タンパク質の可溶化、精製、および再生の方法
【課題】疎水性タンパク質であり、実効正電荷をもつ第一ドメインおよび実効負電荷をもつ第二ドメインを有する組織因子経路阻害剤(TFPI)の水溶解性を向上させる方法の提供。
【解決手段】TFPIに対して、荷電ポリマーの水性溶液を加えて正および負に荷電したドメイン間の分子間または分子内相互作用を減少させて水溶解性を向上させる方法。該荷電ポリマーとしては、硫酸化ポリサッカライド(硫酸デキストリン、硫酸ヘパリン)、ポリリン酸塩が好ましい。該方法によって得られる水性組成物は、医薬品として有用である。
【解決手段】TFPIに対して、荷電ポリマーの水性溶液を加えて正および負に荷電したドメイン間の分子間または分子内相互作用を減少させて水溶解性を向上させる方法。該荷電ポリマーとしては、硫酸化ポリサッカライド(硫酸デキストリン、硫酸ヘパリン)、ポリリン酸塩が好ましい。該方法によって得られる水性組成物は、医薬品として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質の再生、可溶化、製剤、精製に有用な方法に関する。これらの方法は、遺伝子組換えによって、非天然の3次構造を持つ形で細菌、酵母、またはその他の細胞で生産されたタンパク質に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現の過程全体を完全に理解するためには、1次配列の合成を理解するのが重要であるのと同様に、ペプチド鎖が生物活性を持つタンパク質に折りたたまれる過程を理解することが重要である。タンパク質の生物活性は、そのアミノ酸配列に依存するのみならず、そのタンパク質の独自の立体構造に依存し、タンパク質の立体構造がわずかに崩れると、その活性が失われる可能性がある。Tsouら(1988) Biochemistry 27:1809-1812(非特許文献1)。
【0003】
適切な条件下では、精製され変性したタンパク質がインビトロで再生し、天然の2次および3次構造をとる過程は、自発的に起きる。安定だが望ましくない構造の形成を避けるためには、選択力の強い3次元相互作用(折りたたみの後の方で形成される)を用いて、正しい折りたたみ経路で発生する初期の局所構造を選択し、さらに安定化する必要がある。したがって、局所構造の有限であるが非常に低い安定性によって、タンパク質の折りたたみの速度論的「校正」が可能になる。エネルギーの最も高い折りたたみの活性化状態は、天然のタンパク質のゆがめられた形態であり、変性と再生に関する最も遅い律速段階が、統制のとれた構造という点では天然の状態に近いと思われる。さらに、多くのタンパク質の再生は、インビトロでは完全に可逆的ではなく、100%に満たない再活性化収率がしばしば観察される。これは、特にタンパク濃度が高い実験に多く、「FischerおよびSchmid, (1990) Biochemistry 29:2205-2212(非特許文献2)」に記載されるように、可逆性の低下の主な理由は、変性したタンパク質分子あるいは一部再生した分子の凝集が競合するためかもしれない。
【0004】
十分に大きいタンパク質分子の場合には、新生ポリペプチド鎖は、マイクロドメインがモジュール式に集合することにより、その天然の3次元構造を獲得する。温度、ならびにポリオール、尿素、および塩化グアニジニウムのような共存する溶媒のような変数が、タンパク質の立体構造の安定化と不安定化における役割を決定するために試験された。共存する溶媒の作用は、「Jaenickeら(1991) Biochemistry 30 (13):3147-3161(非特許文献3)」に記載されるように、直接の結合の結果、または水の物理的性質を変化させるためかもしれない。
【0005】
変性したタンパク質がどのようにして再生し天然の3次元構造をとるかの実験的観察は、タンパク質の折りたたみ機構に関する広く普及している多くの理論と対照をなす。再生が可能な条件下では、変性したタンパク質分子は、再生が完了する前に複数の立体構造の間で迅速に平衡化する。折りたたみ前の迅速な平衡は、他の変性した立体構造よりもやや自由エネルギーの低い特定の小型の立体構造に偏っている。律速段階は、この経路の後の方に登場し、エネルギーが高く天然の立体構造がゆがめられた形が関与する。「Creightonら(1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85:5082-5086(非特許文献4)」に記載されるように、すべての分子が折りたたまれる際に関与する1つの転移が存在すると考えられる。
【0006】
精製された組換えタンパク質の再生には、様々な方法が使われてきた。例えば、ヒト免疫不全ウイルスタイプI (HIV-I)によりコードされるプロテアーゼは、Huiら(1993) J. Prot. Chem. 12:323-327(非特許文献5)に記載されるように、大腸菌で生産することができ、組換えHIV-Iプロテアーゼを含む封入体を生ずる。精製されたHIV-Iプロテアーゼは、50%酢酸中のタンパク質溶液を25倍量のpH 5.5の緩衝液で希釈することにより、活性を持つ酵素に再生される。精製されたタンパク質が50%酢酸中に約2 mg/mlで溶解され、その後、5%エチレングリコールと10%グリセロールを含むpH 5.5の冷却した25倍量の0.1 M酢酸ナトリウムで希釈されると、プロテアーゼの比活性が高いことが分かった。グリセロールとエチレングリコールを用いないと、沈殿のためにタンパク質が徐々に失われた。この方法では、大腸菌の培養液1リットル当たり、正しく折りたたまれたHIV-Iプロテアーゼが約85 mg得られ、酵素は高い比活性を持っていた。
【0007】
組換えタンパク質の再生の別の例は、DeLoskeyら(1994) Arch. Biochem. and Biophys. 311:72-78(非特許文献6)に記載された大腸菌の封入体からのH-rasの単離と再生である。この実験では、再生中にタンパク質濃度、温度、および10%グリセロールの有無を変化させた。正しく折りたたまれたH-rasの収率は、タンパク質濃度が0.1 mg/ml以下の時に最高で、10%グリセロールの存在とは無関係だった。収率は、4℃のほうが25℃の場合よりわずかに高かった。
【0008】
細菌の発現系で生産された、組織因子経路阻害剤(リポ蛋白質結合凝固阻害剤(LACI)、外因性経路阻害剤(EPI)、および組織因子阻害剤(EFI)としても知られており、以下"TFPI"と呼ぶ)の再生は、Gustafsonら(1994) Protein Expression and Purification 5:233-241(非特許文献7)に記載されている。この実験では、組換え大腸菌で高レベルでTFPIを発現させると、封入体にTFPIが蓄積した。封入体を8M尿素で可溶化すると活性のあるタンパク質が得られ、陽イオン交換クロマトグラフィーと6M尿素での再生により全長分子の精製が行なわれた。次に、再生した混合物は分画化され、プロトロンビン凝固時間で測定したところで、哺乳類細胞から精製したTFPIと同等のインビトロの生物活性を持つ非グリコシル化精製TFPIが得られた。
【0009】
米国特許第5,212,091号(特許文献1)に開示されるように、TFPIの非グリコシル化型も大腸菌から生産および単離されており、この開示は参照として本明細書に組み入れられる。米国特許第5,212,091号(特許文献1)に記載される発明では、 TFPIを含む封入体の亜硫酸分解によりTFPI-S-スルホン酸塩を形成し、陰イオン交換クロマトグラフィーによりTFPI-S-スルホン酸塩を精製し、 システインを用いたジスルフィド交換によりTFPI-S-スルホン酸塩を再生し、陽イオン交換クロマトグラフィーにより活性のあるTFPIを精製した。米国特許第5,212,091号(特許文献1)に記載される形のTFPIは、ウシの第Xa因子の阻害およびヒトの組織因子に誘導される血漿中の凝固の阻害で活性を持つことが示された。検定法によっては、大腸菌で生産されたTFPIの方がSK肝癌細胞由来の天然のTFPIよりも活性が強いことが示されたものもあった。しかし、大腸菌で生産されたTFPIは、タンパク質の不均質性を高めるように修飾されている。
【0010】
組換え技術によって生産されたタンパク質の再生技術において、再生過程で正しく折りたたまれたTFPIの量を増加させる必要がある。また、 TFPIの溶解度を増加させる必要もある。現在、組換え技術により生産されたTFPIの収率は望ましいレベルに達しておらず、正しく折りたたまれたTFPIの生産技術が必要である。Gustafusonら(1994) Protein Expression and Purification 5:233-241(非特許文献7)の例を参照。
【0011】
TFPIは少なくとも2つの方法で凝固カスケードを阻害する:すなわち第VIIa因子/組織因子の複合体の形成の阻止、および第Xa因子の活性部位への結合である。cDNA配列から得られたTFPIの一次配列は、このタンパク質には3つのクニッツ型(kunitz-type)酵素阻害剤領域があることを示している。これらの領域の第1番目は、第VIIa因子/組織因子の複合体の阻害に必要である。第2番目のクニッツ型領域は、第Xa因子の阻害に必要である。第3番目のクニッツ型領域の機能は不明である。TFPIには酵素活性はなく、化学量論的に標的のプロテアーゼを阻害すると考えられている。すなわち、1つのTFPIのクニッツ型領域が1分子のプロテアーゼの活性部位に結合するのである。TFPIのカルボキシ末端はヘパリンとの結合およびリン脂質との相互作用により、細胞表面での局在性に関与していると考えられている。TFPIはリポ蛋白質結合凝固阻害剤(LACI)、組織因子阻害剤(TFI)、および外因性経路阻害剤(EPI)としても知られている。
【0012】
成熟したTFPIは276アミノ酸を持ち、アミノ末端は負の電荷、そしてカルボキシ末端は正の電荷を帯びている。TFPIは18のシステイン残基を持ち、正しく折りたたまれると9つのジスルフィド結合を形成する。1次配列には3つのAsn-X-Ser/Thr N-結合グリコシル化のコンセンサス部位があり、アスパラギン残基は145、195、および256の位置に存在する。成熟したTFPIの炭化水素成分は、タンパク質の質量の約30%に当たる。しかし、タンパク分解マッピングと質量分析データによると、炭化水素成分は不均質である。TFPIの2番目の位置にあるセリン残基が、様々な程度リン酸化されていることも分かっている。リン酸化はTFPIの機能に影響を与えないと考えられる。
【0013】
TFPIはヒトの血漿、ならびにHepG2、チャン肝細胞、およびSK肝癌を含むヒトの組織培養細胞から単離された。組換え体TFPIはマウスC127細胞、乳児ハムスター腎臓細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、およびヒトSK肝癌細胞で発現された。マウスC127細胞からの組換え体TFPIは、動物モデルで組織因子に誘導される凝固を阻害することが示された。
【0014】
組換え体TFPIの非グリコシル化型は、米国特許第5,212,091号(特許文献1)に開示されるように、大腸菌で生産され単離された。この形のTFPIはウシの第Xa因子の阻害、およびヒトの組織因子に誘導される血漿中の凝固の阻害という活性を持つことが示された。PetersenらJ. Biol. Chem. 18:13344-13351 (1993)(非特許文献8)のように、酵母の細胞培養培地からTFPIを精製する方法も開示されている。
【0015】
最近、TFPIと高レベルの構造的同一性を持つ別のタンパク質が同定された。SprecherらProc. Nat. Acad. Sci., USA 91:3353-3357 (1994)(非特許文献9)。 TFPI-2と呼ばれるこのタンパク質の予測される2次構造は、TFPIとほぼ同一で、3つのクニッツ型領域、9つのシステイン-システイン結合、酸性のアミノ末端、および塩基性のカルボキシ末端を持つ。TFPI-2の3つのクニッツ型領域の1次構造は、TFPIのクニッツ型領域1、2、3とそれぞれ43%、35%、53%同一である。組換え体TFPI-2は第VIIa因子/組織因子のアミド分解活性を強く阻害する。これとは対照的に、TFPI-2は第Xa因子のアミド分解活性を弱く阻害する。
【0016】
TFPIは、大腸菌によるヒヒの致死的な敗血症性ショックモデルにおいて、死亡を予防することが示された。CreaseyらJ. Clin. Invest. 91:2850-2860 (1993)(非特許文献10)。 致死量の大腸菌の注入後間もなく、体重1 kgあたり6 mgのTFPIを投与すると、TFPI処置を受けた5匹の動物すべてが生存し、5匹の対照動物の平均生存時間39.9時間と比較して、生活の質は有意に改善された。また、TFPI投与により、凝固反応および種々の尺度による細胞傷害の減衰、ならびに腎臓、副腎、および肺を含む大腸菌による敗血症の標的器官で通常観察される病理の有意な減少が見られた。
【0017】
TFPIは凝固阻害活性を持つため、微小血管手術中に血栓の予防に使用できるかもしれない。例えば、米国特許第5,276,015号(特許文献2)は、微小血管吻合術の血栓形成を低下させる方法におけるTFPIの使用を開示しているが、TFPI微小血管の再建と同時に微小血管吻合部位に投与される。
【0018】
TFPIは疎水性のタンパク質であるため、水溶液への溶解度は限られている。溶解度が限られているため、特に高用量のTFPIの投与の恩恵を受けるような臨床適応症のためには、医薬品として許容可能なTFPI組成を持つ製剤の製造が困難だった。したがって、許容可能な量を患者に投与できるような濃度のTFPIを含む、医薬品として許容可能な組成のための技術が必要である。
【特許文献1】米国特許第5,212,091号
【特許文献2】米国特許第5,276,015号
【非特許文献1】Tsouら(1988) Biochemistry 27:1809-1812
【非特許文献2】FischerおよびSchmid, (1990) Biochemistry 29:2205-2212
【非特許文献3】Jaenickeら(1991) Biochemistry 30 (13):3147-3161
【非特許文献4】Creightonら(1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85:5082-5086
【非特許文献5】Huiら(1993) J. Prot. Chem. 12:323-327
【非特許文献6】DeLoskeyら(1994) Arch. Biochem. and Biophys. 311:72-78
【非特許文献7】Gustafsonら(1994) Protein Expression and Purification 5:233-241
【非特許文献8】PetersenらJ. Biol. Chem. 18:13344-13351 (1993)
【非特許文献9】SprecherらProc. Nat. Acad. Sci., USA 91:3353-3357 (1994)
【非特許文献10】CreaseyらJ. Clin. Invest. 91:2850-2860 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の概要
本発明はタンパク質の再生方法を提供することを目的とする。
本発明はTFPIの水溶性製剤を提供することも目的とする。
本発明は荷電ポリマーを使用してタンパク質の溶解度を修飾する方法を提供することも目的とする。
本発明はTFPIを再生させる前に変性TFPI溶液に荷電ポリマーを添加するステップを含む、TFPIの再生方法を記載することも目的とする。
さらに、本発明はカラム上に荷電ポリマーを固定化し、変性TFPI溶液をこのカラムに通し、再生が起きた後に再生したTFPIを溶出するステップを含むTFPIの再生方法を記載することも目的とする。
【0020】
TFPIの溶解度はpHに強く依存し、驚くべきことにクエン酸塩、イソクエン酸塩、および硫酸塩のようなポリ陰イオンはTFPIを著しく可溶化する効果を持つことが分かっている。この知見は、TFPIが疎水性の性質を持ち、これらの対イオンが親水性の性質を持つことを考慮すると、驚くべきことである。したがって、クエン酸塩、イソクエン酸塩、および硫酸塩、ならびに本明細書に記載される他の可溶化剤を用いると、患者に投与するために十分な濃度のTFPIを持つ医薬品として許容可能な組成を生成することができる。また、他の有機分子が2次的可溶化剤となりえることも示された。これらの2次的可溶化剤には、PEG、ショ糖、マンニトール、ソルビトールが含まれる。
【0021】
本発明は、TFPIが0.2 mg/mLを越える濃度で可溶化剤に含まれる、医薬品として許容可能な組成に関する。可溶化剤は酢酸イオン、塩化ナトリウム、クエン酸イオン、イソクエン酸イオン、グリシン、グルタミン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、イミダゾール、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ならびに荷電ポリマーである可能性がある。組成によっては、TFPIは1 mg/mLを越える濃度および10 mg/mLを越える濃度で存在することができる。この組成には、2次的可溶化剤が1つまたは複数含まれる場合がある。2次的可溶化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールであることがある。最後に、組成は20 mMを越す濃度のリン酸ナトリウムを含むこともある。
【0022】
TFPIの溶解度はpH 5と10の間ではかなり低いが、L-アルギニンが溶解度を2桁上昇させることが分かった。溶解度はアルギニンの濃度に強く依存し、300 mMは200 mMの約30倍効果的である。尿素もTFPIの可溶化にかなり効果的である。
【0023】
さらに、中性および塩基性のpH条件では、TFPIの凝集が主要な分解経路であり、酸性pH条件では切断が起きるらしいことが分かった。
【0024】
また、活性TFPIモノマーは、大腸菌で生産される組換えTFPIの再生過程で生成するTFPIオリゴマーから分離することができることも分かった。この過程で、誤って折りたたまれたり修飾されたTFPIモノマーも除去される。分離には疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用する。TFPIのオリゴマーは、活性TFPIモノマーよりも疎水性樹脂に強く結合する。Pharmacia(登録商標)オクチルセファロースおよびToyopearl(登録商標)ブチル650-Mは有効だった。この過程は、1 M硫酸アンモニウムまたは0.5 Mクエン酸ナトリウムのような高塩濃度で行う。
【0025】
〔1〕 TFPIの濃度が1mg/mlより大きい、TFPIおよび荷電ポリマーを含む水性組成物。
〔2〕 TFPIの濃度が5mg/mlより大きい〔1〕記載の水性組成物。
〔3〕 TFPIの濃度が10mg/mlより大きい〔1〕記載の水性組成物。
〔4〕 TFPIの濃度が20mg/mlより大きい〔1〕記載の水性組成物。
〔5〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔1〕記載の水性祖生物。
〔6〕 薬学的に許容される〔1〕記載の水性組成物。
〔7〕 荷電ポリマーが硫酸化ポリサッカライドである〔1〕記載の水性組成物。
〔8〕 荷電ポリマーがヘパリンである〔1〕記載の水性組成物。
〔9〕 荷電ポリマーが硫酸化デキストランである〔1〕記載の水性組成物。
〔10〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である〔1〕記載の水性組成物。
〔11〕 実効正電荷をもつ第一ドメインおよび実効負電荷をもつ第二ドメインを有するタンパク質の溶解性を改変する方法であって、
前記タンパク質に荷電したポリマーの水性溶液を加えて正および負に荷電したドメイン間の分子間または分子内相互作用を減少させる工程
を含む方法であって、
前記タンパク質は、
(i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテインからなる群から選択される。
〔12〕 第一ドメインが一連の連続する10個のアミノ酸中少なくとも5個のカチオン性アミノ酸の電荷濃度をもつ〔11〕記載の方法。
〔13〕 第一ドメインが5個の連続するカチオン性アミノ酸を含む〔11〕記載の方法。
〔14〕 第二ドメインが5個の連続するアニオン性アミノ酸を含む〔11〕記載の方法。
〔15〕 第二ドメインが一連の連続する10個のアミノ酸中5個のアニオン性アミノ酸を含む〔11〕記載の方法。
〔16〕 タンパク質がTFPIである〔11〕記載の方法。
〔17〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔16〕記載の方法。
〔18〕 タンパク質がTFPIムテイン(mutein)である〔11〕記載の方法。
〔19〕 タンパク質がTFPI-2である〔11〕記載の方法。
〔20〕 タンパク質が添加前は不溶性の型である〔11〕記載の方法。
〔21〕 カオトロピック物質もまたタンパク質に添加される〔11〕記載の方法。
〔22〕 タンパク質の特異的活性が添加工程によって上昇する〔11〕記載の方法。
〔23〕 荷電ポリマーが固体支持体に固定化される〔11〕記載の方法。
〔24〕 荷電ポリマーを添加する前にタンパク質を固体支持体に適用することをさらに含む〔11〕記載の方法。
〔25〕 荷電ポリマーを添加した後にタンパク質を固体支持体に適用することをさらに含む〔11〕記載の方法。
〔26〕 固体支持体がイオン交換樹脂である〔24〕記載の方法。
〔27〕 固体支持体がイオン交換樹脂である〔25〕記載の方法。
〔28〕 タンパク質の特異的活性が添加工程によって上昇し、タンパク質がTFPIである〔11〕記載の方法。
〔29〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔28〕記載の方法。
〔30〕 樹脂およびポリマーが反対の実効電荷をもっている〔26〕記載の方法。
〔31〕 樹脂およびポリマーが反対の実効電荷をもっている〔27〕記載の方法。
〔32〕 樹脂およびポリマーが同じ実効電荷をもっている〔26〕記載の方法。
〔33〕 樹脂およびポリマーが同じ実効電荷をもっている〔27〕記載の方法。
〔34〕 固体支持体から選択的溶出をおこなうため荷電ポリマーが濃度勾配で添加される〔26〕記載の方法。
〔35〕 TFPIを折りたたむ前に、荷電ポリマーの水溶液を前記TFPIを含む溶液に添加する工程を含む、不正確に折りたたまれた、または変性されたTFPIを再生する方法。
〔36〕 ポリマーが硫酸化ポリサッカライドである〔35〕記載の方法。
〔37〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸デキストランである〔36〕記載の方法。
〔38〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸ヘパリンである〔36〕記載の方法。
〔39〕 TFPIを折りたたむ前に、荷電ポリマーの水溶液を不正確に折りたたまれた、または変性されたTFPIを含む溶液に添加する工程を含む、タンパク質を再生する方法。
〔40〕 ポリマーが硫酸デキストランである〔39〕記載の方法。
〔41〕 ポリマーがヘパリンである〔39〕記載の方法。
〔42〕 ヘパリンが溶液中に添加される〔41〕記載の方法。
〔43〕 TFPIを折りたたむ前に、荷電ポリマーの水溶液を不正確に折りたたまれた、または変性されたTFPIを含む溶液に添加する工程、および、溶液をインキュベーションして該TFPIを折りたたませ、塩を加えてポリマーをTFPIから分離し、前記溶液をHICカラムに通し、そしてTFPIを回収する工程を含む、TFPIを再生する方法。
〔44〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔43〕記載の方法。
〔45〕 硫酸化ポリサッカライドのポリマーをカラムに固定化し、変性されたTFPIの溶液を前記カラムに通し、再生されたTFPIを、再生が起こったあとに溶出する工程を含むTFPIを再生する方法。
〔46〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔45〕記載の方法。
〔47〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸デキストランである〔45〕記載の方法。
〔48〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸ヘパリンである〔45〕記載の方法。
〔49〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
から選択されるポリペプチドを1mg/ml以上、並びに、少なくとも0.1%(w/v)のポリリン酸塩を含む、pHが5から10である水溶液。
〔50〕 ポリペプチドが図4に記載のアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPIである、〔49〕に記載の溶液。
〔51〕 医薬的に許容され得る、〔50〕に記載の溶液。
〔52〕 医薬的に許容され得る、〔49〕に記載の溶液。
〔53〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択されるポリペプチドの溶解性を増加させる方法であって、ポリペプチドおよび荷電ポリマーを含む水性組成物を調製する工程を含む方法。
〔54〕 硫酸デキストラン、グリコサミノグリカン、ヘパリン、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、アガロペクチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリリン酸塩、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、DEAEデキストラン、ポリリジン、およびポリアルギニンからなる群より荷電ポリマーが選択される、〔53〕記載の方法。
〔55〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔54〕記載の方法。
〔56〕 水性組成物が少なくとも約0.5mg/mlのポリペプチドを含む、〔53〕記載の方法。
〔57〕 ポリリン酸塩が1から20mg/mlの最終濃度で添加される、〔55〕記載の方法。
〔58〕 水性組成物が3M尿素、および50mM Trisを含み、pH10.5である、〔55〕記載の方法。
〔59〕 水性組成物が少なくとも約0.5mg/mlポリペプチド、4mg/mlポリリン酸塩、0.1mMシステイン、0.05mMシスチン、および50mM Trisを含み、pHが約10.5である、〔55〕記載の方法。
〔60〕 ポリペプチド対ポリリン酸塩の重量比が約2:1から約1:8となるような最終濃度でポリリン酸塩が添加される、〔55〕記載の方法。
〔61〕 ポリリン酸塩の添加前に、ポリペプチドが6M尿素、125mM塩化ナトリウム、および20mMリン酸ナトリウムバッファーを含む、pHが約7.4の溶液中に存在する、〔60〕記載の方法。
〔62〕 ポリペプチドおよびポリリン酸塩を含む組成物から低分子量の溶質を除き、組成物中でのポリペプチドの濃度が0.5mg/mlより高く、ポリペプチドおよびポリリン酸塩を実質的に他の溶質を含まないように含む水性組成物を形成する工程をさらに含む、〔60〕記載の方法。
〔63〕 ポリペプチドが水性組成物調製前には不溶性の形で存在する、〔53〕記載の方法。
〔64〕 不溶性の形が封入体である、〔63〕記載の方法。
〔65〕 水性組成物がさらにカオトロープを含む、〔53〕記載の方法。
〔66〕 水性組成物を調製する前に、ポリペプチドを固体担体に加える工程をさらに含む、〔53〕記載の方法。
〔67〕 水性組成物が、固体担体からのポリペプチドの選択的な溶出を可能にする濃度勾配でポリリン酸塩を添加することにより形成される、〔66〕記載の方法。
〔68〕 固体担体がイオン交換樹脂である、〔66〕記載の方法。
〔69〕 樹脂が実効負電荷を有する、〔68〕記載の方法。
〔70〕 樹脂が実効正電荷を有する、〔68〕記載の方法。
〔71〕 水性組成物の調製の工程の後に、ポリペプチドを固体担体に加える工程をさらに含む、〔53〕記載の方法。
〔72〕 固体担体がイオン交換樹脂である、〔71〕記載の方法。
〔73〕 樹脂が実効負電荷を有する、〔72〕記載の方法。
〔74〕 樹脂が実効正電荷を有する、〔72〕記載の方法。
〔75〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPIである、〔53〕から〔74〕のいずれか一項に記載の方法。
〔76〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択されるポリペプチドの再生を補助する方法であって、ポリペプチドおよび荷電ポリマーを含む水性組成物を調製する工程を含む方法。
〔77〕 硫酸デキストラン、グリコサミノグリカン、ヘパリン、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、アガロペクチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリリン酸塩、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、DEAEデキストラン、ポリリジン、およびポリアルギニンからなる群より荷電ポリマーが選択される、〔76〕記載の方法。
〔78〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔76〕記載の方法。
〔79〕 溶液がさらに尿素を含む、〔76〕記載の方法。
