説明

ターゲットベクター・リン脂質コンジュゲート

KLDR結合アフィニティを有するペプチドベクターと、このようなベクターの製造方法を提供する。該ペプチドベクターはリン脂質にコンジュゲート化することができ、超音波造影剤組成物に含めることができる。このような超音波造影剤は特に、例えばKDR含有組織のイメージング及び、新生物状態に関連した血管新生過程の評価と処置におけるような、治療的及び診断的方法に有用である。本発明はまた、高度に純粋なダイマー及びモノマーのペプチド・リン脂質コンジュゲート並びに該コンジュゲートの形成に用いられる前駆体物質の大規模生産方法を提供する。本発明はさらに、非常に低レベルのTFAを含有する、高度に純粋なペプチド・リン脂質コンジュゲートの大規模生産方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮出願No.60/833,342(July 25, 2006出願)及び米国仮出願No.60/749,240(December 9, 2005出願)に対する優先権とこれらの利益を主張するものであり、これによって、これらの仮出願の各々の内容は本明細書に援用される。
発明の分野
本発明は、治療用及び診断用組成物に有用である、ターゲットベクター・リン脂質コンジュゲート、特にターゲットペプチド・リン脂質コンジュゲートと、これらの製造方法に関する。本発明は、標的超音波造影剤と、特に、該ターゲットベクター・リン脂質コンジュゲートを含む標的マイクロバブルを包含する。
発明の背景
血管新生、新しい血管の形成は、胚発育及び正常な組織の成長と修復中にのみ生じるのではなく、女性の生殖周期、妊娠の確立と維持、及び創傷と骨折の修復にも関与する。正常な個体において生じる血管新生の他に、血管新生イベントは、多くの病的プロセス、特に、腫瘍の増殖と転移、並びに例えば、糖尿病性網膜症、乾癬及び関節症のような、血管増殖が増加するような、他の状態にも関与する。さらに、血管新生は、過形成性増殖から新生物性増殖までの腫瘍の転移に重要である。その結果、血管新生の阻害は、活発な癌治療研究分野になっている。
【0002】
腫瘍誘導血管新生は、既存血管を静止状態かつ安定に保持する傾向にある他の力に打ち勝つ血管新生誘発性増殖因子の、腫瘍細胞によるの産生に依存すると考えられる。これらの血管新生誘発性作用因子若しくは増殖因子の最もよく特徴付けられたものは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である(Cohen et al., FASEB J., 13: 9-22(1999))。VEGFは、多様な細胞種類によって、低酸素症及び幾つかの他の刺激に反応して、自然に産生される。多くの腫瘍も、多量のVEGFを産生する、及び/又はすぐ近くの間質細胞を誘発して、VEGFを作らせる(Fukumura et al., Cell, 94: 715-725(1998))。VEGF(VEGF−Aとも呼ばれる)は、121、145、165、189及び206アミノ酸の5種類の異なるスプライス・アイソフォームとして合成される。VEGF121とVEGF165は、特に腫瘍中で産生される主要なスプライス・アイソフォームである(Cohen et al., 1999,上記文献参照)。VEGF121は、VEGF165とは異なって、VEGF遺伝子のエキソン6と7によってコードされる基本ドメインを有さず、ヘパリン若しくは細胞外マトリックスに結合しない。このパラグラフに引用した参考文献の各々は、その全体で、本明細書に援用される。
【0003】
VEGFファミリーのメンバーは、主として、受容体型チロシンキナーゼに結合することによって作用する。一般に、受容体型チロシンキナーゼは、1つ以上の特定増殖因子と結合可能な細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン(通常、αヘリックス)、膜近位ドメイン(ここで該受容体は例えばリン酸化によってレギュレートされうる)、チロシンキナーゼドメイン(該受容体の触媒成分)、及びカルボキシ末端テール(これは、多くの受容体において、チロシンキナーゼに対する基質の認識と結合に関与する)を有する糖たんぱく質である。VEGFに結合することが知られている、3種類の内皮細胞−特異的受容体型チロシンキナーゼ:VEGFR−1(Flt−1)、VEGFR−2(KDR若しくはFlk−1)及びVEGFR−3(Flt−4)が存在する。Flt−1と、KDR(これは、VEGFR−2若しくはFlk−1としても知られており、これらの用語は本明細書では互変的に用いられる)は、主要な高アフィニティVEGF受容体として同定されている。Flt−1の方がVEGFに対して高いアフィニティを有するが、KDRはより豊富な内皮細胞発現を示す(Bikfalvi et al., J. Cell. Physiol., 149: 50-59(1991))。さらに、KDRは、血管新生反応を支配すると考えられ、それ故、治療的及び診断的重要性がより大きい(Cohen et al., 1999, 上記文献参照)。KDR発現は、特に、強い血管新生反応を誘発する腫瘍における新生血管では、高度にアップレギュレートされる(Veikkola et al., Cancer Res., 60: 203-212(2000))。血管新生におけるKDRの重要な役割は、同型接合KDRノックアウトマウス胚における血管発生の完全な欠如によって強調される(Folkman et al., Cancer Medicine, 5th Edition(B.C. Decker Inc.; Ontario, Canada, 2000) pp.132-152)。
【0004】
KDR(キナーゼ・ドメイン領域)は、その成熟形において、1336アミノ酸から構成される。KDRのグリコシル化形は、SDS−PAGEゲル上で約205kDaの見かけの分子量で泳動する。KDRは、その細胞外ドメイン中に7個の免疫グロブリン様ドメインを有し、そのうちの最初の3個がVEGF結合において最も重要である(Cohen et al., 1999, 上記文献)。VEGFそれ自体は、2つのKDR分子に同時に結合することができるホモダイマーである。その結果、2つのKDR分子は結合時にダイマーになり、自己リン酸化して、非常に高活性になる。増強したキナーゼ活性は、次に、VEGFのKDR特異性生物学的効果を仲介するシグナリング経路を開始する。
【0005】
したがって、KDRのVEGF結合活性のみがin vivoで血管新生に重要であるのではなく、内皮細胞上でのKDRアップレギュレーションを検出する能力又はVEGF/KDR結合複合体を検出する能力が、血管新生の検出又はモニターリングに極めて有利であると考えられる。
【0006】
ガス充填超音波造影剤が、超音波検査(echography)のための特に効果的な超音波リフレクターであることは周知である。このような超音波造影剤は、例えば、ガス充填マイクロバブル及びガス充填マイクロバルーンのようなガス充填微小嚢を包含する。ガス充填マイクロバブルは、特に好ましい超音波造影剤である。(この開示では、“マイクロバブル”なる用語は、具体的には、リン脂質によって囲繞された若しくは安定化された気泡を表示する)。例えば、生体の血流中へキャリヤー液体中の空気充填若しくはガス充填マイクロバブル懸濁液を注入すると、超音波検査イメージング(ultrasonic echography imaging)が強化され、したがって、内部解剖学的構造の可視化が助成されることになる。血管及び内部器官のイメージングは、例えば、新生物性、心臓血管系及びその他の疾患の検出のための医学的診断に強力に役立つことができる。
【0007】
所望のターゲット(例えば、KDR又はVEGF/KDR複合体)に対する高い結合アフィニティを示すターゲットベクター組成物を、ガス充填超音波造影剤に組み込むことは、診断的及び治療的目的の両方のために、特に有利であると考えられる。例えば、ターゲットベクター−リン脂質コンジュゲートと、特にターゲットペプチド−リン脂質コンジュゲートは、標的ガス充填超音波造影剤の製造に用いることができる。さらに、このようなターゲットベクター−リン脂質コンジュゲートの高度に精製された形の大規模生産方法を有することは、特に有利であると考えられる。このような組成物と方法は、例えば、レポーター部分、殺腫瘍剤又は血管新生阻害剤の標的部位への正確なターゲッティングのような、診断的用途又は治療的用途のための組成物の生産を可能にすると考えられる。
発明の概要
本発明は、ガス充填超音波造影剤の製造に有用であるターゲットベクター−リン脂質コンジュゲート、特にターゲットペプチド−リン脂質コンジュゲートを提供する。好ましい実施態様では、ターゲットペプチド−リン脂質コンジュゲートは、高いKDR結合アフィニティを示し、したがって、血管新生プロセスのイメージングのための造影剤の有用な成分であるターゲットペプチドを包含する。
【0008】
本発明はさらに、ガス充填超音波造影剤の製造に、特に、KDRを標的とする超音波造影剤の製造に有用であり、血管新生プロセスのイメージングに有用でありうる、モノマー及びダイマーペプチド−リン脂質コンジュゲート(本明細書では、リポペプチドとも呼ぶ)を提供する。
【0009】
本発明はさらに、高度に純粋なモノマー及びダイマーペプチド−リン脂質コンジュゲート、特に、高いKDR結合アフィニティを有するモノマー及びダイマーペプチド−リン脂質コンジュゲートの大規模生産のための方法及びプロセスを提供する。
【0010】
本発明はさらに、最低レベルのトリフルオロ酢酸(TFA)を有する、高度に純粋なダイマーペプチド−リン脂質コンジュゲートの大規模生産のための方法及びプロセスを提供する。
【0011】
本発明はさらに、高度に純粋なモノマーペプチドの合成と、多重のペプチド・サブユニットからのペプチド−リン脂質コンジュゲートの構築のための方法を提供する。
本発明はさらに、KDR若しくはVEGF/KDR複合体に高いアフィニティで結合するモノマーペプチド、並びにこのようなモノマーペプチドの合成及び使用方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、このようなターゲットベクター−リン脂質コンジュゲートから製造される標的超音波造影剤をも提供する。このような標的超音波造影剤は、ターゲット含有組織のイメージングに有用である。好ましい実施態様では、標的超音波造影剤は標的マイクロバブルであり、ターゲットベクター−リン脂質コンジュゲートは、高いKDR結合アフィニティを有し、したがって、KDR含有組織のイメージングのため、特に腫瘍及び血管新生プロセスのイメージングのための造影剤の有用な成分であるターゲットペプチドを包含する。このような標的超音波造影剤の製造及び使用方法も提供する。
詳細な説明
出願人は、標的超音波造影剤の製造に有用であり、予想外のKDR結合効率を有するペプチド−リン脂質コンジュゲートを意外にも発見した。これらの化合物のうちの2つは、高いアフィニティでKDRに結合する線状ペプチドモノマーを含むモノマーペプチド−リン脂質コンジュゲートであり、他のものは、それぞれKDRに結合する2つの識別可能なモノマー・サブユニットを含むダイマーペプチド−リン脂質コンジュゲートである。さらに、これらのコンジュゲート及び前駆物質の精製形の大規模生産のための高効率方法が発見されている。このような方法は、最低レベルのTFAを有するダイマーペプチド−リン脂質コンジュゲートの製造を包含する。
【0013】
リン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン及び修飾ホスファチジルエタノールアミンから成る群から選択することができる。特に好ましいリン脂質は、それに親水性ポリマーを連結することによって修飾されたホスファチジルエタノールアミンを包含する。修飾ホスファチジルエタノールアミンの例は、ポリエチレングリコール(PEG)によって修飾されたホスファチジルエタノールアミン(PE)、要約すれば“PE−PEGs”、即ち、親水性エタノールアミン部分が可変な分子量(例えば、300〜5000ダルトン)を有するPEG分子に連結しているホスファチジルエタノールアミン、例えば、DPPE−PEG、DSPE−PEG、DMPE−PEG又はDAPE−PEGである。DSPE−PEG2000、DSPE−PEG3400、DPPE−PEG2000及びDPPE−PEG3400が好ましく、DSPE−PEG2000が特に好ましい。例えば、トリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、ナトリウム塩等のような、該リン脂質の塩形も使用可能であることに注目のこと。
【0014】
これらの化合物を例えばガス充填マイクロバブルのようなガス充填超音波造影剤中に組み込んで、ターゲット含有組織の優れたイメージングを与えるような造影剤を形成することができる。好ましい実施態様では、高いアフィニティでKDRに結合するターゲットペプチドを包含するターゲットベクター−リン脂質コンジュゲートを、標的マイクロバブルに組み込む。本明細書に示すように、このような標的マイクロバブルはKDR含有組織に選択的に局在して、このような組織のイメージング、特に、腫瘍及び、腫瘍発生に関連したようなプロセスを含めた血管新生プロセスのイメージングを可能にする。
モノマーコンジュゲート
一般的
表1は、図1、2、9及び10に示した同定ラベルを説明する。
【0015】
【化1】

