説明

タンパク質の経口投与のための製剤

経口投与されるタンパク質の薬学的製剤を、抗酸化剤の添加によって、胃およびGI管内での酸化的分解および不活性化から安定化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、胃内でのおよび胃液中でのならびにこれらのタンパク質を酸化し分解しうる他の生理液中での分解に対する経口投与を対象とした、プロテアーゼを安定化するための方法および組成物に関する。本発明はそれゆえ、生物学、化学、分子生物学、医薬品化学、医学および薬理学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する開示の説明
胃腸管へのタンパク質の経口送達は胃内pHと酵素によるタンパク質分解的消化の両方が原因の不十分なタンパク質安定性、ならびに不十分な吸収の結果として、解決困難であることが知られている。胃へ経口経路によりまたは局所的にタンパク質を送達するために多くの試みがなされてきた。例えば、米国特許第7,291,598号(特許文献1); 同第7,265,097号(特許文献2); および同第7,244,709号(特許文献3)ではどれも、キトサンを含有するナノ粒子を用いて、胃腸(GI)管中でのタンパク質の吸収および安定性を改善している。米国特許第6,541,606号(特許文献4)では、胃内での分解を回避するためにおよびGI管の疾患の治療のために結晶タンパク質を利用しており、GI管からのタンパク質の吸収を改善するためにパイエル板への生体接着の可能性について論じている。米国特許第7,351,741号(特許文献5)では、GI管からのタンパク質の吸収を改善するための添加物について記述している。これらの特許では、GI管からの不十分な吸収だけでなく胃内の酸性pHおよび酵素消化に起因する、GI管におけるタンパク質の安定性の問題についても記述している。上記の参考文献のいずれにも、酸化または非タンパク質分解的消化に起因するGI管または胃内でのタンパク質の不安定性については記述されていない。
【0003】
ラクトースを代謝するβ-ガラクトシダーゼであるラクターゼ、およびシステインプロテアーゼであるパパインは、どちらも、栄養補助食品として経口投与される酵素である。ラクターゼは、ラクトースを消化する能力に欠けている個体のために消化剤として投与される。例えば、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)由来のラクターゼはLactaid (登録商標) (Pleasantville, NJ)として、栄養補助食品として投与されており、米国特許第6,660,313号(特許文献6)および同第6,562,339号(特許文献7)では、栄養補助食品としての経口投与のためのラクターゼの製剤について記述している。システインプロテアーゼであるパパインは、消化剤として投与されている。しかしながら、その最適温度は65℃であり、パパインが胃内で活性な酵素であるかどうかは不明である。
【0004】
米国特許第7,320,788号(特許文献8)および同第7,303,871号(特許文献9)では、セリアックスプルーの治療(および症状の予防)でグルテンを消化するために経口投与される酵素としての、単独でのおよび組み合わせでの、グルテナーゼの使用について記述している。グルテナーゼとして記述されている酵素の一つは、オオムギから当初単離されたシステインエンドプロテアーゼの組み換え型である。コムギ、オオムギおよびライムギに存在する一般的な食事性タンパク質であるグルテンを摂取すると、感受性のある個体において疾患が引き起こされることが、1953年に初めて認められた。グルテンは、グルタミンおよびプロリンに富むグルテニン分子ならびにプロラミン分子の複合混合物であり、疾患誘導の原因となっているように思われる。感受性のある個体がこのようなタンパク質を摂取すると、ペプチドおよび他の栄養分の効率的かつ広範囲の最終消化を担うことが知られている、通常は豪華な敷物のような小腸上皮層が平らになる。セリアックスプルーの臨床症状には、疲労、慢性下痢、栄養分の吸収不良、体重減少、腹部膨満、貧血、ならびに骨粗鬆症および腸の悪性腫瘍(リンパ腫およびがん腫)が発症するリスクの大幅な上昇が含まれる。この疾患は欧州人口の200人に約1人の発症率を有する。
【0005】
関連疾患は疱疹状皮膚炎であり、これは激しいかゆみを伴う水疱、丘疹、およびじんま疹様病変のかたまりによって特徴付けられる慢性発疹である。IgA沈着物が、正常に見え、かつ病変周囲にある皮膚のほぼ全てにおいて生じる。無症候性のグルテン感受性腸症が、疱疹状皮膚炎患者の75〜90%、および患者の親族の一部において見られる。発症は、通常、徐々に進む。かゆみおよび炎症は重篤であり、多くの場合、ひっかき行動が一次病変と付近の皮膚の湿疹化を見えにくくし、湿疹の誤った診断につながる。無グルテン食を長期間厳密に守ると一部の患者では疾患を管理することができる。疱疹状皮膚炎によるかゆみを緩和するために、時として、ダプソン、スルファピリジンおよびコルヒチンが処方される。
【0006】
セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎は自己免疫疾患と一般にみなされており、患者血清中に見られる抗体が、この疾患の免疫学的根拠を示している。組織トランスグルタミナーゼ(tTG)およびグリアジンに対する抗体が、活動性セリアックスプルー患者のほぼ100%において現れ、このような抗体、特に、IgAクラスの抗体の存在が、この疾患の診断に用いられてきた。
【0007】
セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎患者の大半は、HLA-DQ2 [DQ(a1*0501, b1*02)]および/またはDQ8 [DQ(a1*0301, b1*0302)]分子を発現する。特定のグリアジンオリゴペプチドとHLA-DQ2またはDQ8との間で相互作用することによって腸の損傷が引き起こされ、次に、上皮下層においてTリンパ球の増殖が誘導されると考えられている。明らかに、Tヘルパー1細胞およびサイトカインが、小腸の絨毛萎縮につながる局所炎症プロセスにおいて主な役割を果たしている。
【0008】
現在、グルテナーゼの臨床試験が進行中であるが、セリアックスプルーの唯一の治療は、グルテンを含有する食物を全て厳格に避けることである。グルテンの使用中止はセリアックスプルーと診断された小児の予後を変え、成人患者の予後を実質的に改善したが、一部の人、主に、初めから重篤な疾患があった成人は依然として、この疾患で死亡する。重要な死因はリンパ細網疾患(特に、腸リンパ腫)である。無グルテン食によって、このリスクが減るかどうかは分かっていない。見かけ上の臨床寛解は、再生検またはEMA価の増加でしか検出されない組織学的再発と関連していることが多い。
【0009】
