説明

ターボ分子ポンプの温度制御装置

【課題】 ターボ分子ポンプのポンプ温度を、様々なガス負荷状況に対応することができるように制御することができる温度制御装置の提供。
【解決手段】 温度設定部8はモータ制御部5からの電流積算値に基づいてターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値以上か否かを判断し、ターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値以上の場合には予め定められた下限値を下限に目標温度Ttを低くし、ターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値より小さい場合には予め定められた上限値を上限に目標温度Ttを高くする。そして、その目標温度Ttは温度制御部7に入力され、温度制御部7は目標温度Ttと温度センサ31の検出値とに基づいてヒータ29および冷却装置30を制御し、ポンプ温度を目標温度Ttとするように温度制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置等に用いられるターボ分子ポンプの温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは半導体製造装置の排気装置として用いられている。半導体製造装置では、その反応プロセスに応じて様々なプロセスガスが使用される。例えば、CVD装置やエッチング装置等に用いられるターボ分子ポンプにおいては反応性ガスを排気することになり、そのため、ターボ分子ポンプ内にプロセスガスの析出物や反応生成物が付着しやすい。このような析出物や反応生成物の付着はポンプ温度が高いほど低減されるので、従来のターボ分子ポンプではポンプ本体をヒータで加熱して析出物や反応生成物の付着を抑制するようにしている。
【0003】
一方、ターボ分子ポンプの回転体にはアルミ合金が一般的に用いられており、回転体の温度が高温になりすぎると、アルミ素材の劣化によりポンプ寿命が低下するという問題が生じる。また、ポンプ内部に設けられたモータについても、動作温度が上昇しすぎると絶縁劣化等の支障が生じる。
【0004】
そのため、従来のターボ分子ポンプでは上述したヒータに加えて冷却手段を設け、ヒータによる加熱と冷却手段による冷却とを制御して、ポンプ温度が所定の目標温度となるように制御している(例えば、特許文献1参照)。なお、温度検出はポンプのベース部等に設けられた温度センサによって行われるが、真空中に配置されている回転体はベース部に比べて温度が高くなりやすい。そのため、上記目標温度はベース部と回転体との温度差を考慮して設定される。
【0005】
【特許文献1】特開2002−70788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ターボ分子ポンプにガス負荷が加わった場合、モータ負荷が増大してモータ発熱が増加し、さらに回転体とガスとの摩擦熱等による発熱も生じる。そのため、ガス負荷が大きくなるとポンプの温度は上昇し、また、回転体は真空中にあるため放熱し難くベース部に比べてさらに温度が上昇する。
【0007】
よって、目標温度を高く設定すると、ベース部の温度は高くなり、生成物の付着を防止することができるが、ガス負荷が増大したときには回転体温度が素材の劣化防止の上限温度を越えてしまうおそれがある。その結果、ポンプを安全に使用するために、装置側のガス流量を抑えざるを得ないという問題があった。逆に、目標温度を低く設定すると、ガス負荷が増大しても回転体の温度は低く保たれるので、装置側のガス流量を大きくとることができるが、ガス負荷が小さいときにはベース部の温度が低くなるため生成物の付着量が増大し、生成物除去のためのオーバーホール期間が短くなるという不都合が生じる。また、磁気軸受方式の場合、回転体は真空中に非接触で保持されているため、安価にその温度を直接取得する手段がないという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の本発明によるターボ分子ポンプの温度制御装置は、ターボ分子ポンプのポンプ本体を加熱する加熱手段と、ポンプ本体を冷却する冷却手段と、加熱手段および/または冷却手段を制御してポンプ温度を所定の目標温度に制御する制御手段と、ターボ分子ポンプの回転体の温度に相当する負荷量情報を取得する取得手段と、取得手段で取得された負荷量情報に基づいてターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値以上か否かを判断する判断手段と、判断手段によりターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値以上と判断されると目標温度を目標温度の初期値を基準に予め定められた下限値を下限に段階的に低くし、判断手段によりターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値より小さいと判断されると目標温度を目標温度の初期値を基準に予め定められた上限値を上限に段階的に高くする目標温度変更手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のターボ分子ポンプの温度制御装置において、取得手段は、ターボ分子ポンプの回転体駆動用モータの駆動電流に基づいて負荷量情報を取得するものである。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のターボ分子ポンプの温度制御装置において、目標温度と所定の下限値とが等しい状態が所定時間継続されたときにポンプの加熱の停止および/または運転の停止を行う保護手段を設けたものである。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のターボ分子ポンプの温度制御装置において、目標温度と所定の下限値とが等しい状態が所定時間継続されたときに警報を発する警報手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポンプの負荷状況に応じて最適な目標温度となるように目標温度を変更することができるため、ターボ分子ポンプの様々なガス負荷状況に応じて、ポンプを適切な温度に維持することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明による温度制御装置が適用されるターボ分子ポンプの、ポンプ本体1を示す断面図である。ポンプ本体1に設けられたケーシング20の内部には、モータ6により回転駆動される回転体4が設けられている。回転体4の素材にはアルミ合金が用いられ、回転体4には複数段のロータ翼21およびネジ溝部22が形成されている。一方、軸方向に配設された複数段のロータ翼21に対しては複数段のステータ翼23が交互に配設され、ネジ溝部22に対しては径方向に僅かな隙間を介して筒状部材24が配設されている。なお、ロータ翼21およびステータ翼23は、タービン翼で構成されている。
【0011】
各ステータ翼23はスペーサ25によって所定の間隔に維持されており、最上段のスペーサ25の上端は、ケーシング20の上端内側に設けられた突起部分に当接している。ケーシング20をベース28に固定することにより、軸方向交互に重ねられたステータ翼23およびスペーサ25はケーシング20の上端部分とベース28との間に挟持される。モータ6により回転体4を高速回転すると、ロータ翼21とステータ翼23とにより、および、ネジ溝部22と筒状部材24とにより排気作用が発生する。その結果、吸気口側のガスが矢印G1のように排気され、排気口26に接続された補助ポンプ(不図示)によってポンプ外へと排気される。
【0012】
ロータ翼21およびステータ翼23による排気作用は高真空側で有効に作用し、ネジ溝部22および筒状部材24による排気作用は低真空側で有効に作用するものであり、反応生成物の付着は低真空側においてより顕著に発生する。図1のターボ分子ポンプの場合には、ポンプ本体のベース28にヒータ29が設けられており、反応生成物の付着しやすいガスを排気する場合には、このヒータ28によりポンプ温度を上昇させて反応生成物の付着を抑制する。また、30は冷却水を用いた冷却装置であり、冷却装置30による冷却とヒータ29による加熱とを制御してポンプ温度の制御を行う。31はベース28の温度を検出する温度センサであり、温度センサ31で検出される温度をポンプ温度として用いる。
【0013】
図1に示したターボ分子ポンプは5軸制御形磁気軸受ターボ分子ポンプであり、回転体4はラジアル磁気軸受を構成する電磁石51,52とアキシャル磁気軸受を構成する電磁石53とにより非接触支持される。回転体4の浮上位置はラジアル変位センサ71,72およびアキシャル変位センサ73によって検出される。27は非常用のメカニカルベアリングであり、磁気軸受が作動していない時にはメカニカルベアリング27により回転体4は支持される。
【0014】
図2は本実施の形態の制御装置と図1に示したポンプ本体1の概略構成を示すブロック図である。ターボ分子ポンプは図1に示したポンプ本体1と、そのポンプ本体1を駆動制御する電源装置2とで構成されている。電源装置2はケーブル3を介してポンプ本体1に接続されており、ケーブル3は図1に示したポンプ本体1のレセプタクル33に接続される。図2では、ポンプ本体1に関しては、説明に必要なモータ6,ヒータ29,冷却装置30,温度センサ31について示した。
【0015】
なお、図2はポンプ温度制御に必要な構成を中心に示したものであり、ポンプ本体1に関してはモータ6,ヒータ29,冷却装置30,温度センサ31を示し、電源装置2に関してはモータ制御部5,温度制御部7,温度設定部8,入力部9および表示部10が設けられている。電源装置2には磁気軸受制御に関する構成も備えているが、図示を省略した。
【0016】
入力部9には、例えばオペレータによる手動入力により温度初期値T0が入力され、入力部9は入力された温度初期値T0を保持する。この温度初期値T0は、必要に応じて温度設定部8に読み込まれる。また、モータ制御部5からはポンプに加わっている負荷量情報が温度設定部8に入力される。表示部10にはポンプ状態等が表示される。
【0017】
本実施の形態におけるポンプ温度制御では、回転体の温度に相当する負荷量情報に応じて温度制御の目標温度Ttが自動的に変更される。目標温度Ttの設定は温度設定部8により行われる。温度設定部8は、温度初期値T0および負荷量情報に基づいて目標温度Ttを温度制御部7に出力する。温度制御部7は、温度センサ31の検出温度および温度設定部8からの目標温度Ttに基づいて、ポンプ温度が目標温度Ttとなるようにヒータ29および冷却装置30を制御する。
【0018】
ところで、無負荷状態のポンプにガス負荷を加えた場合、ポンプ回転数を一定に維持するためにモータ6に供給される電力が増加する。そして、その電力増加によってモータ発熱が増加するが、ガス負荷による回転体の温度上昇は大半がモータ発熱の増加に起因しているので、無負荷状態からガス負荷状態となった場合の電力量の増分は回転体の温度上昇に相当する負荷量情報とすることができる。そのため、本実施の形態では上述した負荷量情報として所定時間の間のモータ電流の積算値(時間積分値)Ihを使用する。
【0019】
《温度制御動作の説明》
次に、図3のフローチャートを用いて温度制御の一例について説明する。図3のフローチャートは電源装置2で行われる温度制御処理の手順を示したものであり、電源装置2のメインスイッチがオンされると処理がスタートする。なお、メインスイッチがオンされると電源装置2に設けられた磁気軸受駆動制御装置(不図示)が起動して、回転体4は磁気浮上状態とされる。そして、ポンプスタートスイッチがオンすることによって、モータ6による回転体4の回転駆動が開始される。
【0020】
ステップS1では、ポンプスタートスイッチがオンされてポンプ運転が開始されたか否かを判定する。そして、ポンプ運転が開始されるとステップS1からステップS2へと進む。ステップS2において、温度設定部8は入力部9から温度初期値T0を読み込み、その温度初期値T0を温度制御部7の目標温度Ttとして設定する。ステップS3において、温度制御部7はステップS2で設定された目標温度Ttと温度センサ31の検出温度とに基づいて、ヒータ29によるポンプ加熱を開始する。
【0021】
本実施の形態におけるターボ分子ポンプは成膜プロセスやエッチングプロセス用のポンプであって、反応生成物の付着を防止するためにポンプ本体1を昇温して使用する。入力部9に入力される温度初期値T0は標準的使用における目標温度Ttであって、ポンプ運転開始によりこの目標温度Tt(=温度初期値T0)までの昇温が開始される。温度初期値T0としては、例えば60〜70℃程度のものが考えられる。
【0022】
ステップS4では、モータ制御部5におけるモータ電流の積算が行われ、その積算値Ihは温度情報として温度設定部8に出力される。なお、ステップS4の積算は予め定められた所定時間行われる。ステップS5では、ステップS4で算出された積算値Ihが予め定めた規定値Ih0以上か否かを判定する。ここで、規定値Ih0は、回転体の温度が劣化防止のための上限温度以上か否かを判定するための規準値である。例えば、ガス負荷量が大きくなるとモータ電流が増加するので、あるガス負荷量以上では積算値Ihは規定値Ih0よりも大きくなる。
【0023】
ステップS5において「Ih≧Ih0」と判定されるとステップS6へ進み、「Ih<Ih0」と判定されるとステップS10へ進む。ステップS6へ進んだ場合、すなわち、ガス負荷量が通常より大きくて回転体4の温度が上昇傾向にある場合には、ステップS6において現在の目標温度Ttが下限値Tより大きいか否かを判定する。下限値Tとしては、室温相当(40℃程度)が選ばれる。
【0024】
ステップS6において「Tt>T」と判定されると、ステップS7に進み温度設定部8において目標温度Ttを所定温度ΔTだけ低減する。例えば、目標温度Ttを1(deg)だけ下げる。この所定温度ΔTだけ低減された新たな目標温度Ttは温度制御部7に入力され、温度制御部7は新たな目標温度Ttに基づいてポンプ温度の制御を行う。このとき、温度センサ31で検出されるポンプ温度が新たな目標温度Ttよりも高くなっている場合には、冷却装置30によりポンプ本体1を冷却してポンプ温度を下げるように制御する。
【0025】
一方、ステップS6において「Tt≦T」と判定されると、ステップS8に進んで目標温度TtがTt=Tの状態に保持されている時間が所定時間以上となったか否かを判定する。ステップS8において所定時間以上と判定されると、ステップS9においてアラームを発生し、保護動作によりポンプを停止する(ステップS12)。アラームの発生方法としては、例えば、電源装置2に設けられた表示装置10にアラーム表示を行ったり、半導体装置側にアラーム信号を出力したりする。
【0026】
なお、ステップS9においてアラームを発生する理由は、温度を低減しても、依然ポンプの回転体の温度が低下しない過負荷な状態が継続しているためで、目標温度Tt=Tの状態が所定時間経過した場合にはアラームを発生して、オペレータに過負荷状態が継続しているイレギュラーな使用状態となっていることを報知する。
【0027】
一方、ステップS5からステップS10へ進んだ場合には、すなわち、ガス負荷量が通常程度あるいは通常よりも小さい場合には、ステップS10において現在の目標温度Ttが温度初期値T0よりも低いか否かを判定する。ステップS10において「Tt≧T0」と判定されるとステップS4へ戻り、「Tt<T0」と判定されるとステップS11に進み、温度設定部8において目標温度Ttを所定温度ΔTだけ増加する。例えば、目標温度Ttを1(deg)だけ上げる。ただし、温度増加後の目標温度Ttが温度初期値T0を越える場合には、目標温度Ttを温度初期値T0へと増加させる。
【0028】
この所定温度ΔTだけ増加された新たな目標温度Ttは温度制御部7に入力され、温度制御部7は新たな目標温度Ttに基づいてポンプ温度の制御を行う。このとき、温度センサ31で検出されるポンプ温度が新たな目標温度Ttよりも低い場合には、ヒータ29によりポンプ本体1が加熱されてポンプ温度を上げるように制御する。図3に示した処理はポンプが運転されている間は継続して行われ、ポンプ停止信号が発せられると一連の処理を終了する。
【0029】
図4は、(a)ガス負荷の変化と、(b)それに対応した目標温度Ttの変化とを示したものである。図4(a)において、縦軸のガス負荷はポンプに流入するガスの流量で表される。上述したように、ステップS5における積算値Ihは電流値を時間積分したものであり、それはガス負荷を時間積分したものに対応している。ここでは、図4(a)に示した時間ΔtがステップS4で積算値Ihを算出する際の所定時間とし、ハッチングを施した部分の面積値(ガス負荷量)が規準値Ih0に対応するものとして考える。以下では、図3のフローチャートとの対応が分かりやすいように、ガス負荷量を電流積算値Ihに置き換えて説明する。
【0030】
時刻t0の時点で既に目標温度Ttは温度初期値T0になっているとして、時刻t1以降について説明する。時刻t0〜t1の間の積算値Ih(すなわち、ガス負荷量)は規準値Ih0よりも小さいのでステップS5からステップS10へと進むが、既にTt=T0となっているので目標温度Ttを増加させない。この目標温度設定は時刻t1に続く時間ΔTに適用されるので、時刻t1〜t2は目標温度TtはT0に維持される。時刻t1〜t2の積算値Ihについても「Ih<Ih0」なので、同様にTt=T0が維持される。すなわち、時刻t3まで目標温度Tt=T0が維持される。
【0031】
時刻t2〜t3における積算値Ihは規準値Ih0よりも大きいので、続く時刻t3〜t4の目標温度TtをΔTだけ減少させる。時刻t3〜t4では再びガス負荷が通常の場合よりも大きくなっているが、短時間であるため積算値Ihは規準値Ih0よりも小さくなり、時刻t4〜t5の目標温度TtをΔTだけ増加する。その結果、目標温度TtはTt=T0となる。
【0032】
続く時刻t5から時刻t9までの間においては、各所定時間Δtにおける積算値Ihが規準値Ih0よりも大きくなっているので、時刻t6から時間Δt毎に目標温度TtをΔTずつ減少させる。しかし、時刻t8の時点でTt=Tとなるので、時刻t9にいては目標温度Ttを減少させずに下限値Tに維持する。図4に示す例では、Tt=Tとの状態がs所定時間2Δtだけ維持されたときにアラームを発生するように設定しているので、すなわち、図3のステップS8における保持時間を2Δtに設定しているので時刻t10においてアラームが発せられる。しかし、時刻t9から時刻t10までの積算値Ihは規準値Ih0よりも小さくなるので、時刻t10において目標温度TtがΔTだけ増加する。
【0033】
[変形例]
上述した実施の形態では、負荷量情報としてモータ電流の積算値Ihを用いたが、図5の変形例に示すようにモータ6のステータ温度を温度センサ34で検出して、検出した温度を負荷量情報として用いてもよい。モータ6の温度を検出する場合にはサーミスタ等の温度センサをモータ6のステータに設ければ良い。
【0034】
図5に示した変形例の場合、上限温度の影響を直接受けるモータ6の温度に基づいてポンプ温度の制御を行っているので、上述した実施の形態のように間接的な情報であるモータ電流の積算値Ihに基づいて制御を行う場合に比べて、より正確に温度制御を行うことができ、モータ6がそれらの上限温度を越えるのをより確実に防止することができる。もちろん、生成物の堆積はガスの流れG1の下流側すなわちベース28に近いところで発生し易いので、ベース温度を温度センサ31で検出しポンプ温度制御に用いることは図2に示した場合と同様である。
【0035】
上述したように、本実施の形態の温度制御装置では、ポンプの負荷状況に応じて最適な目標温度となるように目標温度を変更するようにしているので、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)常に、負荷量に応じた最高温度にポンプ温度が維持されるため、生成物の付着が低減され、ポンプのメンテナンスサイクルを延ばすことができる。そのため、ランニングコストの低減を図ることができる。
(2)目標温度が固定であった従来のポンプでは回転体4やモータ6の温度上昇によりポンプ運転を停止せざるを得ないような状況であっても、目標温度が自動的に変更される本実施の形態の温度制御装置を用いたターボ分子ポンプならば運転継続が可能となり、様々なガス負荷状況に対応することができる。
(3)回転体4やモータ6の過昇温を防止でき、ターボ分子ポンプの寿命の低下を防止することができる。
【0036】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0037】
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、ヒータ29は加熱手段を、冷却装置30は冷却手段を、温度制御部7は制御手段を、モータ制御部5および温度センサ34は取得手段を、温度設定部8は判断手段および目標温度変更手段を、温度設定部8および表示部10は警報手段を、温度設定部8、モータ制御部5および温度制御部7は保護手段それぞれ構成する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による温度制御装置が適用されるターボ分子ポンプの、ポンプ本体1を示す断面図である。
【図2】本実施の形態の制御装置と図1に示したポンプ本体1の概略構成を示すブロック図である。
【図3】電源装置2で行われる温度制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】(a)はガス負荷の変化を、(b)はガス負荷に対応する目標温度Ttの変化をそれぞれ示す図である。
【図5】変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ポンプ本体
2 電源装置
4 回転体
5 モータ
6 温度設定部
7 温度制御部
8 モータ制御部
9 入力部
10 表示部
28 ベース
29 ヒータ
30 冷却装置
31,34 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ分子ポンプのポンプ本体を加熱する加熱手段と、
前記ポンプ本体を冷却する冷却手段と、
前記加熱手段および/または前記冷却手段を制御してポンプ温度を所定の目標温度に制御する制御手段と、
ターボ分子ポンプの回転体の温度に相当する負荷量情報を取得する取得手段と、
前記取得手段で取得された前記負荷量情報に基づいて前記ターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値以上か否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記ターボ分子ポンプの回転体の温度が所定値以上と判断されると前記目標温度を予め定められた下限値を下限に低くし、前記判断手段により前記ターボ分子ポンプの回転体の温度が前記所定値より小さいと判断されると前記目標温度を予め定められた上限値を上限に高くする目標温度変更手段とを備えたことを特徴とするターボ分子ポンプの温度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ分子ポンプの温度制御装置において、
前記取得手段は、前記ターボ分子ポンプの回転体駆動用モータの駆動電流に基づいて前記負荷量情報を取得することを特徴とするターボ分子ポンプの温度制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のターボ分子ポンプの温度制御装置において、
前記目標温度と所定の下限値とが等しい状態が所定時間継続されたときにポンプの加熱の停止および/または運転の停止を行う保護手段を設けたことを特徴とするターボ分子ポンプの温度制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のターボ分子ポンプの温度制御装置において、
前記目標温度と所定の下限値とが等しい状態が所定時間継続されたときに警報を発する警報手段を備えたことを特徴とするターボ分子ポンプの温度制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate