タンクの補強構造及びその構築方法
【課題】補強構造を構築するための作業性に優れると共に、補強構造を効率良く構築することができるタンクの補強構造及びその構築方法を提供する。
【解決手段】タンク10は、底板11の周縁に複数のパネル12が接合された側板13を立設し、その上に屋根板14を被せて水などの流体を貯留するように構成されている。係るタンク10の補強構造では、底板11と屋根板14との間に該屋根板14を支持すべく立設された垂直補強材20と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板13の外側方への変形を防止する水平補強材22と、垂直補強材20及び水平補強材22の交差部間に斜めに配置される斜め補強材25とより構成されるトラス構造体26を前記側板13とは別体で構成されている。そして、該トラス構造体26から少なくとも一部の水平補強材22の延出部22aを側板13に連結して構成されている。
【解決手段】タンク10は、底板11の周縁に複数のパネル12が接合された側板13を立設し、その上に屋根板14を被せて水などの流体を貯留するように構成されている。係るタンク10の補強構造では、底板11と屋根板14との間に該屋根板14を支持すべく立設された垂直補強材20と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板13の外側方への変形を防止する水平補強材22と、垂直補強材20及び水平補強材22の交差部間に斜めに配置される斜め補強材25とより構成されるトラス構造体26を前記側板13とは別体で構成されている。そして、該トラス構造体26から少なくとも一部の水平補強材22の延出部22aを側板13に連結して構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲料水等の流体を収容する大型給水タンクなどとして使用されるタンクの補強構造及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の大型タンクは、例えば1m四方の正方形パネル、縦1m、横2mの長方形パネル又は縦1m、横1.5mの長方形パネルを複数枚溶接して構成されている。係る大型タンクの補強は、タンクの内部において水平補強バーと垂直補強バーとを用いて行われていた。すなわち、各パネルには四辺それぞれに接合用フランジが折曲げ形成され、隣接する接合用フランジがタンク内部において溶接され、対向する接合用フランジ間に水平補強バーが縦横にかつ上下複数段に架設連結されると共に、タンクの底板と屋根板(天井板)との間に垂直補強バーが立設され、前記水平補強バーと連結されている。
【0003】
このような従来の大型タンクの補強構造では、垂直補強バーの長さが一定に設定されているため、大きな水圧を受ける上下方向のスパンが長くなる。その結果、垂直補強バーの剛性を大きくして大重量のものを使用しなければならず、材料費も嵩むという問題があった。そのような欠点を解消するために、本願出願人はタンクの内部補強構造に関する提案を行った(特許文献1を参照)。すなわち、当該タンクの内部補強構造は、タンク内に水平補強バー及び垂直補強バーに加えて、底板と最下部の水平補強バーとの間にトラス式の補強部材を設け、該補強部材の中間部と水平補強バーの水平方向の中間部とを傾斜補強バーで連結したものである。この内部補強構造によれば、上下方向の水圧を分担するスパンが従来のスパンに比べて例えば2分の1になり、トラス式の補強部材の重量を大幅に軽減して材料費を節約することができると共に、溶接作業を容易に行うことができる。
【特許文献1】特開2001−315891号公報(第2頁、第4頁及び第5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1に記載されているタンクの内部補強構造においては、トラス式の補強部材がタンクを形成するパネルに直接設けられていることから、補強構造を構築する場合には水平補強バー、傾斜補強バー等をパネルに溶接する作業など、トラス構造を形成するために必要な作業をタンク内で行わなければならない。そのため、補強構造を構築するための作業性が悪く、補強構造を完成するまでに長時間を要し、効率が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、補強構造を構築するための作業性に優れると共に、補強構造を効率良く構築することができるタンクの補強構造及びその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のタンクの補強構造は、底板の周縁に複数のパネルを接合した側板を立設し、その上に屋根板を被せて流体を貯留するタンクを構成し、該タンクを補強するものである。そして、底板と屋根板との間に該屋根板を支持すべく立設された垂直補強材と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する水平補強材と、前記垂直補強材及び水平補強材の交差部間に斜めに配置される斜め補強材とより構成されるトラス構造体を前記側板とは別体で構成すると共に、該トラス構造体から少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結するように構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のタンクの補強構造は、請求項1に係る発明において、前記パネルの端部にパネルの厚さより幅広の繋ぎプレートを接合し、該繋ぎプレート上に前記延出された水平補強材を載せて接合することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のタンクの補強構造は、請求項1又は請求項2に係る発明において、上部位置と下部位置の水平補強材間に中間水平補強材を配設し、該中間水平補強材及び垂直補強材との交差部と水平補強材及び垂直補強材との交差部間に斜め補強材を配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のタンクの補強構造は、請求項3に係る発明において、前記中間水平補強材及び垂直補強材の交差部から中間水平補強材の内方への延長線上に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する引張補強材を配設したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のタンクの補強構造は、請求項3又は請求項4に係る発明において、前記垂直補強材の水平補強材又は中間水平補強材との交差部には、水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材が接合されるジョイントプレートを接合固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載のタンクの補強構造は、請求項3から請求項5のいずれか1項に係る発明において、前記垂直補強材、水平補強材、中間水平補強材及び斜め補強材をアングル材で構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載のタンクの補強構造の構築方法は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタンクの補強構造を構築する方法であって、前記トラス構造体をタンク外で構築した後、該トラス構造体をタンク内に収容し、延出された水平補強材を側板に連結することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載のタンクの補強構造の構築方法は、請求項7に係る発明において、前記水平補強材を対向するパネル間に架設すると共に、タンク外で構築されるトラス構造体を垂直補強材と斜め補強材とにより構成し、該トラス構造体をタンク内に収容して水平補強材に接合し、少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に係るタンクの補強構造では、底板と屋根板との間に該屋根板を支持すべく立設された垂直補強材と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する水平補強材と、前記垂直補強材及び水平補強材の交差部間に斜めに配置される斜め補強材とよりトラス構造体が構成されている。そして、該トラス構造体は、前記側板とは別体で構成されている。このため、トラス構造体はタンク外で予め構築した後、タンク内に収容することができる。その後、該トラス構造体から少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結することができる。