グルテンは、例えば、市販のスープ、ソース、アイスクリーム、ホットドック、および他の食物において、非常に広く用いられているので、患者は、忌避すべき食料の詳細なリストと、セリアックスプルーに精通している栄養士からの専門アドバイスを必要とする。少量のグルテンの摂取でも寛解が妨げられる、または再発が引き起こされる場合がある。特定の患者が経験する欠乏の程度に応じて、サプリメントビタミン、無機質、および造血剤も必要とされる場合もある。診断が不正確であるか、または疾患が難治性であるために、少数の患者はグルテンの使用中止に十分に応答しないか、全く応答しない。疾患が難治性である場合、経口コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン10〜20 mg、1日2回)が応答を誘導することがある。
【0010】
おそらく、臨床開発中の最も有望な新治療法は、食料中の毒性グルテンオリゴペプチドのレベルを減らすことでセリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎の症状を予防および/または治療するため、患者による摂取の前または後に、米国特許第7,320,788号(特許文献8)および同第7,303,871号(特許文献9)(参照により本明細書に組み入れられる; PCT公開番号2008/115428(特許文献10); 2008/115411(特許文献11); 2007/044906(特許文献12); および2007/047303(特許文献13)も参照されたく、これらの各々が参照により本明細書に組み入れられる)に記述されているようにグルテナーゼを用いることである。これらの特許公報は、ある種のグルテンオリゴペプチドが胃酵素および膵酵素による切断に抵抗性であること、小腸内のこのようなペプチドの存在がセリアックスプルー(および疱疹状皮膚炎)患者において毒性作用を生ずること、ならびに酵素処理によってこのようなペプチドおよびその毒性作用を除去できることを開示している。グルテナーゼ消化により、これらの毒性オリゴペプチドは断片へ切断され、その結果、セリアックスプルーまたは疱疹状皮膚炎患者におけるその毒性作用が予防または軽減される。
【0011】
多くのグルテナーゼはシステインおよび/またはメチオニン残基を含んでおり、システインおよびメチオニンを含有するタンパク質はバルク酵素または剤形としてのいずれかの保管中に酸化に供される可能性があり、活性部位にシステインを有する酵素、具体的にはシステインプロテアーゼは、システインの酸化によって不活性化される可能性がある。保管中のおよび凍結乾燥後のこれらのタンパク質の安定性は、アセチルシステインまたはメチオニンを加えてラジカルの攻撃を除去することにより改善されることがある。
【0012】
含硫抗酸化剤、遊離チオール、例えばシステイン、ホモシステイン、チオグリセロール、アセチルシステイン、および亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなど、ジスルフィド(遊離チオールが生成されうるジチオスレイトールおよびαリポ酸など)、ならびに他の部類の抗酸化剤、例えばキレート剤、例えばEDTA、アスコルビン酸、没食子酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ならびに酸化を防ぐのに当技術分野において公知の他のものを含めて、種々の抗酸化剤が医薬品および食品の保管中の保存料として有用であることが知られている。特定のタンパク質に有効な抗酸化剤の選択は、多くの場合、予測不能であり、試行錯誤を伴う。
【0013】
剤形の酸化の阻止には薬量の限定の必要があるため、少量の抗酸化剤が有効でありうる。これは、剤形における抗酸化剤の濃度が比較的大きいからである。しかし、剤形における抗酸化剤の量では、容量が1リットルまたはそれ以上でありうるさらに大きな胃内容量においてほとんど活性がないであろう。
【0014】
ある種のシステインプロテアーゼ、特に、パパインおよびある種のカテプシンは、活性部位システインのS-ニトロシル化によって不活性化されることが報告されている(Wang et al. (2000) JBC 2002 277(21):18568-73(非特許文献1); Ascenzi et al. (2001) Curr. Protein Pept. Sci. 2: 137-153.(非特許文献2); およびVenturini et al. (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 270: 437-441.(非特許文献3)を参照のこと)。NO供与体を含有するある種のスルフヒドリルは、活性部位Cys25でのS-NO結合の形成によってこの酵素を可逆的に阻害することが実証された。この阻害はジチオスレイトールによって反転されるが、アスコルビン酸によっては反転されなかった。研究者らは、パパインとS-NO供与体との間のジスルフィド結合が阻害に関わるものと推定している。
【0015】
唾液中の硝酸塩は、ラットにおいて、亜硝酸塩に変換されることが示されており、亜硝酸塩は絶食した胃のpH 2でNOにさらに変換されうる(Bjorne et al. (2004) J. Clin. Invest. 113: 106-114(非特許文献4))。そのような条件の下で、亜硝酸塩からのNO形成の増大および、おそらくはNOによって媒介される、血流の増大を認めたと報じられている。漿膜側から、酸化窒素は胃に作用して、S-ニトロシルチオールタンパク質中間体を形成することによりおそらく、胃腸運動に影響を与えることが知られている。
【0016】
かくして、食物を与えられた胃の内部でのタンパク質の安定性を改善できる薬学的製剤および単位剤形が未だ必要とされている。本発明はこれおよび他の必要性を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7,291,598号
【特許文献2】米国特許第7,265,097号
【特許文献3】米国特許第7,244,709号
【特許文献4】米国特許第6,541,606号
【特許文献5】米国特許第7,351,741号
【特許文献6】米国特許第6,660,313号
【特許文献7】米国特許第6,562,339号
【特許文献8】米国特許第7,320,788号
【特許文献9】米国特許第7,303,871号
【特許文献10】PCT公開番号2008/115428
【特許文献11】PCT公開番号2008/115411
【特許文献12】PCT公開番号2007/044906
【特許文献13】PCT公開番号2007/047303
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Wang et al. (2000) JBC 2002 277(21):18568-73
【非特許文献2】Ascenzi et al. (2001) Curr. Protein Pept. Sci. 2: 137-153.
【非特許文献3】Venturini et al. (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 270: 437-441.