【0016】
図1と2に示すように、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)N−アセチル−L−アルギニル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−トリプトフィル−L−アスパルチル−L−イソロイシル−L−グルタミル−L−ロイシル−L−セリニル−L−メチオニル−L−アラニル−L−アスパルチル−L−グルタミニル−L−ロイシル−L−アルギニル−L−ヒスチジル−L−アラニル−L1−フェニルアラニル−L−ロイシル−L−セリニル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−{N6−[1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミノカルボニルオキシ−(PEG2000)−アミノグルタリル]}−L−リシンアミドは、リン脂質コンジュゲートである。このコンジュゲートは、Ac−RAQDWYYDEILSMADQLRHAFLSGGGGGK(DSPE−PEG2000−NH−Glut)−NH(配列番号:1)及びAc−Arg−Ala−Gln−Asp−Trp−Tyr−Tyr−Asp−Glu−Ile−Leu−Ser−Met−Ala−Asp−Gln−Leu−Arg−His−Ala−Phe−Leu−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Lys(DSPE−PEG2000−NH−Glut)−NHとも呼ばれる。これは、29アミノ酸線状ペプチドモノマー(2)N−アセチル−L−アルギニル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−トリプトフィル−L−アスパルチル−L−イソロイシル−L−グルタミル−L−ロイシル−L−セリニル−L−メチオニル−L−アラニル−L−アスパルチル−L−グルタミニル−L−ロイシル−L1−アルギニル−L−ヒスチジル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−L−セリニル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−リシンアミド(Ac−RAQDWYYDEILSMADQLRHAFLSGGGGGK−NH(配列番号:2)とも呼ばれる)及びAc−Arg−Ala−Gln−Asp−Trp−Tyr−Tyr−Asp−Glu−Ile−Leu−Ser−Met−Ala−Asp−Gln−Leu−Arg−His−Ala−Phe−Leu−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Lys−NHを含む。この新規なペプチドモノマーは、高いアフィニティで、KDRに結合する。該モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)及び該線状ペプチドモノマー(2)の類似体及び誘導体が本発明の範囲内に包含されるように意図されることを理解すべきである。
【0017】
図10は、別のモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(31)、N−アセチル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−イソロイシル−L−ロイシル−L−セリル−L−メチオニル−L−アラニル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−ロイシル−L−アルギニル−L−ヒスチジル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−L−セリル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−{N6−[1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミノカルボニルオキシ−(PEG2000)−アミノグルタリル]}−L−リシンアミド、リン脂質コンジュゲートの構造を提供する。このコンジュゲートは、Ac−AQDWYYDEILSMADQLRHAFLSGGGGGK(DSPE−PEG2000−NH−Glut)−NH(配列番号:4)及びAc−Arg−Ala−Gln−Asp−Trp−Tyr−Tyr−Asp−Glu−Ile−Leu−Ser−Met−Ala−Asp−Gln−Leu−Arg−His−Ala−Phe−Leu−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Lys(DSPE−PEG2000−NH−Glut)−NHとも呼ばれる。図9に示すように、該コンジュゲートは、28アミノ酸線状ペプチドモノマー(32)、N−アセチル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−イソロイシル−L−ロイシル−L−セリル−L−メチオニル−L−アラニル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−ロイシル−L−アルギニル−L−ヒスチジル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−L−セリル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシンアミドを含む、これはAc−AQDWYYDEILSMADQLRHAFLSGGGGGK−NH(配列番号:5)及びAc−Ala−Gln−Asp−Trp−Tyr−Tyr−Asp−Glu−Ile−Leu−Ser−Met−Ala−Asp−Gln−Leu−Arg−His−Ala−Phe−Leu−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Lys−NHとも呼ばれる。同時係属出願、米国特許出願No.10/661,156(September 11,2003出願)に示されるように、このペプチドモノマーは、高いアフィニティで、KDRに結合する。該モノマーペプチド−リン脂質コンジュゲート及び線状ペプチドモノマーの類似体と誘導体が本発明の範囲内に包含されるように意図されることを理解すべきである。
【0018】
実施例に示すように、例えば、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)及び(31)によって処方されたガス充填マイクロバブル超音波造影剤は、高いKDR結合を示し、このことはウサギにおけるVX2腫瘍の超音波検査を用いて確認された。
【0019】
理想的には、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)若しくは(31)の製造を促進するためには、該線状ペプチドモノマー(2)又は(32)を大量に製造すべきである。次に、精製線状ペプチドモノマー(2)又は(32)の、例えば、塩形でのPEG化リン脂質(例えば、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(4))のようなリン脂質への、リンカー、ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)を介してのコンジュゲート化を用いて、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)又は(32)を生成することができる。
モノマーペプチド−リン脂質コンジュゲートの製造方法
モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)及び(31)の製造では、本発明による方法は、少なくとも下記利点:ペプチド合成の収率上昇;ラセミ化の程度の低下;合成中の以前に観察されたピペリジンアミド形成の回避;ペプチドモノマー(2)と(32)の効果的な精製;ペプチドモノマー(2)と(32)の大規模でのコンジュゲート化方法の開発;及び出発DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(4)からのモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)と(31)の容易な分離を可能にすると考えられる精製プロトコールの開発;を提供する。
【0020】
モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートは以下のように製造することができる。モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの合成についてのこの典型的な説明中に挙げられる数値は代表的なものであることを理解すべきである。
【0021】
線状ペプチドモノマーは、SPPSによって製造することができる。該線状ペプチドモノマーの配列は、Pal−Peg−PS−樹脂上にC−末端カルボキサミドとして構築することができる(置換レベル:0.2mmol/g)。ペプチド合成は、SONATA(登録商標)/ Pilot Peptide Synthesizer上でFmoc化学を用いて達成することができる。この方法に関して今までに観察された問題は、ラセミ化、不完全なカップリング及びピペリジンアミド形成であり、これらの問題の各々が最適とは言えない収率及び純度に寄与している。Fmoc除去のための試薬としてHOBt(0.1M)含有DMF中25%ピペリジンを用いることによって、ピペリジンアミドの形成を劇的に減らすことができる。ラセミ化は、大抵のカップリングに対する活性剤としてDIC/HOBtを用い;無水DMF(6x)による洗浄を介在させて4倍過剰な予備活性化Fmocアミノ酸を用いる3時間のカップリング時間を用いることによって、かなり減らすことができる。Nα−Fmocアミノ酸を、それらのカップリングを行う直前に(just before their coupling turn)溶解し、DMF中のDIC/HOBtによって4分間予備活性化して、反応器に移すことができる。これは、Sonata機器上で、この機器のアミノ酸容器中に固体のFmocアミノ酸を装入し、DMF、HOBt/DMF及びDIC/DMFを、溶液をバブリングさせながら、順次加えるように該機器をプログラミングすることによって、達成することができる。
【0022】
収率を最適にするためには、最適のカップリング試薬を用いる場合にさえも破壊的でありうる、長いペプチドの合成中の樹脂凝集問題に対処することができる。ペプチド・アセンブリ中の凝集を減ずるために、XとThr又はXとSerの順次カップリングの代わりに、ジペプチドとしてのX−Thr又はX−Serを組み込むためにシュードプロリン・ジペプチドを用いるという手段を利用することができる。線状ペプチドモノマーのために、Leu11−Ser12及びLeu22−Ser23の順次カップリングの代わりに、シュードプロリン・ジペプチド、Fmoc−Leu−Ser(ΨMe,Mepro)−OHの単回カップリングを用いることができる。Fmoc−Gly−OHの順次カップリングの代わりに、Fmoc−Gly−Gly−Gly−OH及びFmoc−Gly−Gly−OHを用いることによってカップリング回数を減ずることにより、さらなる最適化を達成することができる。−Gly−Gly−OHのセグメント活性化は、末端アミド官能基(distal amide function)による活性化酸官能基(activated acid function)の環化をもたらして、不活性なジケトピペラジンを生成することができる;このことは、時間に依存して、カップリング収率を減ずる可能性がある。この問題は、反応器にFmoc−Gly−OH(n=2、3)を添加して、続いて、HOBtとDICを添加することによって回避することができ;ジケトピペラジンへの適当な環化が行われる前に、活性化Fmoc−Gly−OHを樹脂結合アミノ基によって遮断することができる。これらの改良によって、線状ペプチドモノマーの合成はSonata Peptide Synthesizer上で10mmol合成規模で完成することができる。
【0023】
鎖延長後に、N末端からFmocを除去することができる。該ペプチドと該遊離アミノ基をアセチル化することができる。次に、“試薬B”(TFA:水:フェノール:トリイソプロピルシラン、88:5:5:2、v/v/w/v)を4時間用いて、該ペプチド配列を樹脂から切断して、脱保護することができる。切断反応後に、揮発物の蒸発、ジエチルエーテルを加えての残渣の摩砕、このようにして得られた固体の同溶媒の使用による洗浄によって、粗ペプチドを固体として単離することができる。他のバリエーションでは、反応混合物へジエチルエーテルを添加することによって、該反応混合物から該ペプチドを沈殿させて、このようにして形成された固体を回収し、同溶媒によって洗浄することができる。
【0024】
線状ペプチドモノマーは、以下に述べるように精製することができる。この場合にも、数値記載(numerical references)は代表的なものである。粗線状ペプチドモノマー(0.5g)をCHCN(40ml/g)中に溶解して、この溶液を水で100mlの最終量に希釈することができる。次に、該溶液を濾過することができる。濾過済み溶液を、水(0.1%TFA)中10%CHCNと平衡した分取HPLCカラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS C18, 10μ, 300Å, 50 x 250mm)上に装填することができる。装填後に、溶離剤の組成を1分間にわたって20%CHCN−水(0.1%TFA)に傾斜させることができ、水(0.1%TFA)中にCHCN(0.1%TFA)0.6%/分の速度で線形勾配を開始して、50分間にわたってランすることができる。溶離された画分を分析用逆相C18カラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS-C18, 10μ, 120Å, 4.6 x 50mm)上で純度に関して検査することができ、>95%純度で生成物を含有する画分を一緒にして、凍結乾燥することができる。粗ペプチド0.5gの各精製に関して、線状ペプチドモノマー0.12g(24%)を常に単離して、ペプチドを同じ収率及び純度で得ることになる。
【0025】
モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの合成は、以下に述べるように行うことができる。この場合も、数値記載は代表的なものである。合成における最後の工程は、例えばPEG化リン脂質(例えば、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩)のようなリン脂質の、線状ペプチドモノマーへのコンジュゲート化であることができる。DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(4)のPEG2000部分は、公称的に、45エチレングリコール単位から成る。しかし、この物質がPEG含有種の分布であり、その質量中心(centroid)が45エチレンオキシ単位を含有する公称的化合物であることを理解すべきである。DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩による線状ペプチドモノマーのコンジュゲート化は、線状ペプチドモノマーのグルタール酸モノアミド・モノNHSエステルの製造と、これと、該リン脂質アンモニウム塩の遊離アミノ基との反応によって達成することができる。したがって、線状ペプチドモノマーをDMF中のDSG(4当量)と、DIEA(5当量)の存在下で30分間反応させることができる。この反応混合物を酢酸エチルで希釈することができ、その結果として、該ペプチドグルタール酸モノアミドモノNHSエステルの沈殿が生じうる。未反応DSGを含有する上清をデカントして、中間体のペプチドモノNHSエステルを酢酸エチルで数回洗浄して、痕跡量のDSGを除去することができる。質量スペクトルデータは、クリーンな生成物としての該ペプチドモノNHSエステルの形成を確証する。固体のモノNHSエステルをDMF中に溶解して、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(0.9当量)とDIEA(4当量)の存在下で24時間反応させることができる。遊離のリン脂質アンモニウム塩は、高度に純粋な形でのモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの単離を困難にする可能性があるので、線状ペプチドモノマー・グルタール酸モノアミドモノNHSエステルを過剰に用いて、該リン脂質アンモニウム塩の消費を最大化することができる。
【0026】
該反応混合物を水(0.1%TFA)とCHCN−CHOH(1:1、v/v)(0.1%TFA)との1:1混合物(約100ml)で希釈して、逆相C2カラム(Kromasil(登録商標)Prep C2, 10μ, 300Å、50x250mm, 流速100ml/分)に供給して、該カラムを水(0.1%TFA)とCHCN−CHOH(1:1、v/v)(0.1%TFA)との3:1混合物で溶出して、親水性不純物を除去することができる。次に、水(0.1%TFA)中へのCHCN−CHOH(1:1)(0.1%TFA)の勾配を用いて、生成物を溶離することができる(詳細に関しては、実験セクションを参照)。回収した画分を、所望の生成物と、しばしば分離され難いDSPE−PEG2000−NHリン脂質(これは、殆どUV吸光度を有さない)との検出を可能にするELSデテクターを用いて、逆相HPLCによって分析することができる。これは、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートとDSPE−PEG2000−NHリン脂質との明確な分離を示唆する。純粋な生成物を含有する画分を回収して、回転蒸発器で濃縮し(メタノール含量を減ずるため)、凍結乾燥して、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを無色固体として得ることができる。必要量のモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを製造するために、線状ペプチドモノマー0.5〜1.0gを用いて、数回のランを行うことができる。あらゆる場合に、目的のモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを高い収率及び純度で単離することができる(例えば、57〜60%収率及び>99%純度)。
ダイマーコンジュゲート
一般的
表2は、図3、4及び5に示す同定ラベルを説明する。
【0027】
【化2】

【0028】
これらの図に示すように、ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)アセチル−L−アラニル−グリシル−L−プロリル−L−スレオニル−L−トリプトフィル−L−シスチニル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−L−ロイシル−L−フェニルアラニル−グリシル−L−スレオニル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシル[アセチル−L−バリル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−セリル−L−トリプトフィル−グリシル−グリシル−L−グルタミル−L−バリル−L−シスチニル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−プロリル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシル(ジステアリルホスホエタノールアミノカルボノオキシ−PEG2000−アミノ−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−グルタリル−L−リシル)アミド環状(2−12)ジスルフィド]−アミド環状(6−13)ジスルフィドは、KDRと結合する2つのモノマーペプチド鎖:21アミノ酸環状ジスルフィド・ペプチドモノマー(13)アセチル−L−バリル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−セリル−L−トリプトフィル−グリシル−グリシル−L−グルタミル−L−バリル−L−シスチニル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−プロリル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシル(8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル)アミド環状(2−12)ジスルフィドと、これとグルタリル・リンカーによって結合した、22アミノ酸環状ジスルフィド・ペプチドモノマー(12)アセチル−L−アラニル−グリシル−L−プロリル−L−スレオニル−L−トリプトフィル−L−シスチニル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−L−ロイシル−L−フェニルアラニル−グリシル−L−スレオニル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシンアミド環状(6−13)ジスルフィドとから成る。該ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)及び該環状ジスルフィドペプチドモノマー(12)と(13)の類似体及び誘導体が本発明の範囲内に包含されるように意図されることを理解すべきである。
【0029】
ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)によって処方された超音波造影剤(例えば、ガス充填マイクロバブル)は、高いKDR結合を示し、このことはウサギにおけるVX2腫瘍の超音波検査を用いて確認された。
ダイマー−リン脂質コンジュゲートの製造方法
ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)の合成を達成するには、このために用いるモノマーを好ましくは大量に製造すべきである。次に、これらのモノマーを、リンカーとしてジスクシンイミジルグルタレートを用いて、相互に結合させて、前駆体ダイマーペプチド(16)、アセチル−L−アラニル−グリシル−L−プロリル−L−スレオニル−L−トリプトフィル−L−シスチニル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−L−ロイシル−L−フェニルアラニル−グリシル−L−スレオニル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシル[アセチル−L−バリル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−セリル−L−トリプトフィル−グリシル−グリシル−L−グルタミル−L−バリル−L−シスチニル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−プロリル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシル(8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−グルタリル−L−リシル)アミド環状(2−12)ジスルフィド]−アミド環状(6−13)ジスルフィドを形成することができる。次に、目的のダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)を得るために、この場合もジスクシンイミジルグルタレートによる、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(18)への精製前駆体ダイマーペプチドのコンジュゲート化を用いることができる。
【0030】
ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)の製造において、本発明による方法は、少なくとも下記利点:ペプチド配列の自動化鎖延長の収率上昇;合成中に遭遇するラセミ化の程度の低下;ペプチドモノマー(13)の合成中の以前に観察されたピペリジンアミド形成の回避;なおも効果的かつ実際的なサンプル取り扱いを可能にするマルチグラム規模で実施し可能な手段を用いる、(12)と(13)の線状ジシステイン含有ペプチド前駆体の環化;モノマーペプチド(12)と(13)の効果的な精製;前駆体ダイマーペプチド(16)の最大化された収率と純度;前駆体ダイマーペプチド(16)の大規模でのコンジュゲート化方法の開発;及びリン脂質アンモニウム塩(18)からの目的のダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)の容易な分離を可能にすると考えられる精製プロトコールの開発;を提供する。
【0031】
ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)は、ペプチドモノマー(12)
【0032】
【化3】

【0033】
と、ペプチドモノマー(13)
【0034】
【化4】

【0035】
の自動化合成、iveDde保護ダイマーを得るためのジスクシンイミジルグルタレート(DSG)を用いたそれらの効果的なカップリング、その脱保護及び続いての、この場合もグルタリル結合を介してのDSPE−PEG2000−NHへのカップリングによって製造することができる。本発明による方法を用いて、モノマーペプチドを10mmol規模で困難なく合成することができ、HPLC精製後に、モノマーペプチドを約20%収率及び>95%純度で得ることができる。このような方法は、ダイマー形成反応を可能にし、続いての、リン脂質成分へのコンジュゲート化が、グラム規模で実施されるダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)の形成を生じる。前駆体ダイマーペプチド(16)はモノマーペプチドからルーチンに約32%収率及び>95%純度で得ることができる。ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)は該前駆体ダイマーペプチド(16)から57〜60%収率及び>99%純度で製造することができる。
【0036】
ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートは、以下に説明するように製造することができる。ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの合成についてのこの典型的な説明中に挙げられる数値は代表的なものであることを理解すべきである。
【0037】
ペプチドモノマー(12)
【0038】
【化5】

【0039】
と、ペプチドモノマー(13)
【0040】
【化6】

【0041】
の固相合成とジスルフィド環化の典型的な方法を以下に説明する。
該ペプチドは、Pal−Peg−PS−樹脂上にそれらのC末端カルボキサミドとして構築することができる(置換レベル:0.2mmol/g)。鎖延長は、SONATA(登録商標)/ Pilot Peptide Synthesizer上でFmoc化学を用いて、最適化脱保護とカップリングプロトコールを使って10mmol合成規模で達成することができる。自動化SPSSによる該ペプチドの最適化合成は、ペプチド不純物と、得られるペプチドの総収率と純度に対する該プロトコールの特定要素を変えることの効果とを研究することによって、開発することができる。
【0042】
モノマーペプチドの最適化されない合成から得られる不純物の分析は、主要な問題がラセミ化、不完全なカップリング及びピペリジンアミドの形成(恐らくは、アスパルトイミド中間体又はグルタルイミド中間体による)であり、これらの各々が最適とは言えない収率及び純度に寄与することを示唆する。fmoc除去のための試薬としてHOBt(0.1M)含有DMF中25%ピペリジンを用いることによって、ピペリジンアミドの形成を劇的に減らすことができる。ラセミ化は、大抵のカップリングに対する活性剤としてDIC/HOBtを用い;無水DMF(6x)による洗浄を介在させて4倍過剰な予備活性化Fmocアミノ酸を用いる3時間のカップリング時間を用いることによって、かなり減らすことができる。Nα−Fmocアミノ酸を、それらのカップリングを行う直前に溶解し、DMF中のDIC/HOBtによって4分間予備活性化して、反応器に移すことができる。これは、Sonata機器上で、この機器のアミノ酸容器中に固体のFmocアミノ酸を装入し、DMF、HOBt/DMF及びDIC/DMFを順次加え、各添加後に溶液をバブリングさせるように該機器をプログラミングすることによって、達成することができる。
【0043】
収率を最適にするためには、最適のカップリング試薬を用いる場合にさえも破壊的でありうる、長いペプチドの合成中の樹脂凝集問題に対処することができる。ペプチド・アセンブリ中の凝集を減ずるために、XとThr又はXとSerの順次カップリングの代わりに、ジペプチドとしてのX−Thr又はX−Ser(Xは、配列のn−1アミノ酸を意味する)を組み込むためにシュードプロリン・ジペプチドを用いるという手段を利用することができる。したがって、モノマー(12)、
【0044】
【化7】

【0045】
のために、適当に保護されたThrとGly(上記に太字で示す)の順次カップリングの代わりに、シュードプロリン・ジペプチド、Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,Mepro)−OHの単回カップリングを用いることができる。同様に、モノマー(13)、
【0046】
【化8】

【0047】
の合成では、適当に保護されたSerとAsp(上記に太字で示す)の順次カップリングの代わりに、シュードプロリン・ジペプチド、Fmoc−Asp(OtBu)−Ser(ΨMe,Mepro)−OHを用いることができる。Fmoc−Gly−OHの順次カップリングの代わりに、Fmoc−Gly−Gly−Gly−OH及びFmoc−Gly−Gly−OHを用いてカップリング回数を減ずることにより、さらなる最適化を達成することができる。−Gly−Gly−OHセグメントの活性化は、末端アミド官能基による活性化酸官能基の環化をもたらして、不活性なジケトピペラジンを生成することができる;このことは、時間に依存して、カップリング収率を減ずる可能性がある。この問題は、反応器にFmoc−Gly−OH(n=2、3)を添加して、続いて、HOBtとDICを添加することによって回避することができ;ジケトピペラジンへの適当な環化が行われる前に、活性化Fmoc−Gly−OHを樹脂結合アミノ基によって遮断することができる。鎖延長が完了した後に、N−末端Fmoc保護基を各ペプチドから除去することができ、遊離アミノ基をアセチル化することができる。
【0048】
擬似直角的に保護された(pseudo-orthogonally protected)誘導体、Fmoc−Lys(ivDde)−OHを用いて、該モノマー及びダイマーペプチドのC−末端リシンのε−アミンの選択的露出(selective unmasking)と、それらのその後の官能化を可能にすることができ、これらも最適化することができる。該ペプチドモノマーの各々のC−末端リシンのε−アミン上のivDde基は、DMF中の10%ヒドラジンを用いて除去することができる。モノマー(13)のFmoc−Adoa又はモノマー(12)のLys(ivDde)は、DMF中の4当量のFmocアミノ酸及びDMF中の各4当量のDICとHOBtを10時間用いて、該露出リシンε−アミノ基に付加させることができる。この合成が完了した後に、“試薬B”(TFA:水:フェノール:トリイソプロピルシラン、88:5:5:2、v/v/w/v)を4時間用いて、該ペプチド配列を樹脂から切断して、脱保護することができる。切断反応が完了した後に、該ペプチドを沈殿させ、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させることができる。
【0049】
その後の線状ジシステイン含有ペプチドの環化手段を用いて、モノマーペプチドの最適スケールアップを果たすことができる。一般に、線状ジシステイン含有ペプチドの空気中酸化は約0.5〜5mg/ml(開示ペプチドモノマー、ペプチドにおいて〜0.18〜1.8mM、システインチオールにおいて〜0.36〜3.6mM)で行うことができる。これより著しく高い濃度で操作するためには、ジシステインペプチドのDMSO補助環化が、〜50ml程度の少量の溶液中での該線状ペプチド〜10gの良好な収率での環化を可能にする。それ故、粗線状ジシステインペプチドを、周囲温度においてpH8.5の95%DMSO−HO(5ml/g)中で環化することができる。該環化の進行は、質量分光分析とHPLCによってルーチンに追跡することができる。環化は本来は〜36時間で完成することができるが、該反応混合物を一般に48時間まで撹拌することができる。CHCNによる希釈によって環状ジスルフィドペプチドを反応混合物から沈殿させ、得られたオフホワイトの粗固体ペプチドを濾過によって回収することができる。これが、粗環状ペプチドからDMSOを除去するための都合のよい方法である。
【0050】
モノマーペプチド(12)、Ac−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK[K(ivDde)]−NHの精製と単離は、以下に述べるように達成することができる。本明細書で用いる限り、“C”なる表示がジスルフィド結合に寄与するシステイン残基を意味することに注目のこと。水(0.1%TFA)中30%CHCN 300mlまでに該粗ペプチド0.5gを溶解する試みは、今までに成功していない。それ故、代替手段として、該粗ペプチド(0.5g)をDMSO(5ml/g)中に溶解して、この溶液を20%CHCN−水で100mlの最終量になるまで希釈することができる。この溶液を濾過することができる。濾過済み溶液を、水(0.1%TFA)中10%CHCN(0.1%TFA)と平衡した分取HPLCカラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS C18, 10μ, 300Å, 50 x 250mm)上に装填することができ、該カラムからDMSOを洗浄するために、該カラムを水(0.1%TFA)中10%CHCN(0.1%TFA)によって溶出することができる。次に、該溶離剤の組成を、35%CHCN−水(0.1%TFA)に1分間にわたって傾斜させ、水(0.1%TFA)中にCHCN(0.1%TFA)0.5%/分の速度で線形勾配を開始して、50分間にわたってランすることができる。溶離された画分を分析用逆相C18カラム(Waters,XTerra MS-C18, 10μ, 120Å, 4.6 x 50mm)上で純度に関して検査することができ、>95%純度で生成物を含有する画分を一緒にして、凍結乾燥することができる。粗ペプチド0.5gの各精製に関して、ペプチドモノマー(12)、Ac−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK[K(ivDde)]−NH 0.1g(20%)を単離することができる。精製を繰り返すと、常に同じ収率及び純度で該ペプチドが得られることが判明している。
【0051】
ペプチドモノマー(13)、Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(Adoa−Adoa)−NHは、DMSO含有希釈剤の代わりに、0.1%TFA水溶液中20%CHCN(0.1%TFA)中に対象のペプチドを溶解しうる(ペプチド0.5g/100ml)ことを除いて、ペプチドモノマー(12)に関して述べたとおりに、精製して、単離することができる。得られた粗ペプチド溶液を、水(0.1%TFA)中10%CHCNと平衡した分取HPLCカラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS C18, 10μ, 300Å, 50 x 250mm,流速100ml/分)上に装填することができる。該カラムを水(0.1%TFA)中10%CHCN(0.1%TFA)によって100ml/分で5分間溶出することができる。次に、溶離剤の組成を、30%CHCN(0.1%TFA)/水(0.1%TFA)に1分間にわたって傾斜させ、水(0.1%TFA)中にCHCN(0.1%TFA)0.5%/分の線形勾配速度を開始して、所望のペプチドが該カラムから完全に溶出されるまで、維持することができる。生成物含有画分をWaters XTerra分析用逆相C18カラム(10μ, 120Å)上で分析することができ、>95%純度で生成物を含有する画分をプールし、凍結乾燥して、環状ジスルフィド・ペプチドモノマー(13)(0.12g、24%収率)を>95%純度で得ることができる。粗ペプチドモノマー10gをこのようにして連続的に精製することができる。
【0052】
前駆体ダイマーペプチド(16)、
【0053】
【化9】

