説明

タンパク質の単離および精製

宿主細胞において組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)として発現された組換え融合タンパク質を精製するための方法を開示する。この方法では、融合タンパク質を所定の密度を有するRPBLAとして発現させる形質転換宿主細胞の水性ホモジネートを提供する。そのホモジネートにおいて異なる密度の領域を形成して、比較的高濃度のRPBLAを含む領域と比較的低濃度のRPBLAを含む領域を提供する。そのRPBLA低下領域を比較的高濃度のRPBLAの領域から分離し、その結果として前記融合タンパク質を精製する。その後、所望により、比較的高濃度のRPBLAの領域を集めることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、組換えタンパク粒様会合体(recombinant protein bodies-like assemblies、RPBLA)内に蓄積された組換えタンパク質を精製するための方法を提供する。さらに詳しくは、本発明は、所望の組換えタンパク質が濃縮され、他の細胞成分から分離され、容易に回収され得るような密度の差によって他の宿主細胞細胞小器官からの単離を可能にする組換えタンパク粒様会合体内の組換え融合タンパク質の単離を提供する。
【0002】
背景技術
タンパク粒(PB)は、タンパク質の蓄積に特化した細胞内小器官(すなわち、膜で囲まれた直径約1〜3ミクロンの大型小胞)である。それらの細胞内小器官は、種子のような一部の特定植物組織で自然形成され、発芽および苗成長のための主要なアミノ酸源として働く。
【0003】
貯蔵タンパク質は、同時翻訳段階で、シグナルペプチドを介して小胞体(ER)内腔に挿入され、ERまたは液胞のいずれかにパッケージングされ(Galili et al., 1993 Trends Cell Biol. 3:437-443)、(ER)由来のタンパク粒(PB)と呼ばれる特異的細胞小器官が発生するこれらの細胞内区画内またはタンパク質貯蔵液胞(PSV)内でマルチマー単位に会合する(Okita and Rogers, 1996 Annu. Rev. Plant Physiol Mol. Biol. 47:327-350;Herman and Larkins, 1999 Plant Cell 11:601-613;Sanderfoot and Raikel, 1999 Plant Cell 11:629-642)。
【0004】
双子葉植物の貯蔵タンパク質は、主として、7Sグロブリンまたはビシリンタイプのタンパク質、11Sグロブリンまたはレグミンタイプのタンパク質などの可溶性タンパク質であり、PSV内に他のタンパク質(すなわち、プロテアーゼ阻害薬、タンパク質分解酵素、レクチンなど)、糖類および塩類と一緒に隔離される。
【0005】
PSVに対して、PB(1〜3ミクロン)は、主として、穀類の疎水性の極めて強い貯蔵タンパク質(トウモロコシのゼインおよびコムギのグリアジンなど)であるプロラミン類を隔離するが、他の補助タンパク質は隔離しない(Herman and Larkins, 1999 Plant Cell 11:601-613)。
【0006】
現今、ER本体を除く植物種子以外の組織でPBは見つかっていない。ER本体は、サイズが小さく(0.2〜0.4μm)、通常は発生しないが損傷および昆虫による咀嚼によってのみシロイヌナズナ(Arabidopsis)葉で形成される(Matsushima et al., 2003 Plant J. 33:493-502)。
【0007】
植物のPB形成、貯蔵タンパク質の会合およびターゲッティングを研究するために、遺伝子工学アプローチが用いられてきた。組換えタンパク質、主に植物貯蔵タンパク質を発現させ、シロイヌナズナおよびタバコ内にパッケージングさせると、(栄養組織として)PBを含んでいなかった植物組織が、これらの細胞小器官を「デノボ」発生させることが分かった(Bagga et al., 1997 Plant Cell 9:1683-1696およびBagga et al., 1995 Plant Physiol. 107:13-23、および米国特許第5,990,384号、同第5,215,912号、および同第5,589,616号;ならびにGeli et al., 1994 Plant Cell 6:1911-1922)。
【0008】
トウモロコシβ−ゼインは、トランスジェニックタバコ植物で発現させた場合、葉細胞で新たに形成されたER由来PB内で正確にターゲッティングされた(Bagga et al., 1995 Plant Physiol. 107:13-23)。シロイヌナズナ植物で発現させたトウモロコシγ−ゼインおよび末端切断型γ−ゼインcDNAも葉の新規ER由来PB内に蓄積する(Geli et al., 1994 Plant Cell 6:1911-1922)。トウモロコシ胚乳で発現されるリジンリッチγ−ゼイン(Torrent et al. 1997 Plant Mol. Biol. 34(1):139-149)は、トウモロコシPB内に蓄積し、内因性ゼインと共局在する。α−ゼイン遺伝子を発現しているトランスジェニックタバコ植物で、α−ゼインではPBを形成することができないことが証明された。しかしながら、α−ゼインとγ−ゼインが同時発現される場合には、そのα−ゼインの安定性が高まり、両タンパク質がER由来のタンパク粒内に共局在した(Coleman et al., 1996 Plant Cell 8:2335-2345)。新規PBの形成についても、10kDaのメチオニンリッチなδ−ゼインで形質転換したトランスジェニックダイズにおいて記載されている(Bagga et al., 2000 Plant Sci. 150:21-28)。
【0009】
組換え貯蔵タンパク質は、アフリカツメガエル卵母細胞および酵母のような非植物宿主系のPB様細胞小器官内でも会合する。Rosenberg et al., 1993 Plant Physiol 102:61-69 では、酵母におけるコムギγ−グリアジンの発現について報告された。その遺伝子は正確に発現され、そのタンパク質がER由来のPBに蓄積された。Torrent et al., 1994 Planta 192:512-518では、アフリカツメガエル卵母細胞において、γゼインをコードする転写物を卵母細胞にマイクロインジェクションすると、γゼインもPB様細胞小器官に蓄積することが証明された。α−ゼイン(Hurkman et al., 1981 J. Cell Biol. 87:292-299)およびγ−グリアジン(Altschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450)に関しては、アフリカツメガエル卵母細胞において同様の結果を示している。
【0010】
バイオテクノロジー(遺伝子工学)の分野の重要な功績の1つが生物を遺伝子操作して、治療用、栄養補給用または工業用のタンパク質を生産することができることである。細菌、酵母、作物および哺乳類細胞培養物の発酵培養液から組換えタンパク質を生産し、回収する方法が、提供されている。宿主細胞におけるタンパク質の発現については様々なアプローチが記載されている。これらのアプローチの最も重要な目的は、タンパク質の発現レベル、タンパク質の安定性およびタンパク質の回収である(Menkhaus et al., 2004 Biotechnol. Prog. 20: 1001-1014;Evangelista et al., 1998 Biotechnol. Prog. 14:607-614)。
【0011】
タンパク質の回収に関連する問題を解決できる1つの戦略が分泌である。しかしながら、分泌では発現レベルが低く、産物が不安定なことがある。もう1つの戦略は、細胞内の最も有利な位置での組換えタンパク質の蓄積である。この戦略は、テトラペプチド(HDEL/KDEL)のC末端伸長を巧みに操作することにより組換えタンパク質をERに向けることによって広く用いられてきた(Conrad and Fiedler, 1998 Plant Mol. Biol. 38:101-109)。
【0012】
組換えタンパク質をERに向けるための代替アプローチは、植物貯蔵タンパク質含む融合タンパク質または異種タンパク質と融合された貯蔵タンパク質ドメインであった(WO2004003207)。1つの興味深い融合戦略は、植物油体の構成タンパク質であるオレオシンと融合された組換えタンパク質の生産である。油体の特有の性質から、二相系を用いてタンパク質を容易に回収できるという利益が得られる(van Rooijen and Moloney, 1995 Bio/Technology 13:72-77)。
【0013】
異種タンパク質の植物細胞での発現には成功している(総説 Horn et al., 2004 Plant Cell Rep. 22:711-720;Twyman et al., 2003, Trends in Biotechnology 21:570-578;Ma et al., 1995, Science 268: 716-719;Richter et al., 2000 Nat. Biotechnol. 18:1167-1171)が、一部において、組換えタンパク質の発現がER由来のPBまたはPSV(PSV)に向けられてきた。Yang et al., 2003 Planta 216:597-603では、グルテリンおよびグロブリン貯蔵タンパク質の種子特異的プロモーターを用いて、イネ種子においてヒトリゾチームを発現させた。免疫細胞化学的結果により、組換えタンパク質がER−PBに存在し、内因性イネグロブリンおよびグルテリンとともに蓄積することが分かった。トランスジェニックタバコ植物におけるヒトサイトメガロウイルス(hCMV)の糖タンパク質Bの発現は、イネのグルテリンプロモーターを用いて実施された。Tackaberry et al., 1999 Vaccine 17:3020-3029。最近、Arcalis et al., 2004 Plant Physiology 136:1-10では、イネ種子においてC末端伸長(KDEL)を用いてヒト血清アルブミン(HSA)を発現させている。組換えHASは、内因性イネ貯蔵タンパク質とともにPSVに蓄積した。
【0014】
植物をバイオファクトリーとして使用するための1つの障害は、下流プロセスに関してさらに調査を行う必要があることである。植物からのタンパク質の精製は、植物系の複雑性から難題である。抽出物の植物固体は大型で、密度が高く、比較的高い値を示す(9〜20重量%)(総説 Menkhaus et al., 2004 Biotechnol. Prog. 20:1001-1014参照)。現今、組換えタンパク質精製技術では、抽出物の浄化、脂質および色素を除去するための溶媒での処理、およびいくつかのイオン交換クロマトグラフィーカラムおよびゲル濾過クロマトグラフィーカラムによるタンパク質またはペプチドの精製が行われている。現行のプロトコールでは、それぞれの植物宿主系および組換えタンパク質に対して特異的な溶媒または水溶液を使用することに頼っている。当技術分野では、形質転換した宿主から組換えタンパク質を回収するための効率的で一般的な手順が必要である。組換えタンパク質が植物宿主において産生して、それらを単離しなければならないという場合に特にこの必要性がある。宿主およびタンパク質が多様であり、それらの間で物理的−化学的特性が異なることから、組換え産物を濃縮し、回収するために効率的な方法が求められた。以下で開示する本発明は、真菌細胞および哺乳類細胞などの非高等植物生物からの組換え発現タンパク質の回収を容易にし、高めるのための1つの手段を提供する。