【非特許文献4】Bjorne et al. (2004) J. Clin. Invest. 113: 106-114
【発明の概要】
【0019】
第一の局面において、本発明は、食物を与えられた胃の内部においてタンパク質を安定化する経口投与に適したタンパク質の薬学的製剤を提供する。一つの態様において、タンパク質はプロテアーゼである。一つの態様において、プロテアーゼはシステインプロテアーゼである。一つの態様において、製剤はタンパク質に加え、抗酸化剤、例えば還元剤および/またはキレート剤を含む。一つの態様において、抗酸化剤は含硫抗酸化剤である。さまざまな態様において、含硫抗酸化剤は、硫酸塩、遊離チオール、または胃液中で遊離チオールを生成する作用物質である。さまざまな態様において、含硫抗酸化剤は、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、N-アセチルシステイン、ホモシステイン、システイン、モノチオグリセロール、チオ硫酸ナトリウム、αリポ酸、およびジチオスレイトールからなる群より選択される。さまざまな態様において、薬学的製剤は任意で、キレート剤を含んでもよい。一つの態様において、キレート剤はEDTAである。他の態様において、キレート剤はクエン酸である。
【0020】
本発明の第一の局面の一つの態様において、タンパク質は、単独でまたは別のプロテアーゼと組み合わせて、セリアックスプルー患者に対して毒性があるグルテンペプチドを非毒性断片へ消化できる、システインプロテアーゼである。一つの態様において、システインプロテアーゼはオオムギエンドプロテアーゼEPB2もしくはそのプロテアーゼの修飾型、またはどちらかの組み換え型である。一つの態様において、オオムギエンドプロテアーゼEPB2はプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)と混合される。一つの態様において、PEPはスフィンゴモナスカプスラタ(Sphingomonas capsulata) PEPもしくはそのプロテアーゼの修飾型、またはどちらかの組み換え型である。一つの態様において、PEPは黒色アスペルギルス(Aspergillus niger) PEPもしくはそのプロテアーゼの修飾型、またはどちらかの組み換え型である。
【0021】
第二の局面において、本発明は、患者におけるセリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎を予防および/または治療するための方法であって、安定化されたシステインプロテアーゼを含有する本発明の薬学的製剤を、グルテンを含有する食料を患者が摂取するのと同時に該患者に経口投与する段階を含む方法を、提供する。
【0022】
第三の局面において、本発明は、本発明の新規組成物の単位剤形を提供する。さまざまな態様において、単位剤形を本発明の方法において好都合に用いることができる。本発明の剤形および薬学的製剤を哺乳類およびヒトの治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】食後胃液とのインキュベーション中のALV001* (プロ酵素ALV001の活性型)の活性を示す。
【図2】食後胃液とのインキュベーション中のALV001の活性を示す。
【図3】1-チオグリセロールによる食後胃液中のALV001の安定化を示すALV001のウエスタンブロットである。
【図4】1-チオグリセロールの非存在下または存在下での食後胃液とのインキュベーション中のALV003の活性を示す。
【図5】抗酸化剤による酵素活性の喪失の反転を示す。
【図6】還元剤による食後胃液中のALV001の安定化を示す。
【図7】0.5 mMのチオ硫酸ナトリウム、0.5 mMのメタ重亜硫酸ナトリウムおよび5 mMのリポ酸による、図6と同様の安定化を示す。
【図8】亜硫酸ナトリウムによる安定化の時間的経過を示す。
【図9】メタ重亜硫酸ナトリウムの滴定を示す。
【図10】還元剤の添加後の活性の回復を示す。
【図11】ALV001の安定化におけるメタ重亜硫酸ナトリウムの用量依存性を示す。
【図12】2×ALV001酵素濃度でのメタ重亜硫酸塩の滴定を示す。
【図13】メタ重亜硫酸ナトリウムがオレンジジュース中でALV001活性を安定化することを示す。3 mg/mlのALV001を840 μMのメタ重亜硫酸ナトリウムありまたはなしのオレンジジュース中で再構成した。発色酵素活性を表示した時点で測定して、機能酵素の相対量を決定した。
【図14】刺激された食後の胃の条件下でシステインがALV001活性を安定化することを示す。無グルテンの食事を咀嚼し、休止中胃液へ吐きかけた。ALV003およびさまざまなレベルのシステインを時間0において添加し、発色酵素活性を経時的にモニタリングすることによってALV001活性の安定性を試験した。胃酸分泌を実験の間中ずっと刺激した。
【図15】ALV001安定性試験を示す。酵素150 mgをクエン酸一水塩300 mgおよび重亜硫酸ナトリウム8 mgとともに製剤化し、ポリプロピレンボトルの中に入れ、アルミ箔袋の中に密封した。発色アッセイ法の測定を特定の時点で行って安定性を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
タンパク質の経口送達(口腔による物質の投与、すなわち、経口投与)に関する現行の技術分野においては、タンパク質の酸化を防ぐためのGI管における安定化は論じられていない; その代わり、これまでの努力の焦点は、酸に対してのまたは消化酵素によるタンパク質分解に対しての、経口摂取されたタンパク質の潜在的な不安定性にあった。このため、酸化に対しての、経口投与されたタンパク質のさらなる安定化をもたらす必要性は本発明より前には理解されていなかった。さらに、そのような安定化の利点は特に、タンパク質分解を増強する目的での胃への酵素の経口送達の場合には特に、有益でありうる。本発明は、少なくとも一つには、そのような経口投与された酵素の分解において酸化が重要な役割を果たす可能性があるという発見から生じた。
【0025】
オオムギEPB2として公知のシステインプロテアーゼの組み換え、修飾型である酵素ALV001は、食物を与えられたヒトの胃液のエクスビボ抽出物中で、ならびに類似のpH (3〜5)およびペプシン含量で観察されたよりも著しく速い速度で、素早く不活性化された。本発明の一つの局面は、抗酸化剤、特に含硫抗酸化剤、例えば亜硫酸塩もしくは遊離チオールまたは胃液中で遊離チオールを生成する作用物質の添加が胃液中でALV001 (かくして、他のシステインプロテアーゼおよびシステイン含有タンパク質)を安定化するという発見から生じた。驚くべきことに、これらの含硫抗酸化剤は胃液中で不活性化されたALV001から活性酵素を再生することもできる。他の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン(スルフヒドリル基がメチル化されている)はALV001を安定化(ALV001の活性を保存)しなかった。ETDAは、抗酸化剤ほどではないにせよ、エクスビボの胃液中でALV001を安定化するのを助けたが、ゆえに、キレート剤は概ね、本発明によって、単独でまたは抗酸化剤との組み合わせで、いくらかの安定化をもたらす。抗酸化剤のうち、亜硫酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムは、ALV001を安定化するうえで特に効果的である。
【0026】
本明細書において用いられる場合、「抗酸化剤」は、他の分子の酸化を減速または阻止できる分子である。酸化は、電子を物質から酸化剤に移す化学反応である。本発明の方法で用いるために、生理学的に許容される抗酸化剤は関心の対象である。そのような抗酸化剤は、非限定的に、還元剤、アスコルビン酸(ビタミンC)、リポ酸、メラトニン、尿酸、カロチン、レチノール、トコフェロールおよびトコトリエノール、例えばα-トコフェロール(ビタミンE)、ユビキノン(コエンザイムQ)などを含む。
【0027】
