タンパク質の高圧リフォールディングのためのデバイスおよび方法
高圧処理中に、試料、特に液体試料を収容するためのデバイスが開示される。当該デバイスは、多重コンパートメントデバイスの実施形態における試料のハイスループットスクリーニング、および高圧処理中における溶液条件の調整等、種々の機能を可能にする。当該デバイスは、高圧条件下での完全性を維持するように設計され、任意で、酸素に対し実質的に不透過性である。例えば、本発明は、液体試料の加圧処理のための容器を提供し、この容器は、液体試料を収容するための少なくとも1つのコンパートメントを備え、可撓性材料から作製され、この材料は最大10キロバールの多次元圧力まで破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/739,094号に基づく優先権の利益を主張するものである。当該出願の全内容は、ここで参照することにより本願に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、容器、マルチウェルプレート、ならびに容器およびマルチウェルプレートに流体をポンプで送り込むためのシステム等、高水圧における動作のために設計されたデバイスに関する。本発明は、高圧下でタンパク質をリフォールディング(再折り畳み)するためのデバイスを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多くのタンパク質は、治療薬として有益である。そのようなタンパク質は、体内で産生される成長ホルモンが不十分である場合の異常身長(低身長)を治療するために使用されるヒト成長ホルモンと、腫瘍性疾患およびウイルス性疾患を治療するために使用されるインターフェロンガンマとを含む。タンパク質製剤は、多くの場合、組み換えDNA技術を使用して産生され、当該技術は、自然発生源から単離できるものよりも多量のタンパク質の産生を可能にすることができ、自然発生源から単離されたタンパク質によって発生することが多い汚染を回避するものである。
【0004】
タンパク質の適切なフォールディング(折り畳み)は、タンパク質の正常機能に不可欠なものである。不適切に折り畳まれたタンパク質は、アルツハイマー病、牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy;BSE、つまり「狂牛」病)およびヒトクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt−Jakob Disease;CJD)、ならびにパーキンソン病を含むいくつかの疾病の病状に寄与すると考えられており、これらの疾病は、適切なタンパク質折り畳みの重要性を例証する役割を果たす。
【0005】
組み換えヒト成長ホルモンおよび組み換えヒトインターフェロンガンマ等、ヒトにおいて治療的価値があるいくつかのタンパク質は、バクテリア、酵母、およびその他の微生物中において発現し得る。そのようなシステム中において、多量のタンパク質が産生され得るが、当該タンパク質は、誤って折り畳まれている場合が多く、しばしば封入体と呼ばれる大塊の中に凝集している。誤って折り畳まれた凝集状態でタンパク質を使用することはできない。したがって、そのようなタンパク質を解離させ適切にリフォールディングする方法が、多くの研究の対象となってきた。
【0006】
タンパク質をリフォールディングする1つの方法は、タンパク質を解離させ、アンフォールド(フォールディングされていない状態)し、適切にリフォールディングするために、タンパク質の溶液に対し高圧を使用するものである。そのような方法は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。それらの開示は、凝集タンパク質または誤って折り畳まれたタンパク質の、ある高圧処理が、生物活性を保有する(すなわち、当該タンパク質が、生物活性のために必要とされるように適切に折り畳まれていた)解離されたタンパク質の回収を高収率でもたらすことを示すものであった。特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【特許文献1】米国特許第6,489,450号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0038333号明細書
【特許文献3】国際公開第02/062827号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国2004/0038333号に示されているように、あるタンパク質の最適なリフォールディング条件を決定するために実験的なスクリーニング手順が必要とされる場合がある。したがって、マルチウェルプレート、使い捨ての単一試料容器、および高圧下で溶液条件を変化させるために高圧下で溶液を混合するためのデバイス等、最適条件を迅速に決定するための方法において使用され得る、適切な機器が必要である。
【0008】
生物学および生化学におけるハイスループットスクリーニングでは、一般に96ウェルプレート(通常、8×12配列のウェルを有する)が使用されている。しかしながら、現在市販されているプレートは、高圧利用(例えば、250バール以上)には適さない。本発明は、高圧下での使用に適したそのような機器を提供する。
【0009】
高圧研究のために現在使用されている単一試料容器は、欠点にも悩まされている。低密度ポリエチレンおよびポリプロピレン等の材料から作られた容器は、高圧下での酸素の大規模な質量移動を可能にする。溶液の酸化還元環境に敏感な反応では、そのような酸素移動は極めて望ましくない。本発明は、必要に応じて、容器の壁を通る酸素の質量移動を低減または解消する機器も提供する。
【0010】
現在使用されている機器のさらに別の欠点は、高圧処理中に溶液条件を調整できないことである。本発明は、容器および溶液が高圧装置の内部にある間の、種々の容器および溶液の操作を可能にすることにより、高圧処理中における溶液条件の変化を可能にする機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の開示
本発明は、高圧下での使用に適した単一試料収容デバイス、多重試料収容デバイス、および溶液交換デバイスを包含する。いくつかの実施形態において、これらのデバイスはポリマーから作製され、これにより、デバイスの比較的低コストでの作製が可能となる。これは、作製に好都合なデバイスの射出成形も可能にする。いくつかの実施形態において、これらのデバイスは、使い易くするために使い捨てであってもよい。溶液交換デバイスは、試料が高圧下に維持されている間における試料の溶液条件の変化を可能にする。任意の実施形態において、デバイスは、実質的に酸素不透過性の材料から作られ得る。
【0012】
一実施形態において、本発明は、液体試料を受けるための少なくとも2つのコンパートメントを備える多重試料収容デバイスであって、高圧が与えられる際、実質的に閉鎖されたシステムとしてコンパートメントを維持するデバイスを包含する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、a)高圧下で完全性を維持する材料から作られた本体と、b)本体内に、液体試料を受けるように適合された複数の試料コンパートメントと、を備える多重試料収容デバイスであって、複数の試料コンパートメント間、または任意の試料コンパートメントとその周辺物との間における液体試料の大幅な移動を許さないデバイスを包含する。
【0014】
前述の多重試料収容デバイスのさらなる実施形態において、複数の試料コンパートメントは、少なくとも2個の試料コンパートメント、少なくとも10個の試料コンパートメント、少なくとも16個の試料コンパートメント、少なくとも25個の試料コンパートメント、少なくとも36個の試料コンパートメント、少なくとも48個の試料コンパートメント、少なくとも72個の試料コンパートメント、または少なくとも96個の試料コンパートメントを備える。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、複数の試料コンパートメントは、少なくとも96個の試料コンパートメントを備える。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、複数の試料コンパートメントは、96個の試料コンパートメントを備える。
【0015】
多重試料収容デバイスの一実施形態において、試料コンパートメントは、当該デバイスの表側に開口部を有し、当該試料コンパートメントの開口部は、試料コンパートメントの開口部を覆うようにシーリングマットをデバイスの上端に置くことによって密閉される。シーリングマットは、定張力クランプによって適所に維持され得る。多重試料収容デバイスの別の実施形態において、試料コンパートメントは、コンパートメントに試料を充填する前に、当該コンパートメントの開口部内にヒートシール障壁を置くことによって密閉される。試料は、針注射により、当該障壁を通って充填され得る。続いて、十分な密閉を確実にするために、接着性ポリマー膜がデバイスおよび障壁の上端に置かれ得る。
【0016】
前述の多重試料収容デバイスのさらなる実施形態において、当該デバイスの本体は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、本体はポリエチレンテレフタレートから形成される。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、本体はポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体から形成される。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、液体試料の加圧処理のための容器であって、液体試料を収容するための少なくとも1つのコンパートメントを備え、当該容器は可撓性材料から作製され、当該材料は最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である、容器を包含する。(示されている圧力は、差圧ではなく、容器全体にかかる多次元圧力である。)一実施形態において、容器は、液体試料を収容するためのコンパートメントを1つのみ有する。一実施形態において、容器は、標準圧力下で一定の充填容積を有する。別の実施形態において、容器は、標準圧力下で可変充填容積を有する。
【0018】
別の実施形態において、可変充填容積を有する容器は、第1の端部および第2の端部を有するシリンダを備える。シリンダの第1の端部に可動プラグが挿入され、シリンダの第2の端部に、シリンダの内容物の除去を可能にするために取り外すことができる可撤部が取り付けられる。可撤部はキャップであってもよく、当該キャップは、螺入され、シリンダの第2の端部にある相補的なネジ山と嵌合してもよいし、スナップ式で留めてもよいし、磁気的に取り付けられてもよい。別の実施形態において、シリンダの第2の端部から短く狭い突起が延在して、ネジ、またはキャップを嵌合するその他の方法を有し、キャップは、シリンダの内容物の除去を可能にするために後に除去できるよう、当該突起の上に置かれる。一実施形態において、狭い突起は、Luer−Lok(登録商標)式フィッティング(Luer−Lok(登録商標)は、インターロック接続システムを表すBecton,Dickinson&Co.(ニュージャージー州フランクリンレイクス)の登録商標である)を有してもよい。
【0019】
別の実施形態において、可変充填容積を有する容器は、第1の端部および第2の端部を有するシリンダを備える。シリンダの第1の端部に可動プラグが挿入される。シリンダの第2の端部に、シリンダの内容物の除去を可能にするために取り外すことができるシールドチップが付着される。シールドチップは、シリンダの内容物の除去を可能にするために取り除くことができるシリンダの第2の端部からの短く狭い突起であってもよい。一部の実施形態において、チップは手で取り除くことができ、その他の実施形態において、チップは手で取り除くことはできず、切削工具を使用して取り除かれる。
【0020】
別の実施形態において、可変容積充填容器において使用するための可動プラグは、一方向弁を有する。一方向弁プラグは、容器の外部から容器へ任意の空気、ガス、または液体が当該弁を通って逆流するのを防止しながら、容器内の空気および試料が標準圧力下で流出することを可能にする。一実施形態において、一方向弁は逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はボール逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はボールスプリング逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はフラップ式逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はダックビル逆流防止弁である。別の実施形態において、一方向弁は傘型弁である。別の実施形態において、一方向弁はスイング式逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はリフト式逆止弁である。
【0021】
前述の容器のさらなる実施形態において、容器は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される。前述の容器の別の実施形態において、容器は、ポリエチレンテレフタレートから形成される。前述の容器の別の実施形態において、容器は、ポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体から形成される。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、加圧下における溶液交換(溶液混合)のためのシステムであって、第1の液体試料を収容する第1の容器と、さらなる液体試料を収容する1つ以上のさらなる容器とを備え、第1の液体試料とさらなる液体試料は同じであっても異なっていてもよく、容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、1つ以上のさらなる容器の液体試料は、第1の容器の液体試料と混合されることができ、一方、第1およびさらなる容器ならびにそれらの各液体試料はいずれも、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る、システムを包含する。1つ以上のさらなる容器が複数の容器、すなわち2つ以上のさらなる容器を備える場合、当該2つ以上のさらなる容器の内容物は、その他の2つ以上のさらなる容器とは無関係に(すなわち、異なる時間に)、またはその他の2つ以上のさらなる容器と連動して(すなわち、同時にまたは所定の時系列で)第1の容器の内容物と混合され得る。混合または接触前の高圧、混合または接触中の高圧、および混合または接触後の高圧は、すべて同じ圧力であってもよいし、2つが同じ圧力で1つが異なる圧力であってもよいし、3つの圧力すべてが異なる圧力であってもよい。
【0023】
加圧下における溶液交換(溶液混合)のためのシステムの別の実施形態において、システムは、予混合容器に指定された液体試料(液体試料は同じであっても異なっていてもよい)を収容する少なくとも2つの予混合容器と、受入容器に指定された少なくとも1つのさらなる容器とを備え、当該受入容器は、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよく、当該容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、液体試料を収容する少なくとも2つの予混合容器内の液体試料は、液体試料が互いに接触し得る少なくとも1つの受入容器へ動かされることができ、液体試料を収容する少なくとも2つの予混合容器、少なくとも1つの受入容器、および液体試料自体は、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る。一実施形態において、静的ミキサー(例えば、高速液体クロマトグラフィ(High−Performance Liquid Chromatography;HPLC)溶媒混合に使用されるもの)等の混合デバイスが、液体試料の混合を容易にするために、液体試料を収容する少なくとも2つの予混合容器と少なくとも1つの受入容器との間の流体経路に介在し得る。その他の実施形態において、予混合容器の1つ以上からの流れは、弁によって独立して制御され、その他の選択された予混合容器からの流れを防止しながら、ある予混合容器から内容物が受入容器へ引き込まれることを可能にし、後にこれらの弁は、その他の選択された予混合容器の内容物が受入容器へ流れることを可能にするように設定され得る。
【0024】
溶液交換(溶液混合)のためのシステムの別の実施形態において、本発明は、第1の容器であって、第1の液体試料を収容するためのコンパートメントを備える第1の容器を備え、当該第1の容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製され、また、1つ以上のさらなる容器を備え、当該1つ以上のさらなる容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製され、1つ以上のさらなる容器は第1の容器によって完全に包囲され、1つ以上のさらなる容器はさらなる液体試料を収納し、当該液体試料は互いにおよび第1の液体試料と同じであっても異なっていてもよく、1つ以上のさらなる容器は第1の容器内にある間に(その他のさらなる容器とは無関係に、またはさらなる容器と協調して)開けることができ、それによって第1の液体試料とさらなる液体試料を混合することができる。一実施形態において、1つ以上のさらなる容器は、閉鎖位置に維持され得るキャップを備え、第1の容器を開けることなく当該キャップを開けることができ、一方、第1の容器、1つ以上のさらなる容器、およびすべての液体試料は、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る。別の実施形態において、キャップは、第1の容器に収納される液体試料を、1つ以上のさらなる容器の液体試料と混合することもできる。別の実施形態において、キャップは、磁気ディスク等の磁化部分を備える。
【0025】
溶液交換(溶液混合)のためのシステムの別の実施形態において、本発明は、液体試料の加圧処理のための容器システムであって、液体試料を収容するためのコンパートメントを備える第1の容器を備え、当該第1の容器は可撓性材料から作製され、当該材料は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性であり、また、少なくとも1つのさらなる容器も備え、当該少なくとも1つのさらなる容器は可撓性材料から作製され、当該材料は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性であり、第1の容器と少なくとも1つのさらなる容器は、フローループによって接続される、システムを包含する。フローループは、当該フローループ内での流れを一方向にのみ可能にする逆止弁と、容器システムに高圧が与えられる際に動作することができるポンプとを備える。ポンプは、マイクロプロセッサによって制御され得る。マイクロプロセッサが高圧装置内に含まれる場合、当該マイクロプロセッサは、同じく高圧装置内に含まれる電池によって、または高圧装置の中に通されている電力線によって、電力を供給され得る。あるいは、当該デバイスは、高圧室へ続く適切に密閉された開口部を通って高圧室に入る駆動軸によって制御され得る。フローループは、バイパスシャントによって1つ以上のさらなる容器のうち1つ以上をバイパスすることができ、弁は、その他のさらなる容器とは無関係に、または協調して、バイパスシャントを閉鎖し、1つ以上のさらなる容器をフローループに接続することができる。
【0026】
溶液交換(溶液混合)の実施形態のすべてにおいて、少なくとも1つのさらなる容器内にある液体試料は、第1の容器内にある液体試料と混合されると、第1の容器内にある第1の液体試料の溶液条件を変更することができるため、組み合わせた液体は、第1の液体試料および/または少なくとも1つのさらなる液体試料とは異なる溶液条件である。変化させることができる溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、還元剤濃度および酸化剤濃度の両方、カオトロピック濃度、アルギニン濃度、界面活性剤濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または別の反応物質もしくは試薬の追加を含むがこれらに限定されない。
【0027】
デバイスの前述の実施形態のすべてにおいて、当該デバイスは、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.2mMを超えることを許さない材料を備えてもよい。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.1mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.05mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.025mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.01mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約10%を超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約5%を超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約2.5%を超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約1%を超えることを許さない。前述の実施形態において、高圧処理は、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、または約48時間、持続し得る。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、高圧下で溶液条件を変更する方法であって、第1の容器内の溶液中に少なくとも1つの組成物を提供するステップと、少なくとも1つのさらなる容器内の溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤を提供するステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は第1の容器の内容物と接触していないステップと、容器を高圧下に置くステップと、少なくとも1つのさらなる容器の内容物を第1の容器の内容物に接触させるステップと、を含む方法を包括する。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、対流によって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、攪拌によって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、拡散によって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、静的ミキサー等のミキサーに内容物を通過させることによって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つの容器の内容物は、受入容器へ移動され、当該受入容器は、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよく、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、受入容器への移動中または後に混合され得る。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器は、前記第1の容器内に収納される。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器は、第1の容器と共に流路内にある。
【0029】
一実施形態において、本発明は、高圧下で溶液条件を変更する方法であって、第1の容器内の溶液中に少なくとも1つの組成物を提供するステップと、少なくとも1つのさらなる容器内の溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤を提供するステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は第1の容器の内容物と接触していないステップと、容器を高圧下に置くステップと、少なくとも1つのさらなる容器の内容物を第1の容器の内容物に接触させるステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は長期間にわたって第1の容器の内容物に接触させられるステップと、を含む方法を包含する。一実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は連続方式で第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって連続的に変化する。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、段階的(不連続の)方式で(例えば、溶液の一部を混合し、待ち、溶液のさらなる部分を混合することによって)第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって段階的に変化する。溶液条件におけるこの段階的変化の一実施形態において、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10である。溶液条件におけるこの段階的変化の別の実施形態において、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10であり、約7〜約8.9、または約7.5〜約8.5、または約8のpHまで低下する。段階的方法の別の実施形態において、pHは、約24時間毎に約0.01〜約2pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約1pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約0.5pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約0.4pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約0.3pH単位で、または約24時間毎に約0.2pH単位で低下する。
【0030】
当該方法の一実施形態において、第1の容器内の溶液中の少なくとも1つの組成物はタンパク質である。タンパク質は、変性タンパク質または凝集タンパク質等の非天然状態であってもよく、凝集タンパク質は、可溶性凝集体、不溶性凝集体、もしくは封入体、または前述の任意の混合物であってもよい。
【0031】