【0015】
発明の概要
本発明は、形質転換した宿主から組換えタンパク質を回収するための効率的で一般的な手順または方法を提供する。本明細書において示す解決法は、密度に基づく技術によって、特に、密度クッションまたは密度勾配遠心分離技術によって、思いがけなく高収率で、他の宿主細胞細胞小器官タンパク質からの組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)の単離を行うことができるという発見に基づく。
【0016】
さらに詳しくは、本発明は、宿主細胞においてRPBLAとして発現される組換え融合タンパク質を精製するための方法を意図する。意図される方法によれば、融合タンパク質をRPBLAとして発現させる形質転換宿主細胞の水性ホモジネートを提供する。それらのRPBLAは、所定の密度を有しており、その所定の密度は異なる融合タンパク質間で異なるが、分離する特定の融合タンパク質に関しては分かっている。RPBLAのその所定の密度は、一般に、ホモジネート中に存在する内因性宿主細胞タンパク質の実質的に総てのものより高く、一般に約1.1〜約1.35g/mlである。そのホモジネートにおいて異なる密度の領域が形成され、比較的高濃度(enhanced concentration)のRPBLAを含む領域と比較的低濃度(depleted concentration)のRPBLAを含む領域が提供される。そのRPBLA低下領域が比較的高濃度のRPBLAの領域から分離され、その結果として前記融合タンパク質を精製する。その後、比較的高濃度のRPBLAの領域を集めるか、またはRPBLAまたはその中の融合タンパク質の単離の前に1以上の試薬で処理するか、もしくは1以上の手順に供することができる。
【0017】
好ましい実施において、融合タンパク質は、互いに結合している2つのポリペプチド配列を含み、それらの配列において、1つの配列はタンパク粒誘導配列(PBIS)のものであり、一方、もう1つの配列は薬物分子および酵素などのような目的産物の配列である。好ましいタンパク粒誘導配列は、γ−ゼイン、α−ゼインまたはイネプロラミンなどのプロラミン化合物のものである。
【0018】
本明細書における宿主細胞は、真核細胞(例えば、高等植物、真菌および酵母のもの)、動物細胞(例えば、哺乳類細胞)ならびに藻類細胞である。それらの細胞は、新鮮バイオマスから直接得られるように新鮮細胞であるか、または乾燥バイオマスから得られるように乾燥細胞である;バイオマス、すなわち、生体または細胞から得られる量(例えば、植物葉のような培養培地または生体など)により分かる。
【0019】
本発明はいくつかの利益と利点を有する。
【0020】
1つの利益は、本発明を用いることによって、発現産物の密度の差に基づいて、可溶性細胞材料の残りの部分からの発現タンパク質の比較的単純かつ迅速な精製が可能になるということである。
【0021】
よって、本発明の利点は、本発明が宿主生物および細胞培養物から内因性化合物(すなわち、非組換え産物)を排除するための方法を提供することである。
【0022】
本発明のもう1つの利益は、本発明が新鮮または乾燥バイオマス(宿主生物)から組換えペプチドまたはタンパク質を精製する信頼できる再現性のある方法を提供することである。
【0023】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、一般に、形質転換した生物または細胞培養物から目的の組換えタンパク質およびペプチドを単離および精製するための下流プロセスに関する。さらに詳しくは、本発明は、宿主細胞において組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)として発現され、蓄積する組換え融合タンパク質を精製するための方法を意図する。このRPBLAは、細胞内に高密度蓄積物を形成する貯蔵タンパク質ドメインにより誘導される組換え融合タンパク質会合体である。これらの高密度蓄積物はサイトゾル、エンドメンブレン系細胞小器官(endomenbrane system organelles)、ミトコンドリア、プラスチドに蓄積するかまたは分泌される。意図される方法によれば、融合タンパク質をRPBLAとして発現させる形質転換宿主細胞の水性ホモジネートを提供する。そのホモジネートは使用するために浄化することが好ましい。そのホモジネートにおいて異なる密度の領域を形成して、比較的高濃度のRPBLAを含む領域と比較的低濃度のRPBLAを含む領域を提供する。そのRPBLA低下領域を比較的高濃度のRPBLAの領域から分離し、その結果として前記融合タンパク質を精製する。その後、比較的高濃度のRPBLAの領域を集めるか、またはRPBLAもしくはその中の融合タンパク質の単離の前に1以上の試薬で処理するか、もしくは1以上の手順に供することができる。
【0024】
好ましい実施において、融合タンパク質は、互いに結合している2つのポリペプチド配列を含み、それらの配列において、1つの配列はタンパク粒誘導配列(PBIS)のものであり、一方、もう1つの配列は薬物分子および酵素などのような目的ポリペプチド産物の配列である。好ましいPBISは、γ−ゼイン、α−ゼインまたはイネプロラミンなどのプロラミン化合物のものである。
【0025】
本方法の一態様は、所望の融合タンパク質を組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)として発現させ、蓄積する宿主生物または細胞培養物の水性ホモジネートまたは他の適当な抽出物(本明細書ではまとめてホモジネートと呼ぶ)を提供することを含む。そのホモジネートは、一般に、使用する前に濾過などにより予備浄化(浄化)して、細胞残屑を除去する。融合タンパク質含有タンパク粒様構造(RPBLA)、脂質、可溶性タンパク質、細胞小器官、糖類、色素およびアルカロイド類を含むホモジネートを直接段階密度勾配にかけ、遠心分離などによりその成分の密度に基づいてそのホモジネートを分離する。遠心分離の間にそのホモジネートにおいて異なる密度の領域が形成され、比較的高濃度のRPBLAを含む領域と比較的低濃度のRPBLAを含む領域を提供する。所望の融合タンパク質を含有するRPBLAは、特定の密度相間で集めることができる。この手順は、約80%を上回る純度の発現組換え融合タンパク質の約90%を上回る回収を可能にした。
【0026】
本発明のもう1つの態様は、好ましくは浄化したホモジネートから、一段階密度クッションによりRPBLAを単離するための方法を意図する。この場合、好ましくは浄化したホモジネートを、内因性汚染化合物がその密度クッションを渡らないように特定の密度クッション上に載せ、遠心力で分離し、高密度のRPBLAがそのクッションを渡り、それらを集めることができる。そのホモジネートにおいて、先に述べた異なる密度の領域を形成して、比較的高濃度のRPBLAを含む領域(クッションより下の領域)と比較的低濃度のRPBLAを含む領域(クッションより上の領域)を提供する。上述のように、組換えタンパク粒様会合体の密度は、クッションのものより高い。
【0027】
もう1つの実施形態では、好ましくは浄化したホモジネートは、直接、スクロースまたは他の追加される、密度を与える溶質の不在下で遠心力で分離される。この場合も、遠心分離により、そのホモジネートにおいて異なる密度の領域が形成され、比較的高濃度のRPBLAを含む領域(ペレット)と比較的低濃度のRPBLAを含む領域(上清)が提供される。その後、RPBLAを分離して、RPBLAを精製し、その結果として融合タンパク質を提供することができる。
【0028】
本発明は、形質転換宿主細胞で形成された細胞小器官であるRPBLA内で発現された組換えペプチドまたはタンパク質を回収するための方法を提供する。この場合、宿主細胞は、真核細胞(例えば、高等植物、酵母および真菌のもの)、動物細胞(例えば、哺乳類培養細胞、トランスジェニック動物、動物卵などの細胞)ならびに藻類細胞である。それらの細胞は、植物葉または動物などの培養培地または生体から直接得られるように新鮮細胞であるか、または乾燥細胞である。
【0029】
組換えタンパク粒様会合体は、異なる融合タンパク質によって違った所定の密度を有するが、分離する特定の融合タンパク質に関しては分かっている。RPBLAのその所定の密度は、一般に、ホモジネート中に存在する内因性宿主細胞タンパク質の実質的に総てのものより高く、一般に約1.1〜約1.35g/mlである。新規RPBLAの高密度は、組換え融合タンパク質の、マルチマーとして会合し、蓄積する一般能力によるものである。
【0030】
意図されるRPBLAは、真核生物において発現させ、一般に、上述のようにそれらの密度により特徴付けられる。高等植物および動物細胞で発現させた場合、RPBLAは、一般に、膜で囲まれた直径約1ミクロン(μ)の球形である。
【0031】
融合タンパク質は、それらの密度により分離され、それらの密度はトランスフェクトした細胞に存在する他のいずれのタンパク質のものよりも高い傾向がある。密度によるその分離は、一般に、世界を通じて生化学研究室でよく見られるような遠心機を使用することにより行われる。例示的な市販の遠心機は、Beckman社製Coulter Avanti(商標)モデルJ−25であり、以下ではこの遠心機をワンクッション試験および直接遠心分離に使用する。勾配研究では、Beckman社製Coulter Optima(商標)XL−100K超遠心機(ローターSW41Ti)を使用した。遠心分離は、多くの場合、追加される、塩化セシウムのような塩またはスクロースのような糖などの密度差を与える溶質の存在下で行われる。ホモジネートと密度差を与える溶質は合わさり、ホモジネート−溶質混合物が生じる。
【0032】
特定の実施形態では、組換え融合タンパク質は、ペプチド結合により目的の産物(例えば、ペプチドまたはタンパク質)(標的)に連結されたタンパク粒誘導配列(PBIS)を含んでなるか、または好ましくは、そのようなPBISでできている。PBISは、タンパク質の侵入および/またはRPBLAの蓄積を媒介するタンパク質またはアミノ酸配列である。PBISの例示的な、限定されない例としては、例えば、プロラミン類または修飾プロラミン類またはプロラミンドメインのように、貯蔵タンパク質または修飾貯蔵タンパク質が挙げられる。プロラミン類については、Shewry et al., 2002 J. Exp. Bot. 53(370) :947- 958に概説されている。
【0033】
トウモロコシ貯蔵タンパク質であるγ−ゼイン(このDNA配列およびアミノ酸残基配列は以下に示す)は、4種類のトウモロコシプロラミンの1つであり、トウモロコシ胚乳における総タンパク質の10〜15%である。他の穀類プロラミンとしてのα−およびγ−ゼインは、粗面ERの細胞質側の膜結合ポリソームで生合成され、内腔内に集められた後、ER由来のPB内に隔離される(Herman et al., 1999 Plant Cell 11:601-613;Ludevid et al., 1984 Plant Mol. Biol. 3:277-234;Torrent et al., 1986 Plant Mol. Biol. 7:93-403)。
【0034】
