説明

ターボチャージャ

【課題】過給効率の向上を図ると共に製造コストを低減し、更には、軸受部から流出した油がインペラ側に漏出しないようにしたターボチャージャを提供する。
【解決手段】タービン軸5を軸受ハウジング3に支持する軸受部31と前方のインペラ6との間に油きり36を配置すると共に、油きり36の前方部外周に対峙して軸受部31からインペラ6側への油漏れを防止するシールプレート44を、インペラ6の背面に位置するよう軸受ハウジング3と一体に備え、更に油きり36の後方部外周に対峙して油溜め40を構成するよう軸受ハウジング3に油きり対峙部39を形成してなるターボチャージャであって、シールプレート44を圧入プレート47により構成し、圧入プレート47の径を、インペラ6の外径よりも小さく、且つ油きり対峙部39の外周42を加工する又は油きり対峙部39に備える油排出穴41を加工するための作業用最小口径に対して同等以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受部からの潤滑油がインペラ側に漏出するのを防止するようにしたターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にターボチャージャは、図9、図10に示す如く、タービンハウジング1とコンプレッサハウジング2の間に軸受ハウジング3が一体に配置されており、軸受ハウジング3には軸受部4を介してタービン軸5が回転自在に支持されている。タービン軸5の一方(前方側)には、コンプレッサハウジング2に包囲されるインペラ6が備えられると共に、タービン軸5の他方(後方側)には、タービンハウジング1に包囲されるタービンロータ7が備えられている。
【0003】
軸受ハウジング3の内部に配置される軸受部4は、タービン軸5の軸方向へ間隔を有して配置された回転軸受としての浮動ブッシュ4aと、浮動ブッシュ4aの軸方向への移動を規制する内側プレート4bと、軸受ハウジング3内にボルト8を介して固定される外側スラスト受4cと、内側プレート4bと外側スラスト受4cの間に配置されてタービン軸5の段部5aに当接するスラストカラー4dとからなるスラスト軸受にて構成されている。
【0004】
又、軸受ハウジング3には、タービン軸5の軸方向へ向かって形成された供給穴9と、供給穴9から浮動ブッシュ4aに向けて分岐した第一分岐流路10とが形成されており、供給穴9へ供給した潤滑油は、第一分岐流路10から浮動ブッシュ4aと軸受ハウジング3との間、及び浮動ブッシュ4aとタービン軸5との間に供給されて油膜が形成され、タービン軸5の回転を支持するようになっている。ここで、浮動ブッシュ4aには、浮動ブッシュ4aとタービン軸5との間に油膜を形成するために径方向に貫通した油路11が備えられている。
【0005】
更に、軸受ハウジング3には、供給穴9から別に分岐した第二分岐流路12が形成されており、供給穴9へ供給した潤滑油は、第二分岐流路12から外側スラスト受4cに形成した油路13を介して、外側スラスト受4cとスラストカラー4dとの間に供給されて油膜が形成され、スラスト荷重を受けるようになっている。
【0006】
一方、タービン軸5の外周における軸受部4のスラストカラー4dとインペラ6の間には、筒状の油きり14が備えられている。油きり14の前方部14aの外周面には、環状の溝14bを形成して該溝14bにピストンリング状のシールリング15を配置している。又、油きり14の後方部14cは、外側スラスト受4cの内周面に僅かな隙間16を有して嵌合している。
【0007】
油きり14の前方部14a外周に対峙する位置には、軸受ハウジング3にボルト17を介して固定されるシールプレート18が配置されており、該シールプレート18の内周端面には、前記油きり14の溝14bに配置されたピストンリング状のシールリング15が、広がろうとするスプリング力によって当接している。又、シールプレート18は、インペラ6の背面に位置してインペラ6の外径よりも大きく形成されていると共に、コンプレッサからの圧縮空気を整流するためのディフューザ部19の流路20の一部を形成している。
【0008】
このようなターボチャージャを駆動する際には、エンジンの排気ガス等によりタービンロータ7が回転し、タービン軸5の回転によりインペラ6が駆動されて吸気口21から空気を吸引して圧縮する。圧縮された空気は、ディフューザ部19の流路20により整流されて下流側のエンジンに過給され、エンジンの出力性能の向上を図るようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この時、軸受部4においては、供給穴9から潤滑油を供給すると、浮動ブッシュ4aと軸受ハウジング3との間、及び浮動ブッシュ4aとタービン軸5との間に油膜を形成し、油膜を形成した潤滑油は、内側プレート4bとタービン軸5との隙間、内側プレート4bとスラストカラー4dとの隙間から流出される。一方、潤滑油は、外側スラスト受4cとスラストカラー4dとの間にも供給されて油膜を形成し、油膜を形成した潤滑油は、油きり14の後方部14cと外側スラスト受4cとの隙間16から流出される。