当該方法の一実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のpHを変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の塩濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の還元剤濃度、酸化剤濃度、または還元剤濃度および酸化剤濃度の両方を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のカオトロピック濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のアルギニンの濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の界面活性剤の濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の特異的排除化合物濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のリガンド濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液に追加するためのさらなる反応物質または試薬である。
【0032】
別の実施形態において、容器は少なくとも約250バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約400バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約500バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約1000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約2000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約2500バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約3000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約4000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約5000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約6000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約7000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約8000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約9000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約10,000バールの圧力下に置かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の詳細な説明
「高圧」は、少なくとも約250バールの圧力を意味する。本発明のデバイスが使用される際の圧力は、少なくとも約250バールの圧力、少なくとも約400バールの圧力、少なくとも約500バールの圧力、少なくとも約1キロバールの圧力、少なくとも約2キロバールの圧力、少なくとも約3キロバールの圧力、少なくとも約5キロバールの圧力、少なくとも約6キロバールの圧力、少なくとも約7キロバールの圧力、少なくとも約8キロバールの圧力、少なくとも約9キロバールの圧力、または少なくとも約10キロバールの圧力であってもよい。
【0034】
「閉鎖系」は、物質は系とその周辺との間を移動することができないが、閉鎖系とその周辺との間で機械エネルギーまたは熱エネルギーの移動が発生し得るシステムを指す、標準的な化学熱力学用語を意味する。対照的に、「開放系」は、系とその周辺との間における、物質および/または機械エネルギーもしくは熱エネルギーの移動を可能にする。「孤立系」は、その周辺との機械的接触も熱的接触も許さない、すなわち、孤立系から/への機械的エネルギーまたは熱的エネルギーの移動が起こらない、閉鎖系である。「実質的に閉鎖された系」は、試料の質量の約1%未満、より好ましくは約0.5%未満、より好ましくは約0.2%未満、より好ましくは約0.1%未満、より好ましくは約0.05%未満、さらに好ましくは約0.01%未満が、系とその周辺との間を移動することができる系である。
【0035】
「液体試料の大幅な移動」は、試料中に含有される液体の容積の約1%以上の移動(標準的な大気圧下で計測)を意味する。本発明のデバイスが、液体試料の大幅な移動を防止するように設計されている場合、当該デバイスの使用中に移動される試料の量は、当該試料の加圧されていない容積の約1%未満、より好ましくは約0.5%未満、より好ましくは約0.2%未満、より好ましくは約0.1%未満、より好ましくは約0.05%未満、さらに好ましくは約0.01%未満である。
【0036】
「高圧下で酸素に対し実質的に不透過性」、「高圧下で実質的に酸素不透過性」または「高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性」は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が試料内において約0.3mMを超えることを許さない材料を意味する。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が、約0.2mM以下、好ましくは約0.1mM以下、好ましくは約0.05mM以下、より好ましくは約0.025mM以下、さらに好ましくは約0.01mM以下であることを許容する。パーセントの数値で表すと、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が、試料の初期酸素含有量の約10%を超える、好ましくは約5%以下、より好ましくは約2.5%以下、さらに好ましくは約1%以下であることを許容する。
【0037】
高圧デバイスの材料
高圧デバイスの本体は、多種多様な材料から作製され得る。デバイスが、圧力を伝達することができる少なくとも1つの可動面(図6に示す可変充填容積デバイス等)を有さない場合、圧力移動を可能にするために、デバイスを作っている材料は可撓性であるべきである。適切な材料は、高圧処理下において、1つ以上の試料コンパートメントから外部周辺への試料の漏出を可能にする、または流体、ガス、もしくは容器の外部周辺にあるその他の材料の、1つ以上の試料コンパートメントへの漏出を可能にする、または試料コンパートメント間における試料の漏出を可能にする、破損、破砕、またはいかなる故障もしくは完全性の喪失を被るべきではない。当然ながら、そのような漏出は、当業者が故意に望む、1つ以上の試料コンパートメントと外部周辺との間における意図的な移動、または2つ以上の試料コンパートメントとその他のコンパートメントとの間における意図的な移動を含むことを意図するものではない。
【0038】
デバイスは、少なくとも約250バールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる材料で構成されなくてはならない。別の実施形態において、材料は、少なくとも約500バールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、少なくとも約1キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、少なくとも約2キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、少なくとも約3キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。規定圧力は、デバイス全体の圧力差でも圧力降下でもなく、デバイスにかかる多次元圧力である。すなわち、デバイスとして使用される容器は、規定圧力まで加圧される圧力室内に置かれ、一方、圧力室は、当該室の外部の大気圧に対して当該室内で最大5キロバールまたは10キロバールの圧力差または圧力降下に耐えることができなくてはならず、容器の材料はそのような劇的な差圧を経験することはなく、むしろ全方向からの圧力は均一である。
【0039】
使用される材料は周辺から試料コンパートメントへの圧力移動も可能にしなくてはならず、それにより、デバイス全体の圧力はほぼ同等となる、すなわち、デバイス内における任意の2つの位置が経験する圧力の差は、全圧の約1%以下、好ましくは約0.5%以下、より好ましくは約0.1%以下である。その他の実施形態において、デバイス内における任意の2つの位置が経験する圧力の絶対差は、約5バール未満、好ましくは約2バール未満、より好ましくは約1バール未満である。外部から印加される圧力とデバイスの任意の内側部分との間のあらゆる差は、外部から印加される全圧の約5%以下、好ましくは約2%以下、より好ましくは約1%以下、さらに好ましくは約0.5%以下、より一層好ましくは約0.1%以下である。したがって、材料は、圧力を伝達するために可撓性であるべきである。
【0040】
一実施形態において、材料はポリマーである。別の実施形態において、安価な大量生産のために、ポリマー材料は射出成形される場合がある。適切なポリマー材料は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含む。高圧処理に耐え得るが酸素不透過性であるとは限らないその他のポリマー材料としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリカーボネートが挙げられる。
【0041】
試料の酸素含有量の考察
システイン含有タンパク質のリフォールディング等の多くの反応は、試料の酸素含有量によって影響を及ぼされ得る。一般に、タンパク質リフォールディング実験は、チオール等、規定濃度の酸化還元試薬(例えば、グルタチオン、シスタミン、シスチン、ジチオスレイトール、ジチオエリトリトールを、還元型、酸化型、または還元型と酸化型の混合、例えばジスルフィドシャフリングで)の使用を必要とするであろう。試料中の酸素の濃度は、高圧下で気泡が溶液中に押し込まれて試料中のO2濃度を変化させるので、試料中の気泡の存在によって影響を及ぼされ得る。試料中の酸素の濃度はまた、デバイスの壁全体にわたる酸素の拡散によっても影響を及ぼされ得る。試料デバイスは一般に、圧力が印加される室の中に置かれ、当該室で使用される流体が水である場合、当該試料デバイス周囲にある室の水に溶解した酸素は、当該デバイスの壁全体にわたって拡散し得る。
【0042】
これらの考察について、以下の節「気泡による酸素濃度変化」および「高圧下での酸素透過性」で扱う。
【0043】
気泡による酸素濃度変化
酸素濃度における変動の約80%が試料中の気泡により生じ、一方、当該変動の約20%はシリンジ型デバイス(当該デバイスは、高圧下で酸素移動に対し実質的に不透過性ではない)の壁全体にわたる酸素の拡散から生じると推定される。これは、可能な限り多くの気泡を試料バイアルから除去することの重要性を強調するものである。試料1ml中、25μlの空気につき0.2mモルのO2を充填した場合、高圧によって空気が液体試料に溶解し、当該量の酸素は、0.8mMの還元型チオールと反応することになる。一般的な還元型チオール濃度は、約1mM〜約10mM(Clark E.D.「Protein refolding for industrial processes」Curr.Opin.Biotechnol.12:202−207(2001年))の範囲であり、この範囲を超えると、還元型チオール濃度における0.8mMの変化によって約8%〜約80%の濃度における変動が引き起こされる。一般的な濃度である4mM還元型チオールでは、還元型チオールの0.8mM還元により、還元型チオールの溶液濃度における約20%の変化がもたらされる。これは、すべての気泡を除去することの重要性を強調するものであるが、現在の最新式バイアルを用いて実現することは困難であり、本発明はこれに取り組むことを意図する。
【0044】
図12は、種々のサイズの気泡によって引き起こされる酸素充填を示す。気泡の容量パーセントは、可能な限り低く、試料容積の約10%以下、より好ましくは試料容積の約5%以下、さらに好ましくは試料容積の約2.5%以下、より一層好ましくは試料容積の約1%以下に保たれるべきである。
【0045】
高圧下での酸素透過性
デバイスにおいて使用される材料は、任意で、高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性である。デバイスを使用して研究または処理されている試料に酸素移動が影響を及ぼし得る場合には、酸素に対し実質的に不透過性である材料を使用すべきである。任意で、使用される材料は、デバイスを使用して研究または処理されている試料に影響を及ぼし得る、二酸化炭素等、高圧下におけるその他のガスの移動に対しても実質的に不透過性である。高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性である材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)、Mylar(登録商標)(Mylarは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートポリエステルフィルムを表すDuPont社の登録商標である)、高密度ポリエチレン、およびポリスチレンを含むがこれらに限定されない。あるいは、管壁が十分な厚さに作られている場合、酸素に対する不透過性が低い材料を使用することができる。最後に、Styrolux(登録商標)(例えば、Styrolux(登録商標)684D)等のポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含むがこれらに限定されない、酸素に対しより透過性の材料を、酸素透過性を低下させるため、その他のポリマーまたはその他の材料の適切な被覆と共に使用してもよい。(Styrolux(登録商標)は、スチレン樹脂を表す、BASF Aktiengesellschaft Corp.(ドイツ、ルートウィヒスハーフェン)およびWestlake Plastics Company(ペンシルベニア州レニー)の登録商標である。)
デバイスを使用して研究または処理されている試料に酸素が影響を及ぼす場合、高圧下で実質的に酸素不透過性の材料を使用することの有用性が、実験的証拠により裏付けられている。一般的な圧力実験中、最大約0.35マイクロモルのO2を移動させられる可能性があり、それは、溶液の酸化還元環境を大幅に変更するのに十分である。図10は、高圧処理に現在使用されている従来型のシリンジを用いて行われた実験を示す。使用したシリンジは、Becton Dickinson社の1ml低密度ポリエチレンシリンジであった。pH8.0の500ml水溶液、4mM GSH(還元型グルタチオン)、2mM GSSG(酸化型グルタチオン)を、2150バールで17時間保った。図10に示すように、還元型グルタチオンの濃度を4.0mMから3.5mM以下まで低下させるのに十分な酸素が移動された。
【0046】
図11は、高圧下で使用されたシリンジの壁全体にわたる酸素移動の量の計算を示す。当該計算は、厚さ1/16インチ、長さ1.5インチ、および外径0.25インチのシリンジに関するものである。計算は、周囲酸素濃度を可変させて、2000バールでの24時間実験を仮定したものであり、周囲の流体中の予測される酸素濃度は、(圧縮前、周辺物の容積の約10%が気泡で構成されているという仮定の下で)約0.3mMとなる可能性が高く、図11においては垂直な点線で示されている。気泡中の酸素は、単純に、標準的な温度および圧力における気泡中の空気の量を計算するための理想気体の法則を使用することによって計算され、高圧下において、空気は溶液中に溶解することになる。計算は、定常状態での拡散に関するフィックの法則を使用して実行され、高圧下でポリマー中のO2の溶解度が劇的に増大するので、透過係数の代わりに拡散係数が使用される。拡散係数は、Polymer Handbook、第4版(J.Brandup、E.H.Immergut、およびE.A.Grulke編、A.Abe、D.R.Bloch共編、ニューヨーク、Wiley社、1999年)のものを使用した。
【0047】
このような仮定をすることにより、計算は、起こりうる周囲の液体中の酸素濃度値において、HDPE製のチューブ内では約0.2mM相当のO2が、またLDPEの場合には0.6mM相当のO2が移動することを示す。ポリプロピレンデバイス全体にわたる酸素移動の計算は行っていないが、相対的透過値に基づくと、HDPEとLDPEの値の間であると考えられる。ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)は、仮定された条件下では酸素の移動をほとんど有しないと計算される。よって、この計算は、デバイスのポリマー壁を通る酸素移動を大幅に低減させる、または殆ど解消するために、材料が思慮深く選定され得ることを実証するものである。
【0048】
デバイス実施形態:マルチウェルプレート
一実施形態において、高圧デバイスは、本体またはプレート内に複数のウェルを備える(「マルチウェルプレート」)。そのような実施形態の一例を図1に示す。示されている実施形態は96ウェルプレートであり、高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性である可撓性材料で作られた本体(1)は、液体試料を収容するための96個のウェル(2)を有する。材料は、射出成形によってプレートが形成され得るようなものが選定されるのが好ましい(が、必ずしもそうでなくてもよい)。
【0049】
マルチウェルプレート実施形態の本体に適切な材料が選定されると、試料は試料コンパートメントに導入されなくてはならない。試料ウェル中に空洞部分を含むことは望ましくなく、これは、高圧下では空気中の酸素が溶液中に入り込み、試料の酸化還元環境を変更するため、また、空洞部分の存在は材料に過度のひずみも引き起こし得るためである。したがって、ウェルは、当該ウェル内に残っているあらゆる残気を可能な限り解消するように設計される。
【0050】
図2Aは、ウェル設計(1)の1つの考えられる実施形態の側面図を示す。ウェル(3)は、すべての空気の通気を確実にするため、部分的に「ドーム」(4)内に覆われている。ドーム(4)を図2Bにおいてより詳細に示す。領域(6)は、試料充填用の注入口であり、ドームを形成する固形物(5)によって囲まれている。注入口(6)は、適切なサイズの試薬送出用ピペットチップの挿入および空気の通気を可能にするのに十分なほど大きくなくてはならない。このドーム型設計は、密閉前にウェル内のすべての空気を通気させるための過剰充填を可能にする。また、過剰充填中、超過分の試料はドームの側面を流れ落ち、試料間の交差汚染を解消するであろう。ドーム(4)は、十分なシーリング面を提供するため、上端の、注入口を密接に囲んでいるエリア(4A)内に、実質的な平面を有する。寸法は、標準サイズのピペットチップによる試料充填を可能にし、試料の通気を可能にし、交差汚染を防止するために十分なトラフをドームの基盤に有し、且つ、十分なシーリング面を提供するために前述の平らな上面を提供するように選択される。
【0051】
マルチウェルデバイスの一実施形態において、ウェルを密閉するために、マルチウェルプレートの上端にマットが置かれる。そのようなマットに適した材料は、シリコンゴムを含むがこれに限定されない。一実施形態において、マットは約1/8インチの厚さを有し、長さおよび幅は、共に使用されるマルチウェルプレートのものと実質的に同一である。マットは、ドームの上端における良好な密閉を可能にし、試料内における圧力誘起の容積変化による変形を許容するために十分な可撓性の材料から作られるべきである。この実施形態においては、シーリング面全体にわたって差圧がない―すなわち、ウェルの内部にある試料が経験する圧力は、マットが経験する圧力と実質的に同様である―ため、シーリングマットは、大気圧下において予測される以上の密閉能力を何ら提供する必要がない。使用されるシーリング材が高圧下で酸素に対し実質的に不透過性でない場合、酸素移動を抑制するために、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性のフィルムをシーリングマット上に置いてよい。当該フィルムは、Mylar(登録商標)を含むがこれに限定されない材料から作られていてよい。シーリングマットを使用するマルチウェルデバイスのこの実施形態において、シーリングマットに力を加え、ウェルの密閉を可能にするために、クランプがプレート上に取り付けられる。クランプは、デバイス全体に均一な力、および十分な密閉を確実にするのに十分な力を提供しなければならない。クランプは、加圧サイクル全体を通して一定の力も提供しなくてはならず、それには高圧下での材料(特に、シーリングマット)の収縮による定張力クランプ(一定力クランプではない)を必要とする。図3は、シーリングマット(3−1)およびクランプアセンブリ(3−2)を有する96ウェルプレートの実施形態を示す。
【0052】
図4に示すマルチウェルプレートの別の実施形態において、プレートのウェルは、ドームおよびシーリングマットで覆われておらず、代わりに、ウェルは、当該ウェルに試料を充填する前に、ヒートシール障壁(4−2)によって覆われる。そのような障壁は、一般に医薬バイアルを密閉する際に使用される。ヒートシール障壁は、ウェルの密閉を確実にし、試料汚染を防止する。試料は、ピペットではなく針を装備したマルチチャンネルピペッターを用いる注入によって、マルチウェルプレートのこの実施形態に充填される。針は、試料ウェルを満たすために、障壁を貫通する。二次針も、空気を通着させ、ウェルを完全に満たせるように、満たすと同時に試料を貫く。マルチチャンネルピペッターは、マルチウェルプレートに溶液をピペットで入れるように設計されたものが市販されており、そのようなピペッターは、ピペットチップの代わりに試料充填用の針を使用するよう、容易に適合され得る。試料充填後、二次的な接着性ポリマー膜(4−1)で障壁を覆う。当該膜は、試料充填中に作成された貫通穴を密閉する。任意で、膜は、障壁全体にわたる酸素の拡散を抑制することもできる、すなわち、当該膜は、酸素に対し実質的に不透過性であることができる。接着性ポリマー膜の潜在的な材料は、Mylar(登録商標)を含むがこれに限定されない。
【0053】
デバイス実施形態:一定充填容積デバイス
別の実施形態において、高圧デバイスは容器を備え、当該容器の容積は標準圧力下においては固定されており、この実施形態は、一定充填容積デバイスに指定されている。高圧への曝露時に容器全体が比例的に縮小し、一般に、当該容器は、2キロバールにおいてその容積の約5%〜10%、4キロバールにおいてその容積の約20%(推定)だけ縮小することになり、したがって、このデバイスを作製するためには、可撓性材料を使用すべきである。そのような実施形態の一例を図5に示す。このデバイスは、円錐底を有するシリンダバレルからなる。容器は、多種多様な内部容積で作製されることができ、250μL、500μL、750μL、または1000μLを有する容器の寸法の例を、表1に規定する。容器の内側は、例えば50μL単位の、目盛付きであってもよい。シリンダバレルの上端は、ネジキャップ(図5に示す円錐底として形作られてもよいし、円筒型であってもよい)で密閉するためにネジ込まれてもよい。ネジ込み式ネジキャップは、内側と外側との間に少なくとも約5psigの圧力差がある場合に、密閉を維持することができなくてはならない(5psigは全圧ではなく差圧であって、この規模の圧力差は炭酸飲料を収納する市販のボトルのものと同様であることに留意されたい)。一定充填容積デバイスの実施形態の一般的なサイズを表1に示す(一定充填容積デバイスの、これら特定の実施形態の壁の厚さは、1/16インチである)。
【0054】
【表1】
デバイス実施形態:可変充填容積デバイス
別の実施形態において、高圧デバイスは可変充填容積の容器を備える。この実施形態の一例を図6に示す。この実施形態において、シリンジと同様の様式で、可動プラグ(6−2)および可撤キャップ(6−3)を有するシリンダ(6−1)が提供される。一実施形態において、シリンダが垂直に配向されている場合、プラグは試料コンパートメントの底部を形成し、試料コンパートメントと外部環境との間のシールとして作用する。プラグは、シリンダを満たす前に当該プラグを所望の容積に動かすために使用され得る、付着したプランジャロッドまたは分離したプランジャロッド(6−4)を有してもよい。プラグの配置を望ましい容積に導くために、シリンダは、例えば50μL単位の、目盛付きであってもよい。試料は、デバイスの内部空間(6−5)に収納される。続いて、残気を可能な限り除去するように注意しながら、シリンダを所望の試料で満たすことができる。次いで、可撤キャップをシリンダの上端に置く。代替的実施形態において、シリンダを逆の配向で満たすことができる、すなわち、シリンダの底部にキャップが置かれ、シリンダの上端にプラグが挿入されるようにシリンダを配向させることができる。一実施形態において、可撤キャップはネジ込み式で、単純にシリンダの上端にネジ留めされ得る。ネジ込み式可撤キャップは、内側と外側との間に少なくとも約5pigの圧力差がある場合に、密閉を維持することができなくてはならない(5psigは全圧ではなく差圧であって、この規模の圧力差は炭酸飲料を収納する市販のボトルのものと同様であることに留意されたい)。続いて試料を加圧下で処理することができ、加圧処理後、キャップを除去することができ、シリンダの内容物が注出される、または、プランジャロッドでプラグを押すことによって押し出される。
【0055】
代替的実施形態において、可撤キャップはシリンダの閉鎖端上の取り外し可能チップと置換される。この実施形態において、液体試料はシリンダ内に入れられ、当該シリンダの上端にプラグが挿入される。取り外し可能チップは高圧処理中、無傷に保たれる。処理後、チップは取り除かれ、シリンダの内容物が注出される、またはプランジャロッドで可動プラグを押すことによって押し出される。チップは、手で取り除かれるように設計されていてもよいし、切削工具で取り除かれるように設計されていてもよく、試料を排出するために切削工具でチップが除去され得る可変充填容積デバイスの例として、図21を参照されたい。
【0056】
別の代替的実施形態において、試料をシリンダに挿入するために、可動プラグとシリンダとの間に針を通すことができる。可動プラグ上の一方向弁は、試料が導入される際にシリンダ内の空気を放出することを可能にする(図7A、図7B、および以下の一方向弁アセンブリについての考察を参照)。
【0057】
圧力の印加を受けて可動プラグが動くため、可変充填容積デバイスを作製するために使用される材料は、本発明のその他のデバイスにおいて使用される材料ほど可撓性でなくてもよいことに留意すべきである。
【0058】
図7Aおよび図7Bにおいて、特に高圧利用に適合され、一方向弁プラグとして機能することができる、可動プラグ(7)が示されている。図7Aおよび図7Bに示す実施形態は、液体の一方向流を可能にするためにフラップに依存することから、フラッププラグまたはフラップ弁である。図7Aにおいて、可撓性フラップ(7−1)がOリング(7−2)と共にシールを形成している。フラップ(7−1)およびOリング(7−2)は、開口部(7−7)において可変充填容積デバイスの内側に開放されている内部通路(7−4)から、外部環境(7−6)を密閉する。エリア(7−3)は固体である。図7Bに示すように、一方向弁プラグが可変充填容積デバイスのポリマーバレル(6−1)に挿入されると、当該プラグは、試料が一方向弁から流出し始めるまで押下され得る。これは、可撓性フラップ(成形フラップ)が屈曲し、図7B中の矢印によって示されている経路を介して試料を逃がすことにより発生するものである。試料が弁から流出するまで押下することにより、試料から可能な限り空気が排除されることを確実にし、デバイス中における試料の量の調整も可能にする。フラップは一方向にのみ(Oリングから離れて)屈曲できるため、空気も試料の外部に存在するその他いかなる物質も、試料内へ逆流することができない。
