説明

タービンロータ

【課題】製造が容易で、耐用温度の高いタービンロータを提供する。また、高効率な蒸気タービン発電プラントを提供する。
【解決手段】ロータシャフトと、前記ロータシャフトと一体で構成される内側ロータディスクと、前記内側ロータディスクに溶接金属部を介して溶接され、動翼を固定するための構造を有する外側ロータディスクと、よりなるタービンロータにある。外側ロータディスクは、その厚さ分を貫通する軸方向に伸びる冷却孔を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンロータに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー化と環境保全、特にCO2の低減に関する関心が高まっており、蒸気タービン発電プラントにおいては大容量化と熱効率向上が望まれている。熱効率向上は蒸気の温度と圧力を高くすることによって達成され、今後、さらなる高温化が図られている。高圧タービンの初段翼は回転体要素中で最初に蒸気にさらされる要素であり、最も高温高圧蒸気への耐久性、特に強度信頼性の確保が必要である。
【0003】
主蒸気温度が650℃を越えると、従来の鉄を主成分とした材料では、高温強度、特にクリープ強度が急激に低下する。これまでに、回転体の冷却等により高温蒸気への対策がされている。特開2004−239262号公報,特表2002−508044号公報(特許文献1,2)には、ロータシャフトの軸中からディスクの間に通じる冷却孔を設けて、その中に冷却媒体を通して、ロータを冷却する方式が記載されている。特開平7−145707号公報,特開平7−42508号公報(特許文献3,4)には、ロータディスクの根元に冷却孔を設けて、冷却する方式が記載されている。特開2004−169562号公報(特許文献5)では、耐熱性の高いNi基超合金によりロータを製作することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004―239262号公報
【特許文献2】特表2002−508044号公報
【特許文献3】特開平7−145707号公報
【特許文献4】特開平7−42508号公報
【特許文献5】特開2004−169562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータシャフト内部を軸方向に冷却するには、ロータシャフトを貫通する冷却孔が必要となる。ロータシャフトの軸長は数メートルに及ぶため、冷却孔を設けるには労力とコストを要する。また、ロータディスクの内部や根元に冷却孔を設けた場合、ロータディスクの根元部の温度は低下するが、ロータディスクの中央部や、外周部の温度は低下しにくい。
【0006】
また、Ni基合金は耐用温度が高いものの、大型の鋼塊の製造が困難な材料であり、タービンロータ全体をNi基合金で製造することが困難である。また価格が高いという問題もある。
【0007】
そこで、本願発明の課題は、高い耐用温度を備え、かつ製造の容易なタービンロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の特徴は、ロータシャフトと、前記ロータシャフトと一体化された内側ロータディスクと、前記内側ロータディスクに溶接金属部を介して溶接され、動翼を固定するための構造を有する外側ロータディスクと、よりなるタービンロータにある。
【0009】
外側ロータディスクがNi基超合金材料である場合、内側ロータディスクは12Cr鋼などの高クロム鋼材料、あるいはCrMoV鋼など低合金鋼の材料であることが望ましい。あるいは、外側ロータディスクが12Cr鋼を含む高クロム鋼材料である場合、内側ロータディスクはCrMoV鋼を含む低合金鋼であることが望ましい。
【0010】
さらに、外側ロータディスクは、その厚さ分を貫通する軸方向に伸びる冷却孔を有することが好ましい。外側ロータディスクに設けられる冷却孔の断面形状は、円あるいは楕円が望ましい。また、その大きさは、外周側よりも内周側の方が小さいことが望ましい。また、内側に比べて外側の方に密に分布していることが望ましい。さらに、冷却孔は、他の冷却孔と半径方向に伸びる一直線上に配列させないようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、耐用温度が高く、容易に製造の可能なタービンロータを提供できる。また、蒸気の高温化に対応できるため、蒸気タービン発電プラントの高効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係るタービンロータの断面図。