本明細書において用いられる場合、「還元剤」は、レドックス(酸化還元)反応で別の種を還元しかつ、その際に、酸化され、したがってレドックス反応で電子供与体として働く、生理学的に許容される抗酸化剤化合物のサブクラスにおける任意の化合物である。本発明の製剤で用いられる還元剤は、非限定的に、メチオニン、グルタチオール、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、β-メルカプトエタノール、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオグリコレート、システイン、N-アセチルシステイン、ホモシステイン、モノチオグリセロール、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、チオ亜硫酸ナトリウムなどを含む。そのような作用物質には、遊離チオール(すなわちメルカプタン)基、例えばモノチオグリセロール、チオ亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなども含まれる。酸化型で存在するが、酸性中で遊離チオールを含む作用物質は、非限定的に、αリポ酸、ジチオスレイトール、グルタチオンなどを含む。
【0028】
ある種の抗酸化剤の場合、1リットル容量の胃内で作用するのに必要なレベルには、FDAの不活性成分ガイドのなかで毒性学的理由から現在認められているよりも高い、剤形中の(または剤形に伴って取られるべき)抗酸化剤の量が必要になるであろう。したがって、本発明の組成物におけるその使用には、抗酸化剤それ自体のさらなる臨床試験が必要になる可能性が高いであろう。対照的に、食品産業における保存料としての長い歴史と、本明細書において記述されるようにシステインプロテアーゼに対する還元剤としての並外れた効力とを有する、亜硫酸塩およびメタ重亜硫酸塩、特にそのナトリウム塩およびカリウム塩ならびにそれらの組み合わせは、有効なかつ一般に認められた薬学的賦形剤である。
【0029】
本発明のいくつかの態様において、抗酸化剤は亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、システイン、ホモシステイン、亜ジチオン酸ナトリウム、チオグリセロールおよびアセチルシステインから、単独でまたは組み合わせで、選択される。他の態様において、含硫抗酸化剤は亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、N-アセチルシステイン、ホモシステイン、システイン、モノチオグリセロール、チオ硫酸ナトリウム、αリポ酸およびジチオスレイトールからなる群より選択される。いくつかの態様において、抗酸化剤はメタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0030】
本発明の目的のための抗酸化剤の投与量は、当技術分野において公知のアッセイ法によって、例えば、既知濃度のタンパク質に対する安定作用のための用量範囲を試験することによって実験的に決定することができる。投与量の範囲が特定の抗酸化剤に依ることを当業者は理解するであろう。いくつかの態様において、抗酸化剤の投与量は剤形あたり少なくとも約2 mg; 剤形あたり少なくとも約5 mg; 剤形あたり少なくとも約10 mg、剤形あたり少なくとも約50 mgであり; かつ剤形あたり多くとも約500 mg、通常は剤形あたり多くとも約300 mgである。
【0031】
いくつかの態様において、抗酸化剤はメタ重亜硫酸ナトリウムであり、これは剤形あたり約2〜50 mgの濃度で、好ましくは剤形あたり約4〜16 mgで、および最も好ましくは剤形あたり約6〜10 mgで存在することができる。他の態様において、抗酸化剤はシステインであり、これは剤形あたり約5〜400 mgの濃度で、好ましくは剤形あたり約10〜350 mgで、および最も好ましくは剤形あたり約50〜300 mgで存在することができる。
【0032】
さまざまな態様において、薬学的製剤は任意でキレート剤を含んでもよい。キレート剤は生理学的に許容される成分である。キレート剤の例としてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、EGTA、フィチン酸、クエン酸、例えば無水クエン酸などが挙げられるが、これらに限定されることはない。これらは単独でまたは混合して用いることができる。一つの態様において、キレート剤はEDTAである。
【0033】
キレート剤の投与量は、当技術分野において公知のアッセイ法によって、例えば、既知濃度のタンパク質に対する安定作用のための用量範囲を試験することによって、通常は選択した抗酸化剤との組み合わせで、実験的に決定することができる。投与量の範囲が、投与される特定のキレート剤およびタンパク質に依ることを当業者は理解するであろう。いくつかの態様において、投与量は剤形あたり少なくとも約5 mg; 剤形あたり少なくとも約10 mg; 剤形あたり少なくとも約50 mg、剤形あたり少なくとも約100 mgであり; かつ剤形あたり多くとも約500 mg、通常は剤形あたり多くとも約300 mgである。
【0034】
いくつかの態様において、キレート剤はクエン酸、例えば無水クエン酸、クエン酸一水塩であり、これは剤形あたり約10〜約500 mgの用量で、通常は剤形あたり約25〜350 mgの用量で存在することができ、剤形あたり約45〜275 mgの用量で提供することができる。
【0035】
本発明の製剤において、抗酸化剤、例えば、上記の還元剤は、胃液への曝露時に、特に食後胃液への曝露時にプロテアーゼ活性剤を安定化するのに有効な濃度で提供される。製剤はインビボでの使用を対象とする。しかしながら、便宜上、安定性は、例えば、プロテアーゼを食後胃液と組み合わせ、適当な時間にわたって、例えば、約10分間、約20分間、約30分間、約1時間またはそれ以上の間、タンパク質分解活性を評価することによってインビトロで試験することができる。有効な濃度は、酵素初期活性の少なくとも約25%、酵素初期活性の少なくとも約50%、酵素初期活性の少なくとも約75%、もしくは酵素初期活性の少なくとも約90%を維持するのに十分であり、または少なくとも約10分間、少なくとも約30分間、もしくはそれよりも長い間、当初の活性を維持するのに実質的に十分である。
【0036】
かくして、本発明は、経口投与に適したタンパク質の新規製剤を提供し、このタンパク質は現在利用可能な組成物よりも酸化的分解に対して抵抗性が高い。タンパク質の特性または過去の試験から、経口投与に関しての治療的有益性はタンパク質によっては得られないであろうと示唆されていたこともあり、この発見が、経口投与に向けた多種多様のタンパク質の治療的可能性を増強しうることを当業者は理解するであろう。例えば、パパインは栄養補給食品として市販されているが、治療用物質としての用途は見つかっていない。パパインは、その高い最適温度にもかかわらず、本発明の製剤中で投与される場合、治療的有益性をもたらすことができる。
【0037】
それゆえ、本発明が、食物を与えられた胃の内部でのタンパク質を安定化する経口投与に適したタンパク質の薬学的製剤を提供することを当業者は理解するであろう。一つの態様において、タンパク質はプロテアーゼである。一つの態様において、プロテアーゼはシステインプロテアーゼである。一つの態様において、製剤はタンパク質に加え、抗酸化剤および/またはキレート剤を含む。一つの態様において、抗酸化剤は含硫抗酸化剤である。さまざまな態様において、含硫抗酸化剤は、硫酸塩、遊離チオール、または胃液中で遊離チオールを生成する作用物質である。
【0038】
