説明

タービン翼及びタービン

【課題】タービン翼について、ロータやケーシングから取り外すことなく、目視にて補修の要否を容易に判断することを可能にする手段を提供する。
【解決手段】本発明に係るタービン静翼10は、回転駆動されるロータの径方向に延びる翼本体11と、該翼本体11の基端部に設けられた基端側シュラウド13とを備え、基端側シュラウド13における翼本体側面13aに、その外縁19に沿って該外縁19から所定間隔をあけて延びる補修基準線18が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータに固定されて径方向に延びる翼本体と、この翼本体に設けられて相隣接する翼本体同士を接続するシュラウドとを有するタービン翼、及び該タービン翼を有するタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンを構成する静翼や動翼のようなタービン翼は、ガスタービンの運転時に高温の作動流体に曝される。従って、長時間に亘るガスタービンの運転に伴い、タービン翼の中でシュラウドに損傷が生じる場合がある。そして、このシュラウドの損傷が進行すると、シュラウドの焼損または減肉によって補修が不可能となり、タービン翼の廃却及び交換が必要になる。従って、このようなタービン翼の廃却及び交換に伴うコストアップを防止すべく、また、タービン翼を長期間に亘って使用するため、タービン翼について定期的な検査を行い、早期の段階でシュラウドに生じた損傷を補修するようにしている。
【0003】
ここで、タービン翼の定期的な検査に際しては、まずロータやケーシングからタービン翼を一旦取り外し、シュラウドに生じた損傷の程度を計測する。具体的には、シュラウドは金属等からなる母材の表面に耐熱遮熱コーティングが塗布されたものであるが、この耐熱遮熱コーティングに生じる亀裂の長さを計測する。そして、計測した亀裂の長さを、亀裂の長さと補修や廃却の要否との関係について予め蓄積したデータと比較する。その結果、計測した亀裂の長さが所定の補修基準値を越えているか否かにより、シュラウドについて補修の要否を判断する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−293049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のタービン翼では、シュラウドを含む著しい損傷によって廃却になるタービン翼が相当数存在し、コストアップにつながるという問題がある。すなわち、従来のタービン翼について補修の要否を判断するためには、ガスタービンの定期的な検査時に、シュラウドの損傷度合いを測定するために、タービン翼をロータやケーシングから一旦取り外す必要がある。しかし、ガスタービンの定期的な検査としては、タービン翼以外の部分の検査を目的としたものもあり、このような検査ではタービン翼はロータやケーシングから取り外されることなく固定されたままである。従って、このような検査においてシュラウドに損傷が発見されても、その損傷について補修の要否を判断することができない。そうすると、その後の定期的な検査においてタービン翼を取り外して検査を行う際には、損傷が進行して補修ができない状態になっており、タービン翼の廃却と交換が必要になる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、タービン翼について、ロータやケーシングから取り外すことなく、目視にて補修の要否を容易に判断することを可能にする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係るタービン翼は、ロータの径方向に延びる翼本体と、該翼本体の基端部及び先端部の少なくともいずれか一方に設けられたシュラウドと、を備えるタービン翼において、前記シュラウドにおける前記翼本体の側の面に、この面の外縁に沿って該外縁から所定間隔をあけて延びる補修基準線が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、長時間に亘る運転に伴って、シュラウドにおける翼本体側の面に、その外縁から亀裂が生じ、当該亀裂が外縁に略直交する方向へ延びる場合がある。その場合でも、亀裂が補修基準線に達しているか否かを確認することにより、検査者はタービン翼に補修が必要か否かを目視にて判断することができる。
【0009】
また、本発明に係るタービン翼は、前記シュラウドは、母材の表面にコーティング層が形成されてなり、前記補修基準線は、前記コーティング層に設けられた段差部または溝部によって形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、シュラウドを構成するコーティング層を利用して補修基準線を形成するので、シュラウドとは別部材として補修基準線を設ける場合と比較して、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。また、補修基準線が高温の作動流体に曝されることによって消失する恐れもない。また、溝部によって補修基準線を形成した場合、シュラウドの表面に突出した部分が生じないため、作動流体の流れに悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係るタービン翼は、前記母材の表面が階段状に形成され、前記コーティング層が前記母材の表面に均一の厚みで形成されることにより、前記段差部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、コーティング層の厚みが均一であるため、母材の表面にコーティング層を形成する作業を容易に行うことができる。また、コーティング層の厚みが均一であるため、流路を流れる作動流体の影響によってコーティング層に局所的な変形等が生じにくく、補修基準線に変形や消失が生じにくい。