γ−ゼインは、4つの特徴的などメイン、i)19アミノ酸のペプチドシグナル、ii)ヘキサペプチド PPPVHLの8個の単位を含む繰り返しドメイン(配列番号1)(53 aa)、iii)プロリン残基が他のアミノ酸に代わったProXドメイン(29 aa)およびiv)疎水性システインリッチC末端ドメイン(111 aa)、で構成されている。
【0035】
γ−ゼインがER由来のタンパク粒(PB)に会合する能力は、種子に限定されない。実際に、γ−ゼイン遺伝子がトランスジェニックシロイヌナズナ植物で構成的に発現されると、貯蔵タンパク質は葉の葉肉細胞のER由来の組換えPB内に蓄積した(Geli et al., 1994 Plant Cell 6:1911-1922)。ER由来のPBへのγ−ゼインの蓄積に関与するシグナル(プロラミン類にはKDELシグナルはない)を探した際に、タンデムリピートドメインを含むプロリンリッチN末端ドメインがER保持に必要であり、C末端ドメインがPB形成に関与することが示された。しかしながら、これらのドメインがPB会合を促進する機構はまだ分かっていない。タンパク粒と呼ぶのが適切なのは種子においてのみであり、他の植物器官および非高等植物で生成される類似構造物は、一般に、組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)と呼ばれる。
【0036】
例示的な、他の有用なプロラミンタイプの配列をそれらのGenBankIDとともに以下の表に示す。
【表1】

さらに有用な配列は、Altschul et al., 1997 Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載のとおりに、配列番号2(RX3タンパク質配列)、配列番号3(α−ゼインタンパク質配列)、配列番号4(イネプロラミンタンパク質配列)などのクエリーを用いて、all non-redundant GenBank CDS translations+PDB+SwissProt+PIR+PRF(環境サンプルを除く)データベース内のBLAST検索を行うことによって得られる。
【0037】
例示的な修飾プロラミンは、(a)シグナルペプチド配列、(b)タンパク質γ−ゼインの繰り返しドメイン ヘキサペプチド PPPVHL(配列番号1)の1以上のコピーからなる配列(全ドメインには8個のヘキサペプチド単位が含まれる);および(c)γ−ゼインのProXドメインの全部または一部からなる配列、を含む。例示的な特異的修飾プロラミンとしては、以下でR3、RX3およびP4と表示されるポリペプチド(これらのDNA配列およびアミノ酸残基配列も以下に示す)が挙げられる。
【0038】
特に好ましいプロラミンとしては、WO2004003207に開示されているようなγ−ゼインおよびその構成部分、イネrP13タンパク質ならびに22kDaのトウモロコシα−ゼインN末端断片が挙げられる。γ−ゼイン(27kD)、イネおよびα−ゼインタンパク質のDNA配列およびアミノ酸残基配列は、配列番号5(DNA配列)および配列番号6(タンパク質配列);配列番号7(RX3 DNA配列)および配列番号8(タンパク質配列);配列番号9(R3 DNA配列)および配列番号10(タンパク質配列);配列番号11(P4 DNA配列)および配列番号12(タンパク質配列);配列番号13(X10 DNA配列)および配列番号14(タンパク質配列)において示す。
【0039】
rP13−(タンパク質配列 配列番号15およびDNA配列 配列番号16) クローンと相同の13kDのイネプロラミン−(GenBank AB016504) Sha et al., 1996 Biosci. Biotechnol . Biochem. 60(2):335-337;Wen et al., 1993 Plant Physiol. 101(3):1115-1116;Kawagoe et al., 2005 Plant Cell 17(4):1141-1153;Mullins et al., 2004 J. Agric. Food Chem. 52(8):2242-2246;Mitsukawa et al., 1999 Biosci. Biotechnol . Biochem. 63(11):1851-1858
22aZt(タンパク質配列 配列番号17およびDNA配列 配列番号18)22kDのトウモロコシα−ゼインN末端断片−(GenBank V01475) Kim et al., 2002 Plant Cell 14(3):655-672;Woo et al., 2001 Plant Cell 13(10):2297-2317;Matsushima et al., 1997 Biochim. Biophys. Acta 1339(1):14-22;Thompson et al., 1992 Plant Mol. Biol. 18(4):827-833。
【0040】
目的のタンパク質の例としては、治療用途、栄養補給用途、生物防除用途または工業的用途を有するいずれものタンパク質、例えば、モノクローナル抗体(IgG、IgM、IgAなどのようなmAb)およびそのフラグメント、ワクチン用の抗原(ヒト免疫不全ウイルス、HIV;B型肝炎プレ表面、表面およびコア抗原、胃腸炎 コロナウイルスなど)、ホルモン類(カルシトニン、成長ホルモンなど)、プロテアーゼ阻害薬、抗生物質、コラーゲン、ヒトラクトフェリン、サイトカイン類、工業用酵素(ヒドロラーゼ、グリコシダーゼ、オキシドレダクターゼなど)などが挙げられる。例示的な目的タンパク質の例示的なDNA配列およびアミノ酸残基配列を示す(タンパク質配列 配列番号19およびDNA配列 配列番号20)
サケカルシトニンGenbank BAC57417
hEGF−(タンパク質配列 配列番号21およびDNA配列 配列番号22)Genbank AAF85790に基づくシグナルペプチドを含まない構築物
hGH−P01241に基づくシグナルペプチドを含まない構築物(タンパク質配列 配列番号23ならびに植物の好ましいコドンを用いたDNA配列 配列番号24および天然コドンを用いたDNA配列 配列番号25)。
【0041】
もう1つの実施形態では、組換え融合タンパク質は、PBISの配列および目的産物の配列の他に、スペーサーアミノ酸配列をさらに含んでなる。そのスペーサーアミノ酸配列は、酵素的または化学的手段により切断可能であるか、または切断されないアミノ酸配列であり得る。特定の実施形態では、そのスペーサーアミノ酸配列はPBISと目的産物の間に置かれる。例示的なアミノ酸配列は、エンテロキナーゼ、Arg−−Cエンドプロテアーゼ、Glu−−Cエンドプロテアーゼ、Lys−−Cエンドプロテアーゼ、第Xa因子などのようなプロテアーゼにより切断可能である。あるいは、例えば、メチオニン残基で切断する臭化シアンのような化学試薬により特異的に切断可能なアミノ酸配列がコードされる。
【0042】
さらなる実施形態では、形質転換目的に使用される核酸配列は、同時譲渡されるWO2004003207によって開示されるとおりであり、それはPBISと目的のポリペプチドの間に切断可能なアミノ酸残基配列を含む。さらに、もう1つの実施形態では、その核酸配列は、WO2004003207によって開示されるとおりであるが、切断可能なアミノ酸配列をコードする核酸配列は存在しない。
【0043】
好ましい実施形態では、融合タンパク質は、宿主細胞系(動物、動物細胞培養物、植物、植物細胞培養物、真菌類または藻類など)を、(ii)目的産物をコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸配列、にインフレームで作動可能に連結された(i)PBISをコードする第1の核酸、を含んでなる核酸配列(すなわち、両方のポリペプチドがそれらの適切なリーディングフレームから発現されるように、PBISをコードする核酸配列は目的のポリペプチドをコードする配列と化学結合されている)で形質転換することを含む方法によって調製される。発現によって、生じた融合タンパク質は、形質転換した宿主系に高密度組換えタンパク粒様会合体として蓄積する。一実施形態では、第1の核酸配列(i)の3’末端は第2の核酸配列(ii)の5’末端に連結(結合)されている。もう1つの実施形態では、第1の核酸配列(i)の5’末端は第2の核酸配列(ii)の3’末端に連結(結合)されている。もう1つの実施形態では、PBISは貯蔵タンパク質または修飾貯蔵タンパク質、その断片または修飾断片を含んでなる。
【0044】
もう1つの特定の実施形態では、融合タンパク質は、宿主細胞系(動物、動物細胞培養物、植物、植物細胞培養物、真菌類または藻類など)を、既述の核酸配列(i)および(ii)の他に、スペーサーアミノ酸配列をコードするインフレーム核酸配列(iii)を含んでなる核酸配列で形質転換することを含む方法によって調製される。そのスペーサーアミノ酸配列は、先に述べたように、酵素的または化学的手段により切断可能であるか、または切断されないアミノ酸配列であり得る。1つの特定の実施形態では、核酸配列(iii)は、前記核酸配列(i)と(ii)の間に位置しており、例えば、第3の核酸配列(iii)の3’末端は第2の核酸配列(ii)の5’末端に連結されている。もう1つの実施形態では、第3の核酸配列(iii)の5’末端は第2の核酸配列(ii)の3’末端に連結されている。
【0045】
本明細書において、用語 植物宿主細胞とは、単子葉植物および双子葉植物の両方を含む植物、具体的に言えば、穀類(例えば、トウモロコシ、イネ、オートムギなど)、マメ科植物(例えば、ダイズなど)、アブラナ科植物(例えば、Arabidopsis thaliana、ナタネなど)およびナス科植物(例えば、ジャガイモ、トマト、タバコなど)を含む。
【0046】
植物宿主系は植物細胞も包含する。植物細胞としては、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、苗条、配偶体、胞子体、花粉、種子および小胞子が挙げられる。植物宿主細胞系は、様々な成熟段階にある可能性があり、液体培養または固体培養において、あるいはポット、温室または圃場において土壌または好適な培地で生育させることができる。植物宿主細胞系での発現は、一過性または永久的である。植物宿主細胞系は、上述のような植物、種子、自家受粉または雑種後代、有性生殖または無性生殖によって生じた胎芽、およびこれらのいずれもの子孫(挿し穂または種子など)の任意のクローンも意味する。
【0047】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を用いた植物細胞の形質転換は、一般に、双子葉植物で行うことが最もよい。単子葉植物は、通常、プロトプラストの、いわゆる直接遺伝子導入により形質転換することが最も簡単である。直接遺伝子導入は、通常、エレクトロポレーション(electroportation)により、ポリエチレングリコール媒介導入または必要とされるDNAを運ぶマイクロプロジェクタイルによる細胞衝撃により行われる。これらのトランスフェクション法については、当技術分野で周知であり、本明細書においてこれ以上記述する必要はない。また、少なくとも(at lest)イネおよびトウモロコシは、アグロバクテリウムにより形質転換できることも知られている。植物組織から所望のタンパク質を得るための技術と同様に、トランスフェクト細胞およびプロトプラストからの全植物体の再生方法についても周知である。米国特許第5,618,988号および同第5,679,880号ならびにその中の引例も参照。