【0054】
を製造するための典型的な方法を以下に述べる。前駆体ダイマーペプチドの製造は、モノマーペプチドを2工程手段で結合させることによって達成することができる。最初に、Ac−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK−[K(ivDde)]−NH(12)をDIEA(5当量)の存在下のDMF中でジスクシンイミジルグルタレート(DSG,5当量)と30分間反応させることができる。反応混合物を酢酸エチルで希釈することができ、この結果、該ペプチドのグルタール酸モノアミド・モノNHSエステルの沈殿が生じる。未反応DSGを含有する上清をデカントすることができ、該モノNHSエステルを酢酸エチルで数回洗浄して、痕跡量のDSGを除去することができる。質量スペクトルデータは、クリーンな生成物としての該モノNHSエステルの形成を確証する。これをDMF中に再溶解して、モノマーペプチドAc−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(Adoa−Adoa)−NH(13)と、DIEA(5当量)の存在下で反応させることができる。HPLCとMSの結果は、単一主要生成物としてのivDde含有ダイマーの形成を示唆する。該ダイマーのLysのε−アミン上ivDde保護基は、該反応混合物をDMF中ヒドラジン(10%)と共に20分間撹拌することによって除去することができる。次に、該溶液をTFAによって酸性化し、10%CHCN(0.1%TFA)−水(0.1%TFA)で希釈し、分取逆相C18HPLCカラムに供給して、アセトニトリル(0.1%TFA)から0.1%TFA水溶液への勾配溶離によって精製することができる。必要量の前駆体ダイマーペプチドを得るために、モノマーペプチドの各々0.5gから1g程度までを用いて、反応を行うことができる。あらゆる場合に、必要な前駆体ダイマーペプチドを〜32%収率及び>95%純度で単離することができ、このことは、該手段の再現性と拡張性を確証する。
【0055】
該合成における最終工程は、該前駆体ダイマーペプチドへのDSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(18)のコンジュゲート化であることができる。既述したように、DSPE−PEG2000−NHのPEG2000部分は、公称的に、45エチレングリコール単位から構成される。しかし、この物質がPEG含有種の分布であり、その質量中心が45エチレンオキシ単位を含有する公称的化合物であることを理解すべきである。
【0056】
前駆体ダイマーペプチドへのDSPE−PEG2000−NHのコンジュゲート化は、該前駆体ダイマーのグルタール酸モノアミド・モノNHSエステルの製造と、これと、該リン脂質アンモニウム塩の遊離アミノ基との反応によって達成することができる。したがって、ivDde含有前駆体ダイマーペプチド(16)を、DMF中のDSG(4当量)と、DIEA(5当量)の存在下で30分間反応させることができる。前駆体ダイマーペプチドの製造におけると同様に、この溶液を酢酸エチルで希釈して、該ダイマーのグルタール酸モノアミドモノNHSエステル(17)を固体として沈殿させることができる。未反応DSGを除去するために、上清をデカントすることができる。ダイマーペプチドの固体グルタール酸モノアミドモノNHSエステル(17)を次に、酢酸エチルで数回洗浄して、痕跡量のDSGを除去することができる。質量スペクトルの結果は、クリーンな生成物としての該ペプチドダイマーのグルタール酸モノアミド・モノNHSエステルの形成を確証する。
【0057】
該ダイマーグルタール酸モノアミド・モノNHSエステル(17)をDMF−CHCl(8:2)中に溶解して、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(0.9当量)と、DIEA(4当量)の存在下で24時間反応させることができる。遊離のリン脂質は、最終生成物の精製と単離を困難にする可能性があるので、該NHSエステル(17)を過剰に用いて、該リン脂質アンモニウム塩の消費を最大化することができる。該反応混合物を水(0.1%TFA)−CHCN−CHOH(1:1)(0.1%TFA)(〜100ml)で希釈して、逆相C4カラム(Kromasil(登録商標)Prep C4, 10μ, 300Å、50x250mm, 流速100ml/分)に供給して、該カラムを水(0.1%TFA)−CHCN−CHOH(1:1)(0.1%TFA)溶媒混合物で溶出して、親水性不純物を除去することができる。次に、水(0.1%TFA)中へのCHCN−CHOH(1:1)(0.1%TFA)の勾配を用いて、生成物を溶離することができる。回収した画分を、所望の生成物と、しばしば分離され難いDSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(これは、強いUV発色団を有さない)との検出を可能にするELSデテクターを用いて、逆相HPLCによって分析することができる。これは、ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートとDSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩との明確な分離を示唆する。純粋な生成物を含有する画分を回収して、回転蒸発器で濃縮し(メタノール含量を減ずるため)、凍結乾燥して、ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを無色固体として得ることができる。
【0058】
必要量のダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを製造するために、前駆体ダイマーペプチド0.5〜1.0gを用いて、数回のランを行うことができる。あらゆる場合に、目的のダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを57〜60%収率及び>99%純度で単離することができる。上記の連続ランから得られるダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの総量(bulk quantity)は、個々のランからの生成物をt−ブタノール−アセトニトリル−水(1:1:3)に溶解し、続いて凍結乾燥することによって得ることができる。遊離チオールの定量算出(quantative estimation)のためのEllman方法を該ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの総合サンプル(bulk sample)に適用することができる;遊離チオールは、存在するとしても、検出限界未満であろう。アミノ酸組成分析は、許容可能な限界内の結果を生じて、該ペプチド誘導体の指定された構造を支持する。MALDI−TOF質量スペクトル分析も、該ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの推定された構造を支持する。
低い若しくは無視できるほどのTFAレベルを有するダイマー・リン脂質コンジュゲートの製造方法
本発明はさらに、非常に低レベルのTFAを有するダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの製造方法も提供する。ある一定の方法がこのようなコンジュゲートの、グラム規模での合成と精製を可能にするが、該コンジュゲートのリゾ型(lyso-version)の形成が5℃での凍結乾燥物質の貯蔵時に又は該コンジュゲートの水溶液の貯蔵時に観察されている。ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート中のリン脂質脂肪酸エステルの1つのTFA促進酸加水分解によってリゾ化合物(lyso-compounds)が形成されると考えられる。
【0059】
製薬的に受容される対イオンを有する安定な物質としてリン脂質ペプチドを得るために、ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを得るための非常に効果的な方法が発見された、この方法は該ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートのTFA塩又は任意の適当な前駆体(単数又は複数)を類似の製薬的酢酸塩に転化させる。これらの方法の典型的な実施態様を以下に提供する。
【0060】
表3は、図6、7及び8で示した同定ラベルを説明する。
【0061】
【化10】

【0062】
次に図6と7を参照すると、ある一定の実施態様において、ヘテロダイマーペプチド(27)のモノマーペプチド成分、即ち、TFA塩化合物(22)と(25)は、それらをそれらの酢酸塩に転化させるために、酢酸アンモニウムのステップ勾配を用いるマクロ細孔質スルホン酸カチオン交換樹脂AG MP−50上でのイオン交換クロマトグラフィーを受ける。次に、2つのペプチドモノマー酢酸塩(23)と(26)をグルタリル・リンカーによって結合させて、酢酸塩としてのダイマー(27)を形成することができる。それぞれ10mM NHOAcを含有するCHCN/HOを用いる線形勾配方法を用いたC−18分取HPLCによる、(27)の粗ダイマー酢酸塩の精製によって、純粋なダイマー酢酸塩(27)が得られる。このダイマーからDSPE−PEG2000−NH(29)へのコンジュゲート化と、CHCN/HO/NHOAcを用いるC−3分取HPLCによる粗混合物の最終精製によって、化合物(21)が酢酸塩として得られる。
【0063】
さらに詳しくは、化合物(22)、(25)及び(27)は全て、側鎖カルボン酸とアミノ基を有する。該ペプチドによる樹脂の完全な浸透を可能にし、樹脂の塩基基(アミノ基とグアニジン基)による該ペプチドの固定化を利用するために、AG MP−50、マクロ細孔質カチオン交換樹脂を用いることができる。該ペプチドのTFA塩を、AG MP−50カラム(スルホン酸形)に吸着させて、該カラムを水で洗浄して、次に、該ペプチドの溶解度に依存して0〜30%CHCN/HO中へのNHOAcのステップ勾配で溶出することができる。該ペプチドは約600mM NHOAcによって溶離することができ、次に、該ペプチドの酢酸塩形を純粋な形で得ることができる。ICフッ素分析とCE TFA対イオン分析の両方が一致して、該ペプチドの非常に低いTFA含量を示す。
【0064】
好ましい方法はさらに、残留NHOAcを除去するための最終ペプチドの数回の再溶解/再凍結乾燥を包含する。さもなければ、ペプチド中に存在する残留痕跡量のNHOAcが、DIEAの存在下で遊離アンモニアを生じる可能性がある。これは、その後の、モノマー(23)と(26)からの(27)の製造中に又は(27)の酢酸塩からの最終リン脂質・ペプチドコンジュゲート(21)中に主要生成物としての好ましくないペプチド−Glut−アミドの形成を生じる可能性がある。
【0065】
次に図7を参照すると、別の実施態様が、マクロ細孔質スルホン酸カチオン交換樹脂AG MP−50上でのイオン交換クロマトグラフィーによって、ダイマー(27)のTFA塩からその類似の酢酸塩への転化を生じる。次に、このダイマー酢酸塩をDSPE−PEG2000−NHとコンジュゲートさせ、続いて、粗物質をC−3分取カラムによってCHCN/HO/NHOAcを用いて、精製して、最終化合物(21)を酢酸塩として得ることができる。
【0066】
上記及び図6と7に述べた方法は優れた結果を与えるが、第2アプローチは、必要な工程がさらに少ないという利点を有する。さらなる詳細は以下の実施例セクションに記載する。
【0067】
図8を参照すると、別の実施態様が、リン脂質−ペプチドコンジュゲート(21)とTFAイオンとのサイズ差を利用して、最低量のTFAを有するダイマーコンジュゲートを得る方法を提供する。この実施態様では、21・nTFAアダクツが、炭酸水素アンモニウム・バッファーの存在下でサイズ排除カラムから溶離することができる。水へのアセトニトリルの線形勾配を用いるZorbax C−3カラム上での分取HPLCによって、粗21・nTFAから最初にリゾ化合物を除去することができる。両相を10mM酢酸アンモニウムで緩衝化することができる。これは、分析用HPLCによって実証されるように、リゾ化合物の分離を生じる。
【0068】
TFA量をさらに減ずるために、該物質をSephadex G-25カラムに供給して、炭酸水素アンモニウム水溶液によって溶出することができる。溶出液をHPLCによってモニターすることができる。生成物含有画分をプールし、凍結乾燥して、本質的にTFAを含まない所望の物質(21)を高い回収率で得ることができる。さらなる詳細は以下の実施例セクションに記載する。
【0069】
本明細書に記載するモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートとダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの両方を、例えば、ガス充填微小嚢のような超音波造影剤に組み込むことができる。このようなガス充填微小嚢は、例えば、ガス充填マイクロバブル、ガス充填マイクロバルーン、ガス充填マイクロカプセル等を包含する。好ましい実施態様では、ガス充填マイクロバブルを含む超音波造影剤中に、ペプチド・リン脂質コンジュゲートを組み込むことができる。リン脂質とリン脂質コンジュゲートからのガス充填マイクロバブルの製造方法は、当業者に知られている。例えば、本発明によるマイクロバブルは、下記特許:
【0070】
【化11】

【0071】
のいずれかに記載された方法によって製造することができ、これらの特許はそれらの全体で本明細書に援用される。WO 04/069284に開示されている方法は、特に好ましい。
適当なリン脂質には、脂肪酸の1若しくは2分子(同じ若しくは異なる)及びリン酸によるグリセロールのエステルが包含され、この場合に該リン酸残基が次に、例えばコリン、セリン、イノシトール、グリセロール、エタノールアミン等の基のような親水性基に結合する。リン脂質中に存在する脂肪酸は、一般に、典型的に12〜24個の炭素原子、好ましくは14〜22個の炭素原子を有し、飽和であることも、又は1つ以上の不飽和結合を含有することもありうる長鎖脂肪酸である。適当な脂肪酸の例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸である。リン脂質のモノエステルは、リン脂質の“リゾ(lyso)”形として当該技術分野に知られている。
【0072】
リン脂質のさらなる例は、ホスファチジン酸、即ち、脂肪酸によるグリセロール−リン酸のジエステル、スフィンゴミエリン、即ち、脂肪酸によるグリセロールジエステルの残基がセラミド鎖によって置換されているホスファチジルコリン類似体、カルジオリピン、即ち、脂肪酸による1,3−ジホスファチジルグリセロールのエステル、ガングリオシド、セレブロシド等を包含する。
【0073】
本明細書で用いる限り、リン脂質なる用語は、単独でも又は混合物としても用いることができる、自然発生した又は半合成的若しくは合成的に製造された生成物を包含する。
自然発生するリン脂質の例は、典型的には、大豆又は卵黄レシチンのような天然レシチン(ホスファチジルコリン(PC)誘導体)である。半合成リン脂質の例は、自然発生レシチンの部分的若しくは完全に水素化した誘導体である。
【0074】
合成リン脂質の例は、例えば、ジラウリロイル−ホスファチジルコリン(“DLPC”)、ジミリストイルホスファチジルコリン(“DMPC”)、ジパルミトイル−ホスファチジルコリン(“DPPC”)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(“DAPC”)、ジステアロイル−ホスファチジルコリン(“DSPC”)、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン(“MPPC”)、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン(“PMPC”)、1−パルミトイル−2−ステアロイルホスファチジルコリン(“PSPC”)、1−ステアロイル−2−パルミトイル−ホスファチジルコリン(“SPPC”)、ジオレオイルホスファチジルコリン(“DOPC”)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチル−DSPC)、ジラウリロイル−ホスファチジルグリセロール(“DLPG”)とそのアルカリ金属塩、ジアラキドイルホスファチジルグリセロール(“DAPG”)とそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(“DMPG”)とそのアルカリ金属塩、ジパルミトイル−ホスファチジルグリセロール(“DPPG”)とそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(“DSPG”)とそのアルカリ金属塩、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(“DOPG”)とそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジン酸(“DMPA”)とそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジン酸(“DPPA”)とそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジン酸(“DSPA”)、ジアラキドイルホスファチジン酸(“DAPA”)とそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジル−エタノールアミン−e(“DMPE”)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(“DPPE”)、ジステアロイルホスファチジル−エタノールアミン(“DSPE”)、ジミリストイルホスファチジルセリン(“DMPS”)、ジアラキドイルホスファチジルセリン(“DAPS”)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(“DPPS”)、ジステアロイルホスファチジルセリン(“DSPS”)、ジオレオイルホスファチジルセリン(“DOPS”)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(“DPSP”)、及びジステアロイルスフィンゴミエリン(“DSSP”)を包含する。
【0075】
適当なリン脂質はさらに、それへの親水性ポリマーの結合によって修飾されたリン脂質を包含する。修飾されたリン脂質の例は、ポリエチレングリコール(PEG)によって修飾されたホスファチジルエタノールアミン(PE)、簡単には、“PE−PEGs”、即ち、例えば、DPPE−PEG、DSPE−PEG、DMPE−PEG又はDAPE−PEG(この場合、DAPEは1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンである)のような、親水性エタノールアミン部分が可変分子量(例えば、300〜5000ダルトン)のPEG分子に結合しているホスファチジルエタノールアミンである。該組成物はさらに、例えば、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸若しくはオレイン酸);ステロール(例えば、コレステロール、又は脂肪酸若しくは糖酸によるステロールのエステル);グリセロール又はグリセロールエステル(グリセロール・トリパルミテート、グリセロール・ジステアレート、グリセロール・トリステアレート、グリセロール・ジミリステート、グリセロール・トリミリステート、グリセロール・ジラウレート、グリセロール・トリラウレート、グリセロール・ジパルミテートを包含する);第3級若しくは第4級アルキルアンモニウム塩(例えば、1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DSTAP)、1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DPTAP))を含めた、他の両親媒性化合物及びこれらの混合物又は組み合わせを含有することもできる。
【0076】
好ましくは、該組成物(formulation)は、例えば、ホスファチジン酸、PE−PEG、パルミチン酸、ステアリン酸、エチル−DSPC又はDSTAPのような、総合正味電荷(overall net charge)を有する、少なくとも1つの成分を、好ましくは約50%未満のモル量で含む。特に好ましい組成物は、下記成分:DSPC、DPPG、DPPA、DSPE−PEG1000、DSPE−PEG2000、パルミチン酸及びステアリン酸の2つ以上の混合物を含む。幾つかの好ましいリン脂質と組成物を、実施例に記載する。本明細書に開示した又は当業者に知られたガスのいずれも使用可能である;しかし、例えば、SF又はペルフルオロカーボン(例えば、CF、C及びC10)のような不活性ガスが、場合によっては、例えば空気、窒素、酸素又は二酸化炭素のような他のガスとの混合物として、好ましい。
【0077】
本発明の好ましいマイクロバブル懸濁液はリン脂質から、例えば、適当な溶媒中の粗リン脂質の溶液の凍結乾燥若しくは噴霧乾燥のような既知方法を用いて、又は下記特許:
【0078】
【化12】