【0013】
また、本発明に係るタービン翼は、前記母材の表面が溝状に形成され、前記コーティング層が前記母材の表面に均一の厚みで形成されることにより、前記溝部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、コーティング層の厚みを部分的に変化させることによって補修基準線を形成するので、母材の成形に要する手間と時間を削減することができる。
【0015】
また、本発明に係るタービン翼は、前記母材の表面が平坦に形成され、前記コーティング層が前記母材の表面に厚みを部分的に変化させて形成されることにより、前記段差部または前記溝部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、シュラウドを構成するコーティング層を利用して補修基準線を形成するので、シュラウドとは別部材として補修基準線を設ける場合と比較して、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。また、補修基準線が高温の作動流体に曝されることによって消失する恐れもない。
【0017】
また、本発明に係るタービン翼は、前記シュラウドは、母材の表面にコーティング層が形成されてなり、前記補修基準線は、前記コーティング層とは異なる色の色違い層を、前記コーティング層の表面に積層することによって形成されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、母材及びコーティング層のいずれについても表面を複雑な形状に成形する必要がないため、容易に補修基準線を形成することができる。また、色違い層の色がコーティング層の色と異なるため、目視による補修基準線の識別が容易である。
【0019】
また、本発明に係るタービン翼は、前記いずれかに記載のタービン翼を備えることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、長時間に亘る運転に伴って、シュラウドにおける翼本体側の面に、その外縁から亀裂が生じ、当該亀裂が外縁に略直交する方向へ延びる場合がある。その場合でも、亀裂が補修基準線に達しているか否かを確認することにより、検査者はタービン翼に補修が必要か否かを目視にて判断することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るタービン翼及びタービンによれば、タービン翼についてロータやケーシングから取り外すことなく、目視にて補修の要否を容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態に係るタービン静翼を備えたガスタービンを示す全体構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るタービン静翼の外観を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る基端側シュラウドについて、図2におけるA−A断面を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るタービン静翼の作用効果の説明図である。
【図5】本発明の第一実施形態をタービン動翼に適用した例を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る基端側シュラウドについて、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る基端側シュラウドについて、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る基端側シュラウドについて、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る基端側シュラウドについて、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一実施形態]
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、本発明に係るタービン翼として、ガスタービンのタービン静翼を例に説明する。図1は、第一実施形態に係るタービン静翼10を備えたガスタービン1を示す全体構成図である。ガスタービン1は、流体の流通方向Fに沿って最も上流側の位置に設けられて圧縮空気を生成する圧縮機2と、その下流側に設けられて圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させることで燃焼ガスを生成する燃焼器3と、更にその下流側に設けられて燃焼ガスにより回転駆動されるタービン4と、を備えるものである。
【0024】
タービン4は、図1に示すように、ロータ5の外周に設けられて内部に燃焼ガス流路が形成されたタービンケーシング41と、ロータ5の外周面から突出して周方向に所定間隔で設けられた複数のタービン動翼42と、タービンケーシング41の内周面から突出して周方向に所定間隔で設けられた複数のタービン静翼10と、を有している。そして、タービン動翼42及びタービン静翼10は、ロータ5の軸線方向に沿って交互に複数段がそれぞれ設けられている。