【0059】
ポリマー試料バレル、逆止弁アダプタ、逆止弁アセンブリ、およびOリングシールで構成される、高圧試料バイアルとして使用するのに適した別の可変充填容積デバイスを、図21に示す。図19において、高圧利用に特に有用であり、一方向弁プラグとして機能し得る可動プラグ(19−0)の別の設計が示されており、この可動プラグは、逆止弁アダプタとしても機能する(すなわち、逆止弁を可動プラグ(19−0)に挿入することができる)。プラグは、Delrin(登録商標)(Delrin(登録商標)は、アセタール樹脂を表す、E.I.Du Pont de Nemours and Company(デラウェア州ウィルミントン)の登録商標である)を含むがこれに限定されない種々の材料から製造されることができ、当該プラグは、射出成形または機械加工によって作製され得る。液体試料と接触しているプラグのエリアは湾曲(19−1)しており(プラグは、液体を収容する容器内に挿入される際、図19に示す配向から反転し得ることに留意されたい)、この湾曲は、可能な限り多くの空気が容器から押し出されることを確実にする。湾入(19−3)は、容器の壁と共に可動シールを形成するためのOリングの設置を可能にする。このプラグはその内部ルーメン(19−4)に逆止弁を受けるように適合されており、当該内部ルーメンは、逆止弁をアダプタに手動で挿入することによって容易に設置され得る。弁プラグ/逆止弁アダプタは、好ましくは、ボールスプリング逆止弁を利用する。図20は、そのような逆止弁(20−1)を示し、当該弁は市販されている(The Lee Co、PN#CCPX0003349SA(コネチカット州ウェストブルック))。図20の矢印は、逆止弁において許容される液体流れの方向を示す。液体は逆止弁のルーメン(20−2)を通過し、弁スプリング(20−4)を圧縮することによって弁のボール(20−3)を下方へ押す。流体が流れなくなると、スプリング(20−4)は弁を密閉するためにボール(20−3)を押し戻す。図20の逆止弁は、図19の逆止弁アダプタコンポーネントに挿入され、図20Aは、逆止弁(20−1)が設置された逆止弁アダプタ(19−0)を示す。逆止弁を収納する逆止弁アダプタは、容器内に挿入されて、図21のような可変充填容積容器を形成する。容器(21−1)は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールまでの加圧に耐えることができる可撓性材料であって、任意で、酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料でできている。可変充填容積デバイスの容器(21−1)は、Styrolux(登録商標)684D等の材料を使用して、1個取り金型(PTG Global Inc.(カリフォルニア州オレンジカウンティ)から市販されているもの等)内で射出形成され得る。構成の材料はStyrolux(登録商標)に限定されるものではなく、酸素透過性を調節するためにさらに調整され得る。容器は、液体試料(21−2)を収納する。一実施形態において、可変充填容積デバイスは、最大1.2mlの液体容積を収容することができ、150〜1200μLの容積範囲で使用され得る。逆止弁(21−4)を有するアダプタ(21−3)が容器(21−1)の上端に挿入され、逆止弁は、容器内の空気および流体が溢れて容器から出ることはできるが、流体が流れ落ちて容器に入らないよう封鎖されるように配向される。アダプタが容器内へ押し下げられると、空気が逆止弁から押し出され、アダプタの凹面底部は、液体試料が容器から押し出され始める前に、可能な限り多くの空気が押し出されることを確実にする。図示するような可変充填容積デバイスには、続いて高圧が与えられ得る。
【0060】
デバイス実施形態:溶液交換(溶液混合)デバイス
別の実施形態において、高圧デバイスは複数のコンパートメントを備え、当該コンパートメントの内容物は別々に保たれてもよいし、混合されてもよい。そのようなデバイスは、溶液交換または溶液混合デバイスとして指定される。高圧下で液体試料を処理する場合、容器の内容物は、液体試料の化学的溶液条件を変更するために混合され得る。変化し得る化学的溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、カオトロピック濃度、アルギニンの濃度、界面活性剤の濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、液体試料中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または溶液に追加するためのさらなる反応物質または試薬のうち任意の1つ以上を含むがこれらに限定されない。別の実施形態において、化学的溶液条件は、さらなる試薬または反応物質を液体試料に追加することによって変化する。そのような試薬または反応物質は、酵素阻害薬、薬物、(約1000ダルトンを下回る分子量の)有機小分子、またはタンパク質誘導体化試薬を含み得る。
【0061】
容器内容器の実施形態:コンパートメントの内容物が別々に保たれてもよいし、混合されてもよい複数のコンパートメントを備える、そのような一実施形態において、高圧デバイスは、1つ以上の二次コンパートメントを包囲する一次コンパートメントを備え、一次コンパートメントを開けることなく1つ以上の二次コンパートメントを開けることができ、それにより、1つ以上の二次コンパートメントの内容物が解放されて一次コンパートメントの内容物と接触する。この実施形態の一例を図8Aおよび図8Bに示す。図6または図21の可変充填容積容器等の可変充填容積容器が一次コンパートメントとして使用され、一方、1つ以上の二次容器(8−1)が可変充填容積容器の内側(6−5)に置かれる。(可変充填容積容器は単純に例として使用されるものであり、一定充填容積容器等、本発明のその他のデバイスのいずれを一次コンパートメントとして使用してもよいことに留意すべきである。)二次容器の一端は密閉される。二次容器の反対端に磁気ディスク(8−3)が置かれ、当該磁気ディスクは、二次容器の一方の壁または側面を通過し、ディスクの中心を通って二次容器の対抗壁または側面に入るように構築された心棒を有することになる。ディスクは、二次容器の内側に可能な限り正確に収まるよう、許容誤差を有する設計にすべきである。ディスクは、心棒上を自在に回転するように設計されており、従来のバタフライ弁と類似した方式で、二次容器を効果的に開閉する。ディスクの後部の許容誤差は可能な限り厳格にして磁気ディスクの自在回転を可能にするために、面取りまたは斜縁が使用される。この設計は、ディスクが閉鎖位置にある場合に有効なシールを提供しながら、磁気ディスクを自在に回転させる。この設計を使用する場合、磁気ディスクをその閉鎖位置に維持するのを重力で補助するために、二次容器が垂直位置に来るような位置に一次容器を維持することが好ましい。一次コンパートメント(二次コンパートメントを収納するもの)が中に置かれた高圧管の外側の周囲に垂直および水平に置かれた電気コイルによって、スイッチを作動させる。磁気ディスクを閉鎖位置または密閉位置に維持する磁場を生成するために、水平コイルは圧力管内の磁気ディスクに対して実質的に平行である。図8Aにこれを示す。圧力管は一般にステンレス鋼でできているため、コイルは、圧力管の内側へ貫通する十分に強い磁場の生成を可能にするために、適切な数のループ、ゲージ厚、および電流を有する設計となっている。あるいは、圧力管は、鋼またはその他そのような強磁性体と同程度に磁場を減衰させない材料でできていてもよい。磁気ディスクを制御するための、電気コイルの別の配列として、試料棚の周囲に垂直および水平にコイルを置くことを含む。この設計において、磁場は、圧力管の鋼壁を貫通しなくてもよいが、電流を運ぶワイヤを圧力管の内側に通さなくてはならないであろう。これは、鋼ではなく絶縁セラミックスで従来の圧力管のシーリングプラグの基盤を作製することによって実現され得る。
【0062】
磁気ディスクを閉鎖位置にあるように保つ場合、水平場をオンにし、水平場をオフにして、磁気ディスクを水平位置に維持し、二次容器の溶液内容物を一次容器のものから密閉する。溶液交換を可能にするために、水平および垂直コイル内の電流は、適切な方式で操作され(例えば、水平コイル内の電流をオフにし、垂直コイル内の電流をオンにする)、図8Bに示すようにディスクを開き、(二次容器の内部空間(8−2)に収納された)二次容器の内容物を、(一次容器の内部空間(6−5)に収納された)一次容器の内容物に接触させる。ディスクを用いて混合作用を生成することができ、水平および垂直コイル内の電流は、交流によって交互に入れ替えられて、回転電磁場を生成し、磁気ディスクを裏返す。これにより、二次容器の内容物が一次容器に開放され、一方で、ディスクの動きが対流および溶液交換を可能にする。変形形態において、二次容器のキャップは、高圧室への適切に密閉された開口部を通って高圧室に入り、適切なシールを通って一次容器も通過する駆動軸によって制御され得る。
【0063】
フローループの実施形態:コンパートメントの内容物が別々に保たれてもよいし、混合されてもよい複数のコンパートメントを備える、そのような別の実施形態において、高圧デバイスは、流路によって接続された少なくとも2つのコンパートメントを備え、当該コンパートメントと流路は、少なくとも1つのポンプを有する閉環ループを形成する。この実施形態の一例を図9に示す。液体試料を「解離」室(9−1)内に入れ、一方、第2の溶液を「リフォールディング」室(9−2)内に入れる。必要に応じて、さらなる解離室、リフォールディング室、および流路を追加してもよい。続いて、デバイスを圧力室(図示せず)内に置き、加圧する。液体試料を第2の溶液と混合することが望ましい場合、ピストンポンプ(9−5)をオンにし、閉環ループ(9−3)を通って液体を循環させる。ピストン(9−7)は、磁場によるポンプ速度の制御を可能にする、磁化材料でできていてもよい。ピストンポンプを制御するために、室およびフローループの他に、圧力室の内部にマイクロプロセッサ制御の電池式コイルを置いてもよい。(マイクロプロセッサ(9−8)と電池(9−9)は、マイクロプロセッサ自体への圧力移動を低減させるために、好ましくはエポキシブロック(9−4)内に埋め込まれる。)あるいは、一次容器/二次容器デバイス内における二次コンパートメント金属ディスクの制御用の金属コイルの配列を使用して、ピストンを制御することができる。さらに別の変形形態において、デバイスは、高圧室への適切に密閉された開口部を通って高圧室に入る駆動軸によって制御され得る。1つ以上の逆止弁(9−6)が一方向の流れを確実にする。図の理解を容易にするために、容器を「解離室」および「リフォールディング室」と呼ぶが、いずれかの、または両方の室内において、その他の化学および生化学過程が行われ得ることが十分に理解されるであろう。
【0064】
予混合容器/受入(後混合)容器の実施形態:コンパートメントの内容物が別々に保たれてもよいし、混合されてもよい複数のコンパートメントを備える、そのような別の実施形態において、高圧デバイスは、予混合容器に指定された液体試料を収容する少なくとも2つの容器を備えるシステムを備える。液体試料は通常、塩濃度、pH等、1つ以上の条件または組成が異なっている。(必要に応じて、液体試料は同じであってもよい。)システムは、受入容器または後混合容器に指定された少なくとも1つのさらなる容器も備え、当該受入(後混合)容器は、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよい。そのようなシステム(100)を図13に示し、詳細な横断面を図14に示す。図14において、プラグ(112)によって密閉された圧力室(102)は、2つの予混合容器(120)および(122)を支持し、これらの容器は別々の液体試料を収納する。予混合容器は、図14においてほぼ等しいサイズのものとして示されているが、容器のサイズは互いに相対的に可変であってよいため、例えば、1つの予混合容器は、その他の予混合容器の2倍の容積を有し得る。また、簡単にするために2つの予混合容器しか示していないが、必要に応じてより多くの予混合容器を使用してもよい。予混合容器は、可動ピストン(128)と、ミキサー(126)に至る液体導管(124)とを有する。ミキサーは、ピストン(132)を収納する受入(後混合)容器(130)に至り、図14において、受入容器の上端に密着するように示されている。弁(104)、圧力発生器(108)、および圧力線(110)は、圧力室(102)の内部(103)で連通しており、圧力室(102)の内部を、例えば最大2,000〜2,500バールまで加圧することができる。弁(106)、圧力発生器(108)、および水圧線(111)は、ピストン(132)の下に配置された液体と連通している。図15は、圧力室(102)をさらに詳細に示す。水圧出口(134)は、受入容器(130)から液体を除去し、ピストン(132)をシール(131)から引き離させる、すなわち、ピストン(132)はミキサー(126)からの注入口から抜き出される。続いて、これによりミキサー(126)を介して予混合容器(120)および(122)内の液体を引き出し、当該液体は受入容器(130)への途中で混合される。液体が容器(120)および(122)を出るとピストン(128)は引き下ろされ、予混合容器(120)および(122)が空になると、ピストン(128)はシール(125)に寄り掛かる。別の実施形態(図示せず)において、予混合容器(120)および(122)からの流体排除を容易にするために、ピストン(128)の外部側面に水圧を印加することができる。図16は、予混合容器(120)および(122)内の液体試料が受入容器(130)へ移動された後の装置を示す。予混合容器(120)および(122)からの流体排除後、ピストン(128)はシール(125)に密着する。受入容器(130)内のピストン(132)は、受入容器に移動されている液体を貯溜するために、シール(131)から押し退けられている。図17は、予混合容器(120)をさらに詳細に示す。注入口(121)を介して試料が予混合容器(120)へ導入され、試料の導入後、プラグまたは逆止弁を注入口(121)に挿入し、予混合容器を密閉することができる。ピストン(128)は、環状湾入(129A)を有し、ここで、ピストンと容器の壁との間にシールを形成するために、Oリング(129B)が位置している。図18は、受入容器(130)をさらに詳細に示す。液体は、シール(131)内の開口部(136)を通って受入容器に入り(逆流を防止するために、開口部(136)内に任意で逆止弁(図示せず)を配置してもよい)、Oリング(135)がシールを強化する。開口部(134)を介して負の水圧が印加され、これがピストン(132)を下方に引き、続いて液体を予混合容器(図18には示さず)から受入容器(130)へ引き込むことになる。ピストン(132)は、ピストン周囲での流体移動を防止するために、Oリング(135)を有する。
【0065】
圧力室(102)は、液体試料に対して2000〜2500バール(250バール〜10キロバール、または1キロバール〜10キロバール、または1キロバール〜5キロバール等、これより高い、または低い値も用いられ得る)を生成するように加圧され得る。したがって、予混合容器、受入容器、および結果として液体試料自体は、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る。したがって、デバイスは、2つ以上の溶液を、第1の期間(例えば、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、約1時間から約6時間)高圧下で別々に処理またはインキュベートすることができる。続いて、溶液を混合することができ、混合された溶液を第2の期間(例えば、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間)インキュベートすることができる。両方のインキュベーション期間が完了した後、圧力室は減圧され、受入容器から溶液が除去されて、当該容器を種々の特性(タンパク質の適切なリフォールディング等)について分析および/または所望の目的に使用することができる。
【0066】
使用することが可能な機器の例として、高圧発生器(PN#37−5.75−60、High Pressure Equipment Co.(ペンシルベニア州エリー)(定格60,000psiのシリンジポンプの形で))、高圧管(PN#60−9H4−304、High Pressure Equipment Co.)、高圧弁(PN#60−11HF4、High Pressure Equipment Co.)、高圧グランド(PN#60−2HM4)およびカラー(PN#60−2H4、High Pressure Equipment Co.)を含む。予混合容器は、石英Suprasil(スプラシル)シリンダ(Wilmad Glass社(ニュージャージー州ブエナ))から製造されることができ、Oリング(McMaster−Carr社(オハイオ州オーロラ)PN9396K16、2−011、シリコンゴム製)を装備する、製造されたステンレス鋼ピストン(High Precision Devices社(コロラド州ボールダー))で、当該石英シリンダをキャップすることができる。一次室の出口は、標準的なHPLCクロマトグラフィ用フィッティング(PN#F−300−01、F−113、F−126x、1576、Upchurch社(ワシントン州オークハーバー))の使用によって静的ミキサーと接続される。図中に示すような混合デバイスは任意であり、単純拡散よりも高い混合率が望ましい場合、または完全な混合が望ましい場合に、そのようなミキサーが用いられ得る。HPLCアプリケーションにおいて使用されるもの等の静的ミキサーを使用することができ、これらは多数の供給業者から入手することができる(例えば、Analytical Scientific Instruments社(カリフォルニア州エルソブランテ)静的ミキサーPN#40200000.5)。静的ミキサーの出口は、標準的なHPLCクロマトグラフィ用フィッティング(例えば、上述したようなUpchurch社製フィッティング)の使用によって二次リフォールディング室に接続される。
【0067】
溶液条件の段階的調整:予混合容器/受入(後混合)容器の実施形態において、1つのステップで溶液全体を混合する必要はない、すなわち、予混合容器内の溶液の一部を受入容器に引き込み、続いて、受入容器内と同様に予混合容器内の残留溶液の圧力下でインキュベーションを継続してもよいことに留意すべきである。このようにして、溶液条件の段階的調整を実装することができる。さらなる実施形態において、予混合容器は、異なる時点における異なる予混合溶液の追加のために、別々に作動される弁を有してよい。したがって、例えば、A、B、C、およびBに指定された予混合容器では、予混合容器A内のタンパク溶液等の液体試料をある期間にわたってインキュベートし、続いて(AおよびBに対しては弁を開放し、CおよびDに対しては弁を閉鎖して)予混合容器AおよびBの内容物を受入容器に引き込んで、容器Aからの液体試料の元来の溶液条件を変更することができる。さらなるインキュベーション期間後、予混合容器Cへの弁を開放し、容器Cの内容物を受入容器に引き込むことができる。さらに一層のインキュベーション期間後、予混合容器Dへの弁を開放し、容器Dの内容物を受入容器に引き込み、その後、必要に応じてまたさらなる期間のインキュベーションを行うことができる。液体試料の溶液条件を段階的に調整するために、所望の数の予混合容器を用いてこれを実装することができる。
【0068】
フローループの実施形態において、溶液条件の段階的調整は、例えば容器A、B、C、およびDと指定されるいくつかの容器を有することによって実装され得る。溶液は、ある期間、高圧下でインキュベートされ得る。続いて、容器AおよびBへの弁を開放し、それらの容器間の流れ(および、容器Bの内容物との内容物混合時における容器Aの溶液条件の変更)を可能にし、一方、容器CおよびDへの弁は、インキュベーション期間中、流れが容器CおよびDをバイパスする位置に保つことができる。続いて、容器Cの内容物をフローループ内に入れるように弁を設定することができ(例えば、容器Cの周囲のバイパスシャントを遮断し、容器Cをフローループ内に置くために弁を開放することによって)、容器Cの内容物をフローループ内で容器AおよびBの内容物と混合(および、容器Cの内容物との内容物混合時におけるフローループ内にある溶液の溶液条件の変更)し、一方、別のインキュベーション期間の間、容器Dをバイパスするために流れが継続する。最後に、容器Dの内容物との内容物の混合時にフローループ内にある溶液の溶液条件のさらなる調整、およびさらに一層のインキュベーション期間のために、容器Dの周囲のバイパスシャントを遮断しながら、容器Dをフローループ内に置くために弁を開放することができる。液体試料の溶液条件を段階的に調整するために、適切な弁およびバイパスシャントを用いて、フローループ内の所望の数の容器によってこれを実装することができる。
【0069】
これらの実施形態は、種々の条件下で、タンパク質のリフォールディングに使用され得る。Lin、米国特許第6,583,268号およびLi,M.およびZ.Su(2002年)、Chromatographia 56(1−2):33〜38では、カオトロピック物質による高pHでのタンパク質リフォールディング、それに続くpHの段階的減少、タンパク溶液の希釈、ならびに限外ろ過およびゲルクロマトグラフィを提案している。上述したような高圧デバイスを使用して、アルカリ性pH(10.0付近)の非変性カオトロピック溶液中で圧力調節リフォールティング(250〜5000バールの圧力)を行うことができ、続いて、溶液のpHを、pH8.0の値が得られるまで段階的に漸減することができる。米国特許第6,583,268号においては、10から8にpHを低下させるには10日間となる、24時間毎に0.2ユニットの速度が提案されており、この速度を一般条件として採用してもよいし、タンパク質毎に最適条件を決定してもよい。高水圧を使用することにより、凝集解離を促進するために高濃度のカオトロピック物質を使用する必要性を低減または除去することができる。圧力およびカオトロピック/pH調節リフォールディング方法を組み合わせることにより、より高いリフォールディング収率の達成が予測される。
【0070】
一実施形態において、本発明は、高圧下で溶液条件を変更する方法であって、少なくとも1つの第1の容器内の溶液中に少なくとも1つの組成物を提供するステップと、少なくとも1つのさらなる容器内の溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤を提供するステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触していないステップと、容器を高圧下に置くステップと、少なくとも1つのさらなる容器の内容物を少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させるステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は長期間にわたって少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させられるステップと、を含む方法を包含する。一実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は連続方式で少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって連続的に変化する。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、連続方式で少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、少なくとも1つの第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって段階的に変化する。溶液条件におけるこの段階的変化の一実施形態において、pHが変化し、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10である。溶液条件におけるこの段階的変化の別の実施形態において、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10であり、約7〜約8.9、または約7.5〜約8.5、または約8のpHまで低下する。段階的方法の別の実施形態において、pHは、約24時間毎に約0.01〜約2pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約1pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約0.5pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約0.4pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約0.3pHユニット、または約24時間毎に約0.2pHユニット低下する。溶液条件調整の前、間、および後のインキュベーション期間は、最適なリフォールディング収率のために必要に応じて変動させることができ、例えば、高圧下でのインキュベーションは、溶液条件の調整前に、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間、実行され得る。溶液条件の漸次連続変化の場合、当該調整は、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間、実行され得る。溶液条件の段階的調整の場合、調整間の間隔は、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間であってもよい。最後に、溶液条件が所望の最終条件に調整された後の高圧下におけるインキュベーションは、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間、実行され得る。
【0071】
上述の方法において、少なくとも1つの第1の容器の内容物は、溶液交換の容器内容器の実施形態のように、溶液条件が変化した際に第1の容器内に残留している場合がある。あるいは、少なくとも1つの第1の容器の内容物のすべてまたは一部は、フローループまたは予混合容器/受入(後混合)容器の実施形態のように、溶液条件が変化した際には第1の容器内にない場合があり、この場合、第1の容器の内容物の変更は、第1の容器とは部分的にまたは全体的に離れた位置で発生している。そのような場合、少なくとも1つの第1の容器の内容物の溶液条件を変化させることに言及する場合は、少なくとも1つの第1の容器内に元来あった内容物の溶液条件を変化させることを指すことを理解されたい(すなわち、「少なくとも1つの第1の容器の内容物」は、「少なくとも1つの第1の容器の、溶液交換前の元来の内容物」として読むように理解される)。
【0072】
試料コンパートメントへの試料の導入
デバイスの本体に適切な材料が選定されると、試料を試料コンパートメントに導入しなくてはならない。デバイスは、液体試料を受けるように適合されており、したがって、液体移動のための種々の標準的な方法が用いられ得る。ハンドヘルドまたはロボットピペット、シリンジ、ポンプおよび当該技術分野において既知であるその他の液体移動器具を用いてよい。加圧前にデバイスのいずれかから可能な限り多くの残気を排除するように注意を払うべきであり、それによって、材料破壊の防止および空気中に含有される酸素がシステム内に溶解することを防止するのを支援する。圧力が印加された際に、排除することができない残気が液体の酸素含有量を変更することを防止するために、デバイスを、窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気で満たしてもよい。
