説明

タンパク質キナーゼ阻害剤

本発明は、細胞増殖性疾患の治療に有用な、式(I)の化合物:


またはその製薬的に許容し得る塩を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質キナーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高度に相同なサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)CDK4およびCDK6と、サイクリンDとの組み合わせは、細胞周期のG(増殖)およびS(DNA複製)期の間で制限点Rを通る遷移の重要な調節因子である。CDK4/6は、網膜芽細胞腫タンパク質(pRb)のリン酸化反応を介してそれらの効果を発揮する。一度リン酸化されると、pRbは、S期への移行を促進する遺伝子の転写に対するその阻害効果を失う。
【0003】
一方、内因性タンパク質調整因子p16INK4または小分子阻害剤によるCDK4/6キナーゼ活性の特異的阻害は、低リン酸化pRbと、G制限点における細胞の停止を導く。G制限点の制御における主要な機構として、これらキナーゼにより制御される経路は、広範囲のヒト腫瘍において変更されるので、これら腫瘍におけるCDK4/CDK6の阻害は、細胞分裂を防止することによる治療的利点を有する。
【0004】
Pim−1は、細胞周期の進行、転写/シグナル変換経路およびアポトーシスを含む種々の生物学的機能を制御し、また、その発現は、血液学的腫瘍、前立腺腫瘍、および、経口腫瘍を含むいくつかの癌と関連している、セリン/トレオニンキナーゼである(非特許文献1)。
【0005】
キナーゼ阻害剤は、当該技術分野において公知である。特許文献1は、一連の置換2−ピリミジンアミンを開示し、また、それらをキナーゼ阻害剤、特に、キナーゼp56lck、ZAP−70およびタンパク質キナーゼCとして記載している。特許文献1は、Cdkの阻害については開示していない。
【0006】
特許文献2において開示されている、一連の2−(ピリジン−2−イルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンは、CDK4/6阻害活性を有するものとして記載されている。これらの化合物は、例えば癌および再狭窄のような細胞増殖性疾患の治療に有用であると記載されている。しかし、これらの化合物は、水溶液に溶けにくく、他の(非Cdk)キナーゼ標的において目立った阻害活性を示さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第98/11095号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/062236号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Bachmann,M.およびT.Moroy,Int.J.Biochem.Cell Biol.,2005.37(4):p.726−30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
癌等の細胞増殖性疾患の治療に用いられ得るCDK4/6阻害剤を提供する必要性が依然としてある。本発明は、CDK4/6阻害剤を提供する。本発明の特定の化合物は、当該技術分野に公知の特定の化合物よりも有効なCDK4/6阻害剤である。
【0010】
加えて、他のCdkと比較してCDK4/6に対して選択的であるので、薬理学的に関連する濃度にて存在する場合において特定のG停止をもたらし得る、CDK4/6阻害剤を提供する必要性がある。本発明は、薬理学的に関連する濃度にて存在する場合において特定のG停止をもたらし得るCDK4/6阻害剤を提供する。
【0011】
また、改善された水溶液中の溶解性を有するCDK4/6阻害剤を提供する必要性がある。本発明の特定の化合物は、当該技術分野の特定の化合物と比較して改善された水溶液中の溶解性を有する。
【0012】
さらに、改善された脳組織への分布を有するので、脳(例えば、原発性脳腫瘍および転移性脳腫瘍)内で生じる疾患を処置するために使用され得る、CDK4/6阻害剤を提供する必要性がある。本発明の特定の化合物は、改善された脳組織への分布を有する。
【0013】
また、良好な薬物速度論的特性(例えば、経口利用可能性)を有するCDK4/6阻害剤を提供する必要性がある。本発明の特定の化合物は、当該技術分野において公知の特定の化合物と比較した場合に改善された経口利用可能性を有する。
【0014】
加えて、他の非Cdkキナーゼ(例えば、Pim−1キナーゼ)における二次的な阻害活性を有するキナーゼ阻害剤を提供する必要性がある。本発明の特定の化合物は、二重CDK4/6およびPim−1キナーゼ阻害活性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、式(I)の化合物:
【化1】

(式中、
R1は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルまたはシクロプロピル−メチルであり;
R2およびR3は、Hまたはフッ素であり、R2またはR3のうち少なくとも1つは、フッ素であり;
R4は、HまたはCHであり;
R5は、C〜Cアルキルまたは−NR6R7であり、式中、R6およびR7は、C〜Cアルキルであり;
Qは、CH、O、Sまたは直接結合であり;
WおよびYは、CまたはNであり、ここで、WまたはYのうち少なくとも1つは、Nであり、QがOまたはSである場合、WはCである)
またはその製薬的に許容し得る塩を提供する。
【0016】
本発明は、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩、および、製薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬製剤を提供する。
【0017】
本発明は、治療における使用のための本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩を提供する。
【0018】
本発明は、癌の処置における使用のための、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩を提供する。具体的には、これらの癌は、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)、前立腺癌、膠芽腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、慢性骨髄性白血病(CML)および急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される。
【0019】
この発明は、さらに、有効量の本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩を、癌の処置を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における結腸直腸癌、乳癌、肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)、前立腺癌、膠芽腫、マントル細胞リンパ腫、慢性骨髄性白血病および急性骨髄性白血病からなる群より選択される癌を処置する方法を提供する。
【0020】
加えて、この発明は、癌の治療のための薬剤の製造のための、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩の使用を提供する。具体的には、これらの癌は、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)、前立腺癌、膠芽腫、マントル細胞リンパ腫、慢性骨髄性白血病および急性骨髄性白血病からなる群より選択される。
【0021】
さらに、この発明は、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩、および、製薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、治療に使用するための医薬製剤を提供する。本発明はまた、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩、および、製薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)、前立腺癌、膠芽腫、マントル細胞リンパ腫、慢性骨髄性白血病および急性骨髄性白血病を処置するための医薬製剤を提供する。
【0022】
上述の式において使用された一般的な化学用語は、それらの一般的な意味を有する。例えば、用語「C〜Cアルキル」は、3から5個の炭素原子の直鎖または分岐鎖である一価の飽和脂肪族鎖を意味し、限定されないが、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルを含む。
【0023】
用語「C〜Cシクロアルキル」は、3から5個の炭素原子を含有する飽和炭素環系を意味する。
【0024】
ここで、ほとんどまたはすべての本発明の化合物が塩を形成可能であることを当業者は理解するだろう。本発明の化合物は、アミンであり、したがって、多数の無機酸および有機酸のいずれかと反応して、製薬的に許容し得る酸付加塩を形成する。このような製薬的に許容し得る酸付加塩、および、それらを調製するための一般的な方法は、当該技術分野において周知である。例えば、以下の文献を参照のこと。P.Stahlら,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002);L.D.Bighley,S.M.Berge,D.C.Monkhouse,「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」.Eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,Vol.13,Marcel Dekker,Inc.,New York,Basel,Hong Kong 1995,pp.453−499;S.M.Bergeら,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol 66,No.1,1977年,1月。塩酸塩およびメシラート塩が好ましい。メシラート塩が特に好ましい。
【0025】
好ましくは、本発明は、R1が、イソプロピル、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロプロピル−メチルである式(I)の化合物を含む。より好ましくは、R1はイソプロピルである。
【0026】
好ましくは、本発明は、R2が、フッ素であり、R3が、水素である、式(I)の化合物を含む。好ましくは、本発明は、R2が、水素であり、R3が、フッ素である、式(I)の化合物を含む。最も好ましくは、R2およびR3の両方は、フッ素である。
【0027】
好ましくは、本発明は、R4が、水素である、式(I)の化合物を含む。代替的に、R4は、好ましくはメチルである。最も好ましくは、R4は水素である。
【0028】
好ましくは、本発明は、R5が、C〜Cアルキルまたは−NR6R7であり、R6およびR7が、C〜Cアルキルである、式(I)の化合物を含む。より好ましくは、R6およびR7は、エチルである。より好ましくは、R5は、C〜Cアルキルである。最も好ましくは、R5は、エチルである。
【0029】
好ましくは、本発明は、Qが、CHまたは直接結合である、式(I)の化合物を含む。最も好ましくは、QはCHである。
【0030】
好ましくは、本発明は、Yが、Nである、式(I)の化合物を含む。
【0031】
好ましくは、本発明は、Wが、Nである、式(I)の化合物を含む。
【0032】
好ましくは、本発明は、WおよびYの両方が、Nである、式(I)の化合物を含む。
【0033】
本発明の好ましい化合物は、下式の化合物:
【化2】

