説明

ダイヤフラムポンプ

【課題】吐出弁の開閉音を消音し、静粛性に優れたダイヤフラムポンプを提供する。
【解決手段】円筒状膜弁体13が弁座14の円筒外周面14aに開閉自在に接触するように設けられた吐出弁11と、吐出孔9と、を有するダイヤフラムポンプであって、吐出孔9に消音ブロック30を介装し、吐出弁11の開閉音を、消音するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用のダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体用のダイヤフラムポンプは、吸気弁や吐出弁の開閉音による雑音が発生する場合がある。従来、特許文献1記載のように、吸気弁をダイヤフラムに一体状に設け、吸気弁から発生する雑音を低減するものが知られている。
【特許文献1】特開2001−248564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、吐出弁側が開閉動作をおこなった際に開閉音(吐出側の弁体が吐出側の弁座を叩く音)が発生し、吐出孔を介してポンプ本体の内部から外部に漏れ、雑音となるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、吐出弁の開閉音を消音し、静粛性に優れたダイヤフラムポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のダイヤフラムポンプは、円筒状膜弁体が弁座の円筒外周面に開閉自在に接触するように設けられた吐出弁と、吐出孔と、を有するダイヤフラムポンプに於て、上記吐出孔に消音ブロックを介装し、上記吐出弁の開閉音を、消音するように構成したものである。
【0006】
また、上記消音ブロックは、上記吐出孔を通過する吐出流体を迂回させる迂回流路を上記吐出孔内に形成するように構成されているものである。
【0007】
また、上記消音ブロックは、上記吐出孔を通過する吐出流体を絞る絞り流路を、上記吐出孔内に形成するように構成されているものである。
また、上記消音ブロックは、上記吐出孔よりも小さい貫孔を有する円筒状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダイヤフラムポンプによれば、吐出孔から吐出弁の開閉音(作動音)が漏れるのを有効に消音(軽減)できる。静粛性に優れたダイヤフラムポンプを簡単に製造可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1は、本発明の第1の実施の形態を示し、1は、電気モータ等の駆動源2の回転軸2aに取着されるダイヤフラムポンプ本体である。
ポンプ本体1は、内部に膨縮するポンプ室7を3つ設けている。ポンプ室7は、回転軸2aの回転軸心L2 廻りに120 度等間隔に設けられている。
ポンプ室7は、円筒状の弁座14と、碗型のダイヤフラム20によって形成されている。ダイヤフラム20は、ポンプ室7と同様に回転軸2aの回転軸心L2 廻りに120 度等間隔に3つ設けられ、回転軸心L2 に直交する面状のパッキン部21によって一体に連結されダイヤフラム集合体を形成している。
【0010】
ダイヤフラム20は、弁座14の円筒外周面14aに接触・離間(開閉)可能に形成された円筒状膜弁体13を一体状に有している。この円筒状膜弁体13と弁座14の円筒外周面14aによってポンプ室7の吐出弁11を形成している。
また、各(3つ)ポンプ室7と1つの吐出孔9を連通する吐出室8を有している。吐出室8は各ポンプ室7が共用可能に形成されている。
【0011】
また、弁座14は、回転軸心L2 と直交平面状の先端面を有する先端壁部14bを有している。先端壁部14bには、吸気孔4とポンプ室7を連通可能な吸気路6が貫設されている。また、先端壁部14bには、傘状弁体12が、吸気路6を開閉可能に設けられている。この傘状弁体12と弁座14の先端壁部14b(の先端面)によって、ポンプ室7の吸込弁10を形成している。
また、ポンプ本体1には、1つの吸気孔4と各(3つの)ポンプ室7を連結する吸気室5を有している。吸気室5は、各ポンプ室7が共用可能に形成されている。
【0012】
また、ポンプ本体1は、回転軸心L2 から偏心した位置に配設され、傾斜状に回転軸2aに取着されるクランク軸25を備えている。また、クランク軸25に取着され各ダイヤフラム20の駆動部22に接続された揺動板26を備えている。ポンプ本体1は、液体及び気体に使用可能である。
【0013】
そして、ポンプ本体1は、消音ブロック30を内蔵している。図4に、図1の要部拡大図を示す。