【0073】
いくつかのさらなる実施形態において、液体試料をコンパートメントに充填する前に、当該試料によって1つ以上のガスが散布される。そのようなガスは、ヘリウム、窒素、ネオン、アルゴン、またはクリプトン等の比較的非反応性のガスを含むがこれらに限定されず、溶解した酸素を可能な限り追放することが望ましい。通常は酸素の厳密な排除が望ましいが、溶液中の酸素含有量が通常よりも高いことが望ましい状況においては、空気または酸素自体が試料によって散布される。よりさらなる実施形態において、試料からガスを抜くために、真空が試料に適用される。よりさらなる実施形態において、溶解した酸素を可能な限り除去するために、非反応性ガスの散布に続いて真空処理を行ってもよく、必要に応じて散布ポンプサイクルを繰り返してもよい。
【0074】
試料コンパートメントの密閉および試料導入
本発明のデバイスのいくつかは、密閉目的のために一方向弁プラグを使用する、例えば可変充填容積デバイス等の独自のシールを提供する。96ウェルプレート等の、独自のシールを有さないデバイスの場合、シリコーン、ゴム、またはその他の材料から作製されたシールで試料コンパートメントを密閉することができる。一実施形態において、実験中に液体試料がシールと接触する場合があるため、シール材は試料ウェルの内容物に対して不活性である。高圧下で酸素に対し実質的に不透過性でないゴム等のシールが使用される場合、酸素の質量移動を低減または防止するために、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性の第2のシールを第1のシールの上に塗布してよい。96ウェルプレート等の可変充填容積デバイスに加えて、一方向弁プラグを種々のその他のデバイスにおいて使用してよい(コンパートメントを密閉するために、最大96個の一方向弁プラグが使用され得る)。
【0075】
試料コンパートメントは、液体試料の導入前または後に密閉され得る。液体試料の導入後に試料コンパートメントが密閉される場合、シールを貫通する必要性が回避される。しかしながら、液体試料の導入前に試料コンパートメントが密閉される場合、シールは試料の導入を可能にするものでなくてはならない。ゴムまたはシリコーン等の材料でできたシールは、液体試料を導入するために針で貫くことができ、コンパートメントから空気を通気するために、第2の針を使用してもよい。第2の通気針は、可能な限り多くの空気を引き抜くために、シールを貫通するのに必要なだけ挿入され、室へ最小限延在する。空気が完全に排出され、当該室から液体が排出され始めると、室の充填が完了する。
【0076】
ゴムおよびいくつかのシリコーンは、高圧下で酸素に対し比較的透過性であるため、高圧下における酸素の質量移動を防止するために、第2のシーリング層が塗布され得る。Mylar(登録商標)または高圧下で実質的に酸素不透過性であるその他の適切な材料の層を、第1のシールの上に敷設してよい。
【0077】
その他の用途
薬剤の状況で、および特にタンパク質のリフォールディングに関して高圧デバイスを上述したが、これらのデバイスの用途は薬剤またはタンパク質リフォールディングに限定されるものではないことに留意すべきである。当該デバイスは、試料、特に液体試料の加圧処理を必要とするあらゆる用途において使用され得る。例えば、Kunugiら、Langmuir、15:4056(1999年)は、種々の圧力下における水溶液中の熱応答性ポリマーの温度および圧力応答性挙動について研究したものである。圧力は、化学反応に影響を及ぼすことが既知であり、圧力は、反応速度論(負の活性化体積が高圧によって加速される反応、Vaneldikら、Chemical Reviews 89:549(1989年)およびDrljacaら、Chemical Reviews 98:2167(1998年)を参照)および反応熱力学(高圧が低システム容積に有利に働く遷移、J.M.Smithら、Introduction to Chemical Engineering Thermodynamics、ニューヨーク:McGraw−Hill社、2001年を参照)の両方に影響を及ぼし得る。
【0078】
本発明を限定することを意図しない以下の例示的な例により、本発明がさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0079】
実施例1
クマシーブルー染料を使用したモデル溶液交換(溶液混合)実験
図13〜18に示す溶液混合デバイスを用いて、加圧処理中の溶液交換を研究した。既知の濃度のクマシーブルー染料の希釈物を、1つの予混合容器に入れた(0.015mg/ml染料のものを10ml)。別の予混合試料容器に、1mlの純水を入れた。圧力を徐々に2000バールまで増大させた。この圧力にして10分後、室の側面注入口と接続する高圧弁を閉鎖し、高圧シリンジを引き抜いてピストン流れを調節した(予混合容器および溶液受入容器のピストン位置に対するシリンジポンプのピストン位置を同等とみなすために、較正を事前に行った)。試料を収集し、570nmにおけるUV/VIS吸光度を計測して、交換後の染料の最終濃度を測定した(図22)。このデータを、クマシーブルーの標準と比較した。図13〜18に記載の溶液交換デバイスを動作させた後に発生した混合の程度を測定するために、3回の逐次実験を行った。0.0092mg/ml染料の染料濃度に対応して、0.55±0.5の吸光度値が計測された。染料溶液と純水の1:1希釈物は、混合後、染料濃度0.0075mg/ml、570nmでの吸光度0.43となるはずである(図22)。この研究は、0.75容積の脱イオン水と混合したクマシーブルー染料を含有する1.24容積の溶液により、デバイスを3回動作させた後に混合が発生したことを実証するものである。このデータは、溶液交換が加圧処理中に発生したことを実証している。
【0080】
実施例2
加圧処理中の溶液交換と一体となったニワトリ卵白リゾチームの圧力リフォールディング
この実施例は、加圧処理中の溶液交換が、リフォールディングおよびタンパク質凝集体からの天然タンパク質の回収を変更することを実証するものである。先行研究では、St.Johnらが、タンパク質凝集体の圧力誘起リフォールディングは、加圧処理中に非変性レベルのGdnHClが存在する場合に最適化され得ることを実証した。St.Johnらは、リゾチームリフォールディング回収が、2000バールで5日間インキュベーション後、0.2M GdnHClで約35%から2M GdnHClで約80%へ直線的に増大することを示した(St John、R.J.、J.F.Carpenterら(2002年)、Biotechnology Progress18(3):565〜571)。
【0081】
図23は、2000バールまで加圧する前(「非交換」試料)および加圧中(「高圧交換」)の両方にGdnHCl濃度が操作された、現在のリゾチームリフォールディング研究からの結果を示す。(大気制御も実行し、リゾチーム凝集体をリフォールディングするためには加圧処理が必要であることを実証した。)リゾチームは、高圧下、1M GdnHCl(溶液交換なし)でリフォールディングされ、約53%のリフォールディング収率をもたらした。リゾチームは、高圧下で溶液交換なしの0.5M GdnHClでもリフォールディングされ、約27%のリフォールディング収率をもたらした。加圧処理中、初期1M GdnHCl濃度、続いて溶液交換し、0.5M GdnHCl濃度まで減少してリゾチームをリフォールディングした場合、リフォールディング収率は約47%という結果になった。したがって、後半2つの実験はいずれも0.5M GdnHClの最終濃度を有し、交換されなかった溶液は交換した溶液よりもはるかに低いリフォールディング収率を有していた。1.0M GdnHClでリフォールディングした、交換されなかったリゾチーム溶液は、0.5M GdnHClで終了したいずれの溶液よりも高いリフォールディング収率を有していた。
【0082】
高圧は疎水性および静電接触を不安定化させるが、水素結合に対する影響はほとんどない。一方、GdnHClは、水素結合を不安定化させる。したがって、非変性レベルのGdnHClの追加は、リゾチームのリフォールディングを容易にするのを支援する。高圧溶液交換中、初期のより高いGdnHCl濃度(1M)は、リゾチーム凝集体を、凝集解離のためにより好ましい環境に導入する。続いて、加圧下での溶液交換が完了して、最終GdnHCl濃度を0.5Mにする。上述したように、0.5M GdnHClの「非交換」試料および溶液交換した試料の両方の最終溶液条件が同じであっても、最初により高い1Mのカオトロピック濃度から開始する能力により、溶液交換した試料中でのリフォールディングが容易になったことが分かる。1M GdnHCl「非交換」リフォールディング収率は、1Mグアニジンの存在下、2000バールにおいて、リゾチームが天然コンフォメーションで残留していることを強調している(Randolph、T.W.、M.Seefeldtら(2002年)、Biochimica Et Biophysica Acta−Protein Structure and Molecular Enzymology 1595(1−2):224〜234)。よって、リゾチームのリフォールディング収率は、高濃度のカオトロピック物質の存在によって低下するものではない。加圧処理中におけるより低いカオトロピック濃度への溶液交換は、グアニジンHClの存在により敏感なタンパク質の収率増大に、より有効となり得る。これらの結果は、高圧処理中における溶液交換の技術を使用して、タンパク質凝集体のリフォールディング収率の増大に成功する能力を示す。
【0083】
使用した実験条件は以下の通りであった。凝集したニワトリ卵白リゾチームの水性懸濁液を、pH8.0の、50mM Tris−HCl、1M GdnHCl、5mM GSSG、2mM DTTを有する1つの予混合容器に入れた。第2の予混合容器を、pH8.0の、タンパク質を含有しない、50mM tris−HCl、0M GdnHCl、5mM GSSG、2mM DTTで満たした。試料を10分間加圧し、最終圧力を2000バールとした。タンパク質を溶解増強緩衝液中に6時間保ち、この時点で、図14に示す溶液交換デバイスを使用して溶液交換を開始した。最終混合溶液(このとき受入容器内にあるもの)は、減圧前さらに6時間、2000バールのままであった。50mM Tris−HCl、0.5または1M GdnHCl、5mM GSSG、2mM DTTを含有するpH8.0の溶液中で、2000および1バールの圧力下、同一のリゾチーム凝集体をリフォールディングした対照をテストした。受入容器から試料を回収し、Jollesによって記述されたもの(Jolles,P.(1962年)「Lysozymes from Rabbit Spleen and Dog Spleen」Methods of Enzymology 5:137)と同様の方法により、リゾチーム触媒作用を計測した。
【0084】
引用を特定することにより本願において言及したすべての出版物、特許、特許出願、および公開特許出願の開示は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【0085】
理解を明瞭にする目的で、図解および実施例によって前述の発明をある程度詳細に説明したが、当業者には、若干の小改正および修正が実践されるであろうことが明らかである。したがって、本明細書および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である、マルチウェルプレート設計の上面図を示す。
【図2A】図2Aは、マルチウェル設計の、考えられる一実施形態の側面図を示す。当該ウェルの上端は、すべての空気の通気を確実にするため、部分的に「ドーム」内に覆われている。
【図2B】図2Bは、図2A中のウェルを覆う「ドーム」の側面図を示す。
【図3】図3は、図2Aおよび図2Bの「ドーム」注入口を密閉するために使用され得るシーリングマットおよびクランプアセンブリを有する96ウェルプレートの実施形態の例を示す。
【図4】図4は、本発明のマルチウェル実施形態のウェルを密閉するためにヒートシール障壁が使用される、本発明の別の実施形態を示す。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態である、一定充填容積容器を示す。
【図6】図6は、本発明の別の実施形態である、可変充填容積容器を示す。
【図7A】図7Aは、可変充填容積容器において使用するための一方向弁アセンブリの断面図を示す。図7Bは、可変充填容積容器内に設置された際の一方向弁アセンブリを示す。
【図8】図8は、高圧下で溶液を混合するのに有用な本発明の一実施形態を示す。図8Aにおいて、二次容器は閉鎖位置に示されている。図8Bにおいて、二次容器は開放位置に示されている。
【図9】図9は、高圧下で溶液を混合するのに有用な本発明の別の実施形態を示す。
【図10】図10は、高圧下で実質的に酸素不透過性でない材料を通る酸素移動を実証する実験の結果を示す。保存および加圧条件が酸素移動およびGSH(還元型グルタチオン)濃度に及ぼす影響が示されており、溶液条件は、pH8.0、4mM GSH、2mM GSSG(酸化型グルタチオン)、500ml溶液、25℃、17時間であった。
【図11】図11は、種々のポリマー(LDPE(Low Density PolyEthylene;低密度ポリエチレン、最上部の曲線)、HDPE(High density polyethylene;高密度ポリエチレン、上から2番目の曲線)、PS(PolyStyrene;ポリスチレン、上から3番目および下から2番目の曲線)、PET(PolyEthylene−Terephthalate;ポリエチレンテレフタレート、最下部の曲線))から作られたシリンジの壁を通る酸素の移動を計算したものを、周辺の酸素濃度の関数として示す。シリンジ壁について、移動に24時間、厚さ1/16インチ、長さ1.5インチ、および外径0.25インチと仮定し、ポリマー型の関数として酸素移動を計算している。
【図12】図12は、気泡を含有する試料内に充填された酸素の量を、試料中の気泡サイズの関数として示し、当該気泡サイズは、試料の容量パーセントとして計算される。曲線は、PV=nRTと仮定したものであり、この計算に適した近似である。
【図13】図13は、溶液交換デバイスの一実施形態の全体図を示す。
【図14】図14は、図13の溶液交換デバイスの横断面を示す。
【図15】図15は、溶液の混合前の、図13および図14の溶液交換デバイスの圧力室部分を示す。
【図16】図16は、溶液の混合後の、図13および図14の溶液交換デバイスの圧力室部分を示す。
【図17】図17は、図13および図14の溶液交換デバイスの、予混合容器の1つを示す。
【図18】図18は、図13および図14の溶液交換デバイスの、受入容器を示す。
【図19】図19は、本発明の可変充填容積容器の実施形態の1つにおいて有用な逆止弁アダプタを示す。
【図20】図20は、図19に示す逆止弁アダプタ等、本発明の種々の実施形態において有用な逆止弁を示す。矢印は、許容される流体流れの方向を示す。
【図20A】図20Aは、図19の逆止弁アダプタ内に設置された図20の逆止弁を示す。
【図21】図21は、液体を中に収納するために、逆止弁アダプタ(図20Aに示すように、逆止弁が設置されたもの)がデバイスに挿入された、本発明の可変充填容積の実施形態を示す。
【図22】図22は、加圧下でクマシーブルー溶液交換を実行する実験を示す。開正方形は実際の試料を表す(実線上にある右上の正方形は初期条件に対応し、エラーバーを有する右下の正方形は溶液交換後の条件に対応する)。実線は、染料の既知の濃度からの較正線を表す。
【図23】図23は、リゾチーム回収率を溶液条件の関数として示す。左から右へ:1M GdnHCl加圧処理凝集体、溶液交換なし;0.5M GdnHCl加圧処理凝集体、溶液交換なし;加圧下で1〜0.5M GdnHClまで溶液交換した凝集体;1M GdnHCl大気圧制御凝集体、溶液交換なし;0.5M GdnHCl大気圧制御凝集体、溶液交換なし;および、大気圧下で1〜0.5M GdnHClまで溶液交換した凝集体がそれぞれ表されている。すべての試料は、pH8.0、25℃で50mM Tris−HCl、5mM GSSG、2mM DTTのリフォールディング緩衝液中に置いた。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/739,094号に基づく優先権の利益を主張するものである。当該出願の全内容は、ここで参照することにより本願に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、容器、マルチウェルプレート、ならびに容器およびマルチウェルプレートに流体をポンプで送り込むためのシステム等、高水圧における動作のために設計されたデバイスに関する。本発明は、高圧下でタンパク質をリフォールディング(再折り畳み)するためのデバイスを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多くのタンパク質は、治療薬として有益である。そのようなタンパク質は、体内で産生される成長ホルモンが不十分である場合の異常身長(低身長)を治療するために使用されるヒト成長ホルモンと、腫瘍性疾患およびウイルス性疾患を治療するために使用されるインターフェロンガンマとを含む。タンパク質製剤は、多くの場合、組み換えDNA技術を使用して産生され、当該技術は、自然発生源から単離できるものよりも多量のタンパク質の産生を可能にすることができ、自然発生源から単離されたタンパク質によって発生することが多い汚染を回避するものである。
【0004】
タンパク質の適切なフォールディング(折り畳み)は、タンパク質の正常機能に不可欠なものである。不適切に折り畳まれたタンパク質は、アルツハイマー病、牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy;BSE、つまり「狂牛」病)およびヒトクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt−Jakob Disease;CJD)、ならびにパーキンソン病を含むいくつかの疾病の病状に寄与すると考えられており、これらの疾病は、適切なタンパク質折り畳みの重要性を例証する役割を果たす。
【0005】
組み換えヒト成長ホルモンおよび組み換えヒトインターフェロンガンマ等、ヒトにおいて治療的価値があるいくつかのタンパク質は、バクテリア、酵母、およびその他の微生物中において発現し得る。そのようなシステム中において、多量のタンパク質が産生され得るが、当該タンパク質は、誤って折り畳まれている場合が多く、しばしば封入体と呼ばれる大塊の中に凝集している。誤って折り畳まれた凝集状態でタンパク質を使用することはできない。したがって、そのようなタンパク質を解離させ適切にリフォールディングする方法が、多くの研究の対象となってきた。
【0006】
タンパク質をリフォールディングする1つの方法は、タンパク質を解離させ、アンフォールド(フォールディングされていない状態)し、適切にリフォールディングするために、タンパク質の溶液に対し高圧を使用するものである。そのような方法は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。それらの開示は、凝集タンパク質または誤って折り畳まれたタンパク質の、ある高圧処理が、生物活性を保有する(すなわち、当該タンパク質が、生物活性のために必要とされるように適切に折り畳まれていた)解離されたタンパク質の回収を高収率でもたらすことを示すものであった。特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【特許文献1】米国特許第6,489,450号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0038333号明細書
【特許文献3】国際公開第02/062827号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国2004/0038333号に示されているように、あるタンパク質の最適なリフォールディング条件を決定するために実験的なスクリーニング手順が必要とされる場合がある。したがって、マルチウェルプレート、使い捨ての単一試料容器、および高圧下で溶液条件を変化させるために高圧下で溶液を混合するためのデバイス等、最適条件を迅速に決定するための方法において使用され得る、適切な機器が必要である。
【0008】
生物学および生化学におけるハイスループットスクリーニングでは、一般に96ウェルプレート(通常、8×12配列のウェルを有する)が使用されている。しかしながら、現在市販されているプレートは、高圧利用(例えば、250バール以上)には適さない。本発明は、高圧下での使用に適したそのような機器を提供する。
【0009】
高圧研究のために現在使用されている単一試料容器は、欠点にも悩まされている。低密度ポリエチレンおよびポリプロピレン等の材料から作られた容器は、高圧下での酸素の大規模な質量移動を可能にする。溶液の酸化還元環境に敏感な反応では、そのような酸素移動は極めて望ましくない。本発明は、必要に応じて、容器の壁を通る酸素の質量移動を低減または解消する機器も提供する。
【0010】
現在使用されている機器のさらに別の欠点は、高圧処理中に溶液条件を調整できないことである。本発明は、容器および溶液が高圧装置の内部にある間の、種々の容器および溶液の操作を可能にすることにより、高圧処理中における溶液条件の変化を可能にする機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の開示
本発明は、高圧下での使用に適した単一試料収容デバイス、多重試料収容デバイス、および溶液交換デバイスを包含する。いくつかの実施形態において、これらのデバイスはポリマーから作製され、これにより、デバイスの比較的低コストでの作製が可能となる。これは、作製に好都合なデバイスの射出成形も可能にする。いくつかの実施形態において、これらのデバイスは、使い易くするために使い捨てであってもよい。溶液交換デバイスは、試料が高圧下に維持されている間における試料の溶液条件の変化を可能にする。任意の実施形態において、デバイスは、実質的に酸素不透過性の材料から作られ得る。
【0012】
一実施形態において、本発明は、液体試料を受けるための少なくとも2つのコンパートメントを備える多重試料収容デバイスであって、高圧が与えられる際、実質的に閉鎖されたシステムとしてコンパートメントを維持するデバイスを包含する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、a)高圧下で完全性を維持する材料から作られた本体と、b)本体内に、液体試料を受けるように適合された複数の試料コンパートメントと、を備える多重試料収容デバイスであって、複数の試料コンパートメント間、または任意の試料コンパートメントとその周辺物との間における液体試料の大幅な移動を許さないデバイスを包含する。
【0014】
前述の多重試料収容デバイスのさらなる実施形態において、複数の試料コンパートメントは、少なくとも2個の試料コンパートメント、少なくとも10個の試料コンパートメント、少なくとも16個の試料コンパートメント、少なくとも25個の試料コンパートメント、少なくとも36個の試料コンパートメント、少なくとも48個の試料コンパートメント、少なくとも72個の試料コンパートメント、または少なくとも96個の試料コンパートメントを備える。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、複数の試料コンパートメントは、少なくとも96個の試料コンパートメントを備える。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、複数の試料コンパートメントは、96個の試料コンパートメントを備える。
【0015】
多重試料収容デバイスの一実施形態において、試料コンパートメントは、当該デバイスの表側に開口部を有し、当該試料コンパートメントの開口部は、試料コンパートメントの開口部を覆うようにシーリングマットをデバイスの上端に置くことによって密閉される。シーリングマットは、定張力クランプによって適所に維持され得る。多重試料収容デバイスの別の実施形態において、試料コンパートメントは、コンパートメントに試料を充填する前に、当該コンパートメントの開口部内にヒートシール障壁を置くことによって密閉される。試料は、針注射により、当該障壁を通って充填され得る。続いて、十分な密閉を確実にするために、接着性ポリマー膜がデバイスおよび障壁の上端に置かれ得る。
【0016】
前述の多重試料収容デバイスのさらなる実施形態において、当該デバイスの本体は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、本体はポリエチレンテレフタレートから形成される。前述の多重試料収容デバイスの別の実施形態において、本体はポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体から形成される。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、液体試料の加圧処理のための容器であって、液体試料を収容するための少なくとも1つのコンパートメントを備え、当該容器は可撓性材料から作製され、当該材料は最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である、容器を包含する。(示されている圧力は、差圧ではなく、容器全体にかかる多次元圧力である。)一実施形態において、容器は、液体試料を収容するためのコンパートメントを1つのみ有する。一実施形態において、容器は、標準圧力下で一定の充填容積を有する。別の実施形態において、容器は、標準圧力下で可変充填容積を有する。
【0018】
別の実施形態において、可変充填容積を有する容器は、第1の端部および第2の端部を有するシリンダを備える。シリンダの第1の端部に可動プラグが挿入され、シリンダの第2の端部に、シリンダの内容物の除去を可能にするために取り外すことができる可撤部が取り付けられる。可撤部はキャップであってもよく、当該キャップは、螺入され、シリンダの第2の端部にある相補的なネジ山と嵌合してもよいし、スナップ式で留めてもよいし、磁気的に取り付けられてもよい。別の実施形態において、シリンダの第2の端部から短く狭い突起が延在して、ネジ、またはキャップを嵌合するその他の方法を有し、キャップは、シリンダの内容物の除去を可能にするために後に除去できるよう、当該突起の上に置かれる。一実施形態において、狭い突起は、Luer−Lok(登録商標)式フィッティング(Luer−Lok(登録商標)は、インターロック接続システムを表すBecton,Dickinson&Co.(ニュージャージー州フランクリンレイクス)の登録商標である)を有してもよい。
【0019】
別の実施形態において、可変充填容積を有する容器は、第1の端部および第2の端部を有するシリンダを備える。シリンダの第1の端部に可動プラグが挿入される。シリンダの第2の端部に、シリンダの内容物の除去を可能にするために取り外すことができるシールドチップが付着される。シールドチップは、シリンダの内容物の除去を可能にするために取り除くことができるシリンダの第2の端部からの短く狭い突起であってもよい。一部の実施形態において、チップは手で取り除くことができ、その他の実施形態において、チップは手で取り除くことはできず、切削工具を使用して取り除かれる。
【0020】