(式中、
R1は、イソプロピル、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロプロピル−メチルであり;
R4は、HまたはCHであり;
R5は、C〜Cアルキルであり;
Qは、CH、Oまたは直接結合であり;
Wは、CまたはNであり、QがOの場合、WはCである)
または、その製薬的に許容し得る塩を含む。
【0034】
特に好ましい化合物は、本願明細書において例示される化合物またはその製薬的に許容し得る塩である。さらに特に好ましい化合物は、化合物[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミン、またはその製薬的に許容し得る塩である。[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンは、代替的に、2−ピリミジンアミン、N−[5−[(4−エチル−1−ピペラジニル)メチル]−2−ピリジニル]−5−フルオロ−4−[4−フルオロ−2−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ベンズイミダゾール−6−イル]と命名されてもよい。
【0035】
非常に好ましい化合物は、21.29(2θ±0.1°)におけるピーク、ならびに、11.54、10.91、および12.13(2θ±0.1°)を含む群から任意に選択される1つ以上のピーク、を含むX線粉末回折パターン(CuKα放射線、λ=1.54056Å)により特徴付けられる、[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶である。[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶は、さらに、112.7、127.3および129.4における化学シフトピークν(F1)[ppm]を有する13C NMRスペクトルによりさらに特徴付けられ得る。
【0036】
本発明の化合物は、CDK4およびCDK6の特定の阻害剤であるので、異常な細胞増殖により特徴付けられる病気または疾患の治療に有用である。具体的には、本発明の化合物は、癌の治療に有用である。
【0037】
CDK4およびCDK6は、pRbのリン酸化反応を介する細胞周期に対するそれらの作用を調節する。本発明の化合物は、CDK4/6活性の有効な阻害剤であるので、pRbリン酸化反応は、あらゆる癌のタイプにおける細胞増殖(したがって、腫瘍成長)を阻害することが期待される。ここで、この細胞は、増殖型であり、機能的インタクトRb1遺伝子(これはpRbをコードする)を含む。したがって、本発明の化合物は、哺乳動物における、pRb癌、例えば、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病の治療(Fry,D.W.ら,Mol.Cancer Ther.(2004),3(11),1427)、マントル細胞リンパ腫の治療(Marzec,M.ら,Blood(2006),108(5),1744)、卵巣癌の治療(Kim,T.M.ら,Cancer Research(1994),54,605)、膵臓癌の治療(Schutte,M.ら,Cancer Research(1997),57,3126)、悪性黒色種および転移性悪性黒色種の治療(Maelandsmo,G.M.ら,British Journal of Cancer(1996),73,909)において有用である。本発明の化合物はまた、哺乳動物における、横紋筋肉種の治療(Saab,R.ら,Mol.Cancer Ther.(2006),5(5),1299)および多発性骨髄種の治療(Baughn,L.B.ら,Cancer Res.(2006),66(15),7661)に有用であると期待される。治療される哺乳動物は、ヒトであることが好ましい。
【0038】
加えて、好ましい本発明の化合物は、改善された脳組織への分布を有する有利な特性を示す。例えば、ラットモデルに投与される場合は、実施例16の化合物の脳:血漿曝露比(曲線下面積(AUC)または最大血漿濃度および脳濃度(Cmax)を用いて決定される、表6cを参照)は、およそ1であり、これは、実施例16の化合物が脳へ良好に分布していることを示している。一方で、本発明者らにより、国際公開第03/062236号からの好ましい化合物、(6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン)が、0.17(AUC)および0.1(Cmax)の脳:血漿分布比を示すことが決定されている。これは、この化合物がこのモデルにおいて脳組織内に比較的不十分に分布していることを示している。したがって、好ましい本発明の化合物は、脳に侵入可能であるので、原発性および転移性脳腫瘍(ここで、細胞は、増殖型であり、機能的インタクトRb1遺伝子を含む)の治療において有用である。このようなpRb脳腫瘍の例としては、膠芽腫ならびに髄芽種および星状細胞腫が挙げられる(Lee,W.−H.ら,Science(1987),235,1394)。テモゾロマイドは、黒色種、乳癌およびNSCLCからの脳転移を含む(Siena,S.ら,(2009)Annals of Oncology,doi:10.1093/annonc/mdp343)、膠芽腫および星状細胞腫(Friedman,H.S.ら(2000),Clin.Cancer Res.6(7):2585−97)を含む脳腫瘍の治療に使用される、細胞毒性DNAアルキル化剤である。テモゾロマイドは、化学修飾/損傷を起こすDNAと相互作用する(Marchesi,F.ら,(2007),Pharmacol.Res.56(4):275−87)。本発明の化合物は、原発性および転移性pRb脳腫瘍(例えば、膠芽腫および星状細胞腫)の治療のために、テモゾロマイドと組み合わせて使用され得る。ここで、このような転移は、例えば、黒色種、乳癌またはNSCLCから生じるものである。
【0039】
抗腫瘍活性を示すヌクレオシド類似体であるゲムシタビンHClは、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)であり、2’,2’−ジフルオロ−2’−デオキシシチジン一塩酸塩、または、1−(4−アミノ−2−オキソ−1H−ピリミジン−1−イル)−2−デソキシ−2’,2’−ジフルオロリボースとしても知られている。ゲムシタビンHClは、米国特許第5,464,826号に記載されている。以下に構造式を示す。
【化3】

【0040】
ゲムシタビンHClは、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療に有効であり(Sandler,A.およびEttinger,D.S.,(1999),The Oncologist,4,241)、膵臓癌の治療に有効であり(Pino,S.M.ら,(2004),Current Gastroenterology Reports,6,119)、卵巣癌の治療に有効であり(Pfisterer,J.ら,(2006),Journal of Clinical Oncology,24(29),4699)、および転移性乳癌の治療に有効である(Chan,S.ら,(2009),Journal of Clinical Oncology,27(11),1753)。本発明の化合物は、NSCLC、膵臓癌、卵巣癌および転移性乳癌の治療のために、ゲムシタビンHClと組み合わせて使用され得る。
【0041】
本発明の化合物は、有効量の本発明の化合物を、癌の治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における癌、具体的には、上述した癌を治療する方法において使用され得る。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、結腸直腸癌、マントル細胞リンパ腫、乳癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌、特に、NSCLCからなる群より選択される癌を治療する方法において使用され得る。別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、結腸直腸癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌からなる群より選択される癌を治療する方法において使用され得る。別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、治療有効量の本発明の化合物およびテモゾロマイドの組み合わせを、癌の治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における膠芽腫または星状細胞腫を治療する方法において使用され得る。別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、治療有効量の本発明の化合物およびゲムシタビンHClの組み合わせを、癌の治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物におけるNSCLC、膵臓癌、卵巣癌または転移性乳癌を治療する方法において使用され得る。
【0042】
本発明の化合物は、癌、具体的には、上述した癌の治療のために使用され得る。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、結腸直腸癌、マントル細胞リンパ腫、乳癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌、特に、NSCLCからなる群より選択される癌の治療のために使用され得る。別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、結腸直腸癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌からなる群より選択される癌の治療のために使用され得る。別の好ましい実施形態において、本発明は、膠芽腫または星状細胞腫の治療において、テモゾロマイドと同時、別個、または、連続的に組み合わせて使用するための、本発明の化合物を提供する。別の好ましい実施形態において、本発明は、NSCLC、膵臓癌、卵巣癌または転移性乳癌の治療において、ゲムシタビンHClと同時、別個、または、連続的に組み合わせて使用するための、本発明の化合物を提供する。
【0043】
さらに、本発明の化合物は、癌、具体的には、上述した癌の治療のための薬剤の製造において使用され得る。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、結腸直腸癌、マントル細胞リンパ腫、乳癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌、特に、NSCLCからなる群より選択される癌の治療のための薬剤の製造において使用され得る。別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、結腸直腸癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌からなる群より選択される癌の治療のための薬剤の製造において使用され得る。別の好ましい実施形態において、本発明は、膠芽腫または星状細胞腫の治療のための薬剤の製造における、本発明の化合物の使用を提供する。ここで、この薬剤はまた、テモゾロマイドを含むか、あるいは、テモゾロマイドと同時か、別個か、または、連続して投与され得る。別の好ましい実施形態において、本発明は、NSCLC、膵臓癌、卵巣癌または転移性乳癌の治療のための薬剤の製造における、本発明の化合物の使用を提供する。ここで、この薬剤はまた、ゲムシタビンHClを含むか、あるいは、ゲムシタビンHClと同時か、別個か、または、連続して投与され得る。
【0044】
癌、具体的には、上述した癌を治療するための、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩とともに製薬的に許容し得る担体を含む、医薬製剤もまた提供される。好ましい実施形態において、結腸直腸癌、マントル細胞リンパ腫、乳癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌、特に、NSCLCからなる群より選択される癌を治療するための、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩とともに製薬的に許容し得る担体を含む、医薬製剤もまた提供される。好ましい実施形態において、結腸直腸癌、膠芽腫、急性骨髄性白血病および肺癌からなる群より選択される癌を治療するための、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩とともに製薬的に許容し得る担体を含む、医薬製剤もまた提供される。別の好ましい実施形態において、本発明は、膠芽腫または星状細胞腫を治療するための、本発明の化合物およびテモゾロマイドとともに製薬的に許容し得る担体を含む、医薬製剤を提供する。別の好ましい実施形態において、本発明は、NSCLC、膵臓癌、卵巣癌または転移性乳癌を治療するための、本発明の化合物およびゲムシタビンHClとともに製薬的に許容し得る担体を含む、医薬製剤を提供する。
【0045】
本発明はまた、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩およびテモゾロマイドとともに、製薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬製剤を提供する。
【0046】
本発明はまた、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩およびゲムシタビンHClとともに、製薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬製剤を提供する。
【0047】
本発明は、さらに、本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩とともに、製薬的に許容し得る担体および任意の他の治療成分を含む、医薬製剤を提供する。
【0048】
さらに、好ましい例示の化合物はまた、Pim−1の阻害剤である。上述したように、Pim−1は、細胞周期の進行、転写/シグナル変換経路およびアポトーシスを含む種々の生物学的機能の制御に関与するセリン/トレオニンキナーゼであり、また、その発現は、いくつかの癌と関連している。具体的には、小分子阻害剤K00135によるPim−1の阻害は、ヒトの急性白血病細胞集団の生存およびクローン性増殖を弱めることが示されている(Pogacic,V.ら,Cancer Res.(2007).67(14):p.6916−24)。加えて、Pim−1は、バルーン損傷ラットの頚動脈の内膜新生、ならびに、内膜肥厚を示すヒトの胸部大動脈および冠状動脈において発現されることが示されている。さらに、Pim−1機能の特定の阻害は、バルーン損傷後の内膜新生形成およびまた、培養血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖の両方を顕著に抑制した。これは、Pim−1がこのような細胞の増殖において重要な役割を担うことを示唆している。VSMCの増殖は、血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症および再狭窄)の原因に関わっており、このため、Pim−1の阻害は、VSMCの増殖を抑制するので、血管閉塞性疾患の治療に有用であると期待されている(Katakami Nら,JBC(2004),279(52),54742−54749)。
【0049】
したがって、好ましい本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩は、有効量の本発明の化合物を、癌の治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症または再狭窄)を治療する方法において使用され得る。好ましい本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩は、血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症または再狭窄)の治療において使用され得る。さらに、好ましい本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩は、血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症または再狭窄)の治療のための薬剤の製造において使用され得る。また、好ましい本発明の化合物またはその製薬的に許容し得る塩を含む、血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症または再狭窄)を治療する医薬製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本願明細書において、「h」は、時間を意味する。「min」は、分を意味する。「Cdk」は、サイクリン依存性キナーゼを意味する。「pRb」は、網膜芽細胞腫タンパク質を意味する。「MCL」は、マントル細胞リンパ腫を意味する。「AML」は、急性骨髄性白血病を意味する。「CML」は、慢性骨髄性白血病を意味する。「Boc」は、N−tert−ブトキシカルボニルを意味する。「EA」は、酢酸エチルを意味する。「DCM」は、ジクロロメタンを意味する。「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを意味する。「DMA」は、ジメチルアセトアミドを意味する。「THF」は、テトラヒドロフランを意味する。「MtBE」は、メチルtert−ブチルエーテルを意味する。「TEA」は、トリエチルアミンを意味する。「FBS」は、ウシ胎仔血清を意味する。「PBS」は、リン酸緩衝生理食塩水を意味する。「BSA」は、ウシ血清アルブミンを意味する。「RT」は、室温を意味する。「mpk」は、キログラムあたりのミリグラムを意味する。「po」は、口から(経口)を意味する。「qd」は、1日1回の投与を意味する。「HPLC」は、高圧液体クロマトグラフィーを意味する。「q2d」は、2日ごとの単回投与を意味する。「q2dx10」は、2日ごとの単回投与を10回すること意味する。「VSMC」は、血管平滑筋細胞を意味する。「XRD」は、X線回折を意味する。
【0051】
式(I)の化合物は、以下に示す当業者に公知の技術および手順により調製され得る。より具体的には、式(I)の化合物は、以下に示すスキーム、方法、および実施例に記載されるように調製され得る。以下のスキームにおける個々の工程は、式(I)の化合物を提供するために変更され得ることが当業者に理解される。試薬および出発物質は、当業者にとって容易に取得可能である。すべての置換物は、特に指定されない限り、上記に定義したとおりである。
【0052】
以下の調製例および実施例における化合物名は、ChemDraw(登録商標)Ultra5.0を用いて生成される。
【0053】
スキーム
式(I)の化合物の合成を、以下の調製例と、実施例およびスキームの両方において例示する。ここで、R、R、R、R、R、Q、W、およびYは、上記したように定義される。
【0054】
スキーム1
式(I)の化合物を、以下のスキーム1に示すようなパラジウム(0)カップリング反応により調製する。
【化4】