システインプロテアーゼは、種々の治療目的で有用であることが報告されている。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,241,973号では、歯のホワイトニングに有用なシステインプロテアーゼについて記述している。参照により本明細書に組み入れられるPCT公開番号WO 2004/058816では、肝吸虫に対するワクチンに有用なシステインプロテアーゼについて記述している。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20080039400号では、炎症性腸疾患および他の状態を治療するうえで有用なシステインプロテアーゼについて記述している。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20070264311号では、食物不耐性を治療するうえで有用なシステインプロテアーゼについて記述している。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20070148267号では、食糧摂取を調節するうえで有用なシステインプロテアーゼについて記述している。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20060134017号および同第20060134018号では、生体表面への細菌付着の阻止において有用な、すなわち、プラーク形成の阻止に有用なシステインプロテアーゼについて記述している。システインプロテアーゼは、例えば、がんにおけるアポトーシスの誘導を含めて、全身的治療についても記述されている。本発明の組成物はしたがって、そのような方法において有用である。
【0039】
一つの態様において、システインプロテアーゼは、単独でまたは別のプロテアーゼと組み合わせて、セリアックスプルー患者に対して毒性があるグルテンペプチドを非毒性断片へ消化できる、プロテアーゼである。一つの態様において、システインプロテアーゼはオオムギエンドプロテアーゼEPB2もしくはそのプロテアーゼの修飾型、またはどちらかの組み換え型である。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「薬学的製剤」または「剤形」は、ヒトまたは哺乳類への投与を対象とした任意の製剤を含み、したがって、臨床試験およびFDAのような、規制当局による許可を受けている製剤だけでなく、栄養補給食品のような、規制認可を必要としない製剤も含む。
【0041】
かくして、例えば、薬学的製剤および剤形を含めて、本発明の組成物は、所望とされる製剤に依り、動物またはヒトへの投与に向けて薬学的組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルと定義される、薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含むこともできる。希釈剤は、プロテアーゼの生物学的活性に悪影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝液、生理食塩水、PBS、リンゲル溶液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、薬学的組成物または製剤は、他の担体、補助剤、または非毒性、非治療性、非免疫原性の安定剤、賦形剤などを含むことができる。組成物は、生理学的状態に近づけるために、pH調節剤および緩衝剤、毒性調節剤、湿潤剤、ならびに界面活性剤などの、さらなる物質を含むこともできる。
【0042】
本発明の組成物はまた、例えば抗酸化剤のような、種々の安定化剤のいずれも含むことができる。本発明の組成物中のタンパク質またはポリペプチドは、そのインビボでの特質を増強する分子と複合体を形成することもできる。そのような分子には、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、および脂質が含まれる。
【0043】
各種の投与に適した製剤に関するさらなる手引はRemington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985)において見出すことができる。薬物送達の方法の簡単な総説は、Langer, Science 249:1527-1533 (1990)を参照されたい。
【0044】
経口投与の場合、活性成分は固体の剤形、例えばカプセル、錠剤および粉末で、例えばサシェまたはスプリンクルで、または液体の剤形、例えばエリキシル、シロップおよび懸濁液で投与することができる。活性成分は、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルク、炭酸マグネシウムなどの、不活性な成分および粉末状担体とともにゼラチンカプセルまたはヒプロメロースカプセルの中に封入することができる。望ましい色、味、安定性、緩衝能力、分散度または他の公知の望ましい特徴を提供するために添加できるさらなる不活性成分の例は、弁柄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、および食用白インクである。類似の希釈剤を用いて圧縮錠を作出することができる。錠剤もカプセルもともに、数時間にもわたる医薬の継続的な放出を提供するために、持続放出性製剤として製造することができる。圧縮錠は、嫌な味を隠し、錠剤を大気から守るために糖衣コートもしくはフィルムコートされてもよく、または胃腸管内での選択的な崩壊のために腸溶コートされてもよい。経口投与のための液体剤形に着色料および着香料を含めて、患者による受容を高めることができる。
【0045】
本発明の薬学的組成物を製剤化するために使用される成分は、好ましくは高純度のものであり、潜在的に有害な夾雑物を実質的に含まない(例えば、少なくともNational Food (NF)グレード、一般的には少なくとも分析グレード、およびより典型的には少なくとも医薬品グレードである)。使用の前に所与の化合物が合成される必要がある限りでは、得られる生成物は、典型的には、合成または精製過程中に存在する可能性のある、潜在的に有毒な作用物質のいずれも、特に内毒素のいずれも実質的に含まない。
【0046】
栄養学的製剤は、「疾患の予防または治療を含めて医学的および/または健康的利点をもたらす食品または食品の一部」と定義されている(医療革新財団の理事長Stephen DeFelice博士)。製品は単離された栄養素、栄養補助食品および規定食から、遺伝子組み換えデザイナーフード、機能性食品、植物性製品および加工食品、例えばシリアル、スープおよび飲み物まで多岐にわたる。明確に線引きされた製品分野ではないが、消費者の間で最も人気の用語である、機能性食品は、イリノイ大学の博士号をもつClare Haslerによって、「食品が含む従来の栄養素に勝る健康的利点をもたらしうる任意の改変食品または食品成分」を含む食品と定義されている。関心対象の栄養学的製剤には、健康食品バー、飲料および栄養補助飲料などのような、動物またはヒト用の食品が含まれる。これらの食品は、本明細書において提供されるように組成物の中に生物学的に活性なプロテアーゼを含めることによって増強される。
【0047】
剤形がセリアックスプルーを治療するためのものであり、かつ酵素ALV001を含む場合、少なくとも一つの剤形はALV001を単独でまたはALV002との組み合わせで含むことができる。ALV001がALV002なしで投与される場合に食事とともに投与されるALV001の全含量は、ALV001タンパク質50〜2000 mg、好ましくは100〜1000 mg、およびさらにより好ましくはALV001 100〜600 mgである。ALV001およびALV002が同一または別々のいずれかの剤形中で組み合わせて投与される場合、それらを10:1〜1:10、より好ましくは3:1〜1:3の比率で、および最も好ましくは1.5:1〜1:1.5の比率で与えることができる。およそ1:1の比率で投与されるなら、食事とともに与えられる全酵素含量は、50〜2000 mg、より好ましくは50〜900 mg、および最も好ましくは100〜400 mgであることができる。
【0048】
発色基質Z-Phe-Arg-pNAに対する25℃でのALV001のタンパク質分解活性は、410 nmで光吸収度の変化率を測定することによって評価される。この方法は、410 nmで光を吸収する、パラ-ニトロアニリン(pNA, 4-ニトロアニリン)の溶液中への放出に基づく。ALV001の場合、規格は≧5000 u/mgである。
【0049】
発色基質Z-Gly-Pro-pNAに対する25℃でのALV002のタンパク質分解活性は、410 nmで光吸収度の変化率を測定することによって評価される。この方法は、410 nmで光を吸収する、パラ-ニトロアニリン(pNA, 4-ニトロアニリン)の溶液中への放出に基づく。ALV002の場合、規格は≧3000 u/mgである。