別の実施形態において、可変容積充填容器において使用するための可動プラグは、一方向弁を有する。一方向弁プラグは、容器の外部から容器へ任意の空気、ガス、または液体が当該弁を通って逆流するのを防止しながら、容器内の空気および試料が標準圧力下で流出することを可能にする。一実施形態において、一方向弁は逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はボール逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はボールスプリング逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はフラップ式逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はダックビル逆流防止弁である。別の実施形態において、一方向弁は傘型弁である。別の実施形態において、一方向弁はスイング式逆止弁である。別の実施形態において、一方向弁はリフト式逆止弁である。
【0021】
前述の容器のさらなる実施形態において、容器は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される。前述の容器の別の実施形態において、容器は、ポリエチレンテレフタレートから形成される。前述の容器の別の実施形態において、容器は、ポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体から形成される。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、加圧下における溶液交換(溶液混合)のためのシステムであって、第1の液体試料を収容する第1の容器と、さらなる液体試料を収容する1つ以上のさらなる容器とを備え、第1の液体試料とさらなる液体試料は同じであっても異なっていてもよく、容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、1つ以上のさらなる容器の液体試料は、第1の容器の液体試料と混合されることができ、一方、第1およびさらなる容器ならびにそれらの各液体試料はいずれも、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る、システムを包含する。1つ以上のさらなる容器が複数の容器、すなわち2つ以上のさらなる容器を備える場合、当該2つ以上のさらなる容器の内容物は、その他の2つ以上のさらなる容器とは無関係に(すなわち、異なる時間に)、またはその他の2つ以上のさらなる容器と連動して(すなわち、同時にまたは所定の時系列で)第1の容器の内容物と混合され得る。混合または接触前の高圧、混合または接触中の高圧、および混合または接触後の高圧は、すべて同じ圧力であってもよいし、2つが同じ圧力で1つが異なる圧力であってもよいし、3つの圧力すべてが異なる圧力であってもよい。
【0023】
加圧下における溶液交換(溶液混合)のためのシステムの別の実施形態において、システムは、予混合容器に指定された液体試料(液体試料は同じであっても異なっていてもよい)を収容する少なくとも2つの予混合容器と、受入容器に指定された少なくとも1つのさらなる容器とを備え、当該受入容器は、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよく、当該容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、液体試料を収容する少なくとも2つの予混合容器内の液体試料は、液体試料が互いに接触し得る少なくとも1つの受入容器へ動かされることができ、液体試料を収容する少なくとも2つの予混合容器、少なくとも1つの受入容器、および液体試料自体は、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る。一実施形態において、静的ミキサー(例えば、高速液体クロマトグラフィ(High−Performance Liquid Chromatography;HPLC)溶媒混合に使用されるもの)等の混合デバイスが、液体試料の混合を容易にするために、液体試料を収容する少なくとも2つの予混合容器と少なくとも1つの受入容器との間の流体経路に介在し得る。その他の実施形態において、予混合容器の1つ以上からの流れは、弁によって独立して制御され、その他の選択された予混合容器からの流れを防止しながら、ある予混合容器から内容物が受入容器へ引き込まれることを可能にし、後にこれらの弁は、その他の選択された予混合容器の内容物が受入容器へ流れることを可能にするように設定され得る。
【0024】
溶液交換(溶液混合)のためのシステムの別の実施形態において、本発明は、第1の容器であって、第1の液体試料を収容するためのコンパートメントを備える第1の容器を備え、当該第1の容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製され、また、1つ以上のさらなる容器を備え、当該1つ以上のさらなる容器は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製され、1つ以上のさらなる容器は第1の容器によって完全に包囲され、1つ以上のさらなる容器はさらなる液体試料を収納し、当該液体試料は互いにおよび第1の液体試料と同じであっても異なっていてもよく、1つ以上のさらなる容器は第1の容器内にある間に(その他のさらなる容器とは無関係に、またはさらなる容器と協調して)開けることができ、それによって第1の液体試料とさらなる液体試料を混合することができる。一実施形態において、1つ以上のさらなる容器は、閉鎖位置に維持され得るキャップを備え、第1の容器を開けることなく当該キャップを開けることができ、一方、第1の容器、1つ以上のさらなる容器、およびすべての液体試料は、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る。別の実施形態において、キャップは、第1の容器に収納される液体試料を、1つ以上のさらなる容器の液体試料と混合することもできる。別の実施形態において、キャップは、磁気ディスク等の磁化部分を備える。
【0025】
溶液交換(溶液混合)のためのシステムの別の実施形態において、本発明は、液体試料の加圧処理のための容器システムであって、液体試料を収容するためのコンパートメントを備える第1の容器を備え、当該第1の容器は可撓性材料から作製され、当該材料は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性であり、また、少なくとも1つのさらなる容器も備え、当該少なくとも1つのさらなる容器は可撓性材料から作製され、当該材料は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力(差圧ではなく、システムにかかる多次元圧力)まで、破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性であり、第1の容器と少なくとも1つのさらなる容器は、フローループによって接続される、システムを包含する。フローループは、当該フローループ内での流れを一方向にのみ可能にする逆止弁と、容器システムに高圧が与えられる際に動作することができるポンプとを備える。ポンプは、マイクロプロセッサによって制御され得る。マイクロプロセッサが高圧装置内に含まれる場合、当該マイクロプロセッサは、同じく高圧装置内に含まれる電池によって、または高圧装置の中に通されている電力線によって、電力を供給され得る。あるいは、当該デバイスは、高圧室へ続く適切に密閉された開口部を通って高圧室に入る駆動軸によって制御され得る。フローループは、バイパスシャントによって1つ以上のさらなる容器のうち1つ以上をバイパスすることができ、弁は、その他のさらなる容器とは無関係に、または協調して、バイパスシャントを閉鎖し、1つ以上のさらなる容器をフローループに接続することができる。
【0026】
溶液交換(溶液混合)の実施形態のすべてにおいて、少なくとも1つのさらなる容器内にある液体試料は、第1の容器内にある液体試料と混合されると、第1の容器内にある第1の液体試料の溶液条件を変更することができるため、組み合わせた液体は、第1の液体試料および/または少なくとも1つのさらなる液体試料とは異なる溶液条件である。変化させることができる溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、還元剤濃度および酸化剤濃度の両方、カオトロピック濃度、アルギニン濃度、界面活性剤濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または別の反応物質もしくは試薬の追加を含むがこれらに限定されない。
【0027】
デバイスの前述の実施形態のすべてにおいて、当該デバイスは、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.2mMを超えることを許さない材料を備えてもよい。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.1mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.05mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.025mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、試料内において、材料全体にわたって、酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が約0.01mMを超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約10%を超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約5%を超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約2.5%を超えることを許さない。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が試料の初期酸素含有量の約1%を超えることを許さない。前述の実施形態において、高圧処理は、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、または約48時間、持続し得る。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、高圧下で溶液条件を変更する方法であって、第1の容器内の溶液中に少なくとも1つの組成物を提供するステップと、少なくとも1つのさらなる容器内の溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤を提供するステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は第1の容器の内容物と接触していないステップと、容器を高圧下に置くステップと、少なくとも1つのさらなる容器の内容物を第1の容器の内容物に接触させるステップと、を含む方法を包括する。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、対流によって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、攪拌によって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、拡散によって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、静的ミキサー等のミキサーに内容物を通過させることによって混合される。別の実施形態において、第1の容器および少なくとも1つの容器の内容物は、受入容器へ移動され、当該受入容器は、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよく、第1の容器および少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、受入容器への移動中または後に混合され得る。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器は、前記第1の容器内に収納される。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器は、第1の容器と共に流路内にある。
【0029】
一実施形態において、本発明は、高圧下で溶液条件を変更する方法であって、第1の容器内の溶液中に少なくとも1つの組成物を提供するステップと、少なくとも1つのさらなる容器内の溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤を提供するステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は第1の容器の内容物と接触していないステップと、容器を高圧下に置くステップと、少なくとも1つのさらなる容器の内容物を第1の容器の内容物に接触させるステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は長期間にわたって第1の容器の内容物に接触させられるステップと、を含む方法を包含する。一実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は連続方式で第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって連続的に変化する。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、段階的(不連続の)方式で(例えば、溶液の一部を混合し、待ち、溶液のさらなる部分を混合することによって)第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって段階的に変化する。溶液条件におけるこの段階的変化の一実施形態において、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10である。溶液条件におけるこの段階的変化の別の実施形態において、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10であり、約7〜約8.9、または約7.5〜約8.5、または約8のpHまで低下する。段階的方法の別の実施形態において、pHは、約24時間毎に約0.01〜約2pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約1pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約0.5pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約0.4pH単位で、または約24時間毎に約0.1〜約0.3pH単位で、または約24時間毎に約0.2pH単位で低下する。
【0030】
当該方法の一実施形態において、第1の容器内の溶液中の少なくとも1つの組成物はタンパク質である。タンパク質は、変性タンパク質または凝集タンパク質等の非天然状態であってもよく、凝集タンパク質は、可溶性凝集体、不溶性凝集体、もしくは封入体、または前述の任意の混合物であってもよい。
【0031】
当該方法の一実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のpHを変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の塩濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の還元剤濃度、酸化剤濃度、または還元剤濃度および酸化剤濃度の両方を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のカオトロピック濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のアルギニンの濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の界面活性剤の濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液の特異的排除化合物濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液のリガンド濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度を変化させるための剤である。別の実施形態において、溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤は、溶液に追加するためのさらなる反応物質または試薬である。
【0032】
別の実施形態において、容器は少なくとも約250バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約400バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約500バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約1000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約2000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約2500バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約3000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約4000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約5000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約6000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約7000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約8000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約9000バールの圧力下に置かれる。別の実施形態において、容器は少なくとも約10,000バールの圧力下に置かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の詳細な説明
「高圧」は、少なくとも約250バールの圧力を意味する。本発明のデバイスが使用される際の圧力は、少なくとも約250バールの圧力、少なくとも約400バールの圧力、少なくとも約500バールの圧力、少なくとも約1キロバールの圧力、少なくとも約2キロバールの圧力、少なくとも約3キロバールの圧力、少なくとも約5キロバールの圧力、少なくとも約6キロバールの圧力、少なくとも約7キロバールの圧力、少なくとも約8キロバールの圧力、少なくとも約9キロバールの圧力、または少なくとも約10キロバールの圧力であってもよい。
【0034】
「閉鎖系」は、物質は系とその周辺との間を移動することができないが、閉鎖系とその周辺との間で機械エネルギーまたは熱エネルギーの移動が発生し得るシステムを指す、標準的な化学熱力学用語を意味する。対照的に、「開放系」は、系とその周辺との間における、物質および/または機械エネルギーもしくは熱エネルギーの移動を可能にする。「孤立系」は、その周辺との機械的接触も熱的接触も許さない、すなわち、孤立系から/への機械的エネルギーまたは熱的エネルギーの移動が起こらない、閉鎖系である。「実質的に閉鎖された系」は、試料の質量の約1%未満、より好ましくは約0.5%未満、より好ましくは約0.2%未満、より好ましくは約0.1%未満、より好ましくは約0.05%未満、さらに好ましくは約0.01%未満が、系とその周辺との間を移動することができる系である。
【0035】
「液体試料の大幅な移動」は、試料中に含有される液体の容積の約1%以上の移動(標準的な大気圧下で計測)を意味する。本発明のデバイスが、液体試料の大幅な移動を防止するように設計されている場合、当該デバイスの使用中に移動される試料の量は、当該試料の加圧されていない容積の約1%未満、より好ましくは約0.5%未満、より好ましくは約0.2%未満、より好ましくは約0.1%未満、より好ましくは約0.05%未満、さらに好ましくは約0.01%未満である。
【0036】
「高圧下で酸素に対し実質的に不透過性」、「高圧下で実質的に酸素不透過性」または「高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性」は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる酸素濃度の変化が試料内において約0.3mMを超えることを許さない材料を意味する。別の実施形態において、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が、約0.2mM以下、好ましくは約0.1mM以下、好ましくは約0.05mM以下、より好ましくは約0.025mM以下、さらに好ましくは約0.01mM以下であることを許容する。パーセントの数値で表すと、材料は、高圧処理の持続時間中、材料全体にわたって酸素が質量移動することによる試料内の酸素濃度の変化が、試料の初期酸素含有量の約10%を超える、好ましくは約5%以下、より好ましくは約2.5%以下、さらに好ましくは約1%以下であることを許容する。
【0037】
高圧デバイスの材料
高圧デバイスの本体は、多種多様な材料から作製され得る。デバイスが、圧力を伝達することができる少なくとも1つの可動面(図6に示す可変充填容積デバイス等)を有さない場合、圧力移動を可能にするために、デバイスを作っている材料は可撓性であるべきである。適切な材料は、高圧処理下において、1つ以上の試料コンパートメントから外部周辺への試料の漏出を可能にする、または流体、ガス、もしくは容器の外部周辺にあるその他の材料の、1つ以上の試料コンパートメントへの漏出を可能にする、または試料コンパートメント間における試料の漏出を可能にする、破損、破砕、またはいかなる故障もしくは完全性の喪失を被るべきではない。当然ながら、そのような漏出は、当業者が故意に望む、1つ以上の試料コンパートメントと外部周辺との間における意図的な移動、または2つ以上の試料コンパートメントとその他のコンパートメントとの間における意図的な移動を含むことを意図するものではない。
【0038】
デバイスは、少なくとも約250バールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる材料で構成されなくてはならない。別の実施形態において、材料は、少なくとも約500バールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、少なくとも約1キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、少なくとも約2キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、少なくとも約3キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。別の実施形態において、材料は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールの圧力に耐え、依然として完全性を維持することができる。規定圧力は、デバイス全体の圧力差でも圧力降下でもなく、デバイスにかかる多次元圧力である。すなわち、デバイスとして使用される容器は、規定圧力まで加圧される圧力室内に置かれ、一方、圧力室は、当該室の外部の大気圧に対して当該室内で最大5キロバールまたは10キロバールの圧力差または圧力降下に耐えることができなくてはならず、容器の材料はそのような劇的な差圧を経験することはなく、むしろ全方向からの圧力は均一である。
【0039】
使用される材料は周辺から試料コンパートメントへの圧力移動も可能にしなくてはならず、それにより、デバイス全体の圧力はほぼ同等となる、すなわち、デバイス内における任意の2つの位置が経験する圧力の差は、全圧の約1%以下、好ましくは約0.5%以下、より好ましくは約0.1%以下である。その他の実施形態において、デバイス内における任意の2つの位置が経験する圧力の絶対差は、約5バール未満、好ましくは約2バール未満、より好ましくは約1バール未満である。外部から印加される圧力とデバイスの任意の内側部分との間のあらゆる差は、外部から印加される全圧の約5%以下、好ましくは約2%以下、より好ましくは約1%以下、さらに好ましくは約0.5%以下、より一層好ましくは約0.1%以下である。したがって、材料は、圧力を伝達するために可撓性であるべきである。
【0040】
一実施形態において、材料はポリマーである。別の実施形態において、安価な大量生産のために、ポリマー材料は射出成形される場合がある。適切なポリマー材料は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含む。高圧処理に耐え得るが酸素不透過性であるとは限らないその他のポリマー材料としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリカーボネートが挙げられる。
【0041】
試料の酸素含有量の考察
システイン含有タンパク質のリフォールディング等の多くの反応は、試料の酸素含有量によって影響を及ぼされ得る。一般に、タンパク質リフォールディング実験は、チオール等、規定濃度の酸化還元試薬(例えば、グルタチオン、シスタミン、シスチン、ジチオスレイトール、ジチオエリトリトールを、還元型、酸化型、または還元型と酸化型の混合、例えばジスルフィドシャフリングで)の使用を必要とするであろう。試料中の酸素の濃度は、高圧下で気泡が溶液中に押し込まれて試料中のO2濃度を変化させるので、試料中の気泡の存在によって影響を及ぼされ得る。試料中の酸素の濃度はまた、デバイスの壁全体にわたる酸素の拡散によっても影響を及ぼされ得る。試料デバイスは一般に、圧力が印加される室の中に置かれ、当該室で使用される流体が水である場合、当該試料デバイス周囲にある室の水に溶解した酸素は、当該デバイスの壁全体にわたって拡散し得る。
【0042】
これらの考察について、以下の節「気泡による酸素濃度変化」および「高圧下での酸素透過性」で扱う。
【0043】
気泡による酸素濃度変化
酸素濃度における変動の約80%が試料中の気泡により生じ、一方、当該変動の約20%はシリンジ型デバイス(当該デバイスは、高圧下で酸素移動に対し実質的に不透過性ではない)の壁全体にわたる酸素の拡散から生じると推定される。これは、可能な限り多くの気泡を試料バイアルから除去することの重要性を強調するものである。試料1ml中、25μlの空気につき0.2mモルのO2を充填した場合、高圧によって空気が液体試料に溶解し、当該量の酸素は、0.8mMの還元型チオールと反応することになる。一般的な還元型チオール濃度は、約1mM〜約10mM(Clark E.D.「Protein refolding for industrial processes」Curr.Opin.Biotechnol.12:202−207(2001年))の範囲であり、この範囲を超えると、還元型チオール濃度における0.8mMの変化によって約8%〜約80%の濃度における変動が引き起こされる。一般的な濃度である4mM還元型チオールでは、還元型チオールの0.8mM還元により、還元型チオールの溶液濃度における約20%の変化がもたらされる。これは、すべての気泡を除去することの重要性を強調するものであるが、現在の最新式バイアルを用いて実現することは困難であり、本発明はこれに取り組むことを意図する。
【0044】
