説明

ダイシングフィルム

【課題】本発明により、ダイシング時の切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、また好適な強度および良好な外観を有するダイシングフィルムが提供される。
【解決手段】本発明のダイシングフィルムは、基材フィルムの少なくとも一の面に粘着層を有し、前記基材フィルムが(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)、および、スチレン系エラストマー(B)とを含む。前記(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンの共重合物(A)は、スチレン-メタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する工程において、半導体ウエハやパッケージ等の半導体部材を切断する際にダイシングフィルムが用いられている。ダイシングフィルムは、半導体部材を貼り付け、ダイシング(切断、個片化)し、さらに当該ダイシングフィルムをエキスパンティング等することにより、前記半導体ウエハ等をピックアップするために用いられる。
【0003】
一般にダイシングフィルムは、基材フィルムと、粘着層とで構成されている。従来、基材フィルムとしてはポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルムが多く用いられていた。しかしながら、PVC樹脂フィルムに含有される可塑剤の付着による半導体部材の汚染防止や、環境問題に対する意識の高まりから、最近ではオレフィン系樹脂並びに、エチレンビニルアルコール系樹脂およびエチレンメタクリル酸アクリレート系樹脂等の非PVC樹脂系材料を用いた基材フィルムが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また近年、半導体部材の小型化・薄型化が進む中で、ダイシングフィルムの厚み精度にバラつきがある場合、ダイシング工程においてダイシングブレードの接触の仕方に差が生じ半導体ウエハ割れが発生しやすくなるという問題が生じている。また、フィルム厚み精度にバラつきがあると、半導体部材のカット残りやダイシング時の切り屑や基材ヒゲ(基材フィルムのカットラインから伸びたヒゲ状の切り残査)が発生し半導体デバイスに付着するといった問題も発生する。特に半導体パッケージを切断する際は、厚みの大きいダイシングブレードを使用することが多いため、半導体ウエハを切断する時よりも基材ヒゲ発生の問題が顕著に現れる。また、ダイシングフィルムに半導体部材を貼り付けてダイシングした後、切断された半導体部材どうしの間隔を広げるためにダイシングフィルムのエキスパンドを行う。この際には、基材に十分な靭性がないとダイシングフィルムが破断するといった問題も発生する。そのため、ダイシング時に基材ヒゲを抑制することができ、かつ、エキスパンディング時に基材が破断しないダイシングフィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−257893
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、半導体製造時のダイシング工程において切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、また好適なエキスパンド性を有するダイシングフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るダイシングフィルムは、基材フィルムの少なくとも一の面に粘着層を有するダイシングフィルムであって、前記基材フィルムが、(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)、および、スチレン系エラストマー(B)を含むものである。
【0008】
本発明に係るダイシングフィルムは、前記(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)がスチレン-メタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合物であるとすることができる。
【0009】
本発明に係るダイシングフィルムは、前記スチレン系エラストマー(B)が水添ビニル(スチレンーイソプレンースチレン)共重合体、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1つのスチレン系エラストマーであるとすることができる。
【0010】
本発明に係るダイシングフィルムは、前記基材フィルム中のスチレン-メタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合物(A)と前記スチレン系エラストマー(B)との重量比率(A/B)がA/B=65/35〜45/55であるとすることができる。
【0011】
本発明に係るダイシングフィルムは、以下の破断エネルギー評価試験における基材フィルムの破断エネルギーが15mJ以上であるとすることができる。
<破断エネルギー評価試験>
試験片である基材フィルムの片面に下記切創作成条件にて十字の切創を作成する。
切創を作成した面を下側にし、十字の切創の交差点に対し下記の落錘試験条件にて落錘試験を実施する。基材フィルムが破断した場合における落錘前の錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
<切創作成条件>
ブレードを用いて深さ80μm、長さ40mm以上の切創を厚み150μmの基材フィルムに十字に作成する。
<落錘試験条件>
錘 :1.02kg
錘先端形状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体製造時のダイシング工程において切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、また好適なエキスパンド性を有するダイシングフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るダイシングフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る破断エネルギー評価試験に用いる十字切創作製後の試験用フィルムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るダイシングフィルムは、主に半導体を製造する工程において、半導体ウエハや半導体パッケージ等の半導体部材をダイシング(切断)する際に用いられる。前記ダイシングフィルムは、例えば、半導体ウエハや半導体パッケージ等に貼り付けられ、半導体ウエハ等をダイシングし、その後エキスパンティングすることにより、半導体ウエハを切断して得られた半導体素子をピックアップするために用いられる。
【0015】
本発明は、ダイシングフィルムの基材フィルムの構成成分に(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)と、スチレン系エラストマー(B)とを用いる。これにより、基材フィルムの樹脂に起因する基材ヒゲの発生を低減しながらも、ダイシングフィルムのエキスパンド性を重視した設計が可能となる。以下、本発明の構成要件について図面を用いて説明する。
【0016】
<基材フィルム>
本発明に係るダイシングフィルム10は、図1に例示するように基材フィルム1と粘着層2とを少なくとも有する。前記基材フィルム1には、(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)、および、スチレン系エラストマー(B)とが含まれる。前記(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)は、スチレン-メタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合物であることが好ましい。スチレン-メタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合物を使用することにより、ダイシング時の切り屑や基材ヒゲの発生をより少なくすることができる。
【0017】
前記スチレン系エラストマー(B)としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン‐ブタジエン‐スチレン共重合体、スチレン‐ブタジエン‐ブチレン‐スチレン共重合体、スチレン‐イソプレン共重合体、スチレン‐イソプレン‐スチレン共重合体、スチレン‐エチレン‐イソプレン‐スチレン共重合体、水添ビニル(スチレン‐イソプレン‐スチレン)共重合体、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体を挙げることができる。この中でも特に、水添ビニル(スチレン‐イソプレン‐スチレン)共重合体であることが好ましい。水添ビニル(スチレン‐イソプレン‐スチレン)共重合体を使用することにより、基材フィルムの破断強度をより優れたものとすることができ、また、ダイシング時の切り屑や基材ヒゲの発生をより少なくすることができる。また、基材層の破断強度を高め、かつダイシング時の切り屑およびヒゲを低減するという同様の観点から、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体またはそれと水添ビニル(スチレン‐イソプレン‐スチレン)共重合体との混合物であることが好ましく、特にスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体であることが好ましい。
【0018】
前記基材フィルム1中の(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)と、スチレン系エラストマー(B)との重量比率(A/B)はA/B=65/35〜45/55であることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)の重量比率を前記範囲下限値以上とすることにより基材フィルムの基材ヒゲ抑制の効果が優れたものとなり、前記範囲上限値以下とすることにより基材フィルムの破断強度が好適なものとなる。
【0019】
上記のように、(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)と、スチレン系エラストマー(B)とを併用したダイシングフィルムは、基材ヒゲ抑制に優れ、半導体部材加工工程において好適に用いられる。
【0020】
加えて、(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンとの共重合物(A)と、スチレン系エラストマー(B)を含む基材フィルム1を用いたダイシングフィルム10では、スチレンの硬くて脆い性質を利用していることから次の効果が得られる。第1に、スチレン系基材は、基材フィルムのモジュラスが高いことから、エキスパンド工程によってチップ間隔をより広げることができる。これにより、ピックアップ時のチップどうしの衝突のリスクが軽減し、チップ欠けの防止が図れる。その結果、半導体素子の信頼性の向上につながる。第2に、カットラインからのデラミネーション(剥離)が改善される。スチレン系基材は脆いことから、破断時の応力が小さい傾向がある。破断応力が小さいとダイシングブレードが基材フィルムに与えるストレスが小さくなるため、カットラインから20〜30μm程度が剥離し、その剥離した部分から水が浸入することを軽減する効果がある。デラミネーションが発生すると、チップ端面の汚染につながる。デラミネーションを軽減することで、半導体素子の信頼性の向上につながる。
【0021】
また本発明に係るダイシングフィルムの基材フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に合わせて、各種樹脂や添加剤等を添加することができる。例えば、帯電防止性を付与するために、ポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマーやポリエーテルエステルアミドブロックポリマー等の高分子型帯電防止剤やカーボンブラック等を添加することができる。特に、帯電防止効果を付与する場合においては、オレフィン系樹脂との相溶性という観点からは、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体を用いたイオン伝導型帯電防止剤が好ましい。また、エラストマーを付与することで破断伸度を大きくすることができる。
【0022】
ダイシングフィルムの基材フィルムの厚みは半導体ウエハダイシング用では50μm以上150μm以下であることが好ましく、更に好ましくは、70μm以上100μm以下である。また、半導体パッケージ等の特殊部材ダイシング用では、100μm以上300μm以下であることが好ましく、更に好ましくは、150μm以上200μm以下である。前記範囲下限値以上とすることによりエキスパンド時の基材フィルムが破断しにくくなり、前記範囲上限値以下とすることによりダイシング時の基材ヒゲの発生を抑制することができる。
【0023】
本発明に係るダイシングフィルムによれば、ダイシング後の半導体部材を容易にピックアップできるように、ダイシング後の半導体部材が貼り付けられているダイシングフィルムをエキスパンドする(引き伸ばす)ことにより半導体部材(チップ)どうしの間隔を広げる。好適なエキスパンド性を得るためには、以下の破断エネルギー評価試験における基材フィルムの破断エネルギーが15mJ以上であることが好ましい。上記下限値以上とすることによりエキスパンド時の破断を抑制することができる。破断エネルギーは、基材フィルム中のエラストマーの配合比率を変更することにより適宜調整可能である。例えばエラストマーを配合することにより破断エネルギーを大きくすることができる。
【0024】
<破断エネルギー評価試験>
試験片である基材フィルムの片面に下記切創作成条件にて十字の切創を作成する。
切創を作成した面を下側にし、十字の切創の交差点に対し下記の落錘試験条件にて落錘試験を実施する。基材フィルムが破断した場合における落錘前の錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
<切創作成条件>
ブレードを用いて深さ80μm、長さ40mm以上の切創を厚み150μmの基材フィルムに十字に作成する。
<落錘試験条件>
錘 :1.02kg
錘先端形状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【0025】
(粘着層)
図1に例示するように、本発明に係るダイシングフィルム10の基材フィルム1の少なくとも片面には、粘着層2が設けられる。粘着層2に用いられる樹脂組成物としては、アクリル系粘着剤、UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂、イソシアネート系架橋剤等があげられる。これらの中でも半導体部材マウント、端材飛び及びチッピング抑制のためには、極性基を含有したアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。アクリル系粘着剤としては、例えば、カルボキシル基含有のアクリル酸ブチル等が好ましい。カルボキシル基含有のアクリル酸ブチルを用いることにより、半導体部材のマウント、端材飛び及びチッピングの抑制に特に好適なものとなる。
【0026】
粘着層2の厚みは、3μm以上100μm以下であることが好ましい。ダイシングフィルムの半導体ウエハダイシング用では3μm以上10μm以下であることが好ましい。また、パッケージ等の特殊部材ダイシング用としては10μm以上30μm以下であることが好ましい。粘着層2の厚みを前記範囲下限値以上とすることにより被着体の保持力に優れ、また前記範囲上限値以下とすることによりダイシング時の加工性に優れるダイシングフィルムが得られる。
【0027】
<ダイシングフィルムの製造方法の一例>
本発明に係るダイシングフィルム10の粘着層2の形成には、粘着層2として用いられる樹脂を適宜溶剤に溶解または分散させた塗工液を用いる。基材フィルム1、または基材フィルム1を含む樹脂フィルムに対して、ロールコーティングやグラビアコーティングなどの公知のコーティング法により前記塗工液を塗布し、乾燥することにより粘着層2が形成される。
【0028】
本発明に係るダイシングフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で目的に応じて他の樹脂層を設けることができる。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、これらは単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
<基材フィルムの作製>
下記原料を表1および2に示す重量配合比でドライブレンドにより混合した後、Φ50mm押出機(L/D=25 ユニメルトピンスクリュー スクリュー圧縮比=2.9)、300mm幅のコートハンガーダイ(リップ間隙=0.5mm)、押出温度=220℃(スクリュー先端)の条件で押出製膜し、厚み150μmのシート(基材フィルム)を得た。
【0030】
<実施例/比較例の基材フィルムに使用した原料>
・スチレン‐メタクリル酸アルキル‐アクリル酸アルキル共重合物
SX100 (PSジャパン株式会社製)
・ポリスチレン HF77 (PSジャパン株式会社製)
・ポリプロピレン FS2011C (住友化学株式会社製)
・水添ビニル(スチレン‐イソプレン‐スチレン)共重合体
ハイブラー7125 (株式会社クラレ製)
・スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体
セプトン8007 (株式会社クラレ製)
【0031】
<粘着層の作製>
2−エチルヘキシルアクリレート30重量%、酢酸ビニル69重量%および2−ヒドロキシエチルメタクリレート1重量%をトルエン溶媒中にて溶液重合させ、重量平均分子量150,000のベース樹脂を得た。このベース樹脂100重量部に対して、エネルギー線硬化型樹脂として2官能ウレタンアクリレート100重量部(三菱レイヨン社製、重量平均分子量が11,000)と、架橋剤としてトリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体(コロネートL、日本ポリウレタン社製)15重量部と、エネルギー線重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン5重量部とを酢酸エチルに溶解した。この溶解後の樹脂を、剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ38μm)に乾燥後の粘着層の厚さが20μmになるように塗工し、80℃で5分間乾燥して粘着層を得た。
【0032】
<ダイシングフィルムの作製>
表1および2の重量配合比で得られた厚み150μmの基材フィルムに、上述の粘着層を30℃でラミネートロールを用いてラミネートして、ダイシングフィルムを得た。
【0033】
得られたダイシングフィルムの評価を以下の項目で実施した。
<1>基材ヒゲの発生
上記により得られたダイシングフィルムをシリコンミラーウエハに貼り付けた(ミラー面へ貼付け)。貼付け後20分間放置し、下記ダイシング条件1でダイシングを実施した。ダイシング後のダイシングフィルムを下記UV照射条件1にてUV照射し、シリコンミラーウエハを剥離した後、ダイシングされたカットラインを顕微鏡で観察した。任意の隣接する10チップ(5×2)に対して、そのカットラインの各辺の切り屑(基材ヒゲ)を顕微鏡(25倍)で観察した。その結果、基材ヒゲの合計数が2個以下のものは◎、3個以上5個以下のものは○、6個以上10個以下のものは△、11個以上のものは×とした。
【0034】
<ダイシング条件1>
ダイシングブレード :NBC−ZH2050−SE 27HEDD
(株式会社ディスコ製)、
ブレード回転数 :30000rpm
カット速度 :50mm/sec
サンプルカットサイズ :5mm×5mm角
ブレードハイト :75μm
6インチリング/半導体ウエハ(厚み:400μm)使用
【0035】
<UV照射条件1>
照度 :65mW/cm
積算光量 :200mJ/cm
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0036】
<2>エキスパンド性
前記条件で作製したダイシングフィルムを用い、下記ダイシング条件2でダイシングした。その後、下記UV照射条件2にてUV照射後に下記エキスパンド条件1にてエキスパンドを実施した。その結果、フィルムが破断しないものを○、フィルムが破断するものを×とした。
【0037】
<ダイシング条件2>
ダイシングブレード :NBC−ZH2050−SE 27HEDD
(株式会社ディスコ製)
ブレード回転数 :30000rpm
カット速度 :50mm/sec
サンプルカットサイズ :5mm×5mm角
ブレードハイト :75μm
6インチリング/半導体ウエハ(厚み:400μm)使用
【0038】
<UV照射条件2>
照度 :65mW/cm
積算光量 :200mJ/cm
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0039】
<エキスパンド条件1>
エキスパンド量 :5mm
8インチリング使用
【0040】
<3>破断エネルギー
基材フィルムに下記ダイシング条件3で十字にダイシングを実施した後、カットラインを下向きにして基材フィルムの裏面からカットライン十字の交差部に下記落錘試験条件1で落錘試験を実施した。基材フィルムが破断した場合における落錘前の錘の位置エネルギーを測定し、破断エネルギーとした。
【0041】
<ダイシング条件3>
ダイシングブレード :NBC−ZH2050−SE 27HEDD
(株式会社ディスコ製)
ブレード回転数 :40000rpm
カット速度 :100mm/sec
ブレードハイト :80μm
サンプルカットサイズ:70mm×60mm角
6インチリング使用
【0042】
<落錘試験条件1>
錘 :1.02kg
錘先端形状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【0043】
<4>エキスパンド時のチップ間距離
実施例1および比較例5のダイシングフィルムを4インチウエハに貼りつけて下記ダイシング条件4にてダイシング後、下記UV照射条件3でUV照射した。その後、下記エキスパンド条件2でエキスパンドした。エキスパンドした状態で、任意のチップ間距離を5つ測定し、その平均値をチップ間距離とした。
【0044】
<ダイシング条件4>
ダイシングブレード :NBC−ZH2050−SE 27HEDD
(株式会社ディスコ製)
ブレード回転数 :40000rpm
カット速度 :50m/min
基材切り込み量 :粘着剤層から35μm
サンプルカットサイズ:10mm×10mm
【0045】
<UV照射条件3>
照度 :65mW/cm
積算光量 :200mJ/cm
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0046】
<エキスパンド条件2>
エキスパンド量 :5mm
【0047】
<5>チップカットライン部分のデラミネーション(剥離)
実施例1および比較例5のダイシングフィルムを4インチウエハに貼りつけて下記ダイシング条件5でダイシング後、下記UV照射条件4でUV照射した。その後、チップを基材フィルムから剥離したうえで、カットラインを顕微鏡で観察し、カットライン端部からの剥離部分の大きさを測定した。
【0048】
<ダイシング条件5>
ダイシングブレード :NBC−ZH2050−SE 27HEDD
(株式会社ディスコ製)
ブレード回転数 :40000rpm
カット速度 :50m/min
基材切り込み量 :粘着剤層から35μm
サンプルカットサイズ:10mm×10mm
【0049】
<UV照射条件4>
照度 :65mW/cm
積算光量 :200mJ/cm
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0050】
上記実施例及び比較例の評価結果を表1および表2に示す。実施例1〜6は全て基材ヒゲの発生が抑制されて良好なものであった。また、基材フィルムのエキスパンド性についても良好な結果となった。一方、比較例2、4、5は基材ヒゲの発生が抑制できず、比較例1、3については、充分なエキスパンド性を有する基材フィルムを得ることができない結果となった。また、実施例1では、比較例5に比べエキスパンド時のチップ間距離が大きくすることができた。さらに、実施例1ではチップのカットライン部分についてデラミネーションは確認されなかったが、比較例5ではデラミネーションが確認される結果となった。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のダイシングフィルムは、ダイシング時の切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、ダイシングフィルムとして好適な強度と良好な外観を有するため、半導体装置製造のダイシング工程において半導体部材固定用のフィルムとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・基材フィルム
2・・・粘着層
3・・・切創
10・・・ダイシングフィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一の面に粘着層を有するダイシングフィルムであって、前記基材フィルムが、(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンの共重合物(A)と、スチレン系エラストマー(B)とを含むダイシングフィルム。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンの共重合物(A)が、スチレン-メタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合物である請求項1記載のダイシングフィルム。
【請求項3】
前記スチレン系エラストマー(B)が、水添ビニル(スチレンーイソプレンースチレン)共重合体、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1つのスチレン系エラストマーである請求項1または2記載のダイシングフィルム。
【請求項4】
前記基材フィルム中の(メタ)アクリル酸アルキルの少なくとも2種とスチレンの共重合物(A)と、スチレン系エラストマー(B)との重量比率(A/B)が、A/B=65/35〜45/55である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイシングフィルム。
【請求項5】
以下の破断エネルギー評価試験における前記基材フィルムの破断エネルギーが15mJ以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載のダイシングフィルム。
<破断エネルギー評価試験>
試験片である基材フィルムの片面に下記切創作成条件にて十字の切創を作成する。
切創を作成した面を下側にし、十字の切創の交差点に対し下記の落錘試験条件にて、落錘試験を実施する。基材フィルムが破断した場合における落錘前の錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
<切創作成条件>
ブレードを用いて深さ80μm、長さ40mm以上の切創を厚み150μmの基材フィルムに十字に作成する。
<落錘試験条件>
錘 :1.02kg
錘先端形状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−94834(P2012−94834A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198713(P2011−198713)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】