【0050】
第二の局面において、本発明は、患者におけるセリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎を予防および/または治療するための方法であって、製剤が抗酸化剤で安定化され、かつプロテアーゼが経口投与時にセリアックスプルー患者に対して毒性のない断片へグルテンを分解できる、安定化されたシステインプロテアーゼを含有する本発明の薬学的製剤を、グルテンを含有する食料を患者が摂取するのと同時に該患者に経口投与する段階を含む該方法を提供する。米国特許第7,320,788号および同第7,303,871号では、セリアックスプルー患者に対して毒性のない断片へグルテンを分解できるプロテアーゼを同定するための方法について記述している。
【0051】
第三の局面において、本発明は、本発明の新規組成物の、薬学的製剤および剤形、すなわち、単位剤形を提供する。さまざまな態様において、単位剤形を本発明の方法において好都合に用いることができる。
【実施例】
【0052】
1. 食後ヒト胃液中でのALV001の不安定性の実証
凍結されたヒト食後胃液を融解し、21,000gで5分間遠心分離して不溶性物質をペレットにし、上清を本実施例のために用いた。胃液50〜200 μlを96ウェルプレートのウェルに添加し、37℃でインキュベートした。抗酸化剤を添加した場合には、この段階でそれらを添加した。ALV001または活性化ALV001* (ALV001のタンパク質分解的切断によってALV001* (ALV001の活性型)を産生する方法に関しては、参照により本明細書に組み入れられるPCT特許出願番号2008/003425を参照のこと)を粉末1 mgあたり水20 μlの比率で溶解し、濃度を280 nmでの吸光度によって測定し、該タンパク質を胃液に0.1〜0.3 mg/mlの濃度で添加した。特定のサンプリング時間で、胃液サンプル1.6 μlをアッセイ緩衝液中で希釈して終容量を280 μlとし、基質としてZ-Phe-Arg-p-ニトロアニリン(pNA)を用い発色活性アッセイ法によって濃度を測定した。この方法は、基質から放出されると410 nmで吸収を行うpNAの能力に基づく。ALV001は、配列Phe-ArgにおけるアルギニンのC末端側を切断するエンドプロテアーゼB (アイソフォーム2)のプロ酵素または酵素原である。酵素的切断およびその後のpNAの放出を410 nmでの吸光度の変化によってモニターすることができる。反応速度を決定するため、410 nmでの吸光度を10秒ごとに1分間測定した。酵素濃度で割った回帰直線の傾きを、報告の酵素活性とした。
【0053】
ヒト胃液中でのALV001*の安定性を4人の健常志願者について絶食中に、ならびに食事を取ってから15、30、45、60、75および90分後に分析した。経鼻胃管を通じてこれらの被験者から胃液を回収した。ALV001の酵素活性を胃液への添加から1.5、5、10、20および60分後に測定した。ウエスタンブロットも行って、胃液中でのALV001*のタンパク質分解的消化について調べた。
【0054】
図1は、ALV001*活性が、被験者4の食後15分および30分の胃液中でのみ検出可能であり、その場合でさえも、20分のインキュベーション後には消失したことを示す。他の3人の被験者でもおよび酵素原ALV001の添加でも類似の結果が観察された。絶食中の胃液では、ALV001*の迅速な酵素分解は低いpH、例えば、被験者4の場合pH 1.3、およびペプシン含量によるものと予測された。食後胃液は3.5もしくは4またはさらにそれよりも高い範囲までのpHの一時的増加を有し、より高いこのpHで、ペプシン活性が低下し、ALV001*はタンパク質分解的消化に対しておよび酸性度による分解に対していっそう抵抗性になるものと予測される。
【0055】
図2に示されるように、被験者1の場合に食後15分pH 4.0のサンプルにおいて、酵素ALV001は発色アッセイ法により、迅速に不活性化されることが示されたが、この酵素は、図3に示したウエスタンブロットによって測定したとき、依然としてインタクトであった。同じ被験者において、それぞれpH 2.5および1.2であった、食後30分および60分の胃サンプルでは、この酵素はともに不活性であり、タンパク質分解された。他の患者サンプルでも類似のデータが得られた。この結論は、食後初期の胃液サンプル中でのこのシステインプロテアーゼALV001の酵素活性の予想外の喪失が、タンパク質分解に関係がない機構から生じたというものであった。
【0056】
2. 1-チオグリセロール(モノチオグリセロール)による食後胃液中でのALV001の安定化の実証
図4は、0.01から50 mMまでの、濃度範囲のモノチオグリセロール(MTG)を上記の食後15分の胃液のウェルに添加した結果を示す。MTGなしの対照も含めた。ALV001の酵素活性の喪失速度はMTG濃度の増加とともに減少し、50 mM MTGで喪失なしであった。かくして、抗酸化剤MTGはこのシステインプロテアーゼの酵素活性の喪失を阻止した。
【0057】
さらに、図5に示されるように、ALV001およびALV002 (スフィンゴモナスカプスラタ由来プロリルエンドペプチダーゼの組み換え型)の酵素比率およそ1:1での組み合わせであるALV003の、食後15分の胃液におけるプレインキュベーションの後、50 mM MTGの添加 vs 添加なしから、抗酸化剤MTGがALV001*の酵素活性の喪失を反転できることが示された。プレインキュベーション済みの非機能性ALV001*へのMTGのおよそ20分の添加後に、ほぼ完全な酵素活性が回復された。
【0058】
3. 選択した還元剤による食後胃液中でのALV001の安定化の実証
多数の還元剤、具体的には、N-アセチルシステイン、L-システイン、ホモシステイン、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、リポ酸、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムがどれも、食後初期の胃液中でALV001*を安定化することが実証された。対照的に、L-メチオニンおよびアスコルビン酸はこの酵素を安定化しなかった。EDTAはALV001*の安定化を増強し、不活性化のためには金属に依ることが示唆された。
【0059】
図6に示されるように、食事から15分後に健常志願者から得たエクスビボの食後胃液に、選択した還元剤を5 mMで添加し、37℃でインキュベートした。この胃液にプロ酵素ALV001を添加した。ALV001はこれらの条件の下で完全に活性化されるので、pH 4.5の酢酸緩衝液を対照として用いた。1.5、5、10、20、45分後にALV001活性を決定するために、サンプルを採取した。
【0060】
図を見ても分かるように、システインプロテアーゼALV001は酢酸緩衝液中で完全に活性であった。対照的に、この酵素は水、グルテン中で、および抗酸化剤のアスコルビン酸を加えた場合でさえ、迅速に不活性化される。キレート剤EDTAによる安定化の証拠が認められる。安定性の実質的な改善が還元剤のシステインおよびN-アセチルシステインで観察され、最も効果的な安定化は還元剤の亜硫酸ナトリウムで実証された。
【0061】
図7に示されるように、同じように行った第二セットの試験において、0.5 mMのチオ硫酸ナトリウム、0.5 mMのメタ重亜硫酸ナトリウムおよび5 mMのリポ酸は、食後胃液中でのALV001の安定性を改善することが実証された。
【0062】
図8に示されるように、亜硫酸ナトリウムはALV001を安定化するのに特に効果的な還元剤であったが、その効果は0.05 mMに至るまで持続していた。メタ重亜硫酸ナトリウムは50 μMの濃度でさえもALV001の安定性を改善した。
【0063】
図9に示されるように、別セットの試験において、これらの還元剤およびキレート剤が胃液中でのALV001の分解を反転する能力について調べた。ALV001を食後胃液に添加し、37℃で15分間インキュベートした。還元剤を5 mMで胃液に添加し、次いで、還元剤の添加後1.5、5、10、20および40分の時点でALV001活性を調べるためにサンプルを採取した。緩衝液対照およびEDTAは酵素活性を回復せず、亜硫酸ナトリウムおよびアセチルシステインは酵素活性を部分的に回復した。