【0025】
タービン静翼10は、燃焼ガスを減速してその圧力を上昇させる役割を果たすものである。ここで、図2は、タービン静翼10の外観を示す概略斜視図である。タービン静翼10は、断面流線型を有し図1に示すロータ5の径方向に延びる翼本体11と、この翼本体11の先端部に設けられた先端側シュラウド12と、翼本体11の基端部に設けられた基端側シュラウド13とを有している。
【0026】
(先端側シュラウド)
先端側シュラウド12は、周方向に複数設けられたタービン静翼10をその先端部において互いに連結する役割を果たすものである。この先端側シュラウド12は、図2に示すように、筐体としての本体部14と、この本体部14から上方へ突出した配管群15とを有している。
【0027】
(配管群)
配管群15は、タービン静翼10に冷却ガスRGを供給し、またはタービン静翼10から冷却ガスRGを排出する役割を果たすものである。この配管群15は、図2に示すように、本体部14の中央部に突出して設けられてタービン静翼10から冷却ガスRGを排出する排出管151と、この排出管151を挟んだ両側の位置に突出して設けられてタービン静翼10に冷却ガスRGを供給する第一供給管152及び第二供給管153と、を有している。
【0028】
排出管151は、図2に示すように断面略円形の配管であって、本体部14を貫通してその一端が上方に開口するとともに、他端が翼本体11の内部空洞に接続されている(図2では不図示)。これにより、この排出管151を介して翼本体11の内部と外部とが連通した状態になっている。
【0029】
第一供給管152は、図2に示すように断面略円形の配管であって、本体部14を貫通してその一端が上方に開口するとともに、他端が本体部14の内部に開口している。これにより、この第一供給管152を介して本体部14の内部と外部とが連通した状態になっている。
【0030】
第二供給管153は、図2に示すように断面略三角形の配管であって、本体部14を貫通してその一端が本体部14の表面に開口するとともに、他端が翼本体11の内部空洞に接続されている(図2では不図示)。これにより、この第二供給管153を介して翼本体11の内部と外部とが連通した状態になっている。
【0031】
尚、配管群15を構成する配管の本数やその設置位置は本実施例に限定されず、翼本体11の内部の構成等に応じて適宜設計変更が可能である。
【0032】
(基端側シュラウド)
基端側シュラウド13は、周方向に複数設けられたタービン静翼10をその基端部において互いに連結する役割を果たすものである。ここで、図3は、図2におけるA−A断面を示す概略断面図である。基端側シュラウド13は、箱型に形成された合金製の母材16と、この母材16の表面を覆う遮熱コーティング層17とを有している。
【0033】
母材16は、IN738LC,MarM247LC,MGA1400等の合金からなるものである。この母材16には、図2及び図3に示すように、翼本体11を挟んだ両側の位置に、一対の階段状の段差部161がそれぞれ形成されている。この段差部161は、図3に示すように、翼本体11が固定される母材上段面16aと、この母材上段面16aより一段低く形成された母材下段面16bと、母材上段面16aと母材下段面16bを接続する母材垂直面16cとによって形成されている。なお、母材垂直面16cは目視で確認できれば必ずしも垂直である必要はなく、少し傾斜していても構わない。
【0034】
遮熱コーティング層17は、流路を流れる高温の作動流体から母材16を保護する役割を果たすものである。この遮熱コーティング層17は、図に詳細は示さないが、母材16の表面を覆って設けられるボンドコート層と、このボンドコート層の表面を更に覆って設けられるセラミックス層とを有している。ボンドコート層は、母材16とセラミックス層の熱膨張量の差を緩和する役割を果たすものである。このボンドコート層は、例えば、MCrAlY(MはCo,Ni,Feなど)からなる溶射粉を、母材16の表面に溶射することにより形成することができる。一方、セラミックス層は、高温の作動流体の熱を遮熱する役割を果たすものである。このセラミックス層は、例えば、ZrO系のセラミックス溶射粉を、ボンドコート層の表面に溶射することにより形成することができる。
【0035】
この遮熱コーティング層17は、図3に示すように、母材16の表面を覆って均一の厚みで形成され、母材上段面16aを覆う遮熱上段面17aと、母材下段面16bを覆う遮熱下段面17bと、母材垂直面16cを覆う遮熱垂直面17cとを有している。そして、遮熱下段面17bは遮熱上段面17aより一段低く、両者は遮熱垂直面17cにより互いに接続されている。これにより、遮熱コーティング層17には、遮熱段差部171が形成されている。
【0036】
そして、遮熱段差部171の存在によって、より詳細には遮熱垂直面17cの存在によって、図2に示すように基端側シュラウド13の翼本体側面13aには、一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている。これら補修基準線18は、平面視で略矩形形状を有する翼本体側面13aの長手側の外縁19から所定間隔を空けて、外縁19に略平行してそれぞれ延びている。尚、補修基準線18と外縁19との間隔は、翼本体側面13aに生じる亀裂の長さと、タービン静翼10に関する補修や廃却の要否との関係について予め蓄積しておいたデータに基づいて決定すればよい。
【0037】
(作用効果)