【0048】
意図される方法は、組換え融合タンパク質の回収と可溶化も含む場合がある。従って、例えば、段階密度勾配または一段階密度クッションから集めたRPBLAを、還元剤を含む緩衝溶液に懸濁し、遠心分離する。そのペレットを廃棄し、上清から組換えタンパク質を回収して、所望により、古典的なクロマトグラフ法などによりさらに精製する。
【0049】
さらに詳述しなくとも、当業者ならば、これまでの説明と次の詳細な実施例から本発明を最大限に利用することができると思われる。よって、次の好ましい具体的な実施形態は、単に例示に過ぎず、開示内容の残りの部分を制限するものと決して解釈してはならない。
【0050】
試験手順
実施例1:植物の形質転換のためのプラスミドの構築
T20およびヒト上皮成長因子(hEGF)のコード配列は、合成によって得、植物における発現用にそのコドン使用を最適化するために修飾した。
【0051】
T20の36アミノ酸をコードするcDNA配列の一本鎖は、化学的オリゴヌクレオチド合成により得、その配列の5’末端に、第Xa因子特異的切断部位および酵素制限部位に対応する配列を付加した。この合成構築物(配列番号26)は、ポリアクリルアミド変性ゲルにより精製した。
【0052】
さらなるクローニングのために、PCRにより、制限部位を含む特異的なT20プライマーを用いて、その二本鎖cDNAを得た。
【0053】
プライマー:
V20順方向(配列番号27)
V20逆方向(配列番号28)
活性hEGFの53アミノ酸をコードする合成遺伝子は、プライマーオーバーラップ伸長PCR法により、20個の重複塩基を含むおよそ60個の塩基からなる4オリゴヌクレオチドを用いて得た。合成hEGF cDNAには、第Xa因子特異的切断部位に対応する5’リンカー配列を含めた。オリゴヌクレオチドは、ポリアクリルアミド変性ゲルにより精製した。
【0054】
EGF1(配列番号29)
EGF2(配列番号30)
EGF3(配列番号31)
EGF4(配列番号32)
活性hGHの191アミノ酸をコードする合成遺伝子は、プライマーオーバーラップ伸長PCR法により、20個の重複塩基を含む約60個の塩基からなる15オリゴヌクレオチドを用いて得た。合成hGH cDNAには、エンテロキナーゼ特異的切断部位に対応する5’リンカー配列を含めた。オリゴヌクレオチドは、ポリアクリルアミド変性ゲルにより精製した。
【0055】
hGH1(配列番号33)
hGH2(配列番号34)
hGH3(配列番号35)
hGH4(配列番号36)
hGH5(配列番号37)
hGH6(配列番号38)
hGH7(配列番号39)
hGH8(配列番号40)
hGH9(配列番号41)
hGH10(配列番号42)
hGH11(配列番号43)
hGH12(配列番号44)
hGH13(配列番号45)
hGH14(配列番号46)
hGH15(配列番号47)
アガロースゲル(Amersham)から合成T20 cDNAおよび合成hEGF cDNAを精製し、pGEMベクター(Promega)にクローニングした。BspHIおよびNcoIの付着末端を有するRX3 cDNA断片(γ−ゼインN末端ドメインをコードする)を、(特許出願WO2004003207に記載のとおり)予めNcoIで消化しておいたベクターpCKGFPS65Cに挿入した(Reichel et al., 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5888-5893)。T20およびEGFをコードする配列をRX3配列とインフレームで融合し、その構築物RX3−T20およびRX3−EGFを、T20合成遺伝子およびEGF合成遺伝子についてのGFPコード配列を置換することにより調製した。
【0056】
得られた構築物をpCRX3T20およびpCRX3EGFと名づけ、それらの構築物は、強力な35Sプロモーターとしてタンパク質の転写を指示する核酸配列(配列番号1)、タバコエッチウイルス(TEV)のような翻訳エンハンサー、T20コード配列およびEGFコード配列ならびにカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)由来の3’ポリアデニル化配列を含んでいた。最終的に、HindIII/HindIII発現カセットをバイナリーベクターpBin19に挿入することにより、効率的な植物形質転換ベクターp19RX3T20およびp19RX3EGFを得た(Bevan、1984 Nucleic Acids Research 12:8711-8721)。
【0057】
hGHをコードするcDNAをRX3 N末端γ−ゼインコード配列(特許WO2004003207)と融合し、強力なCaMV 35Sプロモーターおよび3’ocsターミネーターを含むpUC18由来プラスミドに挿入した。対応する融合タンパク質RX3−hGH配列を含むpUC18由来プラスミド(pUC18RX3hGHと名づけた)の発現カセットをpBin19バイナリーベクターに導入した(Bevan, 1984 Nucleic Acids Research 12:8711-8721)。
【0058】
22kDのαゼイン(22aZ)をコードするcDNAと13kDのイネプロラミン(rP13)をコードするcDNAをそれぞれ、トウモロコシW64Aおよびセニアライス(Senia rice)栽培品種のcDNAライブラリーからRT−PCRにより増幅した。そのPCR反応に使用したオリゴヌクレオチドは以下であった:
22aZ−5’(配列番号48)
22aZ−3’(配列番号49)
イネ13Prol−5’(配列番号50)
イネ13Prol−3’(配列番号51)
対応するPCR断片をpCRIIベクター(Invitrogen)にクローニングし、配列決定し、強力なCaMV 35Sプロモーター、TEV配列および3’ocsターミネーターを含むpUC18ベクターにクローニングした。pCRII−rP13をSalIおよびNcoIにより消化し、同じ酵素により消化しておいたpUC18RX3Ctプラスミド、pUC18RX3hGHプラスミドおよびpUC18RX3EGFプラスミドにクローニングして、それぞれ:pUC18rP13Ct、pUC18rP13hGHおよびpUC18rP13EGFを得た。pCRII−22aZをSalI/NcoIにより消化し、同じ酵素により消化しておいたpUC18RX3CtプラスミドおよびpUC18RX3EGFプラスミドにクローニングして、それぞれ、pUC1822aZtCtおよびpUC1822aZtEGFを得た。また、pCRII−22aZは、SalI/RcaIにより消化し、SalI/NcoIにより消化しておいたpUC18RX3hGHプラスミドにクローニングして、クローンpUC1822aZhGHを得た。
【0059】
最後に、これら総てのpUC18由来のベクターをHindIII/EcoRIによりpCambia 5300にクローニングした。
【0060】
実施例2:動物および酵母細胞の形質転換のためのプラスミドの構築
動物細胞
成熟カルシトニン配列(Ct、WO2004003207)およびEGF配列に対応する合成遺伝子、ならびにhGHをコードするcDNAを、RX3 N末端γ−ゼインコード配列(特許WO2004003207)と融合し、それらをベクターpUC18に導入した。pUC18由来プラスミドpUC18RX3Ct、pUC18RX3EGFおよびpUC18RX3hGH(対応する融合タンパク質 RX3−Ct配列、RX3−EGF配列およびRX3−hGH配列を含む)のSalI−BamHI制限断片を、Xho I−Bam HIで制限したベクターpcDNA3.1−(Invitrogen)に導入した。得られた構築物をp3.1RX3CT、p3.1RX3EGFおよびp3.1RX3hGHと名づけ、それらの構築物では融合タンパク質配列はCMVプロモーターとターミネーターpA BGH下に存在した。
【0061】
酵母細胞
上記のpUC18由来プラスミドのSalI(平滑末端)−BamHI制限断片(対応する融合タンパク質 RX3−EGF配列およびRX3−hGH配列を含む)を、EcoRI(平滑末端)−Bam HIで制限したベクター pYX243(R&D Systems)に導入した。得られた構築物をそれぞれ、c117およびc118と名づけ、それらの構築物では融合タンパク質配列は誘導GALプロモーター下に存在した。
【0062】
実施例3:宿主の形質転換
酵母
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株leu2)は、LiAc法(Ito et al. 1983, J. Bacteriol. 153:163-168)によりプラスミド構築物 c117およびc118で形質転換し、Leuプレート上で形質転換体を選択した。発現解析は、それらの形質転換体をガラクトース含有培地で増殖させることにより行った。
【0063】
植物材料
タバコ(Nicotiana tabacum品種 Wisconsin)植物は、in vitro生育箱内で24〜26℃にて明期16時間で生育させた。成体植物は、温室内で18〜28℃間にて、湿度を55〜65%間に維持し、平均明期16時間で生育させた。
【0064】
アグロインフィルトレーション(agroinfiltration) (Vaquero et al., 1999 Proc. Natl. Acad. Sci., USA 96(20):11128-11133;Kapila et al., 1997 Plant Sci. 122:101-108)方法に用いる苗は、上記のin vitro条件において種子から4〜6週間生育させた。
【0065】
タバコの安定な形質転換
バイナリーベクターをA.ツメファシエンスのLBA4404株に導入した。タバコ(Nicotiana tobaccum, W38)葉のディスクを、Draper and Hamil 1988(Plant Genetic Transformation and Gene Expression. A Laboratory Manual (Eds. Draper, J., Scott, R., Armitage, P. and Walden, R.), Blackwell Scientific Publications)に記載されているとおりに形質転換した。再生した植物を200mg/Lカナマイシン含有培地で選抜し、温室に移した。導入遺伝子産物レベルが最も高いトランスジェニックタバコ植物を栽培して、T1およびT2世代を得た。
【0066】
組換えタンパク質レベルは、免疫ブロット法により検出した。タバコ葉からの総タンパク質抽出物をブラッドフォードアッセイにより定量し、15%SDS−PAGEで分離し、ミニトランスブロット電気泳動転写セル(Bio Rad)を用いてニトロセルロース膜に移した。膜をγ−ゼイン抗血清(希釈1/7000)とともにインキュベートし(Ludevid et al. 1985, Plant Science 41:41-48)、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(希釈1/10000、Amersham Pharmacia)とともにインキュベートした。免疫反応バンドは、高感度化学発光法(ECLウエスタンブロッティングシステム、Amersham Pharmacia)により検出した。
【0067】
タバコアグロインフィルトレーション
アグロインフィルトレーション方法に用いる苗は、種子からin vitro生育箱内で24〜26℃にて明期16時間で4〜6週間生育させた。
