説明

ダイヤフラムポンプ

【課題】 ダイヤフラムポンプにおいて、ポンプ動作中の機械音の発生を抑制する。
【解決手段】 モータ3の出力軸3aと一体的に回転するクランク台4の出力軸3aから偏心した部位には、出力軸3aに対して傾斜した状態で駆動軸5の下端部が軸着されている。この駆動軸5は駆動体6の非貫通孔7に嵌挿され、駆動体6は駆動軸5に回転自在に枢支される。駆動体6の駆動子8には、ダイヤフラム13の各ダイヤフラム部14が取り付けられ、ダイヤフラム部14はバルブホルダー16と共にポンプ室20A,20Bを形成する。駆動軸5の上端5aと非貫通孔7の底部7aとの間には、ボール30と圧縮コイルばね31とが介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転に追従して傾斜した状態で回転する駆動軸によって揺動する駆動体を備え、この駆動体の揺動動作によってこの駆動体に取り付けられたダイヤフラムのダイヤフラム部を往復動させ、ポンプ室が拡縮することによりポンプ作用をするダイヤフラムポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は従来のダイヤフラムポンプの断面図である。同図に、全体を符号101で示す2気筒で負圧型のダイヤフラムポンプは、略有底角筒状に形成されたケース2の底部の外側に固定されたモータ3を備えており、このモータ3の出力軸3aはケース2の孔からケース2内に突出し、突出端部にはクランク台4が軸着されている。
【0003】
5は一端部(下部)がクランク台4の出力軸3aから偏心した部位に、出力軸3aの軸線方向に対して傾斜した状態で軸着された駆動軸であって、他端部(上部)が駆動体6の中央部に設けた非貫通穴7内に嵌挿されており、駆動体6はこの駆動軸5に回転自在に枢支されている。この駆動体6の頭部6aは断面が円弧状に形成され、駆動体6には、非貫通孔7と略直交するように一対の駆動子8,8が先端に向かって共に下方に同じ角度だけわずかに傾斜するように形成されており、各駆動子8,8の先端部にはダイヤフラム部取付孔8a,8aが設けられている。
【0004】
10は下方が開口され箱状に形成されたダイヤフラムホルダーであって、上板の中央部に駆動体6の頭部6aが当接して支持される当接部11と、この当接部11を挟むようにして2つの保持孔12,12とが設けられており、ケース2の上部開口端に載置されている。13はダイヤフラムであって、ダイヤフラムホルダーの保持孔12,12に挿入される平面視において互いに180°位相をずらした2つのダイヤフラム部14,14が設けられている。
【0005】
これらダイヤフラム部14,14の下部には、ピストン15,15が設けられており、各ピストン部15の下部には、細径の首部15aを介して係止用の凸部15bが一体に形成されている。ダイヤフラム13は、ダイヤフラム部14の凸部15bを弾性変形させながら、駆動体6の駆動子8のダイヤフラム部取付孔8aに圧入することにより、首部15aがダイヤフラム部取付孔8aに取り付けられて、ダイヤフラムホルダー10上に載置される。
【0006】
16はバルブホルダーであって、中央部に2つの吐出孔17,17が設けられているとともに、これら吐出孔17,17の外側に吸入孔18,18が設けられており、これら吸入孔18,18を開閉する吸入弁19,19が取り付けられている。このバルブホルダー16によってダイヤフラム13をダイヤフラムホルダー10とともに挟持することにより、このバルブホルダー16と各ダイヤフラム部14,14との間にポンプ室20A,20Bが形成される。
【0007】
21は吐出孔17,17を開閉する吐出弁である。22はバルブホルダー16を覆う蓋体であって、バルブホルダー16との間に、吐出孔17を介してポンプ室20A,20Bに連通する吐出空間23と、この吐出空間23の周りに吸入孔18を介してポンプ室20A,20Bに連通する吸入空間24とが形成されている。25は外部と吐出空間23とを連通する吐出筒、26は外部と吸入空間24とを連通する吸入筒である。
【0008】
このように構成されていることにより、吸入筒26にエアーチューブ等を介して真空引きする装置を接続させ、吐出筒25を大気に開放する。このような状態としてから、モータ3を駆動し出力軸3aを回転させると、クランク台4も一体的に回転し、駆動軸5が傾斜した状態で回転するため、駆動体6はダイヤフラムホルダー10の当接部11に当接した頂部6aを揺動中心として揺動し、一対の駆動子8,8の両端部が図中上下方向へ往復動する。
【0009】
したがって、2つのダイヤフラム部14,14が交互に上下方向に往復動するため、2つのポンプ室20A,20Bも交互に拡縮する。ポンプ室20A,20Bが拡張することにより、ポンプ室20A,20B内が負圧状態となって吸入筒26を介して真空引きする装置内のエアーが吸入空間24および吸入孔18を通ってポンプ室20A,20B内に吸入されるから、装置の内部が減圧される。一方、ポンプ室20A,20Bが収縮すると、ポンプ室20A,20B内のエアーは圧力が上昇するので吐出孔17および吐出空間23を通って吐出筒25から大気に放出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のダイヤフラムポンプにおいては、駆動体6が1回揺動動作するうちにダイヤフラム13から駆動体6に加わる負荷に変動があるため、駆動軸5の軸線方向における分力にも変動が生じる。このため、ポンプ動作中に、駆動体6が駆動軸5の軸線方向に往復動することにより、駆動軸5の頭部5aと駆動体6の非貫通孔7の底部7aとが当接と離間とを繰り返すため、これらの間で機械音が発生するといった問題があった。この機械音は、駆動子8が一つである、いわゆる1気筒の場合や駆動子8が3つである3気筒以上の場合も同様の理由で発生する。
【0011】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ポンプ動作中に発生する機械音を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、モータの出力軸と一体的に回転するクランク台と、このクランク台の前記出力軸から偏心した部位に当該出力軸に対して傾斜した状態で一端部が軸着された駆動軸と、この駆動軸の他端部に回動自在に枢支される非貫通孔を有しこの非貫通孔の軸線と略直交する方向に延在する駆動子を有する駆動体と、この駆動体の駆動子に取り付けられポンプ室を形成するダイヤフラム部を有するダイヤフラムと、このダイヤフラムを保持するダイヤフラムホルダーとを備え、前記駆動体を揺動させることにより前記ダイヤフラムのダイヤフラム部を往復動させ前記ポンプ室を拡縮させることでポンプ作用をするダイヤフラムポンプにおいて、前記駆動軸の他端と前記非貫通孔の底部との間に弾性部材を介装したものである。
【0013】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記ダイヤフラムホルダーに、前記駆動体の揺動中心部を当接させる当接部を設けたものである。
【0014】
本発明は、前記発明において、前記弾性部材を圧縮コイルばねとしたものである。
【0015】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記駆動軸の他端と前記弾性部材との間にボールを介在させたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、駆動軸の他端と非貫通孔の底部との間に弾性部材を介装したことにより、駆動体の揺動動作中に駆動軸の他端と非貫通孔の底部とが直接当接しないから、これらの間の衝突によって発生する機械音を抑制することができる。また、弾性部材の弾性力によって常に駆動体がダイヤフラムホルダーの当接部に当接するように予圧が加えられているため、駆動体の揺動動作中に駆動体とダイヤフラムラムホルダーとの間で当接および離間の繰り返しによって発生する機械音を抑制することができる。さらに、常に駆動体がダイヤフラムホルダーの当接部に当接するように予圧が加えられていることにより、駆動体の当接部への当接状態が保持されるため、駆動体の当接部を中心とした揺動動作が安定するからポンプ作用も安定する。
【0017】
また、駆動軸の他端と非貫通孔の底部との間および駆動体とダイヤフラムラムホルダーとの間で衝突が発生しないことにより、これらの間での部品の摩耗を規制することができるから耐久性が向上する。また、駆動体の揺動動作中に、ダイヤフラムから駆動体にかかる負荷に変動が生じても、この変動を弾性部材によって吸収できるため、駆動体の揺動動作が円滑に行われるから安定したポンプ作用が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係るダイヤフラムポンプの断面図である。これらの図において、上述した図2に示す従来技術において説明した同一または同等の部材については同一の符号を付し詳細な説明は適宜省略する。
【0019】
本発明に係るダイヤフラムポンプ1の特徴とするところは、駆動体6の非貫通孔7の底部7aと、駆動軸5の上端5aに対接させたボール30との間に弾性部材として機能する圧縮コイルばね31を介装させた点にある。したがって、クランク台4の回転中に、駆動体6が駆動軸5の軸線方向に移動しようとしても、圧縮コイルばね31が介装されていることによって、駆動軸5の上端5aと非貫通孔7の底部7aとが当接しないから、これらの間での衝突によって発生する機械音を抑制することができる。
【0020】
また、圧縮コイルばね31の弾発力によって駆動体6の頭部6aがダイヤフラムホルダー10の当接部11に常に当接するような予圧が加えられているため、駆動体6の揺動動作中に頭部6aと当接部11との間で当接および離間の繰り返しによって発生する機械音を抑制することができる。さらに、常に駆動体6がダイヤフラムホルダー10の当接部11に当接するように予圧が加えられていることにより、駆動体6の当接部11への当接状態が保持されるため、駆動体6の当接部11を中心とした揺動動作が安定するからポンプ作用も安定する。
【0021】
また、駆動軸5の上端5aと非貫通孔7の底部7aとの間および駆動体6の頭部6aと当接部11との間で衝突が発生しないため、これらの間での部品の摩耗を規制することができるから耐久性が向上する。また、駆動体6の揺動動作中に、ダイヤフラム13から駆動体6にかかる負荷に変動が生じたとしても、この変動を圧縮コイルばね31によって吸収できるため、駆動体6の揺動動作が円滑に行われるから安定したポンプ作用が得られる。また、圧縮コイルばね31と駆動軸5の上端5aとの間にボール30を介在させたことにより、モータ3の駆動によりクランク台4が回転するときに、回転する駆動軸5に対して停止状態にある圧縮コイルばね31の下端が駆動軸5の上端5aに喰いついたり摩耗したりするようなことがない。
【0022】
なお、本実施の形態においては、駆動体6に駆動子8を二つ設けた、いわゆる2気筒のダイヤフラムポンプについて説明したが、駆動子8が一つである1気筒の場合および3気筒以上の場合にも同様な効果が得られる。また、本実施の形態においては、駆動体6の頭部6aをダイヤフラムホルダー10の当接部11に当接させ、この当接部11を揺動中心として駆動体6を揺動させるようにしたが、駆動体6の頭部6aを当接部11から離間させた状態で駆動体6を揺動させるようにしてもよく、その場合は、圧縮コイルばね31の弾発力によってボール30が駆動軸5の上端5aに当接した状態が保持されるため、駆動体6の揺動動作中にボール30と駆動軸5の上端5aとの間で衝突による機械音の発生を抑制することができる。また、非貫通孔7の底部7aとボール30との間に圧縮コイルばね31を介装するようにしたが、圧縮コイルばね31の替わりにゴム、スポンジ等の弾性体を介装させるようにしてもよい。また、圧縮コイルばね31の下端と駆動軸5の上端5aとの間にボール30を介在させるようにしたが、駆動軸5の上端5aと圧縮コイルばね31の下端との間に発生する摩耗や喰い付きが軽微な場合は、必ずしもボール30を介装させることはなく、駆動軸5の上端5aと圧縮コイルばね31の下端とを直接接触させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るダイヤフラムポンプの断面図である。
【図2】従来のダイヤフラムポンプ断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…ダイヤフラムポンプ、3…モータ、3a…出力軸、4…クランク台、5…駆動軸、5a…上端、6…駆動体、6a…頭部、7…非貫通穴、7a…底部、8…駆動子、10…ダイヤフラムホルダー、11…当接部、13…ダイヤフラム、14…ダイヤフラム部、19…吸入弁、20A,20B…ポンプ室、21…吐出弁、25…吐出筒、26…吸入筒、30…ボール、31…圧縮コイルばね(弾性部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸と一体的に回転するクランク台と、このクランク台の前記出力軸から偏心した部位に当該出力軸に対して傾斜した状態で一端部が軸着された駆動軸と、この駆動軸の他端部に回動自在に枢支される非貫通孔を有しこの非貫通孔の軸線と略直交する方向に延在する駆動子を有する駆動体と、この駆動体の駆動子に取り付けられポンプ室を形成するダイヤフラム部を有するダイヤフラムと、このダイヤフラムを保持するダイヤフラムホルダーとを備え、前記駆動体を揺動させることにより前記ダイヤフラムのダイヤフラム部を往復動させ前記ポンプ室を拡縮させることでポンプ作用をするダイヤフラムポンプにおいて、
前記駆動軸の他端と前記非貫通孔の底部との間に弾性部材を介装したことを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
前記ダイヤフラムホルダーに、前記駆動体の揺動中心部を当接させる当接部を設けたことを特徴とする請求項1記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
前記弾性部材を圧縮コイルばねとしたことを特徴とする請求項1または2記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
前記駆動軸の他端と前記弾性部材との間にボールを介在させたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項記載のダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−299530(P2009−299530A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153092(P2008−153092)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000121833)応研精工株式会社 (31)
【Fターム(参考)】