【0079】
(これらは、それらの全体で本明細書に援用される)
に記載された方法を用いて製造することができる。好ましくは、国際特許出願WO 04/069284に開示されているように、水のエマルジョン又は水非混和性有機溶媒のエマルジョン中に分散した、分散保護剤(lyoprotecting agent)(例えば、炭水化物、糖アルコール、ポリグリコール及びこれらの混合物、以下に詳述)と、任意に他の両親媒性物質(例えば、ステアリン酸)との混合物としてリン脂質(例えば、DSPC及び/又はDSPA)を含有するマイクロエマルジョンを製造することができる。好ましい有機溶媒は、1.0g/L以下、好ましくは、さらに低い約0.01g/Lの水中溶解度を有するものであり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−オクテン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、1−メチル−シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、ジブチルエーテルとジイソプロピルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、2−クロロ−1−(ジフルオロメトキシ)−1,1,2−トリフルオロエタン(エンフルラン)、2−クロロ−2−(ジフルオロメトキシ)−1,1,1−トリフルオロエタン(イソフルラン)、テトラクロロ−1,1−ジフルオロエタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロノナン、ペルフルオロベンゼン、ペルフルオロデカリン、メチルペルフルオロブチルエーテル、メチルペルフルオロイソブチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル、エチルペルフルオロイソブチルエーテル、及びこれらの混合物を包含する。本発明のペプチド−リン脂質コンジュゲートは、マイクロエマルジョン中で、微小嚢のエンベロープを形成するリン脂質と一緒に混合することができる。好ましくは、最初に、ペプチド−リン脂質コンジュゲートとPE−PEG(例えば、DSPE−PEG2000)の水性懸濁液を調製し、これを次に、該リン脂質と分散保護剤を含む水性―有機エマルジョンと一緒に混合する。好ましくは、前記混合を例えば約40℃〜80℃に加熱しながら行う。
【0080】
水性キャリヤー中に分散させることによってマイクロバブルの懸濁液を形成する前に、凍結乾燥した又は噴霧乾燥したリン脂質粉末を空気若しくは他のガスと接触させる。水性キャリヤーと接触させると、その構造が破壊されている粉状リン脂質は、ラメラ状若しくは層状セグメントを形成し、該セグメントは、その内部にガスが分散しているマイクロバブルを安定化させる。この方法は、長期間貯蔵した場合にも安定であり、(好ましいガス雰囲気下で貯蔵されていた)乾燥した層状リン脂質の単なる溶解によって得られるマイクロバブルの懸濁液の製造を、振とう若しくは何らかの激しい撹拌なしに可能にする。
【0081】
或いは、例えばWO 97/29783に開示されているように、ガスを高い撹拌速度で水溶液中に懸濁させることによって、マイクロバブルを製造することができる。マイクロバブルの他の製造方法は、本明細書に援用されるWO 2004/069284に開示されており、この方法は、リン脂質の存在下で水性媒質中に有機溶媒のエマルジョンを製造し、続いて、任意の洗浄及び/又は濾過工程後に前記エマルジョンを凍結乾燥することを含む。幾つかの好ましい製造方法を実施例に開示する。
【0082】
ガス充填マイクロバブルを製造するための組成物は、有利には、例えば凍結防止及び/又は分散保護効果(cryoprotective and / or lyoprotective effect)を有する作用剤及び/又は充填剤(bulking agent)のような、凍結乾燥添加剤(lyophilization additive)、例えば、アミノ酸、例えば、グリシン;炭水化物、例えば、糖(例えばスクロース、マンニトール、マルトース、トレハロース、グルコース、ラクトース若しくはシクロデキストリン)又は多糖(例えば、デキストラン);又はポリグリコール、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、PEG−4000)をさらに含む。
【0083】
これらの超音波組成物のいずれも、さらに、できる限り、血液と等張性であるべきである。このため、上記超音波造影剤懸濁液のいずれにも、注入前に、少量の等張剤(isotonic agent)を添加することができる。該等張剤は、医薬に一般に用いられる生理学的溶液であり、該溶液は、生理的食塩水溶液(0.9%NaCl)、2.6%グリセロール溶液、5%デキストロース溶液等を含む。さらに、該超音波組成物は、例えば、乳化剤、粘度調節剤、凍結防止剤、分散保護剤(lyoprotectants)、充填剤等を含めた、標準的な製薬的に受容される添加剤を含むことができる。
【0084】
本発明の超音波造影剤には、任意の生体適合性ガスを用いることができる。本明細書で用いる限り、“ガス”なる用語は、正常なヒト体温において実質的にガス形態である任意の物質(混合物を包含する)を包含する。したがって、該ガスは、例えば、空気、窒素、酸素、CO、アルゴン、キセノン若しくはクリプトン、フッ素化ガス(例えば、ペルフルオロカーボン、SF、SeF)、低分子量炭化水素(例えば、炭素原子1〜7個含有)、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン若しくはペンタンのようなアルカン、例えば、シクロプロパン、シクロブタン若しくはシクロペンテンのようなシクロアルカン、例えば、エチレン、プロペン、プロパジエン若しくはブテンのようなアルケン、又は例えば、アセチレン若しくはプロピンのようなアルキン、及び/又はこれらの混合物を包含しうる。しかし、フッ素化ガスが好ましい。フッ素化ガスは、少なくとも1個のフッ素原子を含有する物質、例えば、SF、フレオン(炭素原子1個以上とフッ素を含有する有機化合物、即ち、CF、C、C、C、C10、CBrF、CCl、CClF、及びCBrClF)及びペルフルオロカーボンを包含する。ペルフルオロカーボンなる用語は、炭素原子とフッ素原子のみを含有する化合物を意味し、特に、飽和、不飽和及び環状ペルフルオロカーボンを包含する。通常好ましい飽和ペルフルオロカーボンは、式 Cn+2[式中、nは1〜12、好ましくは2〜10、最も好ましくは3〜8、さらにより好ましくは3〜6である]で示される。適当なペルフルオロカーボンは、例えば、CF、C、C、C、C10、C12、C、C14、C18及びC20を包含する。最も好ましくは、該ガス若しくはガス混合物は、SF又は、C、C、C10、C、C12、C14、C18から成る群から選択されるペルフルオロカーボンを含み、C10が特に好ましい。さらに、WO 97/29783、WO 98/53857、WO 98/18498、WO 98/18495、WO 98/18496、WO 98/18497、WO 98/18501、WO 98/05364、WO 98/17324も参照のこと。好ましい実施態様では、該ガスは、C10又はSFを、任意に空気、窒素又は二酸化炭素との混合物として含む。
【0085】
ある一定の状況では、ガス状物質の前駆体(例えば、“ガス前駆体”としばしば呼ばれる、in vivoでガスに転化することができる物質)を含むことが、好ましいと考えられる。ガス前駆体と、それが発生するガスは、生理的に許容されるものであることが好ましい。ガス前駆体は、pH活性化、光活性化、温度活性化等されうる。例えば、ある一定のペルフルオロカーボンは温度活性化ガス前駆体として用いることができる。例えばペルフルオロペンタンのような、これらのペルフルオロカーボンは、室温(又は該作用剤が製造される及び/又は貯蔵される温度)を超えるが、体温未満である液相/気相転移温度を有する;したがって、該ペルフルオロカーボンは、相シフトを受けて、人体内でガスに転化する。
【0086】
上述したように、該ガスはガス混合物を含むことができる。下記組み合わせ:ガス(A)と(B)の混合物[この場合、ガスの少なくとも1つ(B)が、0.5〜41容量%の量で存在し、80ダルトンより大きい分子量を有し、フッ素化ガスであり、(A)は空気、酸素、窒素、二酸化炭素及びこれらの混合物から選択され、該ガス混合物のバランスがガス(A)である]が、特に好ましいガス混合物である。
【0087】
凍結乾燥生成物は、特別な貯蔵条件を必要とすることが知られている過分極化ガスを含有しない限り、その環境の温度制御を必要とせずに、貯蔵し、輸送することができ、特に、該凍結乾燥生成物は、病院及び医師に、このような使用者が特別な貯蔵設備を有する必要なく、すぐに使える投与可能な懸濁液に現場で処方するために供給することができる。好ましくは、このような場合に、該凍結乾燥生成物は、2つの分離容器又は二重チャンバ容器を含むことができる2成分キットの形態で供給することができる。前者の場合には、該容器は好ましくは、慣用的な中隔密閉式バイアルであり、この場合に、工程(b)の凍結乾燥残渣を含有するバイアルが中隔で密閉され、該中隔を通してキャリヤー液体を任意に予め充填された注射器を用いて注入することができる。このような場合に、第2成分の容器として用いられる注射器は、次に、造影剤を注入するためにも用いられる。後者の場合には、二重チャンバ容器は好ましくは、二重チャンバ注射器であり、凍結乾燥物が再構成され、次に適当に混合され、穏やかに振とうされたならば、該造影剤を直接注入するために、該容器を用いることができる。両方の場合に、該容器の内容物への充分な気泡形成エネルギーの供給を行う又は可能にする手段が備えられる。しかし、上述したように、本発明による安定化造影剤では、ガスマイクロバブルのサイズは、再構成された乾燥生成物に与えられる撹拌エネルギー量に実質的に依存しない。したがって、一貫したマイクロバブル・サイズを有する再現可能な生成物を得るために、一般に、穏やかな手動振とうのみが必要であるに過ぎない。
【0088】
乾燥粉末と水溶液とを無菌形式で一緒にすることができる、他の2チャンバ再構成系も本発明の範囲内であることは、当業者によって理解されることができる。このような系では、生成物の貯蔵寿命を高めるために、水不溶性ガスと環境との間に水相を介在させることができるならば、特に有利である。造影剤の形成のために必要な物質(例えば、再構成中にリン脂質に結合させるべきターゲット・リガンド)が容器内に前から存在しない場合には、これを、キットの他の成分との容易な組み合わせを促進するのに適した形で又は容器内で、キットの他の成分でパッケージすることができる。
【0089】
特別な容器、バイアル又は結合系は必要ではない;本発明は、慣用的な容器、バイアル及びアダプターを用いることができる。唯一の必要条件は、ストッパーと容器との間の良好なシールである。それ故、該シールの性質は第一の重要な問題である;シール一体性の何らかの破壊は好ましくない物質のバイアルへの侵入を許す可能性がある。無菌性を保障することの他に、安全性と適当な再構成を保障するために、周囲圧又は減圧においてストッパーを施された(stoppered)生成物に対して真空保持することが重要である。該ストッパーは、例えばポリ(イソブチレン)又はブチルゴムのような、エラストマーに基づく化合物又は多成分組成物でありうる。
【0090】
超音波適用の場合に、リン脂質安定化マイクロバブルによって形成された造影剤は、例えば、リン脂質の注入量が0.1〜200μg/kg体重、好ましくは約0.1〜30μg/kgの範囲内であるような投与量で投与することができる。
【0091】
本発明によって用いることができる超音波イメージング法は、例えば、カラーDoppler、パワーDoppler、Doppler振幅、刺激音響イメージング(stimulated acoustic imaging)、及び二次元若しくは三次元イメージング技法のような、既知方法を包含する。イメージングは調波(共鳴周波数)モード又は基本モードで行うことができ、二次調波モードが好ましい。
【0092】
本発明の超音波造影剤はさらに、多様な治療的イメージング方法に用いることができる。治療的イメージングなる用語は、その意味の範囲内に、造影剤の使用を含み(例えば、選択された受容体若しくは組織への治療剤のデリバリーのため)、in vitro及び/又はin vivoで生物学的効果を発揮する又は発揮させることができる、患者における疾患の任意の治療方法を包含する。治療的イメージングは、有利には、例えば、高い音圧(典型的に、非破壊的診断イメージング法に一般に用いられる圧力よりも高い)における超音波バーストを用いた、ガス充填微小嚢の制御された限局的破壊と関連付けることができる。この制御された破壊は、例えば、任意に、適当な治療剤の限局的放出と組み合わせて、血栓の治療に用いることができる(ソノトロンボリシスとしても知られた技法)。或いは、前記治療的イメージングは、微小嚢の限局的破裂によって誘発される、細胞レベルでの一過性膜透過性化の結果として、細胞中への治療剤のデリバリーを包含することができる。この手法は、例えば、細胞中への遺伝物質の効果的デリバリーのために用いることができる;場合によっては、薬物を遺伝物質と組み合わせて限局的にデリバリーすることができ、このようにして、患者の複合薬剤学的/遺伝的治療法を可能にする(例えば、腫瘍治療の場合)。
【0093】
“治療剤”なる用語は、その意味の範囲内に、例えば、患者における疾患の治療方法におけるような、何らかの治療用途に使用可能である、任意の物質、組成物又は粒子、並びにin vitro及び/又はin vivoで生物学的効果を発揮する又は発揮させることができる任意の物質を包含する。したがって、治療剤は、患者における何らかの病的状態(病気、苦痛、病変(disease lesion)又は損傷を包含する)の治療(診断、予防、緩和、鎮痛又は治癒を包含する)に用いることができる任意の化合物又は物質を包含する。治療剤の例は、薬物、医薬品、生理活性剤(bioactive agents)、細胞傷害剤(cytotoxic agents)、化学療法剤、放射線療法剤、タンパク質、天然若しくは合成ペプチド(オリゴペプチド及びポリペプチドを包含する)、ビタミン、ステロイド並びに遺伝物質(ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド及びプラスミドを包含する)である。
物質と分析方法
反応、クロマトグラフィー精製及びHPLC分析のための溶媒は、VWR Corporation ( West Chester, PA)からのE. Merck Omniグレード溶媒であった。N−メチルピロリジノン(NMP)とN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)はPharmco Products Inc.( Brookfield, CT)から入手し、ペプチド合成グレード又はlow water/amine-free Biotechグレード品質であった。ピペリジン(sequencingグレード、再蒸留99+%)とトリフルオロ酢酸(TFA)(spectrophotometricグレード又はsequencingグレード)はSigma-Aldrich Corporation (Milwaukee, WI)から又はFluka Chemical Division of Sigma-Aldrich Corporationから入手した。N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、フェノール(99%)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)及びトリイソプロピルシラン(TIS)は、Sigma-Aldrich Corporationから購入した。Fmoc保護アミノ酸、シュードプロリン・ジペプチド、Fmoc−Asp(O−tBu)−Ser(ΨMe,Mepro)−OH及びFmoc−Gly−Thr(ΨMe,Mepro)−OH及びN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)は、Novabiochem (San Diego, CA)から入手した。Fmoc−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸(Adoa)は、NeoMPS Corp. (San Diego, CA)又はSuven Life Sciences (Hyderabad, India)から入手した。ジスクシンイミジル・グルタレート(DSG)と1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−エタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)2000]アンモニウム塩[DSPE−PEG2000−NH]は、それぞれ、Pierce Chemical Co. (Rockford, IL.)とAvanti(登録商標)Polar Lipids (Alabaster, AL)から入手した。Fmoc−Gly−Gly−Gly−OHとFmoc−Gly−Gly−OHは、対応するトリグリシン又はジグリシンからFmoc−OSuとの反応によって、当社内で(in-house)製造した。AG MP−50イオン交換樹脂は、Bio-Rad (Hercules, CA)から入手した。
【0094】
分析用HPLCデータは、一般に、Waters XTerra MS-C18 4.6 x 50 mmカラム(粒度:5μ;120Å孔度)と勾配若しくは均一濃度(isocratic)溶離系(溶離剤Aとして水(0.1%TFA)及び溶離剤BとしてCHCN(0.1%TFA)若しくはCHCN−CHOH(1:1,v/v)を用いる)を用いるShimadzu LC-10AT VP複式ポンプ・グラジエント系を用いて得た。化合物の検出は220及び254nmにおいてUVを用いて達成した。リン脂質−PEG−ペプチド誘導体の純度は、YMC C-4 (5μM,300Å, 4.6 x 250mm )カラム上又はZorbax 300 SB-C3 (3.5μM,300Å, 3 x 150mm )カラム上で、SEDEX 55 Light Scattering Detector( LSD)とUVデテクターを用いて測定した。
【0095】
分取HPLCは、分取フローセル付きSPD-10A V UVデテクターを装備したShimadzu LC-8A複式ポンプ・グラジエント系で行った。一般に、分取用Shimadzu LC-8A複式ポンプ・グラジエント系に取り付けた第3ポンプを用いて、粗ペプチドを含有する溶液を、該化合物の特性に依存して、逆相C18、C4又はC3カラム上に装填した。粗生成物混合物の溶液を分取用HPLCカラムに供給した後に、反応溶媒と、例えばDMF若しくはDMSOのような、希釈剤として用いた溶媒が、低有機相組成で(at low organic phase composition)カラムから溶出した。次に、溶離剤Bから溶離剤Aへの勾配溶離を用いて、所望の生成物を溶出させた。生成物含有画分を、分析用HPLCと質量スペクトル分析によって測定した、それらの純度に基づいて、一緒にした。一緒にした画分を凍結乾燥させて、所望の生成物を得た。
【0096】
アミノ酸組成分析はYale University (New Haven, CT)におけるKeck Biotechnology Resource Laboratoryにおいて行った。質量スペクトルデータは、MScan Inc.( 606 Brandywine Parkway, West Chester PA 19380)から得たか、又は当社内でAgilent LC-MSD 1100 Mass Spectrometer上で得た。画分選択と生成物の特徴付けのために、質量スペクトル値は通常、API-ESを陰イオンモードで用いて得た。一般に、ターゲットペプチドの分子量は〜3000であった;質量スペクトルは通常、[M−H]ではなく、二重若しくは三重に負に荷電したイオン質量値を示した。これらを、回収と組み合わせのための画分選択に用いて、HPLC精製中に純粋なペプチドを得た。幾つかの場合に、画分は、質量スペクトル中に[M−2H]/2+57又は[M−2H]/2+114に帰属する主要なピークを示した。これらのピークは、ペプチド1分子につきトリフルオロ酢酸1若しくは2分子のアダクツの形成によるものである。MS結果とHPLC純度及び凍結乾燥過程を比較することによって画分を細心に回収した後に、少量の単離された綿毛状固体を水中に溶解し(0.5mg/ml)、N−メチル−D−グルカミン水溶液(〜0.5M)の1滴によって処理した。精製ペプチドの最終純度結果のために、この溶液をHPLCとMSによって分析した。N−メチル−D−グルカミンの存在下のペプチド溶液は、質量スペクトルに[M−2H]/2+57又は[M−2H]/2+114質量値ピークを示さず、その代わりに予想された[M−2H]/2又は[M−3H]/3ピークが観察された。
【0097】
下記非限定的実施例は、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート及びダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの多量の高度に純粋な形態を得るために用いた、効果的な方法についてのさらなる詳細を提供する。これらの非限定的実施例はさらに、該モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート及びダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを含む典型的な標的マイクロバブルの製造をも説明する。これらの実施例はさらに、KDRトランスフェクション細胞(KDR-transfected cell)での静的結合試験及びVEGF−R2/Fcキメラタンパク質での動的結合試験におけるこのような標的マイクロバブルの使用をも説明する。実施例はさらに、ウサギVX2腫瘍モデルにおけるKDR結合リポペプチドを含有する超音波造影剤の評価を記載する。
【実施例】
【0098】
以下の実施例1〜2は、図2に示したモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートに関する。この化合物の合成方法は、図1に示す。これらの実施例は、図2に示した化合物の合成方法を特に詳しく述べるが、同様な方法を用いて、図10に示したモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートと図9に示した線状ペプチドモノマー(32)並びに他のモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを製造することができる。さらに、同時係属米国出願No.10 / 661,156 (September 11,2003出願)は、該ペプチドモノマーの製造方法を述べており、該出願はその全体で本明細書に援用される。
【0099】
実施例1
線状ペプチドモノマー(2):
【化13】