次に、本発明の第一実施形態に係るタービン静翼10の作用効果について説明する。図4は、タービン静翼10の作用効果の説明図である。ガスタービン1を長時間に亘って運転すると、タービン静翼10の基端側シュラウド13が損傷する場合がある。この基端側シュラウド13に生じる損傷としては、例えば、遮熱コーティング層17に生じる割れや剥離、または母材16の酸化による肉厚の減少が挙げられる。ここで、基端側シュラウド13にこのような損傷が生じると、それを示す兆候として、翼本体側面13aの外縁19に亀裂20が発生する。そして、この亀裂20は、翼本体側面13aの外縁19から中央部に向かって、外縁19に略直交する方向へ延びていく。
【0038】
ここで、ガスタービン1について定期的な検査を行う検査者は、タービン静翼10以外の部分について検査を行う場合がある。このような場合、検査者は、図1に示すタービンケーシング41の内周面に固定された状態のタービン静翼10について、前述のように基端側シュラウド13に発生した亀裂20が補修基準線18に達しているか否かを目視により確認する。その結果、図4に示す第一亀裂20aや第二亀裂20bのように、亀裂20の先端が補修基準線18に到達している場合、検査者は、タービン静翼10は補修が必要な程度まで損傷が進行していると判断する。この場合、検査者は、タービン静翼10をタービンケーシング41から取り外し、基端側シュラウド13を始めとするタービン静翼10の各種構成部材について補修を行う。
【0039】
一方、図4に示す第三亀裂20cのように、亀裂20の先端が補修基準線18に未だ到達していない場合、検査者は、タービン静翼10の損傷は補修が必要な程度ではないと判断する。この場合、検査者は、タービン静翼10をタービンケーシング41から取り外すことなく、本来の検査対象箇所についてのみ検査及び補修作業を行う。
【0040】
このように、第一実施形態に係るタービン静翼10によれば、タービンケーシング41に固定された状態のままで、亀裂20が補修基準線18に到達したか否かを目視にて確認するだけの作業により、補修が必要か否かを容易に判断することができる。従って、本来の検査対象がタービン静翼10以外の部分である定期的な検査において、タービン静翼10に損傷が生じていることを容易に発見することができる。
【0041】
これにより、タービン静翼10を対象とする検査において、基端側シュラウド13に補修できない程度の損傷が発見される前に、早期の段階で損傷を発見して補修することができる。従って、損傷が大きく廃却処分となる基端側シュラウド13の数を減少させることができ、これにより材料費節減によるコストダウンを図ることができる。
【0042】
また、第一実施形態に係るタービン静翼10によれば、遮熱コーティング層17を利用して補修基準線18を形成するので、基端側シュラウド13とは別部材として補修基準線18を設ける場合と比較して、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。また、補修基準線18が遮熱コーティング層17からなるので、高温の作動流体に曝されることによって消失する恐れもない。
【0043】
また、遮熱コーティング層17の厚みが均一であるため、母材16の表面に遮熱コーティング層17を形成する作業を容易に行うことができる。また、遮熱コーティング層17の厚みが均一であるため、作動流体の影響等によって遮熱コーティング層17に局所的な変形が生じにくく、補修基準線18に変形や消失が生じにくい。
【0044】
(変形例)
尚、本実施形態では、基端側シュラウド13を例に説明したが、これに代えて或いはこれと共に、図2に示す先端側シュラウド12の翼本体側面12aに補修基準線18を形成してもよい。また、本実施形態ではガスタービン1を構成するタービン静翼10を例に説明したが、図1に示すタービン動翼42に適用することも可能である。図5は、本実施形態をタービン動翼42に適用した例を示す概略斜視図である。タービン動翼42は、断面流線型を有し図1に示すロータ5の径方向に延びる翼本体421と、この翼本体421の基端部に設けられた基端側シュラウド422(一般的には「プラットホーム」と呼ばれる)とを有している。そして、基端側シュラウド422の翼本体側面422aには、翼本体421を挟んだ両側の位置に、一対の補修基準線423がそれぞれ形成されている。この補修基準線423は、図に詳細は示さないが、基端側シュラウド422の母材に段差部を形成するとともに、この母材の表面に遮熱コーティング層を均一な厚みで設けることによって形成されている。
【0045】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係るタービン翼の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態に係るタービン静翼10は、基端側シュラウド13の翼本体側面13aに一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている点で第一実施形態と同じである。しかし、本実施形態に係るタービン静翼10は、この補修基準線18の構成が第一実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成は第一実施形態と同じであるため、第一実施形態と同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。
【0046】
