説明

ダイヤフラムバルブ

【課題】弁閉時の流体の残留部分の容積を極小にして流路の切り替えを高速化でき、耐久性を向上して長寿命化を図り、ダイヤフラムの交換も容易なダイヤフラムバルブを提供する。
【解決手段】弁箱20内の弁座25の弁口25a直下に極小の容積Vを有する連通部29を介してメイン流路23を配設し、弁箱20内にシートホルダ33でシート26を保持したダイヤフラム構造体21を装着する。ダイヤフラム構造体21は、シートホルダ33とダイヤフラムピース32とを螺着結合して内径孔外周縁52を挟着し、ダイヤフラムピース32をボンネット34で上下動可能に保持し、軸部32aに装着したスプリング41でダイヤフラム31を開方向に付勢させ、スプリング41を軸部32aに螺合したストッパ40で適正な荷重を与える構成とし、ボンネット34と弁箱20内でダイヤフラム31の外周縁53を挟着してダイヤフラム吊り下げタイプとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブに関し、詳しくは、半導体製造装置や太陽電池製造装置、液晶製造装置などに適用され、主に、例えばガス供給系配管などで使用されるダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造装置や太陽電池製造装置、液晶製造装置などのガス供給配管系で用いられる開閉弁としては、デッドスペースが少なく、パーティクルの発生を抑えることが要求され、これに応える弁としてダイヤフラムバルブが用いられることが多い。
この種のダイヤフラムバルブとして、例えば、図7に示すダイヤフラム弁1が知られている。このダイヤフラム弁1では、弁座シート2がボデー部3側にカシメにより装着され、弁座シート2と上下動可能に設けられた押圧体4との間に装着されたダイヤフラム体5を、押圧体4によって弁座シート2に押圧してシールする構成になっている。ボデー部3側には弁座シート2を収容するための凹状取付部6が設けられ、この凹状取付部6は、図において、ボデー部3に設けられた流入流路7と流出流路8とが垂直方向に屈曲していることでその厚みが確保されている。
【0003】
一方、図8に示したダイヤフラム弁11では、弁座シートがボデー部12側に装着された構造ではなく、ダイヤフラム体13側に装着されたホルダ14内にシール部材15が吊り下げられるように取付けられている。このダイヤフラム弁11では、ホルダ14の上下動によりシール部材15をボデー部12側に形成された弁座部16に着座させることでシールし、ダイヤフラム体13により外部への流体の漏れやパーティクルの発生が防止されている。この場合、ホルダ14とダイヤフラム体13とは溶接により接合されており、これらを容易に溶接するために、ダイヤフラム体13としては、例えばホルダ14と同じ材料のステンレス(例えば、SUS316L)が用いられている。
このダイヤフラム弁11と同様の構造として、例えば、特許文献1のダイヤフラム型バルブが知られている。このバルブは、ホルダに金属ダイヤフラムが溶接によって固着され、シートがホルダに吊り下げられた状態で装着されている。
【0004】
これらのダイヤフラムバルブは、半導体製造装置などの化合物MO−CVD装置等で使用されることが多い。MO−CVD装置では、メイン流路に複数の性質が異なるガスなどをタイミングを切り替えて流したり止めたりすることが頻繁に繰り返される。この使用状況下においては、先行して流されたガス等を止めた後に残留物が必要な濃度に低下するまでは、次にガス等に切り替えて流すことができない。よって、流路の切り替えのタイミングを極小に抑えるためには、弁座からメイン流路に接合するまでの容積を極小化することが重要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4286934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7のダイヤフラム弁1のように弁座シート2をボデー部3側に止め付ける構造にした場合、弁座シート2を収容するために厚みが大きくなって流路7、8の垂直方向に屈曲した部分が長くなってこの部分の流路容積が大きくなる。このように流路の垂直方向部分の容積が増えることでデッドスペースが大きくなり、流体が残留しやすくなることから流路の切り替え時間が長くなる。