【図2】タービンロータ溶接装置の模式図。
【図3】実施例1に係るタービンロータ溶接工程を示すフロー図。
【図4】実施例1に係る溶接部近傍の模式図。
【図5】実施例1に係るロータディスク36の横断面模式図。
【図6】実施例2に係るタービンロータの断面図。
【図7】実施例2に係るタービンロータ溶接工程を示すフロー図。
【図8】実施例2に係る溶接部近傍の模式図。
【図9】実施例2に係るロータディスク36の横断面模式図。
【図10】比較例のロータディスク36の横断面模式図。
【図11】実施例2に係る冷却孔を示す模式図。
【図12】実施例3に係る冷却孔を示す模式図。
【図13】実施例4に係る冷却孔を示す模式図。
【図14】実施例5に係る冷却孔を示す模式図。
【図15】実施例6に係る冷却孔を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ロータディスクを外側と内側に分割し、溶接金属部を介して溶接で一体化し、外側のロータディスクに軸方向に延びる貫通孔を設けている。その結果、貫通孔が冷却孔となる。貫通孔を溶接金属部の外側に設けることにより、貫通孔部分の周囲を冷却し、外側ロータディスクの外周側が高温となった場合にも、溶接金属部や内側ロータディスク,ロータシャフトの温度を上昇させないこととなる。従って、高温蒸気と直接接触する外側ロータディスクと比して、高温での耐久性の低い材料を内側ロータディスク,ロータシャフトに適用することが可能となる。
【0014】
例えば、Ni基合金製の外側ロータディスクを使用する場合、内側ロータディスク,ロータシャフトとしてFe基耐熱鋼(12Cr鋼などの高クロム鋼材料,CrMoV鋼などの低合金鋼材料)を使用できる。このような構造とすることで、大型の鋼塊の製造が困難なNi基合金をタービンロータに容易に適用できる。また、他の例としては、外側ロータディスクを12Cr鋼を含む高クロム鋼材料とし、内側ロータディスクはCrMoV鋼を含む低合金鋼材料とすることができる。
【0015】
その結果、高温の蒸気への対応が可能となり、蒸気タービンプラントの効率を向上させることができる。また、ロータシャフトに冷却構造を設ける場合に比して、加工が容易であり、労力,コストがかからない。さらに、蒸気タービンプラントの蒸気温度を勘案すると、耐熱性の高い高級材料の使用量を削減できるため、高い耐用温度を備えつつ、タービンロータを低コストで製造でき、プラントの低コスト化を図れる。また、高温で使用することができるため、プラントの高効率化に寄与する。
【0016】
少なくとも、タービンロータの最も高温側(蒸気流入側)のロータディスクに上記の構造を採用する必要がある。後段側で、蒸気温度が充分に低いロータディスクは、内側,外側に分割せず、一体とするとともに、高価な高温耐久性の高い材料を省略できる。
【0017】
以下、本発明のタービンロータを実施するための最良の形態を具体的な実施例によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1から図5を用いて第1の実施例について説明する。
【0019】
図1は、ロータディスクを有する高圧蒸気用のタービンロータの断面図である。外側のロータディスク35,内側のロータディスク36,ロータシャフト37を有し、外側ロータディスク35と内側ロータディスク36は、溶接金属38を介して溶接締結され、一体化されている。ロータディスクの外周側には、動翼を締結するための固定溝などの構造を備えている。
【0020】
本実施例では、外側のロータディスク35は高温強度を必要とするため、Ni基合金材料を使用する。内側のロータディスク36は外側ほど高温強度を必要としないため、より安価な12Cr鋼(高クロム鋼)を使用する。本実施例では、内側ロータディスクは、ロータシャフト37と一体に12Cr鋼で構成されている。溶接金属38は、晒される温度により選択することができ、晒される温度が外側ロータディスク35に近い場合はNi基合金の溶接材料,内側ロータディスク36に近い場合は高クロム鋼の溶接材料を用いる。
【0021】