〔80〕 溶液が実質的に尿素を含まない、〔76〕記載の方法。
〔81〕 溶液のpHが約9から少なくとも約11である、〔76〕記載の方法。
〔82〕 ポリペプチドが少なくとも約72時間再生される、〔76〕記載の方法。
〔83〕 再生工程が約72から約120時間後に溶液のpHを5.9±0.1に低めることによって終了される、〔76〕記載の方法。
〔84〕 再生が約1mg/mlのポリペプチド、約2mg/mlのポリリン酸塩、3M尿素、0.1mMシステイン、および50mM Trisを含むpHが約10.5の溶液中で行なわれる、〔78〕記載の方法。
〔85〕 再生が約0.5mg/mlのポリペプチド、約4mg/mlのポリリン酸塩、0.1mMシステイン、0.05mMシスチン、および50mM Trisを含むpHが約10.5の溶液中で行なわれる、〔79〕記載の方法。
〔86〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択される精製されたポリペプチドを得る方法であって、該ポリペプチドと荷電ポリマーとを含む水溶液中で該ポリペプチドを再生する工程、並びに、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーからなる群より選択される方法を用いてポリペプチドが精製される工程を含む方法。
〔87〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択される細菌中で発現された組換えポリペプチドから細菌由来のコンタミネーションを除去する方法であって、
陽イオンポリマーの水溶液を該組換えポリペプチドの可溶性形態を含む溶液に添加し細菌由来のコンタミネーションを沈澱させる工程、並びに、沈澱させた細菌性のコンタミネーションを除去する工程を含む方法。
〔88〕 添加する工程に可溶性形態のポリペプチドを含む溶液を陽イオンポリマーを0.5%(w/v)含む溶液中に少なくとも10倍希釈する、〔87〕記載の方法。
〔89〕 陽イオンポリマーがBetzポリマー624である、〔87〕記載の方法。
〔90〕 荷電ポリマーの添加前の溶液が3.5M塩酸グアニジウム、および50mMジチオスレイトール、および50mM Trisを含む、pH7.1である、〔87〕記載の方法。
〔91〕 沈澱が遠心により除去される、〔87〕記載の方法。
〔92〕 沈澱が濾過により除去される、〔87〕記載の方法。
〔93〕 組換ポリペプチドが大腸菌で発現されたものである、〔87〕記載の方法。
〔94〕 組換ポリペプチドが封入体に含まれる形で発現される、〔87〕記載の方法。
〔95〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPIである、〔87〕から〔94〕のいずれか一項に記載の方法。
〔96〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、該ポリペプチドを含む第一調製物を樹脂に結合させるよう陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に加える工程、樹脂を洗浄バッファーで洗浄する工程、並びに、樹脂をポリイオン性化合物を含む水溶性の溶出バッファーで洗い、樹脂より該ポリペプチドが該第一調製物より富化された第二調製物を溶出する工程を含む方法。
〔97〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔96〕記載の方法。
〔98〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔96〕記載の方法。
〔99〕 第一調製物が尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔100〕 第一調製物が約6M尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔101〕 第一調製物がpH約8である、〔96〕記載の方法。
〔102〕 第一調製物が約6M尿素、および約20mM Trisを含み、pH約8である、〔96〕記載の方法。
〔103〕 洗浄バッファーがより尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔104〕 洗浄バッファーがより約6M尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔105〕 洗浄バッファーのpHが約9である、〔96〕記載の方法。
〔106〕 洗浄バッファーが約6M尿素、および約20mM Trisを含み、pH約9である、〔96〕記載の方法。
〔107〕 溶出バッファーが尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔108〕 溶出バッファーが約6M尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔109〕 ポリイオン性化合物がポリアニオンである、〔96〕記載の方法。
〔110〕 ポリイオン性化合物がポリリン酸塩である、〔109〕記載の方法。
〔111〕 溶出バッファーが約10mg/mlのポリリン酸塩を含む、〔110〕記載の方法。
〔112〕 溶出バッファーがpH約9である、〔96〕記載の方法。
〔113〕 溶出バッファーが約6M尿素、約10mg/mlポリリン酸、および約10mM Trisを含み、pH約9である、〔96〕記載の方法。
〔114〕 陰イオン交換樹脂が第4アンモニウム化合物群を含む、〔96〕記載の方法。
〔115〕 陰イオン交換樹脂がQセファロースである、〔114〕記載の方法。
〔116〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、該ポリペプチドを含み、さらに尿素および樹脂の実効電荷と同じ電荷を有する荷電ポリマーを含む、水溶液である第一調製物を樹脂に結合させるようイオン交換樹脂に加える工程、樹脂を実質的に尿素を含まず、荷電ポリマーを含む洗浄バッファーで洗浄する工程、並びに、樹脂を実質的に尿素を含まず、荷電ポリマーを洗浄バッファーよりも高濃度で含む溶出バッファーで洗い、樹脂より該ポリペプチドが該第一調製物より富化された第二調製物を溶出する工程を含む方法。
〔117〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔116〕記載の方法。
〔118〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔116〕記載の方法。
〔119〕 第一調製物が尿素を含む、〔116〕記載の方法。
〔120〕 第一調製物が約3.5M尿素を含む、〔119〕載の方法。
〔121〕 第一調製物がpHが約5.5から約6.0である、〔116〕記載の方法。
〔122〕 第一調製物が約3.5M尿素、および約50mM Trisを含み、pH約5.9である、〔116〕記載の方法。
〔123〕 第一調製物がさらに約1mg/mlポリリン酸塩を含む、〔121〕記載の方法。
〔124〕 荷電ポリマーが負に荷電しており、樹脂が陽イオン交換樹脂である、〔116〕記載の方法。
〔125〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔124〕記載の方法。
〔126〕 洗浄バッファーが約10mg/mlポリリン酸塩を含む、〔125〕記載の方法。
〔127〕 溶出バッファーがpH約5である、〔126〕記載の方法。
〔128〕 溶出バッファーが約10mMリン酸ナトリウムを含む、〔126〕記載の方法。
〔129〕 溶出バッファーが約10mg/mlのポリリン酸塩を含む、〔125〕記載の方法。
〔130〕 溶出バッファーがpH約7.5である、〔129〕記載の方法。
〔131〕 溶出バッファーが約10mg/mlポリリン酸を含む、〔130〕記載の方法。
〔132〕 樹脂がSPセファロースである、〔116〕記載の方法。
〔133〕 荷電ポリマーが正に荷電しており、樹脂が陰イオン交換樹脂である、〔116〕記載の方法。
〔134〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、該ポリペプチドを含み、さらに尿素および樹脂の実効荷電と同じ荷電を有する荷電ポリマーを含む水溶液である、第一調製物を樹脂に結合させるようイオン交換樹脂に加える工程、樹脂を尿素および荷電ポリマーを含む洗浄バッファーで洗浄する工程、並びに、樹脂を尿素を含み、荷電ポリマーを洗浄バッファーよりも高濃度で含む溶出バッファーで洗い、樹脂より該ポリペプチドが該第一調製物より富化された第二調製物を溶出する工程を含む方法。
〔135〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔134〕記載の方法。
〔136〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔134〕記載の方法。
〔137〕 第一調製物が約6M尿素を含む、〔134〕記載の方法。
〔138〕 第一調製物が約6M尿素、約1mg/mlポリリン酸、および約10mMリン酸ナトリウムを含み、pH約5.9である、〔137〕記載の方法。
〔139〕 溶出バッファーが増加する濃度勾配で荷電ポリマーを含む、〔134〕記載の方法。
〔140〕 溶出バッファーが約25カラム容量加えられる、〔139〕記載の方法。
〔141〕 濃度勾配が約1mg/ml荷電ポリマーから始まり約20mg/ml荷電ポリマーで終わる、〔139〕記載の方法。
〔142〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩であり、樹脂が陽イオン交換樹脂である、〔139〕記載の方法。
〔143〕 溶出バッファーが約1mg/mlから約20mg/mlの勾配でポリリン酸塩を含む、〔142〕記載の方法。
〔144〕 溶出バッファーが約6mM尿素、10mMリン酸ナトリウム、および、約1mg/mlから約20mg/mlの勾配でポリリン酸を含み、pH約5.9である、〔142〕の方法。
〔145〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択されるポリペプチドの精製を補助する方法であって、該ポリペプチドおよび第一の荷電ポリマーを含む水溶性組成物に、第一の荷電ポリマーと逆の実効荷電を持つ第二の荷電ポリマーを第一の荷電ポリマーを実質的に中和するのに十分な量添加する工程を含む方法。
〔146〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔145〕記載の方法。
〔147〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔145〕記載の方法。
〔148〕 第一の荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔145〕記載の方法。
〔149〕 第二の荷電ポリマーがポリエチレンイミンである、〔148〕記載の方法。
〔150〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、
(a) ポリペプチドを含む第一水溶液にポリエチレングリコール(PEG)およびポリリン酸塩を添加し、水性の二層系を形成する工程、および
(b) PEGに富む層を回収し、第一水溶液と比べて該ポリペプチドが富化された第二水溶液を形成する工程
を含む方法。
〔151〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔150〕記載の方法。
〔152〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔150〕記載の方法。
〔153〕 添加工程の前に、ポリペプチドが封入体の可溶化により得られたものである、〔150〕記載の方法。
〔154〕 封入体が約7M尿素、約1%(w/v)モノチオグリセロール、および約10mM CAPSバッファーを含み、pHが約10である溶液中で可溶化された、〔153〕記載の方法。
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明者は、ポリエチレンイミンおよびポリリン酸塩のようなポリイオンポリマーが、タンパク質内のイオン性相互作用を修飾することができることを見出した。ポリイオンを用いて、タンパク質内の荷電密度の高い特定の領域を覆うと、数多くの効果が現われることがある。反対の電荷を持つ領域が分子内や分子間で中和されるために溶解度が低下しているタンパク質は、荷電領域の1つをポリ陽イオンまたはポリ陰イオンで覆うと、溶解度が改善することがある。再生過程に干渉するような、立体構造の柔軟性への障害、ならびに特異的な引力または反発力も、修飾することができる。精製操作中に、可溶化し可溶性を維持するために、尿素や塩酸グアニジンのような強力な変性剤を必要とするタンパク質は、ポリイオンを使用すると効果的に可溶化し加工処理することができる。
【0027】
1次配列では電荷の局在する明確な領域を持たない多くのタンパク質も、2次構造のために電荷の局在する領域を示すことがある。したがって、多くのタンパク質は、荷電ポリマーテンプレートとの相互作用を通じて、溶解度、再生、および精製特性を修飾することができる。この修飾の性質は、タンパク質の固有の構造、鎖長、電荷、およびイオン性ポリマーの電荷密度に依存する。
【0028】
我々は、グアニジンまたは尿素に基づく緩衝液で純粋なTFPIの再生の解析をしたが、その結果は、ヘパリン、硫酸デキストラン、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリリン酸塩を含む荷電ポリマーを添加することで、再生の効率と速度が著しく改善できることを示している。これらのポリマーはTFPIの溶解度を上昇させ、N末端またはC末端のいずれかとイオン性相互作用をして、再生を増進する。ポリマーの添加に加え、純粋なTFPIの再生には、再生反応が48時間以内に完了するシステイン/シスチン酸化還元緩衝液が必要である。再生の収率は、pH、酸化還元濃度、およびポリマー添加剤に強く依存する。しかし、最適な再生条件下では、純粋なTFPIで60%もの再生効率が達成できる。
【0029】
本発明の発明者は、例えばヘパリンおよび硫酸デキストランのような、グルコサミノグリカンおよび硫酸化多糖類を変性たんぱく質を含む溶液に再生の前に添加すると、グルコサミノグリカンまたは硫酸化多糖類にタンパク質が結合する能力を持ち、再生条件が与えられると、正しく折りたたまれて活性を持つタンパク質の量が増加することを発見した。
【0030】
溶解
組換えDNA技術によって、通常は天然源から認められるほどの量が単離できなかった多くのタンパク質を、高レベルで発現することが可能になった。大腸菌およびその他の数種類の発現系では、タンパク質はしばしば不活性な変性した状態で発現され、アミノ酸の1次配列は正しいものの、2次構造と3次構造、ならびにシステインのジスルフィド結合は存在しない。封入体に存在する変性タンパク質は、通常は接触しないアミノ酸バックボーンの、異なる部分の荷電残基が相互作用し、正の電荷を持つアミノ酸残基と負の電荷を持つアミノ酸残基の間に強いイオン結合が形成されるような立体構造になっているのかもしれない。これらのイオン結合の形成は、封入体の溶解のために必要な水和を制限することがある。また、封入体中のタンパク質は、膜成分および核酸のような他の細胞成分と複合体を作り、これにより、電荷を持ち通常は水和している残基に溶媒(水)が接近するのが制限されるのかもしれない。また、変性した状態では、通常はタンパク質の内部に埋まっている疎水性の残基が、極性を持つ水性環境に、より露出している。これらのために、封入体は、尿素もしくはグアニジンのような強いカオトロピック剤、またはSDSのような界面活性剤以外の溶媒に溶解しないのかもしれない。
【0031】
好ましくは水溶液中の荷電ポリマーは、封入体または他の環境で見られるようなポリペプチド鎖内部で起きる望ましくないイオン性相互作用に干渉し、該相互作用を崩壊させることができる。荷電ポリマーは望ましくないイオン性相互作用を破壊し、イオン性および極性の残基の溶媒和を促進し、強力なカオトロピック剤や界面活性剤を必要とせずに溶解を促進することがある。荷電ポリマーの電荷、電荷密度、および分子量(鎖長)は、タンパク質によって異なる。適するポリマーには以下のものが含まれる:硫酸化多糖類、ヘパリン、硫酸デキストラン、アガロペクチン、カルボン酸多糖類、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ無機物、ポリリン酸塩、ポリアミノ酸、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、ポリヒスチジン、ポリ有機物、多糖類、DEAEデキストラン、ポリ有機アミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、ポリアミン、ポリアミノ酸、ポリリジン、およびポリアルギニン。
【0032】
pIが7を越えるタンパク質は、pH 7で正の電荷を持つので、負の電荷を持つポリマーとの相互作用のほうが有益かもしれない。pIが7未満のタンパク質は、中性のpHで正の電荷を持つポリマーのほうに強く相互作用するかもしれない。溶液のpHを変化させると、すべてのタンパク質の総電荷と電荷の分布を変えるため、これも評価すべき変数である。
【0033】
再生
組換えDNA技術によって、通常は天然源から認められるほどの量が単離できなかった多くのタンパク質を高レベルで発現することが可能になった。大腸菌およびその他の数種類の発現系では、タンパク質はしばしば不活性な変性した状態で発現され、アミノ酸の1次配列は正しいものの、2次構造と3次構造、ならびにシステインのジスルフィド結合は存在しない。変性したタンパク質は、活性を持つ正しい立体構造に再生されなくてはならないが、このためにはしばしば、イオン性の引力と反発力、結合の回転の制限、および立体構造に誘導される他の種類のストレスにより強いられる、著しいエネルギー障壁を克服する必要がある。反対の電荷の間の特異的なイオン性の引力や、同様な電荷の間の反発力は、変性タンパク質が利用できる再生経路を著しく制限し、再生過程の効率を低下させる場合がある。
【0034】
立体構造の柔軟性を制限し、もしくは凝集を促進するような相互作用をする特異的な荷電領域を持つタンパク質がある。1次配列では電荷の局在する明確な領域を持たない多くのタンパク質も、再生中間体、誤った折りたたみ、不適切に折りたたまれたタンパク質に見られる2次構造のために、電荷の局在する領域を示すことがある。本発明によると特に適切なタンパク質には、TFPI、TFPI突然変異タンパク質、TFPI-2、組織プラスミノーゲン活性化因子、BST、PSTが含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの方法は、タンパク質に対して使用する一般的方法として適してはいるが、最も適しているのは、不適切に折りたたまれたか、凝集したか、オリゴマー化したか、もしくは不活化したタンパク質に対する使用である。これらは、最低1つ、たぶんそれ以上の強く荷電した領域を持つタンパク質である可能性が高く、この領域が相互作用をする可能性がある。TFPIおよび他のタンパク質の場合は、反対の電荷を持つ2つの領域が相互作用し、正しい折りたたみを妨げ、オリゴマー化と凝集を引き起こす。多くのジスルフィド結合を持つタンパク質も、おそらく本方法が有効である。好ましくはタンパク質は少なくとも2つ、さらに好ましくは少なくとも4つもしくは6つのジスルフィド結合を持つだろう。
【0035】
荷電ポリマーは電荷と電荷密度を修飾し、変性状態で発生する立体構造に対するイオン性の制限を低下または排除するために使用できる。通常は近接していない荷電グループが近位に存在すると、再生過程が回復できないような行き止まりの再生経路に入る可能性がある。
【0036】
荷電ポリマーと複合体を形成することにより、余分な正または負の電荷を導入すると、いくつかの理由で、より容易に再生が進行することがある:まず、異なるタイプの電荷分布の方が再生過程には好都合であるかもしれない;第2に、荷電ポリマーを添加すると、変性タンパク質の溶解度を向上させ、タンパク質の立体構造に悪い影響を持つカオトロピック剤の必要性が低下する、またはなくなるかもしれない。
【0037】
ほとんどのタンパク質はしばしば独自の構造を持っているため、好ましい特性を持つ荷電ポリマーは様々であるかもしれない。タンパク質の等電pH (pI)の評価を手がかりとすることができる。中性のpHでは、7未満のpIを持つタンパク質は、実効電荷が負になるため、正に荷電したポリマーに結合する可能性の方が高い。7を越えるpIを持つタンパク質は、中性pHでは正に荷電しているため、負に荷電したポリマーに結合する傾向の方が強い。しかし、電荷はタンパク質の回りに不均一に分布していることは確立されており、荷電が著しく局在する場合もある。電荷が局在している可能性があるため、いずれの用途にも、どのタイプの荷電ポリマーが最も効果的であるかを予測することが困難になっている。理論的には、相互作用する電荷が特異的に分布し、立体構造を要するすべてのタンパク質に、分子量、電荷、および電荷の分布の点で、再生効率を最大にするような、適切な組成を持った荷電ポリマーが存在する。pHおよび溶媒のイオン強度のような他の変数も、評価する。最初のスクリーニングには、いくつかの異なる濃度と分子量の、ポリエチレンイミン、DEAEデキストラン、硫酸デキストラン、およびポリリン酸塩が使用できる。rhTFPIに関する研究で、ポリリン酸塩の鎖長と濃度が、TFPIの再生反応過程に大きな影響を持つことが示された。比較的短い鎖長(n=5)は高度の凝集を引き起こす。rhTFPIの再生に最適なポリリン酸塩の鎖長は、約25繰り返しユニットだった。さらに長い鎖長(n=75)は凝集を引き起こし、正しく折りたたまれたモノマーが少なくなる。
【0038】
製剤
タンパク質はアミノ酸の鎖から構成され、その正確な組成と配列がタンパク質の構造の主要決定因子の1つになる。タンパク質構造の2次的決定因子は、個々のアミノ酸結合がタンパク質の立体構造に対して与える、立体構造の誘導の結果である。第3に、特定のアミノ酸配列は、βシートやαヘリックスのような3次構造の形成を誘導する。タンパク質の立体構造の3次元的性質は、ポリペプチド鎖の直接の配列では通常近接していないアミノ酸残基を、しばしば近付けることになる。タンパク質の機能的な形は、一般に、システインのジスルフィド結合、イオン結合、ならびに疎水性およびファン・デル・ワールスの相互作用の組み合わせにより、ある程度安定な立体構造を持つ。
【0039】
一般に、タンパク質の溶解度は、そのたんぱく質を構成する、荷電アミノ酸、および程度は低いものの極性アミノ酸の数に関連する。これらの荷電および極性グループは、水溶液中で水分子と溶媒和し、この相互作用がポリペプチド鎖を溶液中に保つ。正または負に荷電したアミノ酸の数が不十分なポリペプチドの水性の溶解度は限られている。タンパク質中に存在する正および負に荷電したグループが、互いに相互作用し、溶媒和の水を置き換えるため、水性の溶解度が低下する場合もある。1次配列では電荷の局在する明確な領域を持たない多くのタンパク質も、2次構造のために電荷の局在する領域を示すことがある。したがって、多くのタンパク質は、荷電ポリマーテンプレートとの相互作用を通じて、溶解度を変化させることができる。この変化は、タンパク質の固有の構造、イオン性ポリマーの鎖長、電荷、および電荷密度に依存する。
【0040】
比較的電荷密度の高い荷電ポリマーと複合体を形成することは、いかなるタンパク質でも電荷密度を上昇させる方法の1つである。少数の正に荷電した残基(リジンまたはアルギニン)を持つタンパク質は、ポリリン酸塩のような負に荷電したポリマーと複合体を形成することができる。ポリマーの負に荷電したグループのいくつかは、タンパク質中に存在する正に荷電したグループと相互作用する。ポリマー上の残りの荷電グループは、ほとんどの場合は水である溶媒と相互作用することができ、電荷密度およびタンパク質の溶媒和を効果的に上昇させる。または、ポリエチレンイミンのような正に荷電したポリマーを使って、タンパク質の負に荷電した残基と複合体を作らせることができる。両方のタイプの荷電ポリマーが同様に効果的に働く場合もあるが、いずれかの電荷の方が有効な場合もある。特定の荷電ポリマーの有効性は、タンパク質のアミノ酸組成、タンパク質のアミノ酸分布、タンパク質の立体構造、荷電ポリマーの電荷密度、荷電ポリマーの鎖長、溶液のpH、およびその他の変数に依存する。しかし、どのようなタンパク質でも、タンパク質と結合し、タンパク質の電荷密度を本質的に上昇させるような反対の電荷を持つポリマーは、水性媒質中でのそのタンパク質の溶解度特性を改善する可能性が高い。
【0041】
定義
本明細書に使用される「加工処理」という用語は、医薬品として許容可能な量のタンパク質の精製と調製を意味する。加工処理には、可溶化、再生、クロマトグラフ分離、沈殿、および製剤のような1つまたは複数のステップが含まれることがある。
【0042】
「荷電ポリマー」および「荷電ポリマーテンプレート」という用語は、繰り返し構造のユニットが直鎖状または非直鎖状に結合したバックボーンで構成されるすべての化合物のことで、繰り返しユニットには正または負に荷電した化学グループが含まれるものがある。繰り返し構造ユニットの性質は、多糖類、炭化水素、有機物、または無機物のでありうる。繰り返しユニットはn=2からn=数百万に渡る。
【0043】
本明細書に使用される「正に荷電したポリマー」という用語は、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、および第4アンモニウムのような正の電荷を持つ、持つことができる、または持つように修飾できる化学グループを含むポリマーを意味する。
【0044】
本明細書に使用される「負に荷電したポリマー」という用語は、リン酸または他のリンを含む酸、硫酸および他の硫黄を含む酸、硝酸および他の窒素を含む酸、ギ酸および他のカルボン酸の誘導体のような、負の電荷を持つ、持つことができる、または持つように修飾できる化学グループを含むポリマーを意味する。
【0045】
本明細書に使用される「ポリエチレンイミン」という用語は、エチレンイミン(H3N+-(CH2-CH2-NH2+)x-CH2-CH2-NH3+)の繰り返しユニットから構成されるポリマーを意味する。分子量は5,000から50,000以上に渡る。
【0046】
本明細書に使用される「ポリリン酸塩」という用語は、無水リン酸結合で結合した正リン酸塩の繰り返しユニットで構成されるポリマーを意味する。繰り返しユニットの数は、2(ピロリン酸塩)から数千に渡る。ポリリン酸塩は、しばしばヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)と呼ばれる。他の通称には、グラハムズ塩、カルゴン、リンガラス、テトラメタリン酸ナトリウム、およびグラスHがある。
【0047】
本明細書に使用される「再生」という用語は、タンパク質の復元を意味する。通常、再生の目標は、再生ステップなしに生産されたタンパク質よりも高いレベルの活性を持つタンパク質を生産することである。折りたたまれたタンパク質分子は、最低の自由エネルギーを持つ立体構造で最も安定である。ほとんどの水溶性タンパク質は、疎水性アミノ酸の大部分が、水から離れて分子の内部になるように折りたたまれる。タンパク質をまとめている弱い結合は、ポリペプチドの折りたたみをほどき、すなわち変性させるようないくつかの処理によって破壊されることがある。折りたたまれたタンパク質は、イオン結合、ファン・デル・ワールス相互作用、水素結合、ジスルフィド結合、および共有結合を含む、アミノ酸自身とその環境との間の数種類の相互作用によって作られる。
【0048】
本明細書に使用される「変性」という用語は、天然あるいは再生した状態では分子中に存在するイオン結合および共有結合、ならびにファン・デル・ワールス相互作用の破壊に至るような、タンパク質またはポリペプチドの処理を意味する。タンパク質の変性は、例えば、8 M尿素、メルカプトエタノールのような還元剤、熱、pH、温度、およびその他の化学物質による処理で生じる。8 M尿素のような試薬は、水素結合と疎水性結合の両方を破壊し、さらにメルカプトエタノールも加えられると、システイン間で形成されたジスルフィド結合(S-S)も2つの-S-H基に還元される。天然または再生状態でジスルフィド結合を持つタンパク質の再生には、そのタンパク質のシステイン残基上に存在する-S-H基を酸化して、ジスルフィド結合を再形成させることもある。
【0049】
本明細書に使用される「グリコサミノグリカン」という用語は、ウロン酸とヘキソースアミンの残基が交互に含まれる多糖類を意味し、通常硫酸塩が含まれる。本明細書に記載される再生反応におけるタンパク質のグリコサミノグリカンへの結合は、イオン性相互作用による。
【0050】
本明細書に使用される「硫酸デキストラン」という用語は、デキストランのポリ陰イオン性誘導体を意味し、分子量は8,000から500,000ダルトンに渡る。デキストランは、グルコース残基がα1,6結合でつながったグルコースのポリマーである。
【0051】
本明細書に使用される「ヘパリン」という用語は、2糖の繰り返し(-4DGlcA(p)β1, 4GlcNAcα1-)nに基づくが、構築後に多大な修飾を受ける、2つのグリコサミノグリカンまたはヘパリノイドを意味する。ヘパリンは肥満細胞の顆粒中にヒスタミンと共に保存されるため、ほとんどの結合組織に見られる。一般に、ヘパリンはヘパリンよりも鎖長が短い。
【0052】
本明細書に使用される「HIC」という用語は、カラムと標的分子の間の疎水性相互作用を利用して、再生された産物から硫酸化多糖類およびその他の混在物を分離する、疎水性相互作用クロマトグラフィーを意味する。
【0053】