【0015】
従って、請求項1に記載の発明によれば、補強構造を構築するための作業性に優れると共に、係る補強構造を効率良く構築することができる。
請求項2に係るタンクの補強構造では、パネルの端部にパネルの厚さより幅広の繋ぎプレートを接合し、該繋ぎプレート上に前記延出された水平補強材を載せて接合するものである。このため、請求項1に係る発明の効果に加え、パネルに設けられた繋ぎプレート上に延出された水平補強材を載せて接合することにより、水平補強材をパネルに簡単に接合することができる。
【0016】
請求項3に係るタンクの補強構造では、上部位置と下部位置の水平補強材間に中間水平補強材を配設し、該中間水平補強材及び垂直補強材との交差部と水平補強材及び垂直補強材との交差部間に斜め補強材を配置した。このため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、トラス構造をより密にすることができ、タンクを一層強固に補強することができる。
【0017】
請求項4に係るタンクの補強構造では、中間水平補強材及び垂直補強材の交差部から中間水平補強材の内方への延長線上に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する引張補強材を配設した。そのため、請求項3に係る発明の効果に加えて、側板の外側方への変形をさらに抑制することができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、垂直補強材の水平補強材又は中間水平補強材との交差部には、水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材が接合されるジョイントプレートを接合固定した。従って、請求項3又は請求項4に係る発明の効果に加えて、ジョイントプレートを利用し、垂直補強材に対して水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材を容易に接合させることができる。
【0019】
請求項6に係るタンクの補強構造では、垂直補強材、水平補強材、中間水平補強材及び斜め補強材をアングル材で構成した。このため、請求項3から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、補強材の強度を高めることができ、ひいてはタンクの補強構造を強固なものにすることができる。
【0020】
請求項7に係るタンクの補強構造の構築方法では、トラス構造体をタンク外で構築した後、該トラス構造体をタンク内に収容し、延出された水平補強材を側板に連結するものである。このため、トラス構造体を構成するための溶接等の作業をタンク外で容易に行うことができ、作業性に優れると共に、タンクの補強構造を効率良く構築することができる。
【0021】
請求項8に記載のタンクの補強構造の構築方法では、タンク外で構築されるトラス構造体が垂直補強材と斜め補強材とにより構成されている。そのため、タンク外で構築されるトラス構造体の構造を簡易化することができ、製作を容易にすることができる。そして、該トラス構造体をタンク内に収容して水平補強材に接合し、少なくとも一部の水平補強材の延出部を側板に連結することにより、タンクの補強構造を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良と思われる実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1及び図3に示すように、給水タンク等のタンク10は、底板11の周縁に図4に示すようなパネル12が上下及び左右に溶接されて側板13が立設されると共に、該側板13の上端部に屋根板14が被せられ溶接されて四角箱状に形成されている。本実施形態では、タンク10はパネル12が上下方向の3段に接合された構造が採用されている。パネル12には断面山型状をなす縦リブ15が一定間隔をおいて設けられ、強度向上が図られている。また、各パネル12の上端部には、パネル12の厚さより幅広の断面横L字状をなす繋ぎプレート16が溶接されている。上記底板11、側板13及び屋根板14はステンレス鋼により形成されている。このタンク10内には、飲料水、消火用水、温水、工業用水等の流体が貯留される。該タンク10には、その内部に補強構造が構築されている。
【0023】
図1に示すように、屋根板14の端部は前記パネル12の上端部に固定された繋ぎプレート16上に載せられて溶接されている。また、図5に示すように、屋根板14には一定間隔をおいて断面円弧状をなす突条17が設けられて強度向上が図られると共に、端部には接合用の折曲げ部18が設けられている。この折曲げ部18は、後述する垂直補強材20の上端部に接合された連結金具19に溶接されている。
【0024】
図1に示すように、前記底板11と屋根板14との間には、該屋根板14を支持すべくアングル材(L型鋼)により形成された垂直補強材20が所定間隔をおいて立設されている。該垂直補強材20はタンク10内の外周部に側板13に沿って2列に配設されている。垂直補強材20のうち最も外周側に位置する垂直補強材20は、側板13から所定距離例えば1000mm以下だけ離間した位置に設けられている。垂直補強材20には上下に一定の間隔をおいて正面菱形状、正面五角形状、正面三角形状等の形状をなすジョイントプレート21が溶接されている。
【0025】
係る垂直補強材20のジョイントプレート21には、その高さ方向の1つおきにアングル材により形成された水平補強材22が溶接され、該水平補強材22の間に位置するジョイントプレート21には同じくアングル材により形成された中間水平補強材23が溶接されている。このようにジョイントプレート21は、垂直補強材20と水平補強材22又は中間水平補強材23との交差部に設けられている。本実施形態では、水平補強材22は2つの高さ位置に配設され、中間水平補強材23は3つの高さ位置に配設されている。水平補強材22には、最も外周側に位置する垂直補強材20より外周側へ延出された延出部22aが設けられている。これらの水平補強材22及び中間水平補強材23は、平面から見て縦横に配置されている(図3参照)。
【0026】
タンク10内の内周側に位置する垂直補強材20に溶接されたジョイントプレート21には、引張補強材24が溶接されて水平方向に張設されている。これらの引張補強材24は、水平補強材22及び中間水平補強材23の内方への延長線上に設けられ、側板13が外側方へ傾かないように保持している。図2に示すように、水平補強材22の延出部22aの先端は前記パネル12の上端部に固定された繋ぎプレート16上に載せられて溶接されている。このようにしてタンク10の側板13が水平補強材22に連結されることにより、流体圧に基づく側板13の外側方への変形を防止するようになっている。
【0027】