図12は、種々のサイズの気泡によって引き起こされる酸素充填を示す。気泡の容量パーセントは、可能な限り低く、試料容積の約10%以下、より好ましくは試料容積の約5%以下、さらに好ましくは試料容積の約2.5%以下、より一層好ましくは試料容積の約1%以下に保たれるべきである。
【0045】
高圧下での酸素透過性
デバイスにおいて使用される材料は、任意で、高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性である。デバイスを使用して研究または処理されている試料に酸素移動が影響を及ぼし得る場合には、酸素に対し実質的に不透過性である材料を使用すべきである。任意で、使用される材料は、デバイスを使用して研究または処理されている試料に影響を及ぼし得る、二酸化炭素等、高圧下におけるその他のガスの移動に対しても実質的に不透過性である。高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性である材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)、Mylar(登録商標)(Mylarは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートポリエステルフィルムを表すDuPont社の登録商標である)、高密度ポリエチレン、およびポリスチレンを含むがこれらに限定されない。あるいは、管壁が十分な厚さに作られている場合、酸素に対する不透過性が低い材料を使用することができる。最後に、Styrolux(登録商標)(例えば、Styrolux(登録商標)684D)等のポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含むがこれらに限定されない、酸素に対しより透過性の材料を、酸素透過性を低下させるため、その他のポリマーまたはその他の材料の適切な被覆と共に使用してもよい。(Styrolux(登録商標)は、スチレン樹脂を表す、BASF Aktiengesellschaft Corp.(ドイツ、ルートウィヒスハーフェン)およびWestlake Plastics Company(ペンシルベニア州レニー)の登録商標である。)
デバイスを使用して研究または処理されている試料に酸素が影響を及ぼす場合、高圧下で実質的に酸素不透過性の材料を使用することの有用性が、実験的証拠により裏付けられている。一般的な圧力実験中、最大約0.35マイクロモルのO2を移動させられる可能性があり、それは、溶液の酸化還元環境を大幅に変更するのに十分である。図10は、高圧処理に現在使用されている従来型のシリンジを用いて行われた実験を示す。使用したシリンジは、Becton Dickinson社の1ml低密度ポリエチレンシリンジであった。pH8.0の500ml水溶液、4mM GSH(還元型グルタチオン)、2mM GSSG(酸化型グルタチオン)を、2150バールで17時間保った。図10に示すように、還元型グルタチオンの濃度を4.0mMから3.5mM以下まで低下させるのに十分な酸素が移動された。
【0046】
図11は、高圧下で使用されたシリンジの壁全体にわたる酸素移動の量の計算を示す。当該計算は、厚さ1/16インチ、長さ1.5インチ、および外径0.25インチのシリンジに関するものである。計算は、周囲酸素濃度を可変させて、2000バールでの24時間実験を仮定したものであり、周囲の流体中の予測される酸素濃度は、(圧縮前、周辺物の容積の約10%が気泡で構成されているという仮定の下で)約0.3mMとなる可能性が高く、図11においては垂直な点線で示されている。気泡中の酸素は、単純に、標準的な温度および圧力における気泡中の空気の量を計算するための理想気体の法則を使用することによって計算され、高圧下において、空気は溶液中に溶解することになる。計算は、定常状態での拡散に関するフィックの法則を使用して実行され、高圧下でポリマー中のO2の溶解度が劇的に増大するので、透過係数の代わりに拡散係数が使用される。拡散係数は、Polymer Handbook、第4版(J.Brandup、E.H.Immergut、およびE.A.Grulke編、A.Abe、D.R.Bloch共編、ニューヨーク、Wiley社、1999年)のものを使用した。
【0047】
このような仮定をすることにより、計算は、起こりうる周囲の液体中の酸素濃度値において、HDPE製のチューブ内では約0.2mM相当のO2が、またLDPEの場合には0.6mM相当のO2が移動することを示す。ポリプロピレンデバイス全体にわたる酸素移動の計算は行っていないが、相対的透過値に基づくと、HDPEとLDPEの値の間であると考えられる。ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)は、仮定された条件下では酸素の移動をほとんど有しないと計算される。よって、この計算は、デバイスのポリマー壁を通る酸素移動を大幅に低減させる、または殆ど解消するために、材料が思慮深く選定され得ることを実証するものである。
【0048】
デバイス実施形態:マルチウェルプレート
一実施形態において、高圧デバイスは、本体またはプレート内に複数のウェルを備える(「マルチウェルプレート」)。そのような実施形態の一例を図1に示す。示されている実施形態は96ウェルプレートであり、高圧下で酸素の質量移動に対し実質的に不透過性である可撓性材料で作られた本体(1)は、液体試料を収容するための96個のウェル(2)を有する。材料は、射出成形によってプレートが形成され得るようなものが選定されるのが好ましい(が、必ずしもそうでなくてもよい)。
【0049】
マルチウェルプレート実施形態の本体に適切な材料が選定されると、試料は試料コンパートメントに導入されなくてはならない。試料ウェル中に空洞部分を含むことは望ましくなく、これは、高圧下では空気中の酸素が溶液中に入り込み、試料の酸化還元環境を変更するため、また、空洞部分の存在は材料に過度のひずみも引き起こし得るためである。したがって、ウェルは、当該ウェル内に残っているあらゆる残気を可能な限り解消するように設計される。
【0050】
図2Aは、ウェル設計(1)の1つの考えられる実施形態の側面図を示す。ウェル(3)は、すべての空気の通気を確実にするため、部分的に「ドーム」(4)内に覆われている。ドーム(4)を図2Bにおいてより詳細に示す。領域(6)は、試料充填用の注入口であり、ドームを形成する固形物(5)によって囲まれている。注入口(6)は、適切なサイズの試薬送出用ピペットチップの挿入および空気の通気を可能にするのに十分なほど大きくなくてはならない。このドーム型設計は、密閉前にウェル内のすべての空気を通気させるための過剰充填を可能にする。また、過剰充填中、超過分の試料はドームの側面を流れ落ち、試料間の交差汚染を解消するであろう。ドーム(4)は、十分なシーリング面を提供するため、上端の、注入口を密接に囲んでいるエリア(4A)内に、実質的な平面を有する。寸法は、標準サイズのピペットチップによる試料充填を可能にし、試料の通気を可能にし、交差汚染を防止するために十分なトラフをドームの基盤に有し、且つ、十分なシーリング面を提供するために前述の平らな上面を提供するように選択される。
【0051】
マルチウェルデバイスの一実施形態において、ウェルを密閉するために、マルチウェルプレートの上端にマットが置かれる。そのようなマットに適した材料は、シリコンゴムを含むがこれに限定されない。一実施形態において、マットは約1/8インチの厚さを有し、長さおよび幅は、共に使用されるマルチウェルプレートのものと実質的に同一である。マットは、ドームの上端における良好な密閉を可能にし、試料内における圧力誘起の容積変化による変形を許容するために十分な可撓性の材料から作られるべきである。この実施形態においては、シーリング面全体にわたって差圧がない―すなわち、ウェルの内部にある試料が経験する圧力は、マットが経験する圧力と実質的に同様である―ため、シーリングマットは、大気圧下において予測される以上の密閉能力を何ら提供する必要がない。使用されるシーリング材が高圧下で酸素に対し実質的に不透過性でない場合、酸素移動を抑制するために、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性のフィルムをシーリングマット上に置いてよい。当該フィルムは、Mylar(登録商標)を含むがこれに限定されない材料から作られていてよい。シーリングマットを使用するマルチウェルデバイスのこの実施形態において、シーリングマットに力を加え、ウェルの密閉を可能にするために、クランプがプレート上に取り付けられる。クランプは、デバイス全体に均一な力、および十分な密閉を確実にするのに十分な力を提供しなければならない。クランプは、加圧サイクル全体を通して一定の力も提供しなくてはならず、それには高圧下での材料(特に、シーリングマット)の収縮による定張力クランプ(一定力クランプではない)を必要とする。図3は、シーリングマット(3−1)およびクランプアセンブリ(3−2)を有する96ウェルプレートの実施形態を示す。
【0052】
図4に示すマルチウェルプレートの別の実施形態において、プレートのウェルは、ドームおよびシーリングマットで覆われておらず、代わりに、ウェルは、当該ウェルに試料を充填する前に、ヒートシール障壁(4−2)によって覆われる。そのような障壁は、一般に医薬バイアルを密閉する際に使用される。ヒートシール障壁は、ウェルの密閉を確実にし、試料汚染を防止する。試料は、ピペットではなく針を装備したマルチチャンネルピペッターを用いる注入によって、マルチウェルプレートのこの実施形態に充填される。針は、試料ウェルを満たすために、障壁を貫通する。二次針も、空気を通着させ、ウェルを完全に満たせるように、満たすと同時に試料を貫く。マルチチャンネルピペッターは、マルチウェルプレートに溶液をピペットで入れるように設計されたものが市販されており、そのようなピペッターは、ピペットチップの代わりに試料充填用の針を使用するよう、容易に適合され得る。試料充填後、二次的な接着性ポリマー膜(4−1)で障壁を覆う。当該膜は、試料充填中に作成された貫通穴を密閉する。任意で、膜は、障壁全体にわたる酸素の拡散を抑制することもできる、すなわち、当該膜は、酸素に対し実質的に不透過性であることができる。接着性ポリマー膜の潜在的な材料は、Mylar(登録商標)を含むがこれに限定されない。
【0053】
デバイス実施形態:一定充填容積デバイス
別の実施形態において、高圧デバイスは容器を備え、当該容器の容積は標準圧力下においては固定されており、この実施形態は、一定充填容積デバイスに指定されている。高圧への曝露時に容器全体が比例的に縮小し、一般に、当該容器は、2キロバールにおいてその容積の約5%〜10%、4キロバールにおいてその容積の約20%(推定)だけ縮小することになり、したがって、このデバイスを作製するためには、可撓性材料を使用すべきである。そのような実施形態の一例を図5に示す。このデバイスは、円錐底を有するシリンダバレルからなる。容器は、多種多様な内部容積で作製されることができ、250μL、500μL、750μL、または1000μLを有する容器の寸法の例を、表1に規定する。容器の内側は、例えば50μL単位の、目盛付きであってもよい。シリンダバレルの上端は、ネジキャップ(図5に示す円錐底として形作られてもよいし、円筒型であってもよい)で密閉するためにネジ込まれてもよい。ネジ込み式ネジキャップは、内側と外側との間に少なくとも約5psigの圧力差がある場合に、密閉を維持することができなくてはならない(5psigは全圧ではなく差圧であって、この規模の圧力差は炭酸飲料を収納する市販のボトルのものと同様であることに留意されたい)。一定充填容積デバイスの実施形態の一般的なサイズを表1に示す(一定充填容積デバイスの、これら特定の実施形態の壁の厚さは、1/16インチである)。
【0054】
【表1】
デバイス実施形態:可変充填容積デバイス
別の実施形態において、高圧デバイスは可変充填容積の容器を備える。この実施形態の一例を図6に示す。この実施形態において、シリンジと同様の様式で、可動プラグ(6−2)および可撤キャップ(6−3)を有するシリンダ(6−1)が提供される。一実施形態において、シリンダが垂直に配向されている場合、プラグは試料コンパートメントの底部を形成し、試料コンパートメントと外部環境との間のシールとして作用する。プラグは、シリンダを満たす前に当該プラグを所望の容積に動かすために使用され得る、付着したプランジャロッドまたは分離したプランジャロッド(6−4)を有してもよい。プラグの配置を望ましい容積に導くために、シリンダは、例えば50μL単位の、目盛付きであってもよい。試料は、デバイスの内部空間(6−5)に収納される。続いて、残気を可能な限り除去するように注意しながら、シリンダを所望の試料で満たすことができる。次いで、可撤キャップをシリンダの上端に置く。代替的実施形態において、シリンダを逆の配向で満たすことができる、すなわち、シリンダの底部にキャップが置かれ、シリンダの上端にプラグが挿入されるようにシリンダを配向させることができる。一実施形態において、可撤キャップはネジ込み式で、単純にシリンダの上端にネジ留めされ得る。ネジ込み式可撤キャップは、内側と外側との間に少なくとも約5pigの圧力差がある場合に、密閉を維持することができなくてはならない(5psigは全圧ではなく差圧であって、この規模の圧力差は炭酸飲料を収納する市販のボトルのものと同様であることに留意されたい)。続いて試料を加圧下で処理することができ、加圧処理後、キャップを除去することができ、シリンダの内容物が注出される、または、プランジャロッドでプラグを押すことによって押し出される。
【0055】
代替的実施形態において、可撤キャップはシリンダの閉鎖端上の取り外し可能チップと置換される。この実施形態において、液体試料はシリンダ内に入れられ、当該シリンダの上端にプラグが挿入される。取り外し可能チップは高圧処理中、無傷に保たれる。処理後、チップは取り除かれ、シリンダの内容物が注出される、またはプランジャロッドで可動プラグを押すことによって押し出される。チップは、手で取り除かれるように設計されていてもよいし、切削工具で取り除かれるように設計されていてもよく、試料を排出するために切削工具でチップが除去され得る可変充填容積デバイスの例として、図21を参照されたい。
【0056】
別の代替的実施形態において、試料をシリンダに挿入するために、可動プラグとシリンダとの間に針を通すことができる。可動プラグ上の一方向弁は、試料が導入される際にシリンダ内の空気を放出することを可能にする(図7A、図7B、および以下の一方向弁アセンブリについての考察を参照)。
【0057】
圧力の印加を受けて可動プラグが動くため、可変充填容積デバイスを作製するために使用される材料は、本発明のその他のデバイスにおいて使用される材料ほど可撓性でなくてもよいことに留意すべきである。
【0058】
図7Aおよび図7Bにおいて、特に高圧利用に適合され、一方向弁プラグとして機能することができる、可動プラグ(7)が示されている。図7Aおよび図7Bに示す実施形態は、液体の一方向流を可能にするためにフラップに依存することから、フラッププラグまたはフラップ弁である。図7Aにおいて、可撓性フラップ(7−1)がOリング(7−2)と共にシールを形成している。フラップ(7−1)およびOリング(7−2)は、開口部(7−7)において可変充填容積デバイスの内側に開放されている内部通路(7−4)から、外部環境(7−6)を密閉する。エリア(7−3)は固体である。図7Bに示すように、一方向弁プラグが可変充填容積デバイスのポリマーバレル(6−1)に挿入されると、当該プラグは、試料が一方向弁から流出し始めるまで押下され得る。これは、可撓性フラップ(成形フラップ)が屈曲し、図7B中の矢印によって示されている経路を介して試料を逃がすことにより発生するものである。試料が弁から流出するまで押下することにより、試料から可能な限り空気が排除されることを確実にし、デバイス中における試料の量の調整も可能にする。フラップは一方向にのみ(Oリングから離れて)屈曲できるため、空気も試料の外部に存在するその他いかなる物質も、試料内へ逆流することができない。
【0059】
ポリマー試料バレル、逆止弁アダプタ、逆止弁アセンブリ、およびOリングシールで構成される、高圧試料バイアルとして使用するのに適した別の可変充填容積デバイスを、図21に示す。図19において、高圧利用に特に有用であり、一方向弁プラグとして機能し得る可動プラグ(19−0)の別の設計が示されており、この可動プラグは、逆止弁アダプタとしても機能する(すなわち、逆止弁を可動プラグ(19−0)に挿入することができる)。プラグは、Delrin(登録商標)(Delrin(登録商標)は、アセタール樹脂を表す、E.I.Du Pont de Nemours and Company(デラウェア州ウィルミントン)の登録商標である)を含むがこれに限定されない種々の材料から製造されることができ、当該プラグは、射出成形または機械加工によって作製され得る。液体試料と接触しているプラグのエリアは湾曲(19−1)しており(プラグは、液体を収容する容器内に挿入される際、図19に示す配向から反転し得ることに留意されたい)、この湾曲は、可能な限り多くの空気が容器から押し出されることを確実にする。湾入(19−3)は、容器の壁と共に可動シールを形成するためのOリングの設置を可能にする。このプラグはその内部ルーメン(19−4)に逆止弁を受けるように適合されており、当該内部ルーメンは、逆止弁をアダプタに手動で挿入することによって容易に設置され得る。弁プラグ/逆止弁アダプタは、好ましくは、ボールスプリング逆止弁を利用する。図20は、そのような逆止弁(20−1)を示し、当該弁は市販されている(The Lee Co、PN#CCPX0003349SA(コネチカット州ウェストブルック))。図20の矢印は、逆止弁において許容される液体流れの方向を示す。液体は逆止弁のルーメン(20−2)を通過し、弁スプリング(20−4)を圧縮することによって弁のボール(20−3)を下方へ押す。流体が流れなくなると、スプリング(20−4)は弁を密閉するためにボール(20−3)を押し戻す。図20の逆止弁は、図19の逆止弁アダプタコンポーネントに挿入され、図20Aは、逆止弁(20−1)が設置された逆止弁アダプタ(19−0)を示す。逆止弁を収納する逆止弁アダプタは、容器内に挿入されて、図21のような可変充填容積容器を形成する。容器(21−1)は、最大約5キロバール、好ましくは最大約10キロバールまでの加圧に耐えることができる可撓性材料であって、任意で、酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料でできている。可変充填容積デバイスの容器(21−1)は、Styrolux(登録商標)684D等の材料を使用して、1個取り金型(PTG Global Inc.(カリフォルニア州オレンジカウンティ)から市販されているもの等)内で射出形成され得る。構成の材料はStyrolux(登録商標)に限定されるものではなく、酸素透過性を調節するためにさらに調整され得る。容器は、液体試料(21−2)を収納する。一実施形態において、可変充填容積デバイスは、最大1.2mlの液体容積を収容することができ、150〜1200μLの容積範囲で使用され得る。逆止弁(21−4)を有するアダプタ(21−3)が容器(21−1)の上端に挿入され、逆止弁は、容器内の空気および流体が溢れて容器から出ることはできるが、流体が流れ落ちて容器に入らないよう封鎖されるように配向される。アダプタが容器内へ押し下げられると、空気が逆止弁から押し出され、アダプタの凹面底部は、液体試料が容器から押し出され始める前に、可能な限り多くの空気が押し出されることを確実にする。図示するような可変充填容積デバイスには、続いて高圧が与えられ得る。
【0060】
デバイス実施形態:溶液交換(溶液混合)デバイス
別の実施形態において、高圧デバイスは複数のコンパートメントを備え、当該コンパートメントの内容物は別々に保たれてもよいし、混合されてもよい。そのようなデバイスは、溶液交換または溶液混合デバイスとして指定される。高圧下で液体試料を処理する場合、容器の内容物は、液体試料の化学的溶液条件を変更するために混合され得る。変化し得る化学的溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、カオトロピック濃度、アルギニンの濃度、界面活性剤の濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、液体試料中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または溶液に追加するためのさらなる反応物質または試薬のうち任意の1つ以上を含むがこれらに限定されない。別の実施形態において、化学的溶液条件は、さらなる試薬または反応物質を液体試料に追加することによって変化する。そのような試薬または反応物質は、酵素阻害薬、薬物、(約1000ダルトンを下回る分子量の)有機小分子、またはタンパク質誘導体化試薬を含み得る。
【0061】
容器内容器の実施形態:コンパートメントの内容物が別々に保たれてもよいし、混合されてもよい複数のコンパートメントを備える、そのような一実施形態において、高圧デバイスは、1つ以上の二次コンパートメントを包囲する一次コンパートメントを備え、一次コンパートメントを開けることなく1つ以上の二次コンパートメントを開けることができ、それにより、1つ以上の二次コンパートメントの内容物が解放されて一次コンパートメントの内容物と接触する。この実施形態の一例を図8Aおよび図8Bに示す。図6または図21の可変充填容積容器等の可変充填容積容器が一次コンパートメントとして使用され、一方、1つ以上の二次容器(8−1)が可変充填容積容器の内側(6−5)に置かれる。(可変充填容積容器は単純に例として使用されるものであり、一定充填容積容器等、本発明のその他のデバイスのいずれを一次コンパートメントとして使用してもよいことに留意すべきである。)二次容器の一端は密閉される。二次容器の反対端に磁気ディスク(8−3)が置かれ、当該磁気ディスクは、二次容器の一方の壁または側面を通過し、ディスクの中心を通って二次容器の対抗壁または側面に入るように構築された心棒を有することになる。ディスクは、二次容器の内側に可能な限り正確に収まるよう、許容誤差を有する設計にすべきである。ディスクは、心棒上を自在に回転するように設計されており、従来のバタフライ弁と類似した方式で、二次容器を効果的に開閉する。ディスクの後部の許容誤差は可能な限り厳格にして磁気ディスクの自在回転を可能にするために、面取りまたは斜縁が使用される。この設計は、ディスクが閉鎖位置にある場合に有効なシールを提供しながら、磁気ディスクを自在に回転させる。この設計を使用する場合、磁気ディスクをその閉鎖位置に維持するのを重力で補助するために、二次容器が垂直位置に来るような位置に一次容器を維持することが好ましい。一次コンパートメント(二次コンパートメントを収納するもの)が中に置かれた高圧管の外側の周囲に垂直および水平に置かれた電気コイルによって、スイッチを作動させる。磁気ディスクを閉鎖位置または密閉位置に維持する磁場を生成するために、水平コイルは圧力管内の磁気ディスクに対して実質的に平行である。図8Aにこれを示す。圧力管は一般にステンレス鋼でできているため、コイルは、圧力管の内側へ貫通する十分に強い磁場の生成を可能にするために、適切な数のループ、ゲージ厚、および電流を有する設計となっている。あるいは、圧力管は、鋼またはその他そのような強磁性体と同程度に磁場を減衰させない材料でできていてもよい。磁気ディスクを制御するための、電気コイルの別の配列として、試料棚の周囲に垂直および水平にコイルを置くことを含む。この設計において、磁場は、圧力管の鋼壁を貫通しなくてもよいが、電流を運ぶワイヤを圧力管の内側に通さなくてはならないであろう。これは、鋼ではなく絶縁セラミックスで従来の圧力管のシーリングプラグの基盤を作製することによって実現され得る。
【0062】
磁気ディスクを閉鎖位置にあるように保つ場合、水平場をオンにし、水平場をオフにして、磁気ディスクを水平位置に維持し、二次容器の溶液内容物を一次容器のものから密閉する。溶液交換を可能にするために、水平および垂直コイル内の電流は、適切な方式で操作され(例えば、水平コイル内の電流をオフにし、垂直コイル内の電流をオンにする)、図8Bに示すようにディスクを開き、(二次容器の内部空間(8−2)に収納された)二次容器の内容物を、(一次容器の内部空間(6−5)に収納された)一次容器の内容物に接触させる。ディスクを用いて混合作用を生成することができ、水平および垂直コイル内の電流は、交流によって交互に入れ替えられて、回転電磁場を生成し、磁気ディスクを裏返す。これにより、二次容器の内容物が一次容器に開放され、一方で、ディスクの動きが対流および溶液交換を可能にする。変形形態において、二次容器のキャップは、高圧室への適切に密閉された開口部を通って高圧室に入り、適切なシールを通って一次容器も通過する駆動軸によって制御され得る。
【0063】
フローループの実施形態:コンパートメントの内容物が別々に保たれてもよいし、混合されてもよい複数のコンパートメントを備える、そのような別の実施形態において、高圧デバイスは、流路によって接続された少なくとも2つのコンパートメントを備え、当該コンパートメントと流路は、少なくとも1つのポンプを有する閉環ループを形成する。この実施形態の一例を図9に示す。液体試料を「解離」室(9−1)内に入れ、一方、第2の溶液を「リフォールディング」室(9−2)内に入れる。必要に応じて、さらなる解離室、リフォールディング室、および流路を追加してもよい。続いて、デバイスを圧力室(図示せず)内に置き、加圧する。液体試料を第2の溶液と混合することが望ましい場合、ピストンポンプ(9−5)をオンにし、閉環ループ(9−3)を通って液体を循環させる。ピストン(9−7)は、磁場によるポンプ速度の制御を可能にする、磁化材料でできていてもよい。ピストンポンプを制御するために、室およびフローループの他に、圧力室の内部にマイクロプロセッサ制御の電池式コイルを置いてもよい。(マイクロプロセッサ(9−8)と電池(9−9)は、マイクロプロセッサ自体への圧力移動を低減させるために、好ましくはエポキシブロック(9−4)内に埋め込まれる。)あるいは、一次容器/二次容器デバイス内における二次コンパートメント金属ディスクの制御用の金属コイルの配列を使用して、ピストンを制御することができる。さらに別の変形形態において、デバイスは、高圧室への適切に密閉された開口部を通って高圧室に入る駆動軸によって制御され得る。1つ以上の逆止弁(9−6)が一方向の流れを確実にする。図の理解を容易にするために、容器を「解離室」および「リフォールディング室」と呼ぶが、いずれかの、または両方の室内において、その他の化学および生化学過程が行われ得ることが十分に理解されるであろう。
【0064】