N−アセチル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−イソロイシル−L−ロイシル−L−セリル−L−メチオニル−L−アラニル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−ロイシル−L−アルギニル−L−ヒスチジル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−L−セリル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシンアミドの固相合成(SPPS)と精製
【0100】
線状ペプチドモノマー(2)を、SONATA(登録商標)/Pilot Peptide Synthesizerでの確立された自動化プロトコルによって、DMF中でFmoc−Pal−Peg−PS樹脂(0.2mmol/g)、Fmoc保護アミノ酸及びDIC仲介HOBtエステル活性化を用いて合成した。該ペプチド配列を、Fmoc−Pal−Peg−PS樹脂上でのSPPS方法によって、典型的には10mmol規模で、段階的やり方で(in stepwise fashion)合成した。DMF中で4倍過剰な、アミノ酸とDIC−HOBt試薬対の各々によってアミノ酸カップリングを行った。
【0101】
アミノ酸の典型的なカップリングでは、樹脂1gにつき乾燥DMF5mlを用いた。使用した樹脂に基づいて、算出したDMFの総量を、溶液調製のためにアミノ酸とHOBtとDICに割り当てた。例えば、樹脂50g(10mmol規模)を必要とする合成のためには、DMFの算出量(250ml)をアミノ酸(150ml)とHOBt(50ml)とDIC(50ml)に分配した。Sonata Pilot Peptide Synthesizer上のアミノ酸容器に固体乾燥アミノ酸(該樹脂に関して4倍過剰量)を装填した。カップリング工程の開始時に、該機器のソフトウェアを用いて、DMFの選択量(アミノ酸の希釈用)とDMF中のHOBt(4当量)とDMF中のDIC(4当量)を連続的に供給し、窒素バブリングによる混合を開始して、4分間行った。これは、該アミノ酸を予備活性化し、該混合物の全ての成分の完全な溶解を保証するのに役立った。活性化後に、活性化Fmocアミノ酸溶液の、該樹脂含有反応器への移送を該ソフトウェアが仲介した(mediated)。移送が完了した後に、該容器を3時間、窒素バブリングの反復によって撹拌した。3時間のカップリング時間後に、該樹脂をDMF(5ml/g,6x)によって完全に洗浄し、HOBt(0.1M)含有DMF中25%ピペリジン(5ml/g)によって、Fmoc基の切断を行った(2x10分間)。その後のアミノ酸カップリングに備えて、該樹脂からのピペリジンの完全な除去を保証するために、該樹脂をDMF(5ml/g,6x)で完全に洗浄した。Fmoc−Gly−Gly−Gly−OH及びFmoc−Gly−Gly−OHの場合には、本文中に(in the text)記載したように活性化時間中のジケトピペラジン形成を最少にするために、該アミノ酸ボトル中での予備活性化を行わなかった。それ故、これらの2つの場合には、アミノ酸、HOBt及びDICの溶液を反応器に連続的に加えて、カップリング・プロセスを“現場(in situ)”活性化によって行った。
【0102】
鎖延長が完了した後に、N−末端アミノ酸のFmoc基を標準方法で除去し、続いて、DMFによって標準的に洗浄した(上記参照)。次に、新たに調製したアセチル化混合物(DMF/6ml/g樹脂中の0.5M無水酢酸、0.125M DIEA及び0.015M HOBt)によってN−末端アミノ酸にキャップを施した(2x20分間)。ペプチド合成が完了した後に、該樹脂を切断用カクテル(cleavage cocktail)、“試薬B”(TFA:水:フェノール:トリイソプロピルシラン,88:5:5:2,v/v/w/v)(10ml/g樹脂)によって4時間処理した。揮発物を除去し、このようにして得られたペーストをエーテルと共に摩砕して、固体を得て、遠心分離を介在させながら(上清のデカンテーションを可能にするように懸濁固体を圧縮するため)、該固体をエーテル(3x)によって洗浄し、次に真空下で乾燥させて、所望のペプチドをオフホワイト色固体として得た。線状ペプチドモノマー(2)の10mmol規模合成によって、粗ペプチド33.82g(理論量の103%)を得た。理論量より大きい収率は、恐らく水分(moisture)と残留溶媒によると思われた。
【0103】
線状ペプチドモノマー(2):
【化14】

N−アセチル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−イソロイシル−L−ロイシル−L−セリル−L−メチオニル−L−アラニル−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−ロイシル−L−アルギニル−L−ヒスチジル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−L−セリル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシンアミドの精製
【0104】
粗線状ペプチドモノマー(2)の〜0.5g部分を最少量のCHCN(〜20ml)中に溶解した。水によって、該溶液量を〜100mlに調節して、該溶液を、第3ポンプを用いて、水(0.1%TFA)中10%CHCNと予め平衡させてある逆相C18分取カラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS C18, 10μ, 300Å, 50 x 250mm,流速100ml/分)上に装填した。該カラムは、サンプル溶液の供給中に、平衡化溶離剤(equlibrating eluent)によって溶出しなかった。該サンプル溶液を該カラムに供給した後に、溶離剤の組成を20%CHCN−水(0.1%TFA)に1分間にわたって傾斜させ、水(0.1%TFA)中へのCHCN(0.1%TFA)0.6%/分の速度で線形勾配を開始して、50分間維持した。生成物溶離のインジケーターとして220nmにおけるUVを用いて、画分(15ml)を手動で回収した。回収した画分をWatersXTerra分析用逆相C−18カラム(5μ粒子,120Å孔)上で分析して、>95%純度の生成物含有画分をプールし、凍結乾燥させて、対応する純粋な線状ペプチドモノマー(2)を得た。典型的には、粗生成物(2)0.5gの精製によって、所望の生成物(>95%純度)0.12g(24%収率)が得られた。
【0105】
実施例2
モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1):
【化15】

N−アセチル−L−アルギニル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−トリプトフィル−L−アスパルチル−L−イソロイシル−L−グルタミル−L−ロイシル−1−セリニル−L−メチオニル−L−アラニル−L−アスパルチル−L−グルタミニル−L−ロイシル−L−アルギニル−L−ヒスチジル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−L−セリニル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシンアミドの製造
【0106】
モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)、Ac−RAQDWYYDEILSMADQLRHAFLSGGGGGK(DSPE−PEG2000−NH−Glut)−NH(配列番号:1)は、(3)、ペプチドモノマー(2)のグルタール酸モノアミドモノNHSエステルの、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(4)によるコンジュゲート化によって製造した。
【0107】
電磁気撹拌バーと中隔キャップを備えた丸底フラスコに、無水ジメチルホルムアミド(7.5ml)と、ジスクシンイミジル・グルタレート(DSG,0.25g,0.75mmol)と、ジイソプロピルエチルアミン(0.10g,0.78mmol)を撹拌しながら、連続的に装入した。固体線状ペプチドモノマー(2)(0.5g,0.152mmol)を上記溶液に2分間の時間にわたって少量ずつ加えた;次に、該溶液を周囲温度において30分間撹拌した。反応混合物を無水酢酸エチルによって〜50mlにまで希釈した;この結果、中間体モノNHSエステル(3)、ペプチドモノマー(2)のグルタール酸モノアミドモノNHSエステルの沈殿が生じた。この溶液を遠心分離して、モノNHSエステル(3)を無色固体として沈降させた。過剰なDSGを含有する上清を、圧縮された固体モノNHSエステル(3)からデカントし、該圧縮固体を、さらに2回、再び酢酸エチル中に分散させて、遠心分離し、洗浄して、残留する痕跡量のDSGを除去した。このようにして得られた固体中間体モノNHSエステル(3)を無水DMF(10.0ml)中に溶解し;ジイソプロピルエチルアミン(0.10g,0.78mmol)を加えた;そして該混合物を撹拌した。
【0108】
一方では、別のフラスコにおいて、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(4)(0.38g,0.14mmol,0.9当量)を乾燥ジクロロメタン(2ml)中に懸濁させ、トリフルオロ酢酸(2滴)を加えて、該ホスホジエステル酸素をプロトン化して、ジクロロメタン中のリン脂質アンモニウム塩の可溶化を促進させた。次に、該透明な溶液を回転蒸発器上で蒸発させて、揮発物を除去して、さらに真空下で乾燥させた。
【0109】
固体リン脂質アンモニウム塩(4)をDMF(5ml)中に溶解して、モノNHSエステル(3)の撹拌溶液に移し入れ、得られた混合物を周囲温度において24時間撹拌した。該反応混合物をCHOHとCHCN−水(1:1,v/v)との1:1混合物によって100mlになるまで希釈して、不溶物を濾過した。濾過済み溶液の半分を、水(0.1%TFA)とCHOH−CHCN(1:1,v/v,0.1%TFA)との3:1(v/v)混合物と予め平衡させてある逆相C2分取カラム(Kromasil(登録商標)Prep C2, 10μ, 300Å, 50 x 250mm)上に100ml/分の流速で装填した。サンプルの装填中に該カラムが平衡化溶離剤によって溶出しなかったことに注目のこと。サンプル溶液をカラムに装填した後に、DMFのプラグが溶出されるまで、該カラムを平衡化溶離剤で洗浄した。溶離剤の組成を9分間にわたって70%CHOH−CHCN(1:1,0.1%TFA)に傾斜させ、水(0.1%TFA)中へのCHOH−CHCN(1:1,0.1%TFA)の0.75%/分の線形勾配を開始して、40分間にわたってランした。生成物溶離のインジケーターとしてUV(220nm)を用いて、画分(15ml)を回収した。画分を分析用HPLC系(カラム:YMC C-4, 5μ,300Å, 4.6 x2 50mm)上で、220nmにおけるUVとエバポレイティブ光散乱デテクター(ELSD)を用いて純度に関して検査した。後者のデテクター(ELSD)を用いて、220nmにおけるUV吸光度を殆ど有さないDSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(4)を検出した。>98%純度であって、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(4)を有さない生成物含有画分を一緒にして、回転蒸発器上で濃縮して、CHOH含量を減少させた。濃縮した溶液を次に、微かな綿毛状沈殿が形成されるまで、水中10%CHCNで希釈した。得られた溶液を凍結乾燥して、モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)を無色固体として得た。粗モノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)の第2部分を上述したように精製した。ターゲットのモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)の複合収量は0.40g(47%収率)であった。
【0110】
以下の実施例3〜5は、図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートに関する。該ダイマーコンジュゲートの典型的な合成方法を、図3、4、6、7及び8に示す。
実施例3
モノマーペプチド(12):Ac−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK[K(ivDde)]−NHと(13):Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(Adoa−Adoa)−NHの固相合成(SPPS)、環化及び精製
該線状ペプチドを、SONATA(登録商標)/Pilot Peptide Synthesizerでの確立された自動化プロトコルによって、DMF中でFmoc−Pal−Peg−PS樹脂(0.2mmol/g)、Fmoc保護アミノ酸及びDIC仲介HOBtエステル活性化を用いて合成した。Fmoc−Pal−Peg−PS樹脂上の該ペプチド配列を、SPPS方法によって、典型的には10mmol規模で、段階的やり方で合成した。DMF中でアミノ酸とDIC−HOBt試薬の各々を4倍過剰に用いて、アミノ酸カップリングを行った。
【0111】
該配列中のアミノ酸の典型的なカップリングでは、樹脂1gにつき乾燥DMF5mlを用いた。使用した樹脂に基づいて、算出したDMFの総量を、溶液調製のためにアミノ酸とHOBtとDICに割り当てた。例えば、樹脂50gを必要とする合成のためには、DMFの算出量(250ml)をアミノ酸(150ml)とHOBt(50ml)とDIC(50ml)に分配した。Sonata(登録商標)Pilot Peptide Synthesizer上のアミノ酸容器に固体乾燥アミノ酸(該樹脂に関して4倍過剰量)を装填した。カップリング工程の開始時に、DMFの選択量とDMF中のHOBt(4当量)とDMF中のDIC(4当量)を連続的にデリバリーして、各デリバリー後に、窒素バブリングによる混合を行った。最後の試薬をデリバリーした後に、窒素バブリングによる混合を開始して、4分間行った。これは、該アミノ酸を予備活性化し、該混合物の全ての成分の完全な溶解を保証するのに役立った。
【0112】
活性化後に、活性化Fmocアミノ酸溶液を該樹脂含有反応器へ移した。移送が完了した後に、該容器を3時間、窒素バブリングの反復によって撹拌した。3時間のカップリング時間後に、該樹脂をDMF(5ml/g,6x)によって完全に洗浄し、HOBt(0.1M)含有DMF中25%ピペリジン(5ml/g)によって、Fmoc基の切断を行った(2x10分間)。その後のアミノ酸カップリングに備えて、該樹脂からのピペリジンの完全な除去を保証するために、該樹脂をDMF(5ml/g,6x)で完全に洗浄した。Fmoc−Gly−Gly−Gly−OH及びFmoc−Gly−Gly−OHの場合には、本文中に記載したように活性化中のジケトピペラジン形成を最少にするために、該アミノ酸ボトル中での予備活性化を行わなかった。それ故、これらの2つの場合には、アミノ酸、HOBt及びDICの溶液を反応器に連続的に加えて、カップリング・プロセスを“現場”活性化によって行った。鎖延長が完了した後に、N−末端アミノ酸のFmoc基を標準方法で除去し、続いて、DMFによって標準的に洗浄した(上記参照)。次に、新たに調製したアセチル化混合物(DMF−6ml/g樹脂中の0.5M無水酢酸、0.125M DIEA及び0.015M HOBt)によってN−末端アミノ酸にキャップを施した(2x20分間)。
【0113】
該モノマーペプチドのC−末端リシン部分のε−アミノ基の官能化(必要に応じて、Fmoc-Adoa又はFmoc-Lys(ivDde)による)を、最初に、新たに調製したDMF中10%ヒドラジン(5ml/g樹脂−2x10分間)によって該ε−アミノ基のivDde基を除去することによって達成した。Fmoc-Adoa又はFmoc-Lys(ivDde)を付加させるために、カップリング時間を10時間に高めた。ペプチド合成が完了した後に、該樹脂を切断用カクテル、“試薬B”(TFA:水:フェノール:トリイソプロピルシラン,88:5:5:2,v/v/w/v)(10ml/g樹脂)によって4時間処理した。真空下で揮発物を蒸発させた後に、ペーストをエーテルと共に摩砕して、固体を得て、該固体を濾過によって回収し、ジエチルエーテルによって洗浄し、乾燥させた。(12),Ac−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK[K(ivDde)]−NHの10mmol規模合成によって、粗ペプチド30g(理論量の103%)を得た。(13),Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(Adoa−Adoa)−NHの場合には、10mmol規模合成によって、粗ペプチド28g(理論量の107%)が得られた。理論量より大きい収率は、恐らく水分(moisture)と残留溶媒によると思われる。
線状ジシステインペプチドから環状ジスルフィドペプチドへの環化
環状ジスルフィドペプチドを、対応する線状ジシステインペプチドからDMSO補助酸化によって、DMSO/水(95/5,v/v)を用いて製造した。該粗線状ペプチドを広口ビーカーにおいて溶媒混合物(5ml/g)中に溶解し、該溶液のpHを固体N−メチル−D−グルカミンの少量ずつの添加によって8.5に調節した。得られた混合物を周囲温度において36時間撹拌した。次に、該溶液をアセトニトリル(50ml/g)で希釈し、混合物を2分間撹拌した。固体の環状ジスルフィドペプチドを濾過によって回収して、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させた。
【0114】
モノマーペプチドの精製
ペプチドモノマー(12):
【化16】

【0115】
粗環状ジスルフィドペプチドモノマー(12)の〜0.5g部分を最少量のDMSO(〜3ml)中に溶解した。20%CHCN−水によって、該溶液量を〜100mlに調節して、該溶液を、第3ポンプを用いて、水(0.1%TFA)中10%CHCNと予め平衡させてある逆相C18分取カラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS C18, 10μ, 300Å, 50 x 250mm,流速100ml/分)上に装填した。該カラムへのサンプル溶液の供給中に、分取HPLC系からの平衡化溶離剤の流れは停止した。該サンプル溶液を該カラムに供給した後に、勾配HPLC系からの平衡化溶離剤の流れを再度開始させ、該カラムを10%CHCN−水(0.1%TFA)によって、DMSOが溶出するまで、溶出させた。次に、溶離剤の組成を35%CHCN−水(0.1%TFA)に1分間にわたって傾斜させ、その後に、水(0.1%TFA)中へのCHCN(0.1%TFA)0.5%/分の速度で線形勾配を開始して、50分間維持した。生成物溶離のインジケーターとして220nmにおけるUVを用いて、画分(15ml)を手動で回収した。回収した画分をWatersXTerra分析用逆相C−18カラム(5μ粒子,120Å孔)上で分析して、>95%純度の生成物含有画分をプールし、凍結乾燥させて、対応する環状ジスルフィドペプチドモノマー(12)を得た。典型的には、粗生成物モノマー(12)0.5gの精製によって、所望の生成物(>95%純度)0.1g(20%収率)が得られた。
【0116】
ペプチドモノマー(13):
【化17】

【0117】
ペプチドモノマー(2)のHPLC精製に用いた方法に従って、20%CHCN−水混合物(100ml)中に溶解した粗環状ジスルフィドペプチドモノマー(13),Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(Adoa−Adoa)−NH(0.5g)を、水(0.1%TFA)中10%CHCN(0.1%TFA)と予め平衡させてある逆相C18分取カラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS C18, 10μ粒子, 300Å孔, 50 x 250mm,流速100ml/分)上に装填した。該カラムへのサンプル溶液の供給中に、分取HPLC系からの平衡化溶離剤の流れは停止した。該サンプル溶液を該カラムに供給した後に、勾配HPLC系からの平衡化溶離剤の流れを再度開始させ、該カラムを10%CHCN−水(0.1%TFA)によって5分間溶出させた。次に、溶離剤の組成を30%CHCN(0.1%TFA)−水(0.1%TFA)に1分間にわたって傾斜させ、水(0.1%TFA)中へのCHCN(0.1%TFA)0.5%/分の速度で線形勾配の溶離を開始して、50分間維持した。生成物溶離のインジケーターとして220nmにおけるUVを用いて、画分(15ml)を手動で回収した。該画分をWatersXTerra分析用逆相C−18カラム(4.6mm i.d. x 50mm, 5μ粒子,120Å孔)上で分析して、>95%純度の生成物含有画分をプールし、凍結乾燥させて、対応する環状ジスルフィドペプチドモノマー(13)を得た。典型的には、粗ペプチドモノマー(3)0.5gの精製によって、所望の生成物(>95%純度)0.12g(24%収率)が得られた。
【0118】
実施例4
前駆体ダイマーペプチド(16):
【化18】