図1に示すように、前記垂直補強材20に取付けられたジョイントプレート21のうち斜めに対向するジョイントプレート21間には斜め補強材25が溶接され、前記垂直補強材20、水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25によりトラス構造体26が構成されている。すなわち、垂直補強材20、水平補強材22又は中間水平補強材23及び斜め補強材25によって三角形に基づくトラス構造体26が構成され、強度(剛性)の高い構造が形成されている。このトラス構造体26は、前記パネル12を接合して得られた側板13とは別体で構成されている。
【0028】
なお、図3に示すように、タンク10の中央部にはタンク10を2等分に分割する区画壁27が設けられ、2つの貯留室28,29が区画形成されている。これら2つの貯留室28,29に貯留される流体の種類、貯留量などに応じ、2つの貯留室28,29におけるトラス構造体26に基づく補強構造を変更することもできる。
【0029】
次に、上記のように構成されたタンク10の補強構造の構築方法について説明する。
図6に示すように、まず前記トラス構造体26をタンク10外、例えば工場内で構築する。すなわち、各垂直補強材20について高さ方向に所定間隔をおいてジョイントプレート21を溶接する。続いて、これらのジョイントプレート21に対して、水平方向に水平補強材22又は中間水平補強材23、斜め方向に斜め補強材25を配置して溶接する。この場合、水平補強材22には外周側に位置する垂直補強材20より外周側へ一定長さだけ延出する延出部22aを形成する。これらの作業は、予めタンク10外で行うことができるため、タンク10内で行う場合に比べて容易かつ迅速に行うことができる。このようにして、トラス構造体26を構成する。
【0030】
一方、図7に示すように、タンク10の側板13を底板11の周縁において立設する。すなわち、周方向に隣接する複数のパネル12の端部間を溶接すると共に、各パネル12の上端部に繋ぎプレート16を溶接する。さらに、その上に同様にしてパネル12の端部間を溶接し、パネル12上に繋ぎプレート16を溶接する。このようにして、パネル12を上下3段に積み上げて側板13を構成する。なお、このとき、取り外し可能な倒れ防止用の治具を用い、パネル12を底板11に連結しておくことが望ましい。
【0031】
次いで、図8に示すように、前記トラス構造体26をタンク10内に収容する。このとき、水平補強材22の延出部22aはタンク10の側板13の繋ぎプレート16から離間された位置にある。その状態から、トラス構造体26をタンク10内の外周側へ移動させ、水平補強材22の延出部22aを繋ぎプレート16上に載せる。その状態で、水平補強材22の延出部22aを繋ぎプレート16に溶接することにより、トラス構造体26をタンク10の側板13に連結することができる。その後、引張補強材24をタンク10内の内周側に位置する垂直補強材20に設けられたジョイントプレート21に溶接して水平方向に張設する。このようにして、タンク10の補強構造を構築することができる。
【0032】
以上の第1実施形態によって発揮される作用及び効果を以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のタンク10の補強構造では、前記垂直補強材20と、該垂直補強材20に連結される水平補強材22と、斜め補強材25とよりトラス構造体26が構成され、該トラス構造体26が前記側板13とは別体で独立して構成されている。このため、トラス構造体26を予めタンク10外でタンク10の制約を受けることなく、速やかに構築した後、タンク10内に収容することができる。そして、該トラス構造体26から少なくとも一部の水平補強材22の延出部22aを側板13に溶接固定することができる。
【0033】
従って、タンク10の補強構造を構築するための作業が極めて容易で作業性に優れると共に、係る補強構造を短時間のうちに効率良く構築することができる。そして、トラス構造体26により、流体圧に基づく側板13の外側方への力を垂直補強材20及び水平補強材22のほかに斜め補強材25に分散させて受けることができ、側板13の外側方への変形を抑えることができるなどタンク10を強固に補強することができる。
【0034】
・ 各パネル12の上端部にパネル12の厚さより幅広の繋ぎプレート16を接合し、該繋ぎプレート16上に水平補強材22の延出部22aを載せて溶接するように構成したことから、水平補強材22を側板13に簡単に接合することができる。
【0035】
・ 上部位置と下部位置の水平補強材22間に中間水平補強材23を配設し、該中間水平補強材23及び垂直補強材20との交差部のジョイントプレート21と水平補強材22及び垂直補強材20との交差部のジョイントプレート21間に斜め補強材25を配置した。この場合、トラス構造体26を構成する三角形をより小さく、密にすることができ、タンク10を一層強固に補強することができる。
【0036】
・ 中間水平補強材23及び垂直補強材20の交差部のジョイントプレート21から中間水平補強材23の内方への延長線上に引張補強材24を配置した。そのため、側板13を内方へ保持する力が増し、流体圧による側板13の外側方への変形をさらに抑制することができる。
【0037】
・ 垂直補強材20の水平補強材22又は中間水平補強材23との交差部には、水平補強材22、中間水平補強材23又は斜め補強材25が接合されるジョイントプレート21を接合固定した。従って、垂直補強材20に接合された面積の広いジョイントプレート21に対して水平補強材22、中間水平補強材23又は斜め補強材25を簡単に溶接することができ、接合を容易かつ速やかに行うことができる。
【0038】
・ 垂直補強材20、水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を断面L型のアングル材で構成したことから、各補強材の強度を高めることができ、ひいてはタンク10の補強構造を強固なものにすることができる。
【0039】
・ また、タンク10の補強構造の構築方法では、トラス構造体26をタンク10外で構築した後、該トラス構造体26をタンク10内に収容し、水平補強材22の延出部22aを側板13に連結するものである。このため、トラス構造体26を構成するための溶接等の作業をタンク10外でタンク10の制約を受けることなく容易に行うことができ、作業性に優れると共に、タンク10の補強構造を短時間で効率良く構築することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図10及び図11に基づいて説明する。なお、この第2実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、同一部分には同一の部材番号を付して説明を省略する。
【0040】
図10及び図11に示すように、水平補強材22は対向するパネル12間に架設され、平面から見て格子状に形成され、かつ上下2段に配設されている。この水平補強材22は最下段には配設されていない。タンク10外で構築されるトラス構造体26は、長い垂直補強材20aと短い垂直補強材20bとの間に4本の斜め補強材25が順に傾斜方向を変えてジョイントプレート21に接合されて構成されている。このトラス構造体26は、長い垂直補強材20a側がパネル12側になるように配設されることから、図10の左端部のトラス構造体26と右端部のトラス構造体26とは左右逆向きに示されている。
【0041】
そして、このトラス構造体26は、図11の二点鎖線に示すように、タンク10内の格子状に配設された水平補強材22の近傍位置に降され、そこから該水平補強材22側へ移動される。このとき、トラス構造体26の垂直補強材20aは、パネル12に設けられた繋ぎプレート16にほぼ接触した状態にある。その状態で、トラス構造体26の各ジョイントプレート21に各水平補強材22が溶接されて接合される。
【0042】