【0055】
スキーム1の上部の反応において、Z=Rの場合、ピリミジニル−ベンズイミダゾール塩化物(A)を、パラジウム触媒カップリング反応にてピリジニルアミン(B)と反応させて、直接式(I)の化合物を形成する。
【0056】
スキーム1の下部の反応において、Y−ZがN−tert−ブトキシカルボニル(Boc)の場合、ピリミジニルハロゲン化物(A)をまた、ピリジニルアミン(B)とカップリングさせるが、Boc基を強酸で除去して、遊離アミン(C)を生成する。最終的に、アミン(C)を、還元条件下でアルキル化して、式(I)の化合物を生成する。
【0057】
スキーム2
ピリミジニル−ベンズイミダゾール(A)の調製例
【化5】

【0058】
ピリミジニル−ベンズイミダゾール(A)を、市販のピリミジニル二塩化物(D)およびベンズイミダゾールボロン酸(E)のパラジウム(II)触媒カップリング反応により調製する。
【0059】
スキーム3
ベンズイミダゾールボロン酸(E)の調製例
【化6】

【0060】
ベンズイミダゾールボロン酸(E)を、ビス(ピナコラト)ジボロン酸を用いて、ベンズイミダゾール(H)中で臭化物のPd(II)触媒ボロニル化を介して調製する。次いで、ベンズイミダゾール(H)を、カリウムt−ブトキシドを用いるアミジン(F)の環化、または、オルト酢酸トリエチル/酢酸を用いるベンゼンジアミン(G)の濃縮により調製する。
【0061】
アミジン(F)を、塩化ホスホリルの存在下でアミンR1−NHのモノ−アセトアミド誘導体で4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニルアミンを濃縮することによる、当業者に公知の有機合成により調製する。ベンゼンジアミン(G)を、アミンR1−NHによる2,4−ジブロモ−ニトロベンゼン中の2箇所の臭素の置換と、その後のニトロ基のアミン基への還元による、当業者に公知の有機合成により、2段階で調製する。
【0062】
スキーム4
ピリジニルアミン(B)の調製例(ここで、Qは、SまたはOであり、Wは、Cである)
【化7】

【0063】
ピリジニルアミン(B)の合成(ここで、Qは、SまたはOであり、Wは、Cである)を、市販のチオールまたはアルコール(J)によるピリジン(I)中の5−ハロゲン化物の置換により達成する。ニトロピリジン(I)が必要な場合、置換生成物について、さらにニトロ還元工程を行って、(B)を生成する。化合物(I)がこれらのスキームを通して汎用的な試薬であるが、いくつかはピリジルアミンやニトロピリジンのように市販のものであることが理解されるべきである。とはいえ、市販の(I)は、本願明細書および以下に記載した順序について当該技術分野において公知のアミン酸化またはニトロ基還元反応により転換可能である。
【0064】
スキーム5
ピリジニルアミン(B)の調製例(ここで、Qは、CHである)
【化8】

【0065】
ピリジニルアミン(B)の合成(ここで、Qは、CHである)を、以下の2つの方法により達成する。(1)市販のカルバルデヒド(K)について、遊離アミン(L)を用いる還元的アミノ化を行い、その後、リチウム1,1,1,3,3,3−ヘキサメチル−ジシラザンまたは液体アンモニアおよび酸化第一銅を用いるPd(0)触媒アミノ化によるピリジン臭化物の置換を行う。(2)市販の1−ピペリジンカルボン酸、4−メチレン−,1,1−ジメチルエチルエステル(M)について、ヒドロホウ素化を行い、その後、ピリジルアミン(I)を用いるPd(II)カップリングを行う。
【0066】
スキーム6
ピリジニルアミン(B)の調製例(ここで、Qは、直接結合である)
【化9】

【0067】
ピリジニルアミン(B)の合成(ここで、Qは、直接結合である)を、以下の2つの方法により達成する。(1)市販の1(2H)−ピリジンカルボン酸,3,6−ジヒドロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−,1,1−ジメチルエチルエステル(N)について、ニトロピリジン(I)を用いるパラジウム(II)カップリングを行い、その後、ニトロ基および二重結合の両方の還元を行う。(2)ニトロピリジン(I)中の臭化物を、遊離アミン(L)で置換して、その後、ニトロ基の還元を行う。
【0068】
調製例1
4−(6−アミノ−ピリジン−3−イルスルファニル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
乾燥トルエン(6.06mL)を、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン(76.52mg)、ヨウ化銅(I)(69.27mg)、ナトリウムtert−ブトキシド(475.59mg)、4−メルカプト−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(583.5mg)、マグネシウム(49.10mg)および2−アミノ−5−ヨードピリジン(550mg)の混合物に加える。超音波を用いて混合物中で窒素を泡立て、密閉したチューブ中で24時間110℃にて懸濁液を攪拌する。冷却し、セライトで濾過する。トルエンで洗浄し、真空下で溶媒を除去する。ヘキサン/EA(1/1)を加え、セライト/シリカゲルパッドで濾過し、ヘキサン/EA(1/1)および次いでEAで2回洗浄する。真空下で溶媒を除去する。ヘキサン/EA(50〜75%)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、630mgの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=310(M+H)
【0069】
調製例2
5−フルオロ−2−ニトロ−ピリジン
0℃にて、硫酸(46mL)に、開放空気中で25%の過酸化水素(26.98mL)を加える。5分後、冷えた濃硫酸中の2−アミノ−5−フルオロピリジン(9g)の溶液(46mL)を、添加漏斗を用いて滴下して加える。得られた暗色溶液を、浴中で一晩、0℃〜室温にて攪拌する。200mLの氷水上に注ぎ、DCMで抽出する。合わせた有機層を5%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。真空下で溶媒を除去し、DCMで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、7.5gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=143(M+H)
【0070】
対応するアミンを用いて5−フルオロ−2−ニトロ−ピリジンについて実質的に記載されているように以下の化合物を調製する。
【0071】
【表1】

【0072】
調製例4
1−イソプロピル−4−(2−メチル−6−ニトロ−ピリジン−3−イル)−ピペラジン
ジメチルスルホキシド(DMSO、20mL)中の3−ブロモ−2−メチル−6−ニトロ−ピリジン(2.46g)、1−イソプロピル−ピペラジン(2.74g)、テトラ−n−ブチルヨウ化アンモニウム(418.69mg)および炭酸カリウム(1.72g)を、65℃で一晩攪拌する。EAおよび水を加え、相を分離させ、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。メタノールおよび次いでメタノール−NH 2Nで溶出する強カチオン交換カートリッジにより精製して、2.58gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=265(M+H)
【0073】
対応するブロモ誘導体を用いて、1−イソプロピル−4−(2−メチル−6−ニトロ−ピリジン−3−イル)−ピペラジンについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0074】
【表2】

【0075】
調製例7
5−(4−イソプロピル−ピペラジン−1−イル)−6−メチル−ピリジン−2−イルアミン
(バルーン)下で一晩、メタノール(38mL)およびEA(38mL)中の1−イソプロピル−4−(2−メチル−6−ニトロ−ピリジン−3−イル)−ピペラジン(2.52g)および10%のパラジウム炭素(600mg)を攪拌する。セライトパッドで濾過し、真空下で溶媒を取り除く。DCM/メタノール(0〜10%)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、2.23gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=143(M+H)
【0076】
対応するニトロ誘導体を用いて、5−(4−イソプロピル−ピペリジン−1−イル)−6−メチル−ピリジン−2−イルアミンについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0077】
【表3】

【0078】
調製例10
4−(6−ニトロ−ピリジン−3−イルオキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
0℃にて窒素下で、カリウムtert−ブトキシド(4.84g)を、ジメチルアセトアミド(DMA、39mL)中のtert−ブチル4−ヒドロキシ−1−ピペリジン−カルボキシレート(8.76g)の水溶液に加える。1時間攪拌し、DMA(78mL)中の5−フルオロ−2−ニトロ−ピリジン(5g)の水溶液を滴下して加える。反応物を室温で一晩攪拌する。水を加え、1時間静置させる。濾過して水で洗浄する。DCM/EA(0〜15%)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、5.65gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=324(M+H)
【0079】
調製例11
4−(6−アミノ−ピリジン−3−イルオキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
10%のパラジウム炭素(0.6g)を、テトラヒドロフラン(THF)/メタノール(30/30mL/mL)の混合物中の4−(6−ニトロ−ピリジン−3−イルオキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.65g)の懸濁液に加える。一晩、2atmで、Parr装置において水素化する。セライトパッドで濾過し、DCMおよびメタノールで洗浄する。DCM/メタノール(10%)/アンモニア(1%)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、5gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=294(M+H)
【0080】
調製例12
6−アミノ−2−メチル−3’,6’−ジヒドロ−2’H−[3,4’]ビピリジニル−1’−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化10】