負に荷電したポリマーには、ヘパリン、硫酸デキストラン、およびアガロペクチンのような硫酸化多糖類、ならびにアルギン酸やカルボキシメチルセルロースのようなカルボン酸多糖類が含まれる。ポリリン酸塩のようなポリ無機酸も含まれる。ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、およびポリヒスチジンのようなポリアミノ酸も使用できる。
【0054】
正に荷電したポリマーには、DEAEデキストランのような多糖類、ならびにポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、およびポリアミンのようなポリ有機アミン、ならびにポリアミノ酸、ポリリジン、およびポリアルギニンが含まれる。いずれの電荷極性でも、ポリマーの組み合わせが使用できる。さらに、両性コポリマーも使用できる。
【0055】
本明細書に使用される「TFPI」は、成熟した組織因子経路阻害剤を意味する。上述のように、当技術分野において、TFPIはリポ蛋白質結合凝固阻害剤(LACI)、外因性経路阻害剤(EPI)、および組織因子阻害剤(EFI)としても知られている。本定義においては、TFPIの生物活性を保持するTFPI突然変異タンパク質も含まれる。さらに、本定義においては、細菌細胞中で生産するためにわずかに修飾したTFPIも含まれる。例えば、TFPIポリペプチドのアミノ末端にアラニン残基を持つTFPIアナログが大腸菌で作られている。米国特許第5,212,091号参照。
【0056】
本明細書に使用される「医薬品として許容可能な組成」は、製剤化されたTFPIの生物活性を無効にしたり、または低下させたりしない組成で、製剤化されたTFPIが患者に投与された場合に有害な生物学的作用を持たないものを意味する。
本明細書に使用される「患者」は、ヒトおよび家畜の患者を意味する。
【0057】
本明細書に使用される「可溶化剤」という用語は、溶液中に存在するTFPIの溶解度を0.2 mg/mLを上回るように上昇させる塩、イオン、炭化水素、アミノ酸、およびその他の有機分子を意味する。可溶化剤は、TFPI濃度を1 mg/mLを上回る、あるいは10 mg/mLを上回るように上昇させることもある。可溶化剤は、安定化剤として働くことがあることに注意すべきである。安定化剤は、保存中のTFPIの単位活性を保つが、これは凝集物の形成を予防するか、またはTFPI分子の分解(例、酸触媒反応による)を予防するためであることがある。
【0058】
本明細書に使用される「2次的可溶化剤」という用語は、溶液中に可溶化剤と共存すると、TFPIの溶解度をさらに上昇させる有機塩、イオン、炭化水素、アミノ酸、およびその他の有機分子を意味する。2次的可溶化剤には、他の効果もあることがある。例えば、2次的可溶化剤は浸透圧の調節に有用なことがある(例、等張性)。
【0059】
TFPIのアミノ酸配列は、参照および図4として本明細書に組み入れられる米国特許第5,106,833号に開示されている。TFPIおよびTFPI-2の突然変異タンパク質は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第08/286,530号に開示されている。米国特許出願第08/286,530号に開示されるように、 単一または複数の点変異を持つTFPIおよびTFPI-2の突然変異タンパク質、ならびにTFPIおよびTFPI-2のキメラ分子が調製できる。例えば、第1番目のTFPIのクニッツ型領域P1部位のリジン残基は、アルギニンで置換することができる。1つないし5つのアミノ酸置換を持つ突然変異タンパク質は、TFPIまたはTFPI-2をコードする組換えクローニング媒体の配列に、適切な突然変異誘発を行うことで調製できる。突然変異誘発の技術には、部位特異的突然変異誘発が含まれるが、これに限定されるわけではない。部位特異的突然変異誘発は、当技術分野において既知のいずれの方法を用いても実行できる。これらの技術は「Smith (1985) Annual Review of Genetics, 19:423」に記載され、この技術の一部の修正法は「METHODS IN ENZYMOLOGY(酵素学の方法)、 154, part E, WuおよびGrossman編(1987)、17、18、19、および20章」に記載されている。部位特異的突然変異誘発を用いる際の好ましい方法は、ギャップトデュープレックス位置指定突然変異誘発法の修正法である。一般的な方法は、上記Method in Enzymologyの17章にKramerらによって記載されている。核酸配列中の点変異誘発のもう1つの技術は、重複PCRである。重複PCRを用いた点変異誘発方法は「PCR PROTOCOLS: A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS(PCRプロトコール:方法と応用のガイド), Innis, Gelfand, SninskyおよびWhite編(Academic Press, 1990)」の22章にHiguchiにより記載されている。
【0060】
または、TFPI-2の第1番目のクニッツ型領域、ならびにTFPIの第2および第3番目のクニッツ型領域を含むハイブリッドタンパク質が、作成できる。TFPIおよびTFPI-2をコードするDNAを保有し、DNAクローニング分野に熟練する者は、既知のクローニング方法を用いて、かかるキメラタンパク質の生産のために適切なDNA分子を調製することができるだろう。または、各クニッツ型領域の一部または全部をコードする合成DNA分子、ならびにクニッツ型領域を結合するペプチド配列が調製できる。または、重複PCR技術を用いてTFPIおよびTFPI-2配列を含むキメラ分子をコードするDNAを調製することもできる。
【0061】
参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第08/286,530号に記載されるように、酵母の発現系でTFPIを調製することができる。「Petersenら、J. Biol. Chem. 18:13344-13351 (1993)」のように、酵母の細胞培養培地からTFPIを精製する方法も開示されている。これらの場合には、組換えTFPIが酵母細胞から分泌される。かかるプロトコールで回収されるTFPIも、N末端の修飾、タンパク分解、および不ぞろいのグリコシル化のために、しばしば不均質である。したがって、当技術分野において、真正で(すなわち、正しいN末端アミノ酸配列を持つ)、全長、および均質な成熟TFPIを生産する必要がある。
【0062】
大腸菌ホスト中で非グリコシル化型のTFPIを発現させることでTFPIを生産する方法を開示する米国特許第5,212,091号に記載されるようにして、大腸菌でTFPIを生産することができる。
【0063】
本発明の1つの局面では、例えば、ヘパリンまたは硫酸デキストランのような硫酸化多糖類のポリマーに結合する能力のある組換えタンパク質が、再生される。本発明は、再生するタンパク質のテンプレートとして働く硫酸化多糖類のポリマーを用いて、組換えにより生産された変性タンパク質産物の再生を促進する方法を与える。特定の理論に限定されることなく、発明者は再生するタンパク質とポリマーテンプレートの間の相互作用が、再生中の中間体の凝集を抑制し、タンパク質が天然の立体構造に再生するための環境を与えることがあると考える。テンプレートとして働くポリマーは、タンパク質の領域または部位に結合し、中間体を安定化させ、凝集することなく再生がさらに進行するのを助けるのかもしれない。タンパク質の凝集物が形成されると、これは一般に、凝集せずに再生されたタンパク質よりも活性が低く、一般に活性を持つ再生タンパク質の全収率を低下させる。再生条件のNaCl濃度は重要だと考えられ、テンプレートのポリマーと再生するタンパク質との間の相互作用を最大にすることで、再生の効率を最大にするように選択される。例えば、発明者は、NaClの濃度が約0.2 M以下であると、TFPIのC末端や第3番目のクニッツ型領域の、ヘパリンまたはその他の硫酸化多糖類ポリマーへの結合が、促進されることを見出した。中間体に対するポリマーの結合は、中間体の溶解度を改善し、再生中の中間体の凝集を減少させることにより、残りのタンパク質が再生するための環境を与えると考えられる。
【0064】
一般的方法
TFPIは、米国特許第5,212,091号(この開示は参照として本明細書に組み入れられる)に開示の組換え法によって製造することができる。簡単に説明すると、TFPIは大腸菌細胞で発現され、TFPI含有封入体は残余の細胞物質から単離される。封入体を亜硫酸処理し、イオン交換クロマトグラフィを用いて生成し、ジスルフィド交換反応により再生して、カチオン交換クロマトグラフィにより再生した活性TFPIを精製した。TFPIはまた、同時継続中の米国特許出願第08/286,530号に開示される酵母で産生してもよい。
【0065】
TFPI活性は、プロトロンビンタイムアッセイ(PTTアッセイ)によって試験することができる。オルガノンテクニカ社(Oklahoma City, OK)製のモデルRA4 Coag-A-Mateを用いるプロトロンビン凝固時間により、TFPIの生物学的活性を測定した。まずTFPI試料をTBSA緩衝液(50 mMトリス、100 mM NaCl, 1 mg/mL BSA, pH 7.5)で9 〜 24 μg/mLに希釈した。次いで試料トレイで、10 μLのVarify 1(プールされた正常プラズマ、オルガノンテクニカ社製)を希釈したTFPI試料90 μLと混合し、上記器具で37℃に加温した。最後にSimplastin Excel(トロンボプラスチン、オルガノンテクニカ社製)を添加すると凝固が開始した。TFPIの抗凝固活性による凝固時間の遅延を測定し、TFPIの標準曲線と比較することによって測定された試料のTFPI濃度に変換した。
【0066】
カチオン交換クロマトグラムの主ピークを測定することにより、可溶性TFPIの量も定量することができる。Water 717とヒーター/冷却器自動サンプラーを備えたWaters 626LCシステム(Waters Corporation, Milford, MA)を使って、TFPI試料のHPLC分析を行った。パーキン・エルマー社のTurbochrom(商標)によって、得られたデータを処理した。
【0067】
上記カチオン交換(IEX)法ではPharmacia Mono S HR 5/5ガラスカラムを使用した。80%緩衝液A(20 mM酢酸ナトリウム三水和物:アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)および20%緩衝液B(20 mM酢酸ナトリウム三水和物 - 1.0 M塩化アンモニウム:アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)でカラムを平衡化した。 試料を注入した後、21分間で20%緩衝液Bから85%緩衝液Bまで勾配をつけ、0.7 m/分の流速でTFPIを溶出した。溶出されたTFPIを214 nmの吸光度により検出した。主ピーク(モノマーTFPI)は約18分で溶出することがわかった。主ピークの残りのピーク領域を積算することにより可溶性TFPIの損失を定量した。
試薬はすべてU.S.P.(米国薬局法)またはA.C.S.(米国化学協会)グレードである。供給元にはJ. T. BakerおよびSigma Co. (St. Louis, MO)が含まれる。
【0068】
以下いくつか態様を挙げて、実施例を参照しながらて本発明を説明する。しかしながら、これらの実施態様は例示のためであり、いかなる方法であっても本発明を限定するものではないことに留意すべきである。
【実施例1】
【0069】
実施例1:変性TFPIの再生
以下の実施例は、原液の製造、HICカラム製造、再生に先立って行うTFPIの最初の回収及び精製、TFPIの再生、そして活性TFPIの回収を説明する。
【0070】
細菌でのリコンビナントTFPI発現によって得られる屈折体(refractile bodies)から原液を作った。10 mM DTTを含有する8 M 尿素および50 mM トリス pH 8.5に屈折体を10 mg/mL溶解した。この溶液を10分間10,000 xで遠心分離してクリアーにした。
【0071】
溶解したTFPIの第一段階精製用カラムの製造は、5 mM DTTおよび1 mM EDTAを含有する7.5 M 尿素、10 mM トリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)に混合したS-セファロースを用いて行った。5 mg/mLの濃度で溶解したTFPIを次いでS-セファロースカラムに流し、0〜1Mの塩化ナトリウム勾配で溶出した。精製したTFPIは、280 nmの波長で3.2の吸光度をもっていた(この吸光度は0.78の吸光係数を用いると4.1 mg/mLと同等である)。
【0072】
硫酸デキストラン原液は、シグマ製商品番号D-491の分子量8000ダルトンをもつ硫酸デキストランからなり、0.1 M塩化ナトリウム中50 mMトリス(pH 8.8)で50 mg/mL(6.25 mM)にし、使用するまで-20℃で保存した。
【0073】
再生を行うのにヘパリンを使用する場合、ヘパリン原液は、シグマ社(St. Louis, MO)の商品番号H-3393からナトリウム塩として製造された6000〜30,000ダルトンの分子量のもの(平均分子量18,000ダルトン)を、0.1 M塩化ナトリウム中50 mMトリス(pH 8.8)で60 mg/mL(3.33 mM)にし、使用するまで-20℃で保存した。
【0074】
S-セファロースで精製したTFPIに、硫酸デキストラン原液かあるいはヘパリン原液を添加することができる。6〜8 M尿素中変性条件下でデキストランかヘパリンをTFPIに添加した。TFPI含有変性溶液を4℃試薬で3 M尿素、50 mMトリス(pH 8.8)、0.2 M塩化ナトリウムおよび0.5 mg/mLのTFPIに希釈し、再生をどれで実施するかにより、硫酸デキストラン濃度が最終0.6 mg/mL(75μM)、またはヘパリン濃度が最終1.5 mg/mL(83μM)になるように希釈した。再生する溶液にシステインを添加して最終DTT濃度に等しい最終濃度にした。再生物溶液は、4℃で穏やかに撹拌しながら4 〜 6日間、好ましくは5日間インキュベーションした。
【0075】
この方法の例示として、以下は硫酸デキストランまたはヘパリン中TFPIの5 mL溶液を再生するプロトコールの詳細である。
【0076】
610 μLのTFPI原液に、0.1 M NaCl中65 μLの50 mMトリス(pH 8.8)を含む60 μLの硫酸デキストラン、または50 mMトリス(pH 8.8)あるいは0.1 M NaClを含む125 μLのヘパリン原液を添加した。再生する溶液を混合し、氷上で10分間インキュベーションした。次に、2.5 mMの尿素、50 mMトリス(pH 8.8)および165 mM塩化ナトリウムを含む再生物緩衝液を再生物溶液に添加混合した。最後に120 mMの水酸化ナトリウム中61 μLの50 mMシステインを添加し、溶液全体を4℃で穏やかに撹拌しながら4日間インキュベーションした。エルマン試薬(DTNBともいう)で遊離のスルホヒドリル量を調べた。Idoacetamideを添加して20 mMにし、100%エタノールで1 Mにして-20℃で保存した。
【0077】
Butyl-650M Tosohaas Toyopearl樹脂粒子サイズ40-90, part # 014702から、疎水性の相互作用カラム(HIC)を作成した。ブチル樹脂を、3 M尿素、1 M硫酸アンモニウム、50 mMトリス、10 mMリン酸ナトリウム、pH 6.5で洗浄し、50%スラリーに再懸濁した。-20℃で保存した再生物試料は、3 M尿素、50 mMトリス、pH 8.8、1-4 mMレドックス、0.5 mg/mL TFPIおよび条件により0.2-0.6 M NaClを含有する標準再生物緩衝液に残留していた。デキストランまたはヘパリンで再生された試料には、0.2 Mの塩があったが、デキストランまたはヘパリンなしの試料には0.6 M NaClがあった。
【0078】
以下のステップを室温で行い、再生されたTFPIをさらに精製した。300 μLの再生物試料に、等量の2M硫酸アンモニウム、3 M尿素、50 mMトリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)を添加した。次に100μLのButyl-650M ビーズを希釈した再生物試料に加えた。室温で穏やかに振とうしながらあるいは30分間混合しながら、ビーズを加えた溶液をインキュベーションした。次いで混液はエッペンドルフ遠心分離器で5秒間回転させた後、ラックに置いて1分間放置し、ビーズをチューブの中で平面に沈降させた。ビーズをまきあげないよう注意して上清を吸引した。
【0079】
TFPI結合ビーズを洗浄するために、1 M硫酸アンモニウム、3 M尿素、50 mMトリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)からなる洗浄緩衝液1 mLをビーズに添加して、残留硫酸デキストランまたはヘパリンを除いた。洗浄した混液は、エッペンドルフ遠心分離器で5秒間回転させた後1分間放置し、前記のようにビーズを沈降させた。上清を除いた後、最後に上記洗浄液でビーズを洗い、遠心分離して前記のように放置した。最後の洗浄および沈降後、先端を火炎で引き延ばしたパスツールピペットを使って非常に注意深く上清を除いた。
【0080】
再生TFPIを溶出するために、3 M尿素、0.1 M硫酸アンモニウム、50 mMトリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)からなる300μLの溶出緩衝液をビーズスラリーに添加して、10分以上振とうした。エッペンドルフ遠心分離器で遠心分離することにより、ビーズをペレット化し、再生TFPIを含有する上清を回収した。生成物をもつビーズの汚染を回避するため、上清の一部を後に残しておいた。
【実施例2】
【0081】
実施例2:硫酸デキストラン再生物のHIC
TFPI試料を0.5 mg/mL TFPI、0.6 mg/mL硫酸デキストラン、3.0 M尿素、200 mM NaClおよび50 mMトリス(pH 5.5)の濃度で再生した。HICカラムは、1.66 mLのスラリー中HIC用のTosohaas Butylビーズ、4.6 mmD/100 mLから作った。HICカラムに流す前に、3.0 M尿素および3.0 M NH4SO4を用い2:3 の割合で最終pH が5.68になるよう試料を希釈しておき、2 mLの試料を流した。勾配開始は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウム、1.0 M NH4SO4 および3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配終点は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウムおよび3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配容量は5.0 CVであった。このカラムから、天然本来のTFPIが68%回収された。結果を図2に示す。
【0082】
第二のHICカラム実験も行った。変性TFPI試料を、3.0 M尿素および1.5 M NH4SO4で2:3 の割合に希釈した後その2 mLを流した。勾配開始は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウム、0.5 M NH4SO4 および3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配終点は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウムおよび3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配容量は5.0 CVであった。この第二カラムから、天然のTFPIが74%回収された。結果を図3に示す。
【0083】
以上の試料を図1に図示するような非還元性SDS-PAGEによって分析した。正しく再生された活性TFPI種(主バンド)がゲル上に観察される。
【実施例3】
【0084】
実施例3
2M尿素中約10 mg/mLのTFPIを以下に記載する物質のうちの一つに対して透析した:前述の20 mMリン酸塩、20 mMクエン酸塩、20 mMグリシン、20 mM L-グルタミン酸塩または20 mMコハク酸塩、150 mM NaCl 中の 20 mM酢酸塩。6 〜 10 mg/mLのTFPIバルク原液をSpec/Pro 7透析チューブ(MW cutoff 3,500)に流した。透析は4℃または周囲温度で行った。12〜24 時間にわたる透析中に、1 〜50-100のタンパク質溶液:緩衝液比で緩衝液を三段階に変化させた。TFPI溶液をCostar 0.22 ミクロンフィルターで濾過して可溶性TFPIからTFPI沈殿を分離した。次いで、278 nmにおける吸光係数を0.68 (mg/mL)-1と推定して、UV/可視吸光度によりTFPIの溶解性を測定した。HClまたはNaOHを用いる滴定により、種々のpHレベルの溶液を作った。
【0085】
透析終了後、0.22 μmのフィルターユニットにより沈殿物を濾過した。透析後に残留している可溶性TFPIの濃度をUV吸光度で測定した。図1は以上の実験結果を示すものである。TFPIの溶解性は、20 mM酢酸、20 mMリン酸、20 mM L-グルタミン酸および20 mMクエン酸を含有する溶液ではpH7より低いレベルで、特にpH 4.5またはそれより低いpHレベルで、非常に増加した。TFPIの溶解性はまた20 mMグリシンを含有する溶液中pH 10を超えるレベルで有意に増加した。TFPIの溶解性を10 mM リン酸ナトリウム存在下pH 7におけるクエン酸イオンの濃度関数として図2に示す。TFPIの溶解性は、クエン酸の濃度が上昇するにつれ増加する。TFPIの溶解性をpH 7におけるNaClの濃度関数として図3に示す。TFPIの溶解性は、塩の濃度が上昇するにつれ増加し、塩がTFPIの溶解性を促進することを示している。
【0086】
多数の異なる溶解剤および二次的溶解剤を用いて、TFPIの溶解性を調べた。6〜10 mg/mLのTFPIをこれらの緩衝液に対して透析した後のUV吸光度によって測定した、種々の緩衝液におけるTFPIの溶解性を表1に示す。
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【実施例4】
【0087】
実施例4
種々のpH条件で保存したTFPIの溶解性を調べた。10 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaClおよび0.005% (w/v) ポリソルベート80中、上記のように透析してTFPIを作った。150 mg/mL TFPIを含有する溶解性試料を40℃で20日間インキュベーションした。カチオン交換クロマトグラムの主ピーク減少を追跡することによって、残留する可溶性TFPIの動力学的速度係数を分析した。図5からわかるように、崩壊レート定数はpH 6.0を超えるレベルで上昇し、これより高いpH条件ではさらに凝集することを示している。
【0088】
pH 7においてリン酸の濃度を変え、150 mM NaClおよび0.005% (w/v) ポリソルベート80中TFPIを150 mg/mL含有する組成物も作った。図5Aは、カチオン交換HPLCにより測定した残留可溶性TFPIのパーセントを示す。溶液中リン酸濃度を上昇させると、40℃におけるインキュベーション後も残留する可溶性TFPIがより高レベルで得られた。プロトロンビンタイムアッセイで測定した場合には、より高レベルのリン酸イオンでも、より高レベルの活性TFPIが得られた。以上の結果を図5Bに示す。
【0089】
0.5 mg/mL濃度であって10 mMクエン酸ナトリウムおよび150 mM NaCl で作った TFPIの溶解性もまた40日間40℃でインキュベーションした後調べた。図6からわかるように、カチオン交換HPLC(三角△)は、60%イニシャルよりも、また40日間インキュベーションした後でさえも、より高いレベルで可溶性TFPIの存在を示している。同様に、上記プロトロンビンタイムアッセイ(円○)は、60%イニシャルよりも、また40日間インキュベーションした後でさえも、より高いレベルで活性TFPIの存在を示している。
【0090】
10 mMクエン酸ナトリウム、pH 6および150 mM NaCl(三角△)あるいは500 mM NaCl(円○)中0.5 mg/mL濃度のTFPIについて、カチオン交換HPLC(オープンシンボル)およびプロトロンビンタイムアッセイ(クローズシンボル)両方法により測定した40℃における可溶性TFPIの損失を図7に示す。
【0091】
150 mM NaCl(三角△)あるいは8% (w/v)のショ糖(四角□)あるいは4.5% (w/v)マンニトール(円○)を含有する10 mM酢酸ナトリウム、pH 5.5中0.5 mg/mL濃度のTFPIについて、カチオン交換HPLC(オープンシンボル)およびプロトロンビンタイムアッセイ(クローズシンボル)両方法により測定した40℃における可溶性TFPIの損失を図8に示す。
【0092】
図9には、pH 4 〜9において、40℃で0日間(下方)および20日間(上方)で保存した、10 mM NaPO4、150 mM NaClおよび0.005% ポリソルベート-80で作ったpH 4 〜pH 9のTFPIに対する二つの非還元性SDSゲルを示す。0日ではTFPIの損失は見られない。しかしながら、20日では低pHレベル(すなわちpH 4およびpH 5)でTFPIの分解断片が観察されることがある。特定の理論に拘束されるものではないが、これら断片は酸によって触媒される反応から生じるものと考えられる。
【0093】
最後に、種々の組成について40℃で残留する可溶性TFPIの半減期を表2に示す。これらの組成条件で0.5 mg/mLのTFPIを作り、40℃でインキュベーションした。予め定めた時間毎に試料をとりだし、IEX-HPLCおよびPTアッセイによって可溶性および活性TFPIの損失を調べた。次いで、IEX-HPLCおよびPTアッセイ結果に単一指数フィッティングを行うことによって残留可溶性TFPIの半減期を計算した。
【実施例5】
【0094】
実施例5
ポリイオン性化合物を使用するクロマトグラフィ樹脂から置換モードにおけるTFPIの溶出
まず低塩緩衝液中の樹脂にTFPIを結合させる。次に置換モードにおいてTFPIを溶出するのに使われるポリイオン性化合物をポンプでカラムに通す。この化合物はTFPIよりも樹脂の方に強く結合してTFPIを置換する。陽性荷電樹脂(アニオン交換剤)に対しては陰性荷電化合物を使用し、陰性荷電樹脂(カチオン交換剤)に対しては陽性荷電化合物を使用する。
【0095】
部分的に精製したTFPIを出発物質として使用した。6 M 尿素、20 mMトリス、pH 8.0のTFPIを、アニオン交換樹脂QセファロースHPを20 mg/mL充填したカラムに流した。流した後、6 M 尿素、20 mMトリス、pH 9.0でカラムを洗浄した。6 M 尿素、10 mMトリス、pH 9.0のGlass H(ポリリン酸)の10 mg/mLでTFPIを溶出した。
【実施例6】
【0096】
実施例6
ポリイオン性化合物を使用する水性緩衝液におけるクロマトグラフィ樹脂からのTFPIの溶出
【表2】
陽性荷電樹脂に対しては陰性荷電化合物を使用し、陰性荷電樹脂に対しては陽性荷電化合物を使用する。
3.5 M 尿素、1 mg/mLポリリン酸、50 mMトリス、pH 5.9のTFPIを、カチオン交換樹脂SPセファロースHPを20 mg/mL充填したカラムに流した。流した後、カラムを、尿素を含有しない緩衝液、10 mg/mLポリリン酸、10 M リン酸ナトリウム、pH 5.0で洗浄した。尿素を含まない、pH 5.0の同じ緩衝液でTFPIを溶出した。
【実施例7】
【0097】
実施例7
ポリイオン性化合物を使用するイオン交換樹脂からのTFPIの選択的溶出
TFPIの荷電末端のために、反対に荷電したポリイオン性化合物はそれら末端に結合する。ポリイオン性化合物が樹脂に対してよりもTFPIの方に強い結合性を持つ場合には、TFPIをクロマトグラフィ樹脂から選択的に溶出することができる。
【0098】
3.5 M 尿素、1 mg/mLポリリン酸、50 mMトリス、pH 5.9のTFPIを、カチオン交換樹脂SPセファロースHPに流した。流した後、カラムを6 M尿素、1 mg/mLポリリン酸、10 M リン酸ナトリウム、pH 5.9で洗浄した。TFPIは、20 mg/mLポリリン酸までの25カラム容量勾配で溶出した。TFPIは約2〜3 mg/mLのポリリン酸で溶出し始める。
【実施例8】
【0099】
実施例8
TFPIのクロマトグラフィ分離に先立つポリイオン性化合物の中和
TFPIは荷電したポリマーと相互作用することができる。この相互作用は、クロマトグラフィ樹脂に対する結合および精製を妨げることがある。荷電したポリマーを反対荷電のポリマーで中和することにより、TFPIを樹脂と結合させることができる。ポリリン酸(Glass H)を含有する緩衝液において、TFPIはExpress Ion S(Whatman)と結合しないので精製することができない。PEIをカラムロードに混ぜることによってTFPIを樹脂に結合させTFPIを精製することができる。
【実施例9】
【0100】
実施例9
ポリリン酸(Glass H)による促進再生プロセスを用いるリコンビナントヒトTFPI(rhTFPI)の再生および精製