【特許文献1】特開2002−38966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ターボチャージャにおいて、従来例の如く軸受ハウジング3に別体のシールプレート18を組み付けた構成では、ディフューザ部19の流路20に、ボルト17のボルトヘッド部17aによる凹凸22や、シールプレート18の境界部分による凹凸23を生じるため、空気の流れを乱して過給効率が低下するという問題があった。又、シールプレート18を組み付ける際には、インペラ6から空気が過給されるディフューザ部19の流路20に、工具等によるキズを生じる可能性があるため、キズが生じた場合には、同様に空気の流れを乱して過給効率が低下するという問題があった。更に、軸受ハウジング3のねじ加工等により加工費が増加すると共に、シールプレート18を組み付ける際に用いるボルト17等の部品点数が増加するため、製造コストが増加するという問題があった。
【0011】
又、油きり14の後方部14cと外側スラスト受4cとの隙間16から流出される潤滑油は、外側スラスト受4cとシールプレート18との間の空間24から外部に流出されることが好ましいが、タービン軸5及び油きり14が高速回転しているため、潤滑油がミスト状になって外側スラスト受4c周辺に堆積し、このミストがシールリング15まで伝わり、シールリング15からインペラ6側へ漏出してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、過給効率の向上を図ると共に製造コストを低減し、更には、軸受部から流出した油がインペラ側に漏出しないようにしたターボチャージャを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、タービン軸を軸受ハウジングに支持する軸受部と前方のインペラとの間に油きりを配置すると共に、油きりの前方部外周に対峙して軸受部からインペラ側への油漏れを防止するシールプレートを、インペラの背面に位置するよう軸受ハウジングと一体に備え、更に前記油きりの後方部外周に対峙して油溜めを構成するよう軸受ハウジングに油きり対峙部を形成してなるターボチャージャであって、前記シールプレートを圧入プレートにより構成し、該圧入プレートの径を、前記インペラの外径よりも小さく、且つ前記油きり対峙部の外周を加工する又は前記油きり対峙部に備える油排出穴を加工するための作業用最小口径に対して同等以上としたことを特徴とするターボチャージャ、に係るものである。
【0014】
又、本発明において、油溜めが、油きりの後方部端側で外周に突出する第一突出部と、軸方向中途位置で外周に突出する第二突出部と、前記油きり対峙部に形成されて第一突出部に対向する第一対峙部と、前記油きり対峙部に形成されて第二突出部に対向する第二対峙部とを備えることが好ましい。
【0015】
このように本発明のターボチャージャによれば、シールプレートを圧入プレートにより構成して軸受ハウジングに一体化させるので、ボルトによる固定を不要にしてボルトヘッド部による凹凸を無くすと共に、圧入プレートの径を、インペラの外径よりも小さくしたので、圧入プレートの境界部分等による凹凸を、ディフューザ部の流路とは異なるインペラの背面に位置させることができ、よって凹凸により空気が乱れることを防止し、過給効率の低下を防止することができる。又、圧入プレートを圧入する際に工具等によるキズが生じた場合であっても、当該キズは、ディフューザ部の流路とは異なるインペラの背面に位置させることができるので、当該キズの凹凸により空気が乱れることを防止し、過給効率の低下を防止することができる。更に、シールプレートを圧入プレートにより形成するので、軸受ハウジングに固定するためのねじ加工等を不要にして加工費が抑制されると共に、ボルトによる組み付けを不要にして部品点数を減らし、結果的に製造コストが低減される。
【0016】