の製造と精製
【0119】
図3に示したように、ジスクシンイミジル・グルタレート(DSG,0.28g,0.86mmol)を撹拌無水ジメチルホルムアミド(2.0ml)中に溶解して、ジイソプロピルエチルアミン(0.11g,0.85mmol)を一度に加えた。次に、固体ペプチドモノマー(12)Ac−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK[K(ivDde)]−NH(0.50g,0.17mmol)をDSGの該撹拌溶液に少量ずつ2分間の時間にわたって加えた。室温において30分間撹拌した後に、該溶液を無水酢酸エチルによって〜50mlになるまで希釈した(これは、中間体モノNHSエステル(14)を沈殿させるのに役立った)。混合物全体を遠心分離し、上清をデカントして、中間体モノNHSエステル(14)を無色固体として残した。該固体を酢酸エチルによって再懸濁させ;懸濁固体モノNHSエステル(14)を含有する溶液を遠心分離し、該固体を分離して、上清を再びデカントした。この洗浄プロセスを2回繰り返して、過剰なDSGを完全に除去した。
【0120】
固体モノNHSエステル(14)を撹拌無水ジメチルホルムアミド(2.0ml)中に溶解して、ジイソプロピルエチルアミン(0.11g,0.85mmol)を加えた。次に、固体ペプチドモノマー(13),Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(Adoa−Adoa)−NH(0.50g,0.19mmol,1.12当量)を少量ずつ該撹拌溶液に3分間にわたって加え、得られた混合物を18時間撹拌した。該反応を質量分光分析法によってモニターした;ペプチドモノマー・グルタール酸モノアミドモノNHSエステル(14)が完全に消費されたことが確認された後に、ニートなヒドラジン(0.1ml)を加えて、ivDde含有ダイマー(15)のivDde保護基を除去し、混合物を室温において20分間撹拌した。
【0121】
次に、該溶液をTFAの滴加によって酸性化して、混合物を水(0.1%TFA)中10%CHCN(0.1%TFA)によって100mlになるまで希釈した。該溶液を濾過して、粒子を除去し、清澄化した溶液の半分を、水(0.1%TFA)中10%CHCNと予め平衡させてある逆相C18分取カラム(Waters,XTerra(登録商標)Prep MS C18, 10μ, 50 x 250mm,流速100ml / 分)上に装填した。該カラムへのサンプル溶液の供給中に、分取HPLC系からの平衡化溶離剤の流れは停止した。該サンプル溶液を該カラムに供給した後に、勾配HPLC系からの平衡化溶離剤の流れを再度開始させ、該カラムからDMFをフラッシュするために、該カラムを10%CHCN−水(0.1%TFA)によって溶出させた。次に、DMFプラグの溶離が完了した後に、溶離剤の組成を20%CHCNに1分間にわたって高めて、水(0.1%TFA)中へのCHCN(0.1%TFA)0.6%/分の線形勾配速度によって溶離を続けた。生成物溶離のインジケーターとしてUV(220nm)を用いて、画分(15ml)を回収した。該画分を逆相C−18カラム(Waters MS C18, 4.6mm i.d. x 50mm, 5μ粒子,120Å孔)上で分析して、>95%純度の生成物含有画分をプールし、凍結乾燥させて、前駆体ダイマーペプチド(16)を無色綿毛状固体として得た。残りの粗前駆体ダイマーペプチド(16)を同じやり方で精製した。モノマーペプチド(12)と(13)の各々0.5gから、所望のダイマー(16)320mg(総収率33%)が得られた(>95%純度)。
【0122】
実施例5
KDR結合ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)アセチル−L−アラニル−グリシル−L−プロリル−L−トレオニル−L−トリプトフィル−L−シスチニル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−チロシル−L−チロシル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−1−ロイシル−L−フェニルアラニル−グリシル−L−トレオニル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシル[アセチル−L−バリル−L−シスチニル−L−トリプトフィル−L−グルタミル−L−アスパルチル−L−セリル−L−トリプトフィル−グリシル−グリシル−L−グルタミル−L−バリル−L−シスチニル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−L−チロシル−L−アスパルチル−L−プロリル−グリシル−グリシル−グリシル−L−リシル(ジステアリルホスホエタノールアミノカルボノキシ−PEG2000−アミノ−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−グルタリル−L−リシル)アミド環状(2−12)ジスルフィド]−アミド環状(6−13)ジスルフィド:
【化19】

の製造
【0123】
該KDR結合ダイマー(11)は、前駆体ダイマーペプチド(16):
【0124】
【化20】

【0125】
の、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(18)によるコンジュゲート化によって、図4に示すように、製造することができる。
固体前駆体ダイマーペプチド(16)(0.5g,0.092mmol)を、無水DMF(3.0ml)中のジスクシンイミジル・グルタレート(DSG,0.15g,0.46mmol)とジイソプロピルエチルアミン(0.06g,0.47mmol)との溶液に撹拌しながら3分間の時間にわたって少量ずつ加えた。次に、該溶液を周囲温度において30分間撹拌した。反応混合物を無水酢酸エチルによって〜50mlになるまで希釈した;これによって、ダイマーグルタール酸モノアミドモノNHSエステル(17)、前駆体ダイマーペプチド(16)のグルタール酸モノアミドモノNHSエステルの沈殿が生じた。該溶液を遠心分離して、ペレット6(m/z, neg. ion, 1887.3(M-3H)/3, 1415.1(M-4H)/4, 1131.9(M-5H)/5)を無色固体として得た。圧縮された固体ダイマーグルタール酸モノアミドモノNHSエステル(17)から上清の過剰なDSGを含有する酢酸エチル層をデカントして、該固体ダイマーグルタール酸モノアミドモノNHSエステル(17)を、さらに2回、再び酢酸エチル中に再懸濁させ、遠心分離し、洗浄して、残留するDSG痕跡量を除去した。このようにして得られた固体中間体グルタール酸モノアミドモノNHSエステルダイマー誘導体(17)を無水DMF/CHCl(8:2,v/v)(3.0ml)中に溶解して、ジイソプロピルエチルアミン(0.06g,0.47mmol)を加えて、この溶液を撹拌した。
【0126】
一方では、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(18)(0.235g,0.084mmol,0.9当量)を分離フラスコにおいて乾燥ジクロロメタン(2ml)中に懸濁させて、TFA(2滴)を加えて、該ホスホジエステル酸素をプロトン化して、ジクロロメタン中のリン脂質アンモニウム塩(18)の可溶化を促進させた。該透明な溶液を濃縮して、揮発物を除去して、さらに真空下で乾燥させた。
【0127】
固体リン脂質アンモニウム塩(18)をDMF(2ml)中に溶解して、グルタール酸モノアミドモノNHSエステルダイマー誘導体(17)の撹拌溶液に移し入れ、得られた混合物を周囲温度において24時間撹拌した。該反応混合物を50%CHOHと25%CHCNと25%水(1:1,v/v)との溶液によって〜100mlになるまで希釈して、不溶物を濾過した。濾過済み溶液の半分を、CHOHとCHCN(1:1,0.1%TFA)と水(0.1%TFA)との1:1混合物と予め平衡させてある逆相C4分取カラム(Kromasil(登録商標)Prep C4, 10μ, 300Å, 50 x 250mm)上に100ml/分の流速で装填した。カラムへのサンプル溶液の供給中に、分取HPLC系からの平衡化溶離剤の流れは停止した。サンプル溶液を装填した後に、平衡化溶離剤の流れを再度開始して、DMFのプラグが溶出されるまで、該カラムを洗浄した。
【0128】
次に、溶離剤の組成を70%CHOH−CHCN(1:1,0.1%TFA)−水(0.1%TFA)に1分間にわたって傾斜させ、水(0.1%TFA)中へのCHOH−CHCN(1:1,0.1%TFA)の0.75%/分の線形勾配を開始した。カラムからの生成物の完全な溶出に達するために、100%Bに達した後に溶離を続けた。生成物溶離のインジケーターとしてUV(220nm)を用いて、画分(15ml)を回収し、主要な生成物が溶出した後に、出発物質のリン脂質アンモニウム塩(18)の痕跡量の溶出を保証するために、画分回収を数分間続けた。画分を分析用HPLC系(カラム:YMC C4, 5μM,300Å, 4.6 x2 50mm)上で、220nmにおけるUVとエバポレイティブ光散乱デテクター(ELSD)を用いて純度に関して検査した。後者のデテクターを用いて、220nmに弱い発色団を有するDSPE−PEG2000−NHを検出した。>98%純度であって、DSPE−PEG2000−NHリン脂質アンモニウム塩(8)を有さない生成物含有画分を一緒にして、濃縮して、CHOH含量を減少させた。該溶液を次に、微かな綿毛状沈殿が形成されるまで、水中10%CHCNで希釈した。得られた溶液を凍結乾燥して、ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)を無色固体として得た。粗ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)の第2部分を上述したように精製した。ターゲットのダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)の複合収量は0.39g(57%収率)であった。種々なサンプル精製ランから製造されたダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)のサンプルを一緒にプールし、tert−ブタノール−アセトニトリル−水混合物中に溶解し、再度凍結乾燥して、ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)を無色の、綿毛状の固体として得て、これを真空下でさらに乾燥させた。
【0129】
以下の実施例6〜8は、図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの製造に関し、この場合に該ダイマーコンジュゲートは、ごく低レベルのTFAを含有する。図6〜8は、以下の実施例に記載する方法を説明する。
実施例6
低いTFAレベルを有するダイマーコンジュゲートの、グルタリル・リンカーの使用による製造
AG MP−50イオン交換樹脂による、(22)、(25)及びダイマーペプチド27・nTFA塩から酢酸塩への転化による(23)、(26)及びダイマーペプチド(27)酢酸塩(acetate salt)の製造
化合物(23)に関しては、AG MP−50イオン交換樹脂(1.5meq/ml樹脂床)を20%CHCN/HO中に懸濁させた。該懸濁液を3x30cmガラスカラムに充填した、最終量は150mlであった。該カラムをポンプ及び導電率計に連結した。これを20%CHCN/HOによって17ml/分の流速で、導電率が1μs/cm未満になるまで洗浄した。化合物(22)(210mg)を20%CHCN/HO(80ml)中に溶解して、得られた溶液を該カラムに装填した。該カラムを再び同じ溶離剤によって、その導電率が1μs/cm未満になるまで洗浄した。20%CHCN/HO中のNHOAcの勾配を各250mlにつき200mM、400mM、600mM及び800mMで適用した。化合物は600mM NHOAcで出現した。画分をHPLCによって分析し、化合物を含有する画分を一緒にして、物質の重量が一定になるまで、数回凍結乾燥させた。純粋な物質(23)176mgが白色綿毛状固体として得られた。収率は83.8%であった。
【0130】
さらなるパラメーター及び結果は次のとおりであった:HPLC:保持時間:5.6分間;アッセイ>98%(面積%);カラム:Waters XTerra MS-C18, 4.6 x 50mm, 5μ粒子, 120Å孔;溶離剤:A:HO(0.1%TFA)、B:CHCN(0.1%TFA);溶離:初期条件:15%B、8分間にわたって線形勾配15〜50%B;流速:3ml/分;検出:220nmにおけるUV;質量スペクトル:API−ES;モード:陰イオン;1441.7[M−2H]/2,960.9[M−3H]/3.CE分析(対イオン %wt/wt):TFA0.3%であると推定;アセテート1.1%.
化合物(26)に関しては、化合物(23)に対すると同じ手段に従って、HOによって1μs/cmの導電率になるまで洗浄した150mlのAG MP−50カラムに、水80ml中のペプチドTFA塩(25)300mgを17ml/分で装填した。装填後に、該カラムを次にHOによって再び洗浄し、化合物(23)のイオン交換に用いたものと同じ、HO中へのNHOAc水溶液の同じステップ勾配を適用した。一緒にした画分を一定重量になるまで凍結乾燥して、酢酸塩(26)200mgを綿毛状白色固体として得た。収率は66.7%であった。
【0131】
さらなるパラメーター及び結果は次のとおりであった:HPLC:保持時間:5.6分間;アッセイ97.0%(面積%);カラム:Waters XTerra MS-C18, 4.6 x 50mm, 5μ粒子, 120Å孔;溶離剤:A:HO(0.1%TFA)、B:CHCN(0.1%TFA);溶離:初期条件:15%B、8分間にわたって線形勾配15〜50%B;流速:3ml/分;検出:220nmにおけるUV;質量スペクトル:API−ES;モード:陰イオン;1336.9[M−2H]/2,890.8[M−3H]/3.CE分析(対イオン %wt/wt):TFA 0.4%であると推定;アセテート4.2%;IC分析(F%):0.26.
ダイマーペプチド(27)酢酸塩に関しては、化合物(23)に対する手段と同様に、AG MP−50カラム(湿潤体積(wet volume)100ml)を30%CHCN/HOによって、導電率が1μs/cm未満になるまで、洗浄した。TFA塩としての化合物(27)(30%CHCN/HO(80ml)中120mg)を該カラムに装填して、該カラムを同じ溶離剤によって、導電率が1μs/cmにおいて安定するまで、洗浄した。30%CHCN/HO中へのNHOAc−30%CHCN/HOのステップ勾配は、化合物(23)に対すると同様にランした、そして該化合物は約600mM NHOAcにおいて溶離した。一緒にした画分を凍結乾燥し、その後、該物質が一定重量を示すまで、数回再度凍結乾燥して、純粋な物質(27)104mgを酢酸塩として得た。収率は86.7%であった。
【0132】
さらなるパラメーター及び結果は次のとおりであった:HPLC:保持時間:5.2分間;アッセイ>99%(面積%);カラム:Waters XTerra MS-C18, 4.6 x 50mm, 5μ粒子, 120Å孔;溶離剤:A:HO(0.1%TFA)、B:CHCN(0.1%TFA);溶離:初期条件:20%B、8分間にわたって線形勾配20〜60%B;流速:3ml/分;検出:220nmにおけるUV;質量スペクトル:API−ES;モード:陰イオン;1816.3[M−3H]/3,1362.0[M−4H]/4,1089.2[M−5H]/5;CE分析(対イオン %wt/wt):TFA 0.2%であると推定;アセテート0.15%.
化合物(23)と化合物(26)からのダイマーペプチド(27)酢酸塩の製造と精製
無水DMF(0.1ml)中のジスクシンイミジル・グルタレート(18mg,0.055mmol)の溶液に、無水DMF(0.2ml)中の化合物(23)(61mg,0.021mmol)の溶液を滴加した(pH8、DIEAによって中和)。透明な溶液を室温において0.5時間撹拌した。HPLCとMSは、反応の完成を示した。溶媒を真空下で除去して、EtOAc(8ml)を加えて、中間体(24)を沈殿させた。混合物を遠心分離し、デカントして、過剰なグルタレートを除去した。このEtOAc洗浄をさらに3回繰り返して、得られた固体を、乾燥窒素流を用いて乾燥させた。次に、これを無水DMF(0.3ml)中に溶解した。化合物(26)(56mg,0.021mmol)を加えて、該溶液のpHを、DIEAの添加によって、8に調節した。この溶液を室温において16時間撹拌した、その後、HPLCとMS分析によって、反応の完成が実証された。NHNHの30μlアリコートを加えて、混合物を5分間撹拌して、ivDde基を切断した。反応混合物をHPLCとMSによって分析した、これはivDde基の完全な除去を実証した。
【0133】
ダイマーペプチド(27)酢酸塩の精製前に、TFAを含まない溶離剤、CHCN/HO/10mM NHOAcによって、カラムを含む分取HPLC系全体を細心に洗浄するように注意した。次に、粗反応混合物を、15%B(A:HO中10mM NHOAc;B:CHCN/HO,9/1、v/v中10mM NHOAc)と予め平衡した逆相C−18分取カラム(Atlantis C-18, 5μm粒子, 100Å孔, 30 x 150mm, 流速30ml /分)に供給した。該カラムを同じ溶離剤によって、DMFプラグが溶出するまで、洗浄した。該溶離剤組成を2分間にわたって25%Bに高め、その後、40分間にわたって65%Bまで傾斜させた。画分を分析用逆相C−18カラム(Waters MS C-18, 4.6 x 50mm, 5μm粒子, 100Å孔, 流速3ml /分)上で分析して、>95%純度の生成物含有画分をプールし、凍結乾燥して、ダイマーペプチド(27)25mgを綿毛状白色固体としてのその酢酸塩として得た。収率は21.8%であった。
【0134】
さらなるパラメーター及び結果は次のとおりであった:HPLC:保持時間:5.2分間;アッセイ>99%(面積%);カラム:Waters XTerra MS-C18, 4.6 x 50mm, 5μ粒子, 120Å孔;溶離剤:A:HO(0.1%TFA)、B:CHCN(0.1%TFA);溶離:初期条件:20%B、8分間にわたって線形勾配20〜60%B;流速:3ml/分;検出:220nmにおけるUV;質量スペクトル:API−ES;モード:陰イオン;[M−3H]/3,1362.0[M−4H]/4,1089.2[M−5H]/5;CE分析(対イオン %wt/wt):TFA 0.2%未満であると推定;アセテート1.1%.
実施例7−図7
イオン交換樹脂による、低TFAレベルを有するダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの製造
ダイマーペプチド(27)酢酸塩からのリン脂質ペプチドコンジュゲート(21)のその酢酸塩としての製造と精製
無水DMF(0.1ml)中のジスクシンイミジル・グルタレート−DSG(3.7mg,11.3μmol)の溶液に、無水DMF(0.2ml)中の中和されたダイマーペプチド(27)酢酸塩(15mg,2.75μmol)の溶液を滴加した。該反応溶液を室温において0.5時間撹拌した。Waters XTerra C-18カラムによるHPLC分析とMSは、反応の完成を示した。溶媒を蒸発させて、EtOAc(8ml)を加えて、中間体(28)を沈殿させた。沈殿した中間体(28)を含有する容器を遠心分離し、液層をデカントした。この手段を3回繰り返して、過剰なDSGを除去した。固体を乾燥窒素流によって乾燥させ、次に、無水DMF(0.3ml)中に溶解した。DSPE−PEG2000−NHアンモニウム塩(29)(6.5mg,2.33μmol)を固体形で加えて、混合物のpHを(28)に合わせて調節した。この反応混合物を室温において16時間撹拌した。該混合物をMSと、Zorbax 300 SB-C3カラムによるHPLCによって分析した、これは、反応が完成したことを実証した。
【0135】
TFAによる生成物の可能な汚染を最少にするために、粗反応混合物を、TFAに暴露させたことが決してない、新しいZorbax 300 SB-C3カラム(21.2 x 150mm, 5μ粒子)を用いて装備した分取HPLCによって精製した。該HPLC系をCHCN/HO/NHOAcによって徹底的に予め洗浄して、痕跡量のTFAを除去した。この反応混合物を、20%B(A:HO中10mM NHOAc;B:CHCN/HO,9/1,v/v中10mM NHOAc)と予め平衡したカラム上に流速30ml/分で装填した。該カラムを同じ溶離剤によって、DMFプラグが溶出するまで、30ml/分で溶出させた。次に、溶離剤組成を3分間にわたって40%Bに高めて、次に50分間にわたって90%Bにまで傾斜させた。回収した画分を分析用逆相C−3カラム(Zorbax 300SB-C3, 3 x 150mm, 3.5μm粒子, 300Å孔, 流速: 0.5ml /分)上で分析した、この場合、検出は220nmにおけるUVとエバポレイティブ光散乱デテクター(ELSD)を用いて達成した。純粋な生成物含有画分をプールし、凍結乾燥した。最終生成物(21)酢酸塩の6.5mg部分を得た。収率は33.0%であった。
【0136】
さらなるパラメーター及び結果は次のとおりであった:HPLC:保持時間:13.3分間;アッセイ>99%(面積%);カラム:Zorbax 300SB-C3, 3 x150mm,3. 5μ, 300Å孔;溶離剤:A:HO(0.1%TFA)、B:CHCN/MeOH 1/1(0.1%TFA);溶離:初期条件:60%B、3分間にわたって線形勾配60〜90%B;流速:0.5ml/分;検出:220nmにおけるUVとELSD;CE分析(対イオン %wt/wt):%wt TFA:0.3%;%wt アセテート0.4%.
実施例8−図8
Zorbax C-3 RP分取HPLCとSephadex G-25ゲル透過クロマトグラフィーを用いた連続精製による、低TFAレベルを有するダイマーコンジュゲートの製造
用いた物質と、分析用HPLC系の条件は下記を包含する:カラム:Zorbax 300SB C-3;3mm内径x150mm;3.5μm粒子;溶離剤A:HO(容量で0.1%TFAを有するHPLC等級);溶離剤B:CHCN(容量で0.1%TFA);溶離:初期条件:50%B、次に3分間にわたって線形勾配50〜90%B、90%Bに11分間維持;流速:0.5ml/分;検出:220nmにおけるUV.保持時間:(化合物(21)):6.77分間、Rt(リゾ):4.06分間.
化合物(21)からリゾ化合物を除去するために分取Zorbax C-3カラムを用いた分取HPLC
粗化合物を30%溶離剤Bの濃度で装填した。用いた物質と条件は下記を包含する:条件:カラム:Waters Zorbax 300SB C-3;21.2mm内径x150mm;3.5μm粒子;溶離剤:溶離剤A:HO(10mM NHOAcを有するHPLC等級);溶離剤B:CHCN/HO,9/1(最終NHOAc濃度:10mM).
次に、溶離剤の組成を45%Bに2分間にわたって変化させ、その後、カラムを45〜100%Bの線形勾配で40分間にわたって溶出した;流速:30ml/分;検出:220nmにおけるUV.
粗化合物(100mg)を30%Bの溶液(25ml)中に溶解した。分取HPLC系を30%Bにおいて平衡させた。化合物をZorbax C-3カラム上に装填した。移動相の組成を2分間にわたって45%Bに傾斜させた。40分間にわたる45〜100%Bの線形勾配を化合物(21)の溶離に用いた。生成物は26.5〜33分間に溶出した。
【0137】
化合物(21)を含有する画分を一緒にして、凍結乾燥させて、白色綿毛状固体を得た。これを水−アセトニトリル中に溶解して、次に、再び凍結乾燥させた。これは、リゾ化合物を含まない生成物70mgを生成した。回収率は約70%であった。クロマトグラフィーが完了した後に、該系を95%Bによって流速30ml/分において15分間洗浄した。次に、該カラムをCHCN/HO(50/50,TFA又はバッファーのいずれも含まず)によって流速15ml/分において30分間洗浄した。その後、該カラムを今後の使用のために室温において保存した。分析用HPLCが、単離物質中にリゾ化合物が存在しないことを確証した。さらなる分析が、室温における5日間後にリゾ化合物が形成されなかったことを確証した。該物質はまだ、有意な量(4.2重量%)のTFAを含有した。
Sephadex G-25上でのゲル透過クロマトグラフィーによる化合物(21)からのTFAの除去。
【0138】
Sephadex G-25カラム(100g樹脂,ビーズサイズ:20〜80μm,総ゲル量:〜500ml,カラム高さ:27cm)を50mM炭酸水素アンモニウム(4L)と平衡させた。次に、化合物(21)(70mg)を10%アセトニトリル水溶液中60mM炭酸水素アンモニウム(30ml)(最終量)中に溶解した。この溶液を濾過して、次に、Sephadex G-25カラム上に装填した。該カラムを50mM炭酸水素アンモニウム・バッファーによって溶出し、10ml画分を回収した。回収した画分を分析用HPLC(220nmにおけるUV検出)によってモニターした。結果は以下の表4に提供する。
【0139】
【化21】