【0064】
図11に示されるように、メタ重亜硫酸ナトリウムの用量依存性および0.12 mg/mlでのALV001の安定性の改善を食後胃液中で測定した。サンプルを1.5、5、10、20および40分の時点で採取した。メタ重亜硫酸ナトリウムは25 μMでさえもかなりの安定化をもたらしたが、最良の安定化は50 μMで観察された。この試験を2回、この酵素濃度で繰り返して、効果が酵素濃度に依らないことを確実にした; 図12。
【0065】
4. 剤形安定性試験
ALV001 (Lot A031207) 38 mgおよびALV002 (Lot B061707) 27 mgからなる混合物ALV003 65 mgを各ヒプロメロースカプセル・サイズ0 (Qualicaps)の中に秤量した。カプセル1セットに対し、0.8 mg/カプセルのメタ重亜硫酸ナトリウム(Spectrum, Lot WG 0855)を最初に、ALV003の粉末に加え、これをカプセルの中に収納する前にスパチュラを用いて手で混ぜた。このヒプロメロースカプセルを乾燥剤キャニスタ(Sorb-it) 1 gとともに30 mlのポリプロピレンバイアルの中に入れた。このバイアルを25℃/60%RHおよび40℃/75%RHの安定性チャンバの中に移した。サンプルを酵素活性分析のために初期(T=0)、2、4および8週の間隔で採取した。
【0066】
5. 抗酸化剤としてのグレープジュース中のメタ重亜硫酸ナトリウム
本発明の組成物は、治療用プロテアーゼならびに抗酸化剤、還元剤および/またはキレート剤を含有するように改変された食料を含む。本実施例では、グレープジュースまたは他のジュースとともに服用されるまたは混合されるシステインプロテアーゼALV001と組み合わせた還元剤メタ重亜硫酸ナトリウムの使用について例証する。グレープジュースによる胃液中でALV001を安定化する能力を実証するために、一例として、以下の実験を行った。ALV001を水中、20 μl/mg粉末でまたはおよそ9.5 mg/mlで調製した。96ウェルプレートの中に、37℃にプレインキュベートされた食後15分の胃液54 μl、ジュース5 μlおよび水で1:1に希釈したALV001 2.66 μlを加えた。試験したジュースは、スパークリングホワイトグレープジュース(Welch's)、ホワイトグレープジュース(Welch's)、ホワイトグレープジュース(Safeway)、ライムジュース(Realime)およびレモンジュース(Safeway)であった。これらのフルーツジュースは保存料としてメタ重亜硫酸塩を含有する。対照として水を用いた。対照の水では、食後胃液中でのALV001の通常の迅速な分解が示された。ライムおよびレモンジュースは、より遅いALV001分解を示し、全3種のグレープジュースでは試験20分の時間的経過にわたって安定であった。
【0067】
このように、本発明の一つの態様において、ALV003または別のグルテナーゼをHPMCカプセル中に(例えば、薬物300 mg)投入し、1杯の、およそ100〜250 mlまたはそれ以上のグレープジュースとともに服用する。
【0068】
6. 抗酸化剤としてのオレンジジュース中のメタ重亜硫酸ナトリウム
ALV001 3 mg/mlを840 μMのメタ重亜硫酸ナトリウムありまたはなしとしオレンジジュース中で再構成した。図13に示されるように、機能酵素の相対量を決定するために、表示した時点で、上記のように発色酵素活性を測定した。データから、メタ重亜硫酸ナトリウムの存在下での安定性の増大が明らかである。
【0069】
7. 抗酸化剤としてのシステイン
無グルテンの食事を咀嚼し、休止中胃液へ吐きかけた。ALV003およびさまざまなレベルのシステインを時間0において添加し、発色酵素活性を経時的にモニタリングすることによってALV001活性の安定性を測定した。胃酸分泌を実験の間中ずっと刺激した。図14に示されるように、これらの刺激された食後の胃の条件下でシステインはALV001活性を安定化する。
【0070】
8. 抗酸化剤としてのクエン酸一水塩および重亜硫酸ナトリウム
酵素(ALV001) 150 mgをクエン酸一水塩300 mgおよびメタ重亜硫酸ナトリウム8 mgとともに製剤化し、ポリプロピレンボトルの中に入れ、アルミ箔袋の中に密封した。図15に示されるように、発色アッセイ法の測定を特定の時点で行って安定性を評価した。
【0071】
9. 剤形
本発明は、任意で錠剤型の中に、添加したマンニトールおよび微結晶性セルロースならびにメタ重亜硫酸ナトリウム8 mgとともに、ALV003 300 mgまたは900 mgを含有する剤形を提供する。
【0072】
本発明は、100:8 (w/w)の比率から900:4 (w/w)の比率でモノチオグリセロールに代えて凍結乾燥の前にメタ重亜硫酸ナトリウムが溶液に添加されたALV001の凍結乾燥粉末を含有する剤形を提供する。
【0073】
本発明は、100:8 (w/w)の比率から900:4 (w/w)の比率でモノチオグリセロールに代えて噴霧乾燥の前にメタ重亜硫酸ナトリウムが溶液に添加されたALV001の噴霧乾燥粉末を含有する剤形を提供する。
【0074】
本発明は、即時放出ALV001を100〜900 mgの範囲でおよびメタ重亜硫酸ナトリウムを1〜10 mgの範囲で含有する剤形を提供する。
【0075】
本発明は、30分から6時間まで放出される、制御放出ALV001を100〜900 mgの範囲でおよびメタ重亜硫酸ナトリウムを1〜10 mgの範囲で含有する剤形を提供する。
【0076】
本発明は、30分から6時間まで放出される、制御放出ALV001を100〜900 mgの範囲でおよびメタ重亜硫酸ナトリウムを1〜10 mgの範囲で含有する剤形を提供する。
【0077】
本発明は、20分から6時間後まで放出される、即時放出パルスと2度目のパルスとにおいてパルス放出ALV001を100〜900 mgの範囲でおよびメタ重亜硫酸ナトリウムを1〜10 mgの範囲で含有する剤形を提供する。
【0078】
本発明は、プロテアーゼおよび胃内で少なくとも30、50、100または200 μMの抗酸化剤濃度を達成する抗酸化剤の量を含有する剤形を提供する。
【0079】
本発明は、プロテアーゼおよび胃内で少なくとも100、200または500 μMの遊離チオールの濃度をもたらす化合物の量を含有する剤形を提供する。
【0080】
本発明は、メタ重亜硫酸ナトリウムを含有し、かつ一方の酵素成分が即時放出をもたらすように製剤化され、もう一方の酵素成分がパルス放出であるか、または制御放出をもたらすためであるかのいずれかである、ALV001とALV002の両方を含有しうる剤形を提供する。
【0081】
上記のALV001剤形のどれもが第二のプロテアーゼを含むように改変されてもよい。一つの態様において、第二のプロテアーゼはプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)である。一つの態様において、PEPは、PCT公開番号2008/115411に記述されているように、例えば非限定的に、スフィンゴモナスカプスラタPEPである。さまざまな態様において、1〜2000 mgのPEPおよびALV001がPEP:ALV001の重量比1:100〜100:1で、より好ましくは1:20〜20:1で、より好ましくは1:5〜5:1で、および最も好ましくは1:1の比で投薬される。一つの態様において、剤形は、ALV001および抗酸化剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムが即時放出され、かつPEPが即時放出されるか; または1回もしくは複数回の短い遅延パルス(10分から3時間まで)で放出されるか; または10分から3時間にわたって持続放出で放出されるように構築される。
【0082】
一つの態様において、本発明は、抗酸化剤がメタ重亜硫酸ナトリウム以外の抗酸化剤である剤形を提供する。
【0083】
本発明は、タンパク質、ならびに単独でのまたは組み合わせでの、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウム、メタ重亜硫酸カリウム; チオ硫酸ナトリウム; グルタチオン、システイン、ホモシステイン、亜ジチオン酸ナトリウム、チオグリセロール; およびアセチルシステインからなる群より選択される抗酸化剤を含む経口剤形を提供する。