予混合容器/受入(後混合)容器の実施形態:コンパートメントの内容物が別々に保たれてもよいし、混合されてもよい複数のコンパートメントを備える、そのような別の実施形態において、高圧デバイスは、予混合容器に指定された液体試料を収容する少なくとも2つの容器を備えるシステムを備える。液体試料は通常、塩濃度、pH等、1つ以上の条件または組成が異なっている。(必要に応じて、液体試料は同じであってもよい。)システムは、受入容器または後混合容器に指定された少なくとも1つのさらなる容器も備え、当該受入(後混合)容器は、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよい。そのようなシステム(100)を図13に示し、詳細な横断面を図14に示す。図14において、プラグ(112)によって密閉された圧力室(102)は、2つの予混合容器(120)および(122)を支持し、これらの容器は別々の液体試料を収納する。予混合容器は、図14においてほぼ等しいサイズのものとして示されているが、容器のサイズは互いに相対的に可変であってよいため、例えば、1つの予混合容器は、その他の予混合容器の2倍の容積を有し得る。また、簡単にするために2つの予混合容器しか示していないが、必要に応じてより多くの予混合容器を使用してもよい。予混合容器は、可動ピストン(128)と、ミキサー(126)に至る液体導管(124)とを有する。ミキサーは、ピストン(132)を収納する受入(後混合)容器(130)に至り、図14において、受入容器の上端に密着するように示されている。弁(104)、圧力発生器(108)、および圧力線(110)は、圧力室(102)の内部(103)で連通しており、圧力室(102)の内部を、例えば最大2,000〜2,500バールまで加圧することができる。弁(106)、圧力発生器(108)、および水圧線(111)は、ピストン(132)の下に配置された液体と連通している。図15は、圧力室(102)をさらに詳細に示す。水圧出口(134)は、受入容器(130)から液体を除去し、ピストン(132)をシール(131)から引き離させる、すなわち、ピストン(132)はミキサー(126)からの注入口から抜き出される。続いて、これによりミキサー(126)を介して予混合容器(120)および(122)内の液体を引き出し、当該液体は受入容器(130)への途中で混合される。液体が容器(120)および(122)を出るとピストン(128)は引き下ろされ、予混合容器(120)および(122)が空になると、ピストン(128)はシール(125)に寄り掛かる。別の実施形態(図示せず)において、予混合容器(120)および(122)からの流体排除を容易にするために、ピストン(128)の外部側面に水圧を印加することができる。図16は、予混合容器(120)および(122)内の液体試料が受入容器(130)へ移動された後の装置を示す。予混合容器(120)および(122)からの流体排除後、ピストン(128)はシール(125)に密着する。受入容器(130)内のピストン(132)は、受入容器に移動されている液体を貯溜するために、シール(131)から押し退けられている。図17は、予混合容器(120)をさらに詳細に示す。注入口(121)を介して試料が予混合容器(120)へ導入され、試料の導入後、プラグまたは逆止弁を注入口(121)に挿入し、予混合容器を密閉することができる。ピストン(128)は、環状湾入(129A)を有し、ここで、ピストンと容器の壁との間にシールを形成するために、Oリング(129B)が位置している。図18は、受入容器(130)をさらに詳細に示す。液体は、シール(131)内の開口部(136)を通って受入容器に入り(逆流を防止するために、開口部(136)内に任意で逆止弁(図示せず)を配置してもよい)、Oリング(135)がシールを強化する。開口部(134)を介して負の水圧が印加され、これがピストン(132)を下方に引き、続いて液体を予混合容器(図18には示さず)から受入容器(130)へ引き込むことになる。ピストン(132)は、ピストン周囲での流体移動を防止するために、Oリング(135)を有する。
【0065】
圧力室(102)は、液体試料に対して2000〜2500バール(250バール〜10キロバール、または1キロバール〜10キロバール、または1キロバール〜5キロバール等、これより高い、または低い値も用いられ得る)を生成するように加圧され得る。したがって、予混合容器、受入容器、および結果として液体試料自体は、混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る。したがって、デバイスは、2つ以上の溶液を、第1の期間(例えば、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、約1時間から約6時間)高圧下で別々に処理またはインキュベートすることができる。続いて、溶液を混合することができ、混合された溶液を第2の期間(例えば、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間)インキュベートすることができる。両方のインキュベーション期間が完了した後、圧力室は減圧され、受入容器から溶液が除去されて、当該容器を種々の特性(タンパク質の適切なリフォールディング等)について分析および/または所望の目的に使用することができる。
【0066】
使用することが可能な機器の例として、高圧発生器(PN#37−5.75−60、High Pressure Equipment Co.(ペンシルベニア州エリー)(定格60,000psiのシリンジポンプの形で))、高圧管(PN#60−9H4−304、High Pressure Equipment Co.)、高圧弁(PN#60−11HF4、High Pressure Equipment Co.)、高圧グランド(PN#60−2HM4)およびカラー(PN#60−2H4、High Pressure Equipment Co.)を含む。予混合容器は、石英Suprasil(スプラシル)シリンダ(Wilmad Glass社(ニュージャージー州ブエナ))から製造されることができ、Oリング(McMaster−Carr社(オハイオ州オーロラ)PN9396K16、2−011、シリコンゴム製)を装備する、製造されたステンレス鋼ピストン(High Precision Devices社(コロラド州ボールダー))で、当該石英シリンダをキャップすることができる。一次室の出口は、標準的なHPLCクロマトグラフィ用フィッティング(PN#F−300−01、F−113、F−126x、1576、Upchurch社(ワシントン州オークハーバー))の使用によって静的ミキサーと接続される。図中に示すような混合デバイスは任意であり、単純拡散よりも高い混合率が望ましい場合、または完全な混合が望ましい場合に、そのようなミキサーが用いられ得る。HPLCアプリケーションにおいて使用されるもの等の静的ミキサーを使用することができ、これらは多数の供給業者から入手することができる(例えば、Analytical Scientific Instruments社(カリフォルニア州エルソブランテ)静的ミキサーPN#40200000.5)。静的ミキサーの出口は、標準的なHPLCクロマトグラフィ用フィッティング(例えば、上述したようなUpchurch社製フィッティング)の使用によって二次リフォールディング室に接続される。
【0067】
溶液条件の段階的調整:予混合容器/受入(後混合)容器の実施形態において、1つのステップで溶液全体を混合する必要はない、すなわち、予混合容器内の溶液の一部を受入容器に引き込み、続いて、受入容器内と同様に予混合容器内の残留溶液の圧力下でインキュベーションを継続してもよいことに留意すべきである。このようにして、溶液条件の段階的調整を実装することができる。さらなる実施形態において、予混合容器は、異なる時点における異なる予混合溶液の追加のために、別々に作動される弁を有してよい。したがって、例えば、A、B、C、およびBに指定された予混合容器では、予混合容器A内のタンパク溶液等の液体試料をある期間にわたってインキュベートし、続いて(AおよびBに対しては弁を開放し、CおよびDに対しては弁を閉鎖して)予混合容器AおよびBの内容物を受入容器に引き込んで、容器Aからの液体試料の元来の溶液条件を変更することができる。さらなるインキュベーション期間後、予混合容器Cへの弁を開放し、容器Cの内容物を受入容器に引き込むことができる。さらに一層のインキュベーション期間後、予混合容器Dへの弁を開放し、容器Dの内容物を受入容器に引き込み、その後、必要に応じてまたさらなる期間のインキュベーションを行うことができる。液体試料の溶液条件を段階的に調整するために、所望の数の予混合容器を用いてこれを実装することができる。
【0068】
フローループの実施形態において、溶液条件の段階的調整は、例えば容器A、B、C、およびDと指定されるいくつかの容器を有することによって実装され得る。溶液は、ある期間、高圧下でインキュベートされ得る。続いて、容器AおよびBへの弁を開放し、それらの容器間の流れ(および、容器Bの内容物との内容物混合時における容器Aの溶液条件の変更)を可能にし、一方、容器CおよびDへの弁は、インキュベーション期間中、流れが容器CおよびDをバイパスする位置に保つことができる。続いて、容器Cの内容物をフローループ内に入れるように弁を設定することができ(例えば、容器Cの周囲のバイパスシャントを遮断し、容器Cをフローループ内に置くために弁を開放することによって)、容器Cの内容物をフローループ内で容器AおよびBの内容物と混合(および、容器Cの内容物との内容物混合時におけるフローループ内にある溶液の溶液条件の変更)し、一方、別のインキュベーション期間の間、容器Dをバイパスするために流れが継続する。最後に、容器Dの内容物との内容物の混合時にフローループ内にある溶液の溶液条件のさらなる調整、およびさらに一層のインキュベーション期間のために、容器Dの周囲のバイパスシャントを遮断しながら、容器Dをフローループ内に置くために弁を開放することができる。液体試料の溶液条件を段階的に調整するために、適切な弁およびバイパスシャントを用いて、フローループ内の所望の数の容器によってこれを実装することができる。
【0069】
これらの実施形態は、種々の条件下で、タンパク質のリフォールディングに使用され得る。Lin、米国特許第6,583,268号およびLi,M.およびZ.Su(2002年)、Chromatographia 56(1−2):33〜38では、カオトロピック物質による高pHでのタンパク質リフォールディング、それに続くpHの段階的減少、タンパク溶液の希釈、ならびに限外ろ過およびゲルクロマトグラフィを提案している。上述したような高圧デバイスを使用して、アルカリ性pH(10.0付近)の非変性カオトロピック溶液中で圧力調節リフォールティング(250〜5000バールの圧力)を行うことができ、続いて、溶液のpHを、pH8.0の値が得られるまで段階的に漸減することができる。米国特許第6,583,268号においては、10から8にpHを低下させるには10日間となる、24時間毎に0.2ユニットの速度が提案されており、この速度を一般条件として採用してもよいし、タンパク質毎に最適条件を決定してもよい。高水圧を使用することにより、凝集解離を促進するために高濃度のカオトロピック物質を使用する必要性を低減または除去することができる。圧力およびカオトロピック/pH調節リフォールディング方法を組み合わせることにより、より高いリフォールディング収率の達成が予測される。
【0070】
一実施形態において、本発明は、高圧下で溶液条件を変更する方法であって、少なくとも1つの第1の容器内の溶液中に少なくとも1つの組成物を提供するステップと、少なくとも1つのさらなる容器内の溶液条件を変化させるための少なくとも1つの剤を提供するステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触していないステップと、容器を高圧下に置くステップと、少なくとも1つのさらなる容器の内容物を少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させるステップであって、当該少なくとも1つのさらなる容器の内容物は長期間にわたって少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させられるステップと、を含む方法を包含する。一実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は連続方式で少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって連続的に変化する。別の実施形態において、少なくとも1つのさらなる容器の内容物は、連続方式で少なくとも1つの第1の容器の内容物に接触させられ、それにより、少なくとも1つの第1の容器の内容物の溶液条件は、長期間にわたって段階的に変化する。溶液条件におけるこの段階的変化の一実施形態において、pHが変化し、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10である。溶液条件におけるこの段階的変化の別の実施形態において、第1の容器の内容物のpHは、約9〜約11、または約9.5〜約10.5、または約10であり、約7〜約8.9、または約7.5〜約8.5、または約8のpHまで低下する。段階的方法の別の実施形態において、pHは、約24時間毎に約0.01〜約2pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約1pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約0.5pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約0.4pHユニット、または約24時間毎に約0.1〜約0.3pHユニット、または約24時間毎に約0.2pHユニット低下する。溶液条件調整の前、間、および後のインキュベーション期間は、最適なリフォールディング収率のために必要に応じて変動させることができ、例えば、高圧下でのインキュベーションは、溶液条件の調整前に、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間、実行され得る。溶液条件の漸次連続変化の場合、当該調整は、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間、実行され得る。溶液条件の段階的調整の場合、調整間の間隔は、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間であってもよい。最後に、溶液条件が所望の最終条件に調整された後の高圧下におけるインキュベーションは、約1分間から約1週間、または約10分間から約48時間、または約1時間から約48時間、または約10分間から約24時間、または約1時間から約24時間、または約10分間から約12時間、または約1時間から約12時間、または約1時間から約6時間の任意の期間、実行され得る。
【0071】
上述の方法において、少なくとも1つの第1の容器の内容物は、溶液交換の容器内容器の実施形態のように、溶液条件が変化した際に第1の容器内に残留している場合がある。あるいは、少なくとも1つの第1の容器の内容物のすべてまたは一部は、フローループまたは予混合容器/受入(後混合)容器の実施形態のように、溶液条件が変化した際には第1の容器内にない場合があり、この場合、第1の容器の内容物の変更は、第1の容器とは部分的にまたは全体的に離れた位置で発生している。そのような場合、少なくとも1つの第1の容器の内容物の溶液条件を変化させることに言及する場合は、少なくとも1つの第1の容器内に元来あった内容物の溶液条件を変化させることを指すことを理解されたい(すなわち、「少なくとも1つの第1の容器の内容物」は、「少なくとも1つの第1の容器の、溶液交換前の元来の内容物」として読むように理解される)。
【0072】
試料コンパートメントへの試料の導入
デバイスの本体に適切な材料が選定されると、試料を試料コンパートメントに導入しなくてはならない。デバイスは、液体試料を受けるように適合されており、したがって、液体移動のための種々の標準的な方法が用いられ得る。ハンドヘルドまたはロボットピペット、シリンジ、ポンプおよび当該技術分野において既知であるその他の液体移動器具を用いてよい。加圧前にデバイスのいずれかから可能な限り多くの残気を排除するように注意を払うべきであり、それによって、材料破壊の防止および空気中に含有される酸素がシステム内に溶解することを防止するのを支援する。圧力が印加された際に、排除することができない残気が液体の酸素含有量を変更することを防止するために、デバイスを、窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気で満たしてもよい。
【0073】
いくつかのさらなる実施形態において、液体試料をコンパートメントに充填する前に、当該試料によって1つ以上のガスが散布される。そのようなガスは、ヘリウム、窒素、ネオン、アルゴン、またはクリプトン等の比較的非反応性のガスを含むがこれらに限定されず、溶解した酸素を可能な限り追放することが望ましい。通常は酸素の厳密な排除が望ましいが、溶液中の酸素含有量が通常よりも高いことが望ましい状況においては、空気または酸素自体が試料によって散布される。よりさらなる実施形態において、試料からガスを抜くために、真空が試料に適用される。よりさらなる実施形態において、溶解した酸素を可能な限り除去するために、非反応性ガスの散布に続いて真空処理を行ってもよく、必要に応じて散布ポンプサイクルを繰り返してもよい。
【0074】
試料コンパートメントの密閉および試料導入
本発明のデバイスのいくつかは、密閉目的のために一方向弁プラグを使用する、例えば可変充填容積デバイス等の独自のシールを提供する。96ウェルプレート等の、独自のシールを有さないデバイスの場合、シリコーン、ゴム、またはその他の材料から作製されたシールで試料コンパートメントを密閉することができる。一実施形態において、実験中に液体試料がシールと接触する場合があるため、シール材は試料ウェルの内容物に対して不活性である。高圧下で酸素に対し実質的に不透過性でないゴム等のシールが使用される場合、酸素の質量移動を低減または防止するために、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性の第2のシールを第1のシールの上に塗布してよい。96ウェルプレート等の可変充填容積デバイスに加えて、一方向弁プラグを種々のその他のデバイスにおいて使用してよい(コンパートメントを密閉するために、最大96個の一方向弁プラグが使用され得る)。
【0075】
試料コンパートメントは、液体試料の導入前または後に密閉され得る。液体試料の導入後に試料コンパートメントが密閉される場合、シールを貫通する必要性が回避される。しかしながら、液体試料の導入前に試料コンパートメントが密閉される場合、シールは試料の導入を可能にするものでなくてはならない。ゴムまたはシリコーン等の材料でできたシールは、液体試料を導入するために針で貫くことができ、コンパートメントから空気を通気するために、第2の針を使用してもよい。第2の通気針は、可能な限り多くの空気を引き抜くために、シールを貫通するのに必要なだけ挿入され、室へ最小限延在する。空気が完全に排出され、当該室から液体が排出され始めると、室の充填が完了する。
【0076】
ゴムおよびいくつかのシリコーンは、高圧下で酸素に対し比較的透過性であるため、高圧下における酸素の質量移動を防止するために、第2のシーリング層が塗布され得る。Mylar(登録商標)または高圧下で実質的に酸素不透過性であるその他の適切な材料の層を、第1のシールの上に敷設してよい。
【0077】
その他の用途
薬剤の状況で、および特にタンパク質のリフォールディングに関して高圧デバイスを上述したが、これらのデバイスの用途は薬剤またはタンパク質リフォールディングに限定されるものではないことに留意すべきである。当該デバイスは、試料、特に液体試料の加圧処理を必要とするあらゆる用途において使用され得る。例えば、Kunugiら、Langmuir、15:4056(1999年)は、種々の圧力下における水溶液中の熱応答性ポリマーの温度および圧力応答性挙動について研究したものである。圧力は、化学反応に影響を及ぼすことが既知であり、圧力は、反応速度論(負の活性化体積が高圧によって加速される反応、Vaneldikら、Chemical Reviews 89:549(1989年)およびDrljacaら、Chemical Reviews 98:2167(1998年)を参照)および反応熱力学(高圧が低システム容積に有利に働く遷移、J.M.Smithら、Introduction to Chemical Engineering Thermodynamics、ニューヨーク:McGraw−Hill社、2001年を参照)の両方に影響を及ぼし得る。
【0078】
本発明を限定することを意図しない以下の例示的な例により、本発明がさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0079】
実施例1
クマシーブルー染料を使用したモデル溶液交換(溶液混合)実験
図13〜18に示す溶液混合デバイスを用いて、加圧処理中の溶液交換を研究した。既知の濃度のクマシーブルー染料の希釈物を、1つの予混合容器に入れた(0.015mg/ml染料のものを10ml)。別の予混合試料容器に、1mlの純水を入れた。圧力を徐々に2000バールまで増大させた。この圧力にして10分後、室の側面注入口と接続する高圧弁を閉鎖し、高圧シリンジを引き抜いてピストン流れを調節した(予混合容器および溶液受入容器のピストン位置に対するシリンジポンプのピストン位置を同等とみなすために、較正を事前に行った)。試料を収集し、570nmにおけるUV/VIS吸光度を計測して、交換後の染料の最終濃度を測定した(図22)。このデータを、クマシーブルーの標準と比較した。図13〜18に記載の溶液交換デバイスを動作させた後に発生した混合の程度を測定するために、3回の逐次実験を行った。0.0092mg/ml染料の染料濃度に対応して、0.55±0.5の吸光度値が計測された。染料溶液と純水の1:1希釈物は、混合後、染料濃度0.0075mg/ml、570nmでの吸光度0.43となるはずである(図22)。この研究は、0.75容積の脱イオン水と混合したクマシーブルー染料を含有する1.24容積の溶液により、デバイスを3回動作させた後に混合が発生したことを実証するものである。このデータは、溶液交換が加圧処理中に発生したことを実証している。
【0080】
実施例2
加圧処理中の溶液交換と一体となったニワトリ卵白リゾチームの圧力リフォールディング
この実施例は、加圧処理中の溶液交換が、リフォールディングおよびタンパク質凝集体からの天然タンパク質の回収を変更することを実証するものである。先行研究では、St.Johnらが、タンパク質凝集体の圧力誘起リフォールディングは、加圧処理中に非変性レベルのGdnHClが存在する場合に最適化され得ることを実証した。St.Johnらは、リゾチームリフォールディング回収が、2000バールで5日間インキュベーション後、0.2M GdnHClで約35%から2M GdnHClで約80%へ直線的に増大することを示した(St John、R.J.、J.F.Carpenterら(2002年)、Biotechnology Progress18(3):565〜571)。
【0081】
図23は、2000バールまで加圧する前(「非交換」試料)および加圧中(「高圧交換」)の両方にGdnHCl濃度が操作された、現在のリゾチームリフォールディング研究からの結果を示す。(大気制御も実行し、リゾチーム凝集体をリフォールディングするためには加圧処理が必要であることを実証した。)リゾチームは、高圧下、1M GdnHCl(溶液交換なし)でリフォールディングされ、約53%のリフォールディング収率をもたらした。リゾチームは、高圧下で溶液交換なしの0.5M GdnHClでもリフォールディングされ、約27%のリフォールディング収率をもたらした。加圧処理中、初期1M GdnHCl濃度、続いて溶液交換し、0.5M GdnHCl濃度まで減少してリゾチームをリフォールディングした場合、リフォールディング収率は約47%という結果になった。したがって、後半2つの実験はいずれも0.5M GdnHClの最終濃度を有し、交換されなかった溶液は交換した溶液よりもはるかに低いリフォールディング収率を有していた。1.0M GdnHClでリフォールディングした、交換されなかったリゾチーム溶液は、0.5M GdnHClで終了したいずれの溶液よりも高いリフォールディング収率を有していた。
【0082】
高圧は疎水性および静電接触を不安定化させるが、水素結合に対する影響はほとんどない。一方、GdnHClは、水素結合を不安定化させる。したがって、非変性レベルのGdnHClの追加は、リゾチームのリフォールディングを容易にするのを支援する。高圧溶液交換中、初期のより高いGdnHCl濃度(1M)は、リゾチーム凝集体を、凝集解離のためにより好ましい環境に導入する。続いて、加圧下での溶液交換が完了して、最終GdnHCl濃度を0.5Mにする。上述したように、0.5M GdnHClの「非交換」試料および溶液交換した試料の両方の最終溶液条件が同じであっても、最初により高い1Mのカオトロピック濃度から開始する能力により、溶液交換した試料中でのリフォールディングが容易になったことが分かる。1M GdnHCl「非交換」リフォールディング収率は、1Mグアニジンの存在下、2000バールにおいて、リゾチームが天然コンフォメーションで残留していることを強調している(Randolph、T.W.、M.Seefeldtら(2002年)、Biochimica Et Biophysica Acta−Protein Structure and Molecular Enzymology 1595(1−2):224〜234)。よって、リゾチームのリフォールディング収率は、高濃度のカオトロピック物質の存在によって低下するものではない。加圧処理中におけるより低いカオトロピック濃度への溶液交換は、グアニジンHClの存在により敏感なタンパク質の収率増大に、より有効となり得る。これらの結果は、高圧処理中における溶液交換の技術を使用して、タンパク質凝集体のリフォールディング収率の増大に成功する能力を示す。
【0083】
使用した実験条件は以下の通りであった。凝集したニワトリ卵白リゾチームの水性懸濁液を、pH8.0の、50mM Tris−HCl、1M GdnHCl、5mM GSSG、2mM DTTを有する1つの予混合容器に入れた。第2の予混合容器を、pH8.0の、タンパク質を含有しない、50mM tris−HCl、0M GdnHCl、5mM GSSG、2mM DTTで満たした。試料を10分間加圧し、最終圧力を2000バールとした。タンパク質を溶解増強緩衝液中に6時間保ち、この時点で、図14に示す溶液交換デバイスを使用して溶液交換を開始した。最終混合溶液(このとき受入容器内にあるもの)は、減圧前さらに6時間、2000バールのままであった。50mM Tris−HCl、0.5または1M GdnHCl、5mM GSSG、2mM DTTを含有するpH8.0の溶液中で、2000および1バールの圧力下、同一のリゾチーム凝集体をリフォールディングした対照をテストした。受入容器から試料を回収し、Jollesによって記述されたもの(Jolles,P.(1962年)「Lysozymes from Rabbit Spleen and Dog Spleen」Methods of Enzymology 5:137)と同様の方法により、リゾチーム触媒作用を計測した。
【0084】
引用を特定することにより本願において言及したすべての出版物、特許、特許出願、および公開特許出願の開示は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【0085】
理解を明瞭にする目的で、図解および実施例によって前述の発明をある程度詳細に説明したが、当業者には、若干の小改正および修正が実践されるであろうことが明らかである。したがって、本明細書および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である、マルチウェルプレート設計の上面図を示す。
【図2A】図2Aは、マルチウェル設計の、考えられる一実施形態の側面図を示す。当該ウェルの上端は、すべての空気の通気を確実にするため、部分的に「ドーム」内に覆われている。
【図2B】図2Bは、図2A中のウェルを覆う「ドーム」の側面図を示す。
【図3】図3は、図2Aおよび図2Bの「ドーム」注入口を密閉するために使用され得るシーリングマットおよびクランプアセンブリを有する96ウェルプレートの実施形態の例を示す。
【図4】図4は、本発明のマルチウェル実施形態のウェルを密閉するためにヒートシール障壁が使用される、本発明の別の実施形態を示す。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態である、一定充填容積容器を示す。
【図6】図6は、本発明の別の実施形態である、可変充填容積容器を示す。