なお、トラス構造体26を形成する短い垂直補強材20bの下端部におけるジョイントプレート21の部分には、延出部22aを有する水平補強材22bが溶接され、その延出部22aの端部がパネル12の繋ぎプレート16上に載せられて溶接される。但し、図10の二点鎖線に示すように、短い垂直補強材20bがタンク10の底板11まで延びている場合には、上記水平補強材22bが省略される。また、図10の二点鎖線に示すように、最下段に水平補強材22が配設されている場合にも、上記水平補強材22bは省略される。
【0043】
上記のように、この第2実施形態によれば、タンク10外で構築されるトラス構造体26が垂直補強材20a、20bと斜め補強材25とにより構成されていることから、タンク10外で構築されるトラス構造体26の構造を簡易化することができ、製作を容易にすることができる。加えて、水平補強材22がタンク10内の対向するパネル12間に架設されていることから、パネル12が倒れるのを防止できると共に、タンク10外で構築されたトラス構造体26をタンク10内に降ろして水平補強材22及びパネル12に接合すればよいため、タンク10の補強構造を容易に構築することができる。
【0044】
なお、前記各実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図9に示すように、中間水平補強材23、該中間水平補強材23が取付けられるジョイントプレート21、さらに該ジョイントプレート21に取付けられる斜め補強材25を省略することができる。そして、これらの斜め補強材25に代えて、水平補強材22が取付けられているジョイントプレート21に斜め補強材25を溶接することができる。加えて、引張補強材24を省略することができる。
【0045】
・ 水平補強材22の延出部22aは、全ての水平補強材22に設ける必要はなく、少なくとも1つすなわち所望の数の水平補強材22に設けることができる。
・ トラス構造体26を構成する水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を取付けるためのジョイントプレート21を省略し、これらの水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を垂直補強材20に直接溶接することも可能である。
【0046】
・ タンク10の側板13は、パネル12を上下方向に2段又は4段以上に接合して構成することもできる。
・ 垂直補強材20、水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を構成するアングル材は、断面L型に限らず、断面凹状、断面H状等の形状であっても差し支えない。
【0047】
・ ジョイントプレート21に対する水平補強材22、中間水平補強材23、斜め補強材25等の接合及び繋ぎプレート16に対する水平補強材22の延出部22aの接合は、溶接のほかに、ボルト、ナットによる締結、リベットによる固定等による方法であってもよい。
【0048】
・ 第1実施形態において、タンク10の内周側に位置する垂直補強材20の下端部、すなわち最下段のジョイントプレート21と底板11との間の垂直補強材20を省略することができる。
【0049】
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
〇 前記トラス構造体は側板から離間した位置にあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタンクの補強構造。このように構成した場合、請求項1から請求項6のいずれかに係る発明の効果に加えて、トラス構造体を構築した後タンク内に収容し、タンクの側板と連結する作業を容易に行うことができる。
【0050】
〇 前記トラス構造体をタンク内に収容した後、パネルの端部に接合された繋ぎプレート上に、延出された水平補強材の延出部を載せて接合することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のタンクの補強構造の構築方法。このように構成した場合、請求項7又は請求項8に係る発明の効果に加えて、水平補強材をパネルに簡単に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態におけるタンクの補強構造を示す縦断面図。
【図2】水平補強材の延出部をタンクの側板に接合する状態を示す部分平断面図。
【図3】タンクの全体を模式的に示す平面図。
【図4】側板を形成するパネルを示す斜視図。
【図5】垂直補強材に対する屋根板の取付構造を示す部分断面図。
【図6】トラス構造体を構築した状態を示す縦断面図。
【図7】底板及び側板を有するタンクを示す縦断面図。
【図8】図7に示すタンク内に図6に示すトラス構造体を収容した状態を示す縦断面図。
【図9】本発明の別例を示す図であって、中間水平補強材等を省略した状態のタンクの補強構造を示す縦断面図。
【図10】第2実施形態におけるタンクの補強構造の構築方法を示すための縦断面を示す説明図。
【図11】第2実施形態におけるタンクの全体を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
【0052】
10…タンク、11…底板、12…パネル、13…側板、14…屋根板、16…繋ぎプレート、20、20a、20b…垂直補強材、21…ジョイントプレート、22、22b…水平補強材、22a…延出部、23…中間水平補強材、24…引張補強材、25…斜め補強材、26…トラス構造体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲料水等の流体を収容する大型給水タンクなどとして使用されるタンクの補強構造及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の大型タンクは、例えば1m四方の正方形パネル、縦1m、横2mの長方形パネル又は縦1m、横1.5mの長方形パネルを複数枚溶接して構成されている。係る大型タンクの補強は、タンクの内部において水平補強バーと垂直補強バーとを用いて行われていた。すなわち、各パネルには四辺それぞれに接合用フランジが折曲げ形成され、隣接する接合用フランジがタンク内部において溶接され、対向する接合用フランジ間に水平補強バーが縦横にかつ上下複数段に架設連結されると共に、タンクの底板と屋根板(天井板)との間に垂直補強バーが立設され、前記水平補強バーと連結されている。
【0003】
このような従来の大型タンクの補強構造では、垂直補強バーの長さが一定に設定されているため、大きな水圧を受ける上下方向のスパンが長くなる。その結果、垂直補強バーの剛性を大きくして大重量のものを使用しなければならず、材料費も嵩むという問題があった。そのような欠点を解消するために、本願出願人はタンクの内部補強構造に関する提案を行った(特許文献1を参照)。すなわち、当該タンクの内部補強構造は、タンク内に水平補強バー及び垂直補強バーに加えて、底板と最下部の水平補強バーとの間にトラス式の補強部材を設け、該補強部材の中間部と水平補強バーの水平方向の中間部とを傾斜補強バーで連結したものである。この内部補強構造によれば、上下方向の水圧を分担するスパンが従来のスパンに比べて例えば2分の1になり、トラス式の補強部材の重量を大幅に軽減して材料費を節約することができると共に、溶接作業を容易に行うことができる。