【0007】
一方、図8や特許文献1のダイヤフラム弁11においては、図8においてシール部材15がホルダ14側に装着された構造であり、図7のダイヤフラム弁1に比較して弁座入口側から出口側までの長さを短くすることは可能ではあるが、ダイヤフラム体13とホルダ14とを溶接により一体化しているため、ダイヤフラム体13を例えばステンレスで設けたときに耐久性に乏しくなり、弁開閉動作可能な回数が数万回程度の少ない回数にとどまることがある。これを回避するために耐久性の高いダイヤフラム素材としてCo−Ni合金を用いる場合があるが、Co−Ni合金とステンレス材料とが異種材料であることから、これらを溶接により強固に固着することは難しい。一方、Co−Ni合金でダイヤフラムとホルダとの双方を形成することも考えられるが、ダイヤフラム体13に比較して大型のホルダ14を高価なCo−Ni合金で製作することは経済的な点からも現実的ではない。
【0008】
また、ダイヤフラムの動作速度における耐久性の影響を考えると、Co−Ni合金のダイヤフラムに比べ、ステンレスのダイヤフラムは材料強度が低く、動作速度を速くできないため、開閉速度が遅くなり、流体の切替時間が長くなる。
更に、ダイヤフラム体13を交換する際には、専用の治具を用いてホルダ14やステム19等の昇降動部品とダイヤフラム体13とを調芯する必要があるため、ダイヤフラム体13の交換作業が困難になる。
【0009】
本発明は、従来の課題点に鑑みて開発したものであり、その目的とするところは、弁閉時の流体の残留部分の容積を極小にして流路の切り替えを高速化でき、耐久性を向上して長寿命化を図り、ダイヤフラムの交換も容易なダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、弁箱内に設けた弁座の弁口直下に極小の容積を有する連通部を介してメイン流路を配設し、この弁箱内にシートホルダでシートを保持したダイヤフラム構造体を装着し、このダイヤフラム構造体は、シートホルダとダイヤフラムピースとを螺着結合してダイヤフラムの内径孔外周縁を挟着し、ダイヤフラムピースをボンネットで上下動可能に保持し、かつダイヤフラムピースの軸部に装着したスプリングでダイヤフラムを開方向に付勢させ、このスプリングを軸部に螺合したストッパで適正な荷重を与える構成とし、ボンネットと弁箱内でダイヤフラムの外周縁を挟着してダイヤフラム吊り下げタイプとしたダイヤフラムバルブである。
【0011】
請求項2に係る発明は、ボンネットに形成した案内孔に軸部を上下動自在に案内し、スプリングの一端側をボンネット上面に、かつ他端側を軸部の上部に螺合したナット状のストッパに当接してダイヤフラムを開方向に付勢させたダイヤフラムバルブである。
【0012】
請求項3に係る発明は、シートホルダに設けたおねじ部をダイヤフラムの内径孔に貫通させ、このおねじ部とダイヤフラムピースのめねじ部との螺合による締付力により、シートホルダの環突状のつぶれシール部とダイヤフラムピースの環状の突設部とでダイヤフラムの内径孔外周縁を挟着したダイヤフラムバルブである。
【0013】
請求項4に係る発明は、ダイヤフラムとダイヤフラムの接合部位を異種金属とし、ダイヤフラムをCo−Ni合金材で成形したダイヤフラムバルブである。
【0014】
請求項5に係る発明は、ダイヤフラム構造体の装着側の弁箱にアクチュエータ本体を螺着してこのアクチュエータ本体の下端部でボンネットを押圧固定し、アクチュエータ本体にピストンロッドを有するエアーピストンとこのピストンを弾発付勢するばねとを内蔵し、ピストンロッドの下端をダイヤフラムピースの軸部上端に当接すると共に、ピストンのストロークを調整部材で調整してダイヤフラムのストロークを抑制するようにしたダイヤフラムバルブである。
【0015】