【0081】
1,4−ジオキサン(31.82mL)中の4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(2.46g)および5−ブロモ−6−メチル−ピリジン−2−イルアミン(1.49g)の混合物中で、5分間、窒素を泡立て、次いで、三塩基性リン酸カリウムN水和物(5.07g)、酢酸パラジウム(35.72mg)、ジシクロヘキシル−(2’,6’−ジメトキシ−ビフェニル−2−イル)−ホスファン(134.69mg])、水(7.96mL)を加え、90℃で3時間、攪拌する。DCMで希釈し、水で洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。DCM/エタノール5%/NH 0.1%で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、続いて、メタノールおよび次いでメタノール−NH2Mで溶出する強カチオン交換カートリッジ(SCX)により精製して、2.12gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=292(M+H)
【0082】
調製例13
6−アミノ−2−メチル−3’,4’,5’,6’−テトラヒドロ−2’H−[3,4’]ビピリジニル−1’−カルボン酸tert−ブチルエステル
メタノール(29.30mL)中の6−アミノ−2−メチル−3’,6’−ジヒドロ−2’H−[3,4’]ビピリジニル−1’−カルボン酸tert−ブチルエステル(2.12g)および10%湿潤のパラジウム炭素(330mg)の混合物を、H(45psi)下で、48時間攪拌する。セライトパッドで濾過し、真空下で溶媒を取り除き、2.07gの標題合物を得る。MS(ES):m/z=292(M+H)
【0083】
調製例14
6−ニトロ−3’,6’−ジヒドロ−2’H−[3,4’]ビピリジニル−1’−カルボン酸tert−ブチルエステル
水(63.39mL)中の4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(19.6g)、5−ブロモ−2−ニトロピリジン(12.87g)、2Mの炭酸ナトリウムと、1,4−ジオキサン(316.94mL)中のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(4.45g)との混合物中で、5分間、窒素を泡立て、80℃で5時間攪拌する。DCMで希釈し、水で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。DCM/EA(0〜40%)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、8.72gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=306(M+H)
【0084】
調製例15
6−アミノ−3’,4’,5’,6’−テトラヒドロ−2’H−[3,4’]ビピリジニル−1’−カルボン酸tert−ブチルエステル
6−ニトロ−3’,6’−ジヒドロ−2’H−[3,4’]ビピリジニル−1’−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.89g)をエタノール(123.80mL)に溶解する。パラジウム炭素で水素化して(H−Cube機器、70bar、50℃、1mL/min)、1.72gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=278(M+H)
【0085】
調製例16
4−(6−アミノ−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
窒素下で、5分間、4−メチレン−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.10g)を攪拌し、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(77.49mL)の0.5M THF溶液を加える。窒素下で一時間、75℃で攪拌する。冷却し、2−アミノ−5−ブロモピリジン(3.8g)、炭酸カリウム(3.87g)および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリド(538.10mg)ならびにDMF(47.83mL)および水(4.78mL)の脱気した混合物を加える。60℃で4時間、次いで、室温で一週間にわたって攪拌する。水およびEAを加える。EAを用いて水層を分離し、抽出する。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。DCM/メタノール(1%)/アンモニア(0.1%)〜DCM/メタノール(3%)/アンモニア(0.3%)で溶出する、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。EAで残留物を粉砕し、1.85gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=292(M+H)
【0086】
対応するブロモ誘導体を用いて、4−(6−アミノ−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルについて実質的に記載されているように以下の化合物を調製する。
【0087】
【表4】

【0088】
調製例18
1−(6−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−4−エチル−ピペラジン
純粋な1−エチルピペラジン(221.44mL)を、6−ブロモ−ピリジン−3−カルバルデヒド(300g)およびDCM(5000mL)の混合物に加える。次いで、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(372.09g)を分けて加え、室温で12時間、攪拌する。DCM(1000mL)および2Nの水酸化ナトリウム水溶液(1500mL)を加える。層を分離し、DCM(600mL)で水層を2回抽出する。有機層を合わせ、真空下で溶媒を取り除き、EAを加えて蒸発させ、451.3gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=285(M+H)
【0089】
対応するアミンを用いて、1−(6−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−4−エチル−ピペラジンについて実質的に記載されているように以下の化合物を調製する。
【0090】
【表5】

【0091】
調製例20
5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イルアミン
リチウム1,1,1,3,3,3−ヘキサメチル−ジシラザン(1055mL)をゆっくりと、1−(6−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−4−エチル−ピペラジン(250g)、ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(18.50g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(24.17g)およびTHF(250mL)の脱気した混合物に、50℃で加える。この混合物を一晩65℃で加熱する。37℃まで冷却し、水(500mL)を加える。真空下で溶媒の半分を取り除き、DCM(2.5L)を加える。セライトパッドで濾過し、溶媒の部分を取り除く。メタノール(300mL)およびメチルtert−ブチルエーテル(MtBE、600mL)を混合物に加え、氷浴中で冷却する。次いで、エチルエーテル(800mL)中の2Mの塩酸および塩酸(100mL)の32%水溶液中を加える。有機層を取り除き、2Mの水酸化ナトリウム水溶液(2500mL)を加える。DCMを用いて3回、水相を抽出し、真空下で溶媒を取り除く。完全に溶解するまで50℃で90mLのトルエンに溶解し、次いで、80mLのMtBEを加える。室温で一晩攪拌する。完全に沈殿させるためにさらにMtBE(100mL)を加える。固形物を濾過して乾燥させ、108.24gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=221(M+H)
【0092】
対応する2−ブロモ−ピリジン誘導体を用いて、5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イルアミンについて実質的に記載されているように以下の化合物を調製する。
【0093】
【表6】

【0094】
調製例22
2,4−ジブロモ−1−ニトロ−ベンゼン
発煙硝酸(101.40mL)を、濃硫酸(322.79mL)および水(62.39mL)中の1,3−ジブロモベンゼン(102.51mL)の溶液に、0℃にて、滴下して加える。室温まで温め、12時間攪拌する。その反応物を氷水(1500mL)に注ぐ。得られた黄色の固形物を真空下で濾過し、乾燥させ、178.46gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=281(M+H)
【0095】
調製例23
(5−ブロモ−2−ニトロ−フェニル)−シクロペンチル−アミン
シクロペンタンアミン(32mL)を、1−ブタノール(160mL)中の2,4−ジブロモ−1−ニトロ−ベンゼン(20g)の水溶液に加える。この混合物を100℃で一晩加熱する。真空下で溶媒を取り除き、水を加え、EAで抽出する。続いて有機層を、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液および次いで水で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除き、22gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=286(M+H)
【0096】
調製例24
4−ブロモ−N2−シクロペンチル−ベンゼン−1,2−ジアミン
亜ジチオン酸ナトリウム(107.47g)を、5−ブロモ−2−ニトロ−フェニル)−シクロペンチル−アミン(22g)、THF(150mL)、水(150mL)および水酸化アンモニウム(30mL)の溶液に加える。その混合物を室温で一晩攪拌する。EAで2回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除き、14.80gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=256(M+H)
【0097】
調製例25
6−ブロモ−1−シクロペンチル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール
4−ブロモ−N2−シクロペンチル−ベンゼン−1,2−ジアミン(10.6g)、トリエチルオルトアセテート(9.5ml)および酢酸(6.3mL)の混合物を100℃で2.5時間加熱する。DCMで希釈し、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液に注ぐ。硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。DCM/エタノール−10%NH(0〜3%)で溶出する、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、10.67gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=280(M+H)
【0098】
調製例26
N−イソプロピル−アセトアミド
TEA(23.58mL)を、DCM(100mL)中の2−プロパンアミン(10g)の水溶液に0℃で加える。次いで、無水酢酸(16.15mL)を慎重に滴下して加える。室温で一晩攪拌する。真空下で溶媒を取り除き、エチルエーテル(エーテル)で希釈し、固形物を濾過する。真空下で溶媒を取り除く。エーテルで油を希釈し、炭酸カリウムを加え、室温で一晩攪拌する。固形物を濾過し、真空下で溶媒を取り除き、15.62gの標題化合物を得る。NMR(CDCl3)4.06(m,1H),1.94(s,3H),1.14(d,6H)。
【0099】
対応するアミンを用いて、N−イソプロピル−アセトアミドについて実質的に記載されているように以下のアミドを調製する。
【0100】
【表7】

【0101】
調製例30
N−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニル)−N’−イソプロピル−アセトアミド
TEA(10.05mL)を、トルエン(150mL)中の4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニルアミン(10.0g)、N−イソプロピルアセトアミド(9.73g)、塩化ホスホリル(6.70mL)の混合物に加える。その混合物を、3時間、還流まで加熱する。その混合物を冷却し、真空下で溶媒を取り除く。DCMに粗製物を溶解し、数回、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、微量の酸を全て取り除く。硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除き、14gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=292(M+H)
【0102】
対応するアセトアミドを用いて、N−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニル)−N’−イソプロピル−アセトアミドについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0103】
【表8】

【0104】
調製例34
6−ブロモ−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール
カリウムtert−ブトキシド(811.43mg)を、N−メチルホルムアミド(20mL)中のN−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニル)−N’−イソプロピル−アセトアミド(2g)の水溶液に加える。混合物を100℃で2時間加熱する。室温まで冷却し、DCM(150mL)を加え、塩化ナトリウムの飽和水溶液(ブライン、300mL)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。ヘキサンを加え、数分間、超音波で振動する。固形物を濾過し、ヘキサンの添加/2回の濾過を繰返し、1.86gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=272(M+H)
【0105】
対応するアセトアミドを用いて、6−ブロモ−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾールについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0106】
【表9】

【0107】
調製例38
4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール
6−ブロモ−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール(30.0g)、ビス(ピナコラト)ジボロン(42.15g)、トリシクロヘキシルホスフィン(5.43g)、酢酸カリウム(32.58g)、およびDMSO(200mL)の混合物中で窒素を泡立てる。酢酸パラジウム(2.8g)を加え、90℃で1時間、予熱した油浴中で加熱する。EA(200mL)で希釈し、セライトパッドで濾過する。その混合物をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。ヘキサンで粉砕し、固形物を濾過し、27gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=319(M+H)
【0108】
対応する6−ブロモ−ベンゾイミダゾール誘導体を用いて、4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾールについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0109】
【表10】

【0110】
調製例43
6−(2−クロロ−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル)−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール
水(103.7mL)および1,2−ジメトキシエタン(120mL)中の2,4−ジクロロ−5−フルオロ−ピリミジン(12.7g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(4.9g)、2Mの炭酸ナトリウムの混合物中で窒素を泡立てる。80℃で予熱した油浴中で加熱し、1,2−ジメトキシエタン(200mL)中の4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール(22g)の溶液を滴下して加える。その混合物を、84℃で1時間、攪拌する。室温まで冷却し、EA(800mL)を加え、ブライン(100mL)で2回洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で溶媒を取り除く。アセトニトリルで粉砕し、14.4gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=323(M+H)
【0111】
対応するジクロロ−ピリミジンおよびボロン酸誘導体を用いて、6−(2−クロロ−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル)−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾールについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0112】
【表11】

【0113】
対応するアミンおよびクロロ−ピリミジン誘導体を用いて、以下で、[5−(4−エチル−ピペリジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0114】
【表12−1】

【表12−2】

【0115】
調製例58
[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−(5−ピペラジン−1−イルメチル−ピリジン−2−イル)−アミン
【化11】

【0116】
DCM(10mL)およびメタノール(10mL)中の4−{6−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−3−イルメチル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(150mg)の混合物に、ジオキサン(194μL)中の4Mの塩化水素を加える。10分間攪拌し、真空下で溶媒を取り除く。メタノール、次いでメタノール−NH 2Mで溶出する強カチオン交換カートリッジ(SCX)によって精製し、その後、DCM/メタノール−NH 2M(3%)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、120mgの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=479(M+H)
【0117】
[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−(5−ピペラジン−1−イルメチル−ピリジン−2−イル)−アミンについて実質的に記載されているように以下の中間体を調製する。
【0118】
【表13−1】

【表13−2】

【0119】
実施例1
[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミン
【化12】

【0120】
1,4−ジオキサン(197.06mL)中の6−(2−クロロ−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル)−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール(15.9g)、5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イルアミン(10.85g)、炭酸セシウム(32.10g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.82g)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(2.35g)の混合物中で窒素を泡立てる。その混合物を、110℃で、2時間、予熱した油浴中で加熱する。室温で冷却し、DCMで希釈し、セライトパッドで濾過する。真空下で溶媒を取り除き、DCM/メタノール(2%)、次いでDCM/メタノール−NH2M2%で溶出する、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、22.11gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=507(M+H)
【0121】
対応するアミンおよびクロロ−ピリミジン誘導体を用いて、[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンについて実質的に記載されているように以下の実施例の化合物を調製する。
【0122】
【表14】