図2は、タービンロータを溶接するためのタービンロータ溶接装置の例を示す。タングステン・不活性ガス(TIG)溶接法によるタービンロータ溶接装置の模式図である。タービンロータ溶接装置8は、電極9が取り付けられるトーチ10,溶接部6を形成する溶接ワイヤ11,トーチ10及び溶接ワイヤ11を支持固定するアーム12,電極9に所定値の電流を供給する溶接電源13,溶接部6の酸化を抑制するために電極9周囲から噴射する不活性ガスを供給するガスボンベ14,タービンロータ1を支持しながら回転させるためのタービンロータ回転装置15及び溶接ワイヤ11を溶接部6に送給する溶接ワイヤ送給装置16を備える。電極9には、溶接電源13からの送電線17が取り付けられてあり、溶接電源13から電流が供給される。トーチ10には、ガスボンベ14から不活性ガスの供給を受けるためにガスホース18が取り付けてある。タービンロータ1には、電極9とタービンロータ1との間で電気アークを発生するために、電気線19が取り付けてある。タービンロータ回転装置15には、回転信号線20が取り付けてあり、溶接電源13からの制御信号を受けてタービンロータ回転装置15の回転速度および回転方向が制御される。溶接ワイヤ送給装置16は、送給信号線21からの制御信号を受けて溶接ワイヤ22の送給速度が制御されるように構成されてある。
【0022】
本実施例には、図2で示したタングステン・不活性ガス(TIG)溶接装置の他、溶接装置としては、サブマージアーク(SAW)溶接法,被覆アーク溶接法,金属・不活性ガス(MIG)溶接法、もしくはこれらの組み合わせの溶接法を用いた溶接装置が適用可能である。
【0023】
また、図2では、ロータを垂直に配置して下向きに溶接しているが、ロータを水平に配置して横向きに溶接しても構わない。
【0024】
図3に、外側ロータディスク35を内側ロータディスク36に溶接する工程フローの一例を示す。まず、ステップ102で外側ロータディスク35を内側ロータディスク36に組み込む。その後、ステップ103で、溶接工程を開始する指示がでると、ステップ104で、溶接時の熱応力を緩和するために、ロータを予熱する。そして、ステップ105において、図2で示したタービンロータ溶接装置によって溶接を行う。ステップ106では、本溶接で溶接部6に入った熱を均一化するために応力除去焼鈍を行う。ステップ107で溶接部6の溶接欠陥検査を行う。ステップ108で欠陥を検出して、さらにステップ109で欠陥サイズが機械強度上許容できない場合、ステップ110で溶接部6を切除して、さらにステップ111でロータ端面を開先加工する。ステップ108で欠陥を検出しなかった、あるいはステップ109で欠陥サイズを許容することが確認できた場合、ステップ112に進んで接合工程を終了する。
【0025】
図4は、外側ロータディスク35を内側ロータディスク36に溶接した後の溶接部近傍の縦断面を示している。図5の(1)は、横断面の模式図である。外側ロータディスク35の外側には、動翼40が取り付けられる。この例でも、内側ロータディスク36は、ロータシャフト37と一体で構成されている。外側ロータディスク35と内側ロータディスク36は、溶接金属38を溶け込ませて溶接締結されている。
【0026】
また、図5の(2)は、ロータディスクの温度分布模式図である。横軸は温度を示し、破線で内側ロータディスク36と、外側ロータディスク35の耐用温度を併記した。縦軸はロータディスクの位置を示し、破線で溶接金属38の位置を表す。動翼40は蒸気に晒されるため高温になる。熱は、ロータディスクの根元方向に向かい徐々に温度低下しながら伝わる。そして、ロータディスクの温度が高クロム鋼の耐用温度を下回る箇所が存在する。この領域は、高クロム鋼で製作した内側ロータディスク36に置き換えることができる。これにより、安価で大型鋼塊が容易な高クロム鋼で製作された内側ロータディスク36は適正に運転を続けることができる。
【0027】
このように、本実施例によれば、耐熱性の高いNi基合金の使用量を削減しながら、蒸気の高温化に対応できるため、プラントの低コスト化と高効率化を両立できる。なお、本実施例では内側,外側の2つのロータディスクを用いたが、内側,外側及び中間の3以上の部位に分割してもよい。
【実施例2】
【0028】
図6から図11を用いて、第2の実施例について説明する。図6は本実施例に係る高圧蒸気用のタービンロータの断面図である。本実施例は、図6に示すように、外側ロータディスク35には、ロータシャフトの軸方向に貫通する冷却孔39が設けてある。その他については、実施例1と同様であるため、詳細な説明は割愛し、相違点のみ記載する。
【0029】