約40 gのrhTFPIを含有する封入体は、-20℃のフリーザーからその容器を取り出し、これを4〜10℃の冷室に約196時間おいて解凍した。次いで、凍結中に起こる凝集を減少させるため、解凍した封入体を高せん断ミキサーで分散させた。オーバーヘッド撹拌器を備えた100 Lのポリエチレン製タンクに入れた、3 M 尿素、50 mMトリス-Cl、pH 10.5の緩衝液80 Lに、2 g/L Glass Hを含有する解凍した封入体を添加した。内容物を約15分間混合した後、溶液の吸光度を280 nmで測定した。吸光度がより大きい場合には、280 nmで1.0〜1.1の吸光度を得るのに十分な溶解緩衝液で混液を希釈した。穏やかにかき混ぜながら、溶液は15 〜30分間インキュベーションした。次いで0.1 mMのシステイン濃度を与えるに十分なシステインを添加した。固体のL-システインを約50 mlの精製水に溶解して再生物混液に添加した。pHをチェックし、必要なら、pH 10.2に調整した。穏やかにかき混ぜながら、再生物混液を96 〜120時間インキュベーションした。
【0101】
約96時間後、再生物混液のpHを氷酢酸でpH 5.9に調節することにより、再生プロセスを終了させた。90分間撹拌を続けてpHをチェックした。さらに酸を添加して、必要ならば上記pHを5.9 +/- 0.1に調整した。二段階濾過法を使用してこのステップ以前に生じた粒子を除き、SP-セファロースHPクロマトグラフィ用の酸化された再生物混液を作った。まず、酸化された再生物混液は、ぜん動ポンプ(1/4〜3/8インチ内径シリコン管押し出し)を使ってCuno 60LP深さのフィルター(フィルターハウジングモデル8ZP1P)に通す。
【0102】
使用に先立ち、脱イオン化された6 M尿素8〜10 Lで上記フィルター系を洗浄した。濾液を100 Lポリエチレンタンクに集めた。背圧は一定の20 PSIに保った。新しいフィルター用の最初の流速は約5〜6 L/分であった。背圧を20 PSIに保つために、流速が1 L/分以下に落ちたときにはフィルターを交換した。濾過の第二段階には、ぜん動ポンプシステムを備えた0.45ミクロンのフィルターカートリッジ(Sartorius Sartobran pHまたは同等物)を使用した。濾過後pHを調べ、必要があればpH 5.9に調整した。
【0103】
酸化され濾過された再生物混液を、約80.0 ml/分の流速で平衡化したSPセファロースHPカラムに流した。酸化され濾過された再生物混液を一晩中流すのに適当な流速に調整された。流す前に、カラムは6 M尿素、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 5.9で平衡化された。混液を流した後、勾配溶出ステップを行う前に、カラムを6 M尿素、0.3 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液、pH 5.9で洗浄した。洗浄ステップおよび以下の全ステップに対して流速を190 〜200 ml/分に増加した(線速度= - 47 cm/hr)。6 M尿素、20 M リン酸ナトリウム緩衝液、pH 5.9において、0.3〜0.5 M NaClの線塩勾配を使って、生成物をカラムから溶出させた。上記勾配は、6 M尿素、0.5 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液を、6 M尿素、0.3 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液へ送り出すことによって形成した。Parametrics製のParatrol Aミキサー(250210型)を使用して激しく撹拌しながら約100 ml/分の流速で、限界緩衝液をMasterflexヘッド(7015.21型)付きMasterflexポンプ(7015.21型)を使って押し出した。上記勾配の総容量は71.0リットルまたは13.0 CVであった。上記勾配緩衝液のpHは5.92 +/- .02であった。SDS-PAGEを用いて分画を定量し、他の再生ミスおよび不純物に対して正しく再生されたSC-59735の容量に基づきプールした。プールの後、このプロセスの流れをSプールとする。
【0104】
次いで2.5 NNaOHでSプールのpHをpH 8.0に調整した。アミコンYM10らせんカートリッジ(10,000 M.W. cut-off 膜)を含有するアミコンDC-10L限外濾過ユニットを用いて、このSプールを約2 Lになるまで2〜3倍濃縮した。濃縮後、上記濃縮Sプールを6 M尿素、20 mMTris-HCl緩衝液 pH 8.0の7容量に対して膜濾過した(diafiltration)。膜濾過は、レンテネート(retentate)の導電率が2 mS以下の場合、完全だと考えられる。膜濾過濃縮物を限外濾過ユニットから排出し、このユニットを約1 Lの膜濾過緩衝液で洗浄した。洗浄液を濃縮物と合わせてQ-loadを作る。
【0105】
アミコンカラム(直径7.0 cm)を約700 ml のQ-セファロース高速媒体(ファルマシアQ-セファロースHP)で充填した。カラムを20 psiで20%エタノールにより充填した。充填後のベッド高さは約18 cmであった。6 M尿素、0.02 M Tris/HCl緩衝液 pH 8の5 CVでカラムを平衡化した。タンパク質ローディングの標的は、Qセファロース樹脂1 mlにつき8〜10 mgタンパク質である。Q-loadを流速30 〜35 ml/mn(50 cm/hr)でカラムに流した。流した後、6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0の約5 CVでカラムを洗浄した。または、280 nmの吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した。6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0において、25カラム容量について0〜0.15 M NaClからの塩化ナトリウム勾配を用いて生成物を溶出した。最初の7カラム容量を単一分画として集め、その後0.25カラム容量それぞれの30個の分画を集めた。
【0106】
分画は、還元および非還元SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィによってルーチン分析された。凝集容量(SEC HPLC法MSL 13929により<5%)および純度評価のためのSDS-PAGEによる定性にもとづき分画をプールした。プールするまでこの分画は-20℃で凍結保存する。
【0107】
利用できるQセファロース分画をプールし、2M HClを用いてプールのpHを7.2に調整した。次いでこのプールをS1Y1アミコンYM-10カートリッジ(10,000 MWCO らせんカートリッジ膜)を含有するアミコンDC-1限外濾過システムで、このプールを約5倍に濃縮した。次いで濃縮したQプールを2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の7カラム容量に対して膜濾過濾過した。限外濾過後、溶液を限外濾過系から排出した。2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の約100 mlを約15分間、この限外濾過系に循環させた。洗浄液をもとの濃縮液と合わせて、得られた溶液を0.45ミクロン減圧濾過器(Nalgene)で濾過した。
【実施例10】
【0108】
実施例10
ポリエチレンイミン(PEI)による促進再生プロセスを用いるrhTFPIの再生および精製
約40 gのrhTFPIを含有する封入体は、-20℃のフリーザーからその容器取り出し、これを4〜10℃の冷室に約96時間おいて解凍した。次いで、凍結中に起こる凝集を減少させるため、解凍した封入体を高せん断ミキサーで分散させた。ポリトロンホモジナイザー(Brinkman model PT45/80)を使って、この封入体スラリーを約1分間激しく混合した。または、オーバーヘッド撹拌器を備えた100 Lのポリエチレン製タンクに入れた、300 mM NaClおよび0.4 g/L PEIを含有する6 M 尿素、100 mM Tris/HCl緩衝液、pH 9.8の40 Lに、この封入体を添加するまで激しく混合した。混液は20〜30分間激しく混合した。pHをモニターし必要ならばpH 9.8に調整した。溶解した封入体混合液の吸光度を280 nmで測定した。吸光度が2.1より大きい場合には、2.0〜2.1のA280値が得られるよう、上記の溶解緩衝液10リットルで試料を希釈した。さらに15〜30分間穏やかな撹拌を続けた。次いで溶解した封入体溶液を等量の1.0 M尿素、300 mM NaCl溶液で希釈した。最後に、0.25 mMの最終濃度になるまでL-システインを添加した。固体のL-システインを50 mlのWFIに溶解し、溶液として希釈した再生物混液に添加した。pHをチェックし、必要なら調整した。定期的にpHをチェックしてpH 9.8に調整すると共に、穏やかにかき混ぜながら、96〜120時間再生を継続した。再生の過程は、Mon-Sカチオン交換およびプロトロンビンタイムアッセイでモニターした。
【0109】
約96時間後、再生物混液のpHを氷酢酸でpH 5.9に調節することにより、再生プロセスを終了させた。90分間撹拌を続けてpHをチェックした。さらに酸を添加して、必要ならば上記pHを5.9 /- 0.1に調整した。
【0110】
二段階濾過法を使用してこのステップ以前に生じた粒子を除き、SP-セファロースHPクロマトグラフィ用の酸化された再生物混液を作った。まず、酸化された再生物混液は、ぜん動ポンプ(1/4〜3/8インチ内径シリコン管押し出し)を使ってCuno 60LP深さのフィルター(フィルターハウジングモデル8ZP1P)に通す。
【0111】
使用に先立ち、脱イオン化された6 M尿素8〜10 Lで上記フィルター系を洗浄した。濾液を100 Lポリエチレンタンクに集めた。背圧は一定の20 PSIに保った。新しいフィルター用の最初の流速は約5〜6 L/分であった。背圧を20 PSIに保つために、流速が1 L/分以下に落ちたときにはフィルターを交換した。濾過の第二段階には、ぜん動ポンプシステムを備えた0.45ミクロンのフィルターカートリッジ(Sartorius Sartobran pHまたは同等物)を使用した。濾過後pHを調べ、必要があればpH 5.9に調整した。
【0112】
酸化され濾過された再生物混液を、約80.0 ml/分の流速で平衡化したSPセファロースHPカラムに流した。酸化され濾過された再生物混液を一晩中流すのに適当な流速に調整された。カラムは次いで、6 M尿素、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 5.9の5.5カラム容量で洗浄した。洗浄ステップおよび以下の全ステップに対して流速を190 〜200 ml/分に増加した(線速度= - 47 cm/hr)。6 M尿素、20 M リン酸ナトリウム緩衝液、pH 5.9において、0.3〜0.5 M NaClの線塩勾配を使って、生成物をカラムから溶出させた。上記勾配は、6 M尿素、0.5 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液を、6 M尿素、0.3 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液へ送り出すことによって形成した。Parametrics製のParatrol Aミキサー(250210型)を使用して激しく撹拌しながら約100 ml/分の流速で、限界緩衝液をMasterflexヘッド(7015.21型)付きMasterflexポンプ(7015.21型)を使って押し出した。上記勾配の総容量は71.0リットルまたは13.0 CVであった。上記勾配緩衝液のpHは5.92 +/- .02であった。
【0113】
インライン放射計導電率メーターで測定してカラム入り口導電率が28.0 〜28.5 mS/cmに達したときに、分画を集め始めた。40個の500 ml分画(0.1 CV)を集めた。番号を付けた500 mlのポリプロピレン瓶をもつ、ファルマシアのFrac-300分画コレクターを使用した。分画収集を停止したとき、勾配の残り部分をプールとして集めた。
【0114】
カラム分画をA280、サイズ排除HPLCによってアッセイし、および、さらに情報を得る目的で、SDS PAGE、逆相HPLCおよびPTアッセイを行った。インプロセスSEC HPLCによる測定で、20%という少ない凝集を含有するプール基準を満たした場合には、分画をプールした。プールしたSPセファロース分画はSプールと呼ぶことにする。
【0115】
次いで2.5 NNaOHでSプールのpHをpH 8.0に調整した。アミコンYM10らせんカートリッジ(10,000 M.W. cut-off 膜)を含有するアミコンDC-10L限外濾過ユニットを用いて、このSプールを約2 Lになるまで2〜3倍濃縮した。濃縮後、上記濃縮Sプールを、6 M尿素、20 mMTris-HCl緩衝液 pH 8.0の7容量に対して膜濾過した(diafiltered)。膜濾過は、retentateの導電率が2 mS以下の場合、完全だと考えられる。膜濾過濃縮物を限外濾過ユニットから排出し、このユニットを約1 Lの膜濾過用緩衝液で洗浄した。洗浄液を濃縮物と合わせてQ-loadを作る。
【0116】
アミコンカラム(直径7.0 cm)を約700 ml のQ-セファロース高速媒体(ファルマシアQ-セファロースHP)で充填した。カラムを20 psiで20%エタノールにより充填した。充填後のベッド高さは約18 cmであった。6 M尿素、0.02 M Tris/HCl緩衝液 pH 8の5 CVでカラムを平衡化した。タンパク質ローディングの標的は、Qセファロース樹脂1 mlにつき8〜10 mgタンパク質である。Q-loadを流速30 〜35 ml/mn(50 cm/hr)でカラムに流した。流した後、6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0の約5 CVでカラムを洗浄した。または、280 nmの吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した。6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0において、25カラム容量について0〜0.15 M NaClからの塩化ナトリウム勾配を用いて生成物を溶出した。最初の7カラム容量を単一分画として集め、その後0.25カラム容量それぞれの30個の分画を集めた。
【0117】
分画は、還元および非還元SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィによってルーチン分析された。凝集容量(SEC HPLCにより<5%)および純度評価のためのSDS-PAGEによる定性にもとづき分画をプールした。プールするまでこの分画は-20℃で凍結保存する。
【0118】
プールできるQセファロース分画を2〜8℃にインキュベーションして解凍し、プールして、プールのpHを2M HClで7.2に調整した。次いでこのプールをS1Y1アミコンYM-10カートリッジ(10,000 MWCO らせんカートリッジ膜)を含有するアミコンDC-1限外濾過システムで、約5倍に濃縮した。次いで濃縮したQプールを2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の7カラム容量に対して膜濾過した。限外濾過後、溶液を限外濾過系から排出した。2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の約100 mlを約15分間、この限外濾過系に循環させた。洗浄液をもとの濃縮液と合わせて、得られた溶液を0.45ミクロン減圧濾過器(Nalgene)で濾過した。
【実施例11】
【0119】
実施例11
尿素のようなカオトロプの不存在下ポリリン酸を使用する、封入体からのrhTFPIの可溶化、再生および精製(GDS 5327089,92)
混合しながら、4 g/lポリリン酸(Glass H, FMC Corportaion)を含有する50 mM Tris緩衝液、pH 10.5に約2 gのrhTFPI(46 mg/mlのrhTFPIを含有する43 mlの封入体スラリー)を2〜8℃で溶解した。0.1 mMおよび0.05 mMの各溶液を作るのに十分なシステインおよびシスチンを添加した。溶液のpHを1 N NaOH でpH 10.5に維持した。穏やかに撹拌しながら、再生物溶液を72〜96時間、2〜8℃でインキュベーションした。
【0120】
次に氷酢酸を用いて再生物をpH 6に調整し、0.2ミクロンフィルターで濾過した。濾過した再生物のアリコートを、0.4% Glass H, 20 mMリン酸ナトリウム、pH 6緩衝液で予め平衡化したSPセファロースHP(ファルマシア)の200 mlカラムにかけた。その後、0.4% Glass H, 20 mMリン酸ナトリウム、pH 6緩衝液の4カラム容量でカラムを洗浄した。0.4% Glass H, 20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6から0.4% Glass H, 50 mM Tris pH 8緩衝液までの線pH勾配を利用して、このカラムを溶出した。分画を集め、SDS-PAGEで分析した。相対的に純粋なrhTFPIをこの方法で再生および精製することができた。
【実施例12】
【0121】
実施例12
TFPIとポリリン酸の複合体形成による改善されたrhTFPIの溶解性(GDS 5327046-47)
2 M尿素、125 mM塩化ナトリウム、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.4の約1リットル中精製したrhTFPI約10 gを2〜8℃で18〜36時間インキュベーションすることによって解凍した。十分乾燥した尿素を添加して6 M尿素溶液を作った。次いでこの溶液を0.2ミクロンフィルターで濾過した。ポリリン酸ガラス(Glass H, FMC)5 gを6 M尿素50 mlに溶解し、1 N NaOHでpH 7に調整した後、これをタンパク質溶液に加えた。次いで限外濾過により、 1スクエアフィートの膜(Amicon S1Y3)を使って約400 ml(〜25 mg/ml)になるまで濃縮し、精製水10容量(約4リットル)に対して膜濾過し、残っている尿素を除いた。膜濾過後、溶液を約250 mlになるまで濃縮し、限外濾過ユニットから除いた。限外濾過ユニットを約150 mlの精製水で洗浄し、タンパク質濃縮液に加えた。最終タンパク質濃縮液は400 mlの水中ほとんど10 gのタンパク質を含んでいた(約24 mg/mlタンパク質)。
【実施例13】
【0122】
実施例13
TFPI細胞ライセートおよび折れ曲がり体から大腸菌汚染物を除去するためのカチオン性ポリマーの使用
粗TFPI中間体(ライセート、折れ曲がり体)から大腸菌不純物を沈殿除去するためにカチオン性ポリマーを使用すると、以下のプロセス操作(再生、クロマトグラフィなど)を有意に改善することができる。カチオン性ポリマーの無作為スクリーニングによって、TFPIは溶液に残すが菌の汚染物は選択的に沈殿させる候補が同定された。特に、ベッツ(Betz)ポリマー624は、水性環境における溶液にTFPIを残す一方、実質的な量の細菌汚染物を沈殿させた。
【0123】
可溶化したTFPI折りたたみ体(3.5 Mグアニジン塩酸塩、2 M塩化ナトリウム、50 mM Tris、50 mMジチオスレイトール、pH 7.1中)がポリマー選択実験に使用した出発物質であった。この物質を種々のポリマーの0.5%溶液に10倍希釈した。TFPIの存在についてSDS-PAGEにより、この実験から得られた沈殿物の分析を行った。ベッツポリマー624は、TFPIを含まない、実質的な量の細菌汚染物を沈殿させて透明な水性溶液を与えた。
【実施例14】
【0124】
実施例14
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリン酸塩、尿素系での水性二相抽出を使用すると、TFPI精製の処理に有利である。典型的な水性二相抽出系は、二つのポリマー系(例えば、PEGとデキストラン)または一つのポリマーと塩(例えば、PEGと硫酸塩)からなる。本明細書に記載されているシステムは、分離に対してポリリン酸塩鎖の長さを最適化できること、安価であること、そして問題となっている汚染物を再生およびクロマトグラフィに干渉することが知られているTFPIの折りたたみ体から除くことに特異的であるという点で優れている(天然のリン酸塩および関連二価金属類)。
【0125】
TFPI折りたたみ体を7 M尿素、10 mM CAPS、1%モノチオグリセロール、pH 10に溶解した。異なる鎖長のポリリン酸塩とPEGを加えて二相を形成した。相分離の際、ポリリン酸塩と関連汚染物は下層に残して、TFPIはPEGリッチな上層に分配した。PEG、ポリリン酸塩両方の鎖長によって分離され、両方を変化させることによって最適化することができる。
【実施例15】
【0126】
実施例15
荷電ポリマーは大腸菌封入体から得られたリコンビナント組織プラスミノーゲン活性化因子の再生を促進した。
【0127】
リコンビナント組織プラスミノーゲン活性化因子を約2 g含有する封入体5 g(湿重量)を、1 mMの還元グルタチオン(GSH)および0.2 mM グルタチオンジスルフィド(GSSG)を含有する0.5% Glass H, 50 mM Tris 緩衝液pH 10.8約1リットルに添加した。ポリトロン(Brinkman)ホモジナイザーを用いて2〜3 分間完全に混合して封入体を完全に分散した。1 N NaOHでpHを10.5〜10.9に維持しつつ、オバーヘッド撹拌器でかき混ぜながら、上記混合液を15分間インキュベーションした。次いでこの混合液を2 〜8℃で48 〜72時間ゆっくり撹拌した。
【実施例16】
【0128】
実施例16
荷電ポリマーは大腸菌封入体から得られたウシソマトトロピンの再生を促進した。
【0129】
ウシソマトトロピンを5 g含有する封入体10 g(湿重量)を、1% Glass H, 50 mM Tris 緩衝液pH 10.5約1リットルに添加した。この混合液をポリトロン(Brinkman)ホモジナイザーを用いて2〜3 分間完全に混合して封入体を完全に分散した。1 N NaOHでpHを10.4〜10.6に維持しつつ、オバーヘッド撹拌器で15分間かき混ぜながら、上記混合液をインキュベーションした。固体システイン(121 mg)を加えて1 mMシステイン溶液を作り、再生物混合液を48〜72時間混合した。
【0130】
本明細書に引用した特許、特許出願および刊行物は参照として本明細書に組み入れられる。
【0131】
以上特定の態様を参照して本発明を説明したが、本出願は、クレームの範囲及び基本概念を逸脱することなく当業者がなし得る変更あるいは置換をも含むように意図されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1はフェニルセファロースHIC再生方法によるTFPIピーク分画のSDS-PAGE分析のクーマシー染色である。
【図2】図2はHICカラムからの未変性TFPIの回収プロットである。
【図3】図3は2回目のHICカラムからの未変性TFPIの回収プロットである。
【図4】図4はTFPIのアミノ酸配列である。
【図5】図5は異なるpH条件におけるTFPIの溶解度を示している。2M尿素中の約10 mg/mLのTFPIが、150 mM NaCl中の20 mMの酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、グリシン、L-グルタミン酸塩、およびコハク酸塩に対して透析された。透析後に残った可溶性TFPIの濃度は、0.22 mmフィルターユニットで沈殿物を濾過した後で、UV吸収により測定された。
【図6】図6は10 mMのリン酸ナトリウム、pH 7の存在下で、クエン酸塩の濃度の関数としてのTFPIの溶解度を示す。クエン酸塩の濃度の上昇とともにTFPIの溶解度は上昇する。
【図7】図7はNaCl濃度の関数としてのTFPIの溶解度を示す。塩濃度の上昇とともにTFPIの溶解度は上昇し、これは塩がTFPIの溶解を促進することを示している。
【図8】図8は10 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaCl、0.005% (w/v)ポリソルベート80中で調製されたTFPIの安定性に対する、pHの影響を示す。150 mg/mL TFPIを含む安定性標品は、40℃で20日間保温された。残った可溶性TFPIの速度定数は、陽イオン交換クロマトグラフィーでの主要ピークの低下を追跡して分析された。
【図9A】図9は陽イオン交換HPLC で測定した残存可溶性TFPI(A)と、プロトロンビン時間アッセイによる残存活性TFPI(B)の割合を、リン酸塩濃度の関数として示す。種々のリン酸塩濃度で、150 mM NaClと0.005% (w/v)ポリソルベート80、pH7中に150 mg/mL TFPIが含まれている。
【図9B】図9は陽イオン交換HPLC で測定した残存可溶性TFPI(A)と、プロトロンビン時間アッセイによる残存活性TFPI(B)の割合を、リン酸塩濃度の関数として示す。種々のリン酸塩濃度で、150 mM NaClと0.005% (w/v)ポリソルベート80、pH7中に150 mg/mL TFPIが含まれている。
【図10】図10は陽イオン交換HPLC(三角)とプロトロンビン時間アッセイ(丸印)の両方で測定された、40℃での可溶性TFPIの損失を示す。10 mM クエン酸ナトリウム、pH 6、150 mM NaCl中に0.5 mg/mL TFPIが含まれている。
【図11】図11は陽イオン交換HPLC(白抜き)とプロトロンビン時間アッセイ(黒)の両方で測定された、40℃での可溶性TFPIの損失を示す。10 mM リン酸ナトリウム、pH 6で、150 mM NaCl(三角)または500 mM NaCl(丸印)中に0.5 mg/mL TFPIが含まれている。
【図12】図12は陽イオン交換HPLC(白抜き)とプロトロンビン時間アッセイ(黒)の両方で測定された、40℃での可溶性TFPIの損失を示す。10 mM 酢酸ナトリウム、pH 5.5で、150 mM NaCl(三角)または8% (w/v)ショ糖(四角)または4.5%マンニトール(丸印)中に0.5 mg/mL TFPIが含まれている。
【図13】図13は40℃、pH 4から9で0日または20日間保管されたTFPI標品の2枚の非還元SDSゲルを示す。
【図14】図14はポリリン酸塩により促進されたrhTFPIの再生を、時間経過を追ってSDS-PAGEにより観察したものを示す。
【図15】図15はポリリン酸塩により促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図16A】図16はポリリン酸塩により促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図16B】図16はポリリン酸塩により促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図17】図17はポリリン酸塩により促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図18A】図18はポリリン酸塩により促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図18B】図18はポリリン酸塩により促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図19】図19はポリエチレンイミンにより促進されたrhTFPIの再生を、時間経過を追ってSDS-PAGEにより観察したものを示す。
【図20】図20はポリエチレンイミンにより促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図21A】図21はポリエチレンイミンにより促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図21B】図21はポリエチレンイミンにより促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図22】図22はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図23A】図23はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図23B】図23はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図23C】図23はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図24】図24は尿素の非存在下で、0.4%ポリリン酸塩により促進された再生の陽イオン交換HPLC分析を示す。
【図25】図25は尿素の非存在下、0.4%ポリリン酸塩、50 mMトリス中でのrhTFPI再生の、システインのレベルの評価の陽イオン交換HPLC分析結果を示す。
【図26】図26は封入体のrhTFPIのポリリン酸塩に促進された再生過程に対する、ポリリン酸塩の鎖長の影響を、陽イオン交換HPLCで観察したものを示す。
【図27】図27は封入体からのrhTFPIの再生に対する、ポリリン酸塩(グラスH )の濃度の影響を、陽イオン交換HPLCで観察したものを示す。
【図28】図28は精製し還元したrhTFPIのポリエチレンイミンとポリリン酸塩に促進される再生の、陽イオン交換HPLC分析を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質の再生、可溶化、製剤、精製に有用な方法に関する。これらの方法は、遺伝子組換えによって、非天然の3次構造を持つ形で細菌、酵母、またはその他の細胞で生産されたタンパク質に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現の過程全体を完全に理解するためには、1次配列の合成を理解するのが重要であるのと同様に、ペプチド鎖が生物活性を持つタンパク質に折りたたまれる過程を理解することが重要である。タンパク質の生物活性は、そのアミノ酸配列に依存するのみならず、そのタンパク質の独自の立体構造に依存し、タンパク質の立体構造がわずかに崩れると、その活性が失われる可能性がある。Tsouら(1988) Biochemistry 27:1809-1812(非特許文献1)。