【0123】
実施例4
[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−[5−(4−イソプロピル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミン
【化13】

【0124】
ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(299.9mg)を、[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−(5−ピペラジン−1−イルメチル−ピリジン−2−イル)−アミン(130mg)、アセトン(31.6μL)、1,2−ジクロロエタン(9mL)および酢酸(16.3μL)の混合物に加える。60℃で一時間加熱する。真空下で溶媒を取り除く。メタノール、次いでメタノール−NH2Mで溶出する、強カチオン交換カートリッジ(SCX)によって精製し、続いて、DCM/メタノール−NH2M(3%)で溶出する、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、115mgの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=521(M+H)
【0125】
対応するアミンを用いて、[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−[5−(4−イソプロピル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミンについて実質的に記載されているように以下の実施例の化合物を調製する。
【0126】
【表15】

【0127】
実施例9
[4−(3−シクロプロピル−7−フルオロ−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−5−フルオロ−ピリミジン−2−イル]−[5−(1−エチル−ピペリジン−4−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミン
【化14】

【0128】
ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(720mg)を、[4−(3−シクロプロピル−7−フルオロ−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−5−フルオロ−ピリミジン−2−イル]−(5−ピペリジン−4−イルメチル−ピリジン−2−イル)−アミン(110mg)、1,2ジクロロエタン(1.14mL)および酢酸(2709μL)の混合物に加える。60℃で1時間加熱する。真空下で溶媒を取り除く。メタノール、次いでメタノール−NH2Mで溶出する、強カチオン交換カートリッジ(SCX)によって精製し、続いて、DCM/メタノール−NH2M(3%)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、80mgの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=504(M+H)
【0129】
対応するアミンを用いて、[4−(3−シクロプロピル−7−フルオロ−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−5−フルオロ−ピリミジン−2−イル]−[5−(1−エチル−ピペリジン−4−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミンについて実質的に記載されているように以下の実施例の化合物を調製する。
【0130】
【表16−1】

【表16−2】

【0131】
実施例16
[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンメタンスルホネート
メタンスルホン酸(63.59mL)を、DCM(100mL)およびメタノール(100mL)の混合物中の[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミン(17.3g)の溶液に加える。1時間、その溶液を攪拌し、真空下で溶媒を取り除く。MtBEで粉砕し、その固形物を濾過し、20.4gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=507(M+H)
【0132】
[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンメタンスルホネートについて実質的に記載されているように以下の実施例の化合物を調製する。
【0133】
【表17−1】

【表17−2】

【0134】
実施例31
[5−(4−エチル−ピペリジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンI型結晶
102.1mgのアモルファス[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンを2mLのアセトンと混合する。沈殿した固形物を真空濾過により分離し、淡黄色のケーキを生成し、30分間、濾過装置上の適切な位置で乾燥させ、72.1mgの固形物を得る。その固形物を100℃の真空オーブンに3時間置く。
【0135】
I型の代表的なXRDピークを表1に示す。
【0136】
実施例32
[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶
208mgのアモルファス[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンを4mLのアセトンと混合する。その懸濁液を、1000rpmで攪拌しながら、60℃で2時間、スラリーにし、次いで、真空濾過により固形物を分離し、淡黄色のケーキを生成する。30分間、濾過装置上の適切な位置で乾燥させ、112mgの固形物を得る(54%収率)。80℃の真空オーブンに3時間置く。III型の代表的なXRDピークを表2に示す。このピーク位置は外部標準を用いて確かめた。
【0137】
X線粉末回折
結晶のXRDパターンを、50kVおよび40mAで作動する、CuKα源(λ=1.54056Å)およびVantec検出器を備えた、Bruker D8 Advance X線粉末回折計で得る。各試料を、2θにおいて0.02°のステップサイズおよび1ステップあたり9.0秒の走査速度で、ならびに1mmの発散および受光スリットならびに0.1mmの検出器スリットで、2θにおいて4〜40°の間で走査する。乾燥粉末を、くぼんでいるトップローディング試料ホルダーに詰め、平滑面をスライドガラスを用いて得る。結晶型回折パターンを周囲温度および相対湿度で収集する。III型結晶についてのバックグランドをピーク選択の前に除去するが、I型については、バックグランドは除去しない。
【0138】
任意の所定の結晶型に関して、回折ピークの相対強度が、結晶型および晶癖などの要因から生じる好ましい配向に起因して変化し得ることは結晶学の分野において周知である。好ましい配向の影響が存在する場合、ピーク強度は変化するが、多形体の特性ピーク位置は変化しない。例えば、The United States Pharmacopeia #23,National Formulary #18,1843−1844ページ,1995を参照のこと。さらに、任意の所定の結晶型に関して、角度ピーク位置はわずかに変化し得ることもまた、結晶学の分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度または湿度、試料の置換、または内部標準の存在もしくは非存在の変化に起因して変化し得る。この場合において、2θにおいて±0.1のピーク位置の変化は、示された結晶型の明確な同定を妨げずに、それらの電位変化を考慮に入れる。
【0139】
結晶型の確認は、(°2θの単位において)特徴的なピーク、典型的により突出したピークのいくらかの固有の組み合わせに基づいてなされ得る。従って、[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンI型結晶の調製された試料は、以下の表1に記載される回折ピーク(2θ値)を有し、特に13.09、16.31および18.82からなる群より選択されるピークのうちの1つ以上と合わせて4.51においてピークを有するので、CuKα放射線を用いてXRDパターンによって特徴付けられ;0.1°の回折角を許容する。
【0140】
表1:[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンI型結晶のX線粉末回折ピーク
【0141】
【表18】

【0142】
[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶の調製された試料は、以下の表2に記載される回折ピーク(2θ値)を有し、特に11.54、10.91および12.13におけるピークのうちの1つ以上と合わせて21.29においてピークを有するので、CuKα放射線を用いてXRDパターンによって特徴付けられ;0.1°の回折角を許容する。
【0143】
表2:[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶のX線粉末回折ピーク
【0144】
【表19】

【0145】
固体状態13C NMR
交差偏波/マジック角スピニング(CP/MAS)NMR(固体状態NMRまたはSSNMR)スペクトルは、それぞれ400.131MHzのH周波数および100.623MHzの13C周波数において作動するBruker Avance III 400の広口径NMRスペクトロメータで、Bruker 4mm二重共振プローブを用いて得られる。MASレートは、Bruker MAS−IIコントローラを用いて5または10kHzに設定し、スピニング速度は設定ポイントの2Hz内に維持する。100kHzのプロトンニューテーション周波数におけるSPINAL64デカップリングを、異核デカップリングのために使用する。スピニングサイドバンドを、5パルスの全サイドバンド抑制法(total sideband suppression)(TOSS)シーケンスにより除去する。プロトンから炭素まで磁化を移動させるためのCP接触時間を4msに設定し、93.5から46.9kHzまでの線形出力ランプを、CP効率を高めるためにHチャネルで使用する。獲得時間を34msに設定し、スペクトルを、5sのリサイクル遅延で30kHzの分光幅にわたって獲得する。試料温度を、試料のスピニングによって生じる摩擦熱を最小化するために297±1Kに調節する。13C化学シフトは、アダマンチン(δ=29.5ppm)の高磁場共鳴によってニート(液体)のテトラメチルシランのプロトンデカップリングされた13Cピークに対する外部参照(±0.05ppm)である。[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶についての化学シフトのピークリストは以下の通りである:
13C−NMR:ν(F1)(ppm)11.7,12.9,20.5,48.6,52.5,59.4,108.9,110.0,112.7,127.3,129.4,135.5,136.4,148.8,150.1,152.2,154.5,156.3。
【0146】
実施例33
[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶−経路B
【化15】

a.1−(6−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−4−エチル−ピペラジン
6−ブロモ−ピリジン−3−カルバルデヒド(8.3kg)およびDCM(186kg)の混合物に純粋な1−エチルピペラジン(5.6kg)を加える。次いで、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(10.9kg)を少しずつ加え、20〜30℃で12時間攪拌する。DCM(36kg)および2Nの水酸化ナトリウム水溶液(46kg)の混合物中で反応をクエンチする。層を分離し、水層をDCM(24×2kg)で2回抽出する。有機層を合わせ、ブライン(50×2kg)で洗浄し、真空下で溶媒を除去して、11.5kgの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=285(M+H)
【0147】
b.5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イルアミン
T≦40℃にて、1−(6−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−4−エチル−ピペラジン(14.2kg)、酸化第一銅(200g)、およびMeOH(57kg)の脱気した混合物に液体アンモニア(50.0kg)を加える。その混合物を65〜75℃にて一晩加熱する。20〜30℃まで冷却し、セライト(登録商標)パッドで濾別する。濾液を濃縮し、DCM(113kg)を加え、pHを2Nの水酸化ナトリウム(23kg)で12〜14に調整し、相を分離し、有機相をDCM(58×2kg)で洗浄し、有機層を合わせる。セライト(登録商標)で混合物を濾過し、濃縮する。残留物をトルエン(9.7kg)に溶解し、MtBE(8.3kg)の添加により結晶化させて、6.0kgの標題化合物を得る。トルエン再結晶によりさらに精製を得る。MS(ES):m/z=221(M+H)
【0148】
c.N−イソプロピル−アセトアミド
20℃未満にて、炭酸カリウム(28kg)を、酢酸エチル(108kg)中の2−プロパンアミン(12kg)の溶液に加える。混合物を5〜0℃に冷却し、約2〜3kg/hにて塩化アセチル(16.7kg)を加える。ガスクロマトグラフィーにより完了するまで攪拌する。反応を水(0.8kg)でクエンチし、反応混合物を濾過し、濃縮して、13.4kgの標題化合物を得る。NMR(CDCl)4.06(m,1H),1.94(s,3H),1.14(d,6H)。
【0149】
d.N−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニル)−N’−イソプロピル−アセトアミジン
20℃未満にて、塩化ホスホリル(16.0kg)を、トルエン(115kg)中の4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニルアミン(14.5kg)、N−イソプロピルアセトアミド(8.5kg)、TEA(10.6kg)の混合物に加える。HPLCにより完了するまで10〜20℃にて攪拌する。真空下で溶媒を除去し、MtBE(64kg)を加える。10%炭酸ナトリウム水溶液(250kg)で混合物のpHを調整する。混合物を濾過し、MtBE(11×2kg)でケーキをリンスする。相を分離し、MtBE(22×2kg)で水層を洗浄する。有機層を合わせ、濃縮し、濾過し、シクロヘキサン(0.6kg)で洗浄し、乾燥させて、17.2kgの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=292(M+H)
【0150】
e.6−ブロモ−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール
T<30℃に温度を維持しながら、カリウムtert−ブトキシド(6.9kg)を、N−メチルホルムアミド(76kg)中のN−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニル)−N’−イソプロピル−アセトアミド(16.2kg)の溶液に少しずつ加える。HPLCにより完了するまで70〜75℃にて混合物を加熱する。20〜30℃に冷却し、水(227kg)に加えることによってクエンチし、次いでMtBE(37×4kg)で抽出する。合わせた有機相をブライン(49×2kg)で洗浄し、25〜30Lに濃縮し、n−ヘキサン(64kg)を加え、スラリーを濾過して、11kgの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=272(M+H)
【0151】
DCMに粗化合物を溶解することによりさらに精製を得て、シリカゲルおよびセライト(登録商標)パッドで濾過し、その後、MtBe/ヘキサン混合物から分離する。
【0152】
f.4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール
6−ブロモ−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール(600g)、ビス(ピナコラト)ジボロン(843g)、トリシクロヘキシルホスフィン(106g)、酢酸カリウム(652g)、およびDMSO(3.6L)の混合物中で窒素を泡立てる。酢酸パラジウム(49g)を加え、HPLCにより完了するまで100℃で加熱する。反応混合物を冷却し、水(18L)で希釈し、次いで濾過し、固体を分離する。1,2−ジメトキシエタン(450mL)に粗物質を溶解し、セライト(登録商標)で濾過する。その濾液をパートgで直接使用する。
【0153】
g.6−(2−クロロ−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル)−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール
水(1.7L)中の2,4−ジクロロ−5−フルオロ−ピリミジン(517g)、炭酸ナトリウム(586g)と、1,2−ジメトキシエタン(3.4L)との混合物中で窒素を泡立てる。ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(4.9g)を加え、80±3℃で反応物を加熱し、パートfからの1,2−ジメトキシエタン中の4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾールの溶液(5.1L)を滴下して加える。HPLCにより完了するまで80±3℃で混合物を攪拌する。室温まで冷却し、冷水(2.1L、5℃)で希釈する。1時間攪拌し、次いで濾過により粗固体を分離する。IPAで粉砕することにより固体のさらなる精製を達成して、472gの標題化合物を得る。MS(ES):m/z=323(M+H)
【0154】
h.[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶
【化16】