【0084】
本発明は、ローラー転圧された酵素の顆粒または小丸薬を提供することができる。抗酸化剤は、顆粒もしくは小丸薬の中に含有されてもよく、または顆粒もしくは小丸薬と混合されかつ剤形へ充填もしくは圧縮されてもよい。
【0085】
本発明の薬学的製剤は、例えば非限定的に、粒子、カプセルもしくはサシェ中の粒子、または錠剤の形態であることができる。錠剤は単層、二重層または多層であってもよく、コーティングされてもまたはコーティングされなくてもよい。製剤は、例えば非限定的に、食料もしくは飲料に添加され、その上、例えば、振りかけられた粉末もしくは顆粒製剤としてまたはジャム状もしくは粉状のスプレッドとして投与されてもよい。低含水量のカプセルが安定性のために望ましいこともあり、サイズ1、0または00の、ヒプロメロースカプセル、HPMCを用いることができる。カプセルは乾燥剤もしくは乾燥剤パックのどちらかを用い乾燥した環境で、またはブリスタ中なら乾燥窒素もしくは他の乾燥した環境の下で包装することができる。
【0086】
本発明の薬学的製剤は滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、またはステアリルラクチル酸ナトリウム、硬化植物油(ステアリン酸またはパルミチン酸の硬化および精製トリグリセリドなどの)を含むことができる。これらは剤形の重量の0.3〜5%であることができる。マンニトールが凍結乾燥粉末中に高濃度で含有されるなら、より高濃度の滑沢剤を用いることができる。
【0087】
システインプロテアーゼ(または他のタンパク質活性な薬学的成分)の粉末を滑沢剤または他の賦形剤、例えば増量剤または結合剤と混合し、顆粒化してもよい。システインプロテアーゼが水および温度で不安定なら、これらを、必要ならば安定性のために冷却されたローラーを用いて、顆粒にローラー転圧することができる。一つには任意で、剤形がGI管の中にある少なくとも最初の数分間の後、pHを変化させるまたは制御する作用物質を含めて、ALV001のような酵素原タンパク質の活性化を容易にしてもよい。
【0088】
リン酸二カルシウム、微結晶性セルロース、マルトデキストリン、マンニトール、ラクトース、スクロース、またはトレハロースのような増量剤を含ませて、粉末と混合するか、または凍結乾燥粉末もしくは噴霧乾燥粉末の中に含めてもよい。ALV001などの、ある種の酵素の場合には微結晶性セルロースなどの、より親和性の増量剤を回避してもよい。
【0089】
制御放出賦形剤を混合して、高分子薬を含有するマトリックスを形成させてもよい。これらのマトリックスは、直径が約1 mmから幅がフル錠剤10〜12 mmのサイズまでであってよく、さらには長さが1.8 cmまたはそれ以上であってもよい。これらのマトリックスはサイズに応じて、30分間から8時間、食物が保持されている胃への持続放出をもたらすことができる。これらのマトリックスは、膨潤性であっても膨潤性でなくてもよい。膨潤性なら、適切な持続放出の親水性重合体には、セルロース重合体およびその誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび微結晶性セルロースなどの)、多糖類およびその誘導体、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、無水マレイン酸共重合体、ポリ(ビニルピロリドン)、デンプンおよびデンプンに基づく重合体、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタンヒドロゲル、ならびに架橋ポリアクリル酸およびその誘導体が含まれる。さらなる例は、ブロック共重合体およびグラフト重合体を含めて、全文に記載した重合体の共重合体である。上記の重合体のいくつかを用いてこれらの粒子上に持続放出コーティングを調製することもできよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗酸化剤またはキレート剤を含む、経口投与に適したタンパク質の薬学的製剤。
【請求項2】
タンパク質がプロテアーゼである、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
プロテアーゼがシステインプロテアーゼである、請求項2記載の製剤。
【請求項4】
システインプロテアーゼが、オオムギEPB2、またはオオムギEPB2の組み換え型もしくは修飾型である、請求項3記載の製剤。
【請求項5】
抗酸化剤を含む、請求項1記載の薬学的製剤。
【請求項6】
抗酸化剤が、剤形あたり少なくとも約2 mgから、剤形あたり多くとも約500 mgの投与量で存在する、請求項5記載の薬学的製剤。
【請求項7】
抗酸化剤が含硫抗酸化剤である、請求項5記載の薬学的製剤。
【請求項8】
含硫抗酸化剤が硫酸塩、遊離チオール、または胃液中で遊離チオールを生成する作用物質である、請求項5記載の薬学的製剤。
【請求項9】
含硫抗酸化剤が、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、N-アセチルシステイン、ホモシステイン、システイン、モノチオグリセロール、チオ硫酸ナトリウム、αリポ酸、およびジチオスレイトールからなる群より選択される、請求項5記載の薬学的製剤。
【請求項10】
含硫抗酸化剤が、剤形あたり約2〜50 mgで存在するメタ重硫酸ナトリウムである、請求項8記載の薬学的製剤。
【請求項11】
含硫抗酸化剤が、剤形あたり約5〜400 mgで存在するシステインである、請求項8記載の薬学的製剤。
【請求項12】
キレート剤を含む、請求項1記載の薬学的製剤。
【請求項13】
キレート剤がEDTAまたはクエン酸である、請求項12記載の薬学的製剤。
【請求項14】
キレート剤が、剤形あたり少なくとも約5 mgから、剤形あたり多くとも約500 mgの投与量で存在する、請求項13記載の薬学的製剤。
【請求項15】
キレート剤が、剤形あたり約10〜300 mgで存在するクエン酸である、請求項14記載の薬学的製剤。
【請求項16】
キレート剤が、剤形あたり約30〜200 mgで存在するクエン酸である、請求項14記載の薬学的製剤。
【請求項17】
患者におけるセリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎を予防および/または治療するための方法であって、セリアックスプルー患者に対して毒性があるグルテンペプチドを非毒性断片へと消化できる安定化されたシステインプロテアーゼを、単独でまたは別のプロテアーゼと組み合わせて、グルテンを含有する食料を該患者が摂取するのと同時に該患者に経口投与する段階を含む、方法。
【請求項18】
安定化されたプロテアーゼが請求項1〜16のいずれか一項記載の製剤として提供される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項記載の薬学的製剤の単位剤形。
【請求項20】
タンパク質がシステインプロテアーゼである、請求項19記載の単位剤形。
【請求項21】
システインプロテアーゼが、オオムギエンドプロテイナーゼB2、または実質的に類似の活性を有するその修飾型もしくは組み換え型である、請求項19記載の単位剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−500263(P2012−500263A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523826(P2011−523826)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/004791
【国際公開番号】WO2010/021752
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(507158341)アルヴィン ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】