【図7A】図7Aは、可変充填容積容器において使用するための一方向弁アセンブリの断面図を示す。図7Bは、可変充填容積容器内に設置された際の一方向弁アセンブリを示す。
【図8】図8は、高圧下で溶液を混合するのに有用な本発明の一実施形態を示す。図8Aにおいて、二次容器は閉鎖位置に示されている。図8Bにおいて、二次容器は開放位置に示されている。
【図9】図9は、高圧下で溶液を混合するのに有用な本発明の別の実施形態を示す。
【図10】図10は、高圧下で実質的に酸素不透過性でない材料を通る酸素移動を実証する実験の結果を示す。保存および加圧条件が酸素移動およびGSH(還元型グルタチオン)濃度に及ぼす影響が示されており、溶液条件は、pH8.0、4mM GSH、2mM GSSG(酸化型グルタチオン)、500ml溶液、25℃、17時間であった。
【図11】図11は、種々のポリマー(LDPE(Low Density PolyEthylene;低密度ポリエチレン、最上部の曲線)、HDPE(High density polyethylene;高密度ポリエチレン、上から2番目の曲線)、PS(PolyStyrene;ポリスチレン、上から3番目および下から2番目の曲線)、PET(PolyEthylene−Terephthalate;ポリエチレンテレフタレート、最下部の曲線))から作られたシリンジの壁を通る酸素の移動を計算したものを、周辺の酸素濃度の関数として示す。シリンジ壁について、移動に24時間、厚さ1/16インチ、長さ1.5インチ、および外径0.25インチと仮定し、ポリマー型の関数として酸素移動を計算している。
【図12】図12は、気泡を含有する試料内に充填された酸素の量を、試料中の気泡サイズの関数として示し、当該気泡サイズは、試料の容量パーセントとして計算される。曲線は、PV=nRTと仮定したものであり、この計算に適した近似である。
【図13】図13は、溶液交換デバイスの一実施形態の全体図を示す。
【図14】図14は、図13の溶液交換デバイスの横断面を示す。
【図15】図15は、溶液の混合前の、図13および図14の溶液交換デバイスの圧力室部分を示す。
【図16】図16は、溶液の混合後の、図13および図14の溶液交換デバイスの圧力室部分を示す。
【図17】図17は、図13および図14の溶液交換デバイスの、予混合容器の1つを示す。
【図18】図18は、図13および図14の溶液交換デバイスの、受入容器を示す。
【図19】図19は、本発明の可変充填容積容器の実施形態の1つにおいて有用な逆止弁アダプタを示す。
【図20】図20は、図19に示す逆止弁アダプタ等、本発明の種々の実施形態において有用な逆止弁を示す。矢印は、許容される流体流れの方向を示す。
【図20A】図20Aは、図19の逆止弁アダプタ内に設置された図20の逆止弁を示す。
【図21】図21は、液体を中に収納するために、逆止弁アダプタ(図20Aに示すように、逆止弁が設置されたもの)がデバイスに挿入された、本発明の可変充填容積の実施形態を示す。
【図22】図22は、加圧下でクマシーブルー溶液交換を実行する実験を示す。開正方形は実際の試料を表す(実線上にある右上の正方形は初期条件に対応し、エラーバーを有する右下の正方形は溶液交換後の条件に対応する)。実線は、染料の既知の濃度からの較正線を表す。
【図23】図23は、リゾチーム回収率を溶液条件の関数として示す。左から右へ:1M GdnHCl加圧処理凝集体、溶液交換なし;0.5M GdnHCl加圧処理凝集体、溶液交換なし;加圧下で1〜0.5M GdnHClまで溶液交換した凝集体;1M GdnHCl大気圧制御凝集体、溶液交換なし;0.5M GdnHCl大気圧制御凝集体、溶液交換なし;および、大気圧下で1〜0.5M GdnHClまで溶液交換した凝集体がそれぞれ表されている。すべての試料は、pH8.0、25℃で50mM Tris−HCl、5mM GSSG、2mM DTTのリフォールディング緩衝液中に置いた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料の加圧処理のための容器であって、前記液体試料を収容するための少なくとも1つのコンパートメントを備え、前記容器は可撓性材料から作製され、前記材料は最大10キロバールの多次元圧力まで破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である、容器。
【請求項2】
前記容器は、標準圧力下で可変充填容積を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記容器は、第1の端部および第2の端部を有するシリンダと、前記シリンダの前記第1の端部に挿入された可動プラグと、前記シリンダの前記第2の端部に取り付けられた可撤部と、を備える、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記可撤部はネジ込み式ネジキャップである、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記可撤部は、前記容器から切り離す、または前記容器から折り取ることができるチップである、請求項3に記載の容器。
【請求項6】
前記可動プラグは逆止弁を備える、請求項2に記載の容器。
【請求項7】
試料に高圧を与える方法であって、請求項1に記載の容器に試料を導入するステップと、前記容器に高圧を与えるステップと、前記圧力を大気圧まで低減させるステップと、を含む、方法。
【請求項8】
前記試料は、凝集タンパク質および/または変性タンパク質の溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記容器は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される、請求項1に記載の容器。
【請求項10】
前記容器は、標準圧力下で一定の充填容積を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項11】
高圧下での溶液交換のためのデバイスであって、
第1の液体試料を収容する少なくとも1つの第1の容器と、
さらなる液体試料を収容する1つ以上のさらなる容器と、を備え、前記第1の液体試料とさらなる液体試料は同じであっても異なっていてもよく、
前記容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、
前記1つ以上のさらなる容器の前記液体試料は、前記第1の容器の前記液体試料と混合または接触させることができ、一方、第1の容器およびさらなる容器ならびにそれらの各液体試料はいずれも、混合または接触の前、間、および後、高圧下に維持され得る、デバイス。
【請求項12】
前記1つ以上のさらなる容器が2つ以上のさらなる容器を備える場合、前記2つ以上のさらなる容器の内容物は、その他の2つ以上のさらなる容器とは無関係に、または前記その他の2つ以上のさらなる容器と連動して、前記第1の容器の内容物と混合され得る、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の容器は、液体試料(前記液体試料は同じであっても異なっていてもよい)を収容する予混合容器であり、
さらなる液体試料を収容する前記1つ以上のさらなる容器は、別の予混合容器であって、前記第1の液体試料とさらなる液体試料は同じであっても異なっていてもよく、
前記デバイスは、少なくとも1つのさらなる受入容器であって、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよい受入容器をさらに備え、
すべての容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、
液体試料を収容する前記予混合容器内の前記液体試料は、前記少なくとも1つの受入容器へ移動されることができ、それによって前記液体試料は互いに接触および/または混合することができ、
液体試料を収容する前記予混合容器、前記少なくとも1つの受入容器、および前記液体試料自体は、接触および/または混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る、
請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
液体試料を収容する前記予混合容器と前記少なくとも1つの受入容器との間の流体経路に介在する混合デバイスをさらに備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記混合デバイスは静的ミキサーである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1の容器は、第1の液体試料を収容するためのコンパートメントを備え、前記第1の容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製され、
1つ以上のさらなる容器であって、前記1つ以上のさらなる容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製される、1つ以上のさらなる容器、を備え、
前記1つ以上のさらなる容器は前記第1の容器によって完全に包囲され、前記1つ以上のさらなる容器はさらなる液体試料を収納し、当該液体試料は互いにおよび前記第1の液体試料と同じであっても異なっていてもよく、
前記1つ以上のさらなる容器は前記第1の容器内にある間に開けることができ、それによって前記第1の液体試料とさらなる液体試料は接触および/または混合することができる、
請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記1つ以上のさらなる容器は、閉鎖位置に維持され得るキャップを備え、前記第1の容器を開けることなく前記キャップを開けることができ、
一方、前記第1の容器、1つ以上のさらなる容器、およびすべての液体試料は、前記1つ以上のさらなる容器の前記キャップを開ける前、間、および後、高圧下に維持され得る、
請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記キャップは、前記第1の容器に収納される前記液体試料を、前記1つ以上のさらなる容器の前記液体試料と混合することもできる、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記キャップは、磁気ディスク等の磁化部分を備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第1の容器および前記1つ以上のさらなる容器は、フローループ内で接続される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項21】
逆止弁をさらに備え、それによって流体は前記ループ内を一方向にのみ流れることができる、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記少なくとも1つの第1の容器内にある前記少なくとも1つの第1の液体試料の1つ以上の溶液条件は、前記少なくとも1つの第1の容器の液体が前記少なくとも1つのさらなる容器内の液体と混合および/または接触した際に変化する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項23】
前記1つ以上の溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、還元剤濃度および酸化剤濃度の両方、カオトロピック濃度、アルギニン濃度、界面活性剤濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、前記溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または別の反応物質もしくは試薬の追加から選択される、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
高圧下にある間に溶液条件を変更する方法であって、
第1の液体試料を収容する少なくとも1つの容器を提供するステップと、
さらなる液体試料を収容する1つ以上のさらなる容器を提供するステップであって、前記少なくとも1つの第1の液体試料およびさらなる液体試料のうち少なくとも1つは残留試料と異なり、
前記容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製されるステップと、
前記1つ以上のさらなる容器の液体試料を、前記第1の容器の液体試料と混合または接触させ、それによって前記少なくとも1つの第1の液体試料の溶液条件を変更するステップであって、
一方で、混合または接触の前、間、後に高圧を維持するステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの液体試料の前記1つ以上の溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、還元剤濃度および酸化剤濃度の両方、カオトロピック濃度、アルギニン濃度、界面活性剤濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、前記溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または別の反応物質もしくは試薬の追加から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの第1の液体試料の前記1つ以上の溶液条件は、pHである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの第1の液体試料のpHは、溶液交換前は約pH9から約pH11であり、前記少なくとも1つの第1の液体試料のpHは、溶液交換が完了した後は約pH7から約pH8.9である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの第1の液体試料のpHは、段階的に変化する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
液体試料を受けるための少なくとも2つのコンパートメントを備える多重試料収容デバイスであって、高圧が与えられる際、実質的に閉鎖されたシステムとして前記コンパートメントを維持する、デバイス。
【請求項30】
a)高圧下で完全性を維持する材料から作られた本体と、
b)前記本体内に、液体試料を受けるように適合された複数の試料コンパートメントと、を備える多重試料収容デバイスであって、
前記複数の試料コンパートメント間、または任意の試料コンパートメントとその周辺物との間における液体試料の大幅な移動を許さない、デバイス。
【請求項31】
前記複数の試料コンパートメントは、少なくとも96個の試料コンパートメントを備える、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記本体は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される、請求項30に記載のデバイス。
【請求項1】
液体試料の加圧処理のための容器であって、前記液体試料を収容するための少なくとも1つのコンパートメントを備え、前記容器は可撓性材料から作製され、前記材料は最大10キロバールの多次元圧力まで破損も破裂もなく耐えることができ、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である、容器。
【請求項2】
前記容器は、標準圧力下で可変充填容積を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記容器は、第1の端部および第2の端部を有するシリンダと、前記シリンダの前記第1の端部に挿入された可動プラグと、前記シリンダの前記第2の端部に取り付けられた可撤部と、を備える、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記可撤部はネジ込み式ネジキャップである、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記可撤部は、前記容器から切り離す、または前記容器から折り取ることができるチップである、請求項3に記載の容器。
【請求項6】
前記可動プラグは逆止弁を備える、請求項2に記載の容器。
【請求項7】
試料に高圧を与える方法であって、請求項1に記載の容器に試料を導入するステップと、前記容器に高圧を与えるステップと、前記圧力を大気圧まで低減させるステップと、を含む、方法。
【請求項8】
前記試料は、凝集タンパク質および/または変性タンパク質の溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記容器は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される、請求項1に記載の容器。
【請求項10】
前記容器は、標準圧力下で一定の充填容積を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項11】
高圧下での溶液交換のためのデバイスであって、
第1の液体試料を収容する少なくとも1つの第1の容器と、
さらなる液体試料を収容する1つ以上のさらなる容器と、を備え、前記第1の液体試料とさらなる液体試料は同じであっても異なっていてもよく、
前記容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、
前記1つ以上のさらなる容器の前記液体試料は、前記第1の容器の前記液体試料と混合または接触させることができ、一方、第1の容器およびさらなる容器ならびにそれらの各液体試料はいずれも、混合または接触の前、間、および後、高圧下に維持され得る、デバイス。
【請求項12】
前記1つ以上のさらなる容器が2つ以上のさらなる容器を備える場合、前記2つ以上のさらなる容器の内容物は、その他の2つ以上のさらなる容器とは無関係に、または前記その他の2つ以上のさらなる容器と連動して、前記第1の容器の内容物と混合され得る、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の容器は、液体試料(前記液体試料は同じであっても異なっていてもよい)を収容する予混合容器であり、
さらなる液体試料を収容する前記1つ以上のさらなる容器は、別の予混合容器であって、前記第1の液体試料とさらなる液体試料は同じであっても異なっていてもよく、
前記デバイスは、少なくとも1つのさらなる受入容器であって、移動前は空であってもよいし、移動前に液体または固体組成物を収納してもよい受入容器をさらに備え、
すべての容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製され、
液体試料を収容する前記予混合容器内の前記液体試料は、前記少なくとも1つの受入容器へ移動されることができ、それによって前記液体試料は互いに接触および/または混合することができ、
液体試料を収容する前記予混合容器、前記少なくとも1つの受入容器、および前記液体試料自体は、接触および/または混合の前、間、および後、高圧下に維持され得る、
請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
液体試料を収容する前記予混合容器と前記少なくとも1つの受入容器との間の流体経路に介在する混合デバイスをさらに備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記混合デバイスは静的ミキサーである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1の容器は、第1の液体試料を収容するためのコンパートメントを備え、前記第1の容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製され、
1つ以上のさらなる容器であって、前記1つ以上のさらなる容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる可撓性材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である可撓性材料から作製される、1つ以上のさらなる容器、を備え、
前記1つ以上のさらなる容器は前記第1の容器によって完全に包囲され、前記1つ以上のさらなる容器はさらなる液体試料を収納し、当該液体試料は互いにおよび前記第1の液体試料と同じであっても異なっていてもよく、
前記1つ以上のさらなる容器は前記第1の容器内にある間に開けることができ、それによって前記第1の液体試料とさらなる液体試料は接触および/または混合することができる、
請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記1つ以上のさらなる容器は、閉鎖位置に維持され得るキャップを備え、前記第1の容器を開けることなく前記キャップを開けることができ、
一方、前記第1の容器、1つ以上のさらなる容器、およびすべての液体試料は、前記1つ以上のさらなる容器の前記キャップを開ける前、間、および後、高圧下に維持され得る、
請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記キャップは、前記第1の容器に収納される前記液体試料を、前記1つ以上のさらなる容器の前記液体試料と混合することもできる、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記キャップは、磁気ディスク等の磁化部分を備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第1の容器および前記1つ以上のさらなる容器は、フローループ内で接続される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項21】
逆止弁をさらに備え、それによって流体は前記ループ内を一方向にのみ流れることができる、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記少なくとも1つの第1の容器内にある前記少なくとも1つの第1の液体試料の1つ以上の溶液条件は、前記少なくとも1つの第1の容器の液体が前記少なくとも1つのさらなる容器内の液体と混合および/または接触した際に変化する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項23】
前記1つ以上の溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、還元剤濃度および酸化剤濃度の両方、カオトロピック濃度、アルギニン濃度、界面活性剤濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、前記溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または別の反応物質もしくは試薬の追加から選択される、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
高圧下にある間に溶液条件を変更する方法であって、
第1の液体試料を収容する少なくとも1つの容器を提供するステップと、
さらなる液体試料を収容する1つ以上のさらなる容器を提供するステップであって、前記少なくとも1つの第1の液体試料およびさらなる液体試料のうち少なくとも1つは残留試料と異なり、
前記容器は、最大5キロバールの圧力まで破損も破裂もなく耐えることができる材料であって、任意で、高圧下で酸素に対し実質的に不透過性である材料から作製されるステップと、
前記1つ以上のさらなる容器の液体試料を、前記第1の容器の液体試料と混合または接触させ、それによって前記少なくとも1つの第1の液体試料の溶液条件を変更するステップであって、
一方で、混合または接触の前、間、後に高圧を維持するステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの液体試料の前記1つ以上の溶液条件は、pH、塩濃度、還元剤濃度、酸化剤濃度、還元剤濃度および酸化剤濃度の両方、カオトロピック濃度、アルギニン濃度、界面活性剤濃度、特異的排除化合物濃度、リガンド濃度、前記溶液中に元来存在するあらゆる化合物の濃度、または別の反応物質もしくは試薬の追加から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの第1の液体試料の前記1つ以上の溶液条件は、pHである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの第1の液体試料のpHは、溶液交換前は約pH9から約pH11であり、前記少なくとも1つの第1の液体試料のpHは、溶液交換が完了した後は約pH7から約pH8.9である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの第1の液体試料のpHは、段階的に変化する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
液体試料を受けるための少なくとも2つのコンパートメントを備える多重試料収容デバイスであって、高圧が与えられる際、実質的に閉鎖されたシステムとして前記コンパートメントを維持する、デバイス。
【請求項30】
a)高圧下で完全性を維持する材料から作られた本体と、
b)前記本体内に、液体試料を受けるように適合された複数の試料コンパートメントと、を備える多重試料収容デバイスであって、
前記複数の試料コンパートメント間、または任意の試料コンパートメントとその周辺物との間における液体試料の大幅な移動を許さない、デバイス。
【請求項31】
前記複数の試料コンパートメントは、少なくとも96個の試料コンパートメントを備える、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記本体は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、およびポリスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる群より選択された材料から形成される、請求項30に記載のデバイス。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図20A】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図20A】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2009−519706(P2009−519706A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541438(P2008−541438)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045297
【国際公開番号】WO2007/062174
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507344520)バロフォールド, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045297
【国際公開番号】WO2007/062174
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507344520)バロフォールド, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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