【0068】
所望の構築物を含むA.ツメファシエンス株LB4404を、カナマイシン(50mg/l)およびリファンピシン(100mg/l)を添加したLB培地(トリプトン 10g/l、酵母抽出物 5g/l、NaCl 10g/l)で、振盪装置(250rpm)を用いて28℃にて一晩(約18時間)生育させた。その後、カナマイシン(50mg/l)およびリファンピシン(100mg/l)をさらに添加したLB30mlにアグロバクテリウムを接種した。一晩28℃で培養した後(約18時間)、アグロバクテリウム細胞を3000×gにて10分間遠心分離することにより集め、MES(Sigma Chemical) 4.9g/lおよびスクロース30g/lを含有するpH5.8の液体MS培地10mlに再懸濁した。アグロインフィルトレーションのために、細菌培養物を最終OD600 0.1に調整した。さらに、細胞培養物にアセトシリンゴンを終濃度0.2mMまで添加し、28℃にて90分間インキュベートした。
【0069】
アグロインフィルトレーションでは、苗をその懸濁液で完全に覆い、真空を5〜6秒間適用した(100KPa)。懸濁液を除去し、苗を生育箱内で明期16時間の下で24〜26℃にて4日間維持した。苗材料を回収し、総タンパク質の抽出を、抗γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。
【0070】
動物細胞の形質転換
構築物 p3.1RX3.EGFおよびp3.1RX3.hGHを、リポフェクタミンに基づくトランスフェクション法(Invitrogen)により293T、Cos1またはCHO哺乳類培養細胞に導入した。高活性シアン蛍光修飾GFP(an enhanced cyan fluorescent modified GFP)の遺伝子配列を含むプラスミド pECFP−N1(Clontech)でトランスフェクトした細胞を対照として使用した。
【0071】
実施例4:タバコ葉からのタンパク質の抽出
新鮮植物材料
植物材料(湿潤または乾燥タバコ葉または苗)を液体窒素中で摩砕し、Tris−HCl 50mM pH8、200mMジチオトレイトール(DTT)およびプロテアーゼ阻害薬[10μMアプロチニン、1μMペプスタチン、100μMロイペプチン、100μMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)および100μM E64(Sigma Chemical)]を含有する抽出バッファーTでホモジナイズした。そのホモジネートを4℃にて10000×gで30分間遠心分離して、不溶性材料を除去した。総可溶性タンパク質(TSP)を、ブラッドフォードタンパク質アッセイ(BioRad)を用いて定量した。
【0072】
タバコ葉の乾燥およびタンパク質の抽出
成体トランスジェニックタバコ葉および野生型タバコ葉を濾紙中で37℃の部屋内で2週間乾燥させた。2週間後、葉を細かく切断し、室温にて5ヶ月間保存した。乾燥材料の総可溶性タンパク質を、新鮮材料について記載したように抽出し、ウエスタンブロット法により解析した。
【0073】
実施例5:RPBLAの調製
ホモジナイゼーション
新鮮および乾燥トランスジェニックタバコ葉およびアグロインフィルトレートした(agroinfiltrated)タバコ苗(一過性形質転換)を、乳鉢と乳棒で0℃にて、10%スクロースおよびプロテアーゼ阻害薬(PMSF、ロイペプチン、アプロチニン、E−64)を添加したTris 100mM pH8、KCl 50mM、MgCl 6mM、EDTA10mMを含有するPBP抽出バッファー中で摩砕した。そのホモジネートを、小型ローター(7.5mm径)を取り付けたポリトロン(IKA T25ベーシック、24,000rpm)を用いてさらに氷中で約10回、3〜4秒間摩砕した。未破壊組織および細胞を除去するために、固体材料を4層のミラクロス(22〜24μm)(Calbiochem)で濾過することにより除去した。
【0074】
実施例6:動物細胞からのタンパク質
トランスフェクト細胞を培養プレートからかき取って回収し、それらをホモジナイゼーションB培地(10mM Tris−HCl pH8.0、0.9%NaCl、5mM EDTA、プロテアーゼ阻害薬)に懸濁した。その懸濁液を、およそ30回、23ゲージ針が取り付けられた5mlシリンジに入れ、それを排出した。位相差顕微鏡により細胞破壊をモニタリングした。そのホモジネートを段階スクロース勾配上に載せ、タバコ葉ホモジネートについて記載したように遠心分離した。
【0075】
一過性にトランスフェクトした細胞における融合タンパク質の蓄積を、γ−ゼインに対して作製されたγ−ゼイン抗体を用いて、ウエスタンブロット法により解析した。トランスフェクションの48時間後、総可溶性細胞タンパク質をバッファーA(100mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl、5mM EDTA、0.5%SDS、0.5%Triton X−100、2%2−メルカプトエタノールおよびプロテアーゼ阻害薬)で抽出した。細胞インキュベーション培地のアリコートを沈殿させ、−20℃にて保存した。等量のトランスフェクト細胞および培地から抽出したタンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、免疫検出のためにニトロセルロースシートに移した。
【0076】
実施例7:不連続勾配による分離
ホモジネートを4℃にて50×gで5分間遠心分離して、浄化済抽出物を得た。不連続スクロース勾配のために、この浄化済ホモジネート(上清)をバッファーPBP中の20%−30%−42%−56%(w/w)または42%−49%−56%−65%(w/w)スクロース2.5mlからなる段階勾配上に層にし、それを水平ローター(SW41Ti)により80,000×gで4℃にて120分間ブレーキなしで遠心分離した(Beckman社製Coulter Optima(商標)XL−100K超遠心機)。
【0077】
その上清画分、界面画分およびペレット画分を集めた。上清画分、界面画分およびペレット画分の等価アリコートを15%TCAで沈殿させ、SDS−PAGEおよび融合発現タンパク質に対する特異的抗体を用いることによる免疫ブロット法により解析した。タンパク質RX3−EGF、RX3−T20、RX3−CtおよびRX3−INFをγ−ゼイン抗体を用いてウエスタンブロットにより検出した。電気泳動ゲルは、Morrissey et al., 1981 Anal. Biochem. 117:307-310に従って銀染色により解析して、PB内の組換えタンパク質と汚染タンパク質の濃縮を評価した。
【0078】
実施例8:一段階クッションによる分離
上記のように調製したホモジネートを、42%(w/w)スクロースクッション8ml(1.18g/cm)上で24,000gで4℃にて120分間遠心分離した。上清画分、界面画分およびペレット画分を回収した。RPBLAはクッションの下部に沈殿した。タンパク質解析では、これらの画分の等価アリコートを15%TCAで沈殿させ、サンプルを15%SDS−PAGEで分離し、銀染色により解析した。PB画分に存在する組換えタンパク質を、γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により検出した。
【0079】
実施例9:単離RPBLAからの組換えタンパク質の回収
段階スクロース勾配の42%〜56%(w/w)界面から単離したまたは42%(w/w)スクロースの密度クッションにより単離したRPBLAを、PBPバッファーで洗浄し、16000×gで5分間の短時間の遠心分離より回収した。RPBLA内に蓄積した組換えタンパク質を、ホウ酸ナトリウム12.5mM pH8、0.1%SDSおよび2%2−メルカプトエタノールを含有するSBバッファー1容量で可溶化した。その溶液を37℃にて一晩(約18時間)インキュベートした。一アリコートを室温にて16000×gで10分遠心分離し、その上清およびペレットをSDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより解析して、タンパク質の完全可溶化を評価した。
【0080】
実施例10:トランスフェクト酵母細胞からのタンパク質
組換え融合タンパク質を発現しているS.セレビシエをペレット化した。解析するために、各インキュベーション培地のアリコートを沈殿させ、−20℃にて保存した。細胞ペレットも冷凍し、解凍後、ガラスビーズと培地Y(50mM HCl−Tris pH8.0、150mM NaCl、5mM EDTA、200mM DTTおよびプロテアーゼ阻害薬)を用いる標準的な方法により細胞を破壊した。細胞および培地のいずれもを等量、SDS−PAGEおよび組換え発現タンパク質に対する特異的抗体を用いることによる免疫ブロット法により解析した。
【0081】
形質転換酵母細胞から細胞小器官を単離するために適用される破壊方法は、Zinser et al., 1995 Yeast, 11:493-536に記載されているスフェロプラストの穏やかな溶解に基づくものであった。形質転換酵母培養細胞(DO600 およそ0.5)30mLをペレット化し、1Mソルビトールで洗浄し、100単位/mlのザイモラーゼを含有するスフェロプラスト化バッファー(1Mソルビトール、50mMリン酸カリウム pH7.5、14mM 2−メルカプトエタノール)1mLに懸濁した。30℃にて20〜30分間、時々ゆっくりと攪拌しながらスフェロプラスト形成を進めた。1000gで6分間遠心沈殿させた後、そのスフェロプラストを、2−メルカプトエタノールを含まないスフェロプラスト化バッファーで洗浄し、氷冷溶解バッファー(0.3Mソルビトール、10mMトリエタノールアミン、1mM EDTAおよびプロテアーゼ阻害薬)0.5mLに再懸濁した。氷上で時々ゆっくりと攪拌しながら20分経過した後、溶解物を終濃度1.0Mソルビトールに調整した。その溶解物を段階スクロース勾配上に載せ、タバコ葉ホモジネートについて記載したように遠心分離した。画分はSDS−PAGEおよび免疫ブロット法により解析した。
【0082】
結果
実施例A:密度勾配によるトランスジェニック植物栄養組織からのRPBLAの単離(精製)
RX3−EGF γ−ゼイン由来融合タンパク質およびRX3−T20 γ−ゼイン由来融合タンパク質をコードする遺伝子をアグロバクテリウム・ツメファシエンスを介してタバコ植物に導入した。形質転換した植物を免疫ブロット法により解析して、組換えタンパク質の発現がより高い植物を決定した。図2Aは、RX3EGFタンパク質およびRX3T20タンパク質の両方のパターンを示している。注目すべきは、両方の組換えタンパク質が総てのトランスジェニック系に正確に蓄積しているように見えることである。主要な下方のバンドはモノマー形態の融合タンパク質に相当し、上方のバンドはそのダイマーに相当する。融合タンパク質は、通常マルチマーとして蓄積し、免疫ブロット法により検出されるモノマーおよびオリゴマーの量は、ジスルフィド結合の減少レベルに依存したものである。
【0083】
タバコ葉抽出物を密度段階勾配上に載せ、異なる画分における組換えタンパク質の蓄積を免疫ブロット法により解析した(図2B)。その結果を示した図2Bでは、RX3−EGFが高密度のRPBLAに対応する画分に現れたことが分かる。これらの細胞小器官の大部分は1.2632より高い密度を示し(F56、レーン6)、それらのうちのかなりの部分は1.3163g/cmより高い密度を示している(F65、レーン7)。RX3−T20融合タンパク質は界面49%〜56%スクロースに存在し(レーン12)、それによりRX3−T20を含むRPBLAの密度が1.2241g/cmより高く、それらのうちのかなりの部分は1.2632より密度が高いことが分かり、かなりの割合で密度が1.2632より高かった(レーン13)。
【0084】
タバコ葉において形成されたこれらの新規RPBLAは、天然トウモロコシタンパク粒の範囲の密度を示す(Ludevid et al., 1984 Plant Mol. Biol. 3:227-234;Lending et al., 1989 Plant Cell 1:1011-1023)か、またはさらに高い密度である。RX3−T20 PBは、RX3−EGF PBよりも幾分(わずかに)密度が低く、これは目的のタンパク質のいくつかの特有の性質に起因すると考えられるということにも注目すべきである。よって、組換え融合タンパク質が蓄積しているRPBLAは、通常存在する可溶性細胞部分と比べて高い密度を有しているが、RX3ドメインと融合されたタンパク質の特徴によってそのような密度の変化が起こり得る。
【0085】
高密度のRPBLA画分およびペレットにおいて両方の組換えタンパク質が90%を上回る割合で回収されると概算された(図2B参照)。このように、RPBLAの密度による単離は、融合タンパク質を精製(濃縮)するのに有用な系であると思われる。
【0086】
RPBLAの単離により組換えタンパク質RX3−EGFの精製を評価するために、異なる密度画分を銀染色により解析した(図2C)。染色したゲルより分かるように、タバコ内因性タンパク質の90%を上回る割合のものが勾配の可溶性画分(S)および界面画分(F422およびF49)に位置しており、それらの画分ではRX3−EGFタンパク質が存在しなかったかまたはほとんど検出されなかった(図2B参照)。このようなことから、勾配の1または2画分(F56およびF65)を選択することにより、可溶性タンパク質とより密度の低い細胞小器官に存在するタンパク質の大半を廃棄することができた。
【0087】
RPBLA画分(F56およびF65)での融合タンパク質の精製の程度に関して、RX3−EGFタンパク質はPBLS含有画分で検出されたタンパク質のおよそ80%であると概算された。この結果は、RPBLA単離手順を用いて、たった一段階の精製で融合タンパク質の重要な濃縮が行えることを示している。
【0088】
実施例B:乾燥植物組織から単離したRPBLAにおける組換えタンパク質の回収
分子農業において重要な点は、植物バイオマスを保存するための簡単な手段が存在するということである。これに関連して、乾燥させることにより、貯蔵量を減らし、産物を保存するための便宜な方法を提供することができる。それにもかかわらず、乾燥が目的のタンパク質の分解を促進することもよくある。工業的用途では、組換えタンパク質を含むRPBLAを単離するために乾燥植物を使用することは大変興味深いことであろう。
【0089】
上記のようにRX3−EGF融合タンパク質およびRX3−T20融合タンパク質を蓄積する形質転換タバコ葉を、同様に上記されているように乾燥させた。乾式貯蔵の5ヶ月後、組換えタンパク質の安定性を解析した。等量の湿潤(新鮮)葉組織(W、レーン1)および乾燥葉組織(D、レーン2)からのタンパク質抽出物を免疫ブロット法により解析した(図2D)。図より分かるように、RX3−EGFタンパク質は乾燥形質転換植物において安定しており、湿潤植物および乾燥植物において回収された量は同様であった(レーンWおよびレーンDを比較)。
【0090】
段階密度勾配における乾燥葉のホモジネートの融合タンパク質(RX3EGFおよびRX3T20)の分布を免疫ブロット法により解析した(図2D、レーン3〜7)。興味深いことに、両方の融合タンパク質は、主として1.1868g/cmより高い密度を示す高密度構造(F42画分)および1.2632g/cmより高い密度を示す高密度構造(F56画分)において回収された。
【0091】
このように、組換えタンパク質は、乾燥組織からRPBLAを単離することにより精製することができ、このことはトランスジェニック植物の採取ならびに組換えタンパク質の抽出および精製は時間とは無関係である可能性があることを示している。これらの結果と一致して、イネ種子においてもγ−ゼイン融合タンパク質がRPBLAに蓄積した。
【0092】
実施例C:一過性に形質転換したタバコ苗からのRPBLAの単離による組換えタンパク質の回収
一過性発現系は、短期間で組換えタンパク質の蓄積挙動を検証するための便宜なツールになり得る。例えば、組換えタンパク質RX3−EGFおよびRX3−T20は、アグロインフィルトレーションにより一過性に形質転換したタバコ苗においても発現され、蓄積した。形質転換苗からのタンパク質抽出物は、免疫ブロット法による解析(図3A)で、安定的に形質転換した植物で観察される特徴的な複雑な電気泳動パターンを示し(図3A、レーン4および図2A、レーン4を比較)、融合タンパク質がこの形質転換方法を用いても正確に会合することが分かる。
【0093】
分子量が高い方の融合タンパク質、RX3−hGHの発現も一過性に形質転換したタバコにおいて解析した(図3A、レーン4)。密度勾配での細胞内分画後、RX3−T20融合タンパク質およびRX3−hGH融合タンパク質の両方が1.1868g/cm(F42)および1.2632g/cm(F56)より高い密度を示すRPBLA画分に対応する高密度画分において回収された(図3B、レーン4、レーン5およびレーン9、レーン10)。このように、一過性発現は、所望の組換えタンパク質を含むPBの個々の密度特性を短期間で検証するのに用いることができる。
【0094】
実施例D:低速および中速遠心分離による組換えタンパク質の回収
組換えタンパク質を高密度組換えタンパク粒様会合体を介して精製するのに用いる手順を簡易化するために、2つのさらなる代替法を実施した:i)浄化ホモジネートを単一高密度スクロースクッションを用いて遠心分離し(図4A、B)、ii)浄化ホモジネートを低速遠心分離(すなわち、1000〜2500×g、10分間)で簡単に遠心分離した。前述の結果に一致して、1.1868g/cmスクロースクッションを用いた遠心分離後に得られたペレットでは、RX3−EGFタンパク質およびRX3−T20タンパク質の両方が(90%を上回る)高収率で回収された(図4A、レーン4およびレーン6)。さらに、RX3−EGFタンパク質の精製は、対応するペレットで汚染タバコ内因性タンパク質がほとんど検出されなかった図4Bの銀染色ゲルより分かるように、極めて高率であった(レーン4)。
【0095】
段階密度勾配と比べた際のこの方法の重要な利点は、組換えタンパク質工業生産のその拡張容易性にある。クッション密度、同様にその粘性および浸透圧などの他の特性は、いずれの場合にも、組換えタンパク質の回収および精製を最適化するために調整することができることにも注目すべきである。
【0096】
さらに、低速遠心分離(LSC)は、融合タンパク質を含むタンパク粒様構造を濃縮し、精製するためにも試みた(図4C、LSC)。その結果は、1000×g、10分間経過後に、実質的に総てのRX3−EGF融合タンパク質がペレットより回収されることを示した(図4Cレーン2)。しかし、このペレットに含まれるタンパク質の染色から、その融合タンパク質は、1.1868g/cm3スクロースクッションを用いた遠心分離後に得られたものほど高度に精製されていないことが分かった(図4C、レーン3およびレーン7を比較)。
【0097】
その後、低速遠心分離によって得られた最初のペレットを5%Triton X−100含有バッファーを用いることにより洗浄した。洗浄後、そのサンプルを12,000×gで5分間遠心分離した。興味深いことに、洗浄し、遠心分離した後にはP1ペレットに存在する汚染タンパク質の大半が排除され、新たなペレット(P2、図4C、レーン9)に高度に濃縮されたRX3−EGFタンパク質が含まれていた。レーン9のタンパク質は量だけでなくパターンも、スクロースクッションを用いた遠心分離後に得られたペレットをTriton X−100含有バッファーで洗浄した後に得られたもの(図4C、レーン5)と同様であることが分かる。低速遠心分離による代替法は、融合タンパク質を含む構造の密度の高さに基づいており、スケールアップするために、遠心分離条件を標的に応じて先に最適化することができる。
【0098】
実施例E:トランスフェクト動物細胞からのRPBLAの単離による組換えタンパク質の回収
貯蔵タンパク質由来の融合タンパク質がトランスフェクト動物細胞においても高密度組換えPB様会合体の形成を誘導するかどうかを確認するために研究に着手した。ホモジナイズしたトランスフェクト哺乳類細胞の細胞小器官の細胞内分布を、段階密度勾配を用いることにより解析した。3つの異なる細胞培養タイプ、293T(ヒト由来)、Cos1(サル由来)およびCHO(ハムスター由来)を、3つの異なる融合タンパク質、RX3−Ct、RX3−EGFおよびRX3−hGHをコードするcDNAを用いることによりトランスフェクトした。pECFP−N1(Clontech)でトランスフェクトしたCos1細胞を対照として使用した。勾配画分を上記のように集め、免疫ブロット法により解析した(図5A)。
【0099】
トランスフェクト細胞で発現した組換えRX3由来のタンパク質を、γ−ゼイン抗血清を用いることにより検出した。集めた異なる画分における対照ECGPの検出は、ウサギで惹起した抗GFP抗血清を用いることにより行った。
【0100】
予想どおりに、可溶性ECGPタンパク質は上清画分において回収された(S、図5A、レーン2)が、界面画分およびペレット画分ではこのタンパク質の痕跡は検出されず、特定の細胞画分が沈降している。これに対して、RX3CT、RX3EGFおよびRX3hGHは、主に高密度画分F30、F42およびF56に存在し(図5A)、γ−ゼイン由来融合タンパク質がこれらの高密度画分(密度 1.1270〜1.2632g/cm)から回収できることが示された。これらの結果は、免疫細胞化学により得られたことと一致し、融合タンパク質はER内および直径約1〜約1.4ミクロンの組換えタンパク粒様会合体内に位置していた。
【0101】
RX3−Ctトランスフェクト細胞およびRX3−hGHトランスフェクト細胞の勾配の溶解画分において多量の組換えタンパク質が回収された。これは恐らく、ER内に含まれるまだ会合していない融合タンパク質を可溶化させるホモジナイゼーション中の過剰の細胞破壊によるものであった。
【0102】
低速遠心分離(LSC、図5B)は、RX3−EGFを発現しているCHO細胞のホモジネートを用いることによっても試みた。図5Bより分かるように、融合タンパク質の大半が2500×gでのペレットにおいて回収され(レーン2)、融合タンパク質が密度に基づく方法によって回収できる動物細胞の高密度タンパク粒様構造に蓄積することを確認した。
【0103】
実施例F:密度勾配による形質転換酵母からの組換えタンパク質の回収
形質転換酵母における融合タンパク質を含む高密度構造の形成についても段階密度勾配により解析した。RX3−EGF融合タンパク質およびRX3−hGH融合タンパク質をコードするcDNAを、標準的な手順を用いて酵母形質転換ベクターを介してサッカロミセス・セレビシエに導入した。細胞小器官を単離するために適用される破壊方法は、方法において記載したとおり、スフェロプラストの穏やかな溶解に基づくものであった。溶解物を段階スクロース勾配上に載せ、哺乳類細胞またはタバコ葉ホモジネートについて記載したように遠心分離した。画分はSDS−PAGEおよび免疫ブロット法により解析した。
【0104】
分画結果は図6に示している。その図からは、RX3−EGFタンパク質およびRX3−hGHタンパク質の両方の大部分が勾配の界面F30に位置していたことが分かる(図6、レーン4)。この画分は、1.1270〜1.1868g/cm3間の密度を有する細胞内構造を含んでいる。上清画分およびF20画分では融合タンパク質がほとんど検出されず、酵母細胞において融合タンパク質が会合することが分かる。酵母細胞はサイズが小型になるため(最大3ミクロン)、植物および動物細胞で観察されるRPBLAよりも密度の低い小型のRPBLAしか形成しないと考えられる。いずれにせよ、それらは遠心分離により他のほとんどの細胞タンパク質から単離し、精製することができる。
【0105】
実施例G:密度勾配による異なる貯蔵タンパク質ドメインからの融合タンパク質の回収
γ−ゼイン由来の融合タンパク質のそれらの密度特性を介した精製は、他の貯蔵タンパク質由来の融合タンパク質まで拡張可能である。ここで、本発明者らは、13kDのイネプロラミン(rP13)由来の融合タンパク質および22kDのα−ゼイン(22aZt)由来の融合タンパク質が段階スクロース勾配においてRPBLAに対応する高密度画分にどのように蓄積するかを示す(図7)。13kDのイネプロラミン(rP13)および22kDのα−ゼイン[全長型(22aZ)またはN末端ドメイン(22aZt)]の選択は、それらの間でもRX3ドメインに関しても相同性がないことに基づいたものであった。思いがけなく、どちらの貯蔵タンパク質からも高密度のRPBLAが生成され、そのRPBLAは段階密度勾配に供した場合にはより密度の高い界面で回収された(図7A)。
【0106】
カルシトニン配列を、CaMV35Sプロモーター下でrP13配列および22aZt配列とインフレームで融合し、アグロバクテリウム・ツメファシエンスに導入した。タバコ苗を一過性に形質転換し、葉ホモジネートを段階密度勾配に供した。集めた画分をSDS−PAGEおよびウサギで惹起した抗カルシトニン抗血清を用いた免疫ブロット法により解析した。
【0107】
図7Aより分かるように(レーン4〜5、およびレーン9〜10)、rP13Ct融合タンパク質および22aZtCt融合タンパク質の両方の多くはF42画分およびF56画分に位置し、融合タンパク質の精製のために単離することができる1.1868g/cm3より高い密度を有する組換えPB様会合体が存在することを示した。その結果は、融合タンパク質を含む組換えPB様会合体の密度が融合物に含まれる貯蔵タンパク質の機能によって変動し得ることも示している。
【0108】
イネプロラミン(rP13−hGH)および全長α ゼイン(22aZ−hGH)と融合されたhGHを用いてアグロインフィルトレーション研究を行った。この場合も、RPBLAの大部分はF42画分およびF56画分で観察された(7A、レーン4〜5およびレーン9〜10)が、興味深いことに、今回は一部の会合していない融合タンパク質も上清および低密度の界面で検出された(レーン1〜2およびレーン6〜7)。この結果は、rP13および22aZに対するhGHの部分可溶化の影響により説明できる。
【0109】
融合タンパク質 rP13−EGFおよび22aZ−EGFを発現するトランスジェニックタバコ植物をアグロバクテリウム・ツメファシエンス形質転換により作製した。EGFに対する抗体を用いた免疫ブロット法によって確認される最良の発現体(expressers)と、細胞系統を、同じ構築物でアグロインフィルトレートしたタバコ苗との比較解析に使用した。図7より分かるように(A、レーン4およびレーン9;B レーン3)、総ての場合において、RPBLAは特異な界面(F12)で回収され、RPBLAが極めて密度が高く、同質であることが示唆された。
【0110】
これら総ての結果を総合すれば、プロラミン類は、他のタンパク質と融合させた場合であっても、高密度のRPBLAを誘導することができることは明らかである。主として、それらの間にほとんど相同性が見られない場合にはそれは思いがけない結果である。さらに、プロラミン類がタンパク粒を安定させるように相互に作用すること、および例えば、α−ゼインの場合のように、それらの一部のものが栄養組織でのみ発現される場合に安定しないことを示すいくつかのデータがある(Coleman et al., 1996 Plant Cell 8:2335-2345)。
【0111】
実施例H:単離PBLSからの組換えタンパク質の抽出
高密度の組換えPB様会合体を単離することが、トランスジェニック生物から組換えタンパク質を高収率かつ高精製レベルで回収するための有利な方法であることを証明してきた。ここでは、これらの組換えタンパク質を貯蔵細胞小器官から抽出することができることを示す。組換えPBLAは、いくつかの用途(すなわち、経口ワクチン製剤)に直接使用することができるが、他のいくつかの場合では、精製した組換えタンパク質を処理することが必要になることがある。
【0112】
還元剤を含有するバッファー(ホウ酸ナトリウム12.5mM pH8、0.1%SDSおよび2%2−メルカプトエタノールを含有するSBバッファー;処理)中での37℃にて一晩(約18時間)のPB画分のインキュベーション後に、RX3−EGFタンパク質およびRX3−T20タンパク質を可溶化した。図8(RX3−EGFについてはレーン1〜4、RX3−T20についてはレーン6〜7)より分かるように、抽出された融合タンパク質両方がそれらの可溶形(S)で回収された。後に、それらの用途に応じて、抽出されたタンパク質はさらなる精製に供するか、または部分的に精製した抽出物として使用することができる。
【0113】
本明細書において引用する特許および論文はそれぞれ、引用することにより一部とされる。冠詞「a」または「an」の使用は、1以上を含むよう意図されている。
【0114】
上述の説明および実施例は、例示を目的としており、制限するものと解釈してはならない。本発明の精神および範囲内でさらに他の変形が可能であり、当業者ならば容易に分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】タバコ植物の一過性(アグロインフィルトレーション)で安定な形質転換において使用したバイナリーベクターの模式図であり、それらのバイナリーベクターを図の上部に示している。図の中央には、酵母形質転換に使用した2種類のベクターを示している。下部には、哺乳類細胞培養物の一過性トランスフェクションに使用したベクターを示している。RX3、27kDのγ−ゼインN末端ドメイン、22aZ、22kDのα−ゼイン、22aZt、22kDのα−ゼインN末端ドメイン、rP13、13kDのイネプロラミンおよびCS、切断部位。
【図2】4部構成で図を示す、図2A〜図2D。図2Aは、トランスジェニックタバコ植物の葉におけるRX3−T20融合タンパク質およびRX3−EGF融合タンパク質の蓄積を示す図である。野生型(wt)タバコ葉およびトランスジェニックタバコ葉(レーン2およびレーン4)から可溶性タンパク質を抽出し、SDS−ポリアクリルアミドゲルで解析し、ニトロセルロース膜に移した後、γ−ゼイン抗血清を用いて免疫ブロット解析を行った。左側に分子量を示している。矢印で、RX3由来融合物モノマー(M)およびダイマー(D)を示している。図2Bは、密度勾配画分におけるRX3−T20融合タンパク質およびRX3−EGF融合タンパク質の免疫ブロット解析を示す図である。形質転換したタバコの湿潤(新鮮)葉の浄化ホモジネートを段階スクロース勾配(42%−49%−56%−65%w/w)上に載せた。ホモジネート画分、上清画分、界面画分およびペレット画分におけるRX3−EGF融合タンパク質およびRX3−T20融合タンパク質の蓄積を、γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。各レーンは全画分の等量に対応する。H、ホモジネート;S、上清;F42、界面 42〜49%w/w;F49、界面 49〜56%w/w;F56、界面 56〜65%w/w;F65、65%スクロース下でのペレット。左側に分子量を示している。矢印で、RX3由来融合物モノマー(M)およびダイマー(D)を示している。図2Cは、密度勾配画分における、形質転換タバコ葉においてp19RX3EGFによって発現させたRX3−EGF融合タンパク質のSDS−PAGEおよび銀染色解析を示す図である。バッファーPBPによるタバコ湿潤(新鮮)葉の浄化ホモジネートを段階スクロース(42%−49%−56%−65%w/w)勾配上に載せた。ホモジネート画分、上清画分、界面画分およびペレット画分におけるRX3−EGF融合タンパク質の蓄積を15%SDS−PAGEにより解析し、銀染色により発色させた。各レーンは全画分の等量に対応する。矢印でRX3−EGFタンパク質を示している。H、ホモジネート;S、上清;F42、界面 42〜49%w/wスクロース;F49、界面 49〜56%w/w;F56、界面 56〜65%w/w;F65、65%スクロース下でのペレット。左側に分子量を示している。図2Dは、湿潤および乾燥タバコ葉におけるRX3−T20およびRX3−EGFの蓄積についてのSDS−PAGEおよび免疫ブロットの結果を示す図である。タバコ葉を37°で1週間乾燥させ、無湿度容器で5ヶ月間保存した。湿潤(W)および乾燥(D)形質転換タバコ葉の等量から抽出した可溶性タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルおよびγ−ゼイン抗血清を用いた免疫ブロット法により解析した(レーン1およびレーン2)。乾燥サンプルにおける高密度構造内へのRX3−EGFおよびRX3−T20の蓄積を乾燥葉ホモジネートのスクロース勾配(20%−30%−42%−56%w/w)による分画によって解析した。上清画分、界面画分およびペレット画分におけるRX3−EGF融合タンパク質およびRX3−T20融合タンパク質の蓄積を、γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。各画分を等量用いた。S、上清;F20、界面 20%〜30%w/wスクロース;F30、界面 30%〜42%w/wスクロース;F42、界面 42%〜56%w/wスクロース;F56、56%スクロース下でのペレット。
【図3】2部構成で図を示す、図3Aおよび図3B。図3Aは、アグロインフィルトレートしたタバコ苗におけるRX3−EGFおよびRX3−T20の蓄積を示す図である。総可溶性タンパク質をSDS−PAGEおよびγ−ゼイン抗血清を用いた免疫ブロット法により解析した。Wt=野生型対照タバコ苗;左側に分子量を示している。矢印で、RX3由来融合物モノマー(M)、ダイマー(D)およびトリマー(T)を示している。図3Bは、アグロインフィルトレートしたタバコ苗の細胞内分画を示す図である。浄化苗ホモジネートを段階スクロース(20%−30%−42%−56%w/w)勾配上に載せた。上清画分、界面間画分およびペレット画分におけるRX3−T20融合タンパク質およびRX3−hGH融合タンパク質の蓄積を、γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。各レーンには各画分を等量用いた。S、上清;F20、界面 20%〜30%w/wスクロース;F30、界面 30%〜42%w/wスクロース;F42、界面 42%〜56%w/wスクロース;F56、56%スクロース下でのペレット。左側に分子量を示している。矢印で、RX3由来融合物モノマー(M)およびダイマー(D)を示している。