図6は、第二実施形態に係る基端側シュラウド13について、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。基端側シュラウド13は、箱型に形成された合金製の母材51と、この母材51の表面を覆う遮熱コーティング層52とを有している。
【0047】
母材51は、第一実施形態の母材16と同様の材質からなり、その表面は平坦に形成されている。
一方、遮熱コーティング層52は、図6に詳細は示さないが、第一実施形態の遮熱コーティング層17と同様に、ボンドコート層とセラミックス層とを有している。そして、この遮熱コーティング層52は、図6に示すように、その厚みが部分的に変化している。すなわち、遮熱コーティング層52は、母材16の表面に薄く塗布された肉薄部521と、厚く塗布された肉厚部522とを有している。これにより、肉薄部521と肉厚部522との境界には、遮熱段差部523が形成されている。そして、この遮熱段差部523の存在によって、図2に示すように基端側シュラウド13の翼本体側面13aには、翼本体11を挟んだ両側の位置に、一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている。これら補修基準線18は、第一実施形態と同様に、平面視で略矩形形状を有する翼本体側面13aの長手側の外縁19から所定間隔を空けて、外縁19に略平行してそれぞれ延びている。
【0048】
このような第二実施形態に係るタービン静翼10によれば、母材51の表面が平坦であるため、母材16に段差部161を形成する場合と比較すると、母材51の成形に要する手間と時間を削減することができる。尚、それ以外の作用効果は、第一実施形態に係るタービン静翼10の作用効果と同じであるため、ここでは説明を省略する。また、図2に示す先端側シュラウド12の翼本体側面12aに補修基準線18を形成してもよい点、及び図1に示すタービン動翼42に適用することも可能である点は、第一実施形態と同じである。
【0049】
尚、肉薄部521の形成に際しては、塗布する遮熱コーティング層52の量を肉厚部522より少なくすることで厚みを薄くすればよい。或いは、まず母材51の全体に亘って同じ厚みで遮熱コーティング層52を塗布した後に、肉薄部521に対応する領域のみを追加工により削って薄くしてもよい。
【0050】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態に係るタービン静翼の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態に係るタービン静翼10は、基端側シュラウド13の翼本体側面13aに一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている点で第一実施形態と同じである。しかし、本実施形態に係るタービン静翼10は、この補修基準線18の構成が第一実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成は第一実施形態と同じであるため、第一実施形態と同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。
【0051】
図7は、第三実施形態に係る基端側シュラウド13について、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。基端側シュラウド13は、箱型に形成された合金製の母材61と、この母材61の表面を覆う遮熱コーティング層62とを有している。
【0052】
母材61は、第一実施形態の母材16と同様の材質からなり、その表面には凹状(溝状)の母材凹溝611が形成されている。
一方、遮熱コーティング層62は、図7に詳細は示さないが、第一実施形態の遮熱コーティング層17と同様に、ボンドコート層とセラミックス層とを有している。そして、この遮熱コーティング層62は、図7に示すように、母材61の表面を覆って均一の厚みで形成されている。これにより、遮熱コーティング層62における前記母材凹溝611に対応する位置には、凹状の遮熱凹溝621(溝部)が形成されている。
【0053】
そして、この遮熱凹溝621の存在によって、図2に示すように基端側シュラウド13の翼本体側面13aには、一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている。これら補修基準線18は、平面視で略矩形形状を有する翼本体側面13aの長手側の外縁19から所定間隔を空けて、外縁19に略平行してそれぞれ延びている。
【0054】
このような第三実施形態に係るタービン静翼10によれば、遮熱コーティング層62の厚みが均一であるため、母材61の表面に遮熱コーティング層62を形成する作業を容易に行うことができる。また、遮熱コーティング層62の厚みが均一であるため、流路を流れる作動流体の影響によって遮熱コーティング層62に局所的な変形等が生じにくく、補修基準線18に変形や消失が生じにくい。
【0055】
尚、図2に示す先端側シュラウド12の翼本体側面12aに補修基準線18を形成してもよい点、及び図1に示すタービン動翼42に適用することも可能である点は、第一実施形態と同じである。また、遮熱凹溝621の断面形状は、図7に示すような矩形に限定されず、半円やU字やV字など他の形状でも構わない。