請求項6に係る発明は、メイン流路を有するブロック体に複数のダイヤフラム構造体を装着して多連バルブとしたダイヤフラムバルブである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、弁箱に設けた弁座に対して、ダイヤフラム構造体に装着したシートを接離して弁開閉する構造であるため、弁箱側にシート収容部位を設ける必要がなく、連通部の容積を極小に設けることで残留流体を少なく抑えて流路の切り替えを高速化できる。しかも、ダイヤフラム構造体において、ダイヤフラムの軸部に装着したスプリングでダイヤフラムを開方向に付勢させ、ストッパでスプリングによる適正な荷重を与える構成であるため、スプリングにより弁開方向への動作を早くして流路切り替え時間を短くできる。
シートホルダとダイヤフラムピースとの間にダイヤフラムの内径孔外周縁を挟着し、ボンネットと弁箱内でダイヤフラムの外周縁を挟着した吊り下げタイプでダイヤフラムを装着しているので、ダイヤフラムの耐久性の高い材料で成形して長寿命化を図れる。さらに、溶接する必要がないことから、溶接に起因するコストや手間がかからないため生産性が向上する。
ダイヤフラムやシートが劣化や消耗した場合、ダイヤフラム構造体を取り外すことでこれらを簡単に交換できる。その際、ダイヤフラム構造体を弁箱に落とし込む装着構造であるため簡単に着脱でき、専用の治具等を用いることなく一般工具を用いて着脱できる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、スプリングの弾発力によりダイヤフラムを開方向に付勢することで、シートホルダを強制的に弁開方向である上方向に移動させて弁開速度を向上でき、この弁開動作にかかる時間を大幅に短縮できる。さらに、メイン流路内が真空状態になったとしても、スプリングの弾発付勢力によりダイヤフラムが閉方向に移動することを防止する。
【0018】
請求項3に係る発明によると、つぶれシール部と環状の突設部とでダイヤフラムの内径孔外周縁を挟着していることで、溶接することなくダイヤフラムをつぶれ部分により強固に装着でき、その装着後には高いシール性を発揮して確実に挟着部分からの漏れを防止する。シートホルダとダイヤフラムピースとの螺合による締付け構造により、容易にダイヤフラムを交換したり、更にはシートを簡単に交換することもできる。
【0019】
請求項4に係る発明によると、ダイヤフラムとダイヤフラムの接合部位とを異種金属とすることで、ダイヤフラムを接合部位よりも高耐久性の材料で設けることができ、特に、ダイヤフラムをCo−Ni合金材とした場合には、耐摩耗性、耐熱性、耐食性に優れ、高温化した場合でもその特性を発揮して硬度を維持できる。これにより、長寿命化を図りつつ高精度に流量制御可能なダイヤフラムバルブを構成できる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、アクチュエータ本体を介して自動操作により弁開閉でき、このアクチュエータ本体のエアーピストンのストロークを調整部材で調整してダイヤフラムのストロークを抑制するようにしているので、ダイヤフラム構造体を弁箱に装着する際に弁開閉時のストロークを調整し、特に弁閉時におけるシール状態を微調整しながら取付けできる。このため、ダイヤフラムの交換などによりダイヤフラム構造体を着脱する際にも、ダイヤフラムやシートを所定位置の位置に装着して高精度の弁開閉制御を実施できる。
【0021】
請求項6に係る発明によると、ブロック体に複数のダイヤフラム構造体を装着して多連バルブを設けることができ、メイン流路を流れる流体にダイヤフラム構造体を介して複数の流体を混入して混合流体を供給可能となる。仮に、多連バルブの一箇所にシートやシートカシメの不良に起因する不適合や故障があったとしても全体を再製作する必要がなく、必要なダイヤフラム構造体のみを交換するだけで対応できる。また、弁座付近にこすれやキズ等が発生してシール性能が低下した場合には、当該位置のダイヤフラム構造体を取り外すことで弁座付近の研磨や修正が可能になるため、ブロック体全体を交換することがなく、工数や材料の無駄も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のダイヤフラムバルブの第1実施形態を示す要部断面図である。