【0140】
画分20〜28をプールして、凍結乾燥させた。得られた凍結乾燥物質を少量の水に再溶解して、この溶液を凍結し、凍結乾燥させて、炭酸水素アンモニウムの残留量を除去した。所望の物質の最終重量は58mgであった。回収率は83%であった。
【0141】
TFAの有効な除去を確認するために、サンプルにTFA及びアセテートイオンに関するCE分析を行った。TFAは以前の分析によると出発物質中に明らかに存在する(4.2%)が、ゲル透過手段後には殆ど検出されない(0.2%)。アセテートイオンは検出されなかった。
連続的なZorbax C-3分取HPLCとSephadex G-25ゲル透過クロマトグラフィーによって得られた、化合物(21)の分析データ
用いた物質と、分析データを回収するための条件は下記を包含する:フッ素分析(QTIによるIC):751ppm(0.15%TFA wt/wt);質量スペクトル:方法:MALDI−TOF;モード:陽イオン;検出された平均分子量は8461であり、典型的なPEG2000質量分布曲線が観察された。HPLC:系A:カラム:Zorbax 300SB C-3;3mm内径x150mm;3.5μm粒子;溶離剤A:水(容量によって0.1%TFAを有するHPLC等級);溶離剤B:アセトニトリル(容量によって0.1%TFA).初期条件:50%B;溶離:3分間にわたって50〜90%Bの線形勾配、90%Bに11分間維持;流速:0.5ml/分;検出:220nmにおけるUV.保持時間:6.77分間;面積%:99.6%.系B:カラム:Zorbax 300SB C-3;3mm内径x150mm;3.5μm粒子;溶離剤A:水(容量によって0.1%TFAを有するHPLC等級);溶離剤B:アセトニトリル(容量によって0.1%TFA).初期条件:50%B;溶離:3分間にわたって50〜90%Bの線形勾配、その後、100%Bにまで12分間にわたって傾斜;流速:0.5ml/分;検出:LSD;保持時間:13.98分間;面積%:99.3%.
以下の表5は、用いた略号の定義と、実施例9〜12に記載した物質の供給源を示す。
【0142】
【化22】

【0143】
実施例9
DSPC/DPPGエンベロープを有する標的マイクロバブルの製造
実施例9A
DSPC/DPPG/及び図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)の混合物(モル比率49.75/49.75/0.5、それぞれ、3成分187.1mg、176.4mg及び19.8mgに対応)383mgと、PEG−4000(22.6g)を、水浴において60℃のt−ブチルアルコール(120g)中で可溶化した。該溶液をバイアル中にそれぞれ溶液0.8mlずつ充填した。サンプルを−45℃において凍結し、凍結乾燥させた。ヘッドスペース中の空気をC10/窒素(50/50)の混合物と交換して、バイアルにキャップを施して、クリンプした(crimped)。凍結乾燥サンプルをバイアルにつき5mlのHOによって再構成した。
実施例9B
DSPC/DPPG/及び図10に示したモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(31)の混合物(モル比率49.5/49.5/1、それぞれ、3成分182.8mg、172.3mg及び28.2mgに対応)を用いて、実施例9Aを繰り返した。
実施例10
DPPE/DPPGエンベロープを有する標的マイクロバブルの製造
実施例10A
DSPE−PEG1000(0.43mg−0.24μmole)と図10に示したモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(31)(3.0mg−0.5μmole)との水性懸濁液を、60℃の蒸留水(500μl)中に調製して、ミセル懸濁液を得た。
【0144】
別に、DPPE(15.8mg−22.8μmole)とDPPG(4.2mg−5.7μmole)を70℃の蒸留水中マンニトール10%の溶液(20ml)中に20分間分散させた。次に、該分散液を室温に冷却した。ペルフルオロヘプタン(1.6ml)を該水相中に、高速ホモジナイザー(Polytron PT3000, プローブ直径3cm)を10500rpmで1分間用いて、乳化して、エマルジョンを得た。
【0145】
該エマルジョンに該ミセル懸濁液を加えて、得られた混合物を60℃において撹拌しながら1時間加熱した。室温に冷却した(1時間)後に、得られたエマルジョンを50ml丸底フラスコ中の4ml画分に分割した。該エマルジョンを−45℃において5分間凍結し、0.2mbarにおいて24時間凍結乾燥させた(Freeze-Drier Christ Beta 1-8K)。
【0146】
再分散させる前に、該凍結乾燥物をC10/窒素(容量で50/50)を含有する雰囲気に暴露した。その後、凍結乾燥生成物を最初の量の2倍の水量中に穏やかなハンドシェイキングによって分散させた。
実施例10B
DSPE−PEG1000(0.5mg−0.27μmole)と図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)(5.3mg−0.63μmole)との水性懸濁液を、60℃の蒸留水(500μl)中に調製して、ミセル懸濁液を得た。
【0147】
別に、DPPE(15.8mg−22.8μmole)とDPPG(4.2mg−5.7μmole)を70℃の蒸留水(20ml)中PEG4000 10%の溶液中に20分間分散させた。次に、該分散液を室温に冷却した。ペルフルオロヘプタン(1.6ml)を該水相中に、高速ホモジナイザー(Polytron PT3000, プローブ直径3cm)を10000rpmで1分間用いて、乳化して、エマルジョンを得た。
【0148】
該エマルジョンに該ミセル懸濁液を加えて、得られた混合物を80℃において撹拌しながら1時間加熱した。室温に冷却した(1時間)後に、得られたエマルジョンを遠心分離(200g/10分−Sigma centrifuge 3K10)によって1回洗浄して、過剰なリン脂質を除去した。分離したペレット(乳化した溶媒ミクロ滴を含有)を回収し、10%PEG4000水溶液の最初の量によって再懸濁させた。
【0149】
得られたエマルジョンをDIN8Rバイアル中にサンプリングした(1ml/バイアル)。次に、バイアルを−50℃において冷却し(Christ Epsilon 2-12DS Freeze-Drier )、−25℃及び0.2mBarにおいて12時間凍結乾燥させた、最終乾燥工程は30℃及び0.1mBarにおいて7時間であった。バイアルをC10/窒素(容量で35/65)を含有する雰囲気に暴露して、密封した。凍結乾燥生成物を最初の量の2倍の水量中に穏やかなハンドシェイキングによって再分散させた。
実施例11
DSPC/DSPAエンベロープを有する標的マイクロバブルの製造
実施例11A
DSPE−PEG1000(2.5mg−1.4μmole)と図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)(7.0mg−0.84μmole)との水性懸濁液を、60℃の蒸留水(1ml)中に調製して、ミセル懸濁液を得た。
【0150】
別に、DSPC(16.3mg−20.6μmole)とDSPA(3.7mg−5.15μmole)を80℃のシクロオクタン(1.6ml)中に溶解した。次に、この有機相を、水中PEG4000の10%溶液(20ml)中に、高速ホモジナイザー(Polytron T3000, プローブ直径3cm)を8000rpmで1分間用いて、加えて、エマルジョンを得た。
【0151】
該ミセル懸濁液に該エマルジョンを混合して、得られた混合物を80℃において撹拌しながら1時間加熱した。室温に冷却した(1時間)後に、得られたエマルジョンを遠心分離(1500g/10分間−Sigma centrifuge 3K10)によって1回洗浄して、過剰なリン脂質を除去した。分離した上清(乳化した溶媒ミクロ滴を含有)を回収して、10%PEG4000水溶液の最初の量の2倍中に再懸濁させた。
【0152】
得られたエマルジョンをDIN8Rバイアル中にサンプリングした(1ml/バイアル)。次に、バイアルを−50℃に冷却し(Christ Epsilon 2-12DS Freeze-Drier )、−25℃及び0.2mBarにおいて12時間凍結乾燥させた、最終乾燥工程は30℃及び0.1mBarにおいて7時間であった。バイアルをC10/窒素(容量で35/65)を含有する雰囲気に暴露して、密封した。
【0153】
次に、凍結乾燥生成物を最初の量の2倍の水量中に穏やかなハンドシェイキングによって再分散させた。
実施例11B
DSPE−PEG2000(0.7mg−0.26μmole)と図2に示したモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)(1.6mg−0.26μmole)を用いた以外は、実施例11Aを繰り返して、ミセル懸濁液を製造した。
実施例11C
DSPC(16.3mg−20.6μmole)、DSPA(3.7mg−5.15μmole)及び図1に示したモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)(1.6mg−0.26μmole)を80℃のシクロオクタン(1.6ml)中に溶解した。この有機相を、PEG4000の10%水溶液(20ml)中に、高速ホモジナイザー(Polytron PT3000, プローブ直径3cm)を8000rpmで1分間用いて、乳化して、エマルジョンを得た。
【0154】
得られたエマルジョンを80℃において撹拌しながら1時間加熱した。室温に冷却した(1時間)後に、得られたエマルジョンをPEG4000の10%水溶液(20ml)によって希釈した。
【0155】
該エマルジョンをDIN8Rバイアル中にサンプリングした(1ml/バイアル)。次に、バイアルを−50℃において冷却し(Christ Epsilon 2-12DS Freeze-Drier )、−25℃及び0.2mBarにおいて12時間凍結乾燥させた、最終乾燥工程は30℃及び0.1mBarにおいて7時間であった。バイアルをC10/窒素(容量で35/65)を含有する雰囲気に暴露して、密封した。凍結乾燥生成物を最初の量の2倍の水量中に穏やかなハンドシェイキングによって再分散させた。
実施例12
DSPC/ステアレート・エンベロープを有する標的マイクロバブルの製造
実施例12A
DSPE−PEG2000(2.5mg−0.9μmole)と、図5に示したダイマーリン脂質コンジュゲート(11)(2.5mg−0.3μmole)との水性懸濁液を60℃の蒸留水(660μl)中に調製して、ミセル懸濁液を得た。
【0156】
別に、DSPC(18.2mg−23.1μmole)とステアレート(1.8mg−5.8μmole)を80℃のシクロオクタン(1.6ml)中に溶解した。この有機相を、水中PEG4000の10%溶液(20ml)中に、高速ホモジナイザー(Polytron T3000, プローブ直径3cm)を9000rpmで1分間用いて、加えて、エマルジョンを得た。
【0157】
該ミセル溶液に該エマルジョンを混合して、得られた混合物を80℃において撹拌しながら1時間加熱した。室温に冷却した(1時間)後に、得られたエマルジョンを遠心分離(1500g/10分間−Sigma centrifuge 3K10)によって1回洗浄して、過剰なリン脂質を除去した。分離した上清(乳化した溶媒ミクロ滴を含有)を回収して、10%PEG4000水溶液の最初の量の2倍中に再懸濁させた。
【0158】
得られたエマルジョンをDIN8Rバイアル中にサンプリングした(1ml/バイアル)。次に、バイアルを−50℃に冷却し(Christ Epsilon 2-12DS Freeze-Drier )、−25℃及び0.2mbarにおいて12時間凍結乾燥させた、最終乾燥工程は30℃及び0.1mbarにおいて7時間であった。バイアルをC10/窒素(容量で35/65)を含有する雰囲気に暴露して、密封した。
【0159】
凍結乾燥生成物を最初の量の2倍の水量中に穏やかなハンドシェイキングによって分散させた。
実施例12B
図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)を、図2に示したモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)の同じ相対的モル量に換えて、実施例12Aを繰り返した。
実施例12C
DSPC(18.2mg−23.1μmole)と、ステアリン酸ナトリウム(1.8mg−5.8μmole)と、図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)(2.2mg−0.26μmole)によって、実施例11Cを繰り返した。乳化のための撹拌速度は9000rpmに固定した。室温に冷却した(1時間)後に、得られたエマルジョンを遠心分離(1500g/10分間−Sigma centrifuge 3K10)によって1回洗浄して、過剰なリン脂質を除去した。分離した上清(乳化した溶媒ミクロ滴を含有)を回収して、10%PEG4000水溶液の最初の量の2倍中に再懸濁させた。
実施例13
KDRトランスフェクション細胞での静的結合試験
プラスミド製造と精製
全長KDRをpcDNA6ベクター中にクローン化して、該プラスミドをコンピテントDH5α大腸菌(E.coli)において増幅させた。プラスミド増幅と精製は、大腸菌JM109と、Quiagenからのキットを用いて行った。
Thermanox(登録商標)カバースリップ上での293H細胞のトランスフェクション
24ウェル・プレートにおいてポリ−D−リシン被覆Thermanox(登録商標)円形カバースリップ上で細胞を増殖させた。0.1ml中にDNA(pc−DNA6−fKDR)1μg/カバースリップ(1.3cm)を用いて、リポフェクタミン2000プロトコル(Invitrogen, cat# 11668-019)での推奨のように、トランスフェクションを行った。トランスフェクションは、無血清培地において行い、2時間後に、トランスフェクション試薬ミックスを細胞から取り出し、通常の血清含有培地と交換した。細胞被覆カバースリップの一部を模擬トランスフェクションした(mock-transfected)(DNAなしに)。翌日、KDR受容体の発現を、免疫細胞化学によって評価して、結合アッセイを行った。
バブル結合アッセイ
該トランスフェクション細胞を、PBS中50%ヒト血漿中に再懸濁させたKDR標的マイクロバブルと共にインキュベートした。トランスフェクション細胞と共にインキュベーションするために、小プラスチック・キャップに1.3x10バブルを含有する懸濁液を充填して、該トランスフェクション細胞を標的マイクロバブルと接触させるように、該キャップを、逆さにしたThermanox(登録商標)カバースリップによって覆った。室温における30分間のインキュベーション後に、該カバースリップをピンセットで持ち上げて、PBS中で3回すすぎ洗いして、顕微鏡下で検査して、標的マイクロバブルの結合を評価した。
マイクロバブルで覆われた表面%の測定
デジタルカメラDC300F(Leica)によってイメージを得て、イメージした面積中の結合マイクロバブルによって覆われた表面の割合を、ソフトウェアQWinバージョン3.1(Leica Microsystem AG, Basel, Switzerland)を用いて測定した。各Thermanox(
登録商標)カバースリップ毎の写真を撮影した。実施例9と10の各製剤(preparation)に対して、結合アッセイを少なくとも2回繰り返して、このようにして、覆われた表面の平均値を得た。
【0160】
下記表6と7では、上記実施例9と10に従って製造したマイクロバブルの結合活性を記録する。
表が示すように、同じペプチドが、マイクロバブルの安定化エンベロープを形成する異なるリン脂質製剤中に(リポペプチドとして)含まれる場合には、異なる結合活性を示すことがありうる。本発明のKDR結合リポペプチド含有マイクロバブルは、KDR発現細胞に特異的に結合するが、これらは、模擬(mock)トランスフェクション細胞には感知できるほどには結合しなかった。
実施例14
rhVEGF−R2/Fcキメラタンパク質での動的結合試験
Fc−VEGF−R2被覆カバースリップの製造
ガラスカバースリップ(直径40mm,Bioptechs Inc., Butler, PA, USA)を組み換えヒトVEGF−R2/Fcキメラタンパク質(R & D Systems)によって、下記方法論に従って被覆した。
【0161】
該ガラス・カバースリップ上に、大きさ14x25mmの表面を特定のマーカー(Dako Pen)を用いて画定して、PBS中4μg/mlでのFc−VEGF−R2溶液(400μl)をこの表面上に沈着させた。4℃において一晩インキュベーションした後に、溶液を吸引して、PBS−0.05%Tween80(pH7.4)中のBSA1%(w/v)の溶液(0.5ml)と交換して、室温において3時間インキュベートした。次に、該カバースリップをPBS−0.05%Tween80(5ml)によって3回洗浄した。
結合アッセイ
標的バブルの結合試験を、平行平板型フローチャンバ(parallel-plate flow chamber)(FCS2, Bioptech Inc., Butler, PA, USA)を厚さ0.25mmのチャンバ・ガスケットと共に用いて、逆さまチャンバ反転のための特製アダプターによって行った。被覆されたカバースリップを該フローチャンバのプレートとして挿入した。マイクロバブル(PBS中50%ヒト血漿中5x10バブル/ml)を、該フローチャンバを通して、調節可能な輸液ポンプ(Auto Syringe(登録商標)AS50輸液ポンプ,Baxter, Deerfield, IL, USA)を60ml注射器(Terumo)と共に用いて汲み出した。ポンプ流速を1ml/分に調節して、所望の剪断速度約114s−1を得た。10分間後に、流れを停止させ、倒立Olympus IX 50顕微鏡に接続した40x対物レンズとCCDモノクロムカメラ(F-View II, Soft Imaging Systems, Germany)を用いて、ランダムに、カバースリップ上(約0.025mmの面積上)の種々な位置において写真を撮影した。
【0162】
各写真上のマイクロバブル数を測定し、写真の総数に関して平均化して、次に、得られた値を10によって割った(“勾配(slope)”即ち、結合マイクロバブル/分の平均量を得るため)。
【0163】
実施例11と12の各製剤に関して、結合アッセイを4回繰り返して、このようにして、勾配の平均値を得た。
該勾配は、ターゲット基質上のバブル結合率を表す。例えば、8の勾配値は、平均80マイクロバブルが10分間に被覆カバースリップ上に結合したことを示す。これより高い勾配は、フロー条件下でのターゲットへのバブルのより良好な結合能力を示す。
【0164】
下記表8と9では、上記実施例11と12によって製造したマイクロバブルの結合活性を説明した。
表から推定されるように、同じペプチドが、マイクロバブルの安定化エンベロープを形成する異なるリン脂質製剤中に(ペプチド−リン脂質コンジュゲート又はリポペプチドとして)含まれる場合には、異なる結合活性を示すことがありうる。
【0165】
【化23】