t−アミルアルコール(2.3L)中の6−(2−クロロ−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル)−4−フルオロ−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール(465g)、5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イルアミン(321g)、炭酸カリウム(403g)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(17g)の混合物中で窒素を泡立てる。HPLCにより完了するまで、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(13.2g)および混合物を100±5℃で加熱する。室温まで冷却し、DCM(1.2L)で希釈し、セライト(登録商標)パッドで濾過する。濾液を4MのHCl(2.3L×2)で抽出する。水層を合わせ、炭(32g)で攪拌する。セライト(登録商標)で濾過し、DCM(1.7L)を加え、NaOH(28%水溶液、1.5L)でpHを調整する。有機層を回収し、DCM(1.7L)で水層を洗浄する。有機層を合わせ、ブライン(1L)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。固体により支持されたSi−チオール処理を使用して、残存パラジウムを除去し、溶媒をアセトンに交換する。スラリーを濾過し、乾燥させて、605gの粗生成物をI型として得る。605gのI型と4.3Lの乾燥アセトンとを混合する。少なくとも18時間、56〜57℃(還流)で、次いで4時間、周囲温度で懸濁物をスラリーにする。真空濾過により固体を分離し、淡黄色のケーキを生成する。570gの一定重量が得られるまで、35℃で真空オーブン中にて固体を乾燥させる。物質を、XRPDにより、標題化合物のIII型であることを確認する。MS(ES+):m/z=507(M+H)+。
【0155】
以下のアッセイの結果により、本願明細書に例示される化合物が、特異的CDK4/6阻害剤として、および抗癌剤として有用であるという証拠が実証される。本願明細書中で使用される場合、「IC50」とは、薬剤で起こり得る50%の最大阻害反応を生じるその薬剤の濃度を意味し、「EC50」とは、薬剤で起こり得る50%の最大反応を生じるその薬剤の濃度を意味する。
【0156】
CDK4阻害アッセイ
本発明に含まれる化合物がCDK4キナーゼに対する親和性を示すことを実証するために、CDK4アッセイを実施する。機能的アッセイにより、本発明の化合物がCDK4キナーゼ活性を阻害する能力を示すという支持が提供される。以下のアッセイに使用される全てのリガンド、放射性標識、溶媒、および試薬は、商業的供給源から容易に利用可能であるか、または当業者により容易に合成され得る。
【0157】
20%DMSO中の10μLの試験化合物、20μLのアデノシン5’−三リン酸(ATP)およびC末端網膜芽細胞腫フラグメント(CTRF)(Upstate カタログ番号12−439)溶液、および10μLの酵素溶液を96ウェルプレート中で混合する。ATPおよびCRTF溶液を、68mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES) pH7.4、6.72mMのMgCl、6.72mMのジチオスレイトール(DTT)、および0.013%のTRITON(商標)X−100のキナーゼバッファーに希釈した40μMのATP、0.16μCi[33P]−ATPおよび1μMのCTRFの混合物から調製する。酵素溶液を、上記のキナーゼバッファーに希釈した8ngのCDK4酵素(Proqinase カタログ番号0142−0373−1)から調製する。試験化合物を、20%のDMSO中で1:3に連続希釈して、20μMの開始濃度で10点曲線を作成する。試験化合物を加えずに20%のDMSOバッファーのみをコントロールとして使用し、500mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を使用して、酵素活性の非存在下でバックグランド33Pのレベルを決定する。試薬を混合し、20℃にて90分間インキュベートする。反応を、80μLの10%(v/v)HPOを加えることによって停止し、ガラス繊維フィルタープレート(Millipore、MAFC N0B 50)上に物質が沈殿する。ウェルを、0.5%のHPOで4回洗浄し、組み込んだ放射線を、マイクロプレートシンチレーションカウンタ(Microbeta Trilux,Wallac)で決定する。
【0158】
高コントロールと低コントロールの中央値の間の差を100%活性として得る。4パラメーターロジスティック曲線フィットを使用して、ActivityBase(商標)ソフトウェア(IDBS,Alameda CA)を用いてIC50値を生成する。例示した化合物の全てのメシル酸塩は、上記のアッセイにおいて10nM未満のIC50を示す。実施例25の化合物は上記のアッセイにおいて3nMのIC50を有する。これにより、例示した化合物のメシレート塩がCDK4の有効な阻害剤であることが実証される。
【0159】
CDK6阻害アッセイ
20%のDMSO、20μLのATPおよびCTRF(Upstate カタログ番号12−439)溶液、および10μLの酵素溶液中の10μLの試験化合物を96ウェルプレート中で混合する。ATPおよびCRTF溶液を調製して、68mMのHEPES pH7.4、6.72mMのMgCl、2.64mMのDTT、および0.004%のTRITON(商標)X−100のキナーゼバッファーに希釈した100μMのATP、0.5μのCi[33P]−ATPおよび0.8μMのCTRFの最終濃度を得る。酵素溶液を、CDK4阻害アッセイにおいて上記のキナーゼバッファーに希釈した1.7ng/μLのCDK6酵素(Proqinase カタログ番号7533)の最終濃度に調製する。試験化合物を20%のDMSO中で1:3に連続希釈して、20μMの開始濃度にて10点曲線を作成する。試験化合物を加えずに20%のDMSOバッファーのみをコントロールとして使用し、500mMのEDTAを使用して、酵素活性の非存在下でバックグランド33Pのレベルを決定する。試薬を混合し、20℃にて90分間インキュベートする。80μLの10%(v/v)HPOの添加により反応を停止し、ガラス繊維フィルタープレート(Millipore,MAFC N0B 50)上に物質が沈殿する。ウェルを0.5%のHPOで4回洗浄し、組み込んだ放射線をマイクロプレートシンチレーションカウンタ(Microbeta Trilux,Wallac)で決定する。
【0160】
CDK4と同様の方法でデータを分析する。好ましい例示した化合物は、上記のアッセイにおいて30nM未満のIC50を示す。実施例19の化合物は、上記のアッセイにおいて5nMのIC50を有する。これにより、好ましい例示した化合物がCDK6の有効な阻害剤であることが実証される。
【0161】
PIM1キナーゼの阻害についてのアッセイ
Pim−1(ヒト、0.46nMの最終濃度)を、8mMのMOPS pH7.0、0.2mMのEDTA、100μMの適切な基質ペプチド(Chen,L.S.ら(2009)Blood,DOI:10.1182/blood−2009−03−212852に記載されているPim−1キナーゼ阻害アッセイプロトコルを参照のこと)、10mMのMgAcetateおよび[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、必要な場合濃縮)とインキュベートする。反応をMgATPミックスの添加により開始し、次いで室温で40分間インキュベートする。反応を、3%のリン酸溶液の添加により停止する。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上で停止し、75mMのリン酸中で5分間3回、メタノールで1回、洗浄し、その後、乾燥させ、シンチレーション計数する。化合物阻害試験のために、100%のDMSO中の10mMのストックとして与えられる化合物を、100%のDMSO中で1:10に希釈して、曲線の最上部の濃度の50倍ストックを得る。次いで、50倍ストックを100%のDMSO中で1:3に連続希釈して、10点濃度−反応曲線を作成し、反応混合物中で1:50(2%の最終DMSO濃度中に20μM〜0.001μM最終)に希釈して、化合物活性を測定する。ベースラインを、0分時に酸で停止させたコントロールウェル中で規定している間、コントロールウェルはDMSOのみを含有する。次いで各プレート上のコントロールから測定した阻害パーセントおよび10点化合物濃度データを、ACTIVITYBASE4.0を用いて4パラメーターロジスティック式にフィットした。
【0162】
好ましい例示した化合物は0.01μM未満のIC50を示す。実施例25の化合物は、上記のアッセイにおいて0.003μMのIC50を有する。これにより、好ましい例示した化合物がPim−1キナーゼの有効な阻害剤であることが実証される。
【0163】
溶解アッセイ
適切な量の試験化合物を、別個のクロマトグラフバイアル中で秤量した。必要な体積の0.05Mのリン酸バッファー、pH8.0(500mLのHPLC等級水に6.7gのリン酸水素二ナトリウム×7HOを溶解し、リン酸85%でpHを8.0に調整する)を試料バイアルに加え、2.0mg/mLの標的濃度を達成する。DMSO中の適切な標準溶液を、必要な体積のDMSOを標準バイアルに加えることにより調製して、2.0mg/mLの標的濃度を達成する。バイアルをしっかりとキャップし、回転装置に入れる。バイアルを、約50rpmの角速度を用いて、周囲温度で少なくとも16時間360°で回転させる。個々のバイアルの外観検査を回転後に行う。各バイアルから250μLを0.7μmのガラスフィルターで濾過する。試料を濾過し、標準濾液を96ディープウェルプレートの別のウェルに回収する。連続希釈を、2.0mg/ml標準溶液のDMSO中での適切な連続希釈により調製(2000μg/mL、200μg/mL、20μg/mL、2.0μg/mLおよびブランクのDMSO試料)する。
【0164】