図7は、本実施例に係るタービンロータにおいて、外側ロータディスク35を内側ロータディスク36に溶接する工程フローの一例を示している。まず、ステップ201で、外側ディスク35に冷却孔39を導入する加工を行う。次に、ステップ202で外側ロータディスク35をロータディスク36に組み込む。その後、ステップ203で、溶接工程を開始する指示がでると、ステップ204で、溶接時の熱応力を緩和するために、ロータを予熱する。そして、ステップ205において、図2で示したタービンロータ溶接装置によって溶接を行う。ステップ206では、本溶接で溶接部6に入った熱を均一化するために応力除去焼鈍を行う。ステップ207で溶接部6の溶接欠陥検査を行う。ステップ208で欠陥を検出して、さらにステップ209で欠陥サイズが機械強度上許容できない場合、ステップ210で溶接部6を切除して、さらにステップ211でロータ端面を開先加工する。ステップ208で欠陥を検出しなかった、あるいはステップ209で欠陥サイズを許容することが確認できた場合、ステップ212に進んで接合工程を終了する。
【0030】
図8に、外側ロータディスク35が溶接されたロータディスク36の溶接後の溶接部近傍の縦断面を示す。図9の(1)は、横断面の模式図である。外側ロータディスク35の外周側には、動翼40が取り付けられる。内側ロータディスク36は、ロータシャフト37と一体に構成されている。外側ロータディスク35と内側ロータディスク36は、溶接金属38を溶け込ませて溶接し、一体化されている。外側ロータディスク35に冷却孔39が設けてあり、外側ディスク35を軸方向に貫通している。
【0031】
図9の(2)は、ロータディスクの温度分布模式図である。横軸は温度を示し、破線で内側ロータディスク36と、外側ロータディスク35の耐用温度を併記した。縦軸はロータディスクの位置を示し、破線で上から順に冷却孔39の外周と内周,溶接金属38をそれぞれ示す。図9(2)中の(a)は本実施例のロータディスクの温度分布であり、(b)は比較例を示す。(a)の本実施例では、動翼40は蒸気に晒されるため高温になる。熱は、ロータディスクの根元方向に向かい徐々に温度低下しながら伝わる。そして、熱は冷却孔39で冷却され、その温度勾配は外側ロータディスク35中よりも高くなる。ここで、冷却孔39の内周での温度が内側ロータディスク36の耐用温度を下回る。これにより、安価で大型の鋼塊の製造が容易な材料で製作された内側ロータディスク36は適正に運転を続けることができる。一方、(b)の比較例では、(a)のような冷却孔39がないため、温度勾配はなだらかなままであり、ロータディスク根元部の温度は、内側ロータディスク36材料に用いた安価で大型鋼塊が容易な材料の耐用温度を上回る。この場合、高温強度の高い外側ロータディスクの範囲を増やしたり、高価で大型の鋼塊の製造が困難な材料を使用してタービンロータを製造したり、もしくは他の冷却手段を設ける必要がある。
【0032】
図10の(1)は、比較例のロータディスクの横断面模式図である。本発明の実施例とは、冷却孔39が、内側ロータディスク36に位置する点で異なる。また、図10の(2)は、ロータディスクの温度分布模式図である。図9(2)中の(a)は本実施例であり、(c)は比較例の一例を示す。(c)の比較例の場合、(a)の本実施例と同様に、熱は冷却孔39で急速に冷却される。しかし、冷却される前に、内側ロータディスク36の温度は内側ロータディスク36材料の耐用温度を超える恐れがある。耐用温度を超える場合には、内側ロータディスク36は適正に運転を続けることができないため、冷却孔39は、外側ロータディスク35に設けることが好ましい。
【0033】
本実施例では、冷却孔はロータシャフトの軸を中心として同心円上に設けているが、同心円状としなくともよい。後述の実施例についても同様である。ただし、タービンロータは回転体であるため、中心対称とすることが望ましい。
【0034】
このように、本実施例によれば蒸気の高温化に対応できるため、プラントの高効率化に寄与できる。さらに、耐熱性の高い高級材料の使用量を削減できるため、プラントの低コスト化を図れる。
【実施例3】
【0035】
第3の実施例について図11,図12を用い、冷却孔の開口部の形状や配置について説明する。実施例2では、周方向に一列の断面形状が円形の貫通孔を設けた例について説明した。本実施例は、実施例2とは、冷却孔39の形状のみが異なり、その他については同じなので、説明を一部割愛する。