【特許文献1】特開2001−315891号公報(第2頁、第4頁及び第5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1に記載されているタンクの内部補強構造においては、トラス式の補強部材がタンクを形成するパネルに直接設けられていることから、補強構造を構築する場合には水平補強バー、傾斜補強バー等をパネルに溶接する作業など、トラス構造を形成するために必要な作業をタンク内で行わなければならない。そのため、補強構造を構築するための作業性が悪く、補強構造を完成するまでに長時間を要し、効率が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、補強構造を構築するための作業性に優れると共に、補強構造を効率良く構築することができるタンクの補強構造及びその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のタンクの補強構造は、底板の周縁に複数のパネルを接合した側板を立設し、その上に屋根板を被せて流体を貯留するタンクを構成し、該タンクを補強するものである。そして、底板と屋根板との間に該屋根板を支持すべく立設された垂直補強材と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する水平補強材と、前記垂直補強材及び水平補強材の交差部間に斜めに配置される斜め補強材とより構成されるトラス構造体を前記側板とは別体で構成すると共に、該トラス構造体から少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結するように構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のタンクの補強構造は、請求項1に係る発明において、前記パネルの端部にパネルの厚さより幅広の繋ぎプレートを接合し、該繋ぎプレート上に前記延出された水平補強材を載せて接合することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のタンクの補強構造は、請求項1又は請求項2に係る発明において、上部位置と下部位置の水平補強材間に中間水平補強材を配設し、該中間水平補強材及び垂直補強材との交差部と水平補強材及び垂直補強材との交差部間に斜め補強材を配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のタンクの補強構造は、請求項3に係る発明において、前記中間水平補強材及び垂直補強材の交差部から中間水平補強材の内方への延長線上に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する引張補強材を配設したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のタンクの補強構造は、請求項3又は請求項4に係る発明において、前記垂直補強材の水平補強材又は中間水平補強材との交差部には、水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材が接合されるジョイントプレートを接合固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載のタンクの補強構造は、請求項3から請求項5のいずれか1項に係る発明において、前記垂直補強材、水平補強材、中間水平補強材及び斜め補強材をアングル材で構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載のタンクの補強構造の構築方法は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタンクの補強構造を構築する方法であって、前記トラス構造体をタンク外で構築した後、該トラス構造体をタンク内に収容し、延出された水平補強材を側板に連結することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載のタンクの補強構造の構築方法は、請求項7に係る発明において、前記水平補強材を対向するパネル間に架設すると共に、タンク外で構築されるトラス構造体を垂直補強材と斜め補強材とにより構成し、該トラス構造体をタンク内に収容して水平補強材に接合し、少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に係るタンクの補強構造では、底板と屋根板との間に該屋根板を支持すべく立設された垂直補強材と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する水平補強材と、前記垂直補強材及び水平補強材の交差部間に斜めに配置される斜め補強材とよりトラス構造体が構成されている。そして、該トラス構造体は、前記側板とは別体で構成されている。このため、トラス構造体はタンク外で予め構築した後、タンク内に収容することができる。その後、該トラス構造体から少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結することができる。
【0015】
従って、請求項1に記載の発明によれば、補強構造を構築するための作業性に優れると共に、係る補強構造を効率良く構築することができる。
請求項2に係るタンクの補強構造では、パネルの端部にパネルの厚さより幅広の繋ぎプレートを接合し、該繋ぎプレート上に前記延出された水平補強材を載せて接合するものである。このため、請求項1に係る発明の効果に加え、パネルに設けられた繋ぎプレート上に延出された水平補強材を載せて接合することにより、水平補強材をパネルに簡単に接合することができる。
【0016】
請求項3に係るタンクの補強構造では、上部位置と下部位置の水平補強材間に中間水平補強材を配設し、該中間水平補強材及び垂直補強材との交差部と水平補強材及び垂直補強材との交差部間に斜め補強材を配置した。このため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、トラス構造をより密にすることができ、タンクを一層強固に補強することができる。
【0017】
請求項4に係るタンクの補強構造では、中間水平補強材及び垂直補強材の交差部から中間水平補強材の内方への延長線上に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する引張補強材を配設した。そのため、請求項3に係る発明の効果に加えて、側板の外側方への変形をさらに抑制することができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、垂直補強材の水平補強材又は中間水平補強材との交差部には、水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材が接合されるジョイントプレートを接合固定した。従って、請求項3又は請求項4に係る発明の効果に加えて、ジョイントプレートを利用し、垂直補強材に対して水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材を容易に接合させることができる。
【0019】
請求項6に係るタンクの補強構造では、垂直補強材、水平補強材、中間水平補強材及び斜め補強材をアングル材で構成した。このため、請求項3から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、補強材の強度を高めることができ、ひいてはタンクの補強構造を強固なものにすることができる。
【0020】
請求項7に係るタンクの補強構造の構築方法では、トラス構造体をタンク外で構築した後、該トラス構造体をタンク内に収容し、延出された水平補強材を側板に連結するものである。このため、トラス構造体を構成するための溶接等の作業をタンク外で容易に行うことができ、作業性に優れると共に、タンクの補強構造を効率良く構築することができる。
【0021】