試料および標準溶液を、HPLC(LCカラム:XTerra MS、C18、2.1×50mm、3.5μm、50℃にて;移動相:A−水中に0.2%ギ酸;B−アセトニトリル中に0.2%ギ酸;勾配:3分で5〜100%B、0.5分間100%Bで保持;流速:750μL/分;注入量:1μL;200nm〜400nmのダイオードアレイ検出器走査)により分析する。定量化のために抽出し、使用する波長を、試料調製物の最も正確な推定を得るために選択する。試験化合物についてのピーク同定に使用するリテンションタイムを、200μg/mLの標準分取クロマトグラムから得る。
【0165】
溶解度値を、4レベル較正曲線を用いて算出する。ゼロフィットによる一次または二次式を用いてクロマトグラフ管理データシステムによって算出される較正基準のピーク面積について最適フィットのラインを使用する。溶解度の結果をmg/mLで報告する。好ましい例示した化合物は、上記のアッセイを用いてpH8のリン酸バッファー中で少なくとも2mg/mlの溶解度を示す。実施例16の化合物は、上記のアッセイを用いてpH8のリン酸バッファー中で2.099mg/mlの溶解度を示す。従って、このデータは、本発明の好ましい例示した化合物が水溶液に容易に溶解することを実証する。
【0166】
ラット経口バイオアベイラビリティアッセイ
留置大腿動脈カニューレを有する雄のSprague Dawleyラット(250〜320gの体重の範囲)を、Charles River,Wilmington,MA 01887,USAから得る。試験化合物を、22.5mMのリン酸バッファー、pH3中の10%のN−メチルピロリドン/18%のCaptisol(登録商標)の溶液(2mL/kg)で静脈内投与する。最終薬物濃度は0.25mg/mL(遊離塩基当量)である。血液試料を24時間にわたって留置カニューレを用いて得る。次いで、精製水中の1%w/vヒドロキシエチルセルロース/0.25%v/vポリソルベート80/0.05%v/v消泡剤中の懸濁液(5mL/kg)中の経口量の試験化合物を動物に投与する。最終薬物濃度は0.2mg/mL(遊離塩基当量)である。さらなる血液試料を24時間にわたって留置カニューレを介して回収する。血漿試料を遠心分離によって得て、分析前に凍結保存(−20℃)した。
【0167】
アセトニトリル/メタノール(1:1、v/v)中の内部標準化合物(正規化のため)を血漿試料に加え、タンパク質を沈殿させ、試料を分析前に遠心分離する。上清を、注入およびJavelin Betasil C18カラム(20×2.1mmカートリッジ、移動相A:水/1Mの炭酸アンモニウム、2000:10v/v、移動相B:MeOH/1Mの炭酸アンモニウム、2000:10v/v)で急速勾配溶離により分析する。溶離した検体を、Sciex API 4000トリプル四重極質量分析計を用いてLC−MS−MS分析により検出する。血漿中の化合物の濃度を同一の条件下で調製した標準物から測定する。
【0168】
経口バイオアベイラビリティを、経口投与後の血漿濃度時間曲線下の面積を、静脈内投与後(投与した用量についての正規化後)の曲線下の面積で割ることによって得る。結果を、静脈内用量に対する生物学的に利用可能な画分(%F)として表す。好ましい例示した化合物は、上述のアッセイにおいて20%より高い%F値を示す。実施例22の化合物は、上述のアッセイにおいて48.5%の%F値を示す。これは、好ましい例示した化合物が良好な経口バイオアベイラビリティを有することを実証する。
【0169】
網膜芽細胞腫タンパク質(pRb)のリン酸化の阻害およびDNA含有量アッセイ
アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)からのCOLO 205細胞を、96ウェルBeckman Dickinson BIOCOAT(商標)プレート中で2000細胞/ウェルにて平板培養し、37℃、5%COにて24時間、10%ウシ胎仔血清(FBS、例えばGibcoカタログ番号11000−144)および1%ピルビン酸ナトリウム(Gibcoカタログ番号11360−070)を含むRPMI 1640倍地(例えば、GIBCO、カタログ番号52400−025)中でインキュベートする。培地に試験化合物を加え、20μM〜0.001μMの範囲にわたって、かつ0.25%の最終DMSO濃度を含む10点の1:3希釈物を投与することによって細胞を処理する。化合物に対する24時間の曝露の後、細胞を、室温にて30分間、PREFER(商標)固定剤[Anatech LTD.,カタログ番号414]で固定し、次いで、室温にて15分間、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中の0.1%TRITON(登録商標)X100に透過する。細胞をPBSで2回洗浄し、次いで、37℃のインキュベーター中で60分間、50μg/mLのRNAse(リボヌクレアーゼA、Sigmaカタログ番号R−6513)で消化する。固定した細胞を、30分間、1%ウシ血清アルブミン(BSA、Amershamカタログ番号RPN412V)でブロックする。一次抗体、抗ホスホRB精製マウスモノクローナル抗体(BD Pharmigenカタログ番号558385)を、1%BSAを含むPBS中に1:2000にて細胞に加え、4℃で一晩インキュベートする。3回PBSでの洗浄後、細胞を、室温にて1時間、Alexa488標識化二次抗体、ヤギ抗マウスIgG Alexa488(Invitrogenカタログ番号A11017)とインキュベートする。再度、それらをPBSで3回洗浄し、次いで15μMのヨウ化プロピジウム(元の溶液からPBSで1:100希釈、Invitrogenカタログ番号P3566)を加えて核を染色する。蛍光プレートを、ACUMEN EXPLORER(商標)[TTP LABTECH LTDによって製造された、レーザースキャニング蛍光マイクロプレートサイトメトリー(488nmアルゴンイオンレーザー励起および複数の光電子増倍管検出から構成される)]で走査して、Rbタンパク質のリン酸化およびDNA含有量を測定する。画像解析は、異なる亜集団において細胞を同定するための細胞蛍光シグナルに基づく。アッセイの出力は、各々の同定した亜集団の割合、ホスホRB陽性の%、2Nの%および4Nの%である。IC50およびEC50値を、ACTIVITYBASE(商標)を用いて各出力について4パラメーターロジスティックへの曲線フィッティングにより決定する。例示した化合物の全てのメシル酸塩は、上記のアッセイにおいて200nM未満のIC50を示す。実施例25の化合物は、上記のアッセイにおいて約100nMの活性を有する。これは、例示した化合物のメシル酸塩が、インビトロでの全細胞ベースのアッセイにおいて、(低レベルのpRbのリン酸化によって測定した場合)CDK4/6キナーゼ活性の有効な阻害剤であることを実証する。
【0170】
さらに、例示した化合物の全てのメシル酸塩は、少なくとも2μMの濃度で存在する場合でさえ、細胞周期のG1基の特異的停止を誘発できる。特異的G1停止は、2N遺伝子型を有する90%より多い細胞によって示される。活性化合物の生理学的に関連する濃度においてさえ、特異的G1停止により、本発明の化合物がCDK4/6の特異的阻害剤であり、他のCdkの非特異的阻害が最小化され、他の期の細胞周期停止を生じることが実証される。
【0171】
ヒト皮下異種移植片モデル
ヒト結腸直腸癌細胞(colo−205)、ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞(MV4−11)、ヒト膠芽腫細胞(U87MG)、およびヒト肺癌細胞(NCI H460およびcalu6)を、培地中で増殖させ(colo−205およびNCI H460は、L−グルタミン、25mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、10%のFBSを含むRPMI 1640倍地中で増殖させ;MV4−11は、L−グルタミン、25mMのHEPES、10%のFBSを含むイスコフ改変ダルベッコ培地中で増殖させ;U87MGおよびcalu6は、Earle塩、L−グルタミンおよび非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび10%のFBSを含むイーグルMEM中で増殖させ、colo−205、U87−MG、calu6およびNCI−H460はトリプシン処理(Invitrogenカタログ25200−056)、MV4−11は遠心分離により回収した)、無胸腺ヌードマウスのひ腹に皮下注射(Matrigel、BD Biosciences中で1:1に混合した500万細胞/動物)した。試験化合物を、適切なビヒクル(25mMのリン酸緩衝液、pH2中の1%ヒドロキシエチルセルロース)中で調製し、腫瘍が確立される場合(移植から11〜29日後)、21日間、(25、50または100mg/kg(mpk)にて)毎日強制経口により投与する。腫瘍反応を、治療課程の間、1週間に2回実施する腫瘍体積測定により決定する。
【0172】
腫瘍増殖遅延を評価するための統計的方法(TGD−個々の内挿法)は以下の通りである:各々の動物について、特定の腫瘍体積に到達する時間(閾値)を、閾値に到達する前の最後の測定と次の測定との間に補間することにより計算する。補間は、log10(体積)対時間を用いる線形である。動物が閾値に決して到達しない場合、その横断時間は、「>T」(ここでTはその動物について測定される最後の日である)と報告される。それらの横断時間は、ワイブル分布を用いる右側打ち切り(right−censoring)で「時間−事象」データとして解析される。平均および標準偏差を、各処置群について決定する。腫瘍増殖遅延(TGD)は、処置群とビヒクル対照群との間の平均横断時間の差である。T検定を、ワイブル解析から平均および標準偏差を用いて実施する。体重を毒性の一般的測定として得る。
【0173】
上記のプロトコルに実質的に従って、実施例16の化合物は、表3に示されるそれらのモデルにおいて抗腫瘍活性を実証し、従って、実施例16の化合物が、広範囲のRb腫瘍に対して有効なインビボ活性を有することを実証する。
【0174】
さらに、AML MV4−11異種移植片において、腫瘍退縮が、実施例16の化合物のプロアポトーシスPim−1阻害活性の指標である、100mg/Kg(mpk)の用量にて観測される。表4を参照のこと。
【0175】
表3.異なるヒト異種移植片モデルにおける腫瘍増殖遅延
【0176】
【表20】