【0003】
適切な条件下では、精製され変性したタンパク質がインビトロで再生し、天然の2次および3次構造をとる過程は、自発的に起きる。安定だが望ましくない構造の形成を避けるためには、選択力の強い3次元相互作用(折りたたみの後の方で形成される)を用いて、正しい折りたたみ経路で発生する初期の局所構造を選択し、さらに安定化する必要がある。したがって、局所構造の有限であるが非常に低い安定性によって、タンパク質の折りたたみの速度論的「校正」が可能になる。エネルギーの最も高い折りたたみの活性化状態は、天然のタンパク質のゆがめられた形態であり、変性と再生に関する最も遅い律速段階が、統制のとれた構造という点では天然の状態に近いと思われる。さらに、多くのタンパク質の再生は、インビトロでは完全に可逆的ではなく、100%に満たない再活性化収率がしばしば観察される。これは、特にタンパク濃度が高い実験に多く、「FischerおよびSchmid, (1990) Biochemistry 29:2205-2212(非特許文献2)」に記載されるように、可逆性の低下の主な理由は、変性したタンパク質分子あるいは一部再生した分子の凝集が競合するためかもしれない。
【0004】
十分に大きいタンパク質分子の場合には、新生ポリペプチド鎖は、マイクロドメインがモジュール式に集合することにより、その天然の3次元構造を獲得する。温度、ならびにポリオール、尿素、および塩化グアニジニウムのような共存する溶媒のような変数が、タンパク質の立体構造の安定化と不安定化における役割を決定するために試験された。共存する溶媒の作用は、「Jaenickeら(1991) Biochemistry 30 (13):3147-3161(非特許文献3)」に記載されるように、直接の結合の結果、または水の物理的性質を変化させるためかもしれない。
【0005】
変性したタンパク質がどのようにして再生し天然の3次元構造をとるかの実験的観察は、タンパク質の折りたたみ機構に関する広く普及している多くの理論と対照をなす。再生が可能な条件下では、変性したタンパク質分子は、再生が完了する前に複数の立体構造の間で迅速に平衡化する。折りたたみ前の迅速な平衡は、他の変性した立体構造よりもやや自由エネルギーの低い特定の小型の立体構造に偏っている。律速段階は、この経路の後の方に登場し、エネルギーが高く天然の立体構造がゆがめられた形が関与する。「Creightonら(1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85:5082-5086(非特許文献4)」に記載されるように、すべての分子が折りたたまれる際に関与する1つの転移が存在すると考えられる。
【0006】
精製された組換えタンパク質の再生には、様々な方法が使われてきた。例えば、ヒト免疫不全ウイルスタイプI (HIV-I)によりコードされるプロテアーゼは、Huiら(1993) J. Prot. Chem. 12:323-327(非特許文献5)に記載されるように、大腸菌で生産することができ、組換えHIV-Iプロテアーゼを含む封入体を生ずる。精製されたHIV-Iプロテアーゼは、50%酢酸中のタンパク質溶液を25倍量のpH 5.5の緩衝液で希釈することにより、活性を持つ酵素に再生される。精製されたタンパク質が50%酢酸中に約2 mg/mlで溶解され、その後、5%エチレングリコールと10%グリセロールを含むpH 5.5の冷却した25倍量の0.1 M酢酸ナトリウムで希釈されると、プロテアーゼの比活性が高いことが分かった。グリセロールとエチレングリコールを用いないと、沈殿のためにタンパク質が徐々に失われた。この方法では、大腸菌の培養液1リットル当たり、正しく折りたたまれたHIV-Iプロテアーゼが約85 mg得られ、酵素は高い比活性を持っていた。
【0007】
組換えタンパク質の再生の別の例は、DeLoskeyら(1994) Arch. Biochem. and Biophys. 311:72-78(非特許文献6)に記載された大腸菌の封入体からのH-rasの単離と再生である。この実験では、再生中にタンパク質濃度、温度、および10%グリセロールの有無を変化させた。正しく折りたたまれたH-rasの収率は、タンパク質濃度が0.1 mg/ml以下の時に最高で、10%グリセロールの存在とは無関係だった。収率は、4℃のほうが25℃の場合よりわずかに高かった。
【0008】
細菌の発現系で生産された、組織因子経路阻害剤(リポ蛋白質結合凝固阻害剤(LACI)、外因性経路阻害剤(EPI)、および組織因子阻害剤(EFI)としても知られており、以下"TFPI"と呼ぶ)の再生は、Gustafsonら(1994) Protein Expression and Purification 5:233-241(非特許文献7)に記載されている。この実験では、組換え大腸菌で高レベルでTFPIを発現させると、封入体にTFPIが蓄積した。封入体を8M尿素で可溶化すると活性のあるタンパク質が得られ、陽イオン交換クロマトグラフィーと6M尿素での再生により全長分子の精製が行なわれた。次に、再生した混合物は分画化され、プロトロンビン凝固時間で測定したところで、哺乳類細胞から精製したTFPIと同等のインビトロの生物活性を持つ非グリコシル化精製TFPIが得られた。
【0009】
米国特許第5,212,091号(特許文献1)に開示されるように、TFPIの非グリコシル化型も大腸菌から生産および単離されており、この開示は参照として本明細書に組み入れられる。米国特許第5,212,091号(特許文献1)に記載される発明では、 TFPIを含む封入体の亜硫酸分解によりTFPI-S-スルホン酸塩を形成し、陰イオン交換クロマトグラフィーによりTFPI-S-スルホン酸塩を精製し、 システインを用いたジスルフィド交換によりTFPI-S-スルホン酸塩を再生し、陽イオン交換クロマトグラフィーにより活性のあるTFPIを精製した。米国特許第5,212,091号(特許文献1)に記載される形のTFPIは、ウシの第Xa因子の阻害およびヒトの組織因子に誘導される血漿中の凝固の阻害で活性を持つことが示された。検定法によっては、大腸菌で生産されたTFPIの方がSK肝癌細胞由来の天然のTFPIよりも活性が強いことが示されたものもあった。しかし、大腸菌で生産されたTFPIは、タンパク質の不均質性を高めるように修飾されている。
【0010】
組換え技術によって生産されたタンパク質の再生技術において、再生過程で正しく折りたたまれたTFPIの量を増加させる必要がある。また、 TFPIの溶解度を増加させる必要もある。現在、組換え技術により生産されたTFPIの収率は望ましいレベルに達しておらず、正しく折りたたまれたTFPIの生産技術が必要である。Gustafusonら(1994) Protein Expression and Purification 5:233-241(非特許文献7)の例を参照。
【0011】
TFPIは少なくとも2つの方法で凝固カスケードを阻害する:すなわち第VIIa因子/組織因子の複合体の形成の阻止、および第Xa因子の活性部位への結合である。cDNA配列から得られたTFPIの一次配列は、このタンパク質には3つのクニッツ型(kunitz-type)酵素阻害剤領域があることを示している。これらの領域の第1番目は、第VIIa因子/組織因子の複合体の阻害に必要である。第2番目のクニッツ型領域は、第Xa因子の阻害に必要である。第3番目のクニッツ型領域の機能は不明である。TFPIには酵素活性はなく、化学量論的に標的のプロテアーゼを阻害すると考えられている。すなわち、1つのTFPIのクニッツ型領域が1分子のプロテアーゼの活性部位に結合するのである。TFPIのカルボキシ末端はヘパリンとの結合およびリン脂質との相互作用により、細胞表面での局在性に関与していると考えられている。TFPIはリポ蛋白質結合凝固阻害剤(LACI)、組織因子阻害剤(TFI)、および外因性経路阻害剤(EPI)としても知られている。
【0012】
成熟したTFPIは276アミノ酸を持ち、アミノ末端は負の電荷、そしてカルボキシ末端は正の電荷を帯びている。TFPIは18のシステイン残基を持ち、正しく折りたたまれると9つのジスルフィド結合を形成する。1次配列には3つのAsn-X-Ser/Thr N-結合グリコシル化のコンセンサス部位があり、アスパラギン残基は145、195、および256の位置に存在する。成熟したTFPIの炭化水素成分は、タンパク質の質量の約30%に当たる。しかし、タンパク分解マッピングと質量分析データによると、炭化水素成分は不均質である。TFPIの2番目の位置にあるセリン残基が、様々な程度リン酸化されていることも分かっている。リン酸化はTFPIの機能に影響を与えないと考えられる。
【0013】
TFPIはヒトの血漿、ならびにHepG2、チャン肝細胞、およびSK肝癌を含むヒトの組織培養細胞から単離された。組換え体TFPIはマウスC127細胞、乳児ハムスター腎臓細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、およびヒトSK肝癌細胞で発現された。マウスC127細胞からの組換え体TFPIは、動物モデルで組織因子に誘導される凝固を阻害することが示された。
【0014】
組換え体TFPIの非グリコシル化型は、米国特許第5,212,091号(特許文献1)に開示されるように、大腸菌で生産され単離された。この形のTFPIはウシの第Xa因子の阻害、およびヒトの組織因子に誘導される血漿中の凝固の阻害という活性を持つことが示された。PetersenらJ. Biol. Chem. 18:13344-13351 (1993)(非特許文献8)のように、酵母の細胞培養培地からTFPIを精製する方法も開示されている。
【0015】
最近、TFPIと高レベルの構造的同一性を持つ別のタンパク質が同定された。SprecherらProc. Nat. Acad. Sci., USA 91:3353-3357 (1994)(非特許文献9)。 TFPI-2と呼ばれるこのタンパク質の予測される2次構造は、TFPIとほぼ同一で、3つのクニッツ型領域、9つのシステイン-システイン結合、酸性のアミノ末端、および塩基性のカルボキシ末端を持つ。TFPI-2の3つのクニッツ型領域の1次構造は、TFPIのクニッツ型領域1、2、3とそれぞれ43%、35%、53%同一である。組換え体TFPI-2は第VIIa因子/組織因子のアミド分解活性を強く阻害する。これとは対照的に、TFPI-2は第Xa因子のアミド分解活性を弱く阻害する。
【0016】
TFPIは、大腸菌によるヒヒの致死的な敗血症性ショックモデルにおいて、死亡を予防することが示された。CreaseyらJ. Clin. Invest. 91:2850-2860 (1993)(非特許文献10)。 致死量の大腸菌の注入後間もなく、体重1 kgあたり6 mgのTFPIを投与すると、TFPI処置を受けた5匹の動物すべてが生存し、5匹の対照動物の平均生存時間39.9時間と比較して、生活の質は有意に改善された。また、TFPI投与により、凝固反応および種々の尺度による細胞傷害の減衰、ならびに腎臓、副腎、および肺を含む大腸菌による敗血症の標的器官で通常観察される病理の有意な減少が見られた。
【0017】
TFPIは凝固阻害活性を持つため、微小血管手術中に血栓の予防に使用できるかもしれない。例えば、米国特許第5,276,015号(特許文献2)は、微小血管吻合術の血栓形成を低下させる方法におけるTFPIの使用を開示しているが、TFPI微小血管の再建と同時に微小血管吻合部位に投与される。
【0018】
TFPIは疎水性のタンパク質であるため、水溶液への溶解度は限られている。溶解度が限られているため、特に高用量のTFPIの投与の恩恵を受けるような臨床適応症のためには、医薬品として許容可能なTFPI組成を持つ製剤の製造が困難だった。したがって、許容可能な量を患者に投与できるような濃度のTFPIを含む、医薬品として許容可能な組成のための技術が必要である。
【特許文献1】米国特許第5,212,091号
【特許文献2】米国特許第5,276,015号
【非特許文献1】Tsouら(1988) Biochemistry 27:1809-1812
【非特許文献2】FischerおよびSchmid, (1990) Biochemistry 29:2205-2212
【非特許文献3】Jaenickeら(1991) Biochemistry 30 (13):3147-3161
【非特許文献4】Creightonら(1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85:5082-5086
【非特許文献5】Huiら(1993) J. Prot. Chem. 12:323-327
【非特許文献6】DeLoskeyら(1994) Arch. Biochem. and Biophys. 311:72-78
【非特許文献7】Gustafsonら(1994) Protein Expression and Purification 5:233-241
【非特許文献8】PetersenらJ. Biol. Chem. 18:13344-13351 (1993)
【非特許文献9】SprecherらProc. Nat. Acad. Sci., USA 91:3353-3357 (1994)
【非特許文献10】CreaseyらJ. Clin. Invest. 91:2850-2860 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の概要
本発明はタンパク質の再生方法を提供することを目的とする。
本発明はTFPIの水溶性製剤を提供することも目的とする。
本発明は荷電ポリマーを使用してタンパク質の溶解度を修飾する方法を提供することも目的とする。
本発明はTFPIを再生させる前に変性TFPI溶液に荷電ポリマーを添加するステップを含む、TFPIの再生方法を記載することも目的とする。
さらに、本発明はカラム上に荷電ポリマーを固定化し、変性TFPI溶液をこのカラムに通し、再生が起きた後に再生したTFPIを溶出するステップを含むTFPIの再生方法を記載することも目的とする。
【0020】
TFPIの溶解度はpHに強く依存し、驚くべきことにクエン酸塩、イソクエン酸塩、および硫酸塩のようなポリ陰イオンはTFPIを著しく可溶化する効果を持つことが分かっている。この知見は、TFPIが疎水性の性質を持ち、これらの対イオンが親水性の性質を持つことを考慮すると、驚くべきことである。したがって、クエン酸塩、イソクエン酸塩、および硫酸塩、ならびに本明細書に記載される他の可溶化剤を用いると、患者に投与するために十分な濃度のTFPIを持つ医薬品として許容可能な組成を生成することができる。また、他の有機分子が2次的可溶化剤となりえることも示された。これらの2次的可溶化剤には、PEG、ショ糖、マンニトール、ソルビトールが含まれる。
【0021】
本発明は、TFPIが0.2 mg/mLを越える濃度で可溶化剤に含まれる、医薬品として許容可能な組成に関する。可溶化剤は酢酸イオン、塩化ナトリウム、クエン酸イオン、イソクエン酸イオン、グリシン、グルタミン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、イミダゾール、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ならびに荷電ポリマーである可能性がある。組成によっては、TFPIは1 mg/mLを越える濃度および10 mg/mLを越える濃度で存在することができる。この組成には、2次的可溶化剤が1つまたは複数含まれる場合がある。2次的可溶化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールであることがある。最後に、組成は20 mMを越す濃度のリン酸ナトリウムを含むこともある。
【0022】
TFPIの溶解度はpH 5と10の間ではかなり低いが、L-アルギニンが溶解度を2桁上昇させることが分かった。溶解度はアルギニンの濃度に強く依存し、300 mMは200 mMの約30倍効果的である。尿素もTFPIの可溶化にかなり効果的である。
【0023】
さらに、中性および塩基性のpH条件では、TFPIの凝集が主要な分解経路であり、酸性pH条件では切断が起きるらしいことが分かった。
【0024】
また、活性TFPIモノマーは、大腸菌で生産される組換えTFPIの再生過程で生成するTFPIオリゴマーから分離することができることも分かった。この過程で、誤って折りたたまれたり修飾されたTFPIモノマーも除去される。分離には疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用する。TFPIのオリゴマーは、活性TFPIモノマーよりも疎水性樹脂に強く結合する。Pharmacia(登録商標)オクチルセファロースおよびToyopearl(登録商標)ブチル650-Mは有効だった。この過程は、1 M硫酸アンモニウムまたは0.5 Mクエン酸ナトリウムのような高塩濃度で行う。
【0025】
〔1〕 TFPIの濃度が1mg/mlより大きい、TFPIおよび荷電ポリマーを含む水性組成物。
〔2〕 TFPIの濃度が5mg/mlより大きい〔1〕記載の水性組成物。
〔3〕 TFPIの濃度が10mg/mlより大きい〔1〕記載の水性組成物。
〔4〕 TFPIの濃度が20mg/mlより大きい〔1〕記載の水性組成物。
〔5〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔1〕記載の水性祖生物。
〔6〕 薬学的に許容される〔1〕記載の水性組成物。
〔7〕 荷電ポリマーが硫酸化ポリサッカライドである〔1〕記載の水性組成物。
〔8〕 荷電ポリマーがヘパリンである〔1〕記載の水性組成物。
〔9〕 荷電ポリマーが硫酸化デキストランである〔1〕記載の水性組成物。
〔10〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である〔1〕記載の水性組成物。
〔11〕 実効正電荷をもつ第一ドメインおよび実効負電荷をもつ第二ドメインを有するタンパク質の溶解性を改変する方法であって、
前記タンパク質に荷電したポリマーの水性溶液を加えて正および負に荷電したドメイン間の分子間または分子内相互作用を減少させる工程
を含む方法であって、
前記タンパク質は、
(i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテインからなる群から選択される。
〔12〕 第一ドメインが一連の連続する10個のアミノ酸中少なくとも5個のカチオン性アミノ酸の電荷濃度をもつ〔11〕記載の方法。
〔13〕 第一ドメインが5個の連続するカチオン性アミノ酸を含む〔11〕記載の方法。
〔14〕 第二ドメインが5個の連続するアニオン性アミノ酸を含む〔11〕記載の方法。
〔15〕 第二ドメインが一連の連続する10個のアミノ酸中5個のアニオン性アミノ酸を含む〔11〕記載の方法。
〔16〕 タンパク質がTFPIである〔11〕記載の方法。
〔17〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔16〕記載の方法。
〔18〕 タンパク質がTFPIムテイン(mutein)である〔11〕記載の方法。
〔19〕 タンパク質がTFPI-2である〔11〕記載の方法。
〔20〕 タンパク質が添加前は不溶性の型である〔11〕記載の方法。
〔21〕 カオトロピック物質もまたタンパク質に添加される〔11〕記載の方法。
〔22〕 タンパク質の特異的活性が添加工程によって上昇する〔11〕記載の方法。
〔23〕 荷電ポリマーが固体支持体に固定化される〔11〕記載の方法。
〔24〕 荷電ポリマーを添加する前にタンパク質を固体支持体に適用することをさらに含む〔11〕記載の方法。
〔25〕 荷電ポリマーを添加した後にタンパク質を固体支持体に適用することをさらに含む〔11〕記載の方法。
〔26〕 固体支持体がイオン交換樹脂である〔24〕記載の方法。
〔27〕 固体支持体がイオン交換樹脂である〔25〕記載の方法。
〔28〕 タンパク質の特異的活性が添加工程によって上昇し、タンパク質がTFPIである〔11〕記載の方法。
〔29〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔28〕記載の方法。
〔30〕 樹脂およびポリマーが反対の実効電荷をもっている〔26〕記載の方法。
〔31〕 樹脂およびポリマーが反対の実効電荷をもっている〔27〕記載の方法。
〔32〕 樹脂およびポリマーが同じ実効電荷をもっている〔26〕記載の方法。
〔33〕 樹脂およびポリマーが同じ実効電荷をもっている〔27〕記載の方法。
〔34〕 固体支持体から選択的溶出をおこなうため荷電ポリマーが濃度勾配で添加される〔26〕記載の方法。
〔35〕 TFPIを折りたたむ前に、荷電ポリマーの水溶液を前記TFPIを含む溶液に添加する工程を含む、不正確に折りたたまれた、または変性されたTFPIを再生する方法。
〔36〕 ポリマーが硫酸化ポリサッカライドである〔35〕記載の方法。
〔37〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸デキストランである〔36〕記載の方法。
〔38〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸ヘパリンである〔36〕記載の方法。
〔39〕 TFPIを折りたたむ前に、荷電ポリマーの水溶液を不正確に折りたたまれた、または変性されたTFPIを含む溶液に添加する工程を含む、タンパク質を再生する方法。
〔40〕 ポリマーが硫酸デキストランである〔39〕記載の方法。
〔41〕 ポリマーがヘパリンである〔39〕記載の方法。
〔42〕 ヘパリンが溶液中に添加される〔41〕記載の方法。
〔43〕 TFPIを折りたたむ前に、荷電ポリマーの水溶液を不正確に折りたたまれた、または変性されたTFPIを含む溶液に添加する工程、および、溶液をインキュベーションして該TFPIを折りたたませ、塩を加えてポリマーをTFPIから分離し、前記溶液をHICカラムに通し、そしてTFPIを回収する工程を含む、TFPIを再生する方法。
〔44〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔43〕記載の方法。
〔45〕 硫酸化ポリサッカライドのポリマーをカラムに固定化し、変性されたTFPIの溶液を前記カラムに通し、再生されたTFPIを、再生が起こったあとに溶出する工程を含むTFPIを再生する方法。
〔46〕 TFPIが、N末端にアラニン残基を有するTFPI類似体のala-TFPIである、〔45〕記載の方法。
〔47〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸デキストランである〔45〕記載の方法。
〔48〕 硫酸化ポリサッカライドが硫酸ヘパリンである〔45〕記載の方法。
〔49〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
から選択されるポリペプチドを1mg/ml以上、並びに、少なくとも0.1%(w/v)のポリリン酸塩を含む、pHが5から10である水溶液。
〔50〕 ポリペプチドが図4に記載のアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPIである、〔49〕に記載の溶液。
〔51〕 医薬的に許容され得る、〔50〕に記載の溶液。
〔52〕 医薬的に許容され得る、〔49〕に記載の溶液。
〔53〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択されるポリペプチドの溶解性を増加させる方法であって、ポリペプチドおよび荷電ポリマーを含む水性組成物を調製する工程を含む方法。
〔54〕 硫酸デキストラン、グリコサミノグリカン、ヘパリン、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、アガロペクチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリリン酸塩、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、DEAEデキストラン、ポリリジン、およびポリアルギニンからなる群より荷電ポリマーが選択される、〔53〕記載の方法。
〔55〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔54〕記載の方法。
〔56〕 水性組成物が少なくとも約0.5mg/mlのポリペプチドを含む、〔53〕記載の方法。
〔57〕 ポリリン酸塩が1から20mg/mlの最終濃度で添加される、〔55〕記載の方法。
〔58〕 水性組成物が3M尿素、および50mM Trisを含み、pH10.5である、〔55〕記載の方法。
〔59〕 水性組成物が少なくとも約0.5mg/mlポリペプチド、4mg/mlポリリン酸塩、0.1mMシステイン、0.05mMシスチン、および50mM Trisを含み、pHが約10.5である、〔55〕記載の方法。
〔60〕 ポリペプチド対ポリリン酸塩の重量比が約2:1から約1:8となるような最終濃度でポリリン酸塩が添加される、〔55〕記載の方法。
〔61〕 ポリリン酸塩の添加前に、ポリペプチドが6M尿素、125mM塩化ナトリウム、および20mMリン酸ナトリウムバッファーを含む、pHが約7.4の溶液中に存在する、〔60〕記載の方法。
〔62〕 ポリペプチドおよびポリリン酸塩を含む組成物から低分子量の溶質を除き、組成物中でのポリペプチドの濃度が0.5mg/mlより高く、ポリペプチドおよびポリリン酸塩を実質的に他の溶質を含まないように含む水性組成物を形成する工程をさらに含む、〔60〕記載の方法。
〔63〕 ポリペプチドが水性組成物調製前には不溶性の形で存在する、〔53〕記載の方法。
〔64〕 不溶性の形が封入体である、〔63〕記載の方法。
〔65〕 水性組成物がさらにカオトロープを含む、〔53〕記載の方法。
〔66〕 水性組成物を調製する前に、ポリペプチドを固体担体に加える工程をさらに含む、〔53〕記載の方法。
〔67〕 水性組成物が、固体担体からのポリペプチドの選択的な溶出を可能にする濃度勾配でポリリン酸塩を添加することにより形成される、〔66〕記載の方法。
〔68〕 固体担体がイオン交換樹脂である、〔66〕記載の方法。
〔69〕 樹脂が実効負電荷を有する、〔68〕記載の方法。
〔70〕 樹脂が実効正電荷を有する、〔68〕記載の方法。
〔71〕 水性組成物の調製の工程の後に、ポリペプチドを固体担体に加える工程をさらに含む、〔53〕記載の方法。
〔72〕 固体担体がイオン交換樹脂である、〔71〕記載の方法。
〔73〕 樹脂が実効負電荷を有する、〔72〕記載の方法。
〔74〕 樹脂が実効正電荷を有する、〔72〕記載の方法。
〔75〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPIである、〔53〕から〔74〕のいずれか一項に記載の方法。
〔76〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択されるポリペプチドの再生を補助する方法であって、ポリペプチドおよび荷電ポリマーを含む水性組成物を調製する工程を含む方法。
〔77〕 硫酸デキストラン、グリコサミノグリカン、ヘパリン、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、アガロペクチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリリン酸塩、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、DEAEデキストラン、ポリリジン、およびポリアルギニンからなる群より荷電ポリマーが選択される、〔76〕記載の方法。
〔78〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔76〕記載の方法。
〔79〕 溶液がさらに尿素を含む、〔76〕記載の方法。
〔80〕 溶液が実質的に尿素を含まない、〔76〕記載の方法。
〔81〕 溶液のpHが約9から少なくとも約11である、〔76〕記載の方法。
〔82〕 ポリペプチドが少なくとも約72時間再生される、〔76〕記載の方法。
〔83〕 再生工程が約72から約120時間後に溶液のpHを5.9±0.1に低めることによって終了される、〔76〕記載の方法。
〔84〕 再生が約1mg/mlのポリペプチド、約2mg/mlのポリリン酸塩、3M尿素、0.1mMシステイン、および50mM Trisを含むpHが約10.5の溶液中で行なわれる、〔78〕記載の方法。
〔85〕 再生が約0.5mg/mlのポリペプチド、約4mg/mlのポリリン酸塩、0.1mMシステイン、0.05mMシスチン、および50mM Trisを含むpHが約10.5の溶液中で行なわれる、〔79〕記載の方法。
〔86〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択される精製されたポリペプチドを得る方法であって、該ポリペプチドと荷電ポリマーとを含む水溶液中で該ポリペプチドを再生する工程、並びに、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーからなる群より選択される方法を用いてポリペプチドが精製される工程を含む方法。
〔87〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含むヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)記載のムテイン
