説明

ターボ分子ポンプの状態を測定する方法及びターボ分子ポンプ

【解決手段】本発明は、ターボ分子ポンプの状態を測定する方法及びターボ分子ポンプに関する。振動曲線はターボ分子ポンプに接続された振動センサ(10)により決定される。決定された振動曲線は評価デバイス(12)に転送される。振動は評価デバイス(12)中のフィルタ(16)により検出され、その後比較値と比較される。閾値を超えた場合、警告信号が遠隔データ転送デバイス(28)により監視システム(30)に転送される。本方法はターボ分子ポンプのオンライン監視を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はターボ分子ポンプの状態を測定する方法及びターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
高真空を生成するためのターボ分子ポンプは、玉軸受または滑り軸受中で正常に支持され高速回転する主軸を備えている。軸受、およびターボ分子ポンプの他の機構部品に作用する高い機械的ストレスにより、ターボ分子ポンプの突然の機能停止がこの機械的ストレスの結果として生じる可能性がある。ターボ分子ポンプの機能停止は時々自然に、予測できず生じる。高い技術的な要求のために、ターボ分子ポンプの稼働寿命は大幅に異なる可能性がある。したがって、ターボ分子ポンプの機能停止は定期点検が行なわれても回避するのが難しい。さもなければ、定期点検は非常に短い時間間隔で行なわれなければならない。例えばクリーンルームにおいては、運転されるターボ分子ポンプの機能不全は、しばしば生産の中断を必要とする。さらに、軸受の損傷は、しばしば回転軸の閉そくに結びつく場合がある。大きな慣性質量により、これは、ターボ分子ポンプの部分的な破壊を引き起こす。
【0003】
ターボ分子ポンプの完全な機能停止を回避するために、簡便に一定間隔で解析を行なうことが必要である。この解析は携帯解析装置の支援によってターボ分子ポンプを検査することにより行なわれることが公知である。前記解析装置は評価デバイスとともに振動検出器も含む。振動検出器はターボ分子ポンプに接続される。例えば、評価デバイスは、検出された振動スペクトルを例えばグラフ中に示す。周波数スペクトルに基づいて、機構部品、特に軸受の機構部品に損傷が生じたかどうか、専門家は認識することができる。その結果、短い期間内でのポンプの機能停止が予想される。軸受が大規模な摩耗を被っており、ターボ分子ポンプが損傷している場合、このような検出は可能である。なぜなら、個々のスペクトル線が非常に明確に目立つだけでなく、振動値の増加はスペクトルの広い帯域にわたって明白だからである。したがって、ターボ分子ポンプの検査は、ポンプについての複雑な測定が専門家によりその場で行なわれることが要求される。完全な機能停止の危険を回避するために、一定間隔で簡便にこの作業は実施されるべきである。そのような定期点検にもかかわらず、ターボ分子ポンプの機能不全は相当な二次損傷の危険を伴って、時々生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0851127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に検査用の人件費を縮小するためにターボ分子ポンプの完全な機能不全の発生を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1の中で定義されるような方法および請求項13の中で定義されるようなターボ分子ポンプによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ターボ分子ポンプの状態が判定される。そのような判定工程によって、例えば、ポンプが損傷しているかどうかが初期の時点で検出され得る。それにより、ポンプの将来起こり得る機能停止の可能性は初期に検出され、よって、対応する対策を取ることを可能にする。本発明の方法によれば、振動発生は、ターボ分子ポンプに接続された振動検出器の支援によって少なくとも1つの周波数で検出される。好ましくは、この工程中に、振動検出器は、ターボ分子ポンプに継続的に接続される。ここで、好ましくは、機械的な接続がターボ分子ポンプの監視されるべき部品、特に軸受になされる。振動検出器によって検出された前記少なくとも1つの振動発生は、好ましくは静的であり、且つ直接ターボ分子ポンプに接続されている評価ユニットに送信される。
【0008】
好ましくは、評価ユニットはターボ分子ポンプに集積されており、例えば、ターボ分子ポンプの既存の制御ユニット中配置されている。評価ユニットはフィルタ、好ましくは周波数可変フィルタを備える。フィルタはある周波数に設定されているか、あるいは、ある周波数がフィルタに適用されている。それにより、対応する振幅が検出され得る。フィルタの周波数の変化は異なる周波数を設定することにより実行される。評価ユニットにおいて、少なくとも1つの判定された振幅は一または複数の制限値と比較される。例えば、これらの制限値は、損傷を受けていない部品を備えたポンプの標準振動発生に基づいて検出された値であってよい。好ましくは、制限値は経験的に検出されたものか、または経験的に検出された値に基づき、評価ユニットの記憶要素に記憶されたものである。制限値を超えるとすぐに、警告信号が評価ユニットによって発せられる。所望の場合、制限値を数回超えた後にのみ、または所定のより長い期間超えた後にのみ、警告信号が出力される。
【0009】
本発明の方法の特に好ましい変形例によれば、本方法中で使用されるフィルタは可変周波数を備えたフィルタである。さらに好ましくは、このフィルタは集積周波数フィルタ回路として提供される。そのような集積周波数フィルタ回路は低コストの部品である。可変周波数フィルタとして好ましくは、いわゆる「スイッチドキャパシタフィルタ(switched capacitor filters )」という、大量生産品として、高度な集積半導体回路(IC回路)として入手可能であり、例えば以下の関連技術文献に記載されているものが用いられる:U.ティーツェ、Ch.シェンク著「ハルブライタ−シャルトゥングステクニーク」(U. Tietze, Ch. Schenk, ”Halbleiter-Schaltungstechnik”)。スイッチドキャパシタフィルタ(SCフィルタ)において、積分回路として演算増幅器及びRC回路(抵抗器とキャパシタ)で設計されたアクティブフィルタの原理が用いられ、周波数決定のフィルタ時定数“T”は、R*Cではなく、C/(Cs*fs)により定義される。
【0010】
Csでのキャパシタスイッチング周波数fsが、単純且つ正確であって、可変に通常のマイクロコントローラ回路により生成されることは、特に長所である。さらに、集積半導体回路において、容量は非常に好ましいやり方で生成され得る。上述の原理によれば、絶対値はTの決定に含まれていない一方、比率のみが含まれており、集積回路の実現に非常に都合がよい。
【0011】
有用なスイッチドキャパシタフィルタICは、例えば以下のようないくつかのメーカーによって提供されている。
【0012】
マクシム・カンパニー(MAXIM company):マックス7490(MAX 7490)
これは、1Hzから40kHzの周波数範囲中で、高域通過フィルタ、低域通過フィルタ、帯域通過フィルタおよびノッチフィルタにふさわしい。
【0013】
リニアー・テクノロジー・カンパニー(Linear Technology company):エル・ティー・シー1059(LTC 1059)
これは、0.1Hzから40kHzの周波数範囲中で、高域通過フィルタ、低域通過フィルタ、帯域通過フィルタおよびノッチフィルタにふさわしい。
【0014】
複数のSCフィルタ回路を積層することにより、所望の場合、例えば、より急傾斜のフランク(flank)を得るため又は減衰を増加させるため、追加の様態の下のフィルタ特性に影響を及ぼすことができる。
【0015】
特に好ましくは、集積周波数フィルタ回路に加えて、さらにターボ分子ポンプの既存のマイクロプロセサが用いられる。個々のターボ分子ポンプにおいて、マイクロプロセサは駆動制御及び監視のために既存である。既存のマイクロプロセサの計算能力は容量をほとんど用いられる。本発明で集積周波数フィルタ回路を用いた場合、解析を行なうためにターボ分子ポンプの内部マイクロプロセサに課された負担を縮小する効果があるが、この解析はFFT(高速フーリエ変換)が好ましい。たとえ振動発生の完全なピックアップが比較的長い時間、数分から数時間におよんでも、ターボ分子ポンプは特に数ヶ月又は数年という長期間継続して運転されるので、数日内に起こりうる機能停止の早期発見ができるため、これは本発明の実施に不利にはならない。
【0016】
ターボ分子ポンプに通常使用される典型的なマイクロプロセサにおいては、離散的な周波数分析の上述の方法は、リソースの約1%を必要とし、事実上リアルタイムの能力を要求しない。これは、振動ピックアップに関して、測定に対する目立った影響を引き起こさずに、最優先の作業のための任意の所望の方法でマイクロプロセサを中断することができるという長所を持つ。
【0017】
ターボ分子ポンプにおいて既存のマイクロプロセサに接続して集積周波数フィルタ回路を用いて実施される本発明の方法は、低コストの集積周波数フィルタ回路に関するマイクロプロセサの使用可能な残容量を用いることによって、オンラインでの機能停止予測が若干の追加費用及び非常にコンパクトな構造上のサイズで可能になるという本質的な長所を持つ。
【0018】
制限値または値は、製造時直ちに又は初期運転の時点で決定されてよく、これは、損傷していないポンプの標準的な振動発生から決定されるだけでなく、各ポンプまたは少なくとも各ポンプ形式に対して決定されてよい。
【0019】
特に好ましくは、振動振幅の測定は複数の周波数で行なわれる。これは、好ましくは、異なった周波数が適用されるフィルタによって実行される。好ましくは、振動振幅は続いて統合され、好ましくは相互に加算される。その後、好ましくは加算により得られた総合値は、好ましくは直接、制限値と比較される。
【0020】
好ましくは所定時間間隔で、振動振幅はあらかじめ定められた周波数で決定される。そうする際に、振動振幅は、各検査プロセス中で同じ周波数に対してそれぞれ決定され、それにより、振動振幅から検出されたそれぞれの合計値と振動振幅とが比較できる。そうして、個々の振幅の変化又は総合値の変化を検出することができる。その後、制限値として、時間の変化も、絶対値の代わりに又は絶対値に加えて考慮することができる。これは、例えば、所定の制限値をまだ超えておらず、個々の振幅の急峻な増加又は総合値の急峻な増加が検出された場合にも、警告信号を発することを可能とする。
【0021】
複数の振動振幅値の加算により、偶然に生じるか又は条件の異常な変化の結果生じる可能性のある値の個別の増加が警告信号を引き起こす可能性は、安全に排除される。個々の部品の機能停止に先立って、多くの個々の信号値が、例えば軸受けの遊びが拡大するために、増加するので、損傷していないポンプの積分された/総計された複数の振動振幅の値と、損傷したポンプの値との間の差は大きくなる。複数の振動振幅値を加算すると、点検が必要な場合のみ確かに警告信号を発することが高い信頼度で保証される。さらに、制限値を超えることが早期に検出されることが保証され、点検を実行するための十分な時間又は必要であればポンプの交換のための十分な時間が確保される。
【0022】
本発明によれば、すべての監視されるべきターボ分子ポンプに、対応する振動ピックアップおよび評価ユニットが設けられるように、振動ピックアップ及び評価ユニットはターボ分子ポンプに永続的に接続される。振幅の判定は、このように継続的に又は少なくとも短い間隔で行なわれる。このプロセスは自動的に行なわれるので点検係は必要とされない。警告信号の出力は、好ましくは点検設備へ遠隔データ送信によって達成される。
【0023】
好ましくは、本発明の方法はターボ分子ポンプに取り付けられたプロセッサを用いることにより実行される。これは、本方法を実行するために大規模な計算プロセスは必要とされないため可能となる。本発明の方法を実行するための費用は少ないので、必要な計算は既存のマイクロコントローラで援用することができる。したがって、本発明の方法は簡便に低コストで既存のターボ分子ポンプに実施することができる。直接の反応は必要とされないため、監視データが迅速に処理される必要もない。この理由は、本発明の方法においては、可能な将来の機能停止が初期の時点で検出され、それにより、即時に反応することを要しないことにある。本発明の方法においては、監視に使用される既知のFFT法よりも遙かに小さい記憶容量とともに遙かに低い計算性能しか要しない。
【0024】
好ましくは本発明に用いられる解析原理はFFT解析(高速フーリエ変換)を用いず、それぞれの測定される周波数範囲の振幅が決定される、すなわち分析されるべき各周波数は個々に(個別に)決定されるべきである。対応するデータの検出には長い時間を要するが、一方で、これは、既に説明したように、本発明の実行において不利ではない。FFTにおいて、判定されるべき信号は時間領域で検出され、FFTにより規定されるように周波数スペクトルに変換される。対応する計算能力の場合には、このプロセスは非常に速く扱うことができる。しかし、それはここでは必須ではない。
【0025】
したがって、本発明によれば、ターボ分子ポンプはオンライン監視が行える。これは、専門家により短い間隔で行なわれる定期解析プロセスを省くことができるという利点となる。解析作業を実行するための必要人員はこのように顕著に低減される。代わりに、本発明のオンライン監視により、警告信号が監視ユニットから受け取られるとすぐに、専門家がポンプの保守作業を行なうことができる。この作業は、個々の軸受の交換とともに個々のポンプ部品の交換を含み得る。所与の場合に応じて、ターボ分子ポンプを完全に交換することさえ可能であり、その後、必要であれば、損傷したターボ分子ポンプを修理することができる。オンライン監視により、完全な機能不全に先立って制限値を超えることが起こるため、突然の予期しない完全な機能不全は回避される。例えば、軸受が損傷を受けるとすぐに、個々の周波数の振幅は変化する。したがって、軸受が機能停止する前に振動振幅は変化する。よって、例えば軸受の交換といった保守作業を行なうための十分な時間が残される。
【0026】
場合によっては、ターボ分子ポンプのスイッチを切ることが必要になることがある。これは、例えば生産における危険な状況といった、それぞれの適用状況に応じて必要とされ得る。さらに、スイッチオフは、おそらくより高い、第2の制限値に応じて必要となるかもしれない。第2の制限値を超えた場合、ターボ分子ポンプはまもなく機能停止し、必要な交換が正規の時間内に行なうことができない畏れがある。そのような場合、必要であれば、自動的にスイッチオフすることができる。このようにして、引き起こされる二次損傷を伴う完全な機能停止の発生は回避される。
【0027】
好ましくは、複数の周波数が限界周波数範囲内で測定される。限界周波数範囲は経験的にそれぞれのポンプに応じて検出することができる。特に、限界周波数範囲は、回転数の0.3乃至50倍の回転数の範囲にあり、特に回転数の8乃至16倍である。限界周波数範囲に測定を制限することによって、比較値とのより信頼できる比較が保証され、並びに、それにより警告信号をより確実に発することを保証することができる。例えば、点検には関連のない、他の範囲中の可能な生じうるスペクトル値の増加は考慮されない。
【0028】
好ましくは、警告信号の出力に関して、ターボ分子ポンプのパラメータ及び/又は環境条件もさらに考慮される。例えば、運転温度、運転時間、開始サイクル数、待機サイクル数、及び負荷サイクル数が、負荷条件とともに考慮され得る。特に、ターボ分子ポンプのパラメータ及び/又は環境条件に応じて制限値を適合させることが可能である。したがって、本発明は、制限値を継続的に適合させる可能性を提供し、好ましくは、そのような適合は自動的に実行され、また、評価ユニット及び評価ユニットに記憶された対応するソフトウェアの支援により実行される。
【0029】
好ましくは、監視ユニットへの警告信号の送信とは別に、制御信号が一定の時間間隔でサービス設備に送信される。さらに、制御信号の送信は、好ましくは遠隔データ送信を介して行なわれる。したがって、制御信号もオンラインで送信される。よって、監視ユニットは、評価ユニットが確実に作動しているかどうかチェックすることができる。評価ユニットの機能停止があれば直ちに検出することができる。特に、積分により得られた値は、制御信号によって送信することができる。それにより、監視ユニットは、送信された値が妥当かどうか調べることができる。通常は、摩耗により、総合値は時間とともに増加する傾向がある。対応するアルゴリズムの支援で、監視ユニットは、送信された値の妥当性を検査することができる。そのような妥当性検査も、評価ユニット中で直ちに行なうことができる。
【0030】
本発明は、さらに上記の方法を実行するのにふさわしく本発明に従って修正されたターボ分子ポンプに関する。前記ターボ分子ポンプは、ハウジング内に、高速回転軸体を有するポンプデバイス、及び対応する軸受を備える。振動ピックアップは、監視されることになっているターボ分子ポンプの部品に、特に個々の軸受に機械的に接続される。もちろん、振動ピックアップは、監視されるべき複数の部品に機械的に接続することができる。本発明によれば、振動ピックアップは、ターボ分子ポンプの一部を形成し、特に、ターボ分子ポンプのハウジング内に配置される。これは、監視される部品へのよい機械的な接続が提供されるという長所を持つ。ターボ分子ポンプへの振動ピックアップの集積化は、さらに振動の連続的又は少なくとも頻繁なピックアップを可能にする。振動ピックアップとして有用なものは、加速度ピックアップ、ピエゾノックセンサ、ボディ/エアサウンドマイクロホン、距離センサ等である。
【0031】
さらに、本発明のターボ分子ポンプは、振動ピックアップに電子的に接続される評価ユニットを備えている。好ましくは、前記評価ユニットは既存のターボ分子ポンプの制御ユニットに集積されている。評価ユニットは、好ましくは、例えばマイクロプロセサ及び/又はメモリのように制御ユニットの既存の部品を用いる。
【0032】
好ましくは、評価ユニットは、周波数が適用されたフィルタを備える。このように、対応する振幅が、本方法に関して上述のように、制限値と比較するためにフィルタ分離される。特に、フィルタは、異なる周波数の適用により可変である。
【0033】
本発明によれば、評価ユニットは警告信号の出力のために出力デバイスに接続される。制限値を超えた場合、警告信号を生成する。前記制限値は、振動ピックアップによって出力された信号を、好ましくは評価ユニットに記憶された比較値と比較することによって得られる。好ましくは、出力デバイスは、好ましくはデータ送信により、監視ユニットに警告信号を送信するためのインターフェースとして設計されている。
【0034】
特に既存の制御ユニットに集積することにより評価ユニットをターボ分子ポンプに直接的に接続するとともに、振動ピックアップをターボ分子ポンプに集積する本発明により、振動スペクトルの検出及び対応する振動スペクトルの評価に基づき、ターボ分子ポンプに実施される継続的な又は少なくとも頻繁な保守が可能となる。したがって、ターボ分子ポンプを監視するために、ターボ分子ポンプに外部の監視ユニットを接続し、且つ専門家による監視を行なう必要はない。代わりに、非常に簡便な方法で、オンライン監視プロセスを実行することが可能である。それにより、生じ得る二次損傷を伴う完全な機能停止の発生は回避される。
【0035】
評価ユニットは好ましくはマイクロプロセサ及び/又は記憶要素を備える。好ましくは、ターボ分子ポンプの制御ユニットにおいて既存の部品が用いられる。これは顕著なコスト低減を可能とする。
【0036】
本発明のターボ分子ポンプの特に好ましい実施形態によれば、フィルタは、好ましくは本方法に関して上述の方式で構成された集積周波数フィルタ回路の形で提供される。好ましくは、本方法に関して上述のように、駆動制御及び監視を実行するためにターボ分子ポンプに既に含まれているマイクロプロセサが用いられる。
【0037】
さらに、追加のターボ分子ポンプのパラメータの判定のため及び/又は環境条件の判定のため、判定デバイスが提供される。好ましくは評価ユニットの一部を形成する前記判定デバイスの支援により、ターボ分子ポンプのパラメータおよび同じく環境条件は、警告信号の出力において考慮される。
【0038】
特に、制限値の適合は、評価ユニットに集積された制限値適合デバイスにより行なわれる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照してより詳細に以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を実現するための個々の部品の略示図である。
【図2】振動ピックアップによって検出したときの、損傷を受けていない軸受を備えたポンプの振動スペクトルの基本的なグラフである。
【図3】振動ピックアップによって検出したときの、損傷を受けた軸受を備えたポンプの振動スペクトルの基本的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
個々の部品の略示図(図1)中において、特に軸受に、監視されるべきターボ分子ポンプの部品に機械的に接続された振動ピックアップ10が示される。振動ピックアップは機械的振動を拾い上げるのに作用し、それらを電気的な振動信号に変換するのに作用する。電気的な振動信号は評価ユニット12に送信される。図示された実施形態において、評価ユニット12は電圧振幅を増加させる増幅器14を備える。増幅器14は、好ましくは集積周波数フィルタ回路である周波数フィルタ16に接続される。周波数フィルタ16の支援により、電気的な振動信号の個々の重要な振幅はフィルタ分離される。
【0042】
好ましくは、周波数フィルタ16は異なる周波数をそれに適用することにより可変である。周波数フィルタ16の後ろに配置された信号整流器18の支援により、フィルタ分離された振動信号は直流電圧信号に変換される。信号整流器18に接続されたアナログ/ディジタル変換器20で、前記直流電圧信号はディジタル値に変換される。その後、このディジタル値はマイクロプロセサ22によって処理される。好ましくは、前記マイクロプロセサ22は、例えば駆動制御及び監視のような基本的な動作を実行するためのターボ分子ポンプにおいて既存のマイクロプロセサである。
【0043】
さらに、メモリ24はマイクロプロセサ22に接続される。上述のように振動ピックアップ10により検出され処理された現在の振動振幅を比較値と比較する(比較値に基づいて評価する)ことができるように、比較値(制限値)は前記メモリ24に記憶される。マイクロプロセサ22により行なわれた比較で、制限値を超えることが示された場合、警告信号が出力装置26に出力される。前記出力装置26は遠隔データ送信システム28を介して監視ユニット30に接続される。前記監視ユニット30は好ましくは、例えばサービスセンタのようなサービスプロバイダであり、よって企業の敷地内に配置される必要がない。
【0044】
さらに、マイクロプロセサ22はさらにターボ分子ポンプのパラメータの判定のため、及び/又は環境条件の判定のため、判定デバイス(図示せず)に接続され得る。対応するパラメータは、警告信号の検出において、及びまた制限値の決定において、考慮される。
【0045】
周波数フィルタ16のフィルタ周波数特性を設定するために、マイクロプロセサ22はディジタル値/周波数変換器32に数値を送信する。該数値に基づいて、ディジタル値/周波数変換器32は、フィルタ16のフィルタ特性を設定するために用いられる相当周波数(equivalent frequency)を検出する。このように、フィルタ特性は要件プロファイルに応じて適合し得る。
【0046】
好ましくは、所定の周波数で測定された個々の振動振幅はマイクロプロセサ22によって加算される。この加算プロセスによって得られた総合値は、一または複数の制限値と比較される。その後、例えば第1の制限値を超えた場合、ターボ分子ポンプに対して実行される点検又は保守のプロセスを開始させる信号が生成される。例えばより高い第2の制限値を超過するとすぐに、好ましくは自動的に、ターボ分子ポンプはスイッチオフされる(ターボ分子ポンプのスイッチは切られる)。
【0047】
説明の目的のために、図2は振動スペクトルのグラフを示す。このスペクトルは、軸受が損傷を受けず他の機械的に関連する部品も損傷を受けていないことを特徴とする、正確に作動するターボ分子ポンプの振動スペクトルである。
【0048】
対照的に、図3は損傷を受けた軸受を備えたターボ分子ポンプの振動スペクトルを示す。この図から、個々の振動の振幅が増加することは明らかである。本発明により、例えば50Hzの周波数間隔で(測定した)例えば8,000乃至20,000Hzの範囲の個々の振動振幅を加算することで、制限値との比較により、所与のターボ分子ポンプが損傷を受けた軸受を有することは、容易に検出される。
【0049】
本技術の方法をさらに改良すべく、例えば0.1m/s2 の制限値未満の振幅を考慮しないことが考えられる。これには、損傷を受けていない軸受及びその他の部品を備えたターボ分子ポンプにおいても生じるであろう振動を考慮しないという効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ分子ポンプの状態を測定する方法において、
ターボ分子ポンプに接続された振動ピックアップ(10)により振動発生が検出され、
振動発生は評価ユニット(12)に伝達され、
評価ユニット(12)は、好ましくは周波数フィルタ回路であるフィルタ(16)を有し、フィルタ(16)は対応する振動振幅を検出すべく所定の周波数に設定されており、
ターボ分子ポンプのマイクロプロセサ(22)の支援により、評価ユニット(12)にて現在の振動振幅を少なくとも1つの制限値と比較し、
制限値を超えた場合、信号を監視ユニット(30)に送信する
ことを特徴とするターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項2】
フィルタ(16)は、異なる周波数を設定することにより周波数可変である
ことを特徴とする請求項1に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項3】
制限値を超えた場合に送信される信号は、データ送信システム(28)を介して送信される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項4】
振動振幅は複数の周波数において測定され、測定された振動振幅は総合値に統合される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項5】
総合値は個々の測定された振動振幅を加算することにより決定される
ことを特徴とする請求項4に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項6】
限界周波数範囲内の複数の周波数が測定され、限界周波数範囲はターボ分子ポンプの回転数の0.3乃至50倍の範囲にある
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項7】
警告信号の出力はターボ分子ポンプのパラメータ及び/又は周囲条件がさらに考慮されて実行される
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項8】
制限値の決定において、ターボ分子ポンプのパラメータ及び/又は周囲条件が考慮される
ことを特徴とする請求項7に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項9】
制限値の決定は可変であって、制限値は新たに、好ましくは自動的に、算出される
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項10】
制御信号は一定の間隔で監視ユニット(30)に送信される
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項11】
第1の制限値を超えた場合、警告信号を生成する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項12】
第2の制限値を超えた場合、好ましくは自動的に、ターボ分子ポンプはスイッチオフされる
ことを特徴とする請求項11に記載のターボ分子ポンプの状態を測定する方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法を実行するターボ分子ポンプにおいて、
ハウジング内に設けられたポンプデバイスと、
監視されるべきターボ分子ポンプの部品に機械的に接続された振動ピックアップ(10)と、
振動ピックアップ(10)に電気的に接続され、受信した振動信号を比較値に基づいて評価し、好ましくは周波数フィルタ回路であるフィルタ(16)を有する評価ユニット(12)と、
制限値を超えた場合に信号を出力する、評価ユニット(12)に接続された出力装置(26)と
を備えることを特徴とするターボ分子ポンプ。
【請求項14】
評価ユニット(12)は信号処理するマイクロプロセサ(22)を備え、マイクロプロセサは好ましくはターボ分子ポンプのマイクロプロセサ(22)である
ことを特徴とする請求項13に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項15】
フィルタ(16)は、周波数を設定することにより対応する振動振幅を検出するようになしてあり、好ましくは相異なる周波数を設定することにより周波数可変である
ことを特徴とする請求項13又は14に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項16】
評価ユニット(12)は少なくとも1つの周波数に対する振動振幅を検出すべく動作する
ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項17】
評価ユニット(12)は比較値を記憶する記憶要素(24)を備える
ことを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項18】
ターボ分子ポンプのパラメータ及び/又は環境条件を判定する判定デバイスを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項19】
評価ユニット(12)は、検出したターボ分子ポンプのパラメータ及び/又は検出された環境条件に基づいて制限値を適合させる制限値適合デバイスを備える
ことを特徴とする請求項18に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項20】
評価ユニット(12)は遠隔データ送信システム(28)を介して監視ユニット(30)に接続されている
ことを特徴とする請求項13乃至19のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−544888(P2009−544888A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521180(P2009−521180)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056248
【国際公開番号】WO2008/012150
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(508206070)オーリコン レイボルド バキューム ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】