請求項8に記載のタンクの補強構造の構築方法では、タンク外で構築されるトラス構造体が垂直補強材と斜め補強材とにより構成されている。そのため、タンク外で構築されるトラス構造体の構造を簡易化することができ、製作を容易にすることができる。そして、該トラス構造体をタンク内に収容して水平補強材に接合し、少なくとも一部の水平補強材の延出部を側板に連結することにより、タンクの補強構造を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良と思われる実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1及び図3に示すように、給水タンク等のタンク10は、底板11の周縁に図4に示すようなパネル12が上下及び左右に溶接されて側板13が立設されると共に、該側板13の上端部に屋根板14が被せられ溶接されて四角箱状に形成されている。本実施形態では、タンク10はパネル12が上下方向の3段に接合された構造が採用されている。パネル12には断面山型状をなす縦リブ15が一定間隔をおいて設けられ、強度向上が図られている。また、各パネル12の上端部には、パネル12の厚さより幅広の断面横L字状をなす繋ぎプレート16が溶接されている。上記底板11、側板13及び屋根板14はステンレス鋼により形成されている。このタンク10内には、飲料水、消火用水、温水、工業用水等の流体が貯留される。該タンク10には、その内部に補強構造が構築されている。
【0023】
図1に示すように、屋根板14の端部は前記パネル12の上端部に固定された繋ぎプレート16上に載せられて溶接されている。また、図5に示すように、屋根板14には一定間隔をおいて断面円弧状をなす突条17が設けられて強度向上が図られると共に、端部には接合用の折曲げ部18が設けられている。この折曲げ部18は、後述する垂直補強材20の上端部に接合された連結金具19に溶接されている。
【0024】
図1に示すように、前記底板11と屋根板14との間には、該屋根板14を支持すべくアングル材(L型鋼)により形成された垂直補強材20が所定間隔をおいて立設されている。該垂直補強材20はタンク10内の外周部に側板13に沿って2列に配設されている。垂直補強材20のうち最も外周側に位置する垂直補強材20は、側板13から所定距離例えば1000mm以下だけ離間した位置に設けられている。垂直補強材20には上下に一定の間隔をおいて正面菱形状、正面五角形状、正面三角形状等の形状をなすジョイントプレート21が溶接されている。
【0025】
係る垂直補強材20のジョイントプレート21には、その高さ方向の1つおきにアングル材により形成された水平補強材22が溶接され、該水平補強材22の間に位置するジョイントプレート21には同じくアングル材により形成された中間水平補強材23が溶接されている。このようにジョイントプレート21は、垂直補強材20と水平補強材22又は中間水平補強材23との交差部に設けられている。本実施形態では、水平補強材22は2つの高さ位置に配設され、中間水平補強材23は3つの高さ位置に配設されている。水平補強材22には、最も外周側に位置する垂直補強材20より外周側へ延出された延出部22aが設けられている。これらの水平補強材22及び中間水平補強材23は、平面から見て縦横に配置されている(図3参照)。
【0026】
タンク10内の内周側に位置する垂直補強材20に溶接されたジョイントプレート21には、引張補強材24が溶接されて水平方向に張設されている。これらの引張補強材24は、水平補強材22及び中間水平補強材23の内方への延長線上に設けられ、側板13が外側方へ傾かないように保持している。図2に示すように、水平補強材22の延出部22aの先端は前記パネル12の上端部に固定された繋ぎプレート16上に載せられて溶接されている。このようにしてタンク10の側板13が水平補強材22に連結されることにより、流体圧に基づく側板13の外側方への変形を防止するようになっている。
【0027】
図1に示すように、前記垂直補強材20に取付けられたジョイントプレート21のうち斜めに対向するジョイントプレート21間には斜め補強材25が溶接され、前記垂直補強材20、水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25によりトラス構造体26が構成されている。すなわち、垂直補強材20、水平補強材22又は中間水平補強材23及び斜め補強材25によって三角形に基づくトラス構造体26が構成され、強度(剛性)の高い構造が形成されている。このトラス構造体26は、前記パネル12を接合して得られた側板13とは別体で構成されている。
【0028】
なお、図3に示すように、タンク10の中央部にはタンク10を2等分に分割する区画壁27が設けられ、2つの貯留室28,29が区画形成されている。これら2つの貯留室28,29に貯留される流体の種類、貯留量などに応じ、2つの貯留室28,29におけるトラス構造体26に基づく補強構造を変更することもできる。
【0029】
次に、上記のように構成されたタンク10の補強構造の構築方法について説明する。
図6に示すように、まず前記トラス構造体26をタンク10外、例えば工場内で構築する。すなわち、各垂直補強材20について高さ方向に所定間隔をおいてジョイントプレート21を溶接する。続いて、これらのジョイントプレート21に対して、水平方向に水平補強材22又は中間水平補強材23、斜め方向に斜め補強材25を配置して溶接する。この場合、水平補強材22には外周側に位置する垂直補強材20より外周側へ一定長さだけ延出する延出部22aを形成する。これらの作業は、予めタンク10外で行うことができるため、タンク10内で行う場合に比べて容易かつ迅速に行うことができる。このようにして、トラス構造体26を構成する。
【0030】
一方、図7に示すように、タンク10の側板13を底板11の周縁において立設する。すなわち、周方向に隣接する複数のパネル12の端部間を溶接すると共に、各パネル12の上端部に繋ぎプレート16を溶接する。さらに、その上に同様にしてパネル12の端部間を溶接し、パネル12上に繋ぎプレート16を溶接する。このようにして、パネル12を上下3段に積み上げて側板13を構成する。なお、このとき、取り外し可能な倒れ防止用の治具を用い、パネル12を底板11に連結しておくことが望ましい。
【0031】
次いで、図8に示すように、前記トラス構造体26をタンク10内に収容する。このとき、水平補強材22の延出部22aはタンク10の側板13の繋ぎプレート16から離間された位置にある。その状態から、トラス構造体26をタンク10内の外周側へ移動させ、水平補強材22の延出部22aを繋ぎプレート16上に載せる。その状態で、水平補強材22の延出部22aを繋ぎプレート16に溶接することにより、トラス構造体26をタンク10の側板13に連結することができる。その後、引張補強材24をタンク10内の内周側に位置する垂直補強材20に設けられたジョイントプレート21に溶接して水平方向に張設する。このようにして、タンク10の補強構造を構築することができる。
【0032】
以上の第1実施形態によって発揮される作用及び効果を以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のタンク10の補強構造では、前記垂直補強材20と、該垂直補強材20に連結される水平補強材22と、斜め補強材25とよりトラス構造体26が構成され、該トラス構造体26が前記側板13とは別体で独立して構成されている。このため、トラス構造体26を予めタンク10外でタンク10の制約を受けることなく、速やかに構築した後、タンク10内に収容することができる。そして、該トラス構造体26から少なくとも一部の水平補強材22の延出部22aを側板13に溶接固定することができる。
【0033】
従って、タンク10の補強構造を構築するための作業が極めて容易で作業性に優れると共に、係る補強構造を短時間のうちに効率良く構築することができる。そして、トラス構造体26により、流体圧に基づく側板13の外側方への力を垂直補強材20及び水平補強材22のほかに斜め補強材25に分散させて受けることができ、側板13の外側方への変形を抑えることができるなどタンク10を強固に補強することができる。
【0034】
・ 各パネル12の上端部にパネル12の厚さより幅広の繋ぎプレート16を接合し、該繋ぎプレート16上に水平補強材22の延出部22aを載せて溶接するように構成したことから、水平補強材22を側板13に簡単に接合することができる。