【0056】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態に係るタービン静翼の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態に係るタービン静翼10は、基端側シュラウド13の翼本体側面13aに一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている点で第一実施形態と同じである。しかし、本実施形態に係るタービン静翼10は、この補修基準線18の構成が第一実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成は第一実施形態と同じであるため、第一実施形態と同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。
【0057】
図8は、第四実施形態に係る基端側シュラウド13について、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。基端側シュラウド13は、箱型に形成された合金製の母材71と、この母材71の表面を覆う遮熱コーティング層72とを有している。
【0058】
母材71は、第一実施形態の母材16と同様の材質からなり、その表面は平坦に形成されている。
一方、遮熱コーティング層72は、図8に詳細は示さないが、第一実施形態の遮熱コーティング層17と同様に、ボンドコート層とセラミックス層とを有している。そして、この遮熱コーティング層72には、図8に示すように、その厚みが部分的に変化することにより、周囲より肉薄の遮熱凹部721(溝部)が形成されている。そして、この遮熱凹部721の存在によって、図2に示すように基端側シュラウド13の翼本体側面13aには、翼本体11を挟んだ両側の位置に、一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている。これら補修基準線18は、第一実施形態と同様に、平面視で略矩形形状を有する翼本体側面13aの長手側の外縁19から所定間隔を空けて、外縁19に略平行してそれぞれ延びている。
【0059】
なお、肉薄の遮熱凹部721の形成に際しては、塗布する遮熱コーティング層72の量を周囲より少なくすることで厚みを薄くすればよい。或いは、まず母材71の全体に亘って同じ厚みで遮熱コーティング層72を塗布した後に、肉薄の遮熱凹部721に対応する領域のみを追加工により削って薄くしてもよい。
【0060】
このような第四実施形態に係るタービン静翼10によれば、母材71の表面が平坦であるため、母材61に母材凹溝611を形成する場合と比較すると、母材71の成形に要する手間と時間を削減することができる。
【0061】
尚、図2に示す先端側シュラウド12の翼本体側面12aに補修基準線18を形成してもよい点、及び図1に示すタービン動翼42に適用することも可能である点は、第一実施形態と同じである。
【0062】
[第五実施形態]
次に、第五実施形態に係るタービン静翼の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態に係るタービン静翼10は、基端側シュラウド13の翼本体側面13aに一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている点で第一実施形態と同じである。しかし、本実施形態に係るタービン静翼10は、この補修基準線18の構成が第一実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成は第一実施形態と同じであるため、第一実施形態と同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。
【0063】
図9は、第五実施形態に係る基端側シュラウド13について、図2におけるA−A段面を示す概略断面図である。基端側シュラウド13は、箱型に形成された合金製の母材81と、この母材81の表面を覆う遮熱コーティング層82と、この遮熱コーティング層82の表面に積層された塗料含有遮熱コーティング83(色違い層)とを有している。
【0064】
母材81は、第一実施形態の母材16と同様の材質からなり、その表面は平坦に形成されている。
一方、遮熱コーティング層82は、図9に詳細は示さないが、第一実施形態の遮熱コーティング層17と同様に、ボンドコート層とセラミックス層とを有している。そして、この遮熱コーティング層82は、母材81の表面を覆って均一の厚みで形成されることにより、その表面は平坦である。
【0065】
また、塗料含有遮熱コーティング83は、遮熱コーティング層82と同様の原料に対し、遮熱コーティング層82とは異なる色の塗料を含有させたものである。そして、この塗料含有遮熱コーティング83の存在によって、図2に示すように基端側シュラウド13の翼本体側面13aには、翼本体11を挟んだ両側の位置に、一対の補修基準線18がそれぞれ形成されている。これら補修基準線18は、第一実施形態と同様に、平面視で略矩形形状を有する翼本体側面13aの長手側の外縁19から所定間隔を空けて、外縁19に略平行してそれぞれ延びている。
【0066】
このような第五実施形態に係るタービン静翼10によれば、母材81及び遮熱コーティング層82のいずれについても表面を複雑な形状に成形する必要がないため、容易に補修基準線18を形成することができる。また、塗料含有遮熱コーティング83の色が遮熱コーティング層82の色と異なるため、目視による補修基準線18の識別が容易である。更に、塗料含有遮熱コーティング83は遮熱性能を有するため、高温の作動流体に曝されても変形や剥離等が生じにくい。
【0067】