【図4】図4A、図4Bおよび図4Cとして3部構成で図を示す。図4Aは、スクロースクッションを用いて遠心分離した後のRX3−T20タンパク質濃度およびRX3−EGFタンパク質濃度を示す図である。トランスジェニックタバコ葉の浄化ホモジネートをスクロースクッション(42%w/w)上に載せた。遠心分離後、上清およびペレットにおけるRX3−EGF融合タンパク質およびRX3−T20融合タンパク質の蓄積を、γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。各レーンはそれらの画分の等量に対応する。H、ホモジネート;S、上清;P、ペレットクッション。左側に分子量を示している。矢印で、RX3由来融合物モノマー(M)およびダイマー(D)を示している。図4Bは、スクロースクッションを用いて遠心分離した後のRX3−EGFタンパク質の精製を示す図である。トランスジェニックタバコ葉の浄化ホモジネートをスクロースクッション(42%w/w)上に載せた。遠心分離後、ホモジネート画分、上清画分およびペレット画分のタンパク質パターンを15%SDS−PAGEおよび銀染色により解析した。各レーンはそれらの画分の等量に対応する。矢印で、RX3−EGFモノマー(M)およびダイマー(D)を示している。H、ホモジネート;S、上清;P、ペレットクッション。左側に分子量を示している。図4Cは、低速遠心分離(LSC)後のRX3−EGFタンパク質濃度と精製を示す図である。RX3−EGFを発現しているタバコ葉の浄化ホモジネートを1000×gで10分間遠心分離し、ペレット(P1、レーン2)および上清(S、レーン1)をゲル電気泳動およびγ−ゼイン抗体を用いた免疫ブロット法により解析した。低速遠心分離(LSC)によるペレットP1を5%TritonX−100含有緩衝培地で洗浄し、2回目の遠心分離後、LSCによるP1ペレット(レーン7)、洗浄後の上清(W、レーン8)、最後のペレットP2(レーン9)の等量を15%SDS−PAGEおよび銀染色により解析した。これらのサンプルを、1回のスクロースクッション遠心分離後に得られたペレットP1(レーン3)の等価サンプル(レーン3〜5)と比較し、LSCペレットと同じ洗浄手順に供した。矢印で、RX3−EGFモノマー(M)およびダイマー(D)を示している。
【図5】図5Aおよび図5Bとして2部構成で図を示す。図5Aは、トランスフェクト哺乳類細胞に蓄積したRX3−Ct組換え融合タンパク質、RX3−EGF組換え融合タンパク質およびRX3−hGH組換え融合タンパク質の細胞内分布を示す図である。トランスフェクト細胞のホモジネートを段階スクロース(20%−30%−42%−56%w/w)勾配上に載せた。遠心分離後、上清画分、界面画分およびペレット画分におけるRX3−Ct融合タンパク質、RX3−EGF融合タンパク質およびRX3−hGH融合タンパク質の蓄積を、γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。GFPのシアン蛍光変異体であるECGPを発現するプラスミド pECFP−N1(Clontech)でトランスフェクトした細胞を対照として使用し、抗GFP抗血清を用いることによりECGPを免疫検出した。H、ホモジネート;S、上清;F20、界面 20%〜30%w/wスクロース;F30、界面 30%〜42%w/wスクロース;F42、界面 42%〜56%w/wスクロース;F56、56%スクロース下でのペレット。図5Bは、低速遠心分離後の、CHOにより発現されたRX3−EGFタンパク質濃度を示す図である。RX3−EGFを発現しているCHO細胞のホモジネートを2500×gで10分間遠心分離し、ペレット(P、レーン2)および上清(S、レーン1)をゲル電気泳動およびγ−ゼイン抗体を用いる免疫ブロット法により解析した。左側に分子量を示している。
【図6】形質転換酵母細胞に蓄積したRX3−EGF組換え融合タンパク質およびRX3−hGH組換え融合タンパク質の細胞内分布を示す図である。形質転換酵母の溶解されたスフェロプラストを段階スクロース(20%−30%−42%−56%w/w)勾配上に載せた。遠心分離後、上清画分、界面画分およびペレット画分におけるRX3−EGF融合タンパク質およびRX3−hGH融合タンパク質の蓄積を、γ−ゼイン抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。H、溶解スフェロプラストホモジネート;S、上清;F20、界面 20%〜30%w/wスクロース;F30、界面 30%〜42%w/wスクロース;F42、界面 42%〜56%w/wスクロース;F56、56%スクロース下でのペレット。左側に分子量を示している。
【図7】図7Aは、アグロインフィルトレートしたタバコ苗に蓄積した組換え融合タンパク質の細胞内分布を示す図である。浄化苗ホモジネートを段階スクロース(20%−30%−42%−56%w/w)勾配上に載せた。上清勾配画分、界面勾配画分およびペレット勾配画分におけるrP13−Ct融合タンパク質、rP13−EGF融合タンパク質およびrP13−hGH融合タンパク質の蓄積を、抗カルシトニン抗体、抗EGF抗体および抗hGH抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。2種類のα−ゼイン遺伝子を用いて等価研究を実施した。カルシトニン(Ct)およびEGFをαゼインN末端ドメイン(22aZt)と融合し、hGHを完全αゼイン遺伝子(22aZ)と融合した。各レーンには各画分を等量用いた。S、上清;F20、界面 20%〜30%w/wスクロース;F30、界面 30%〜42%w/wスクロース;F42、界面 42%〜56%w/wスクロース;F56、56%スクロース下でのペレット。図7Bは、トランスジェニックタバコ系の浄化葉ホモジネートを用いて段階スクロース(10%−42%−56%−62%w/w)勾配上に載せた結果を示す図である。抗EGF抗体を用いた免疫ブロットは、各画分の等量についてのrP13−EGFおよび22aZt−EGF分布を示している。S、上清;F10、界面 10%〜42%w/wスクロース;F42、界面 42%〜56%w/wスクロース;F56、界面 56%〜62%w/wスクロース;F62、62%スクロース下でのペレット。
【図8】RPBLAからのRX3−T20融合タンパク質およびRX3−EGF融合タンパク質の回収を示す図である。密度クッションまたは段階勾配から得られたRPBLA画分を還元剤の存在下で再懸濁した。可溶化タンパク質(S)および非可溶化タンパク質(P)を、γ−ゼイン抗血清を用いて免疫ブロット法により解析した。左側に分子量を示している。矢印で、RX3由来融合物モノマー(M)、ダイマー(D)およびトリマー(T)を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞において組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)として発現された組換え融合タンパク質を精製するための方法であって、
(a)融合タンパク質を、所定の密度を有する組換えタンパク粒様会合体として発現させる形質転換宿主細胞の水性ホモジネートを提供する工程、
(b)そのホモジネートにおいて異なる密度の領域を形成して、比較的高濃度のRPBLAを含む領域と比較的低濃度のRPBLAを含む領域とを提供する工程、および
(c)そのRPBLA低下領域を比較的高濃度のRPBLAの領域から分離し、その結果として前記融合タンパク質を精製する工程
を含む、方法。
【請求項2】
RPBLAの所定の密度が、ホモジネート中に存在する内因性宿主細胞タンパク質の実質的に総てのものより高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
融合タンパク質が、互いに連結している2つの配列を含み、1つの配列がタンパク粒誘導配列であり、もう1つの配列が目的産物の配列である、請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
ホモジネートにおける異なる密度の領域が、密度差を与える溶質の存在下でそのホモジネートを遠心分離することにより提供される、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
異なる密度の領域が、密度勾配によって提供される、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
異なる密度の領域が、前記RPBLAよりも低密度の密度クッションによって提供される、請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
異なる密度の領域が、ホモジネートの低速遠心分離後に得られる上清とペレットによって提供される、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項8】
宿主細胞が、高等植物細胞である、請求項1〜7に記載の方法。
【請求項9】
宿主細胞が、真菌細胞である、請求項1〜7に記載の方法。
【請求項10】
真菌宿主細胞が、酵母細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
宿主細胞が、藻類細胞である、請求項1〜7に記載の方法。
【請求項12】
宿主細胞が、動物細胞である、請求項1〜7に記載の方法。
【請求項13】
動物宿主細胞が、哺乳類細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
融合タンパク質が、タンパク粒誘導配列と目的産物の配列との間にリンカー配列をさらに含む、請求項1〜13に記載の方法。
【請求項15】
タンパク粒誘導配列が、プロラミンまたは修飾プロラミンを含んでなる、請求項1〜14に記載の方法。
【請求項16】
プロラミン配列が、γ−ゼイン、α−ゼイン、またはイネプロラミンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
RPBLAの密度が、約1.1〜約1.35g/mlである、請求項1〜16に記載の方法。
【請求項18】
ホモジネートが、新鮮バイオマスから調製される、請求項1〜17に記載の方法。
【請求項19】
ホモジネートが、乾燥バイオマスから調製される、請求項1〜17に記載の方法。
【請求項20】
RPBLAを回収する工程をさらに含む、請求項1〜19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−521767(P2008−521767A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541878(P2007−541878)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012878
【国際公開番号】WO2006/056484
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505003218)エラ、ビオテック、ソシエダッド、アノニマ (4)
【氏名又は名称原語表記】ERA BIOTECH, S.A.
【Fターム(参考)】