説明

タービンホイール間の熱応答を同期させるための分割インペラ構造

【課題】タービンホイール間の熱応答を同期させるための分割インペラ構造を提供すること。
【解決手段】隣接するタービンホイール(80、90)間の熱応答を同期させるため、これらの間の分割インペラ構造を備えたインペラシステムが提供される。例示的な実施形態は、タービン、圧縮機並びにタービン及び圧縮機間に配置されるロータを有するターボ機械(10)と、インペラシステムとを含む。インペラシステムは、ターボ機械ホイール(70)と、ターボ機械ホイール(70)に隣接した別のターボ機械ホイール(80)と、第1及び第2のターボ機械ホイール(70、80)間に定められるラベット継手(90)と、第1及び第2のターボ機械ホイール(70、80)上に配置される分割インペラとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンホイールの熱応答に関し、より詳細には、隣接ホイールの熱応答を同期させるための隣接タービンホイール上の分割インペラ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来技術のターボ機械1を示す。ターボ機械1において、圧縮機ロータ8上の隣接ホイール2、3は、ホイール2、3間にラベット継手4を含む。ラベット継手4は、ターボ機械1の始動中に生じる高い圧縮応力によって亀裂が入る可能性がある。この亀裂問題の研究により、2つのホイール2、3の熱応答の差が高い圧縮応力に対する有意な寄与因子であることが示されている。所与のホイールの熱応答は、過渡応答中のバルク温度変動によって示される。熱応答の差は、2つのホイール2、3のバルク温度の差で表される。現在のインペラ5は、全体的にホイール2上で機械加工され、これによりホイール2は、ホイール3よりも早期に加熱される。結果として、ラベット継手4の雄部分6は、ラベット継手4の雌部分7よりも早期に加熱される。加熱速度の差は、高いラベット荷重を生じさせ、これにより、ラベット継手4上で亀裂につながる可能性のある高い圧縮応力を引き起こす。ホイール2の熱伝達区域は、ホイール3の熱伝達区域よりも大きいことは理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4882902号明細書
【特許文献2】米国特許第5143512号明細書
【特許文献3】米国特許第5226785号明細書
【特許文献4】米国特許第6234746号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様によれば、タービン、圧縮機並びにタービン及び圧縮機間に配置されるロータを有するターボ機械と、インペラシステムとが提供される。インペラシステムは、第1のターボ機械ホイールと、第1のターボ機械ホイールに隣接した第2のターボ機械ホイールと、第1及び第2のターボ機械ホイール間に定められるラベット継手と、第1及び第2のターボ機械ホイール上に配置される分割インペラとを含む。
【0005】
本発明の別の態様によれば、第1段ホイール及び第2段ホイールと、インペラシステムとを有するガスタービンエンジンが提供される。インペラシステムは、第1段ホイール上に配置された上側インペラ部分と、第2段ホイール上に配置された下側インペラ部分と、上側インペラ部分及び下側インペラ部分間に配置されたラベット継手とを含む。
【0006】
本発明の更に別の態様によれば、第1のターボ機械ホイール及び第2のターボ機械ホイールを有するガスタービンエンジンのロータ組立体と、インペラシステムとが提供される。インペラシステムは、上側インペラ部分を有する第1段ホイールと、下側インペラ部分を有する第2段ホイールと、上側インペラ部分及び下側インペラ部分間に配置されたラベット継手とを含み、この分割インペラにより、第1段ホイール及び第2段ホイール上に過渡的な熱流速が均等に分布される。
【0007】
これら及び他の利点並びに特徴は、図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来技術のターボ機械を示す図。
【図2】本発明の好ましい実施形態による、分割インペラ構造を組み込んだターボ機械を示す図。
【図3】時間に対するバルク温度差のグラフの実施例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲に具体的に指摘し且つ明確に特許請求している。本発明の上記及び他の特徴並びに利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかである。
【0010】
この詳細な説明は、例証として図面を参照し、利点及び特徴と共に本発明の例示的な実施形態を説明している。
【0011】
ここで各図面、特に図2を参照すると、全体が参照符号10で示され、本発明の好ましい実施形態による分割インペラ構造を組み込んだターボ機械が示されている。ターボ機械10は、圧縮機セクション12及びタービンセクション14を含む。圧縮機セクション12は、外側の固定又は静止構成部品16と、第1のターボ機械ホイール70(ホイール70)に連結されたロータ18とを含み、該ホイール70は、第2のターボ機械ホイール80(ホイール80)に結合され、ホイール70、80は圧縮機ブレード(図示せず)に装着される。ホイール70、80は圧縮機ホイールとすることができる。矢印22で示される空気は、環状流路に沿って加圧され、タービンセクション14に流入する。
【0012】
タービンセクション14は、固定又は静止構成部品24と、複数のタービン段とを含み、各タービン段が、ステータブレード26と、タービンロータ32の一部を形成する、タービンホイール30上で回転可能なタービンブレード28とを含む。圧縮機ロータ18及びタービンロータ32の隣接する端部はフランジ(図示せず)を保持し、これらは、ラベット接合されてボルト(図示せず)により互いにボルト締結され、固定構成部品(例えば、内側バレル39)により囲まれたキャビティ38内に回転構成部品を形成する。
【0013】
ターボ機械10は、全体的に参照符号40で示される周辺部において圧縮機ロータ18の回りに種々の冷却及びシール構造を含むことは理解される。例えば、矢印22で示される環状通路に流れる圧縮機吐出空気からブリード空気が取り出され、圧縮機ロータ18内の周辺部40に流入するようにする。ブリード空気通路42の1つ又はそれ以上は、周辺40にブリード空気を供給するために設けることができる。圧縮機ブリード空気を周辺部40からキャビティ38に流入させるために、追加の通路44を圧縮機ロータ18付近に設けることもできる。静止構成部品16と圧縮機ロータ18との間の環状漏出流路46は、漏出シール48を備える。例えば、漏出シールは、ラビリンスシール、又はブラシシール、もしくはラビリンス/ブラシシールの組み合わせ、或いは他のタイプのシールを含むことができる。通路44の出口端部の各々は、スワール装置50を有する1つ又はそれ以上のベーンを含むことができる。例示的な実施形態において企図される種々の冷却及びシール構造があることは理解される。
【0014】
例示的な実施形態において、ホイール70、80は、該ホイール70、80間に配置されるラベット継手90と、下側インペラ部分75及び上側インペラ部分85を有する分割インペラとを含む。例示的な実施形態において、下側インペラ部分75は、ホイール70上で機械加工され、上側インペラ部分85は、圧縮機ホイール80上で機械加工される。従って、インペラがホイール70、80の各々上で分割されて配置されることは理解される。例示的な実施形態において、ラベット継手90は、雄部分92と雌部分91とを含むことができ、これらはホイール70及びホイール80上にそれぞれ配置される。雄部分92はホイール80上に配置されてもよく、雌部分91はホイール70上に配置されてもよいことは理解される。本明細書で説明されるように、上側部分85及び下側部分75を含む分割インペラにおいて、過渡加熱が2つのホイール70、80間で実質的に均等に配置されることは理解される。図1を再度参照すると、現在の構成において、インペラ5は単一のホイール2上で機械加工されており、その結果、ラベット継手4においてホイール2、3間のラベット接触が低減される。単一のホイール上でインペラを機械加工することにより、抽出された空気へのホイールの曝露が不均等一になり、これによりホイール2、3の熱応答が不均等になる。加えて、空気が経路に沿って移動するときに、矢印9で示されるような抽出空気の急膨張がもたらされる。空気は、バケットを冷却するためのホイール2を含むターボ機械1の段において、該ターボ機械1が抽出することができる。この抽出は、矢印9で示すように、ホイール2上で機械加工されるインペラ5を通って移動する。
【0015】
再度図2を参照すると、例示的な実施形態において、インペラを上側部分85と下側部分75とに分割することによって、ホイール70及びホイール80に結合されたバケットを冷却するためにホイール70及びホイール80を含むターボ機械10の段において空気を抽出することができる。この抽出は、矢印95で示すように、ホイール80上の上側部分85とホイール70上の下側部分75とを通って移動する。
【0016】
上側部分85及び下側部分75を有するインペラにより、2つのホイール70、80の過渡的な熱応答を同期させることができる。ホイール70、80の同期化された過渡熱応答は、次に説明するようなラベット継手90の特性を提供する。例示的な実施形態において、ホイール80上で機械加工される上側部分85及びホイール70上で機械加工される下側部分75は、抽出された空気への均等な曝露を提供し、これによりホイール70、80の加熱が均等に分布されるようになる。その結果、2つのホイール70、80間の過渡熱応答の差が低減される。時間に対して示されるように、2つのホイール70、80間のバルク温度差が低減されることから、熱伝達が均等に分布することが推測される。図3は、時間に対するバルク温度差の例示的なグラフ300を示す。グラフ300は、図1のホイール2、3間のバルク温度差変動のグラフ305と、図2のホイール70、80間のバルク温度差変動のグラフ310とを示している。図1のラベット継手4の示差加熱は、図2のラベット継手90の示差加熱よりも大きいことは理解される。図1の構成において結果として生じるより大きな示差加熱により高いラベット荷重が生じ、これにより圧縮応力が増大し、ラベット継手4の亀裂につながる。図3の実施例において、バルク温度差の低減が過渡時点の間に実現される。従って、熱解析では、インペラの上側部分85の熱伝達区域の増大に起因して、ホイール80のより迅速な熱応答を示す。よって、ホイール70、80間のバルク温度差は、過渡応答中に約30°F低減される。その結果、ラベット継手90に伴う2つのホイール70、80の熱的膨張の差が低減され、ラベット荷重及びラベット継手90への関連する応力が低減される。更に、ラベット継手90の長さが増大するので、圧縮区域が増大し、従って、ラベット継手90への応力を低減する助けとなる。
【0017】
図3は、バルク温度差変動の例証に過ぎず、他の例示的な実施形態では他のバルク温度差も企図されることは理解される。ホイール80上の上側部分85及びホイール70上の下側部分75へのインペラの分割は、ラベット継手90の長さの増大をもたらし、これは、図1のラベット継手4よりも大きな圧縮区域を提供し、これによりラベット継手90への圧縮応力が低減されることは更に理解される。従って、上側部分85及び下側部分75は、ホイール70、80の同期された熱応答と、従来技術における急膨張と比べて、矢印95で示すように、上側部分85及び下側部分75を通る円滑な空気流とをもたらす。
【0018】
本明細書で説明される分割インペラ構造は、過渡応答中にターボ機械における隣接ホイールの均等な熱的膨張を提供することは理解される。ラベット継手の長さが増大することで、ラベット継手の耐荷重表面が増大し、これにより亀裂発生が低減される。加えて、隣接ホイール間には、インペラを通る抽出空気の通路の一定の流れ区域が形成される。
【0019】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明はこのような開示された実施形態に限定されないことは理解されたい。むしろ、本発明は、上記で説明されていない多くの変形、改造、置換、又は均等な構成を組み込むように修正することができるが、これらは、本発明の技術的思想及び範囲に相応する。加えて、本発明の種々の実施形態について説明してきたが、本発明の態様は記載された実施形態の一部のみを含むことができる点を理解されたい。従って、本発明は、上述の説明によって限定されると見なすべきではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0020】
1 ターボ機械
2 ホイール
3 ホイール
4 ラベット継手
5 現在のインペラ
6 雄部分
7 雌部分
8 圧縮機ロータ
9 矢印
10 ターボ機械
12 圧縮機セクション
14 タービンセクション
16 静止構成部品
18 圧縮機ロータ
22 矢印
24 静止構成部品
26 ステータブレード
28 タービンブレード
30 タービンホイール
32 タービンロータ
38 キャビティ
39 内側バレル
40 周辺
42 ブリード空気通路
44 追加の通路
46 環状漏出流路
48 漏出流路
50 スワール装置
70 ホイール
75 下側インペラ部分
80 ホイール
85 上側インペラ部分
90 ラベット継手
91 雌部分
92 雄部分
95 矢印
300 例示的なグラフ
305 グラフ
310 グラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンと、圧縮機と、前記タービン及び圧縮機間に配置されるロータとを有するターボ機械におけるインペラシステムであって、
第1のターボ機械ホイール(70)と、
第1のターボ機械ホイール(70)に隣接した第2のターボ機械ホイール(80)と、
第1及び第2のターボ機械ホイール(70、80)間に定められるラベット継手(90)と、
第1及び第2のターボ機械ホイール(70、80)上に配置される分割インペラと
を備えるインペラシステム。
【請求項2】
第1及び第2のターボ機械ホイール(70、80)が圧縮機ホイールである、請求項1記載のインペラシステム。
【請求項3】
前記インペラの上側部分(85)が第1のターボ機械ホイール(70)上に配置される、請求項1記載のインペラシステム。
【請求項4】
前記インペラの下側部分(75)が第2のターボ機械ホイール(80)上に配置される、請求項3記載のインペラシステム。
【請求項5】
前記ラベット継手(90)が、前記インペラの上側部分(85)と下側部分(75)との間に配置される、請求項1記載のインペラシステム。
【請求項6】
前記ラベット継手(90)が、第1のターボ機械ホイール(70)上に配置された雌部分(91)を含む、請求項1記載のインペラシステム。
【請求項7】
前記ラベット継手(90)が、第2のターボ機械ホイール(80)上に配置された雄部分(92)を含む、請求項6記載のインペラシステム。
【請求項8】
第1及び第2のターボ機械ホイール(70、80)の過渡加熱が、前記雄及び雌部分(91、92)全体に分布する、請求項7記載のインペラシステム。
【請求項9】
前記ラベット継手(90)における第1のターボ機械ホイール(70)と第2のターボ機械ホイール(80)との間の圧縮応力が、前記ラベット継手(90)の長さにわたって実質的に低減される、請求項7記載のインペラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−159756(P2010−159756A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−849(P2010−849)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】