又、油きりと油きり対峙部とによって油溜めを構成し、軸受部から流出する潤滑油を油溜めに流入させて油排出穴から外部に排出するようにしたので、油きりと油きり対峙部の間からインペラ側に漏出する潤滑油の量を極力少なくすることができる。更に、シールプレートに設けられて圧入プレートが圧入される穴の口径は、油きり対峙部の外周を加工し得る口径としてあるので、油きり対峙部の外周を適切に形成し、油きりと油きり対峙部の間から滲み出た潤滑油を油きり対峙部の外周に沿って流すことで、潤滑油がシールプレートへ向かうことを防止し、インペラ側に漏出しないようにすることができる。更に又、シールプレートに設けられて圧入プレートが圧入される穴の口径は、油きり対峙部に油排出穴を加工し得る口径としてあるので、軸受部から油溜めに流入した潤滑油を前記油排出穴から直ちに外部へ排出することができ、よって潤滑油がシールプレートへ向かうことを防止して、インペラ側に潤滑油が漏出するのを防止することができる。
【0017】
本発明において、油溜めを、油きりの後方部端側で外周に突出する第一突出部と、軸方向中途位置で外周に突出する第二突出部と、前記油きり対峙部に形成されて第一突出部に対向する第一対峙部と、前記油きり対峙部に形成されて第二突出部に対向する第二対峙部とにより構成すると、油溜めを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のターボチャージャによれば、圧入プレートを備えたシールプレートの構成により過給効率の向上を図ると共に製造コストを低減することができ、更に、油きりと油きり対峙部との間に設けた油溜めの構成により、軸受部から流出した潤滑油を受けて油排出穴から直ちに外部に排出することができ、よって潤滑油がインペラ側に漏出しないようにすることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図8は本発明を実施する形態例であって、図9、図10と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、本発明の実施の形態のターボチャージャは、従来の軸受部4からの潤滑油の排出による課題を解決するために以下のように構成している。
【0021】
軸受ハウジング3の内部でタービン軸5を支持する図1、図2の軸受部31は、タービン軸5を2点で支持する一体構造を有した浮動ブッシュ32で構成されている。浮動ブッシュ32には、軸受ハウジング3に形成された供給穴33、及び供給穴33から延在する流路34により潤滑油が供給されており、浮動ブッシュ32と軸受ハウジング3との間、及び浮動ブッシュ32とタービン軸5との間に油膜が形成され、タービン軸5の回転を支持するようになっている。ここで、浮動ブッシュ32には、浮動ブッシュ32とタービン軸5との間に油膜を形成するために径方向に貫通する油路35が備えられている。
【0022】
軸受部31の浮動ブッシュ32の一方(前方側)には、タービン軸5の外周における浮動ブッシュ32と前方のインペラ6の間に位置してタービン軸5のスラスト軸受を兼ねた油きり36が備えられている。油きり36の前方部36aの外周面には、環状の溝36bを形成して該溝36bにピストンリング状のシールリング37を配置している。又、油きり36の後方部36cの外周には、軸受部31を支持する軸受ハウジング3の内周部38からタービン軸5の軸方向に沿って前方側へ延在する円筒状の油きり対峙部39が形成されている。
【0023】
油きり36の後方部36cと油きり対峙部39の間には、油溜め40が構成されている。油溜め40は、油きり36の後方部36c端側で外周に突出する第一突出部36dと、軸方向中途位置で外周に突出する第二突出部36eと、油きり対峙部39に形成されて第一突出部36dに対向する第一対峙部39aと、油きり対峙部39に形成されて第二突出部36eに対向する第二対峙部39bとを備え、第一突出部36dと第二突出部36eの間に位置する溝40aと、第一対峙部39aと第二対峙部39bの間に位置する溝40bにより構成されている。又、油溜め40には、溝40bから油きり対峙部39を外周側へ貫通する複数の油排出穴41が備えられており、油排出穴41は、溝40bから外側に向かって、インペラ6側から離間する方向へ延在するように斜めに形成されている。
【0024】
ここで、油きり対峙部39の前方側端部の外周42は、図5に示す加工具43によって二段加工されることにより、肉厚を確保すると同時に、内周から外周に向かって後方側に後退するように形成して、潤滑油が油きり対峙部39の外周42に沿ってインペラ6から遠ざかって外方に流動するようになっている。
【0025】
軸受部31の浮動ブッシュ32を潤滑すると、従来例の軸受部4と同様に、浮動ブッシュ32と軸受ハウジング3との間、及び浮動ブッシュ32とタービン軸5との間から潤滑油が流出するが、流出した潤滑油は、油きり36の第一突出部36dと油きり対峙部39の第一対峙部39aの間から油溜め40に流れ込んで一時的に溜り、油排出穴41によりインペラ6側と離間する方向へ排出される。これによって、タービン軸5及び油きり36の高速回転に伴って、油きり36の第二突出部36eと油きり対峙部39の第二対峙部39bの間から滲み出る潤滑油は僅かな量になり、更に、滲み出た潤滑油は、油きり対峙部39の外周42に沿ってインペラ6と離間する方向へ流れ、全体的に潤滑油がインペラ6側へ向かうことを防止する。
【0026】
一方、本発明のターボチャージャは、更に、従来のシールプレート18が軸受ハウジング3と別体であることによる課題を解決するために以下のように構成している。
【0027】
油きり36の前方部36a外周に対峙する位置には、インペラ6の背面に位置して軸受ハウジング3と一体化するシールプレート44が備えられている。シールプレート44は、軸受ハウジング3と一体に形成されてインペラ6の背面の所要位置まで延長された固定シールプレート45と、該固定シールプレート45の内周の穴46に緊密に圧入される圧入プレート47とにより構成されている。又、圧入プレート47の内周端面には、油きり36の溝36bに配置されたシールリング37が、広がろうとするスプリング力によって当接している。
【0028】
ここで、圧入プレート47の外径は、インペラ6の外径よりも小さく、且つ固定シールプレート45の穴46を通して加工具43により油きり対峙部39の外周42を加工するため又は油排出穴41を加工するために必要な作業用最小口径に対して同等以上の大きさに形成されている。又、図1,図2の圧入プレート47の外径は、油きり対峙部39の外周径と同径若しくは油きり対峙部39の外周径より若干大きい径(同径以上)となっている。なお、穴46が、大口径であれば、加工具43により油きり対峙部39の外周42及び油排出穴41を容易に加工できるが、圧入プレート47の径も大径になって、圧入する作業の力が大きくなるという問題があるため、穴46及び圧入プレート47の口径は、小口径とすることが好ましい。
【0029】
圧入プレート47を固定シールプレート45の穴46に圧入する際には、初めに、図6に示す如く圧入プレート47の内周端面にシールリング37を介して油きり36を配置し、次に、図7に示す如く軸受ハウジング3を、コンプレッサ側が上に向くよう台座48に配置し、油きり36を配した圧入プレート47を固定シールプレート45の穴46に合致させて仮配置し、図8に示す圧入冶具49を用いてプレス(図示せず)により圧入する。これにより、油きり36の第一突出部36d及び第二突出部36eは軸受ハウジング3の第一対峙部39a及び第二対峙部39bに合致し、軸受ハウジング3の固定シールプレート45との間(境界部分)には段差が生じないように配置される。ここで、図8の50は、シールプレート44を圧入する圧入冶具49にプレスの力を作用させるよう外周に突出させたプレス受けである。
【0030】
軸受ハウジング3に圧入プレート47及び油きり36を配置した後は、タービン軸5、インペラ6、タービンロータ7,タービンハウジング1、コンプレッサハウジング2等を組み立てて全体を構成する。駆動時には、エンジンの排気ガス等によりタービンロータ7を回転してタービン軸5に連結するインペラ6を駆動し、インペラ6は、吸気口21から空気を吸引して圧縮し、圧縮された空気は、ディフューザ部19の流路20で整流されて下流側のエンジンに過給される。
【0031】
このように本発明の実施の形態例のターボチャージャによれば、圧入プレート47を固定シールプレート45に圧入して軸受ハウジング3に一体化させるので、ボルトによる固定を不要にしてボルトヘッド部による凹凸を無くすと共に、圧入プレート47の径を、インペラ6の外径よりも小さくしたので、圧入プレート47の境界部分等による凹凸を、ディフューザ部19の流路20とは異なるインペラ6の背面に位置させることができ、よって凹凸により空気が乱れることを防止し、過給効率の低下を防止することができる。又、圧入プレート47を圧入する際に圧入冶具49等の工具によるキズが生じた場合であっても、当該キズを、ディフューザ部19の流路20とは異なるインペラ6の背面に位置させることができるので、当該キズの凹凸により空気が乱れることを防止し、過給効率の低下を防止することができる。更にシールプレート44を圧入プレート47により形成するので、軸受ハウジング3に固定するためのねじ加工等を不要にして加工費が抑制されると共に、ボルトによる組み付けを不要にして部品点数を減らし、結果的に製造コストが低減される。
【0032】
又、油きり36と油きり対峙部39とによって油溜め40を構成し、軸受部31から流出する潤滑油を油溜め40に流入させて油排出穴41より直ちに外部に排出するので、タービン軸5及び油きり36が高速回転する場合であっても、油きり36と油きり対峙部39の間からシールプレート44側に滲み出る潤滑油を僅かな量にし、軸受部31から滲み出た潤滑油がシールリング37を介してインペラ6側に漏出しないようにすることができる。更に、圧入プレート47の径に対応する固定シールプレート45の穴46の口径は、油きり対峙部39の外周42を加工し得る口径となっているので、油きり対峙部39の外周42を適切に形成し、油きり36と油きり対峙部39の間から滲み出た潤滑油を油きり対峙部39の外周42に沿って流すことで、潤滑油がシールリング37方向へ向かうのを防止することができる。更に又、圧入プレート47の径に対応する固定シールプレート45の穴46の口径は、油きり対峙部39に油排出穴41を加工し得る口径となっているので、油きり36と油きり対峙部39の間に形成した油溜め40に油排出穴41を加工し、油溜め40に流入した潤滑油を油排出穴41から直ちに外部に排出して、潤滑油がシールプレート44側へ向かうことを防止し、よって潤滑油がシールリング37を経てインペラ6側に漏出しないようにすることができる。
【0033】
本発明の実施の形態例において、油溜め40を、油きり36の後方部36c端側で外周に突出する第一突出部36dと、軸方向中途位置で外周に突出する第二突出部36eと、油きり対峙部39に形成されて第一突出部36dに対向する第一対峙部39aと、油きり対峙部39に形成されて第二突出部36eに対向する第二対峙部39bとにより形成したので、油溜め40を容易に形成でき、更に、軸受部31から流出する潤滑油は油溜め40に容易に流入することになるため、タービン軸5及び油きり36が高速回転する場合であっても、油きり36と油きり対峙部39の間からシールプレート44側へ滲み出る油を僅かな量にでき、よって軸受部31から流出した潤滑油がシールリング37を経てインペラ6側に漏出するのを防止することができる。
【0034】
尚、本発明のターボチャージャは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、軸受部の形態は図示例に限定されるものでなく、従来例の構成や他の構成であっても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を実施する形態例としてのターボチャージャを示す概略図である。
【図2】油きり及びシールプレートを拡大して示す概略図である。
【図3】軸受ハウジング及び油きり対峙部を示す概略図である。
【図4】油排出穴の流路を示す概略図である。
【図5】油きり対峙部を形成する状態を示す概念図である。
【図6】シールプレートに油きりを備えた状態を示す概略図である。
【図7】軸受ハウジングにシールプレートを圧入した概念図である。
【図8】圧入冶具を示す概略図である。
【図9】従来のターボチャージャを示す概略図である。
【図10】従来の油きり及びシールプレートを拡大して示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
3 軸受ハウジング
5 タービン軸
6 インペラ
31 軸受部
36 油きり
36a 前方部
36c 後方部
36d 第一突出部
36e 第二突出部
39 油きり対峙部
39a 第一対峙部
39b 第二対峙部
40 油溜め
41 油排出穴
42 外周
44 シールプレート
47 圧入プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン軸を軸受ハウジングに支持する軸受部と前方のインペラとの間に油きりを配置すると共に、油きりの前方部外周に対峙して軸受部からインペラ側への油漏れを防止するシールプレートを、インペラの背面に位置するよう軸受ハウジングと一体に備え、更に前記油きりの後方部外周に対峙して油溜めを構成するよう軸受ハウジングに油きり対峙部を形成してなるターボチャージャであって、前記シールプレートを圧入プレートにより構成し、該圧入プレートの径を、前記インペラの外径よりも小さく、且つ前記油きり対峙部の外周を加工する又は前記油きり対峙部に備える油排出穴を加工するための作業用最小口径に対して同等以上としたことを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記油溜めが、油きりの後方部端側で外周に突出する第一突出部と、軸方向中途位置で外周に突出する第二突出部と、前記油きり対峙部に形成されて第一突出部に対向する第一対峙部と、前記油きり対峙部に形成されて第二突出部に対向する第二対峙部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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