【図2】ダイヤフラム構造体を示す一部切欠き正面図である。
【図3】図2の一部拡大断面図である。
【図4】本発明のダイヤフラムバルブの第2実施形態を示す要部断面図である。
【図5】調整部材を示す平面図である。
【図6】本発明のダイヤフラムバルブの第3実施形態を示す要部断面図である。
【図7】従来のダイヤフラム弁の一例を示す縦断面図である。
【図8】従来のダイヤフラム弁の他例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明におけるダイヤフラムバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては本発明のダイヤフラムバルブの第1実施形態、図2においてはダイヤフラム構造体、図3においては図2の一部拡大断面図を示している。
【0024】
図において、ダイヤフラムバルブは、ステンレス鋼等の金属材料により成形された弁箱20、この弁箱20内に装着されるダイヤフラム構造体21、アクチュエータ本体22を有し、ダイヤフラム構造体21をアクチュエータ本体22で操作して弁開閉操作可能になっている。
【0025】
弁箱20にはメイン流路23、複数の連通流路24が形成されている。メイン流路23は弁箱20の中央位置の長手方向に形成され、このメイン流路23と交差方向に連通して連通流路24が形成されている。
【0026】
メイン流路23と連通流路24との間の内部底面には弁座25が設けられ、この弁座25は後述のシート26の取付け側でないことからフラットな底面に形成される。メイン流路23は、弁座25の弁口25a直下に極小の容積Vを有する連通部29を介して配設され、弁箱20内にシートホルダ33でシート26を保持したダイヤフラム構造体21が装着されている。ダイヤフラムバルブは、弁座25にシート26を接離させることで弁開閉させ、各連通流路24からメイン流路23に流量を制御しながら流体を供給可能になっている。弁箱20のダイヤフラム構造体21装着側には、メネジ27、装着凹部28が形成され、また、メイン流路23と平行にヒータ取付け用の取付け穴20aが形成されている。
【0027】
図2において、ダイヤフラム構造体21は、ダイヤフラム31、ダイヤフラムピース32、シートホルダ33、シート26、ボンネット34、ストッパ40、スプリング41を有している。
ダイヤフラム31は、これを接合するための接合部位であるダイヤフラムピース32、並びにシートホルダ33とは異種金属からなり、例えば、Co−Ni合金材などの弾性変形可能な金属材料により円板状に成形され、中央部にはシートホルダ33の後述するおねじ部35が挿通する取付け用の内径孔51が形成されている。図3に示すように、ダイヤフラム31は、接ガス用ダイヤフラム31aと、バックアップ用ダイヤフラム31bとの二層構造になっており、これらが一体に貼着されて一体化されている。
【0028】
ダイヤフラムピース32は、例えば、SUS304などのステンレス鋼等の金属材料からなり、ダイヤフラム31やシートホルダ33を弁座方向に昇降動可能にボンネット34に取付けられている。ダイヤフラムピース32は略円柱形状を呈し、その底面側中央にめねじ部37が設けられている。このめねじ部37にはシートホルダ33のおねじ部35が螺合可能になっている。
【0029】
ダイヤフラムピース32の下部側には環状の突設部42が形成されている。一方、上部側には軸部32aが設けられ、この軸部32aにはおねじ38が形成されている。おねじ38にはめねじ39を介してストッパ40が螺着されている。ストッパ40とボンネット34との間には、シートホルダ33を弁閉方向に付勢するスプリング41が組み込まれている。スプリング41は、例えば、SUS304−WPBなどのステンレス鋼等の金属材料からなり、このスプリング41により、ダイヤフラムピース32、シート26を装着したシートホルダ33が開状態まで強制的に付勢される。
【0030】