【0035】
・ 上部位置と下部位置の水平補強材22間に中間水平補強材23を配設し、該中間水平補強材23及び垂直補強材20との交差部のジョイントプレート21と水平補強材22及び垂直補強材20との交差部のジョイントプレート21間に斜め補強材25を配置した。この場合、トラス構造体26を構成する三角形をより小さく、密にすることができ、タンク10を一層強固に補強することができる。
【0036】
・ 中間水平補強材23及び垂直補強材20の交差部のジョイントプレート21から中間水平補強材23の内方への延長線上に引張補強材24を配置した。そのため、側板13を内方へ保持する力が増し、流体圧による側板13の外側方への変形をさらに抑制することができる。
【0037】
・ 垂直補強材20の水平補強材22又は中間水平補強材23との交差部には、水平補強材22、中間水平補強材23又は斜め補強材25が接合されるジョイントプレート21を接合固定した。従って、垂直補強材20に接合された面積の広いジョイントプレート21に対して水平補強材22、中間水平補強材23又は斜め補強材25を簡単に溶接することができ、接合を容易かつ速やかに行うことができる。
【0038】
・ 垂直補強材20、水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を断面L型のアングル材で構成したことから、各補強材の強度を高めることができ、ひいてはタンク10の補強構造を強固なものにすることができる。
【0039】
・ また、タンク10の補強構造の構築方法では、トラス構造体26をタンク10外で構築した後、該トラス構造体26をタンク10内に収容し、水平補強材22の延出部22aを側板13に連結するものである。このため、トラス構造体26を構成するための溶接等の作業をタンク10外でタンク10の制約を受けることなく容易に行うことができ、作業性に優れると共に、タンク10の補強構造を短時間で効率良く構築することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図10及び図11に基づいて説明する。なお、この第2実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、同一部分には同一の部材番号を付して説明を省略する。
【0040】
図10及び図11に示すように、水平補強材22は対向するパネル12間に架設され、平面から見て格子状に形成され、かつ上下2段に配設されている。この水平補強材22は最下段には配設されていない。タンク10外で構築されるトラス構造体26は、長い垂直補強材20aと短い垂直補強材20bとの間に4本の斜め補強材25が順に傾斜方向を変えてジョイントプレート21に接合されて構成されている。このトラス構造体26は、長い垂直補強材20a側がパネル12側になるように配設されることから、図10の左端部のトラス構造体26と右端部のトラス構造体26とは左右逆向きに示されている。
【0041】
そして、このトラス構造体26は、図11の二点鎖線に示すように、タンク10内の格子状に配設された水平補強材22の近傍位置に降され、そこから該水平補強材22側へ移動される。このとき、トラス構造体26の垂直補強材20aは、パネル12に設けられた繋ぎプレート16にほぼ接触した状態にある。その状態で、トラス構造体26の各ジョイントプレート21に各水平補強材22が溶接されて接合される。
【0042】
なお、トラス構造体26を形成する短い垂直補強材20bの下端部におけるジョイントプレート21の部分には、延出部22aを有する水平補強材22bが溶接され、その延出部22aの端部がパネル12の繋ぎプレート16上に載せられて溶接される。但し、図10の二点鎖線に示すように、短い垂直補強材20bがタンク10の底板11まで延びている場合には、上記水平補強材22bが省略される。また、図10の二点鎖線に示すように、最下段に水平補強材22が配設されている場合にも、上記水平補強材22bは省略される。
【0043】
上記のように、この第2実施形態によれば、タンク10外で構築されるトラス構造体26が垂直補強材20a、20bと斜め補強材25とにより構成されていることから、タンク10外で構築されるトラス構造体26の構造を簡易化することができ、製作を容易にすることができる。加えて、水平補強材22がタンク10内の対向するパネル12間に架設されていることから、パネル12が倒れるのを防止できると共に、タンク10外で構築されたトラス構造体26をタンク10内に降ろして水平補強材22及びパネル12に接合すればよいため、タンク10の補強構造を容易に構築することができる。
【0044】
なお、前記各実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図9に示すように、中間水平補強材23、該中間水平補強材23が取付けられるジョイントプレート21、さらに該ジョイントプレート21に取付けられる斜め補強材25を省略することができる。そして、これらの斜め補強材25に代えて、水平補強材22が取付けられているジョイントプレート21に斜め補強材25を溶接することができる。加えて、引張補強材24を省略することができる。
【0045】
・ 水平補強材22の延出部22aは、全ての水平補強材22に設ける必要はなく、少なくとも1つすなわち所望の数の水平補強材22に設けることができる。
・ トラス構造体26を構成する水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を取付けるためのジョイントプレート21を省略し、これらの水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を垂直補強材20に直接溶接することも可能である。
【0046】
・ タンク10の側板13は、パネル12を上下方向に2段又は4段以上に接合して構成することもできる。
・ 垂直補強材20、水平補強材22、中間水平補強材23及び斜め補強材25を構成するアングル材は、断面L型に限らず、断面凹状、断面H状等の形状であっても差し支えない。
【0047】
・ ジョイントプレート21に対する水平補強材22、中間水平補強材23、斜め補強材25等の接合及び繋ぎプレート16に対する水平補強材22の延出部22aの接合は、溶接のほかに、ボルト、ナットによる締結、リベットによる固定等による方法であってもよい。
【0048】
・ 第1実施形態において、タンク10の内周側に位置する垂直補強材20の下端部、すなわち最下段のジョイントプレート21と底板11との間の垂直補強材20を省略することができる。
【0049】
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
〇 前記トラス構造体は側板から離間した位置にあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタンクの補強構造。このように構成した場合、請求項1から請求項6のいずれかに係る発明の効果に加えて、トラス構造体を構築した後タンク内に収容し、タンクの側板と連結する作業を容易に行うことができる。
【0050】
〇 前記トラス構造体をタンク内に収容した後、パネルの端部に接合された繋ぎプレート上に、延出された水平補強材の延出部を載せて接合することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のタンクの補強構造の構築方法。このように構成した場合、請求項7又は請求項8に係る発明の効果に加えて、水平補強材をパネルに簡単に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態におけるタンクの補強構造を示す縦断面図。
【図2】水平補強材の延出部をタンクの側板に接合する状態を示す部分平断面図。
