説明

ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム

【課題】 半導体ウエハのダイシング工程〜半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて利用可能なダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを提供すること。
【解決手段】 ダイシングテープとウエハ裏面保護フィルムとを有するダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、ウエハ裏面保護フィルムは、染料を含有して着色されており、ウエハ裏面保護フィルム上にワークを貼着する工程と、ワークをダイシングしてチップ状ワークを形成する工程と、チップ状ワークをウエハ裏面保護フィルムとともに、ダイシングテープの粘着剤層から剥離する工程と、チップ状ワークを被着体にフリップチップボンディングにより固定する工程とを具備する半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムに関する。ウエハ裏面保護フィルムは、チップ状ワーク(半導体チップなど)の裏面の保護と、強度向上等のために用いられる。また本発明は、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置及び該装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置及びそのパッケージの薄型化、小型化がより一層求められている。そのため、半導体装置及びそのパッケージとして、半導体チップ(チップ状ワーク)が基板に、半導体チップの回路面が基板の電極形成面と対向する形態で固定されたもの(フリップチップボンディングにより製造されたもの;フリップチップ実装の半導体装置)が広く利用されている。このような半導体装置等では、半導体チップ(チップ状ワーク)の裏面を保護フィルムにより保護し、半導体チップの損傷等を防止している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−166451号公報
【特許文献2】特開2008−006386号公報
【特許文献3】特開2007−261035号公報
【特許文献4】特開2007−250970号公報
【特許文献5】特開2007−158026号公報
【特許文献6】特開2004−221169号公報
【特許文献7】特開2004−214288号公報
【特許文献8】特開2004−142430号公報
【特許文献9】特開2004−072108号公報
【特許文献10】特開2004−063551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体チップの裏面を保護する裏面保護フィルムを、半導体ウエハをダイシング工程でダイシングして得られた半導体チップの裏面に貼付するのは、その工程が追加されるため、工程数が増え、コスト等が増加することになる。また、近年の薄型化により、ダイシング工程の後の半導体チップのピックアップ工程で、半導体チップに損傷が生じる場合があり、ピックアップ工程までに半導体ウエハ又は半導体チップを補強させることが求められている。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体ウエハのダイシング工程から半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて利用することができるダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、半導体ウエハのダイシング工程において、優れた保持力を発揮することができ、半導体チップのフリップチップボンディング工程後には、マーキング性及び外観性を発揮することができるダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者等は、上記従来の問題点を解決すべく、鋭意検討した結果、基材及び粘着剤層を有するダイシングテープの粘着剤層上に、染料により着色されたウエハ裏面保護フィルムを積層して、ダイシングテープとウエハ裏面保護フィルムとを一体的に形成すると、このダイシングテープとウエハ裏面保護フィルムとが一体的に形成された積層体(ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム)は、半導体ウエハのダイシング工程から半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて利用することができ、また、半導体ウエハのダイシング工程において、優れた保持力を発揮することができ、半導体チップのフリップチップボンディング工程後には、マーキング性及び外観性を発揮することができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、基材、及び該基材上に形成された粘着剤層を有するダイシングテープと、該ダイシングテープの粘着剤層上に形成されたウエハ裏面保護フィルムとを有するダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムであって、前記ウエハ裏面保護フィルムが、染料を含有して着色されていることを特徴とするダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムである。
【0008】
このように、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、ウエハ裏面保護フィルムと、基材及び粘着剤層を有するダイシングテープとが一体となった形態で形成されており、且つウエハ裏面保護フィルムが着色されているので、ウエハ(半導体ウエハ)をダイシングする際にワーク(半導体ウエハ)にダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを貼着させることにより、ワークを保持させて有効にダイシングすることができる。また、ワークをダイシングしてチップ状ワーク(半導体チップ)を形成させた後、チップ状ワークを着色されたウエハ裏面保護フィルムとともにダイシングテープの粘着剤層から剥離させることにより、裏面が保護されたチップ状ワークを容易に得ることができ、しかも、チップ状ワークの裏面のマーキング性、外観性等を効果的に高めることができる。
【0009】
また、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムでは、前述のように、着色されたウエハ裏面保護フィルム(着色ウエハ裏面保護フィルム)が、色材(着色剤)として染料を用いて着色されているので、着色ウエハ裏面保護フィルム中には、色材が溶解して均一又はほぼ均一に分散した状態となっている。従って、着色濃度が均一又はほぼ均一な着色ウエハ裏面保護フィルム(ひいてはダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム)を容易に製造することができる。また、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおける着色ウエハ裏面保護フィルムは、着色濃度が均一又はほぼ均一とすることができるため、マーキング性や外観性が優れている。
【0010】
また、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、前述のように、ダイシングテープと着色ウエハ裏面保護フィルムが一体的に形成されているので、ダイシング工程の前にダイシングテープを半導体ウエハ裏面に貼着させる際に、着色ウエハ裏面保護フィルムも貼着させることができ、ウエハ裏面保護フィルムのみを貼着させる工程(ウエハ裏面保護フィルム貼着工程)を必要としない。しかも、その後のダイシング工程やピックアップ工程では、半導体ウエハの裏面又はダイシングにより形成された半導体チップの裏面には、着色ウエハ裏面保護フィルムが貼着されているので、半導体ウエハや半導体チップを有効に保護することができ、ダイシング工程やそれ以降の工程(ピックアップ工程など)において、半導体チップの損傷を抑制又は防止することができる。
【0011】
本発明において、前記着色されたウエハ裏面保護フィルムとしては、レーザーマーキング性を有していることが好ましい。本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、フリップチップ実装の半導体装置に好適に用いることができる。
【0012】
本発明は、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
前記のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの着色されたウエハ裏面保護フィルム上にワークを貼着する工程と、
前記ワークをダイシングしてチップ状ワークを形成する工程と、
前記チップ状ワークを前記着色されたウエハ裏面保護フィルムとともに、ダイシングテープの粘着剤層から剥離する工程と、
前記チップ状ワークを被着体にフリップチップボンディングにより固定する工程
とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、フリップチップ実装の半導体装置であって、前記のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いて作製され、且つチップ状ワークの裏面に、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムのウエハ裏面保護フィルムが貼着された構成を有していることを特徴とするフリップチップ実装の半導体装置を提供する。
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 基材、及び該基材上に形成された粘着剤層を有するダイシングテープと、該ダイシングテープの粘着剤層上に形成されたウエハ裏面保護フィルムとを有するダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
前記ウエハ裏面保護フィルムは、染料を含有して着色されており、
前記ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの着色されたウエハ裏面保護フィルム上にワークを貼着する工程と、
前記ワークをダイシングしてチップ状ワークを形成する工程と、
前記チップ状ワークを前記着色されたウエハ裏面保護フィルムとともに、ダイシングテープの粘着剤層から剥離する工程と、
前記チップ状ワークを被着体にフリップチップボンディングにより固定する工程
とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(2) 前記着色ウエハ裏面保護フィルム中の熱硬化性樹脂を硬化させる工程
をさらに具備し、
前記硬化させる工程は、前記剥離する工程よりも後に行なわれることを特徴とする上記(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(3) 前記チップ状ワークと前記被着体との間を封止材で封止する工程
をさらに具備し、
前記ウエハ裏面保護フィルムを構成している熱硬化性樹脂は、前記封止する工程において硬化される
ことを特徴とする上記(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(4) 前記ウエハ裏面保護フィルムにレーザーマークキングを行なう工程と、
前記着色ウエハ裏面保護フィルム中の熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、
をさらに具備し、
前記レーザーマークキングを行なう工程は、前記硬化させる工程よりも前におこなわれる工程であることを特徴とする上記(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(5) 前記ウエハ裏面保護フィルムにレーザーマークキングを行なう工程と、
前記チップ状ワークと前記被着体との間を封止材で封止する工程と
をさらに具備し、
前記レーザーマークキングを行なう工程は、前記封止する工程よりも前におこなわれる工程であり、
前記ウエハ裏面保護フィルムを構成している熱硬化性樹脂は、前記封止する工程において硬化される
ことを特徴とする上記(1)に記載の半導体装置の製造方法。
(6) 着色されたウエハ裏面保護フィルムが、レーザーマーキング性を有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(7) フリップチップ実装の半導体装置に用いられる上記(1)〜(6)のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムによれば、ダイシングテープと、ウエハ裏面保護フィルムが一体的に形成されているとともに、ウエハ裏面保護フィルムが着色されているので、半導体ウエハのダイシング工程から半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて利用することができる。具体的には、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、半導体ウエハのダイシング工程において、優れた保持力を発揮することができるとともに、半導体チップのフリップチップボンディング工程及びその後には、マーキング性及び外観性を発揮することができる。また、フリップチップボンディング工程等では、半導体チップの裏面が着色ウエハ裏面保護フィルムにより保護されているため、半導体チップの割れ、欠け、反りなどを有効に抑制又は防止することができる。もちろん、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、ダイシング工程から半導体チップのフリップチップボンディング工程以外の工程などでも、その機能を有効に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図1を参照しながら説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。図1は、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの一例を示す断面模式図である。図1において、1はダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム、2は着色されたウエハ裏面保護フィルム(単に「着色ウエハ裏面保護フィルム」と称する場合がある)、3はダイシングテープ、31は基材、32は粘着剤層である。
【0017】
なお、本明細書において、図には、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0018】
図1で示されるように、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1は、基材31と、該基材31上に形成された粘着剤層32とを有するダイシングテープ3の粘着剤層32上に、着色ウエハ裏面保護フィルム2が形成された構成を有している。なお、着色ウエハ裏面保護フィルム2の表面(ウエハの裏面に貼着される側の表面)は、ウエハ裏面に貼着されるまでの間、セパレータ等により保護されていても良い。
【0019】
なお、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、ダイシングテープの粘着剤層上において、着色ウエハ裏面保護フィルムが全面的に形成された構成であってもよく、着色ウエハ裏面保護フィルムが部分的に形成された構成であってもよい。例えば、図1で示されているように、ダイシングテープの粘着剤層上において、半導体ウエハを貼着させる部分のみに着色ウエハ裏面保護フィルムが形成された構成であってもよい。
【0020】
(着色ウエハ裏面保護フィルム)
着色ウエハ裏面保護フィルムはフィルム状の形態を有している。着色ウエハ裏面保護フィルムは、該着色ウエハ裏面保護フィルム上に貼着されているワーク(半導体ウエハ)をチップ状に切断する切断加工工程(ダイシング工程)では、ワークに密着して支持する機能を有しており、ダイシング工程の後に、ダイシングされたチップ状ワークを着色ウエハ裏面保護フィルムともにダイシングテープより剥離させた後では、チップ状ワーク(半導体チップ)の裏面を保護し、且つ優れたマーキング性及び外観性を発揮する機能を有することができる。このように、着色ウエハ裏面保護フィルムは、染料により着色されているので、優れたマーキング性を有しており、チップ状ワーク又は該チップ状ワークが用いられた半導体装置の非回路面側の面に、着色ウエハ裏面保護フィルムを介して、印刷方法やレーザーマーキング方法などの各種マーキング方法を利用することにより、マーキングを施し、文字情報や図形情報などの各種情報を付与させることができる。また、着色の色をコントロールすることにより、マーキングにより付与された情報(文字情報、図形情報など)を、優れた視認性で視認することが可能になる。また、着色ウエハ裏面保護フィルムは着色されているので、ダイシングテープと、着色ウエハ裏面保護フィルムとを、容易に区別することができ、作業性等を向上させることができる。
【0021】
また、着色ウエハ裏面保護フィルムは、優れた外観性を有しているので、付加価値のある外観の半導体装置とすることが可能となる。例えば、半導体装置として、製品別に色分けすることも可能である。
【0022】
なお、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、ワークの切断加工の際に、切断片を飛散させない密着性を有していることが重要である。
【0023】
このように、着色ウエハ裏面保護フィルムは、半導体チップを基板等の支持部材にダイボンドするために用いられるのではなく、フリップチップ実装される(又はフリップチップ実装された)半導体チップの裏面(非回路面)の保護等のために用いられ、そのための最適な機能や構成を有している。なお、半導体チップを基板等の支持部材に強固に接着させる用途で用いられるダイボンドフィルムは、接着剤層であり、封止材により封止されるため、着色されておらず、マーキング性(レーザーマーキング性)も有していない。従って、着色ウエハ裏面保護フィルムは、ダイボンドフィルムとは、異なる機能又は構成を有しており、ダイボンドフィルムとして利用することは適切でない。
【0024】
本発明では、着色ウエハ裏面保護フィルムは、樹脂組成物により形成することができ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物により構成されていることが好ましい。なお、着色ウエハ裏面保護フィルムは、熱硬化性樹脂が用いられていない熱可塑性樹脂組成物で構成されていても良く、熱可塑性樹脂が用いられていない熱硬化性樹脂組成物で構成されていても良い。
【0025】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が好ましい。
【0026】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下(好ましくは炭素数4〜18)の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。すなわち、本発明では、アクリル樹脂とは、メタクリル樹脂も含む広義の意味である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0027】
また、前記アクリル樹脂を形成するための他のモノマー(アルキル基の炭素数が30以下のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル以外のモノマー)としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸若しくはクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0028】
かかる樹脂は、公知の方法に従って合成して用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0029】
また、前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の他、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。熱硬化性樹脂としては、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等含有が少ないエポキシ樹脂が好適である。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂を好適に用いることができる。
【0030】
エポキシ樹脂としては、特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオンレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂若しくはグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0031】
エポキシ樹脂としては、前記例示のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0032】
エポキシ樹脂は、公知の方法に従って合成して用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0033】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。フェノール樹脂は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0034】
フェノール樹脂は、公知の方法に従って合成して用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0035】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5当量〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8当量〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0036】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒としては、特に制限されず、公知の熱硬化促進触媒の中から適宜選択して用いることができる。熱硬化促進触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化促進触媒としては、例えば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホウ素系硬化促進剤、リン−ホウ素系硬化促進剤などを用いることができる。
【0037】
本発明では、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含む樹脂組成物により形成されていることが好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。この場合の配合比は、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が10重量部〜300重量部の範囲から適宜選択することができる。
【0038】
着色ウエハ裏面保護フィルムは半導体ウエハの裏面(回路非形成面)に対して密着性を有していることが重要である。このような密着性を有している着色ウエハ裏面保護フィルムは、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成することができる。着色ウエハ裏面保護フィルムには、架橋させるために、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくことができる。これにより、高温下での密着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0039】
架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が好適である。架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。また、前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0041】
なお、架橋剤の使用量は、特に制限されず、架橋させる程度に応じて適宜選択することができる。具体的には、架橋剤の使用量としては、例えば、ポリマー成分(特に、分子鎖末端の官能基を有する重合体)100重量部に対し、通常0.05重量部〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の使用量がポリマー成分100重量部に対して0.05重量部〜7重量部であると、密着性や凝集性を高いレベルで発揮させることができる。
【0042】
なお、本発明では、架橋剤を用いる代わりに、あるいは、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施すことも可能である。
【0043】
本発明では、着色ウエハ裏面保護フィルムは着色されている。すなわち、着色ウエハ裏面保護フィルムは有色となっており、無色・透明ではない。着色ウエハ裏面保護フィルムにおいて、着色により呈している色としては特に制限されないが、例えば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましく、黒色であることがより好ましい。
【0044】
本発明において、濃色とは、基本的には、L*a*b*表色系で規定されるL*が、60以下(0〜60)[好ましくは50以下(0〜50)、より好ましくは40以下(0〜40)]となる濃い色のことを意味している。
【0045】
また、黒色とは、基本的には、L*a*b*表色系で規定されるL*が、35以下(0〜35)[好ましくは30以下(0〜30)、より好ましくは25以下(0〜25)]となる黒色系色のことを意味している。なお、黒色において、L*a*b*表色系で規定されるa*b*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも、−10〜10であることが好ましく、−5〜5であることがより好ましく、−3〜3の範囲(中でも0又はほぼ0)であることがさらに好ましい。
【0046】
なお、本発明において、L*a*b*表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(商品名「CR−200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L*a*b*)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L*a*b*表色系は、日本工業規格では、JISZ 8729に規定されている。
【0047】
着色ウエハ裏面保護フィルムを着色する際には、目的とする色に応じて、色材(着色剤)を用いることができる。このような色材としては、黒系色材、青系色材、赤系色材などの各種濃色系色材を好適に用いることができ、黒系色材がより好適である。色材としては、少なくとも染料を用いることが重要であり、好ましくは、顔料を用いずに、染料のみを用いることが重要である。色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、染料としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの形態の染料であっても用いることが可能である。なお、顔料を用いる場合は、本発明の効果を損なわない範囲で用いることが重要である。顔料としては、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
【0048】
色材としての染料としては、下記の色材の具体例の中から染料を適宜選択して用いることができる。また、顔料としては、下記の色材の具体例の中から顔料を適宜選択して用いることができる。
【0049】
黒系色材としては、特に制限されないが、例えば、無機の黒系顔料、黒系染料から適宜選択することができる。また、黒系色材としては、シアン系色材(青緑系色材)、マゼンダ系色材(赤紫系色材)およびイエロー系色材(黄系色材)が混合された色材混合物であってもよい。黒系色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。もちろん、黒系色材は、黒以外の色の色材と併用することもできる。
【0050】
具体的には、黒系色材としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などが挙げられる。
【0051】
黒系色材としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、同70、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24等のブラック系染料;C.I.ピグメントブラック1、同7等のブラック系顔料なども利用することができる。
【0052】
このような黒系色材としては、例えば、商品名「Oil Black BY」、商品名「OilBlack BS」、商品名「OilBlack HBB」、商品名「OilBlack 803」、商品名「OilBlack 860」、商品名「OilBlack 5970」、商品名「OilBlack 5906」、商品名「OilBlack 5905」(オリエント化学工業株式会社製)などが市販されている。
【0053】
黒系色材以外の色材としては、例えば、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などが挙げられる。
【0054】
シアン系色材としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95;C.I.アシッドブルー6、同45等のシアン系染料;C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同17:1、同18、同22、同25、同56、同60、同63、同65、同66;C.I.バットブルー4;同60、C.I.ピグメントグリーン7等のシアン系顔料などが挙げられる。
【0055】
また、マゼンダ系色材において、マゼンダ系染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同52、同58、同63、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同111、同121、同122;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同27;C.I.ディスパースバイオレット1;C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40;C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同14、同15、同21、同25、同26、同27、28などが挙げられる。
【0056】
マゼンダ系色材において、マゼンダ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同42、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50、同51、同52、同52:2、同53:1、同54、同55、同56、同57:1、同58、同60、同60:1、同63、同63:1、同63:2、同64、同64:1、同67、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同92、同101、同104、同105、同106、同108、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同147、同149、同150、同151、同163、同166、同168、同170、同171、同172、同175、同176、同177、同178、同179、同184、同185、同187、同190、同193、同202、同206、同207、同209、同219、同222、同224、同238、同245;C.I.ピグメントバイオレット3、同9、同19、同23、同31、同32、同33、同36、同38、同43、同50;C.I.バットレッド1、同2、同10、同13、同15、同23、同29、同35などが挙げられる。
【0057】
また、イエロー系色材としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等のイエロー系染料;C.I.ピグメントオレンジ31、同43;C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同23、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73、同74、同75、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同98、同100、同101、同104、同108、同109、同110、同113、同114、同116、同117、同120、同128、同129、同133、同138、同139、同147、同150、同151、同153、同154、同155、同156、同167、同172、同173、同180、同185、同195;C.I.バットイエロー1、同3、同20等のイエロー系顔料などが挙げられる。
【0058】
シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材を2種以上用いる場合、これらの色材の混合割合(または配合割合)としては、特に制限されず、各色材の種類や目的とする色などに応じて適宜選択することができる。
【0059】
なお、黒系色材として、シアン系色材、マゼンダ系色材およびイエロー系色材が混合された色材混合物を用いる場合、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、色材混合物中のシアン系色材、マゼンダ系色材およびイエロー系色材の混合割合(または配合割合)としては、黒色系色(例えば、L*a*b*表色系で規定されるL*、a*やb*が、前記範囲となる黒色系色)を呈することができれば特に制限されず、各色材の種類などに応じて適宜選択することができる。色材混合物中におけるシアン系色材、マゼンダ系色材およびイエロー系色材の各色材の含有割合は、例えば、色材の総量に対して、シアン系色材/マゼンダ系色材/イエロー系色材=10重量%〜50重量%/10重量%〜50重量%/10重量%〜50重量%(好ましくは20重量%〜40重量%/20重量%〜40重量%/20重量%〜40重量%)の範囲から適宜選択することができる。
【0060】
染料の含有量は、色材中、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0061】
色材の含有量は、着色ウエハ裏面保護フィルムを形成する樹脂組成物(溶剤又は溶媒を除く)中、例えば、0.1重量%〜10重量%の範囲から適宜選択することができ、0.5重量%〜8重量%が好ましく、1重量%〜5重量%がより好ましい。
【0062】
なお、着色ウエハ裏面保護フィルムには、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば、充填剤(フィラー)、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤の他、増量剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0063】
充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤のいずれであってもよいが、無機充填剤が好適である。無機充填剤等の充填剤の配合により、着色ウエハ裏面保護フィルムに導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を図ることができる。なお、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては導電性であっても、非導電性であってもよい。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、又は合金類、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末などが挙げられる。充填剤は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。充填剤としては、なかでも、シリカが好適であり、溶融シリカがより好適である。なお、無機充填剤の平均粒径は0.1μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、例えば、レーザー回折型粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0064】
前記充填剤(例えば、無機充填剤)の配合量は、有機樹脂成分の総量100重量部に対して150重量部以下(0重量部〜150重量部)であってもよく、100重量部以下(0重量部〜100重量部)であってもよい。また、本発明では、充填剤の配合量は、有機樹脂成分の総量100重量部に対して80重量部以下(0重量部〜80重量部)であることが好ましく、0重量部〜70重量部であることがより好ましい。
【0065】
また、前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。難燃剤は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。イオントラップ剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0066】
着色ウエハ裏面保護フィルムは、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂と、色材(着色剤)としての染料と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して樹脂組成物を調製し、フィルム状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、例えば、前記樹脂組成物を、ダイシングテープの粘着剤層上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記樹脂組成物を塗布して樹脂層を形成し、これをダイシングテープの粘着剤層上に転写(移着)する方法などにより、着色ウエハ裏面保護フィルムとしてのフィルム状の層を形成することができる。
【0067】
なお、着色ウエハ裏面保護フィルムが、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、着色ウエハ裏面保護フィルムは、半導体ウエハに適用する前の段階では、熱硬化性樹脂が未硬化又は部分硬化の状態である。この場合、半導体ウエハに適用後に(具体的には、通常、フリップチップボンディング工程で封止材をキュアする際に)、着色ウエハ裏面保護フィルム中の熱硬化性樹脂を完全に又はほぼ完全に硬化させる。
【0068】
このように、着色ウエハ裏面保護フィルムは、熱硬化性樹脂を含んでいても、該熱硬化性樹脂は未硬化又は部分硬化の状態であるため、着色ウエハ裏面保護フィルムのゲル分率としては、特に制限されないが、例えば、50重量%以下(0重量%〜50重量%)の範囲より適宜選択することができ、好ましくは30重量%以下(0重量%〜30重量%)であり、より好ましくは10重量%以下(0重量%〜10重量%)である。着色ウエハ裏面保護フィルムのゲル分率の測定方法は、以下の測定方法により測定することができる。
【0069】
<ゲル分率の測定方法>
着色ウエハ裏面保護フィルムから約0.1gをサンプリングして精秤し(試料の重量)、該サンプルをメッシュ状シートで包んだ後、約50mLのトルエン中に室温で1週間浸漬させる。その後、溶剤不溶分(メッシュ状シートの内容物)をトルエンから取り出し、130℃で約2時間乾燥させ、乾燥後の溶剤不溶分を秤量し(浸漬・乾燥後の重量)、下記式(a)よりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=[(浸漬・乾燥後の重量)/(試料の重量)]×100 (a)
【0070】
なお、着色ウエハ裏面保護フィルムのゲル分率は、樹脂成分の種類やその含有量、架橋剤の種類やその含有量の他、加熱温度や加熱時間などによりコントロールすることができる。
【0071】
着色ウエハ裏面保護フィルムは、着色されたフィルム状物であり、その着色形態は特に制限されない。着色ウエハ裏面保護フィルムは、例えば、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と、着色剤等を含む樹脂組成物により形成されたフィルム状物であってもよく、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂等を含む樹脂組成物により形成された樹脂層と、着色剤層とが積層された構成を有するフィルム状物であってもよい。着色剤層は、前記色材(染料)、ならびに、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂等を含有する樹脂組成物により形成されていることが好ましい。
【0072】
なお、着色ウエハ裏面保護フィルムが樹脂層と着色剤層との積層体である場合、積層形態の着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、樹脂層/着色剤層/樹脂層の順で積層された形態を有していることが好ましい。この場合、着色剤層の両側の2つの樹脂層は、同一の組成の樹脂層であってもよく、異なる組成の樹脂層であってもよい。
【0073】
本発明において、着色ウエハ裏面保護フィルムは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されたフィルム状物である場合、半導体ウエハに対する密着性を有効に発揮することができる。
【0074】
尚、ワーク(半導体ウエハ)のダイシング工程では切削水を使用することから、着色ウエハ裏面保護フィルムが吸湿して、常態以上の含水率になる場合がある。この様な高含水率のまま、フリップチップボンディングを行うと、着色ウエハ裏面保護フィルムとワーク又はその加工体(チップ状ワーク)との密着界面に水蒸気が溜まり、浮きが発生する場合がある。従って、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、透湿性の高いコア材料による層を有することにより、水蒸気が拡散して、かかる問題を回避することが可能となる。かかる観点から、着色ウエハ裏面保護フィルムは、その片面又は両面にコア材料による層を積層したものであってもよい。前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。
【0075】
着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さは特に限定されないが、例えば、5μm〜500μm程度の範囲から適宜選択することができる。本発明では、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さとしては、5μm〜150μm程度であることが好ましく、5μm〜100μm程度であることがより好ましい。なお、着色ウエハ裏面保護フィルムは、単層、積層の何れの形態であってもよい。
【0076】
本発明における着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、23℃における弾性率(引張貯蔵弾性率E’)が1GPa以上であることが好ましく、2GPa以上であることがより好ましく、3GPa以上であることがさらに好ましい。着色ウエハ裏面保護フィルムの弾性率が1GPa以上であると、チップ状ワークを着色ウエハ裏面保護フィルムとともに、ダイシングテープの粘着剤層から剥離させた後、着色ウエハ裏面保護フィルムを支持体上に載置して、輸送等を行った際に、着色ウエハ裏面保護フィルムが支持体に貼着してしまうことを抑制又は防止することができる。なお、着色ウエハ裏面保護フィルムが熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、前述のように、熱硬化性樹脂は、通常、未硬化又は部分硬化の状態であるので、着色ウエハ裏面保護フィルムの23℃における弾性率は、熱硬化性樹脂が未硬化状態又は部分硬化状態での23℃における弾性率となる。
【0077】
着色ウエハ裏面保護フィルムの23℃における弾性率(引張貯蔵弾性率E’)は、ダイシングテープに積層させずに、着色ウエハ裏面保護フィルムを作製し、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「Solid Analyzer RS A2」を用いて、引張モードにて、サンプル幅:10mm、サンプル長さ:22.5mm、サンプル厚さ:0.2mmで、周波数:1Hz、昇温速度:10℃/分、窒素雰囲気下、所定の温度(23℃)にて測定して、得られた引張貯蔵弾性率E’の値とする。
【0078】
着色ウエハ裏面保護フィルムの弾性率は、樹脂成分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)の種類やその含有量、シリカフィラー等の充填材の種類やその含有量などによりコントロールすることができる。
【0079】
また、着色ウエハ裏面保護フィルムにおける可視光(波長:400nm〜800nm)による光線透過率(可視光透過率)としては、特に制限されないが、例えば、20%以下(0%〜20%)の範囲であることが好ましく、10%(0%〜10%)であることがより好ましく、5%以下(0%〜5%)であることがさらに好ましい。着色ウエハ裏面保護フィルムは、可視光透過率が、20%以下であると、光線の通過による半導体素子への影響が小さい。
【0080】
なお、着色ウエハ裏面保護フィルムの可視光透過率(%)は、ダイシングテープに積層させずに、厚さ(平均厚さ):20μmの着色ウエハ裏面保護フィルムを作製し、該着色ウエハ裏面保護フィルム(厚さ:20μm)に、商品名「ABSORPTIONSPECTRO PHOTOMETR」(島津製作所製)を用いて、波長:400nm〜800nmの可視光線を所定の強度で照射し、透過した可視光線の強度を測定して、可視光線の着色ウエハ裏面保護フィルムの透過前後の強度変化より求めることができる。なお、20μmの厚さでない着色ウエハ裏面保護フィルムの可視光透過率(%;波長:400nm〜800nm)の値より、厚さ:20μmの着色ウエハ裏面保護フィルムの可視光透過率(%;波長:400nm〜800nm)を導き出すことも可能である。本発明では、着色ウエハ裏面保護フィルムの可視光透過率(%)を求める際の着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さ(平均厚さ)は20μmであるが、この着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さは、あくまでも着色ウエハ裏面保護フィルムの可視光透過率(%)を求める際の厚さであり、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおける着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さとは異なっていても同一であっても良い。
【0081】
なお、着色ウエハ裏面保護フィルムの可視光透過率(%)は、樹脂成分の種類やその含有量、着色剤(顔料や染料など)の種類やその含有量、充填材の種類やその含有量などによりコントロールすることができる。
【0082】
本発明では、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、吸湿率が低い方が好ましい。具体的には、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、温度:85℃で且つ湿度:85%RHの雰囲気下で168時間放置したときの吸湿率が、1重量%以下であることが好ましく、0.8重量%以下であることがより好ましい。着色ウエハ裏面保護フィルムの吸湿率(85℃且つ85%RHの雰囲気下で168時間放置後)を1重量%以下にすることにより、レーザーマーキング性を向上させることができる。また、例えば、リフロー工程に於いてボイドの発生などを抑制又は防止することもできる。着色ウエハ裏面保護フィルムの吸湿率は、例えば、無機フィラーの添加量を変化させることにより調整することができる。着色ウエハ裏面保護フィルムの吸湿率(重量%)は、温度:85℃で且つ湿度:85%RHの雰囲気下で168時間放置したときの重量変化により算出したものである。なお、着色ウエハ裏面保護フィルムの吸湿率としては、着色ウエハ裏面保護フィルムが熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合は、熱硬化後に、温度:85℃で且つ湿度:85%RHの雰囲気下で168時間放置したときの吸湿率である。
【0083】
また、本発明では、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、揮発分の割合が少ない方が好ましい。具体的には、着色ウエハ裏面保護フィルムとしては、温度:250℃で1時間加熱後の重量減少量の割合(重量減少率)が1重量%以下であることが好ましく、0.8重量%以下であることがより好ましい。着色ウエハ裏面保護フィルムの重量減少率(温度:250℃で1時間加熱後)を1重量%以下にすることにより、レーザーマーキング性を向上させることができる。また、例えば、リフロー工程に於いて、パッケージにクラックが発生するのを抑制又は防止することができる。着色ウエハ裏面保護フィルムの重量減少率は、例えば、鉛フリーハンダリフロー時のクラック発生を減少させることができる無機物、例えば、シリカやアルミナ等の無機系フィラーの添加により調整することができる。着色ウエハ裏面保護フィルムの重量減少率(重量%)は、温度:250℃で1時間の条件下で加熱したときの重量変化により算出したものである。なお、着色ウエハ裏面保護フィルムの重量減少率としては、着色ウエハ裏面保護フィルムが熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合は、熱硬化後に、温度:250℃で1時間の条件下で加熱したときの重量減少率である。
【0084】
前記着色ウエハ裏面保護フィルムは、セパレータ(剥離ライナー)により保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまで着色ウエハ裏面保護フィルムを保護する保護材としての機能を有している。また、セパレータは、更に、ダイシングテープの基材上の粘着剤層に着色ウエハ裏面保護フィルムを転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの着色ウエハ裏面保護フィルム上にワークを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレートなど)や紙等も使用可能である。なお、セパレータは従来公知の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に制限されない。
【0085】
(ダイシングテープ)
ダイシングテープは、基材及び該基材上に形成された粘着剤層により構成されている。このように、ダイシングテープは、基材と、粘着剤層とが積層された構成を有していればよい。基材(支持基材)は粘着剤層等の支持母体として用いることができる。基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体を用いることができる。本発明では、基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチック材における素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体等のエチレンをモノマー成分とする共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);セルロース系樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂などが挙げられる。また基材の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーも用いることができる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0086】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。
【0087】
基材の厚さは、特に制限されず強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1μm〜1000μm)、好ましくは1μm〜500μm、より好ましくは3μm〜300μm、さらに好ましくは5μm〜250μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層の形態又は積層された形態のいずれ形態を有していてもよい。
【0088】
基材の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0089】
なお、基材には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤など)が含まれていてもよい。
【0090】
粘着剤層は粘着剤により形成されており、粘着性を有している。このような粘着剤としては、特に制限されず、公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤(例えば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報等参照)の中から、前記特性を有する粘着剤を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)や、熱膨張性粘着剤を用いることもできる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0091】
本発明では、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を好適に用いることができ、アクリル系粘着剤がより好適である。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0092】
前記アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の何れであっても良い。
【0093】
なお、前記アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分(共重合性単量体成分)に対応する単位を含んでいてもよい。このような共重合性単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー等が挙げられる。これらの共重合性単量体成分は1種又は2種以上使用できる。
【0094】
粘着剤として放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を用いる場合、放射線硬化型粘着剤(組成物)としては、例えば、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するポリマーをベースポリマーとして用いた内在型の放射線硬化型粘着剤や、粘着剤中に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分が配合された放射線硬化型粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤として熱膨張性粘着剤を用いる場合、熱膨張性粘着剤としては、例えば、粘着剤と発泡剤(特に熱膨張性微小球)とを含む熱膨張性粘着剤などが挙げられる。
【0095】
本発明では、粘着剤層には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、粘着付与樹脂、着色剤、増粘剤、増量剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、架橋剤など)が含まれていても良い。
【0096】
前記架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられ、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が好適である。イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤の具体例としては、前記の着色ウエハ裏面保護フィルムの項で、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤として具体的に例示した化合物(具体例)などが挙げられる。架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、架橋剤の使用量は、特に制限されない。
【0097】
なお、本発明では、架橋剤を用いる代わりに、あるいは、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施すことも可能である。
【0098】
粘着剤層は、例えば、粘着剤(感圧接着剤)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、例えば、粘着剤および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記混合物を塗布して粘着剤層を形成し、これを基材上に転写(移着)する方法などにより、粘着剤層を形成することができる。
【0099】
粘着剤層の厚さは特に制限されず、例えば、5μm〜300μm(好ましくは5μm〜80μm、より好ましくは15μm〜50μm)程度である。粘着剤層の厚さが前記範囲内であると、適度な粘着力を発揮することができる。なお、粘着剤層は単層、複層の何れであってもよい。
【0100】
なお、本発明では、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムには、帯電防止能を持たせることができる。これにより、その密着時(接着時)及び剥離時等に於ける静電気の発生やそれによるワーク(半導体ウエハ等)の帯電で回路が破壊されること等を防止することができる。帯電防止能の付与は、基材、粘着剤層乃至着色ウエハ裏面保護フィルムへ帯電防止剤や導電性物質を添加する方法、基材への電荷移動錯体や金属膜等からなる導電層を付設する方法等、適宜な方式で行うことができる。これらの方式としては、半導体ウエハを変質させるおそれのある不純物イオンが発生しにくい方式が好ましい。導電性の付与、熱伝導性の向上等を目的として配合される導電性物質(導電フィラー)としては、銀、アルミニウム、金、銅、ニッケル、導電性合金等の球状、針状、フレーク状の金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、前記着色ウエハ裏面保護フィルムは、非導電性であることが、電気的にリークしないようにできる点から好ましい。
【0101】
本発明においては、ダイシングテープは、前記のようにして作製して用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0102】
また、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シート(フィルム)が積層された形態で形成されていてもよい。例えば、ロール状に巻回された形態を有している場合、着色ウエハ裏面保護フィルムを、必要に応じてセパレータにより保護した状態でロール状に巻回して、ロール状に巻回された状態又は形態のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムとして作製することができる。なお、ロール状に巻回された状態又は形態のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムとしては、基材と、前記基材の一方の面に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層上に形成された着色ウエハ裏面保護フィルムと、前記基材の他方の面に形成された剥離処理層(背面処理層)とで構成されていてもよい。
【0103】
なお、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの厚さ(着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、基材及び粘着剤層からなるダイシングテープの厚さの総厚)としては、例えば、11μm〜300μmの範囲から選択することができ、好ましくは15μm〜200μm(より好ましくは20μm〜150μm)である。
【0104】
ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおいて、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、ダイシングテープの粘着剤層の厚さとの比としては、特に制限されないが、例えば、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さ/ダイシングテープの粘着剤層の厚さ=150/5〜3/100の範囲から適宜選択することができ、好ましくは100/5〜3/50であり、より好ましくは60/5〜3/40である。着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、ダイシングテープの粘着剤層の厚さとの比が、前記範囲内であると、適度な粘着力を発揮することができ、優れたダイシング性やピックアップ性を発揮することができる。
【0105】
また、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおいて、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、ダイシングテープの厚さ(基材及び粘着剤層の総厚)との比としては、特に制限されないが、例えば、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さ/ダイシングテープの厚さ=150/50〜3/500の範囲から適宜選択することができ、好ましくは100/50〜3/300であり、より好ましくは60/50〜3/150である。着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さ/ダイシングテープの厚さが、150/50〜3/500の範囲であると、ピックアップ性が良好であり、且つ、ダイシング時に側面残渣が生じることを抑制又は防止することができる。
【0106】
このように、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおいて、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、ダイシングテープの粘着剤層の厚さとの比や、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、ダイシングテープの厚さ(基材及び粘着剤層の総厚)との比をコントロールすることにより、ダイシング工程時のダイシング性、ピックアップ工程時のピックアップ性などを向上させることができ、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを、半導体ウエハのダイシング工程から半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて有効に利用することができる。
【0107】
(ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの製造方法)
本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの製造方法について、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1を例にして説明する。先ず、基材31は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0108】
次に、基材31上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)粘着剤層32を形成する。塗布方式としては、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。なお、粘着剤層組成物を直接基材31に塗布して、基材31上に粘着剤層32を形成してもよく、また、粘着剤組成物を表面に剥離処理を行った剥離紙等に塗布して粘着剤層を形成させた後、該粘着剤層を基材31に転写させて、基材31上に粘着剤層32を形成してもよい。このように、基材31上に粘着剤層32を形成することにより、ダイシングテープ3を作製する。
【0109】
一方、着色ウエハ裏面保護フィルム2を形成する為の形成材料を剥離紙上に乾燥後の厚みが所定厚みとなる様に塗布し、更に所定条件下で乾燥して(熱硬化が必要な場合などでは、必要に応じて加熱処理を施し乾燥して)、塗布層を形成する。この塗布層を前記粘着剤層32上に転写することにより、着色ウエハ裏面保護フィルム2を粘着剤層32上に形成する。なお、前記粘着剤層32上に、着色ウエハ裏面保護フィルム2を形成する為の形成材料を直接塗布した後、所定条件下で乾燥する(熱硬化が必要な場合などでは、必要に応じて加熱処理を施して乾燥する)ことによっても、着色ウエハ裏面保護フィルム2を粘着剤層32上に形成することができる。以上により、本発明に係るダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1を得ることができる。なお、着色ウエハ裏面保護フィルム2を形成する際に熱硬化を行う場合、部分硬化の状態となる程度で熱硬化を行うことが重要であるが、好ましくは熱硬化を行わない。
【0110】
本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、フリップチップボンディング工程を具備する半導体装置の製造の際に好適に用いることができる。すなわち、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、フリップチップ実装の半導体装置を製造する際に用いられ、半導体チップの裏面に、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの着色ウエハ裏面保護フィルムが貼着している状態又は形態で、フリップチップ実装の半導体装置が製造される。従って、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、フリップチップ実装の半導体装置(半導体チップが基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式で固定された状態又は形態の半導体装置)に対して用いることができる。
【0111】
(半導体ウエハ)
ワーク(半導体ウエハ)としては、公知乃至慣用の半導体ウエハであれば特に制限されず、各種素材の半導体ウエハから適宜選択して用いることができる。本発明では、半導体ウエハとしては、シリコンウエハを好適に用いることができる。
【0112】
(半導体装置の製造方法)
本発明の半導体装置の製造方法は、前記ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置の製造方法であれば特に制限されないが、例えば、下記の工程を具備する製造方法などが挙げられる。
前記ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの着色されたウエハ裏面保護フィルム上にワークを貼着する工程(マウント工程)
前記ワークをダイシングしてチップ状ワークを形成する工程(ダイシング工程)
前記チップ状ワークを前記着色されたウエハ裏面保護フィルムとともに、ダイシングテープの粘着剤層から剥離する工程(ピックアップ工程)
前記チップ状ワークを被着体にフリップチップボンディングにより固定する工程(フリップチップボンディング工程)
【0113】
より具体的には、半導体装置の製造方法としては、例えば、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを、着色ウエハ裏面保護フィルム上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離して、次の様に使用することにより、半導体装置を製造することができる。なお、以下では、図2を参照しながらダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1を用いた場合を例にして説明する。
【0114】
図2は、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面模式図である。図2において、4はワーク(半導体ウエハ)、5はチップ状ワーク(半導体チップ)、51は半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ、6は被着体、61は被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材61であり、1、2、3、31、32は前記と同様に、それぞれ、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム、着色ウエハ裏面保護フィルム、ダイシングテープ、基材、粘着剤層である。
【0115】
(マウント工程)
先ず、図2(a)で示されるように、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1における着色ウエハ裏面保護フィルム2上に半導体ウエハ(ワーク)4を貼着し(圧着し)、これを密着保持させて固定する(マウント工程)。なお、本工程は、通常、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行われる。
【0116】
(ダイシング工程)
次に、図2(b)で示されるように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化(小片化)し、半導体チップ(チップ状ワーク)5を製造する。ダイシングは、例えば、半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えば、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1まで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本発明では、ダイシング工程では、ワークはフルカット(完全切断)することが重要であり、この際、着色ウエハ裏面保護フィルムも完全切断させて、ワークを着色ウエハ裏面保護フィルムとともにダイシングすることが重要である。すなわち、本工程は、ワークを着色ウエハ裏面保護フィルムとともにダイシングしてチップ状ワークを形成する工程であることが重要である。なお、ワークを着色ウエハ裏面保護フィルムとともにダイシングする際には、ダイシングテープには切り込みをいれない形態や、ダイシングテープにも少なくとも部分的に(好ましくは、ダイシングテープが切断されない程度に部分的に)切り込みをいれる形態で、ダイシングを行うことができる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1により密着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。なお、着色ウエハ裏面保護フィルム2がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成されていると、ダイシングにより切断されても、その切断面において着色ウエハ裏面保護フィルムの糊はみ出しが生じるのを抑制又は防止することができる。その結果、切断面同士が再付着(ブロッキング)することを抑制又は防止することができ、後述のピックアップを一層良好に行うことができる。
【0117】
なお、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムのエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを下方へ押し下げることが可能なドーナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さくダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、後述のピックアップ工程において、隣り合う半導体チップ同士が接触して破損するのを防ぐことが出来る。
【0118】
(ピックアップ工程)
ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1に密着固定された半導体チップ5を回収する為に、図2(c)で示されるように、半導体チップ5のピックアップを行って、半導体チップ5を着色ウエハ裏面保護フィルム2とともにダイシングテープ3より剥離させる。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム1の基材31側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。なお、ピックアップされた半導体チップ5は、その裏面(非回路面、非電極形成面などとも称される)が着色ウエハ裏面保護フィルム2により保護されている。
【0119】
(フリップチップボンディング工程)
ピックアップした半導体チップ5は、図2(d)で示されるように、基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式(フリップチップ実装方式)により固定させる。具体的には、半導体チップ5を、半導体チップ5の回路面(表面、回路パターン形成面、電極形成面などとも称される)が被着体6と対向する形態で、被着体6に常法に従い固定させる。例えば、半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ51を、被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)61に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、半導体チップ5と被着体6との電気的導通を確保し、半導体チップ5を被着体6に固定させることができる。なお、このような半導体チップ5の被着体6への固定に際しては、半導体チップ5と被着体6との対向面や間隙を洗浄し、該間隙に封止材(封止樹脂など)を充填させることが重要である。
【0120】
被着体としては、リードフレームや回路基板(配線回路基板など)等の各種基板を用いることができる。このような基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板等が挙げられる。
【0121】
フリップチップボンディングにおいて、バンプや導電材の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0122】
なお、本工程では、導電材を溶融させて、半導体チップ5の回路面側のバンプと、被着体6の表面の導電材とを接続させているが、この導電材の溶融時の温度としては、通常、260℃程度(例えば、250℃〜300℃)となっている。本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、着色ウエハ裏面保護フィルムをエポキシ樹脂等により形成することにより、このフリップチップボンディング工程における高温にも耐えられる耐熱性を有するものとすることができる。
【0123】
また、フリップチップボンディングにおいて、半導体チップ5と被着体6との対向面(電極形成面)や間隙を洗浄する際に用いられる洗浄液としては、特に制限されず、有機系の洗浄液であってもよく、水系の洗浄液であってもよい。本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおける着色ウエハ裏面保護フィルムは、洗浄液に対する耐溶剤性を有しており、これらの洗浄液に対して実質的に溶解性を有していない。そのため、前述のように、洗浄液としては、各種洗浄液を用いることができ、特別な洗浄液を必要とせず、従来の方法により洗浄させることができる。
【0124】
また、本発明において、フリップチップボンディングにおいて、半導体チップ5と被着体6との間隙を封止する際に用いられる封止材としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されず、公知の封止樹脂等の封止材から適宜選択して用いることができる。封止樹脂としては、弾性を有する絶縁樹脂であることが好ましい。封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記に例示のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物による封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂など)や、熱可塑性樹脂などが含まれていても良い。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができ、このようなフェノール樹脂としては、前記に例示のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0125】
封止樹脂による封止工程では、通常、加熱させて封止樹脂を硬化させて封止させる。なお、封止樹脂の硬化は、通常、175℃で60秒間〜90秒間行われる場合が多いが、本発明ではこれに限定されず、例えば165℃〜185℃で、数分間キュアすることができる。なお、着色ウエハ裏面保護フィルムが、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、この封止樹脂のキュアの際に、着色ウエハ裏面保護フィルムを構成している熱硬化性樹脂を完全又はほぼ完全に硬化させることができる。
【0126】
なお、半導体チップ5と被着体6との空隙間距離は、一般的に、30μm〜300μm程度である。
【0127】
本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いて製造された半導体装置(フリップチップ実装の半導体装置)は、チップ状ワークの裏面に着色ウエハ裏面保護フィルムが貼着されているため、各種マーキングを優れた視認性で施すことができる。特に、マーキング方法がレーザーマーキング方法であっても、優れたコントラスト比でマーキングを施すことができ、レーザーマーキングにより施された各種情報(文字情報、図研情報など)を良好に視認することが可能である。なお、レーザーマーキングを行う際には、公知のレーザーマーキング装置を利用することができる。また、レーザーとしては、気体レーザー、個体レーザー、液体レーザーなどの各種レーザーを利用することができる。具体的には、気体レーザーとしては、特に制限されず、公知の気体レーザーを利用することができるが、炭酸ガスレーザー(COレーザー)、エキシマレーザー(ArFレーザー、KrFレーザー、XeClレーザー、XeFレーザーなど)が好適である。また、固体レーザーとしては、特に制限されず、公知の固体レーザーを利用することができるが、YAGレーザー(Nd:YAGレーザーなど)、YVOレーザーが好適である。
【0128】
本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いて製造されたフリップチップ実装の半導体装置は、フリップチップ実装方式で実装された半導体装置であるので、ダイボンディング実装方式で実装された半導体装置よりも、薄型化、小型化された形状となっており、各種の電子機器・電子部品又はそれらの材料・部材として好適に用いることができる。具体的には、本発明のフリップチップ実装の半導体装置が利用される電子機器としては、いわゆる「携帯電話」や「PHS」、小型のコンピュータ(例えば、いわゆる「PDA」(携帯情報端末)、いわゆる「ノートパソコン」、いわゆる「ネットブック(商標)」、いわゆる「ウェアラブルコンピュータ」など)、「携帯電話」及びコンピュータが一体化された形態の小型の電子機器、いわゆる「デジタルカメラ(商標)」、いわゆる「デジタルビデオカメラ」、小型のテレビ、小型のゲーム機器、小型のデジタルオーディオプレイヤー、いわゆる「電子手帳」、いわゆる「電子辞書」、いわゆる「電子書籍」用電子機器端末、小型のデジタルタイプの時計などのモバイル型の電子機器(持ち運び可能な電子機器)などが挙げられるが、もちろん、モバイル型以外(設置型など)の電子機器(例えば、いわゆる「ディスクトップパソコン」、薄型テレビ、録画・再生用電子機器(ハードディスクレコーダー、DVDプレイヤー等)、プロジェクター、マイクロマシンなど)などであってもよい。また、電子部品又は、電子機器・電子部品の材料・部材としては、特に制限されず、例えば、いわゆる「CPU」の部材、各種記憶装置(いわゆる「メモリー」、ハードディスクなど)の部材などが挙げられる。
【実施例】
【0129】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。また、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0130】
実施例1
<着色ウエハ裏面保護フィルムの作製>
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「パラクロンW−197CM」、根上工業株式会社製):100部に対して、エポキシ樹脂(商品名「エピコート1004」、JER株式会社製):113部、フェノール樹脂(商品名「ミレックスXLC−4L」、三井化学株式会社製):121部、球状シリカ(商品名「SO−25R」、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.5μm):246部、染料1(商品名「OIL GREEN 502」、オリエント化学工業株式会社製):5部、染料2(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製):5部をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が23.6重量%となる樹脂組成物の溶液を調製した。
【0131】
この樹脂組成物の溶液を、剥離ライナ(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ(平均厚さ)20μmの着色ウエハ裏面保護フィルムAを作製した。
【0132】
<ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの作製>
上記着色ウエハ裏面保護フィルムAを、ダイシングテープ(商品名「V−8−T」日東電工株式会社製;基材の平均厚さ:65μm、粘着剤層の平均厚さ:10μm)の粘着剤層上に、ハンドローラーを用いて貼り合せ、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを作製した。
【0133】
実施例2
<着色ウエハ裏面保護フィルムの作製>
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「パラクロンW−197CM」、根上工業株式会社製):100部に対して、エポキシ樹脂(商品名「エピコート1004」、JER株式会社製):113部、フェノール樹脂(商品名「ミレックスXLC−4L」、三井化学株式会社製):121部、球状シリカ(商品名「SO−25R」、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.5μm):246部、染料1(商品名「OIL GREEN 502」、オリエント化学工業株式会社製):10部、染料2(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製):10部をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が23.6重量%となる樹脂組成物の溶液を調製した。
【0134】
この樹脂組成物の溶液を、剥離ライナ(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ(平均厚さ)20μmの着色ウエハ裏面保護フィルムBを作製した。
【0135】
<ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの作製>
上記着色ウエハ裏面保護フィルムBを、ダイシングテープ(商品名「V−8−T」日東電工株式会社製;基材の平均厚さ:65μm、粘着剤層の平均厚さ:10μm)の粘着剤層上に、ハンドローラーを用いて貼り合せ、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを作製した。
【0136】
実施例3
<着色ウエハ裏面保護フィルムの作製>
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「パラクロンW−197CM」、根上工業株式会社製):100部に対して、エポキシ樹脂(商品名「エピコート1004」、JER株式会社製):32部、フェノール樹脂(商品名「ミレックスXLC−4L」、三井化学株式会社製):35部、球状シリカ(商品名「SO−25R」、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.5μm):90部、染料1(商品名「OIL GREEN 502」、オリエント化学工業株式会社製):3部、染料2(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製):3部をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が23.6重量%となる樹脂組成物の溶液を調製した。
【0137】
この樹脂組成物の溶液を、剥離ライナ(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ(平均厚さ)20μmの着色ウエハ裏面保護フィルムCを作製した。
【0138】
<ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの作製>
上記着色ウエハ裏面保護フィルムCを、ダイシングテープ(商品名「V−8−T」日東電工株式会社製;基材の平均厚さ:65μm、粘着剤層の平均厚さ:10μm)の粘着剤層上に、ハンドローラーを用いて貼り合せ、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを作製した。
【0139】
なお、実施例1〜3に係るダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおいて、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さ(平均厚さ)は20μmである。また、ダイシングテープ(商品名「V−8−T」日東電工株式会社製)は、基材の厚さ(平均厚さ)が65μmであり、粘着剤層の厚さ(平均厚さ)が10μmであり、総厚が75μmである。従って、実施例1〜3に係るダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおいて、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、ダイシングテープの粘着剤層の厚さとの比(着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さ/ダイシングテープの粘着剤層の厚さ;平均厚さの比)は、20/10であり、着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さと、ダイシングテープの厚さ(基材及び粘着剤層の総厚)との比(着色ウエハ裏面保護フィルムの厚さ/ダイシングテープの厚さ;平均厚さの比)は、20/75である。
【0140】
(評価1:ウエハ裏面保護フィルムの物性測定)
実施例1〜3で作製したダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにおけるウエハ裏面保護フィルム(着色ウエハ裏面保護フィルム)ついて、可視光透過率(%)、吸湿率(重量%)、重量減少率(重量%)を測定した。測定結果は表1に示した。
【0141】
<可視光透過率の測定方法>
実施例1〜3で作製された着色ウエハ裏面保護フィルム(着色ウエハ裏面保護フィルムA〜着色ウエハ裏面保護フィルムC)(厚さ:20μm)に、商品名「ABSORPTIONSPECTRO PHOTOMETR」(島津製作所製)を用いて、波長:400nm〜800nmの可視光線を所定の強度で照射し、透過した可視光線の強度を測定して、可視光線の着色ウエハ裏面保護フィルムの透過前後の強度変化より、可視光透過率(%)を求めた。
【0142】
<吸湿率の測定方法>
実施例1〜3で作製された着色ウエハ裏面保護フィルム(着色ウエハ裏面保護フィルムA〜着色ウエハ裏面保護フィルムC)を、温度:85℃、湿度:85%RHの恒温恒湿槽に168時間放置して、放置前後の重量減少率から、吸水率(重量%)を求めた。
【0143】
<重量減少率の測定方法>
実施例1〜3で作製された着色ウエハ裏面保護フィルム(着色ウエハ裏面保護フィルムA〜着色ウエハ裏面保護フィルムC)を、温度:250℃の乾燥機に1時間放置して、放置前後の重量(重量減少量)から、重量減少率(重量%)を求めた。
【0144】
(評価2)
また、実施例1〜3で作製したダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムについて、着色ウエハ裏面保護フィルムの弾性率、ダイシング性、ピックアップ性、フリップチップボンディング性、ウエハ裏面のマーキング性、ウエハ裏面の外観性を、下記の評価又は測定方法により評価又は測定した。評価又は測定結果は表2に併記した。
【0145】
<着色ウエハ裏面保護フィルムの弾性率の測定方法>
着色ウエハ裏面保護フィルムの弾性率は、ダイシングテープに積層させずに、着色ウエハ裏面保護フィルムを作製し、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「Solid Analyzer RS A2」を用いて、引張モードにて、サンプル幅:10mm、サンプル長さ:22.5mm、サンプル厚さ:0.2mmで、周波数:1Hz、昇温速度:10℃/分、窒素雰囲気下、所定の温度(23℃)にて測定し、得られた引張貯蔵弾性率E’の値とした。
【0146】
<ダイシング性・ピックアップ性の評価方法>
実施例1〜3のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いて、以下の要領で、実際に半導体ウエハのダイシングを行ってダイシング性を評価し、その後に剥離性の評価を行い、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムのダイシング性能とピックアップ性能を評価とした。
【0147】
半導体ウエハ(直径8インチ、厚さ0.6mm;シリコンミラーウエハ)を裏面研磨処理し、厚さ0.2mmのミラーウエハをワークとして用いた。ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムからセパレータを剥離した後、その着色ウエハ裏面保護フィルム上にミラーウエハ(ワーク)を70℃でロール圧着して貼り合わせ、更にダイシングを行った。また、ダイシングは10mm角のチップサイズとなる様にフルカットした。なお、半導体ウエハ研削条件、貼り合わせ条件、ダイシング条件は、下記のとおりである。
【0148】
(半導体ウエハ研削条件)
研削装置:商品名「DFG−8560」ディスコ社製
半導体ウエハ:8インチ径(厚さ0.6mmから0.2mmに裏面研削)
(貼り合わせ条件)
貼り付け装置:商品名「MA−3000III」日東精機株式会社製
貼り付け速度計:10mm/min
貼り付け圧力:0.15MPa
貼り付け時のステージ温度:70℃
(ダイシング条件)
ダイシング装置:商品名「DFD−6361」ディスコ社製
ダイシングリング:「2−8−1」(ディスコ社製)
ダイシング速度:30mm/sec
ダイシングブレード:
Z1;ディスコ社製「203O−SE 27HCDD」
Z2;ディスコ社製「203O−SE 27HCBB」
ダイシングブレード回転数:
Z1;40,000r/min
Z2;45,000r/min
カット方式:ステップカット
ウエハチップサイズ:10.0mm角
【0149】
このダイシングで、ミラーウエハ(ワーク)が剥離せずにダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムにしっかりと保持され、ダイシングを良好に行うことができたどうかを確認し、ダイシングを良好に行うことができた場合を「○」とし、ダイシングを良好に行うことができなかった場合を「×」として、ダイシング性を評価した。
【0150】
次に、ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムのダイシングテープ側からニードルで突き上げて、ダイシングにより得られたチップ状ワークを着色ウエハ裏面保護フィルムとともにダイシングテープの粘着剤層より剥離させて、裏面が着色ウエハ裏面保護フィルムにより保護された状態のチップ状ワークをピックアップさせた。この時のチップ(全個数:400個)のピックアップ率(%)を求め、ピックアップ性を評価した。従って、ピックアップ性は、ピックアップ率が100%に近いほど良好である。
【0151】
なお、ピックアップ条件は、下記のとおりである。
(半導体ウエハピックアップ条件)
ピックアップ装置:商品名「SPA−300」株式会社新川社製
ピックアップニードル本数:9本
ニードル突き上げ速度:20mm/s
ニードル突き上げ量 :500μm
ピックアップ時間:1秒
ダイシングテープ エキスパンド量 : 3mm
【0152】
<フリップチップボンディング性の評価方法>
各実施例に係るダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いて、前記の<ダイシング性・ピックアップ性の評価方法>により得られた各実施例に係るチップ状ワークについて、チップ状ワークの表面(回路面)が、該回路面に対応した配線を備えた回路基板の表面に対向する形態で、チップ状ワークの回路面に形成されているバンプが、回路基板の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田)と接触させて押圧しながら、温度を260℃まで上げて導電材を溶融させ、その後、室温まで冷却させることにより、チップ状ワークを回路基板に固定させて、半導体装置を作製した。この際のフリップチップボンディング性について、下記の評価基準により評価した。
【0153】
(フリップチップボンディング性の評価基準)
○:問題なく、フリップチップボンディング方法により、実装できる
×:フリップチップボンディング方法により、実装できない
【0154】
<ウエハ裏面のマーキング性の評価方法>
前記の<フリップチップボンディング性の評価方法>により得られた半導体装置におけるチップ状ワークの裏面(すなわち、着色ウエハ裏面保護フィルムの表面)に、YAGレーザーによりレーザーマーキングを施し、該レーザーマーキングにより得られた情報(バーコード情報)について、下記の評価基準により、各実施例に係るダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いて得られた半導体装置のレーザーマーキング性を評価した。
【0155】
(レーザーマーキング性の評価基準)
○:無作為に選んだ成人10人中、レーザーマーキングにより得られた情報を良好に視認できると判断した人数が8人以上である
×:無作為に選んだ成人10人中、レーザーマーキングにより得られた情報を良好に視認できると判断した人数が7人以下である
【0156】
<ウエハ裏面の外観性の評価方法>
各実施例に係るダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いて、前記の<ダイシング性・ピックアップ性の評価方法>により得られた各実施例に係るチップ状ワークについて、該チップ状ワークの裏面の外観性を、下記の評価基準により目視により評価した。
【0157】
(外観性の評価基準)
○:チップ状ワークにおけるウエハ(シリコンウエハ)の裏面と着色ウエハ裏面保護フィルムと間に剥離(浮き)が無い
×:チップ状ワークにおけるウエハ(シリコンウエハ)の裏面と着色ウエハ裏面保護フィルムと間に剥離(浮き)がある
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
表2より、実施例1〜3に係るダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、ダイシングテープとしての機能と、ウエハ裏面保護フィルムとしての機能を、優れたレベルで備えていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、ダイシングテープと、ウエハ裏面保護フィルムが一体的に形成されているとともに、ウエハ裏面保護フィルムが着色されているので、半導体ウエハのダイシング工程から半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて利用することができる。すなわち、本発明のダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムは、フリップチップボンディング方法により半導体装置を製造する際に、ダイシングテープおよびウエハ裏面保護フィルムの両機能を備えたダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0162】
1 ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルム
2 着色ウエハ裏面保護フィルム
3 ダイシングテープ
31 基材
32 粘着剤層
4 半導体ウエハ(ワーク)
5 半導体チップ(チップ状ワーク)
51 半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ
6 被着体
61 被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、及び該基材上に形成された粘着剤層を有するダイシングテープと、該ダイシングテープの粘着剤層上に形成されたウエハ裏面保護フィルムとを有するダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
前記ウエハ裏面保護フィルムは、染料を含有して着色されており、
前記ダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムの着色されたウエハ裏面保護フィルム上にワークを貼着する工程と、
前記ワークをダイシングしてチップ状ワークを形成する工程と、
前記チップ状ワークを前記着色されたウエハ裏面保護フィルムとともに、ダイシングテープの粘着剤層から剥離する工程と、
前記チップ状ワークを被着体にフリップチップボンディングにより固定する工程
とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記着色ウエハ裏面保護フィルム中の熱硬化性樹脂を硬化させる工程
をさらに具備し、
前記硬化させる工程は、前記剥離する工程よりも後に行なわれることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記チップ状ワークと前記被着体との間を封止材で封止する工程
をさらに具備し、
前記ウエハ裏面保護フィルムを構成している熱硬化性樹脂は、前記封止する工程において硬化される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ウエハ裏面保護フィルムにレーザーマークキングを行なう工程と、
前記着色ウエハ裏面保護フィルム中の熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、
をさらに具備し、
前記レーザーマークキングを行なう工程は、前記硬化させる工程よりも前におこなわれる工程であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ウエハ裏面保護フィルムにレーザーマークキングを行なう工程と、
前記チップ状ワークと前記被着体との間を封止材で封止する工程と
をさらに具備し、
前記レーザーマークキングを行なう工程は、前記封止する工程よりも前におこなわれる工程であり、
前記ウエハ裏面保護フィルムを構成している熱硬化性樹脂は、前記封止する工程において硬化される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
着色されたウエハ裏面保護フィルムが、レーザーマーキング性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
フリップチップ実装の半導体装置に用いられる請求項1〜6のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−235168(P2012−235168A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185526(P2012−185526)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2009−251126(P2009−251126)の分割
【原出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】