尚、塗料含有遮熱コーティング83により補修基準線18を形成することに限定されず、遮熱コーティング層82の表面上に色の異なる塗料(耐熱塗料が好ましい)を塗布するだけでもよい。或いは、塗料は含まないが遮熱コーティング層82とは色の異なる別のコーティング層(第二のコーティング層)を遮熱コーティング層82の表面上に積層してもよい。また、これら塗料や第二のコーティング層や塗料含有遮熱コーティング層83などの色違い層は、母材81、遮熱コーティング層82またはボンドコート層の表面上において、補修基準線18に対応する位置にのみ積層してもよいし、図2に示す外縁19から補修基準線18までの領域に積層してもよいし、または一対の補修基準線18の間の領域に積層してもよい。
【0068】
尚、図2に示す先端側シュラウド12の翼本体側面12aに補修基準線18を形成してもよい点、及び図1に示すタービン動翼42に適用することも可能である点は、第一実施形態と同じである。
【0069】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。例えば、本実施形態では、本発明に係るタービン翼をガスタービンに適用する場合について説明したが、これに代えて蒸気タービンに適用することも可能である。
【0070】
また、上述した実施形態において、母材16,61の表面に段差部161や凹溝611を形成する場合は、遮熱コーティング層17,62を形成することなく、段差部161や凹溝611のみによって補修基準線18を形成することも可能である。
また、補修基準線18は、翼本体側面12a,13a,422aの長手側の外縁19から所定間隔をあけた位置のみに限定されることはなく、翼本体側面12a,13a,422aの四辺いずれか一つ以上の外縁から所定間隔をあけた位置に設ければよい。
【符号の説明】
【0071】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
5 ロータ
10 タービン静翼
11 翼本体
12 先端側シュラウド
12a 翼本体側面
13 基端側シュラウド
13a 翼本体側面
14 本体部
15 配管群
151 排出管
152 第一供給管
153 第二供給管
16 母材
161 段差部
16a 母材上段面
16b 母材下段面
16c 母材垂直面
17 遮熱コーティング層
171 遮熱段差部
17a 遮熱上段面
17b 遮熱下段面
17c 遮熱垂直面
18 補修基準線
19 外縁
20 亀裂
20a 第一亀裂
20b 第二亀裂
20c 第三亀裂
41 タービンケーシング
42 タービン動翼
421 翼本体
422 基端側シュラウド
422a 翼本体側面
423 補修基準線
51 母材
52 遮熱コーティング層
521 肉薄部
522 肉厚部
523 遮熱段差部
61 母材
611 母材凹溝
62 遮熱コーティング層
621 遮熱凹溝
71 母材
72 遮熱コーティング層
721 遮熱凹部
81 母材
82 遮熱コーティング層
83 塗料含有遮熱コーティング
F 流通方向
RG 冷却ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの径方向に延びる翼本体と、
該翼本体の基端部及び先端部の少なくともいずれか一方に設けられたシュラウドと、
を備えるタービン翼において、
前記シュラウドにおける前記翼本体の側の面に、この面の外縁に沿って該外縁から所定間隔をあけて延びる補修基準線が形成されていることを特徴とするタービン翼。
【請求項2】
前記シュラウドは、母材の表面にコーティング層が形成されてなり、前記補修基準線は、前記コーティング層に設けられた段差部または溝部によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタービン翼。
【請求項3】
前記母材の表面が階段状に形成され、前記コーティング層が前記母材の表面に均一の厚みで形成されることにより、前記段差部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のタービン翼。
【請求項4】
前記母材の表面が溝状に形成され、前記コーティング層が前記母材の表面に均一の厚みで形成されることにより、前記溝部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のタービン翼。
【請求項5】
前記母材の表面が平坦に形成され、前記コーティング層が前記母材の表面に厚みを部分的に変化させて形成されることにより、前記段差部または前記溝部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のタービン翼。
【請求項6】
前記シュラウドは、母材の表面にコーティング層が形成されてなり、前記補修基準線は、前記コーティング層とは異なる色の色違い層を、前記コーティング層の表面に積層することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタービン翼。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のタービン翼を備えることを特徴とするタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113208(P2013−113208A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260043(P2011−260043)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】