【図3】タンクの全体を模式的に示す平面図。
【図4】側板を形成するパネルを示す斜視図。
【図5】垂直補強材に対する屋根板の取付構造を示す部分断面図。
【図6】トラス構造体を構築した状態を示す縦断面図。
【図7】底板及び側板を有するタンクを示す縦断面図。
【図8】図7に示すタンク内に図6に示すトラス構造体を収容した状態を示す縦断面図。
【図9】本発明の別例を示す図であって、中間水平補強材等を省略した状態のタンクの補強構造を示す縦断面図。
【図10】第2実施形態におけるタンクの補強構造の構築方法を示すための縦断面を示す説明図。
【図11】第2実施形態におけるタンクの全体を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
【0052】
10…タンク、11…底板、12…パネル、13…側板、14…屋根板、16…繋ぎプレート、20、20a、20b…垂直補強材、21…ジョイントプレート、22、22b…水平補強材、22a…延出部、23…中間水平補強材、24…引張補強材、25…斜め補強材、26…トラス構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板の周縁に複数のパネルを接合した側板を立設し、その上に屋根板を被せて流体を貯留するタンクを構成し、該タンクを補強するタンクの補強構造であって、
前記底板と屋根板との間に該屋根板を支持すべく立設された垂直補強材と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する水平補強材と、前記垂直補強材及び水平補強材の交差部間に斜めに配置される斜め補強材とより構成されるトラス構造体を前記側板とは別体で構成すると共に、該トラス構造体から少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結するように構成したことを特徴とするタンクの補強構造。
【請求項2】
前記パネルの端部にパネルの厚さより幅広の繋ぎプレートを接合し、該繋ぎプレート上に前記延出された水平補強材を載せて接合することを特徴とする請求項1に記載のタンクの補強構造。
【請求項3】
上部位置と下部位置の水平補強材間に中間水平補強材を配設し、該中間水平補強材及び垂直補強材との交差部と水平補強材及び垂直補強材との交差部間に斜め補強材を配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタンクの補強構造。
【請求項4】
前記中間水平補強材及び垂直補強材の交差部から中間水平補強材の内方への延長線上に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する引張補強材を配設したことを特徴とする請求項3に記載のタンクの補強構造。
【請求項5】
前記垂直補強材の水平補強材又は中間水平補強材との交差部には、水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材が接合されるジョイントプレートを接合固定したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のタンクの補強構造。
【請求項6】
前記垂直補強材、水平補強材、中間水平補強材及び斜め補強材をアングル材で構成したことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のタンクの補強構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタンクの補強構造を構築する方法であって、前記トラス構造体をタンク外で構築した後、該トラス構造体をタンク内に収容し、延出された水平補強材を側板に連結することを特徴とするタンクの補強構造の構築方法。
【請求項8】
前記水平補強材を対向するパネル間に架設すると共に、タンク外で構築されるトラス構造体を垂直補強材と斜め補強材とにより構成し、該トラス構造体をタンク内に収容して水平補強材に接合し、少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結することを特徴とする請求項7に記載のタンクの補強構造の構築方法。
【請求項1】
底板の周縁に複数のパネルを接合した側板を立設し、その上に屋根板を被せて流体を貯留するタンクを構成し、該タンクを補強するタンクの補強構造であって、
前記底板と屋根板との間に該屋根板を支持すべく立設された垂直補強材と、平面から見て縦横に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する水平補強材と、前記垂直補強材及び水平補強材の交差部間に斜めに配置される斜め補強材とより構成されるトラス構造体を前記側板とは別体で構成すると共に、該トラス構造体から少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結するように構成したことを特徴とするタンクの補強構造。
【請求項2】
前記パネルの端部にパネルの厚さより幅広の繋ぎプレートを接合し、該繋ぎプレート上に前記延出された水平補強材を載せて接合することを特徴とする請求項1に記載のタンクの補強構造。
【請求項3】
上部位置と下部位置の水平補強材間に中間水平補強材を配設し、該中間水平補強材及び垂直補強材との交差部と水平補強材及び垂直補強材との交差部間に斜め補強材を配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタンクの補強構造。
【請求項4】
前記中間水平補強材及び垂直補強材の交差部から中間水平補強材の内方への延長線上に配置され、流体圧により側板の外側方への変形を防止する引張補強材を配設したことを特徴とする請求項3に記載のタンクの補強構造。
【請求項5】
前記垂直補強材の水平補強材又は中間水平補強材との交差部には、水平補強材、中間水平補強材又は斜め補強材が接合されるジョイントプレートを接合固定したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のタンクの補強構造。
【請求項6】
前記垂直補強材、水平補強材、中間水平補強材及び斜め補強材をアングル材で構成したことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のタンクの補強構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタンクの補強構造を構築する方法であって、前記トラス構造体をタンク外で構築した後、該トラス構造体をタンク内に収容し、延出された水平補強材を側板に連結することを特徴とするタンクの補強構造の構築方法。
【請求項8】
前記水平補強材を対向するパネル間に架設すると共に、タンク外で構築されるトラス構造体を垂直補強材と斜め補強材とにより構成し、該トラス構造体をタンク内に収容して水平補強材に接合し、少なくとも一部の水平補強材を延出した延出部を側板に連結することを特徴とする請求項7に記載のタンクの補強構造の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−149903(P2010−149903A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331519(P2008−331519)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(396003434)株式会社森松総合研究所 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(396003434)株式会社森松総合研究所 (11)
【Fターム(参考)】
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