【0036】
図11は、冷却孔39の形状と配列の一例を示す。冷却孔39の形状を円状とすることにより、応力集中を回避することができる。冷却孔39の大きさは、一定(均等)とすることにより冷却効率のばらつきを抑制することができる。また、冷却孔39の配列は、ロータディスクを効率よく、かつ周方向に均等に冷却するために、半径方向に一直線上としている。
【0037】
冷却孔39の形状は、応力集中を回避するために、四角形や三角形のような角が鋭角であってならないが、必ずしも円状である必要もない。すなわち、楕円状でも構わない。例えば、楕円の形状は、図12の(a)に示す周方向に伸びるもの、あるいは(b)に示す半径方向に伸びるものでも良い。このような楕円形状にすることにより、円状よりも貫通孔の開口面積を増加させ、よりロータディスクの冷却効率は向上する。
【実施例4】
【0038】
第4の実施例について図13を用いて説明する。本実施例は、冷却孔39の大きさを変化させて設けた例である。その他については実施例2及び3と同じなので、説明は割愛する。
【0039】
冷却孔39の大きさはロータディスクの温度分布に応じて変化させることが可能である。図13の(a)は、半径方向に徐々に小さくする例を示す図である。また、図13(b)は、冷却孔39の大きさを周期的に変化させる例である。貫通孔の配置や大きさを変化させることにより、ロータディスク上の温度の分布を変化させることができる。ロータシャフトの軸から見て外周側に配置された冷却孔よりも、内周側に配置された冷却孔の径を小さくし、高温の外周側でより温度を低下させることができる。このように冷却効率を考慮して冷却孔39の大きさを工夫することにより、均等な円の場合に比べて、よりロータディスクの冷却効率を上げられる。
【実施例5】
【0040】
第5の実施例について図14を用いて説明する。本実施例は、冷却孔39の配列を変える例である。その他については実施例2乃至4とは、同じなので、説明は割愛する。
【0041】
図14(a)の例は、半径方向に一直線上に設けた図11の例より、貫通孔の間隔を維持したまま偶数列,奇数列を互い違いにずらした例である。周期的に半径方向の一直線上に貫通孔を設けている。内周側に配列された冷却孔39の集合体を第1リング、その外側に配列する冷却孔39の集合体を第2リングのように定義すると、例えば軸中心から見て、第1と第3リング,第2と第4リングがそれぞれ異なる直線上にある。冷却孔を周上に配置する場合、所定の周の冷却孔と、他の周の冷却孔とが、半径方向に伸びる一直線上に配置されていないため、図11の例に比して、よりロータディスクの冷却効率は増加する。
【実施例6】
【0042】
第6の実施例について図15を用いて説明する。本実施例は、冷却孔39の密度を変えた例である。その他については実施例2乃至5と同じなので、説明は割愛する。
【0043】
冷却孔39の内角に対する密度は、図11の例では外側と内側では同じである。図15は、温度の高い外側の方では貫通孔の数を増やして面積を大きくし、温度の低い内側ほど貫通孔を少なくする例である。図15では、冷却孔は複数の周状に設けられており、外周の冷却孔は、内周よりも密に配置されている。このようにロータディスク上の場所により、冷却孔39の密度を変化させることにより、よりロータディスクの冷却効率は増加する。
【実施例7】
【0044】
第7の実施例について説明する。本実施例は、ロータディスク材の材料を変更する例について説明する。その他の構成については実施例1と同様であり、説明は割愛する。
【0045】
実施例1では、外側ロータディスク35の材料にNi基合金材料,内側ロータディスク36の材料に高クロム鋼を採用した。材料の耐用温度は、Ni基合金が最も高く、高クロム鋼,低合金鋼の順に低くなる。
【0046】
さらに、実機では各部材は高温に晒されるため、高温強度以外に熱膨張についても考慮が必要である。熱膨張係数は、Ni基合金材料が最も大きく、低合金鋼材料,高クロム鋼材料の順に低くなる。異材溶接材を高温で使用する際には、熱膨張の差は小さい方がよい。それは、熱膨張の差により、溶接後、あるいは運転中に溶接部に割れを生じる恐れがあるためである。このことから、外側ロータディスク35の材料にNi基超合金を採用した場合は、内側ロータディスクの材料に低合金鋼を採用することが望ましい。
【0047】
このようにロータディスクの材料を適正に選定することにより、より溶接部の信頼性は向上する。
【実施例8】