【0177】
表4.MV4−11モデルにおける実施例16の化合物の抗腫瘍活性
【0178】
【表21】

【0179】
同所性脳異種移植片モデル
インビボでの脳腫瘍モデル:体重225〜300gのオスのNIH−RNUラットを、イソフルランで麻酔し、定位フレーム(David Kopf Instruments,Tujunga,CA)に置いた。正中切開を行い、1mmの穿頭孔を、正中線から2mm側方で、冠状縫合の3mm前方に開けた。10μL(qd投与について5×10細胞およびq2d投与について1×10細胞)中の5×10個のU87 MGヒト膠芽腫瘍細胞(Earle塩、L−グルタミンおよび非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび10%のFBSを含むイーグルMEMで増殖させた)の細胞懸濁液を、さらに1分間、逆流を防止するために所定の位置に置かれているシリンジを用いて、定位に取り付けたシリンジポンプ(Nano−Injector、モデル#53310およびStereotaxic Adapter Clamp、パート#51681、Stoelting Co、Wood Dale、IL)を用いて約2分間にわたって25または50μlのHamiltonシリンジによって3mmの深さで注射し、シリンジをゆっくりと引き抜く。穴を骨ろうで密封し、手術領域を食塩水で洗浄し、切開を縫合または創傷クリップで閉じた。
【0180】
試験化合物を、ビヒクル(精製水中の1%w/vのヒドロキシエチルセルロース/0.25%v/vのポリソルベート80/0.05%v/vの消泡剤)で製剤化し、20、40および80mpk(qdx21)にて21日間毎日投与し、腫瘍移植後4日で80mpk q2dx10を開始する。
【0181】
一次結果の変数は生存である。死ぬまで動物を毎日モニターし、動物が瀕死状態の場合、獣医スタッフと相談して、腫瘍移植に対する方針に沿って、安楽死させる。運動障害および生体機能の制御などの潜在的な脳機能障害を最小化させるために、細胞を前頭葉に移植する。ヒトにおける前頭葉は、「無症候性(silent)」と言われており、頭痛、吐き気、嘔吐、および認知障害を含む症状を最も一般的に表す。従って、病的状態は、昏睡状態および体重損失として明らかになる可能性が高い。生存データは、JMP v6.0.2(SAS Institute)を用いる平均生存分析についてのKaplan−Meier法により分析される。
【0182】
上記のプロトコルに実質的に従って、実施例16の化合物は、以下の用量;40mpk qd、80mpk qdおよび80mpk q2dにて平均生存(ビヒクル処置した動物と比較した場合)において統計的に有意な増加を生じたので(表5を参照のこと)、実施例16の化合物が、血液脳関門を横断し、同所性膠芽腫瘍異種移植片モデルにおいて有効なインビボ阻害活性を有し得ることが実証される。
【0183】
表5:実施例16の化合物の投与から生じる平均生存および生存期間中央値(日数)
【0184】
【表22】

【0185】
別の実験において、化合物の血漿および脳への曝露レベルを決定するために、腫瘍を保持していないオスのSprague Dawleyラットに、単回用量の実施例16の化合物を30mg/kgにて経口投与する。血漿および脳の濃度を決定するために48時間にわたって試料を得る。動物を屠殺し、心穿刺により全血を回収し、遠心分離により血漿を単離する。全脳を回収し、液体窒素中で即座に凍結する。
【0186】
脳の試料を、80%メタノール/20%HO中で均質化することにより調製する。アセトニトリル/メタノール(1:1、v/v)中の内部標準化合物を、血漿または脳ホモジネートの試料に加えてタンパク質を沈殿させ、試料を分析前に遠心分離する。上清を、注入およびJavelin Betasil C18カラム(20×2.1mmカートリッジ、移動相A:水/1MのNHHCO、2000:10v/v、移動相B:MeOH/1MのNHHCO、2000:10v/v)で急速勾配溶離により分析する。溶離した検体を、Sciex API 4000トリプル四重極質量分析計を用いてLC−MS−MS分析により検出する。血漿または脳中の化合物の濃度を同一の条件下で調製した標準物から決定する。
【0187】
血漿および脳の濃度を、この研究において各時点での3匹のラットの群から決定し(表6aおよび6bを参照のこと)、0〜48時間、血漿濃度/時間曲線または脳濃度/時間曲線下の領域を計算するために使用する。曲線(AUC)または最大血漿および脳濃度(Cmax)(表6cを参照のこと)下のいずれかの領域を用いて脳における曝露の割合の試験により、化合物が約1の脳/血漿比で脳内に十分に分布することが実証される。最大濃度(Tmax)は4時間で検出される。これらの実験により、実施例16の化合物がまた、血液脳関門を横断でき、脳内に十分に分布することが実証される。対照的に、本発明は、国際公開第03/062236号からの好ましい化合物、(6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン)が、同じアッセイにおいて、0.17(AUC)と0.1(Cmax)の脳:血漿の分布比を示すことを実証しており、これは、その化合物がこのモデルにおいて脳組織内に比較的不十分に分布することを示している。
【0188】
表6a:オスのSDラットにおいて決定される実施例16の化合物の血漿濃度(ng/mL)
【0189】
【表23】

【0190】
表6b:オスのSDラットにおいて決定される実施例16の化合物の脳濃度(ng/g)
【0191】
【表24】

【0192】
表6c:オスのSDラットにおいて決定される血漿および脳における実施例16の化合物に対する平均曝露
【0193】
【表25】

【0194】
テモゾロマイドを用いる併用研究
U87MG皮下異種移植片を増殖させ、前記のとおり測定する。実施例16の化合物を製剤化し、前記のとおり投与し、11〜31日、1日に1回、経口投与する。テモゾロマイド(Schering Corporation)を、精製水中の1%w/vヒドロキシエチルセルロース/0.25%v/vポリソルベート80で製剤化し、11日と18日目に腹腔内注射により投与する。テモゾロマイドの単一の薬剤活性と実施例16の化合物を用いる併用治療との比較を表7に示す。腫瘍増殖を、2元相互作用分析により分析する;logに変換された腫瘍体積を、SAS、バージョン9.1(Cary、NC)における空間電力相関モデルを使用する反復測定分散分析(ANOVA)で分析した。2×2因子構造を、2つの治療群の間の治療効果および相互作用効果を評価するために使用した。相互作用効果を、全ての時間点(「全体」試験)および各時間点にわたって試験した。テモゾロマイド単独を受容しているものと比べて併用群で見られる腫瘍増殖の増加した阻害により、テモゾロマイドおよび実施例16の化合物が、皮下膠芽細胞腫異種移植片モデルの組み合わせにおいて有効なインビボ抗腫瘍活性を実証することが示される。
【0195】
表7:実施例16の化合物とテモゾロマイドとのU87−MG異種移植片の併用研究
【0196】
【表26】

【0197】
U87MG同所性脳異種移植片を増殖させ、前記のとおり生存を測定する。動物群を、テモゾロマイド(temolozomide)(TMZ)、または実施例16(毎日または一日おきに投与)とテモゾロマイドとの組み合わせで治療する。表8に示すように、テモゾロマイド単独を受容したものと比べて併用群における平均生存の増加により、テモゾロマイドおよび実施例16の化合物が、同所性膠芽細胞腫異種移植片モデルの組み合わせにおいて有効なインビボ阻害活性を有することが示される。併用治療について死亡および体重損失がないこと(表9を参照のこと)により、それらが十分に許容され、重複する毒性がないことが示される。
【0198】
表8:テモゾロマイドと組み合わせた実施例16の化合物の投与から生じる平均生存および生存期間中央値(日数)
【0199】
【表27】

【0200】
表9:テモゾロマイド/実施例16の化合物の研究からの動物の死亡率および体重
【0201】
【表28】

【0202】
ゲムシタビンとの併用研究
Calu−6(肺)皮下異種移植片を増殖させ、前記のとおり測定する。ゲムシタビンを生理食塩水(精製水中の0.9%塩化ナトリウム)中で製剤化し、腹腔内注射によりq3dx7で投与する。試験化合物はqdx21で投与する。ゲムシタビンの単一薬剤活性と、ゲムシタビンと実施例16の化合物の両方を含む併用治療との比較を表10に示す。腫瘍増殖を2元相互作用分析により分析する。ゲムシタビンを受容するものと比較して併用群に見られる腫瘍増殖の高い阻害により、この薬物が、皮下肺癌異種移植片モデルの組み合わせにおいて有効なインビボ抗腫瘍活性を実証することが示される。併用治療についての死亡率および体重損失の低い発生率により、それらが十分に許容されることが示され、毒性を重複しないことが示唆される(表11を参照のこと)。
【0203】
表10:実施例16の化合物とゲムシタビンとのCalu−6異種移植片の併用研究
【0204】
【表29】

【0205】
表11:ゲムシタビン/実施例16の化合物からの動物の死亡率および体重の研究
【0206】
【表30】

【0207】
本発明の化合物の経口投与が好ましい。本発明の化合物の静脈内投与もまた、好ましい。状況に応じて、他の投与経路が使用されてもよく、またはさらに好ましい。例えば、経皮投与が、経口医薬を摂取することを忘れやすいか、または経口医薬を摂取することにいらいらする患者に非常に望ましい場合もある。本発明の化合物はまた、特定の状況において経皮、筋肉内、鼻腔内または直腸内経路により投与されてもよい。投与経路は、薬物の物理特性、患者および介護士の利便性、および他の関連状況により制限され、如何なる方法で変更されてもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.(1990))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

(式中、
R1は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルまたはシクロプロピル−メチルであり;
R2およびR3は、Hまたはフッ素であり、R2またはR3のうち少なくとも1つは、フッ素であり;
R4は、HまたはCHであり;
R5は、C〜Cアルキルまたは−NR6R7であり、式中、R6およびR7は、C〜Cアルキルであり;
Qは、CH、O、Sまたは直接結合であり;
WおよびYは、CまたはNであり、ここで、WまたはYのうち少なくとも1つは、Nであり、QがOまたはSである場合、WはCである)
またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項2】
R1は、イソプロピル、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロプロピル−メチルである、請求項1に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項3】
R1は、イソプロピルである、請求項2に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項4】
R2およびR3はそれぞれ、フッ素である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項5】
R4はHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項6】
R5は、C〜Cアルキルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項7】
R5は、−NR6R7であり、R6およびR7はそれぞれ、エチルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項8】
Qは、CHまたは直接結合である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項9】
QはCHである、請求項8に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項10】
Yは、Nである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項11】
Wは、Nである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項12】
下式:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

からなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項13】
下式:
【化8】

である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項14】
メシラート塩である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
21.29(2θ±0.1°)におけるピーク、ならびに、11.54、10.91、および12.13(2θ±0.1°)を含む群から任意に選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα放射線、λ=1.54056Å)により特徴付けられる、[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶。
【請求項16】
112.7、127.3および129.4における化学シフトピークν(F1)[ppm]を含む13C NMRスペクトルによりさらに特徴付けられる、請求項15に記載の[5−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−[5−フルオロ−4−(7−フルオロ−3−イソプロピル−2−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンIII型結晶。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩、および製薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬製剤。
【請求項18】
治療における使用のための、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項19】
結腸直腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膠芽腫、マントル細胞リンパ腫、慢性骨髄性白血病および急性骨髄性白血病からなる群より選択される癌の処置における使用のための、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項20】
哺乳動物における結腸直腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膠芽腫、マントル細胞リンパ腫、慢性骨髄性白血病および急性骨髄性白血病からなる群より選択される癌を処置する方法であって、有効量の請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物、またはその製薬的に許容し得る塩を、そのような処置を必要とする動物に投与することを含んでなる、方法。

【公表番号】特表2012−513396(P2012−513396A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542335(P2011−542335)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/068030
【国際公開番号】WO2010/075074
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】