からなる群より選択される細菌中で発現された組換えポリペプチドから細菌由来のコンタミネーションを除去する方法であって、
陽イオンポリマーの水溶液を該組換えポリペプチドの可溶性形態を含む溶液に添加し細菌由来のコンタミネーションを沈澱させる工程、並びに、沈澱させた細菌性のコンタミネーションを除去する工程を含む方法。
〔88〕 添加する工程に可溶性形態のポリペプチドを含む溶液を陽イオンポリマーを0.5%(w/v)含む溶液中に少なくとも10倍希釈する、〔87〕記載の方法。
〔89〕 陽イオンポリマーがBetzポリマー624である、〔87〕記載の方法。
〔90〕 荷電ポリマーの添加前の溶液が3.5M塩酸グアニジウム、および50mMジチオスレイトール、および50mM Trisを含む、pH7.1である、〔87〕記載の方法。
〔91〕 沈澱が遠心により除去される、〔87〕記載の方法。
〔92〕 沈澱が濾過により除去される、〔87〕記載の方法。
〔93〕 組換ポリペプチドが大腸菌で発現されたものである、〔87〕記載の方法。
〔94〕 組換ポリペプチドが封入体に含まれる形で発現される、〔87〕記載の方法。
〔95〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含むala-ヒトTFPIである、〔87〕から〔94〕のいずれか一項に記載の方法。
〔96〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、該ポリペプチドを含む第一調製物を樹脂に結合させるよう陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に加える工程、樹脂を洗浄バッファーで洗浄する工程、並びに、樹脂をポリイオン性化合物を含む水溶性の溶出バッファーで洗い、樹脂より該ポリペプチドが該第一調製物より富化された第二調製物を溶出する工程を含む方法。
〔97〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔96〕記載の方法。
〔98〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔96〕記載の方法。
〔99〕 第一調製物が尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔100〕 第一調製物が約6M尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔101〕 第一調製物がpH約8である、〔96〕記載の方法。
〔102〕 第一調製物が約6M尿素、および約20mM Trisを含み、pH約8である、〔96〕記載の方法。
〔103〕 洗浄バッファーがより尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔104〕 洗浄バッファーがより約6M尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔105〕 洗浄バッファーのpHが約9である、〔96〕記載の方法。
〔106〕 洗浄バッファーが約6M尿素、および約20mM Trisを含み、pH約9である、〔96〕記載の方法。
〔107〕 溶出バッファーが尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔108〕 溶出バッファーが約6M尿素を含む、〔96〕記載の方法。
〔109〕 ポリイオン性化合物がポリアニオンである、〔96〕記載の方法。
〔110〕 ポリイオン性化合物がポリリン酸塩である、〔109〕記載の方法。
〔111〕 溶出バッファーが約10mg/mlのポリリン酸塩を含む、〔110〕記載の方法。
〔112〕 溶出バッファーがpH約9である、〔96〕記載の方法。
〔113〕 溶出バッファーが約6M尿素、約10mg/mlポリリン酸、および約10mM Trisを含み、pH約9である、〔96〕記載の方法。
〔114〕 陰イオン交換樹脂が第4アンモニウム化合物群を含む、〔96〕記載の方法。
〔115〕 陰イオン交換樹脂がQセファロースである、〔114〕記載の方法。
〔116〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、該ポリペプチドを含み、さらに尿素および樹脂の実効電荷と同じ電荷を有する荷電ポリマーを含む、水溶液である第一調製物を樹脂に結合させるようイオン交換樹脂に加える工程、樹脂を実質的に尿素を含まず、荷電ポリマーを含む洗浄バッファーで洗浄する工程、並びに、樹脂を実質的に尿素を含まず、荷電ポリマーを洗浄バッファーよりも高濃度で含む溶出バッファーで洗い、樹脂より該ポリペプチドが該第一調製物より富化された第二調製物を溶出する工程を含む方法。
〔117〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔116〕記載の方法。
〔118〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔116〕記載の方法。
〔119〕 第一調製物が尿素を含む、〔116〕記載の方法。
〔120〕 第一調製物が約3.5M尿素を含む、〔119〕載の方法。
〔121〕 第一調製物がpHが約5.5から約6.0である、〔116〕記載の方法。
〔122〕 第一調製物が約3.5M尿素、および約50mM Trisを含み、pH約5.9である、〔116〕記載の方法。
〔123〕 第一調製物がさらに約1mg/mlポリリン酸塩を含む、〔121〕記載の方法。
〔124〕 荷電ポリマーが負に荷電しており、樹脂が陽イオン交換樹脂である、〔116〕記載の方法。
〔125〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔124〕記載の方法。
〔126〕 洗浄バッファーが約10mg/mlポリリン酸塩を含む、〔125〕記載の方法。
〔127〕 溶出バッファーがpH約5である、〔126〕記載の方法。
〔128〕 溶出バッファーが約10mMリン酸ナトリウムを含む、〔126〕記載の方法。
〔129〕 溶出バッファーが約10mg/mlのポリリン酸塩を含む、〔125〕記載の方法。
〔130〕 溶出バッファーがpH約7.5である、〔129〕記載の方法。
〔131〕 溶出バッファーが約10mg/mlポリリン酸を含む、〔130〕記載の方法。
〔132〕 樹脂がSPセファロースである、〔116〕記載の方法。
〔133〕 荷電ポリマーが正に荷電しており、樹脂が陰イオン交換樹脂である、〔116〕記載の方法。
〔134〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、該ポリペプチドを含み、さらに尿素および樹脂の実効荷電と同じ荷電を有する荷電ポリマーを含む水溶液である、第一調製物を樹脂に結合させるようイオン交換樹脂に加える工程、樹脂を尿素および荷電ポリマーを含む洗浄バッファーで洗浄する工程、並びに、樹脂を尿素を含み、荷電ポリマーを洗浄バッファーよりも高濃度で含む溶出バッファーで洗い、樹脂より該ポリペプチドが該第一調製物より富化された第二調製物を溶出する工程を含む方法。
〔135〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔134〕記載の方法。
〔136〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔134〕記載の方法。
〔137〕 第一調製物が約6M尿素を含む、〔134〕記載の方法。
〔138〕 第一調製物が約6M尿素、約1mg/mlポリリン酸、および約10mMリン酸ナトリウムを含み、pH約5.9である、〔137〕記載の方法。
〔139〕 溶出バッファーが増加する濃度勾配で荷電ポリマーを含む、〔134〕記載の方法。
〔140〕 溶出バッファーが約25カラム容量加えられる、〔139〕記載の方法。
〔141〕 濃度勾配が約1mg/ml荷電ポリマーから始まり約20mg/ml荷電ポリマーで終わる、〔139〕記載の方法。
〔142〕 荷電ポリマーがポリリン酸塩であり、樹脂が陽イオン交換樹脂である、〔139〕記載の方法。
〔143〕 溶出バッファーが約1mg/mlから約20mg/mlの勾配でポリリン酸塩を含む、〔142〕記載の方法。
〔144〕 溶出バッファーが約6mM尿素、10mMリン酸ナトリウム、および、約1mg/mlから約20mg/mlの勾配でポリリン酸を含み、pH約5.9である、〔142〕の方法。
〔145〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択されるポリペプチドの精製を補助する方法であって、該ポリペプチドおよび第一の荷電ポリマーを含む水溶性組成物に、第一の荷電ポリマーと逆の実効荷電を持つ第二の荷電ポリマーを第一の荷電ポリマーを実質的に中和するのに十分な量添加する工程を含む方法。
〔146〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔145〕記載の方法。
〔147〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔145〕記載の方法。
〔148〕 第一の荷電ポリマーがポリリン酸塩である、〔145〕記載の方法。
〔149〕 第二の荷電ポリマーがポリエチレンイミンである、〔148〕記載の方法。
〔150〕 (i) 図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長ヒトTFPI、
(ii) 図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を含む、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPI、および
(iii) 1から5個のアミノ酸置換を有する(i)または(ii)からなる群より選択される適切に折りたたまれた全長ムテイン
からなる群より選択される大腸菌中で発現された組換えポリペプチドを精製する方法であって、
(a) ポリペプチドを含む第一水溶液にポリエチレングリコール(PEG)およびポリリン酸塩を添加し、水性の二層系を形成する工程、および
(b) PEGに富む層を回収し、第一水溶液と比べて該ポリペプチドが富化された第二水溶液を形成する工程
を含む方法。
〔151〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列を含む、適切に折りたたまれた全長TFPIである、〔150〕記載の方法。
〔152〕 ポリペプチドが図4に示されるアミノ酸配列、およびN末端アラニンである追加の1アミノ酸残基を有する、適切に折りたたまれた全長ala-ヒトTFPIである、〔150〕記載の方法。
〔153〕 添加工程の前に、ポリペプチドが封入体の可溶化により得られたものである、〔150〕記載の方法。
〔154〕 封入体が約7M尿素、約1%(w/v)モノチオグリセロール、および約10mM CAPSバッファーを含み、pHが約10である溶液中で可溶化された、〔153〕記載の方法。
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明者は、ポリエチレンイミンおよびポリリン酸塩のようなポリイオンポリマーが、タンパク質内のイオン性相互作用を修飾することができることを見出した。ポリイオンを用いて、タンパク質内の荷電密度の高い特定の領域を覆うと、数多くの効果が現われることがある。反対の電荷を持つ領域が分子内や分子間で中和されるために溶解度が低下しているタンパク質は、荷電領域の1つをポリ陽イオンまたはポリ陰イオンで覆うと、溶解度が改善することがある。再生過程に干渉するような、立体構造の柔軟性への障害、ならびに特異的な引力または反発力も、修飾することができる。精製操作中に、可溶化し可溶性を維持するために、尿素や塩酸グアニジンのような強力な変性剤を必要とするタンパク質は、ポリイオンを使用すると効果的に可溶化し加工処理することができる。
【0027】
1次配列では電荷の局在する明確な領域を持たない多くのタンパク質も、2次構造のために電荷の局在する領域を示すことがある。したがって、多くのタンパク質は、荷電ポリマーテンプレートとの相互作用を通じて、溶解度、再生、および精製特性を修飾することができる。この修飾の性質は、タンパク質の固有の構造、鎖長、電荷、およびイオン性ポリマーの電荷密度に依存する。
【0028】
我々は、グアニジンまたは尿素に基づく緩衝液で純粋なTFPIの再生の解析をしたが、その結果は、ヘパリン、硫酸デキストラン、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリリン酸塩を含む荷電ポリマーを添加することで、再生の効率と速度が著しく改善できることを示している。これらのポリマーはTFPIの溶解度を上昇させ、N末端またはC末端のいずれかとイオン性相互作用をして、再生を増進する。ポリマーの添加に加え、純粋なTFPIの再生には、再生反応が48時間以内に完了するシステイン/シスチン酸化還元緩衝液が必要である。再生の収率は、pH、酸化還元濃度、およびポリマー添加剤に強く依存する。しかし、最適な再生条件下では、純粋なTFPIで60%もの再生効率が達成できる。
【0029】
本発明の発明者は、例えばヘパリンおよび硫酸デキストランのような、グルコサミノグリカンおよび硫酸化多糖類を変性たんぱく質を含む溶液に再生の前に添加すると、グルコサミノグリカンまたは硫酸化多糖類にタンパク質が結合する能力を持ち、再生条件が与えられると、正しく折りたたまれて活性を持つタンパク質の量が増加することを発見した。
【0030】
溶解
組換えDNA技術によって、通常は天然源から認められるほどの量が単離できなかった多くのタンパク質を、高レベルで発現することが可能になった。大腸菌およびその他の数種類の発現系では、タンパク質はしばしば不活性な変性した状態で発現され、アミノ酸の1次配列は正しいものの、2次構造と3次構造、ならびにシステインのジスルフィド結合は存在しない。封入体に存在する変性タンパク質は、通常は接触しないアミノ酸バックボーンの、異なる部分の荷電残基が相互作用し、正の電荷を持つアミノ酸残基と負の電荷を持つアミノ酸残基の間に強いイオン結合が形成されるような立体構造になっているのかもしれない。これらのイオン結合の形成は、封入体の溶解のために必要な水和を制限することがある。また、封入体中のタンパク質は、膜成分および核酸のような他の細胞成分と複合体を作り、これにより、電荷を持ち通常は水和している残基に溶媒(水)が接近するのが制限されるのかもしれない。また、変性した状態では、通常はタンパク質の内部に埋まっている疎水性の残基が、極性を持つ水性環境に、より露出している。これらのために、封入体は、尿素もしくはグアニジンのような強いカオトロピック剤、またはSDSのような界面活性剤以外の溶媒に溶解しないのかもしれない。
【0031】
好ましくは水溶液中の荷電ポリマーは、封入体または他の環境で見られるようなポリペプチド鎖内部で起きる望ましくないイオン性相互作用に干渉し、該相互作用を崩壊させることができる。荷電ポリマーは望ましくないイオン性相互作用を破壊し、イオン性および極性の残基の溶媒和を促進し、強力なカオトロピック剤や界面活性剤を必要とせずに溶解を促進することがある。荷電ポリマーの電荷、電荷密度、および分子量(鎖長)は、タンパク質によって異なる。適するポリマーには以下のものが含まれる:硫酸化多糖類、ヘパリン、硫酸デキストラン、アガロペクチン、カルボン酸多糖類、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ無機物、ポリリン酸塩、ポリアミノ酸、ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、ポリヒスチジン、ポリ有機物、多糖類、DEAEデキストラン、ポリ有機アミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、ポリアミン、ポリアミノ酸、ポリリジン、およびポリアルギニン。
【0032】
pIが7を越えるタンパク質は、pH 7で正の電荷を持つので、負の電荷を持つポリマーとの相互作用のほうが有益かもしれない。pIが7未満のタンパク質は、中性のpHで正の電荷を持つポリマーのほうに強く相互作用するかもしれない。溶液のpHを変化させると、すべてのタンパク質の総電荷と電荷の分布を変えるため、これも評価すべき変数である。
【0033】
再生
組換えDNA技術によって、通常は天然源から認められるほどの量が単離できなかった多くのタンパク質を高レベルで発現することが可能になった。大腸菌およびその他の数種類の発現系では、タンパク質はしばしば不活性な変性した状態で発現され、アミノ酸の1次配列は正しいものの、2次構造と3次構造、ならびにシステインのジスルフィド結合は存在しない。変性したタンパク質は、活性を持つ正しい立体構造に再生されなくてはならないが、このためにはしばしば、イオン性の引力と反発力、結合の回転の制限、および立体構造に誘導される他の種類のストレスにより強いられる、著しいエネルギー障壁を克服する必要がある。反対の電荷の間の特異的なイオン性の引力や、同様な電荷の間の反発力は、変性タンパク質が利用できる再生経路を著しく制限し、再生過程の効率を低下させる場合がある。
【0034】
立体構造の柔軟性を制限し、もしくは凝集を促進するような相互作用をする特異的な荷電領域を持つタンパク質がある。1次配列では電荷の局在する明確な領域を持たない多くのタンパク質も、再生中間体、誤った折りたたみ、不適切に折りたたまれたタンパク質に見られる2次構造のために、電荷の局在する領域を示すことがある。本発明によると特に適切なタンパク質には、TFPI、TFPI突然変異タンパク質、TFPI-2、組織プラスミノーゲン活性化因子、BST、PSTが含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの方法は、タンパク質に対して使用する一般的方法として適してはいるが、最も適しているのは、不適切に折りたたまれたか、凝集したか、オリゴマー化したか、もしくは不活化したタンパク質に対する使用である。これらは、最低1つ、たぶんそれ以上の強く荷電した領域を持つタンパク質である可能性が高く、この領域が相互作用をする可能性がある。TFPIおよび他のタンパク質の場合は、反対の電荷を持つ2つの領域が相互作用し、正しい折りたたみを妨げ、オリゴマー化と凝集を引き起こす。多くのジスルフィド結合を持つタンパク質も、おそらく本方法が有効である。好ましくはタンパク質は少なくとも2つ、さらに好ましくは少なくとも4つもしくは6つのジスルフィド結合を持つだろう。
【0035】
荷電ポリマーは電荷と電荷密度を修飾し、変性状態で発生する立体構造に対するイオン性の制限を低下または排除するために使用できる。通常は近接していない荷電グループが近位に存在すると、再生過程が回復できないような行き止まりの再生経路に入る可能性がある。
【0036】
荷電ポリマーと複合体を形成することにより、余分な正または負の電荷を導入すると、いくつかの理由で、より容易に再生が進行することがある:まず、異なるタイプの電荷分布の方が再生過程には好都合であるかもしれない;第2に、荷電ポリマーを添加すると、変性タンパク質の溶解度を向上させ、タンパク質の立体構造に悪い影響を持つカオトロピック剤の必要性が低下する、またはなくなるかもしれない。
【0037】
ほとんどのタンパク質はしばしば独自の構造を持っているため、好ましい特性を持つ荷電ポリマーは様々であるかもしれない。タンパク質の等電pH (pI)の評価を手がかりとすることができる。中性のpHでは、7未満のpIを持つタンパク質は、実効電荷が負になるため、正に荷電したポリマーに結合する可能性の方が高い。7を越えるpIを持つタンパク質は、中性pHでは正に荷電しているため、負に荷電したポリマーに結合する傾向の方が強い。しかし、電荷はタンパク質の回りに不均一に分布していることは確立されており、荷電が著しく局在する場合もある。電荷が局在している可能性があるため、いずれの用途にも、どのタイプの荷電ポリマーが最も効果的であるかを予測することが困難になっている。理論的には、相互作用する電荷が特異的に分布し、立体構造を要するすべてのタンパク質に、分子量、電荷、および電荷の分布の点で、再生効率を最大にするような、適切な組成を持った荷電ポリマーが存在する。pHおよび溶媒のイオン強度のような他の変数も、評価する。最初のスクリーニングには、いくつかの異なる濃度と分子量の、ポリエチレンイミン、DEAEデキストラン、硫酸デキストラン、およびポリリン酸塩が使用できる。rhTFPIに関する研究で、ポリリン酸塩の鎖長と濃度が、TFPIの再生反応過程に大きな影響を持つことが示された。比較的短い鎖長(n=5)は高度の凝集を引き起こす。rhTFPIの再生に最適なポリリン酸塩の鎖長は、約25繰り返しユニットだった。さらに長い鎖長(n=75)は凝集を引き起こし、正しく折りたたまれたモノマーが少なくなる。
【0038】
製剤
タンパク質はアミノ酸の鎖から構成され、その正確な組成と配列がタンパク質の構造の主要決定因子の1つになる。タンパク質構造の2次的決定因子は、個々のアミノ酸結合がタンパク質の立体構造に対して与える、立体構造の誘導の結果である。第3に、特定のアミノ酸配列は、βシートやαヘリックスのような3次構造の形成を誘導する。タンパク質の立体構造の3次元的性質は、ポリペプチド鎖の直接の配列では通常近接していないアミノ酸残基を、しばしば近付けることになる。タンパク質の機能的な形は、一般に、システインのジスルフィド結合、イオン結合、ならびに疎水性およびファン・デル・ワールスの相互作用の組み合わせにより、ある程度安定な立体構造を持つ。
【0039】
一般に、タンパク質の溶解度は、そのたんぱく質を構成する、荷電アミノ酸、および程度は低いものの極性アミノ酸の数に関連する。これらの荷電および極性グループは、水溶液中で水分子と溶媒和し、この相互作用がポリペプチド鎖を溶液中に保つ。正または負に荷電したアミノ酸の数が不十分なポリペプチドの水性の溶解度は限られている。タンパク質中に存在する正および負に荷電したグループが、互いに相互作用し、溶媒和の水を置き換えるため、水性の溶解度が低下する場合もある。1次配列では電荷の局在する明確な領域を持たない多くのタンパク質も、2次構造のために電荷の局在する領域を示すことがある。したがって、多くのタンパク質は、荷電ポリマーテンプレートとの相互作用を通じて、溶解度を変化させることができる。この変化は、タンパク質の固有の構造、イオン性ポリマーの鎖長、電荷、および電荷密度に依存する。
【0040】
比較的電荷密度の高い荷電ポリマーと複合体を形成することは、いかなるタンパク質でも電荷密度を上昇させる方法の1つである。少数の正に荷電した残基(リジンまたはアルギニン)を持つタンパク質は、ポリリン酸塩のような負に荷電したポリマーと複合体を形成することができる。ポリマーの負に荷電したグループのいくつかは、タンパク質中に存在する正に荷電したグループと相互作用する。ポリマー上の残りの荷電グループは、ほとんどの場合は水である溶媒と相互作用することができ、電荷密度およびタンパク質の溶媒和を効果的に上昇させる。または、ポリエチレンイミンのような正に荷電したポリマーを使って、タンパク質の負に荷電した残基と複合体を作らせることができる。両方のタイプの荷電ポリマーが同様に効果的に働く場合もあるが、いずれかの電荷の方が有効な場合もある。特定の荷電ポリマーの有効性は、タンパク質のアミノ酸組成、タンパク質のアミノ酸分布、タンパク質の立体構造、荷電ポリマーの電荷密度、荷電ポリマーの鎖長、溶液のpH、およびその他の変数に依存する。しかし、どのようなタンパク質でも、タンパク質と結合し、タンパク質の電荷密度を本質的に上昇させるような反対の電荷を持つポリマーは、水性媒質中でのそのタンパク質の溶解度特性を改善する可能性が高い。
【0041】
定義
本明細書に使用される「加工処理」という用語は、医薬品として許容可能な量のタンパク質の精製と調製を意味する。加工処理には、可溶化、再生、クロマトグラフ分離、沈殿、および製剤のような1つまたは複数のステップが含まれることがある。
【0042】
「荷電ポリマー」および「荷電ポリマーテンプレート」という用語は、繰り返し構造のユニットが直鎖状または非直鎖状に結合したバックボーンで構成されるすべての化合物のことで、繰り返しユニットには正または負に荷電した化学グループが含まれるものがある。繰り返し構造ユニットの性質は、多糖類、炭化水素、有機物、または無機物のでありうる。繰り返しユニットはn=2からn=数百万に渡る。
【0043】
本明細書に使用される「正に荷電したポリマー」という用語は、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、および第4アンモニウムのような正の電荷を持つ、持つことができる、または持つように修飾できる化学グループを含むポリマーを意味する。
【0044】
本明細書に使用される「負に荷電したポリマー」という用語は、リン酸または他のリンを含む酸、硫酸および他の硫黄を含む酸、硝酸および他の窒素を含む酸、ギ酸および他のカルボン酸の誘導体のような、負の電荷を持つ、持つことができる、または持つように修飾できる化学グループを含むポリマーを意味する。
【0045】
本明細書に使用される「ポリエチレンイミン」という用語は、エチレンイミン(H3N+-(CH2-CH2-NH2+)x-CH2-CH2-NH3+)の繰り返しユニットから構成されるポリマーを意味する。分子量は5,000から50,000以上に渡る。
【0046】
本明細書に使用される「ポリリン酸塩」という用語は、無水リン酸結合で結合した正リン酸塩の繰り返しユニットで構成されるポリマーを意味する。繰り返しユニットの数は、2(ピロリン酸塩)から数千に渡る。ポリリン酸塩は、しばしばヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)と呼ばれる。他の通称には、グラハムズ塩、カルゴン、リンガラス、テトラメタリン酸ナトリウム、およびグラスHがある。
【0047】
本明細書に使用される「再生」という用語は、タンパク質の復元を意味する。通常、再生の目標は、再生ステップなしに生産されたタンパク質よりも高いレベルの活性を持つタンパク質を生産することである。折りたたまれたタンパク質分子は、最低の自由エネルギーを持つ立体構造で最も安定である。ほとんどの水溶性タンパク質は、疎水性アミノ酸の大部分が、水から離れて分子の内部になるように折りたたまれる。タンパク質をまとめている弱い結合は、ポリペプチドの折りたたみをほどき、すなわち変性させるようないくつかの処理によって破壊されることがある。折りたたまれたタンパク質は、イオン結合、ファン・デル・ワールス相互作用、水素結合、ジスルフィド結合、および共有結合を含む、アミノ酸自身とその環境との間の数種類の相互作用によって作られる。
【0048】
本明細書に使用される「変性」という用語は、天然あるいは再生した状態では分子中に存在するイオン結合および共有結合、ならびにファン・デル・ワールス相互作用の破壊に至るような、タンパク質またはポリペプチドの処理を意味する。タンパク質の変性は、例えば、8 M尿素、メルカプトエタノールのような還元剤、熱、pH、温度、およびその他の化学物質による処理で生じる。8 M尿素のような試薬は、水素結合と疎水性結合の両方を破壊し、さらにメルカプトエタノールも加えられると、システイン間で形成されたジスルフィド結合(S-S)も2つの-S-H基に還元される。天然または再生状態でジスルフィド結合を持つタンパク質の再生には、そのタンパク質のシステイン残基上に存在する-S-H基を酸化して、ジスルフィド結合を再形成させることもある。
【0049】
本明細書に使用される「グリコサミノグリカン」という用語は、ウロン酸とヘキソースアミンの残基が交互に含まれる多糖類を意味し、通常硫酸塩が含まれる。本明細書に記載される再生反応におけるタンパク質のグリコサミノグリカンへの結合は、イオン性相互作用による。
【0050】
本明細書に使用される「硫酸デキストラン」という用語は、デキストランのポリ陰イオン性誘導体を意味し、分子量は8,000から500,000ダルトンに渡る。デキストランは、グルコース残基がα1,6結合でつながったグルコースのポリマーである。
【0051】
本明細書に使用される「ヘパリン」という用語は、2糖の繰り返し(-4DGlcA(p)β1, 4GlcNAcα1-)nに基づくが、構築後に多大な修飾を受ける、2つのグリコサミノグリカンまたはヘパリノイドを意味する。ヘパリンは肥満細胞の顆粒中にヒスタミンと共に保存されるため、ほとんどの結合組織に見られる。一般に、ヘパリンはヘパリンよりも鎖長が短い。
【0052】
本明細書に使用される「HIC」という用語は、カラムと標的分子の間の疎水性相互作用を利用して、再生された産物から硫酸化多糖類およびその他の混在物を分離する、疎水性相互作用クロマトグラフィーを意味する。
【0053】
負に荷電したポリマーには、ヘパリン、硫酸デキストラン、およびアガロペクチンのような硫酸化多糖類、ならびにアルギン酸やカルボキシメチルセルロースのようなカルボン酸多糖類が含まれる。ポリリン酸塩のようなポリ無機酸も含まれる。ポリアスパラギン酸塩、ポリグルタミン酸塩、およびポリヒスチジンのようなポリアミノ酸も使用できる。
【0054】
正に荷電したポリマーには、DEAEデキストランのような多糖類、ならびにポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、およびポリアミンのようなポリ有機アミン、ならびにポリアミノ酸、ポリリジン、およびポリアルギニンが含まれる。いずれの電荷極性でも、ポリマーの組み合わせが使用できる。さらに、両性コポリマーも使用できる。
【0055】
本明細書に使用される「TFPI」は、成熟した組織因子経路阻害剤を意味する。上述のように、当技術分野において、TFPIはリポ蛋白質結合凝固阻害剤(LACI)、外因性経路阻害剤(EPI)、および組織因子阻害剤(EFI)としても知られている。本定義においては、TFPIの生物活性を保持するTFPI突然変異タンパク質も含まれる。さらに、本定義においては、細菌細胞中で生産するためにわずかに修飾したTFPIも含まれる。例えば、TFPIポリペプチドのアミノ末端にアラニン残基を持つTFPIアナログが大腸菌で作られている。米国特許第5,212,091号参照。