【0048】
第8の実施例について説明する。本実施例は、ロータディスク材の材料を変更する例について説明する。その他の構成については実施例1と同様であり、説明は割愛する。
【0049】
実施例1では、外側ロータディスク35の材料にNi基合金材料,内側ロータディスク36の材料に高クロム鋼を採用した。しかし、蒸気温度が低い場合、必ずしも外側ロータディスク35にNi基合金材料を採用する必要はない。材料の耐用温度は、Ni基合金が最も高く、高クロム鋼,低合金鋼の順に低くなる。蒸気温度によっては、Ni基合金よりも耐用温度の低い高クロム鋼材料を採用することが望ましい。
【0050】
本実施例は、外側ロータディスクに高クロム鋼材料を適用し、内側ロータディスク36は、より耐用温度の低い低合金鋼材料を採用する例である。高クロム鋼材料は安価であるとともに、大型鋼塊の製造が容易である。その結果、より容易にロータディスクを提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,2 タービンロータ
6 溶接部
8 タービンロータ溶接装置
9 電極
10 トーチ
11 溶接ワイヤ
12 アーム
13 溶接電源
14 ガスボンベ
15 タービンロータ回転装置
16 溶接ワイヤ送給装置
17 送電線
18 ガスホース
19 電気線
20 回転信号線
21 送給信号線
30 溶接開先
35 外側ロータディスク
36 内側ロータディスク
37 ロータシャフト
38 溶接金属
39 冷却孔
40 動翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトと、動翼を締結するための構造を備えたロータディスクとを有するタービンロータであって、
前記ロータディスクは、外側ロータディスクと、内側ロータディスクとの少なくとも2の部材より構成され、前記内側ロータディスクと外側ロータディスクとが溶接金属部を介して溶接により一体化されていることを特徴とするタービンロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のタービンロータであって、
前記外側ロータディスクは、前記ロータシャフトの軸方向に貫通する冷却孔を有することを特徴とするタービンロータ。
【請求項3】
請求項2に記載のタービンロータであって、
前記冷却孔の断面形状が円あるいは楕円であることを特徴とするタービンロータ。
【請求項4】
請求項2に記載のタービンロータであって、
前記冷却孔は周状に設けられており、ロータシャフトの軸から見て外周側に配置された冷却孔よりも、内周側に配置された冷却孔の径が小さいことを特徴とするタービンロータ。
【請求項5】
請求項2に記載のタービンロータであって、
前記冷却孔は複数の周状に設けられており、所定の第一の周の冷却孔と、前記第一の周の内側又は外側に隣接する第二の周の冷却孔とが、半径方向に伸びる一直線上に配置されていないことを特徴とするタービンロータ。
【請求項6】
請求項2に記載のタービンロータであって、
前記冷却孔は複数の周状に設けられており、所定の第一の周の冷却孔と、前記第一の周の内側に設けられた第二の周よりも密に配置されていることを特徴とするタービンロータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載されたタービンロータであって、
外側ロータディスクがNi基合金よりなり、内側ロータディスクが高クロム鋼材料または低合金鋼材料であることを特徴とするタービンロータ。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載されたタービンロータであって、
外側ロータディスクがNi基合金よりなり、内側ロータディスクが12Cr鋼材料またはCrMoV鋼材料であることを特徴とするタービンロータ。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載されたタービンロータであって、
外側ロータディスクが高クロム鋼材料よりなり、内側ロータディスクが低合金鋼材料であることを特徴とするタービンロータ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載されたタービンロータを搭載したことを特徴とする蒸気タービン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate