説明

ターボ分子ポンプ

【課題】 コネクタ部分の防滴を達成しつつ、コストダウンを図ることができるターボ分子ポンプの提供。
【解決手段】 ポンプ本体2設けられたハーメチックシールコネクタ10のピン111,112は、配線用プリント基板117に直接ハンダ付けされている。ピン111,112は、配線用プリント基板117の配線パターンおよびハーネス31,32を介して制御ユニット3の制御信号用プリント基板33および電力供給用プリント基板34に接続されている。制御信号用プリント基板33,電力供給用プリント基板34および配線用プリント基板117はケーシング35内に収納され、ケーシング35とベース部4との間はシール材36により封止されている。その結果、ハーメチックシールコネクタ10の防滴構造を安価に構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等の真空排気に用いられるターボ分子ポンプは、ポンプ本体とそのポンプ本体を制御する制御ユニットとからなる。一般的に、ポンプ本体は装置の真空チャンバに固定され、制御ユニットは真空チャンバから離れた場所に設置され、ポンプ本体と制御ユニットとの間はケーブルとコネクタプラグ機構とで接続される。また、ケーブルを用いることなく、ポンプ本体と制御ユニットとをコネクタプラグ機構で直接接続するターボ分子ポンプも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−173293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポンプ本体や半導体製造装置には水冷による冷却機構が設けられることが多く、コネクタプラグ機構には防滴構造を備えるものが用いられている。しかしながら、防滴仕様のプラグは高価なためにコストアップの要因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、ポンプ本体と、ポンプ本体を駆動制御する制御ユニットと、ポンプ本体に設けられ、制御ユニットからの電力や制御信号が入力されるコネクタとを備えるターボ分子ポンプに適用され、コネクタからポンプ本体の外側に突出するコネクタピンがプラグを用いず直接固設され、コネクタピンが接続される配線パターンが形成された基板と、制御ユニットの電子部品とコネクタピンとを接続する接続手段と、電子部品および基板が収納され、ポンプ本体に固定されるケーシングと、ポンプ本体と前記ケーシングとの固定部に配設されて、ポンプ本体とケーシングとの隙間を封止する封止材とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、ポンプ本体と、ポンプ本体を駆動制御する制御ユニットと、ポンプ本体に設けられ、制御ユニットからの電力や制御信号が入力されるコネクタとを備えるターボ分子ポンプに適用され、コネクタからポンプ本体の外側に突出するコネクタピンがプラグを用いず直接固設されるとともに、コネクタピンが接続される配線パターンが形成され、制御ユニットのケーシングに形成された開口部を塞ぐ基板と、ケーシングと基板との接続部に配設されて、ケーシングと基板との隙間を封止する封止材と、制御ユニットの電子部品とコネクタピンとを接続する接続手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コネクタピンが直接固設された基板を、制御ユニットのケーシング内に収納したり、ケーシングの開口を塞ぐように設けるようにしたので、高価な防滴プラグを必要とせず安価にコネクタの防滴構造を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明によるターボ分子の一実施の形態を示す図である。ターボ分子ポンプ1はポンプ本体2と制御ユニット3から成り、制御ユニット3はポンプ本体2のベース部4に固定されている。ポンプ本体2に設けられた吸気口フランジ5を半導体製造装置7の真空チャンバに固定することにより、ターボ分子ポンプ1が半導体製造装置7に取り付けられる。ポンプ本体2の排気ポート6にはバックポンプが接続される。
【0008】
図2はベース部4に固定された制御ユニット3の詳細を示す図であり、ベース部4の一部および制御ユニット3の断面を示している。なお、図2の(a)は制御ユニット3がベース部4に固定された状態を示しており、(b)は制御ユニット3を取り外した状態を示している。ベース部4には、ハーメチックシールコネクタ10が設けられている。制御ユニット3からポンプ本体2への電力供給および制御信号の伝達は、このハーメチックシールコネクタ10を介して行われる。
【0009】
図3はハーメチックシールコネクタ10の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はA−A断面図である。図示上側に配置された3つの太いピン111は電力供給用ピン、その下側に配置された複数の細いピン112は制御信号用ピンである。これらのピン111,112はインシュレータ部114を貫通するように設けられており、ピン111,112が設けられている部分はインシュレータ部114により気密構造とされている。
【0010】
ハーメチックシールコネクタ10をベース部4に取り付ける際には、図2(a)に示すように、ハーメチックシールコネクタ10とベース部4との間には、真空シールのためのシール材116が配設される。なお、従来は、ハーメチックシールコネクタ10の専用コネクタプラグをケーブルに装着し、ネジ部115を用いて専用コネクタプラグをハーメチックシールコネクタ10に接続するようにしている。
【0011】
本実施の形態のターボ分子ポンプでは、図2(a)に示すように、ハーメチックシールコネクタ10の各ピン111,112は配線用プリント基板117のスルーホールに挿入され、ハンダ付けされている。こられのピン111,112は、配線用プリント基板117の配線パターンおよびハーネス31,32を介して制御信号用プリント基板33および電力供給用プリント基板34に接続されている。
【0012】
プリント基板33,34および配線用プリント基板117は制御ユニット3のケーシング35に収納されており、ケーシング35はポンプ本体2のベース部4にボルト固定されている。ケーシング35とベース部4との間には、水密用のシール材36が配設されている。そのため、ポンプ本体側に設けられた冷却水系や装置の冷却水系に水漏れがあっても、制御ユニット3内に水分が浸入することはなく、ハーメチックシールコネクタ10の防滴構造が達成される。さらに、配線用プリント基板117にハーメチックシールコネクタ10に直接ハンダ付けすることにより、ポンプ本体2のハーメチックシールコネクタ10と制御ユニット3とを接続するようにしているので、従来のような高価な防滴型コネクタプラグが不要となり、ターボ分子ポンプのコストダウンを図ることができる。
【0013】
制御ユニット3のメンテナンスを行う場合には、図2(b)のようにボルト37をはずしてケーシング35をベース部4から取り外す。このとき、配線用プリント基板117はハーメチックシールコネクタ10側に取り残される。図4は、ケーシング35が取り外されたベース部4を示す斜視図である。本実施の形態では、ケーシング35は矩形状の開口部を有しているので、ベース部4の側面には矩形状の固定部4bが形成されている。その固定部4bには、シール材36が矩形状に配設され、ハーメチックシールコネクタ10にに取り付けられた配線用プリント基板117が露出している。
【0014】
[変形例1]
図5は本実施の形態の変形例1を示す図であり、図2の場合と同様にベース部4の一部および制御ユニット3の断面を示したものである。図5の(a)は制御ユニット3がベース部4に固定された状態を示しており、(b)は制御ユニット3を取り外した状態を示している。なお、図2と同様の部分には同一符号を付しており、以下では異なる部分を中心に説明する。
【0015】
変形例1においても、ハーメチックシールコネクタ10の各ピン111,112は配線用プリント基板117に直接ハンダ付けされている。また、ベース部4には制御ユニット3を固定するための固定用プレート41が取り付けられている。固定用プレート41には貫通孔41aが形成されており、各ピン111,112はこの貫通孔41aに貫挿されている。固定用プレート41には水密用のシール材42が設けられ、固定用プレート41とベース部4との間にはカラー43が配設されている。カラー43には、固定用プレート41をベース部4に固定するボルト44が貫挿される。
【0016】
水密用のシール材42が設けられた固定用プレート41を、ボルト44によりベース部4に固定すると、固定用プレート41とハーメチックシールコネクタ10のフランジ部との隙間がシール材42により封止される。固定用プレート41には、制御ユニット3のケーシング35がボルト固定される。ケーシング35と固定用プレート41との間には水密用のシール材45が配設される。
【0017】
その結果、固定用プレート41とケーシング35との間はシール材45で封止され、固定用プレート41とハーメチックシールコネクタ10との間はシール材42で封止され、制御ユニット3内は水密構造となる。また、ハーメチックシールコネクタ10のピン111,112は制御ユニット3内にあるため、コネクタ部分も防滴が達成されている。さらに、制御ユニット3とポンプ本体2とが一体化され小型化も図れる。
【0018】
変形例1の場合も、防滴型コネクタプラグを用いることなくハーメチックシールコネクタ10と制御ユニット3とを接続しているので、上述した実施の形態と同様にコストダウンを図ることができる。さらに、固定用プレート41を用いることにより、ベース部4に図4に示したような固定部4bを形成する必要がなく、ベース部外周面は円筒面のままで良い。そのため、さらにコストダウンを図れる。なお、制御ユニット3のメンテナンスを行う場合には、図5(b)に示すようにボルト37をはずしてケーシング35を固定用プレート41から取り外せば良い。
【0019】
[変形例2]
図6は本実施の形態の変形例2を示す図であり、図2の場合と同様にベース部4の一部および制御ユニット3の断面を示したものである。図6の(a)は制御ユニット3がベース部4に固定された状態を示しており、(b)は制御ユニット3を取り外した状態を示している。なお、図2と同様の部分には同一符号を付しており、以下では異なる部分を中心に説明する。
【0020】
変形例2の場合も、ハーメチックシールコネクタ10の各ピン111,112は配線用プリント基板117に直接ハンダ付けされている。制御ユニット3のケーシング35にはフランジ部351が形成されており、フランジ部351には水密用のシール材52が設けられている。ケーシング35をボルト37によりベース部4に固定する場合には、ボルト37にカラー50が貫挿される。すなわち、ケーシング35はカラー50を介してベース部4に取り付けられる。このとき、配線用プリント基板117はフランジ351に形成された開口351aを塞ぎ、フランジ351と配線用プリント基板117との間の隙間はシール材52により封止される。
【0021】
変形例2の場合、配線用プリント基板117のコネクタ側の面は制御ユニット3の外側に露出しているので、外側から配線用プリント基板117にアクセスすることができる。例えば、配線用プリント基板117の外側の面にローカルとリモートを切り換えるスイッチ51を設けることができる。この場合、破線矢印で示すように制御ユニット3の下側から容易にスイッチ51を操作することができる。通常、ケーシング35の表面に設ける一般的なパネル取り付け用のスイッチでは、水没しても大丈夫な程度の防滴構造となっているため割高となってしまうが、上述したスイッチ51の場合には水滴がかかる程度であるので、簡易的な防滴仕様で充分であり、スイッチに要するコストを従来よりも低減することができる。
【0022】
なお、符号Rで示した領域ではピン111,112が外部に露出しているので、ピン111,112に水滴等が掛からないように領域Rの部分を絶縁樹脂等でモールドするようにしても良い。
【0023】
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、ピン111,112はコネクタピンを、接続手段はハーネス31,32を、シール材36,45,52は封止材を、開口351aは開口部をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるターボ分子の一実施の形態を示す図である。
【図2】ベース部4に固定された制御ユニット3の詳細を示す図であり、(a)は制御ユニット3がベース部4に固定された状態を示しており、(b)は制御ユニット3を取り外した状態を示している。
【図3】ハーメチックシールコネクタ10の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はA−A断面図である。
【図4】ケーシング35が取り外されたベース部4を示す斜視図である。
【図5】変形例1を示す図である。
【図6】変形例2を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ターボ分子ポンプ
2 ポンプ本体
3 制御ユニット
4 ベース部
10 ハーメチックシールコネクタ
31,32 ハーネス
33 制御信号用プリント基板
34 電力供給用プリント基板
35 ケーシング
36,42,45,52,116 シール材
42 固定用プレート
51 スイッチ
111,112 ピン
114 インシュレータ部
117 配線用プリント基板
351 フランジ部
351a 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体を駆動制御する制御ユニットと、
前記ポンプ本体に設けられ、前記制御ユニットからの電力や制御信号が入力されるコネクタとを備えるターボ分子ポンプにおいて、
前記コネクタから前記ポンプ本体の外側に突出するコネクタピンがプラグを用いず直接固設され、前記コネクタピンが接続される配線パターンが形成された基板と、
前記制御ユニットの電子部品と前記配線パターンとを接続する接続手段と、
前記電子部品および前記基板が収納され、前記ポンプ本体に固定されるケーシングと、
前記ポンプ本体と前記ケーシングとの固定部に配設されて、前記ポンプ本体と前記ケーシングとの隙間を封止する封止材とを備えたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
【請求項2】
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体を駆動制御する制御ユニットと、
前記ポンプ本体に設けられ、前記制御ユニットからの電力や制御信号が入力されるコネクタとを備えるターボ分子ポンプにおいて、
前記コネクタから前記ポンプ本体の外側に突出するコネクタピンがプラグを用いず直接固設されるとともに、前記コネクタピンが接続される配線パターンが形成され、前記制御ユニットのケーシングに形成された開口部を塞ぐ基板と、
前記ケーシングと前記基板との接続部に配設されて、前記ケーシングと前記基板との隙間を封止する封止材と、
前記制御ユニットの電子部品と前記コネクタピンとを接続する接続手段とを備えたことを特徴とするターボ分子ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−250033(P2006−250033A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67543(P2005−67543)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】