【0166】
【化24】

【0167】
実施例15
KDRを標的とする超音波造影剤のin vivo評価
本発明のKDR結合リポペプチドを含有する超音波造影剤がin vivoでKDR発現組織に結合する能力を、血管新生の既知モデル:ウサギVX2腫瘍モデルを用いて評価した。
【0168】
血管新生組織の既知モデルを用いて、KDR標的超音波マイクロバブルが血管新生組織に局在する能力を試験して、血管新生組織のイメージを得た。
VX2ウサギ癌を、体重2.5/3kgを有するNew Zealandウサギ(Charles River Laboratories, France)の背部筋肉に連続的に移植した。
腫瘍ホモジェネートの調製
腫瘍を外科的に取り出して、10%ウシ胎児血清、抗生物質、1.5mM Glutamax Iを含有するMcCoy培養培地中に入れ、小片にカットして、該小片をすすぎ洗いして、血液とデブリーを除去した。次に、腫瘍小片(3〜5cm)を、完全培地5mlを含有する50ml Falcon管中に入れた。腫瘍組織を、固体片がもはや見られなくなるまで、摩砕した(Polytron)。濁った流体を300gにおいて5分間遠心分離して、上清をデカントした。ペレット5mlにつき新たな培地7mlを加えた。
腫瘍移植
ウサギに最初にVetranquil(0.3ml)(Acepromazine, Sanofi, 筋肉内に注射)を投与し、次にウサギをKetaminol(登録商標)5/ Xylazine( Veterinaria AG / Sigma)混合物(50/10mg/ml,0.7ml/kg)の筋肉内注射によって麻酔した。VX2腫瘍ホモジェネート(100μl)を筋肉内に注射した。VX2腫瘍ホモジェネートの移植後15日目に、動物を再び同じ混合物によって麻酔し、これに加えて、イメージング実験のために50%Urethane(2ml/kg,s.c.)(Sigma)を皮下注射した。
in vivo超音波イメージング
L7−4線形プローブを装備した超音波イメージング系ATL HDI5000装置を用いて、VX2腫瘍イメージングを行った。高音響パワー(MI=0.9)におけるBモードパルス反転を用いて、新血管の内皮上に発現されたKDR受容体上の標的マイクロバブルの蓄積を評価した。線形プローブを直接、移植された腫瘍上の皮膚に固定した。
【0169】
実施例16又は実施例17のいずれかの製剤を用いてバブル(ガス、0.1μl/kg)を注入した後に、インソネーション(insonation)を停止して、バブルを25分間蓄積させた。次に、インソネーションを高音響パワー(MI0.9)で再活性化して、腫瘍内に存在する全てのバブルを破壊した。次に、インソネーションなしに20秒間蓄積させた後に得られたシグナルを記録することによって、自由循環バブル量を評価した。VX2腫瘍イメージング実験からのビデオフレームをビデオキャプチャーによって記録して、Image-Pro Plus 2.0ソフトウェアによって分析した。自由循環バブルを示すイメージを、25分間において得られたイメージから控除して、結合バブルを示すイメージを得た。
【0170】
図11(実施例16の製剤による結果を示す)と図12(実施例17の製剤による結果を示す)に関して、図11Aと図12Aは、バブル注入前のイメージ(基底)を示し;図11Bと図12Bは、注入後25分間の腫瘍中のバブル造影(bubble contrast)の保持を示す;そして図11Cと図12Cは、基底と自由循環バブルを控除した後に得られた結果を示し、本発明によるKDRリポペプチドを含有する結合マイクロバブルを表す。実施例15〜17及び実施例11と12は、このようなKDR結合部分を有する超音波造影剤が、動物モデルにおけるKDR発現(及びそれ故の血管新生)組織に局在することを確証する。
実施例16
DSPE−PEG2000をDSPE−PEG1000(2.7mg,1.54μmol)と交換し、図5に示したダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)(2.5mg,0.31μmol)を用いることによって、実施例12Aを繰り返した。
実施例17
ダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートを、同じモル量の、図2に示したモノマー・リン脂質コンジュゲート(1)と交換することによって、実施例16を繰り返した。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、線状ペプチドモノマー(2)からのモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)の製造方法を説明する。
【図2】図2は、KDRに対して高い結合アフィニティを有するペプチドを含むモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)を説明する。
【図3】図3は、ペプチドモノマーからの前駆体ダイマーペプチド(16)の製造方法を説明する。
【図4】図4は、KDRに高いアフィニティで結合するペプチドを含有するダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)を形成するための、DSPE−PEG2000−NHへの図1に示した前駆体ダイマーペプチドのコンジュゲート化方法を説明する。
【図5】図5は、KDRに対して高い結合アフィニティを有するペプチドを含有するダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)を説明する。
【図6】図6は、最低レベルのTFAを有するダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(例えば(21))の製造方法を説明する。
【図7】図7は、最低レベルのTFAを有するダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(例えば(21))の別の製造方法を説明する。
【図8】図8は、最低レベルのTFAを有するダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲートの別の製造方法を説明する。
【図9】図9は、KDRに対して高い結合アフィニティを有する、別の典型的なモノマーペプチド(32)を説明する。
【図10】図10は、図9に示したモノマーペプチドを含む、別のモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(31)を説明する。
【図11】図11A〜Cは、造影剤中にダイマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(11)(図52に示す)を用いることによって得られたイメージを示す:(1)基底(図11A);(2)25分間後(図11B);及び(3)基底と自由循環バブルの控除後(図11C)。
【図12】図12A〜Cは、造影剤中にモノマーペプチド・リン脂質コンジュゲート(1)(図2に示す)を用いることによって得られたイメージを示す:基底(図12A);25分間後(図12B);及び基底と自由循環バブルの控除後(図12C)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

【化2】

から成る群から選択されるペプチド−リン脂質コンジュゲート。
【請求項2】
請求項1記載のコンジュゲートを含む超音波造影剤組成物。
【請求項3】
造影剤がガス充填微小嚢を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ガス充填微小嚢がリン脂質を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
ガス充填微小嚢が、DSPC、DPPG、DPPA、DSPA、DPPE、DPPG、DSPE−PEG1000、DSPE−PEG2000、パルミチン酸及びステアリン酸から成る群から選択される、2つ以上の成分をさらに含む、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
該コンジュゲートがAc−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK{Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDP−GGGK[−Adoa−Adoa−Glut−K(DSPE−PEG2000−NH−Glut)]−NH環状(2−12)ジスルフィド}−NH環状(6−13)ジスルフィドを含み、該造影剤がさらにDSPCとDPPGを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
該コンジュゲートが配列番号:4を含み、該造影剤がさらにDSPCとDPPGを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
該コンジュゲートが配列番号:4を含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG1000、DPPE及びDPPGを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
該コンジュゲートがAc−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK{Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDP−GGGK[−Adoa−Adoa−Glut−K(DSPE−PEG2000−NH−Glut)]−NH環状(2−12)ジスルフィド}−NH環状(6−13)ジスルフィドを含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG1000、DPPE及びDPPGを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
該コンジュゲートがAc−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK{Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDP−GGGK[−Adoa−Adoa−Glut−K(DSPE−PEG2000−NH−Glut)]−NH環状(2−12)ジスルフィド}−NH環状(6−13)ジスルフィドを含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG1000、DSPC及びDSPAを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項11】
該コンジュゲートが配列番号:1を含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG2000、DSPC及びDSPAを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項12】
該コンジュゲートが配列番号:1を含み、該造影剤がさらにDSPC及びDSPAを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項13】
該コンジュゲートがAc−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK{Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDP−GGGK[−Adoa−Adoa−Glut−K(DSPE−PEG2000−NH−Glut)]−NH環状(2−12)ジスルフィド}−NH環状(6−13)ジスルフィドを含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG2000、DSPC及びステアレートを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項14】
該コンジュゲートが配列番号:1を含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG2000、DSPC及びステアレートを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項15】
該コンジュゲートがAc−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK{Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDP−GGGK[−Adoa−Adoa−Glut−K(DSPE−PEG2000−NH−Glut)]−NH環状(2−12)ジスルフィド}−NH環状(6−13)ジスルフィドを含み、該造影剤がさらにDSPC及びステアレートを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項16】
該コンジュゲートがAc−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK{Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDP−GGGK[−Adoa−Adoa−Glut−K(DSPE−PEG2000−NH−Glut)]−NH環状(2−12)ジスルフィド}−NH環状(6−13)ジスルフィドを含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG1000、DSPC及びステアレートを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項17】
該コンジュゲートが配列番号:1を含み、該造影剤がさらにDSPE−PEG1000、DSPC及びステアレートを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項18】
糖、多糖類及びポリオール類から成る群から選択される成分をさらに含む、請求項5記載の組成物。
【請求項19】
前記成分が、マンニトール、デキストラン及びポリエチレングリコールから成る群から選択される、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記ガスがフッ素化ガスを含む、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
該ガスが、任意に、空気、窒素、酸素又は二酸化炭素との混合物として、C、C10又はSFを含む、請求項3又は請求項7〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
哺乳動物におけるKDR含有組織のイメージング方法であって、請求項3記載の組成物の有効量を該哺乳動物に投与して、該哺乳動物をイメージングすることを含む方法。
【請求項23】
哺乳動物における血管新生プロセスの検出又はイメージング方法であって、請求項3記載の組成物の有効量を該哺乳動物に投与して、該哺乳動物をイメージングすることを含む方法。
【請求項24】
哺乳動物におけるKDR含有腫瘍組織の検出又はイメージング方法であって、請求項3記載の組成物の有効量を該哺乳動物に投与して、該哺乳動物をイメージングすることを含む方法。
【請求項25】
【化3】

を含むペプチド・モノマー。
【請求項26】
【化4】

から成る群から選択される1つ以上のモノマーを含む超音波造影剤組成物。
【請求項27】
該造影剤が、ガス充填微小嚢を含む、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
前記ガスがフッ素化ガスを含む、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
リン脂質をさらに含む、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
DSPC、DPPG、DPPA、DSPA、DPPE、DPPG、DSPE−PEG1000、DSPE−PEG2000、パルミチン酸及びステアリン酸から成る群から選択される、2つ以上の成分をさらに含む、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
該ガスが、任意に、空気、窒素、酸素又は二酸化炭素との混合物として、C、C10又はSFを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
請求項25記載のペプチド・モノマーの1つ以上を含むペプチド−リン脂質コンジュゲート。
【請求項33】
該リン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン及び修飾ホスファチジルエタノールアミンから成る群から選択される、請求項32記載のペプチド−リン脂質コンジュゲート。
【請求項34】
該リン脂質がDSPE−PEG2000である、請求項33記載のペプチド−リン脂質コンジュゲート。
【請求項35】
哺乳動物におけるKDR含有組織のイメージング方法であって、請求項26記載の組成物の有効量を該哺乳動物に投与して、該哺乳動物をイメージングする方法。
【請求項36】
哺乳動物における血管新生プロセスの検出又はイメージング方法であって、請求項26記載の組成物の有効量を該哺乳動物に投与して、該哺乳動物をイメージングする方法。
【請求項37】
哺乳動物におけるKDR含有腫瘍組織の検出又はイメージング方法であって、請求項26記載の組成物の有効量を該哺乳動物に投与して、該哺乳動物をイメージングする方法。
【請求項38】
リン脂質を含むガス充填微小嚢の製造方法であって、
a.(i)水を包含する水性媒質、(ii)水と実質的に混和しない有機溶媒、(iii)リン脂質、(iv)請求項1記載のペプチド−リン脂質コンジュゲート、及び(v)分散保護剤を含む水性−有機エマルジョンを製造する工程;
b.前記エマルジョンを凍結乾燥して、前記リン脂質を含む凍結乾燥マトリックスを得る工程;
c.前記凍結乾燥マトリックスを生体適合性ガスと接触させる工程;
d.前記凍結乾燥マトリックスを生理的に許容される水性キャリヤー液体中に溶解して、前記ガス充填微小嚢の懸濁液を得ることによって、前記凍結乾燥マトリックスを再構成する工程
を含む方法。
【請求項39】
工程aが、
a.PEG化リン脂質と請求項1記載のコンジュゲートを含む水性懸濁液を製造する工程;
b.水性媒質、有機溶媒、リン脂質及び分散保護剤を含む水性−有機エマルジョンを製造する工程;及び
c.工程a1の前記水性懸濁液に工程a2の該エマルジョンを混合する工程
を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
【化5】

から成る群から選択されるペプチドをリン脂質と結合させることを含む、ペプチド・リン脂質コンジュゲートの製造方法。
【請求項41】
リン脂質がPEG化されている、請求項40記載の方法。
【請求項42】
PEG化リン脂質がDSPE−PEG2000−NHである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
コンジュゲート化が該ペプチドのモノNHSエステルを該リン脂質塩の遊離アミノ基と反応させることを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
低レベルのTFAを有するペプチド・リン脂質コンジュゲートの製造方法であって、
ペプチド・ダイマーTFA塩をアニオン交換によって酢酸塩に転化させる工程;及び
該ペプチド・ダイマーをリン脂質に結合させる工程を含む方法。
【請求項45】
該ペプチドがペプチド・ダイマーを含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
該ペプチド・ダイマーが、Ac−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK[Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(−Adoa−Adoa−Glut−K)−NH環状(2−12)ジスルフィド]−NH環状(6−13)ジスルフィドを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
該アニオン交換クロマトグラフィーが酢酸アンモニウムのステップ勾配を含む、請求項44記載の方法。
【請求項48】
該リン脂質がPEG化されている、請求項44記載の方法。
【請求項49】
該PEG化リン脂質がDSPE−PEG2000−NHである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
低レベルのTFAを有するペプチド・リン脂質コンジュゲートの製造方法であって、サイズ排除カラムにおいてペプチド・リン脂質コンジュゲート及びTFAイオンを溶出することを含む方法。
【請求項51】
前記溶出が炭酸水素アンモニウムの存在下で行われる、請求項50記載の方法。
【請求項52】
該ペプチド・リン脂質コンジュゲートがPEG化リン脂質を含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
該PEG化リン脂質がDSPE−PEG2000−NHである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
該ペプチド・リン脂質コンジュゲートがペプチド・ダイマーを含む、請求項50記載の方法。
【請求項55】
該ペプチド・ダイマーがAc−AGPTWCEDDWYYCWLFGTGGGK[Ac−VCWEDSWGGEVCFRYDPGGGK(−Adoa−Adoa−Glut−K)−NH環状(2−12)ジスルフィド]−NH環状(6−13)ジスルフィドを含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
該ペプチド・リン脂質コンジュゲートがペプチド・モノマーを含む、請求項50記載の方法。
【請求項57】
該モノマーが、
【化6】

から成る群から選択される、請求項56記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公表番号】特表2009−518448(P2009−518448A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544663(P2008−544663)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/061793
【国際公開番号】WO2007/067979
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(593069934)ブラッコ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ (8)
【Fターム(参考)】