ストッパ40は、例えば、SUS304などのステンレス鋼等の金属材料からなり、上記したおねじ38へのめねじ39の螺合により、スプリング41に所定の荷重を与えている。ストッパ40は、図示しないスパナ等により着脱可能であり、ストッパ40の取付け高さを変えることでスプリング41の荷重を変更してダイヤフラムピース32、シートホルダ33の付勢力を調整することが可能になっている。
【0031】
シートホルダ33は、例えばSUS316Lなどのステンレス鋼などの金属材料からなり、めねじ部37に螺合するおねじ部35と、このおねじ部35よりも拡径したシート部材取付け用の拡径部43とを有している。拡径部43の弁座側にはシート26装着用の装着部44が設けられ、拡径部43のダイヤフラムピース32側には、ダイヤフラム31と金属シール構造を達成するためにダイヤフラムピース32の突設部42と挟着するつぶれシール部45が環突状に形成されている。
【0032】
シート26は、例えば樹脂材料からなり、シートホルダ33の装着部44にカシメにより取付けられる。シート26の先端側には弁座25に当接可能な環状突部46が形成され、この環状突部46が弁座25に押し付けられることで弁閉状態になる。装着部44から環状突部46先端側までは流体の流れ方向において極小の突出し長さになっており、図示しないこの突出し長さは、後述する弁座25からメイン流路23までの接合部分の極小の容積Vに寄与している。
【0033】
ボンネット34は、例えば、SUS304などのステンレス鋼等の金属材料により弁箱20の装着凹部28に嵌合する外形に形成され、その内周側に、ダイヤフラムピース32を案内しつつ上下作動可能に装着可能な案内孔47、ダイヤフラムピース32に当接してその上昇位置を規制する規制部48が形成されている。
【0034】
ダイヤフラム構造体21は、シートホルダ33とダイヤフラムピース32とを螺着結合してダイヤフラム31の内径孔51の外周縁52を挟着し、ダイヤフラムピース32をボンネット34で上下動可能に保持し、かつダイヤフラムピース32の軸部32aに装着したスプリング41でダイヤフラム31を開方向に付勢させた状態で組み込まれる。そして、スプリング41を軸部32aに螺合したストッパ40で適正な荷重を与える構成とし、ボンネット34と弁箱20内でダイヤフラム31の外周側の外周縁53を挟着してダイヤフラム31吊り下げタイプの構造体になっている。
【0035】
ダイヤフラム31の取付け時には、ボンネット34に形成した案内孔47に軸部32aを上下動自在に案内し、スプリング41の一端側をボンネット上面34aに、かつ他端側を軸部32aの上部に螺合したナット状のストッパ40に当接してダイヤフラム31を開方向に付勢させる。
【0036】
この場合、シートホルダ33に設けたおねじ部35をダイヤフラム31の内径孔51に貫通させ、このおねじ部35とダイヤフラムピース32のめねじ部37との螺合による締付力により、シートホルダ33のつぶれシール部45とダイヤフラムピース32の突設部42とで、ダイヤフラム31の内径孔51の外周縁52を挟着する。
【0037】
ダイヤフラム31とシートホルダ33とは、ダイヤフラムピース32から着脱可能に設けられている。ダイヤフラム構造体21を弁箱20から取り外すことにより、ダイヤフラム31とシートホルダ33とを取り外すことができ、ダイヤフラム31と、シートホルダ33に装着されているシート26とを交換可能になっている。
【0038】
図1において、アクチュエータ本体22は、ケーシング60、シリンダ部材61、エアーピストン62、ばね63を有し、ダイヤフラム構造体21が装着された弁箱20の上部側に取付けられる。ケーシング60は、下部側にメネジ27に螺着可能なオネジ64を有し、下部内周側には収納穴部65、この収納穴部65と連通する縮径状の貫通穴66が設けられている。収納穴部65にはボンネット34の上部側を嵌入可能であり、この嵌入によりダイヤフラム構造体21が収納穴部65に収納される。貫通穴66は、エアーピストン62の下部側が嵌入されてこのエアーピストン62が往復動可能な径に設けられている。ケーシング60の上部外周には雄螺子部67が設けられている。
【0039】
シリンダ部材61は雄螺子部67に螺合可能な雌螺子部68を有し、これらを螺合させることでケーシング60の上部に固定され、これによりシリンダ部材61とケーシング60との間の内部にはエアーピストン62が往復動可能な空間が形成される。シリンダ部材61にはエアー供給用の給気口72、エアー排気用の排気ポート71が設けられている。給気口72よりエアーを給気したときには、エアーピストン62が弁開方向に往動作し、このとき、シリンダ部材61のばね63側のエアーが排気ポート71より排気される。一方、給気口72のエアー供給を停止し排気した場合、エアーピストン62がばね63により弁閉方向に復動する。このように、このダイヤフラムバルブは、NC(ノーマリークローズタイプ)となっている。
【0040】
エアーピストン62はピストンロッド69を有し、シリンダ部材61、ケーシング60内に往復動自在で、ばね63により底面69aがダイヤフラムピース32に圧接した状態で装着される。これにより、エアーピストン62が往復動したときにこのエアーピストン62の動作に応じてダイヤフラムピース32が上下に動作する。エアーピストン62には貫通孔部73が設けられ、この貫通孔部73は給気口72と連通している。給気口72からエアーを給気したときには、貫通孔部73を介してエアーピストン62の1次側にエアーが供給されて前記のようにエアーピストン62が復動作する。
【0041】
ばね63は、エアーピストン62とシリンダ部材61との間に弾発付勢状態で装着され、このばね63により、常時においてエアーピストン62がダイヤフラムピース32、シートホルダ33を閉方向に動作させる方向に付勢される。
【0042】
アクチュエータ本体22は、ダイヤフラム構造体21の装着側の弁箱20にオネジ64とメネジ27とにより螺着され、このときアクチュエータ本体22の下端部22aがボンネット34を押圧固定する。前述したようにアクチュエータ本体22にはエアーピストン62とばね63とが内蔵されていることで、ピストンロッド69の下端69aがダイヤフラムピース32の軸部上端32bに当接する。この構造によりエアーピストン62を介してダイヤフラムピース32を上下動させ、シートホルダ33を弁箱20の弁座25に押付ける力を付勢してシート26の接離により弁座25を開閉動作させることが可能になっている。
【0043】
次いで、本発明のダイヤフラムバルブの上記実施形態における作用を説明する。
本発明のダイヤフラムバルブは、弁箱20内に設けた弁座25の弁口25a直下に極小の容積Vを有する連通部29を介してメイン流路23を配設し、この弁箱20内にシートホルダ33でシート26を保持したダイヤフラム構造体21を装着しているので、連通部29のデッドスペースを小さくして流路切り替え時の残留流体を最少に抑えることで、弁開閉時の切り替え時間を短くできる。このため、例えば、化合物MO−CVD装置で使用した場合に、複数の性質の異なるガスを使用したときでも、このガスを迅速に排出して流路の切り替え時間を極小にできスムーズに切り替えできる。
【0044】
ダイヤフラム構造体21は、シートホルダ33とダイヤフラムピース32とを螺着結合して内径孔外周縁52を挟着してダイヤフラムピース32をボンネット34で上下動可能に保持し、かつ軸部32aに装着したスプリング41でダイヤフラム31を開方向に付勢させ、このスプリング41をストッパ40で適正な荷重を与える構成とし、ボンネット34と弁箱20内で外周縁53を挟着してダイヤフラム吊り下げタイプとしているため、ダイヤフラム31を溶接することなく装着でき、ダイヤフラム31のみを耐久性の高い材料で形成することで長寿命化を図ることができる。
【0045】
その際、ダイヤフラムピース32とシートホルダ33との間にダイヤフラム31の内径孔51を挟着し、ダイヤフラム31の外縁部53をボンネット34と弁箱20との間に挟着しているので、ダイヤフラム31を溶接することなくダイヤフラム構造体21を簡単に取付けできる。ダイヤフラム31が劣化した場合には、ダイヤフラム31のみを取外して交換可能であるため、経済性に優れている。しかも、特別な治具を用いることなくダイヤフラム構造体21を着脱し、ダイヤフラム31やシート26を簡単に交換できる。更に、溶接に起因するコストや手間がかからないことから生産性も向上する。
【0046】
ダイヤフラム構造体21の取付け時には、おねじ部35を内径孔51に貫通させ、おねじ部35とめねじ部37との螺合による締付力によりつぶれシール部45と突設部42とでダイヤフラム31の内径孔外周縁52を挟着しているため、高いシール性を発揮してダイヤフラム31取付け部分からの漏れを確実に防止する。
【0047】
ダイヤフラム31をダイヤフラムピース32並びにシートホルダ33とは異種金属とし、このダイヤフラム31をCo−Ni合金材で成形することでステンレス合金製のダイヤフラムでは実現困難な耐久性を発揮でき、例えば、数百万回の開閉動作をおこなった場合でもダイヤフラム31が破損するおそれがなく、長寿命化を図りつつ高精度に流量制御可能なダイヤフラムバルブを構成できる。
【0048】
図4、図5においては、本発明のダイヤフラムバルブの第2実施形態を示している。なお、この実施形態以降において上記実施形態を同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態では、エアーピストン62の上部に設けられたシリンダ部材80にめねじ81が設けられ、このめねじ81におねじ82を介して調整部材83が螺着されている。調整部材83の上面側には、エアー供給用のエアー給気口84、有底穴85、ねじ穴86が設けられ、このねじ穴86には固定ねじ87が螺着されている。調整部材83の下部側には、エアーピストン62の縮径筒部88を摺動可能に嵌入するためのガイド穴89と、エアーピストン62の拡径筒部90の先端側に当接可能な当接部91が形成されている。
【0049】
調整部材83は、有底穴85に図示しない適宜の工具を挿入して回転させることで、エアーピストン62の往復方向に可動する。この場合、固定ねじ87の螺入量を調節してエアーピストン62側への先端部分の突出量を調整し、シリンダ部材61に対する調整部材83の螺入量を調節する。これにより、当接部91を所定の位置に配置しながら、エアーピストン62が当接部91に当接するときのストロークを調整部材83で調整してダイヤフラム31のストロークを抑制できる。この場合、例えば、調整部材83を1/2回転させたときに、0.25mm程度螺入させるように設けるとよい。
【0050】
この構成により、エアー給気口84よりエアーを供給し、エアー圧によりエアーピストン62を持ち上げられて弁開状態にしたときに、エアーピストン62の最上位置が調整部材83の当接部91への突き当りによって定まる。この状態から調整部材83を時計方向に締め込むとエアーピストン62の最上位置が下がり、ダイヤフラム31の閉状態から開状態までのストロークが抑制されてバルブの最大流量が減少する。調整部材83の締め込み量を調整することで、弁箱20に取付けられた各ダイヤフラム構造体21による最大流量を揃えたり、或は、各ダイヤフラム構造体21から流入させる材料ガス等の流体の量を最適な状態に適宜調整できる。さらに、ストロークを抑制することにより、開閉時間の適宜調整も可能となる。
【0051】
図6においては、本発明のダイヤフラムバルブの第3実施形態を示している。
この実施形態においては弁箱をブロック体94とし、このブロック体94にメイン流路23と、複数の連通流路24とを設け、複数のダイヤフラム構造体21を装着して多連バルブ95としたものである。この多連バルブ95では、メイン流路23を流れる流体に対し、ダイヤフラム構造体21をそれぞれ開閉制御して連通流路24から適宜流体を所定量供給することで、混合流体を設けることが可能になる。
【0052】
通常の多連バルブ構造では、バルブの一箇所でもシート、シートカシメの不良に起因する不適合があればボデーの再製作が必要になるが、本実施形態ではダイヤフラム構造体21を着脱することでシート26等の不良に対応できるためブロック体94を再製作する必要がない。また、前記したとおりシート26がシートホルダ33側に装着されているため、ブロック体94内部の弁座がこすれキズ等でシール性能不適合になった場合でも簡単に研磨等の加工によって修復可能であり、ブロック体94を最小限の加工で修復できることから工数や材料の無駄が抑えられる。
【符号の説明】
【0053】
20 弁箱
21 ダイヤフラム構造体
22 アクチュエータ本体
22a 下端部
23 メイン流路
25 弁座
25a 弁口
26 シート
29 連通部
31 ダイヤフラム
32 ダイヤフラムピース
32a 軸部
32b 軸部上端
33 シートホルダ
34 ボンネット
34a 上面
35 おねじ部
37 めねじ部
40 ストッパ
41 スプリング
42 突設部
45 つぶれシール部
47 案内孔
51 内径孔
52 内径孔外周縁
53 外周縁
62 エアーピストン
63 ばね
69 ピストンロッド
69a 下端
83 調整部材
94 ブロック体
95 多連バルブ
V 容積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内に設けた弁座の弁口直下に極小の容積を有する連通部を介してメイン流路を配設し、この弁箱内にシートホルダでシートを保持したダイヤフラム構造体を装着し、このダイヤフラム構造体は、前記シートホルダとダイヤフラムピースとを螺着結合してダイヤフラムの内径孔外周縁を挟着し、前記ダイヤフラムピースをボンネットで上下動可能に保持し、かつ前記ダイヤフラムピースの軸部に装着したスプリングで前記ダイヤフラムを開方向に付勢させ、このスプリングを前記軸部に螺合したストッパで適正な荷重を与える構成とし、前記ボンネットと弁箱内で前記ダイヤフラムの外周縁を挟着してダイヤフラム吊り下げタイプとしたことを特徴とするダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記ボンネットに形成した案内孔に前記軸部を上下動自在に案内し、前記スプリングの一端側をボンネット上面に、かつ他端側を前記軸部の上部に螺合したナット状のストッパに当接して前記ダイヤフラムを開方向に付勢させた請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記シートホルダに設けたおねじ部を前記ダイヤフラムの内径孔に貫通させ、このおねじ部と前記ダイヤフラムピースのめねじ部との螺合による締付力により、前記シートホルダの環突状のつぶれシール部と前記ダイヤフラムピースの環状の突設部とで前記ダイヤフラムの内径孔外周縁を挟着した請求項1又は2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記ダイヤフラムと前記ダイヤフラムの接合部位を異種金属とし、前記ダイヤフラムをCo−Ni合金材で成形した請求項1乃至3の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記ダイヤフラム構造体の装着側の弁箱にアクチュエータ本体を螺着してこのアクチュエータ本体の下端部で前記ボンネットを押圧固定し、前記アクチュエータ本体にピストンロッドを有するエアーピストンとこのピストンを弾発付勢するばねとを内蔵し、前記ピストンロッドの下端を前記ダイヤフラムピースの軸部上端に当接すると共に、前記ピストンのストロークを調整部材で調整してダイヤフラムのストロークを抑制するようにした請求項1乃至4の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
前記メイン流路を有するブロック体に複数の前記ダイヤフラム構造体を装着して多連バルブとした請求項1乃至5の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113418(P2013−113418A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262763(P2011−262763)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(501417929)株式会社キッツエスシーティー (22)
【Fターム(参考)】