0009】
上記幅広部の外面が、側面視直線状に形成され、その外面に直交する仮想線上に、上記計測器本体全体の浮心及び重心が配置されていてもよい。
【0010】
上記幅広部の少なくとも外面に、衝撃吸収用パッドが装着されていてもよい。
【0011】
上記計測器本体に、上記重心の真上に位置して、上記索が取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るタンクの液位計測装置によれば、計測器本体の重心及び浮心位置を適切に設定しているので、索が切れた場合、液中を沈降する計測器本体は幅広部が下を向く姿勢となる。よって、抵抗が大きくなって沈降速度が遅くなると共に、タンク底部に対する衝突面積が大きくなって、衝突の際の衝撃力が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】タンク及びその液位計測装置の概要を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るタンクの液位計測装置の説明図である。
【図3】(a)は、図2の液位計測装置の計測器本体が落下した後、計測器本体がタンク内の液中にて回転しつつ沈降する様子を示す説明図であり、(b)は、計測器本体が幅広部が下向きとなった姿勢で沈降し、タンク底部に衝突(着床)する様子を示す説明図である。
【図4】本発明の変形実施形態を示すタンクの液位計測装置の説明図である。
【図5】本発明の別の変形実施形態を示すタンクの液位計測装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1、図2に示すように、本実施形態に係るタンクの液位計測装置8は、タンク(LNGタンク等)1の内部の天井部2に索3を介して吊り下げられ、タンク1内の液位を測定するセンサ9を有する計測器本体4と、計測器本体4に備えられ、計測器本体4が落下した場合、この計測器本体4がタンク1内の液体6を沈降する際の速度を減速するための浮力体4aと、計測器本体4に形成された幅広部10及びそれより幅が狭い幅狭部11とを有する。
【0016】
計測器本体4は、略円柱状に形成されたセンサ保持部4bと、センサ保持部4bの側部に取り付けられた浮力体4aとを有し、側面視略矩形(長方形)の扁平状に形成されており、幅広部10とそれよりも幅が狭い幅狭部11とを有する。なお、計測器本体4の全体形状が幅広部10と幅狭部11とを有する形状であれば、センサ保持部4bと浮力体4aとが一体成形されていてもよく、センサ保持部4bの内部に浮力体4aが収容されていてもよく、センサ保持部4bが角柱状でも構わない。
【0017】
センサ9は、円柱状のセンサ保持部4bの一端に装着されており、例えば、自身から液面5までの距離を測定する距離センサ等からなる。センサ9で求めた距離は、図示しない演算部に送信され、予め求めておいたセンサ9からタンク底部7までの距離からセンサ9で求めた距離を減ずることで、タンク1内の液位が算出されるようになっている。
【0018】
浮力体4aは、内部に気室が形成されるように水密にセンサ保持部4bに取り付けられた殻体12を有する。なお、殻体12の内部に補強用のフレームを骨組状に設けてもよい。また、タンク1内の液体6よりも比重の軽い物質(発泡ウレタン、発泡スチロール等)を殻体12の内部に収容して浮力体4bとしてもよい。この場合、殻体12を省略し、発泡ウレタン等の上記物質をセンサ保持部4bの側部に、直接或いは骨組状のフレームに抱き込ませるようにして取り付けてもよい。
【0019】
この液位計測装置8の特徴は、図2に示すように、計測器本体4の幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の浮心Fまでの距離Aが、幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の重心Gまでの距離Bよりも長い点にある。本実施形態では、センサ9等の重量物が収容されたセンサ保持部4bの側部に、中空の或いは発泡ウレタン等の軽量物質を有する浮力体4aを設けることで、計測器本体4全体の重心Gがセンサ保持部4b内に位置し、計測器本体4全体の浮心Fが浮力体4a内に位置することになる。
【0020】
また、計測器本体4には、その重心Gの真上に位置して、索3が取り付けられている。これにより、計測器本体4を索3を介してタンク1内の天井部2に吊り下げた際、計測器本体4が傾かずに鉛直姿勢となって、センサ9が液面5に直角に相対することになり、正確な液位検出が確保される。
【0021】
本実施形態の作用を述べる。
【0022】
計測器本体4をタンク1内の天井部2に吊り下げている索3が何等かの原因で切れた場合、計測器本体4が落下し、タンク1内の液体6中を沈降する。
【0023】
ここで、液体6中を沈降する計測器本体4は、浮心Fの位置が浮力体4a内に有り、重心Gの位置がセンサ保持部4b内に有り、幅広部10の外面10aから浮心Fまでの距離Aが幅広部10の外面10aから重心Gまでの距離Bよりも長いため、図3(a)に示すように、浮心Fに働く浮力F1と重心Gに働く重力G1とにより、幅広部10が下向きとなるようなモーメントMが生じ、回転しつつ沈降し、最終的には、図3(b)に示すように、幅広部10が下を向く横向きの姿勢となって沈降する。
【0024】
幅広部10が下を向く沈降姿勢の計測器本体4は、幅狭部11が下を向く沈降姿勢の場合よりも沈降抵抗が大きくなり、沈降速度が遅くなる。また、この計測器本体4は、浮力体4aを備えているので、浮力体4aを備えていない従来のものと比べて、基本的な沈降速度も減速されている。また、幅広部10が下を向く沈降姿勢の計測器本体4は、タンク底部7に衝突する際、幅広部10が水平に衝突するので、幅狭部11が衝突する場合と比べてタンク底部7に対する衝突面積が大きくなり、衝突の際の衝撃力が分散される。
【0025】
すなわち、タンク1内の液体6中を沈降する計測器本体4は、その重心G及び浮心Fの位置を適切に設定しているので、幅広部10が下向きとなる姿勢で沈降し、比較的大きな沈降抵抗で沈降することが確保されて沈降速度が遅くなり、浮力体4aを備えていることと相俟ってタンク底部7への衝突速度が小さくなり、且つ、比較的面積が大きな幅広部10がタンク底部7に水平に衝突するので、衝突の際の衝撃力が分散される。この結果、計測器本体4がタンク底部7に衝突した際、計測器本体4及びタンク底部7に生じる衝撃力が共に小さくなり、計測器本体4及びタンク底部7の双方の損傷を抑制できる。
【0026】
図4に本発明の変形実施形態を示す。
【0027】
この変形実施形態に係るタンクの液位計測装置8aは、計測器本体4の重心Gの真上に索3が取り付けられていることを含めて、基本的な構成が前実施形態と同様であるので、同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、相違点のみ述べる。
【0028】
この変形実施形態に係る計測器本体4は、幅広部10の外面10aが側面視直線状に形成され、その外面10aに直交する仮想線13上に、計測器本体4全体の浮心F及び重心Gが配置されている。計測器本体4には、PET、フッ素樹脂等の帯電防止剤のコーティングが施される。仮想線13は、計測器本体4の上下方向の中央を横切るように配置されている。この構成によれば、浮心Fに働く浮力F1と重心Gに働く重力G1とが一直線上に反対向きに作用するため、計測器本体4の沈降姿勢は、確実に幅広部10が下を向く水平な横向き姿勢となる。
【0029】
また、計測器本体4の幅広部10の少なくとも外面10aには、衝撃吸収用パッド14(ドットで表す)が装着されている。衝撃吸収用パッド14には、タンク1内の液体6の影響を受けることを防止するためのコーティングが施される。この構成によれば、計測器本体4が幅広部10を下向きとする沈降姿勢でタンク底部7に衝突する際の衝撃が、衝撃吸収用パッド14によって吸収される。なお、この衝撃吸収用パッド14は、図4の変形実施形態にて省略してもよく、図2の実施形態に追加してもよい。
【0030】
この変形実施形態においても、計測器本体4の幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の浮心Fまでの距離Aが、計測器本体4の幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の重心Gまでの距離Bよりも長いので、前実施形態と同様の作用効果を奏することは勿論である。
【0031】
図5に本発明の別の変形実施形態を示す。
【0032】
この変形実施形態に係るタンクの液位計測装置8bは、計測器本体4の重心Gの真上に索3が取り付けられていることを含めて、基本的な構成が最初の実施形態と同様であるので、同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、相違点のみ述べる。
【0033】
この変形実施形態に係る計測器本体4においては、浮力体4aがセンサ保持部4bの内部に収容されている。具体的には、略円柱状の中空のセンサ保持部4bの内部に、一端から他端に架けて仕切壁(図示せず)を設け、その仕切壁で仕切られた一方の部屋にセンサ9等の重量物を収容し、他方の部屋を気室としてそこを浮力体4aとする構成が考えられる。また、仕切壁を設けることなく、略円柱状のセンサ保持部4bを内部が気密となるように形成し、センサ9等の重量物を片側に寄せて収容することで、その反対側のスペース(気室)を浮力体4aとする構成でもよい。また、そのスペースに発泡ウレタン等の軽量物質を充填してもよい。
【0034】
この変形実施形態においても、計測器本体4の幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の浮心Fまでの距離Aが、幅広部10の外面10aから計測器本体4全体の重心Gまでの距離Bよりも長いので、最初の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0035】
なお、図5の実施形態の重心G及び浮心Fの位置を図4の実施形態のように設定してもよく、図5の実施形態に図4の実施形態の衝撃吸収用パッド14を追加してもよい。
【0036】
また、本件は、海上で使用される計測機器や、船舶用試験水槽で使用される計測機器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 タンク
3 索
4 計測器本体
4a 浮力体
6 液体
8 液位計測装置
8a 液位計測装置
8b 液位計測装置
9 センサ
10 幅広部
10a 外面
11 幅狭部
13 仮想線
14 衝撃吸収用パッド
F 浮心
G 重心
A 距離
B 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に索を介して吊り下げられ、タンク内の液位を測定するセンサを有する計測器本体と、
該計測器本体に備えられ、上記計測器本体が落下した場合、上記計測器本体が上記タンク内の液体を沈降する際の速度を減速するための浮力体と、
上記計測器本体に形成された幅広部及びそれより幅が狭い幅狭部とを有し、
上記幅広部の外面から上記計測器本体全体の浮心までの距離が、上記幅広部の外面から上記計測器本体全体の重心までの距離よりも長い
ことを特徴とするタンクの液位計測装置。
【請求項2】
上記幅広部の外面が、側面視直線状に形成され、
上記外面に直交する仮想線上に、上記計測器本体全体の浮心及び重心が配置された請求項1に記載のタンクの液位計測装置。
【請求項3】
上記幅広部の少なくとも外面に、衝撃吸収用パッドが装着された請求項1又は2に記載のタンクの液位計測装置。
【請求項4】
上記計測器本体に、上記重心の真上に位置して、上記索が取り付けられた請求項1〜3いずれかに記載のタンクの液位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−22085(P2011−22085A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169217(P2009−169217)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】