【0056】
本明細書に使用される「医薬品として許容可能な組成」は、製剤化されたTFPIの生物活性を無効にしたり、または低下させたりしない組成で、製剤化されたTFPIが患者に投与された場合に有害な生物学的作用を持たないものを意味する。
本明細書に使用される「患者」は、ヒトおよび家畜の患者を意味する。
【0057】
本明細書に使用される「可溶化剤」という用語は、溶液中に存在するTFPIの溶解度を0.2 mg/mLを上回るように上昇させる塩、イオン、炭化水素、アミノ酸、およびその他の有機分子を意味する。可溶化剤は、TFPI濃度を1 mg/mLを上回る、あるいは10 mg/mLを上回るように上昇させることもある。可溶化剤は、安定化剤として働くことがあることに注意すべきである。安定化剤は、保存中のTFPIの単位活性を保つが、これは凝集物の形成を予防するか、またはTFPI分子の分解(例、酸触媒反応による)を予防するためであることがある。
【0058】
本明細書に使用される「2次的可溶化剤」という用語は、溶液中に可溶化剤と共存すると、TFPIの溶解度をさらに上昇させる有機塩、イオン、炭化水素、アミノ酸、およびその他の有機分子を意味する。2次的可溶化剤には、他の効果もあることがある。例えば、2次的可溶化剤は浸透圧の調節に有用なことがある(例、等張性)。
【0059】
TFPIのアミノ酸配列は、参照および図4として本明細書に組み入れられる米国特許第5,106,833号に開示されている。TFPIおよびTFPI-2の突然変異タンパク質は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第08/286,530号に開示されている。米国特許出願第08/286,530号に開示されるように、 単一または複数の点変異を持つTFPIおよびTFPI-2の突然変異タンパク質、ならびにTFPIおよびTFPI-2のキメラ分子が調製できる。例えば、第1番目のTFPIのクニッツ型領域P1部位のリジン残基は、アルギニンで置換することができる。1つないし5つのアミノ酸置換を持つ突然変異タンパク質は、TFPIまたはTFPI-2をコードする組換えクローニング媒体の配列に、適切な突然変異誘発を行うことで調製できる。突然変異誘発の技術には、部位特異的突然変異誘発が含まれるが、これに限定されるわけではない。部位特異的突然変異誘発は、当技術分野において既知のいずれの方法を用いても実行できる。これらの技術は「Smith (1985) Annual Review of Genetics, 19:423」に記載され、この技術の一部の修正法は「METHODS IN ENZYMOLOGY(酵素学の方法)、 154, part E, WuおよびGrossman編(1987)、17、18、19、および20章」に記載されている。部位特異的突然変異誘発を用いる際の好ましい方法は、ギャップトデュープレックス位置指定突然変異誘発法の修正法である。一般的な方法は、上記Method in Enzymologyの17章にKramerらによって記載されている。核酸配列中の点変異誘発のもう1つの技術は、重複PCRである。重複PCRを用いた点変異誘発方法は「PCR PROTOCOLS: A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS(PCRプロトコール:方法と応用のガイド), Innis, Gelfand, SninskyおよびWhite編(Academic Press, 1990)」の22章にHiguchiにより記載されている。
【0060】
または、TFPI-2の第1番目のクニッツ型領域、ならびにTFPIの第2および第3番目のクニッツ型領域を含むハイブリッドタンパク質が、作成できる。TFPIおよびTFPI-2をコードするDNAを保有し、DNAクローニング分野に熟練する者は、既知のクローニング方法を用いて、かかるキメラタンパク質の生産のために適切なDNA分子を調製することができるだろう。または、各クニッツ型領域の一部または全部をコードする合成DNA分子、ならびにクニッツ型領域を結合するペプチド配列が調製できる。または、重複PCR技術を用いてTFPIおよびTFPI-2配列を含むキメラ分子をコードするDNAを調製することもできる。
【0061】
参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第08/286,530号に記載されるように、酵母の発現系でTFPIを調製することができる。「Petersenら、J. Biol. Chem. 18:13344-13351 (1993)」のように、酵母の細胞培養培地からTFPIを精製する方法も開示されている。これらの場合には、組換えTFPIが酵母細胞から分泌される。かかるプロトコールで回収されるTFPIも、N末端の修飾、タンパク分解、および不ぞろいのグリコシル化のために、しばしば不均質である。したがって、当技術分野において、真正で(すなわち、正しいN末端アミノ酸配列を持つ)、全長、および均質な成熟TFPIを生産する必要がある。
【0062】
大腸菌ホスト中で非グリコシル化型のTFPIを発現させることでTFPIを生産する方法を開示する米国特許第5,212,091号に記載されるようにして、大腸菌でTFPIを生産することができる。
【0063】
本発明の1つの局面では、例えば、ヘパリンまたは硫酸デキストランのような硫酸化多糖類のポリマーに結合する能力のある組換えタンパク質が、再生される。本発明は、再生するタンパク質のテンプレートとして働く硫酸化多糖類のポリマーを用いて、組換えにより生産された変性タンパク質産物の再生を促進する方法を与える。特定の理論に限定されることなく、発明者は再生するタンパク質とポリマーテンプレートの間の相互作用が、再生中の中間体の凝集を抑制し、タンパク質が天然の立体構造に再生するための環境を与えることがあると考える。テンプレートとして働くポリマーは、タンパク質の領域または部位に結合し、中間体を安定化させ、凝集することなく再生がさらに進行するのを助けるのかもしれない。タンパク質の凝集物が形成されると、これは一般に、凝集せずに再生されたタンパク質よりも活性が低く、一般に活性を持つ再生タンパク質の全収率を低下させる。再生条件のNaCl濃度は重要だと考えられ、テンプレートのポリマーと再生するタンパク質との間の相互作用を最大にすることで、再生の効率を最大にするように選択される。例えば、発明者は、NaClの濃度が約0.2 M以下であると、TFPIのC末端や第3番目のクニッツ型領域の、ヘパリンまたはその他の硫酸化多糖類ポリマーへの結合が、促進されることを見出した。中間体に対するポリマーの結合は、中間体の溶解度を改善し、再生中の中間体の凝集を減少させることにより、残りのタンパク質が再生するための環境を与えると考えられる。
【0064】
一般的方法
TFPIは、米国特許第5,212,091号(この開示は参照として本明細書に組み入れられる)に開示の組換え法によって製造することができる。簡単に説明すると、TFPIは大腸菌細胞で発現され、TFPI含有封入体は残余の細胞物質から単離される。封入体を亜硫酸処理し、イオン交換クロマトグラフィを用いて生成し、ジスルフィド交換反応により再生して、カチオン交換クロマトグラフィにより再生した活性TFPIを精製した。TFPIはまた、同時継続中の米国特許出願第08/286,530号に開示される酵母で産生してもよい。
【0065】
TFPI活性は、プロトロンビンタイムアッセイ(PTTアッセイ)によって試験することができる。オルガノンテクニカ社(Oklahoma City, OK)製のモデルRA4 Coag-A-Mateを用いるプロトロンビン凝固時間により、TFPIの生物学的活性を測定した。まずTFPI試料をTBSA緩衝液(50 mMトリス、100 mM NaCl, 1 mg/mL BSA, pH 7.5)で9 〜 24 μg/mLに希釈した。次いで試料トレイで、10 μLのVarify 1(プールされた正常プラズマ、オルガノンテクニカ社製)を希釈したTFPI試料90 μLと混合し、上記器具で37℃に加温した。最後にSimplastin Excel(トロンボプラスチン、オルガノンテクニカ社製)を添加すると凝固が開始した。TFPIの抗凝固活性による凝固時間の遅延を測定し、TFPIの標準曲線と比較することによって測定された試料のTFPI濃度に変換した。
【0066】
カチオン交換クロマトグラムの主ピークを測定することにより、可溶性TFPIの量も定量することができる。Water 717とヒーター/冷却器自動サンプラーを備えたWaters 626LCシステム(Waters Corporation, Milford, MA)を使って、TFPI試料のHPLC分析を行った。パーキン・エルマー社のTurbochrom(商標)によって、得られたデータを処理した。
【0067】
上記カチオン交換(IEX)法ではPharmacia Mono S HR 5/5ガラスカラムを使用した。80%緩衝液A(20 mM酢酸ナトリウム三水和物:アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)および20%緩衝液B(20 mM酢酸ナトリウム三水和物 - 1.0 M塩化アンモニウム:アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)でカラムを平衡化した。 試料を注入した後、21分間で20%緩衝液Bから85%緩衝液Bまで勾配をつけ、0.7 m/分の流速でTFPIを溶出した。溶出されたTFPIを214 nmの吸光度により検出した。主ピーク(モノマーTFPI)は約18分で溶出することがわかった。主ピークの残りのピーク領域を積算することにより可溶性TFPIの損失を定量した。
試薬はすべてU.S.P.(米国薬局法)またはA.C.S.(米国化学協会)グレードである。供給元にはJ. T. BakerおよびSigma Co. (St. Louis, MO)が含まれる。
【0068】
以下いくつか態様を挙げて、実施例を参照しながらて本発明を説明する。しかしながら、これらの実施態様は例示のためであり、いかなる方法であっても本発明を限定するものではないことに留意すべきである。
【実施例1】
【0069】
実施例1:変性TFPIの再生
以下の実施例は、原液の製造、HICカラム製造、再生に先立って行うTFPIの最初の回収及び精製、TFPIの再生、そして活性TFPIの回収を説明する。
【0070】
細菌でのリコンビナントTFPI発現によって得られる屈折体(refractile bodies)から原液を作った。10 mM DTTを含有する8 M 尿素および50 mM トリス pH 8.5に屈折体を10 mg/mL溶解した。この溶液を10分間10,000 xで遠心分離してクリアーにした。
【0071】
溶解したTFPIの第一段階精製用カラムの製造は、5 mM DTTおよび1 mM EDTAを含有する7.5 M 尿素、10 mM トリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)に混合したS-セファロースを用いて行った。5 mg/mLの濃度で溶解したTFPIを次いでS-セファロースカラムに流し、0〜1Mの塩化ナトリウム勾配で溶出した。精製したTFPIは、280 nmの波長で3.2の吸光度をもっていた(この吸光度は0.78の吸光係数を用いると4.1 mg/mLと同等である)。
【0072】
硫酸デキストラン原液は、シグマ製商品番号D-491の分子量8000ダルトンをもつ硫酸デキストランからなり、0.1 M塩化ナトリウム中50 mMトリス(pH 8.8)で50 mg/mL(6.25 mM)にし、使用するまで-20℃で保存した。
【0073】
再生を行うのにヘパリンを使用する場合、ヘパリン原液は、シグマ社(St. Louis, MO)の商品番号H-3393からナトリウム塩として製造された6000〜30,000ダルトンの分子量のもの(平均分子量18,000ダルトン)を、0.1 M塩化ナトリウム中50 mMトリス(pH 8.8)で60 mg/mL(3.33 mM)にし、使用するまで-20℃で保存した。
【0074】
S-セファロースで精製したTFPIに、硫酸デキストラン原液かあるいはヘパリン原液を添加することができる。6〜8 M尿素中変性条件下でデキストランかヘパリンをTFPIに添加した。TFPI含有変性溶液を4℃試薬で3 M尿素、50 mMトリス(pH 8.8)、0.2 M塩化ナトリウムおよび0.5 mg/mLのTFPIに希釈し、再生をどれで実施するかにより、硫酸デキストラン濃度が最終0.6 mg/mL(75μM)、またはヘパリン濃度が最終1.5 mg/mL(83μM)になるように希釈した。再生する溶液にシステインを添加して最終DTT濃度に等しい最終濃度にした。再生物溶液は、4℃で穏やかに撹拌しながら4 〜 6日間、好ましくは5日間インキュベーションした。
【0075】
この方法の例示として、以下は硫酸デキストランまたはヘパリン中TFPIの5 mL溶液を再生するプロトコールの詳細である。
【0076】
610 μLのTFPI原液に、0.1 M NaCl中65 μLの50 mMトリス(pH 8.8)を含む60 μLの硫酸デキストラン、または50 mMトリス(pH 8.8)あるいは0.1 M NaClを含む125 μLのヘパリン原液を添加した。再生する溶液を混合し、氷上で10分間インキュベーションした。次に、2.5 mMの尿素、50 mMトリス(pH 8.8)および165 mM塩化ナトリウムを含む再生物緩衝液を再生物溶液に添加混合した。最後に120 mMの水酸化ナトリウム中61 μLの50 mMシステインを添加し、溶液全体を4℃で穏やかに撹拌しながら4日間インキュベーションした。エルマン試薬(DTNBともいう)で遊離のスルホヒドリル量を調べた。Idoacetamideを添加して20 mMにし、100%エタノールで1 Mにして-20℃で保存した。
【0077】
Butyl-650M Tosohaas Toyopearl樹脂粒子サイズ40-90, part # 014702から、疎水性の相互作用カラム(HIC)を作成した。ブチル樹脂を、3 M尿素、1 M硫酸アンモニウム、50 mMトリス、10 mMリン酸ナトリウム、pH 6.5で洗浄し、50%スラリーに再懸濁した。-20℃で保存した再生物試料は、3 M尿素、50 mMトリス、pH 8.8、1-4 mMレドックス、0.5 mg/mL TFPIおよび条件により0.2-0.6 M NaClを含有する標準再生物緩衝液に残留していた。デキストランまたはヘパリンで再生された試料には、0.2 Mの塩があったが、デキストランまたはヘパリンなしの試料には0.6 M NaClがあった。
【0078】
以下のステップを室温で行い、再生されたTFPIをさらに精製した。300 μLの再生物試料に、等量の2M硫酸アンモニウム、3 M尿素、50 mMトリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)を添加した。次に100μLのButyl-650M ビーズを希釈した再生物試料に加えた。室温で穏やかに振とうしながらあるいは30分間混合しながら、ビーズを加えた溶液をインキュベーションした。次いで混液はエッペンドルフ遠心分離器で5秒間回転させた後、ラックに置いて1分間放置し、ビーズをチューブの中で平面に沈降させた。ビーズをまきあげないよう注意して上清を吸引した。
【0079】
TFPI結合ビーズを洗浄するために、1 M硫酸アンモニウム、3 M尿素、50 mMトリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)からなる洗浄緩衝液1 mLをビーズに添加して、残留硫酸デキストランまたはヘパリンを除いた。洗浄した混液は、エッペンドルフ遠心分離器で5秒間回転させた後1分間放置し、前記のようにビーズを沈降させた。上清を除いた後、最後に上記洗浄液でビーズを洗い、遠心分離して前記のように放置した。最後の洗浄および沈降後、先端を火炎で引き延ばしたパスツールピペットを使って非常に注意深く上清を除いた。
【0080】
再生TFPIを溶出するために、3 M尿素、0.1 M硫酸アンモニウム、50 mMトリスおよび10 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)からなる300μLの溶出緩衝液をビーズスラリーに添加して、10分以上振とうした。エッペンドルフ遠心分離器で遠心分離することにより、ビーズをペレット化し、再生TFPIを含有する上清を回収した。生成物をもつビーズの汚染を回避するため、上清の一部を後に残しておいた。
【実施例2】
【0081】
実施例2:硫酸デキストラン再生物のHIC
TFPI試料を0.5 mg/mL TFPI、0.6 mg/mL硫酸デキストラン、3.0 M尿素、200 mM NaClおよび50 mMトリス(pH 5.5)の濃度で再生した。HICカラムは、1.66 mLのスラリー中HIC用のTosohaas Butylビーズ、4.6 mmD/100 mLから作った。HICカラムに流す前に、3.0 M尿素および3.0 M NH4SO4を用い2:3 の割合で最終pH が5.68になるよう試料を希釈しておき、2 mLの試料を流した。勾配開始は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウム、1.0 M NH4SO4 および3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配終点は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウムおよび3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配容量は5.0 CVであった。このカラムから、天然本来のTFPIが68%回収された。結果を図2に示す。
【0082】
第二のHICカラム実験も行った。変性TFPI試料を、3.0 M尿素および1.5 M NH4SO4で2:3 の割合に希釈した後その2 mLを流した。勾配開始は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウム、0.5 M NH4SO4 および3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配終点は、33 mM MES/33 mM HEPES/33 mM酢酸ナトリウムおよび3.0 M尿素、pH 6.0であった。勾配容量は5.0 CVであった。この第二カラムから、天然のTFPIが74%回収された。結果を図3に示す。
【0083】
以上の試料を図1に図示するような非還元性SDS-PAGEによって分析した。正しく再生された活性TFPI種(主バンド)がゲル上に観察される。
【実施例3】
【0084】
実施例3
2M尿素中約10 mg/mLのTFPIを以下に記載する物質のうちの一つに対して透析した:前述の20 mMリン酸塩、20 mMクエン酸塩、20 mMグリシン、20 mM L-グルタミン酸塩または20 mMコハク酸塩、150 mM NaCl 中の 20 mM酢酸塩。6 〜 10 mg/mLのTFPIバルク原液をSpec/Pro 7透析チューブ(MW cutoff 3,500)に流した。透析は4℃または周囲温度で行った。12〜24 時間にわたる透析中に、1 〜50-100のタンパク質溶液:緩衝液比で緩衝液を三段階に変化させた。TFPI溶液をCostar 0.22 ミクロンフィルターで濾過して可溶性TFPIからTFPI沈殿を分離した。次いで、278 nmにおける吸光係数を0.68 (mg/mL)-1と推定して、UV/可視吸光度によりTFPIの溶解性を測定した。HClまたはNaOHを用いる滴定により、種々のpHレベルの溶液を作った。
【0085】
透析終了後、0.22 μmのフィルターユニットにより沈殿物を濾過した。透析後に残留している可溶性TFPIの濃度をUV吸光度で測定した。図1は以上の実験結果を示すものである。TFPIの溶解性は、20 mM酢酸、20 mMリン酸、20 mM L-グルタミン酸および20 mMクエン酸を含有する溶液ではpH7より低いレベルで、特にpH 4.5またはそれより低いpHレベルで、非常に増加した。TFPIの溶解性はまた20 mMグリシンを含有する溶液中pH 10を超えるレベルで有意に増加した。TFPIの溶解性を10 mM リン酸ナトリウム存在下pH 7におけるクエン酸イオンの濃度関数として図2に示す。TFPIの溶解性は、クエン酸の濃度が上昇するにつれ増加する。TFPIの溶解性をpH 7におけるNaClの濃度関数として図3に示す。TFPIの溶解性は、塩の濃度が上昇するにつれ増加し、塩がTFPIの溶解性を促進することを示している。
【0086】
多数の異なる溶解剤および二次的溶解剤を用いて、TFPIの溶解性を調べた。6〜10 mg/mLのTFPIをこれらの緩衝液に対して透析した後のUV吸光度によって測定した、種々の緩衝液におけるTFPIの溶解性を表1に示す。
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【実施例4】
【0087】
実施例4
種々のpH条件で保存したTFPIの溶解性を調べた。10 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaClおよび0.005% (w/v) ポリソルベート80中、上記のように透析してTFPIを作った。150 mg/mL TFPIを含有する溶解性試料を40℃で20日間インキュベーションした。カチオン交換クロマトグラムの主ピーク減少を追跡することによって、残留する可溶性TFPIの動力学的速度係数を分析した。図5からわかるように、崩壊レート定数はpH 6.0を超えるレベルで上昇し、これより高いpH条件ではさらに凝集することを示している。
【0088】
pH 7においてリン酸の濃度を変え、150 mM NaClおよび0.005% (w/v) ポリソルベート80中TFPIを150 mg/mL含有する組成物も作った。図5Aは、カチオン交換HPLCにより測定した残留可溶性TFPIのパーセントを示す。溶液中リン酸濃度を上昇させると、40℃におけるインキュベーション後も残留する可溶性TFPIがより高レベルで得られた。プロトロンビンタイムアッセイで測定した場合には、より高レベルのリン酸イオンでも、より高レベルの活性TFPIが得られた。以上の結果を図5Bに示す。
【0089】
0.5 mg/mL濃度であって10 mMクエン酸ナトリウムおよび150 mM NaCl で作った TFPIの溶解性もまた40日間40℃でインキュベーションした後調べた。図6からわかるように、カチオン交換HPLC(三角△)は、60%イニシャルよりも、また40日間インキュベーションした後でさえも、より高いレベルで可溶性TFPIの存在を示している。同様に、上記プロトロンビンタイムアッセイ(円○)は、60%イニシャルよりも、また40日間インキュベーションした後でさえも、より高いレベルで活性TFPIの存在を示している。
【0090】
10 mMクエン酸ナトリウム、pH 6および150 mM NaCl(三角△)あるいは500 mM NaCl(円○)中0.5 mg/mL濃度のTFPIについて、カチオン交換HPLC(オープンシンボル)およびプロトロンビンタイムアッセイ(クローズシンボル)両方法により測定した40℃における可溶性TFPIの損失を図7に示す。
【0091】
150 mM NaCl(三角△)あるいは8% (w/v)のショ糖(四角□)あるいは4.5% (w/v)マンニトール(円○)を含有する10 mM酢酸ナトリウム、pH 5.5中0.5 mg/mL濃度のTFPIについて、カチオン交換HPLC(オープンシンボル)およびプロトロンビンタイムアッセイ(クローズシンボル)両方法により測定した40℃における可溶性TFPIの損失を図8に示す。
【0092】
図9には、pH 4 〜9において、40℃で0日間(下方)および20日間(上方)で保存した、10 mM NaPO4、150 mM NaClおよび0.005% ポリソルベート-80で作ったpH 4 〜pH 9のTFPIに対する二つの非還元性SDSゲルを示す。0日ではTFPIの損失は見られない。しかしながら、20日では低pHレベル(すなわちpH 4およびpH 5)でTFPIの分解断片が観察されることがある。特定の理論に拘束されるものではないが、これら断片は酸によって触媒される反応から生じるものと考えられる。
【0093】
最後に、種々の組成について40℃で残留する可溶性TFPIの半減期を表2に示す。これらの組成条件で0.5 mg/mLのTFPIを作り、40℃でインキュベーションした。予め定めた時間毎に試料をとりだし、IEX-HPLCおよびPTアッセイによって可溶性および活性TFPIの損失を調べた。次いで、IEX-HPLCおよびPTアッセイ結果に単一指数フィッティングを行うことによって残留可溶性TFPIの半減期を計算した。
【実施例5】
【0094】
実施例5
ポリイオン性化合物を使用するクロマトグラフィ樹脂から置換モードにおけるTFPIの溶出
まず低塩緩衝液中の樹脂にTFPIを結合させる。次に置換モードにおいてTFPIを溶出するのに使われるポリイオン性化合物をポンプでカラムに通す。この化合物はTFPIよりも樹脂の方に強く結合してTFPIを置換する。陽性荷電樹脂(アニオン交換剤)に対しては陰性荷電化合物を使用し、陰性荷電樹脂(カチオン交換剤)に対しては陽性荷電化合物を使用する。
【0095】
部分的に精製したTFPIを出発物質として使用した。6 M 尿素、20 mMトリス、pH 8.0のTFPIを、アニオン交換樹脂QセファロースHPを20 mg/mL充填したカラムに流した。流した後、6 M 尿素、20 mMトリス、pH 9.0でカラムを洗浄した。6 M 尿素、10 mMトリス、pH 9.0のGlass H(ポリリン酸)の10 mg/mLでTFPIを溶出した。
【実施例6】
【0096】
実施例6
ポリイオン性化合物を使用する水性緩衝液におけるクロマトグラフィ樹脂からのTFPIの溶出
【表2】
陽性荷電樹脂に対しては陰性荷電化合物を使用し、陰性荷電樹脂に対しては陽性荷電化合物を使用する。
3.5 M 尿素、1 mg/mLポリリン酸、50 mMトリス、pH 5.9のTFPIを、カチオン交換樹脂SPセファロースHPを20 mg/mL充填したカラムに流した。流した後、カラムを、尿素を含有しない緩衝液、10 mg/mLポリリン酸、10 M リン酸ナトリウム、pH 5.0で洗浄した。尿素を含まない、pH 5.0の同じ緩衝液でTFPIを溶出した。
【実施例7】
【0097】
実施例7
ポリイオン性化合物を使用するイオン交換樹脂からのTFPIの選択的溶出
TFPIの荷電末端のために、反対に荷電したポリイオン性化合物はそれら末端に結合する。ポリイオン性化合物が樹脂に対してよりもTFPIの方に強い結合性を持つ場合には、TFPIをクロマトグラフィ樹脂から選択的に溶出することができる。
【0098】
3.5 M 尿素、1 mg/mLポリリン酸、50 mMトリス、pH 5.9のTFPIを、カチオン交換樹脂SPセファロースHPに流した。流した後、カラムを6 M尿素、1 mg/mLポリリン酸、10 M リン酸ナトリウム、pH 5.9で洗浄した。TFPIは、20 mg/mLポリリン酸までの25カラム容量勾配で溶出した。TFPIは約2〜3 mg/mLのポリリン酸で溶出し始める。
【実施例8】
【0099】
実施例8
TFPIのクロマトグラフィ分離に先立つポリイオン性化合物の中和
TFPIは荷電したポリマーと相互作用することができる。この相互作用は、クロマトグラフィ樹脂に対する結合および精製を妨げることがある。荷電したポリマーを反対荷電のポリマーで中和することにより、TFPIを樹脂と結合させることができる。ポリリン酸(Glass H)を含有する緩衝液において、TFPIはExpress Ion S(Whatman)と結合しないので精製することができない。PEIをカラムロードに混ぜることによってTFPIを樹脂に結合させTFPIを精製することができる。
【実施例9】
【0100】
実施例9
ポリリン酸(Glass H)による促進再生プロセスを用いるリコンビナントヒトTFPI(rhTFPI)の再生および精製
約40 gのrhTFPIを含有する封入体は、-20℃のフリーザーからその容器を取り出し、これを4〜10℃の冷室に約196時間おいて解凍した。次いで、凍結中に起こる凝集を減少させるため、解凍した封入体を高せん断ミキサーで分散させた。オーバーヘッド撹拌器を備えた100 Lのポリエチレン製タンクに入れた、3 M 尿素、50 mMトリス-Cl、pH 10.5の緩衝液80 Lに、2 g/L Glass Hを含有する解凍した封入体を添加した。内容物を約15分間混合した後、溶液の吸光度を280 nmで測定した。吸光度がより大きい場合には、280 nmで1.0〜1.1の吸光度を得るのに十分な溶解緩衝液で混液を希釈した。穏やかにかき混ぜながら、溶液は15 〜30分間インキュベーションした。次いで0.1 mMのシステイン濃度を与えるに十分なシステインを添加した。固体のL-システインを約50 mlの精製水に溶解して再生物混液に添加した。pHをチェックし、必要なら、pH 10.2に調整した。穏やかにかき混ぜながら、再生物混液を96 〜120時間インキュベーションした。
【0101】
約96時間後、再生物混液のpHを氷酢酸でpH 5.9に調節することにより、再生プロセスを終了させた。90分間撹拌を続けてpHをチェックした。さらに酸を添加して、必要ならば上記pHを5.9 +/- 0.1に調整した。二段階濾過法を使用してこのステップ以前に生じた粒子を除き、SP-セファロースHPクロマトグラフィ用の酸化された再生物混液を作った。まず、酸化された再生物混液は、ぜん動ポンプ(1/4〜3/8インチ内径シリコン管押し出し)を使ってCuno 60LP深さのフィルター(フィルターハウジングモデル8ZP1P)に通す。
【0102】
使用に先立ち、脱イオン化された6 M尿素8〜10 Lで上記フィルター系を洗浄した。濾液を100 Lポリエチレンタンクに集めた。背圧は一定の20 PSIに保った。新しいフィルター用の最初の流速は約5〜6 L/分であった。背圧を20 PSIに保つために、流速が1 L/分以下に落ちたときにはフィルターを交換した。濾過の第二段階には、ぜん動ポンプシステムを備えた0.45ミクロンのフィルターカートリッジ(Sartorius Sartobran pHまたは同等物)を使用した。濾過後pHを調べ、必要があればpH 5.9に調整した。
【0103】
酸化され濾過された再生物混液を、約80.0 ml/分の流速で平衡化したSPセファロースHPカラムに流した。酸化され濾過された再生物混液を一晩中流すのに適当な流速に調整された。流す前に、カラムは6 M尿素、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 5.9で平衡化された。混液を流した後、勾配溶出ステップを行う前に、カラムを6 M尿素、0.3 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液、pH 5.9で洗浄した。洗浄ステップおよび以下の全ステップに対して流速を190 〜200 ml/分に増加した(線速度= - 47 cm/hr)。6 M尿素、20 M リン酸ナトリウム緩衝液、pH 5.9において、0.3〜0.5 M NaClの線塩勾配を使って、生成物をカラムから溶出させた。上記勾配は、6 M尿素、0.5 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液を、6 M尿素、0.3 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液へ送り出すことによって形成した。Parametrics製のParatrol Aミキサー(250210型)を使用して激しく撹拌しながら約100 ml/分の流速で、限界緩衝液をMasterflexヘッド(7015.21型)付きMasterflexポンプ(7015.21型)を使って押し出した。上記勾配の総容量は71.0リットルまたは13.0 CVであった。上記勾配緩衝液のpHは5.92 +/- .02であった。SDS-PAGEを用いて分画を定量し、他の再生ミスおよび不純物に対して正しく再生されたSC-59735の容量に基づきプールした。プールの後、このプロセスの流れをSプールとする。
【0104】
次いで2.5 NNaOHでSプールのpHをpH 8.0に調整した。アミコンYM10らせんカートリッジ(10,000 M.W. cut-off 膜)を含有するアミコンDC-10L限外濾過ユニットを用いて、このSプールを約2 Lになるまで2〜3倍濃縮した。濃縮後、上記濃縮Sプールを6 M尿素、20 mMTris-HCl緩衝液 pH 8.0の7容量に対して膜濾過した(diafiltration)。膜濾過は、レンテネート(retentate)の導電率が2 mS以下の場合、完全だと考えられる。膜濾過濃縮物を限外濾過ユニットから排出し、このユニットを約1 Lの膜濾過緩衝液で洗浄した。洗浄液を濃縮物と合わせてQ-loadを作る。
【0105】
アミコンカラム(直径7.0 cm)を約700 ml のQ-セファロース高速媒体(ファルマシアQ-セファロースHP)で充填した。カラムを20 psiで20%エタノールにより充填した。充填後のベッド高さは約18 cmであった。6 M尿素、0.02 M Tris/HCl緩衝液 pH 8の5 CVでカラムを平衡化した。タンパク質ローディングの標的は、Qセファロース樹脂1 mlにつき8〜10 mgタンパク質である。Q-loadを流速30 〜35 ml/mn(50 cm/hr)でカラムに流した。流した後、6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0の約5 CVでカラムを洗浄した。または、280 nmの吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した。6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0において、25カラム容量について0〜0.15 M NaClからの塩化ナトリウム勾配を用いて生成物を溶出した。最初の7カラム容量を単一分画として集め、その後0.25カラム容量それぞれの30個の分画を集めた。
【0106】
分画は、還元および非還元SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィによってルーチン分析された。凝集容量(SEC HPLC法MSL 13929により<5%)および純度評価のためのSDS-PAGEによる定性にもとづき分画をプールした。プールするまでこの分画は-20℃で凍結保存する。
【0107】
利用できるQセファロース分画をプールし、2M HClを用いてプールのpHを7.2に調整した。次いでこのプールをS1Y1アミコンYM-10カートリッジ(10,000 MWCO らせんカートリッジ膜)を含有するアミコンDC-1限外濾過システムで、このプールを約5倍に濃縮した。次いで濃縮したQプールを2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の7カラム容量に対して膜濾過濾過した。限外濾過後、溶液を限外濾過系から排出した。2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の約100 mlを約15分間、この限外濾過系に循環させた。洗浄液をもとの濃縮液と合わせて、得られた溶液を0.45ミクロン減圧濾過器(Nalgene)で濾過した。
【実施例10】
【0108】
実施例10
ポリエチレンイミン(PEI)による促進再生プロセスを用いるrhTFPIの再生および精製
約40 gのrhTFPIを含有する封入体は、-20℃のフリーザーからその容器取り出し、これを4〜10℃の冷室に約96時間おいて解凍した。次いで、凍結中に起こる凝集を減少させるため、解凍した封入体を高せん断ミキサーで分散させた。ポリトロンホモジナイザー(Brinkman model PT45/80)を使って、この封入体スラリーを約1分間激しく混合した。または、オーバーヘッド撹拌器を備えた100 Lのポリエチレン製タンクに入れた、300 mM NaClおよび0.4 g/L PEIを含有する6 M 尿素、100 mM Tris/HCl緩衝液、pH 9.8の40 Lに、この封入体を添加するまで激しく混合した。混液は20〜30分間激しく混合した。pHをモニターし必要ならばpH 9.8に調整した。溶解した封入体混合液の吸光度を280 nmで測定した。吸光度が2.1より大きい場合には、2.0〜2.1のA280値が得られるよう、上記の溶解緩衝液10リットルで試料を希釈した。さらに15〜30分間穏やかな撹拌を続けた。次いで溶解した封入体溶液を等量の1.0 M尿素、300 mM NaCl溶液で希釈した。最後に、0.25 mMの最終濃度になるまでL-システインを添加した。固体のL-システインを50 mlのWFIに溶解し、溶液として希釈した再生物混液に添加した。pHをチェックし、必要なら調整した。定期的にpHをチェックしてpH 9.8に調整すると共に、穏やかにかき混ぜながら、96〜120時間再生を継続した。再生の過程は、Mon-Sカチオン交換およびプロトロンビンタイムアッセイでモニターした。
【0109】
約96時間後、再生物混液のpHを氷酢酸でpH 5.9に調節することにより、再生プロセスを終了させた。90分間撹拌を続けてpHをチェックした。さらに酸を添加して、必要ならば上記pHを5.9 /- 0.1に調整した。
【0110】
二段階濾過法を使用してこのステップ以前に生じた粒子を除き、SP-セファロースHPクロマトグラフィ用の酸化された再生物混液を作った。まず、酸化された再生物混液は、ぜん動ポンプ(1/4〜3/8インチ内径シリコン管押し出し)を使ってCuno 60LP深さのフィルター(フィルターハウジングモデル8ZP1P)に通す。
【0111】
使用に先立ち、脱イオン化された6 M尿素8〜10 Lで上記フィルター系を洗浄した。濾液を100 Lポリエチレンタンクに集めた。背圧は一定の20 PSIに保った。新しいフィルター用の最初の流速は約5〜6 L/分であった。背圧を20 PSIに保つために、流速が1 L/分以下に落ちたときにはフィルターを交換した。濾過の第二段階には、ぜん動ポンプシステムを備えた0.45ミクロンのフィルターカートリッジ(Sartorius Sartobran pHまたは同等物)を使用した。濾過後pHを調べ、必要があればpH 5.9に調整した。
【0112】
酸化され濾過された再生物混液を、約80.0 ml/分の流速で平衡化したSPセファロースHPカラムに流した。酸化され濾過された再生物混液を一晩中流すのに適当な流速に調整された。カラムは次いで、6 M尿素、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 5.9の5.5カラム容量で洗浄した。洗浄ステップおよび以下の全ステップに対して流速を190 〜200 ml/分に増加した(線速度= - 47 cm/hr)。6 M尿素、20 M リン酸ナトリウム緩衝液、pH 5.9において、0.3〜0.5 M NaClの線塩勾配を使って、生成物をカラムから溶出させた。上記勾配は、6 M尿素、0.5 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液を、6 M尿素、0.3 M NaCl、20 M リン酸ナトリウム緩衝液へ送り出すことによって形成した。Parametrics製のParatrol Aミキサー(250210型)を使用して激しく撹拌しながら約100 ml/分の流速で、限界緩衝液をMasterflexヘッド(7015.21型)付きMasterflexポンプ(7015.21型)を使って押し出した。上記勾配の総容量は71.0リットルまたは13.0 CVであった。上記勾配緩衝液のpHは5.92 +/- .02であった。
【0113】
インライン放射計導電率メーターで測定してカラム入り口導電率が28.0 〜28.5 mS/cmに達したときに、分画を集め始めた。40個の500 ml分画(0.1 CV)を集めた。番号を付けた500 mlのポリプロピレン瓶をもつ、ファルマシアのFrac-300分画コレクターを使用した。分画収集を停止したとき、勾配の残り部分をプールとして集めた。
【0114】
カラム分画をA280、サイズ排除HPLCによってアッセイし、および、さらに情報を得る目的で、SDS PAGE、逆相HPLCおよびPTアッセイを行った。インプロセスSEC HPLCによる測定で、20%という少ない凝集を含有するプール基準を満たした場合には、分画をプールした。プールしたSPセファロース分画はSプールと呼ぶことにする。
【0115】
次いで2.5 NNaOHでSプールのpHをpH 8.0に調整した。アミコンYM10らせんカートリッジ(10,000 M.W. cut-off 膜)を含有するアミコンDC-10L限外濾過ユニットを用いて、このSプールを約2 Lになるまで2〜3倍濃縮した。濃縮後、上記濃縮Sプールを、6 M尿素、20 mMTris-HCl緩衝液 pH 8.0の7容量に対して膜濾過した(diafiltered)。膜濾過は、retentateの導電率が2 mS以下の場合、完全だと考えられる。膜濾過濃縮物を限外濾過ユニットから排出し、このユニットを約1 Lの膜濾過用緩衝液で洗浄した。洗浄液を濃縮物と合わせてQ-loadを作る。
【0116】
アミコンカラム(直径7.0 cm)を約700 ml のQ-セファロース高速媒体(ファルマシアQ-セファロースHP)で充填した。カラムを20 psiで20%エタノールにより充填した。充填後のベッド高さは約18 cmであった。6 M尿素、0.02 M Tris/HCl緩衝液 pH 8の5 CVでカラムを平衡化した。タンパク質ローディングの標的は、Qセファロース樹脂1 mlにつき8〜10 mgタンパク質である。Q-loadを流速30 〜35 ml/mn(50 cm/hr)でカラムに流した。流した後、6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0の約5 CVでカラムを洗浄した。または、280 nmの吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した。6 M尿素、20 M Tris/HCl緩衝液、pH 8.0において、25カラム容量について0〜0.15 M NaClからの塩化ナトリウム勾配を用いて生成物を溶出した。最初の7カラム容量を単一分画として集め、その後0.25カラム容量それぞれの30個の分画を集めた。
【0117】
分画は、還元および非還元SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィによってルーチン分析された。凝集容量(SEC HPLCにより<5%)および純度評価のためのSDS-PAGEによる定性にもとづき分画をプールした。プールするまでこの分画は-20℃で凍結保存する。
【0118】
プールできるQセファロース分画を2〜8℃にインキュベーションして解凍し、プールして、プールのpHを2M HClで7.2に調整した。次いでこのプールをS1Y1アミコンYM-10カートリッジ(10,000 MWCO らせんカートリッジ膜)を含有するアミコンDC-1限外濾過システムで、約5倍に濃縮した。次いで濃縮したQプールを2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の7カラム容量に対して膜濾過した。限外濾過後、溶液を限外濾過系から排出した。2 M尿素、0.15 mM NaCl、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.2の約100 mlを約15分間、この限外濾過系に循環させた。洗浄液をもとの濃縮液と合わせて、得られた溶液を0.45ミクロン減圧濾過器(Nalgene)で濾過した。
【実施例11】
【0119】
実施例11
尿素のようなカオトロプの不存在下ポリリン酸を使用する、封入体からのrhTFPIの可溶化、再生および精製(GDS 5327089,92)
混合しながら、4 g/lポリリン酸(Glass H, FMC Corportaion)を含有する50 mM Tris緩衝液、pH 10.5に約2 gのrhTFPI(46 mg/mlのrhTFPIを含有する43 mlの封入体スラリー)を2〜8℃で溶解した。0.1 mMおよび0.05 mMの各溶液を作るのに十分なシステインおよびシスチンを添加した。溶液のpHを1 N NaOH でpH 10.5に維持した。穏やかに撹拌しながら、再生物溶液を72〜96時間、2〜8℃でインキュベーションした。
【0120】
次に氷酢酸を用いて再生物をpH 6に調整し、0.2ミクロンフィルターで濾過した。濾過した再生物のアリコートを、0.4% Glass H, 20 mMリン酸ナトリウム、pH 6緩衝液で予め平衡化したSPセファロースHP(ファルマシア)の200 mlカラムにかけた。その後、0.4% Glass H, 20 mMリン酸ナトリウム、pH 6緩衝液の4カラム容量でカラムを洗浄した。0.4% Glass H, 20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6から0.4% Glass H, 50 mM Tris pH 8緩衝液までの線pH勾配を利用して、このカラムを溶出した。分画を集め、SDS-PAGEで分析した。相対的に純粋なrhTFPIをこの方法で再生および精製することができた。
【実施例12】
【0121】
実施例12
TFPIとポリリン酸の複合体形成による改善されたrhTFPIの溶解性(GDS 5327046-47)
2 M尿素、125 mM塩化ナトリウム、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7.4の約1リットル中精製したrhTFPI約10 gを2〜8℃で18〜36時間インキュベーションすることによって解凍した。十分乾燥した尿素を添加して6 M尿素溶液を作った。次いでこの溶液を0.2ミクロンフィルターで濾過した。ポリリン酸ガラス(Glass H, FMC)5 gを6 M尿素50 mlに溶解し、1 N NaOHでpH 7に調整した後、これをタンパク質溶液に加えた。次いで限外濾過により、 1スクエアフィートの膜(Amicon S1Y3)を使って約400 ml(〜25 mg/ml)になるまで濃縮し、精製水10容量(約4リットル)に対して膜濾過し、残っている尿素を除いた。膜濾過後、溶液を約250 mlになるまで濃縮し、限外濾過ユニットから除いた。限外濾過ユニットを約150 mlの精製水で洗浄し、タンパク質濃縮液に加えた。最終タンパク質濃縮液は400 mlの水中ほとんど10 gのタンパク質を含んでいた(約24 mg/mlタンパク質)。
【実施例13】
【0122】
実施例13
TFPI細胞ライセートおよび折れ曲がり体から大腸菌汚染物を除去するためのカチオン性ポリマーの使用
粗TFPI中間体(ライセート、折れ曲がり体)から大腸菌不純物を沈殿除去するためにカチオン性ポリマーを使用すると、以下のプロセス操作(再生、クロマトグラフィなど)を有意に改善することができる。カチオン性ポリマーの無作為スクリーニングによって、TFPIは溶液に残すが菌の汚染物は選択的に沈殿させる候補が同定された。特に、ベッツ(Betz)ポリマー624は、水性環境における溶液にTFPIを残す一方、実質的な量の細菌汚染物を沈殿させた。
【0123】
可溶化したTFPI折りたたみ体(3.5 Mグアニジン塩酸塩、2 M塩化ナトリウム、50 mM Tris、50 mMジチオスレイトール、pH 7.1中)がポリマー選択実験に使用した出発物質であった。この物質を種々のポリマーの0.5%溶液に10倍希釈した。TFPIの存在についてSDS-PAGEにより、この実験から得られた沈殿物の分析を行った。ベッツポリマー624は、TFPIを含まない、実質的な量の細菌汚染物を沈殿させて透明な水性溶液を与えた。
【実施例14】
【0124】
実施例14
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリン酸塩、尿素系での水性二相抽出を使用すると、TFPI精製の処理に有利である。典型的な水性二相抽出系は、二つのポリマー系(例えば、PEGとデキストラン)または一つのポリマーと塩(例えば、PEGと硫酸塩)からなる。本明細書に記載されているシステムは、分離に対してポリリン酸塩鎖の長さを最適化できること、安価であること、そして問題となっている汚染物を再生およびクロマトグラフィに干渉することが知られているTFPIの折りたたみ体から除くことに特異的であるという点で優れている(天然のリン酸塩および関連二価金属類)。
【0125】
TFPI折りたたみ体を7 M尿素、10 mM CAPS、1%モノチオグリセロール、pH 10に溶解した。異なる鎖長のポリリン酸塩とPEGを加えて二相を形成した。相分離の際、ポリリン酸塩と関連汚染物は下層に残して、TFPIはPEGリッチな上層に分配した。PEG、ポリリン酸塩両方の鎖長によって分離され、両方を変化させることによって最適化することができる。
【実施例15】
【0126】
実施例15
荷電ポリマーは大腸菌封入体から得られたリコンビナント組織プラスミノーゲン活性化因子の再生を促進した。
【0127】
リコンビナント組織プラスミノーゲン活性化因子を約2 g含有する封入体5 g(湿重量)を、1 mMの還元グルタチオン(GSH)および0.2 mM グルタチオンジスルフィド(GSSG)を含有する0.5% Glass H, 50 mM Tris 緩衝液pH 10.8約1リットルに添加した。ポリトロン(Brinkman)ホモジナイザーを用いて2〜3 分間完全に混合して封入体を完全に分散した。1 N NaOHでpHを10.5〜10.9に維持しつつ、オバーヘッド撹拌器でかき混ぜながら、上記混合液を15分間インキュベーションした。次いでこの混合液を2 〜8℃で48 〜72時間ゆっくり撹拌した。
【実施例16】
【0128】
実施例16
荷電ポリマーは大腸菌封入体から得られたウシソマトトロピンの再生を促進した。
【0129】
ウシソマトトロピンを5 g含有する封入体10 g(湿重量)を、1% Glass H, 50 mM Tris 緩衝液pH 10.5約1リットルに添加した。この混合液をポリトロン(Brinkman)ホモジナイザーを用いて2〜3 分間完全に混合して封入体を完全に分散した。1 N NaOHでpHを10.4〜10.6に維持しつつ、オバーヘッド撹拌器で15分間かき混ぜながら、上記混合液をインキュベーションした。固体システイン(121 mg)を加えて1 mMシステイン溶液を作り、再生物混合液を48〜72時間混合した。
【0130】
本明細書に引用した特許、特許出願および刊行物は参照として本明細書に組み入れられる。
【0131】
以上特定の態様を参照して本発明を説明したが、本出願は、クレームの範囲及び基本概念を逸脱することなく当業者がなし得る変更あるいは置換をも含むように意図されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1はフェニルセファロースHIC再生方法によるTFPIピーク分画のSDS-PAGE分析のクーマシー染色である。
【図2】図2はHICカラムからの未変性TFPIの回収プロットである。
【図3】図3は2回目のHICカラムからの未変性TFPIの回収プロットである。
【図4】図4はTFPIのアミノ酸配列である。
【図5】図5は異なるpH条件におけるTFPIの溶解度を示している。2M尿素中の約10 mg/mLのTFPIが、150 mM NaCl中の20 mMの酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、グリシン、L-グルタミン酸塩、およびコハク酸塩に対して透析された。透析後に残った可溶性TFPIの濃度は、0.22 mmフィルターユニットで沈殿物を濾過した後で、UV吸収により測定された。
【図6】図6は10 mMのリン酸ナトリウム、pH 7の存在下で、クエン酸塩の濃度の関数としてのTFPIの溶解度を示す。クエン酸塩の濃度の上昇とともにTFPIの溶解度は上昇する。
【図7】図7はNaCl濃度の関数としてのTFPIの溶解度を示す。塩濃度の上昇とともにTFPIの溶解度は上昇し、これは塩がTFPIの溶解を促進することを示している。
【図8】図8は10 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaCl、0.005% (w/v)ポリソルベート80中で調製されたTFPIの安定性に対する、pHの影響を示す。150 mg/mL TFPIを含む安定性標品は、40℃で20日間保温された。残った可溶性TFPIの速度定数は、陽イオン交換クロマトグラフィーでの主要ピークの低下を追跡して分析された。
【図9A】図9は陽イオン交換HPLC で測定した残存可溶性TFPI(A)と、プロトロンビン時間アッセイによる残存活性TFPI(B)の割合を、リン酸塩濃度の関数として示す。種々のリン酸塩濃度で、150 mM NaClと0.005% (w/v)ポリソルベート80、pH7中に150 mg/mL TFPIが含まれている。
【図9B】図9は陽イオン交換HPLC で測定した残存可溶性TFPI(A)と、プロトロンビン時間アッセイによる残存活性TFPI(B)の割合を、リン酸塩濃度の関数として示す。種々のリン酸塩濃度で、150 mM NaClと0.005% (w/v)ポリソルベート80、pH7中に150 mg/mL TFPIが含まれている。
【図10】図10は陽イオン交換HPLC(三角)とプロトロンビン時間アッセイ(丸印)の両方で測定された、40℃での可溶性TFPIの損失を示す。10 mM クエン酸ナトリウム、pH 6、150 mM NaCl中に0.5 mg/mL TFPIが含まれている。
【図11】図11は陽イオン交換HPLC(白抜き)とプロトロンビン時間アッセイ(黒)の両方で測定された、40℃での可溶性TFPIの損失を示す。10 mM リン酸ナトリウム、pH 6で、150 mM NaCl(三角)または500 mM NaCl(丸印)中に0.5 mg/mL TFPIが含まれている。
【図12】図12は陽イオン交換HPLC(白抜き)とプロトロンビン時間アッセイ(黒)の両方で測定された、40℃での可溶性TFPIの損失を示す。10 mM 酢酸ナトリウム、pH 5.5で、150 mM NaCl(三角)または8% (w/v)ショ糖(四角)または4.5%マンニトール(丸印)中に0.5 mg/mL TFPIが含まれている。
【図13】図13は40℃、pH 4から9で0日または20日間保管されたTFPI標品の2枚の非還元SDSゲルを示す。
【図14】図14はポリリン酸塩により促進されたrhTFPIの再生を、時間経過を追ってSDS-PAGEにより観察したものを示す。
【図15】図15はポリリン酸塩により促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図16A】図16はポリリン酸塩により促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図16B】図16はポリリン酸塩により促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図17】図17はポリリン酸塩により促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図18A】図18はポリリン酸塩により促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図18B】図18はポリリン酸塩により促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図19】図19はポリエチレンイミンにより促進されたrhTFPIの再生を、時間経過を追ってSDS-PAGEにより観察したものを示す。
【図20】図20はポリエチレンイミンにより促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図21A】図21はポリエチレンイミンにより促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図21B】図21はポリエチレンイミンにより促進された再生からrhTFPIを精製するために使用したS-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図22】図22はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、試料添加と溶出の間の280 nmにおける吸光度を示す。
【図23A】図23はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図23B】図23はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図23C】図23はポリエチレンイミンにより促進された再生から調製したS-セファロースプールからrhTFPIを精製するために使用したQ-セファロースHPカラムの、溶出中に収集された分画のSDS-PAGE分析を示す。
【図24】図24は尿素の非存在下で、0.4%ポリリン酸塩により促進された再生の陽イオン交換HPLC分析を示す。
【図25】図25は尿素の非存在下、0.4%ポリリン酸塩、50 mMトリス中でのrhTFPI再生の、システインのレベルの評価の陽イオン交換HPLC分析結果を示す。
【図26】図26は封入体のrhTFPIのポリリン酸塩に促進された再生過程に対する、ポリリン酸塩の鎖長の影響を、陽イオン交換HPLCで観察したものを示す。
【図27】図27は封入体からのrhTFPIの再生に対する、ポリリン酸塩(グラスH )の濃度の影響を、陽イオン交換HPLCで観察したものを示す。
【図28】図28は精製し還元したrhTFPIのポリエチレンイミンとポリリン酸塩に促進される再生の、陽イオン交換HPLC分析を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFPIの濃度が1mg/mlより大きい、TFPIおよび荷電ポリマーを含む水性組成物。
【請求項1】
TFPIの濃度が1mg/mlより大きい、TFPIおよび荷電ポリマーを含む水性組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2008−115176(P2008−115176A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277137(P2007−277137)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【分割の表示】特願2004−184539(P2004−184539)の分割
【原出願日】平成8年6月7日(1996.6.7)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【出願人】(591096152)ジー.ディー. サール アンド カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【分割の表示】特願2004−184539(P2004−184539)の分割
【原出願日】平成8年6月7日(1996.6.7)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【出願人】(591096152)ジー.ディー. サール アンド カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]