図1と図4に於て、ポンプ本体1は、吸気孔4及び吐出孔9を有する蓋体3を備えている。蓋体3の吐出孔9は、蓋体3の底面3a側から吐出孔9の吐出軸心L9 方向に窪んだ円形凹部90を有している。円形凹部90は、吐出軸心L9 に直交平面状の段差面91を形成している。消音ブロック30は、円形凹部90に、蓋体3の底面3a側から、挿入されて、吐出孔9に介装される。また、段差面91と吐出孔9の一部を形成する貫通孔15aを有するパッキン部材15とで挟まれている。組立工程に於て、消音ブロック30は容易かつ迅速に介装可能である。また、段差面91は、消音ブロック30の位置決め当り面である。
【0014】
図3に消音ブロック30の平面図を示す。図3及び図4に於て、消音ブロック30は、短円柱状のブロックの外周面30bに、軸心L30方向の外周凹部32を形成し、平面視歯車状に形成されている。また、軸心L30に直交する両平面30a,30aに、十字路状凹溝33を形成し、さらに、外周縁部近傍で、十字路状凹溝33を包囲する環状窪部34を形成している。吐出軸心L9 に同心状に配設される。また、消音ブロック30は、円形凹部90に圧入するのが好ましい。材質は、合成樹脂,金属,合成ゴム等自由である。
【0015】
消音ブロック30は、吐出孔9の円形凹部90に同心状に介装された図4の状態で、段差面91と一方(外部側寄りの)十字路状凹溝33に囲まれた通路と、一方の環状窪部34と円形凹部90の隅部に囲まれた通路と、外周凹部32と円形凹部90の内壁92に囲まれた通路と、他方(内部側寄り)の環状窪部34と内壁92及びパッキン部材15に囲まれた通路と、パッキン部材15と他方の十字路状凹溝33に囲まれた通路と、によって、吐出されるべき気体が、吐出路9の吐出軸心L9 方向に直進状に送流せず、迂回して送流させる迂回流路52を形成する。
【0016】
上述した本発明の第1の実施の形態についてダイヤフラムポンプの使用方法(作用)について説明する。
ポンプ本体1は、回転軸2aが回転することで、クランク軸25が、回転軸心L2 を中心として周回する。クランク軸25に取着される揺動板26が各ダイヤフラム20に設けられた駆動部22を順次往復運動させ、各ポンプ室7を順次膨縮させる。
ポンプ室7がダイヤフラム20によって圧縮されることで、図1に示すように、円筒状膜弁体13が弁座14の円筒外周面14aからポンプ室7の内圧により離間し、ポンプ室7から吐出弁11を介して流体が各ポンプ室7と共用の吐出室8に排出される。吸込弁10は、ポンプ室7からの内圧により吸気路6を閉鎖し吸気孔4からの流体の侵入及び排出を防ぐ。
ポンプ室7がダイヤフラム20によって膨張することで、内部が負圧となり、吸込弁10が吸気路6を開口し、吸気孔4から各ポンプ室7と共用の吸気室5を介しての流体を流入させる。円筒状膜弁体13は、図2に示すようにポンプ室7の負圧により弁座14の円筒外周面14aに密着し、流体の排出及び逆流を防ぐ。
【0017】
このようにポンプ本体1が、円筒状膜弁体13が弁座14の円筒外周面14aに接触・離間して開閉動作すると、円筒状膜弁体13が弁座14の円筒外周面14aを叩く開閉音が発生する(吐出弁11は動作すると開閉音を発生する)。この開閉音(作動音)は、送流すべき流体が気体(空気等)の場合に、吐出孔9を介してポンプ本体1の外部に漏れ、雑音となる虞れがある。ところが、ポンプ本体1の吐出孔9に介装される消音ブロック30によって、開閉音は消音される。
【0018】
吐出流体(吐出されるべき気体)は、吐出孔9に介装された消音ブロック30に衝突後、迂回流路52(十字路状凹溝33、外周凹部32、円形凹部90等)に沿って外部側の吐出孔9に送流され吐出される。
開閉音が迂回流路52に侵入しても、外部に漏れるためには、多数回の繰返し反射が必要となるため、開閉音は迂回流路52内を反射(通過)中に消音(減衰)される。つまり、吐出弁11の開閉音はポンプ本体1内部で消音され外部に雑音を発生させない。
【0019】
消音ブロック30を取り外すことで、液体用としてポンプ本体1を使用しても良い。
製造の際に、ポンプ本体1の各部品(ダイヤフラム20や蓋体3等)を共通部品として、蓋体3に消音ブロック30を介装させるだけで、静音(静粛)対応(主に気体用)のダイヤフラムポンプとすることができる。介装させないものを液体用のダイヤフラムポンプとすることができる。
【0020】
次に、第2の実施の形態について説明する。図5に消音ブロック3の平面図を示す。図6に、蓋体3に介装された状態の要部拡大断面図を示す。
消音ブロック30を、短い円筒状に形成している。つまり、軸心L30と同心状の貫孔31を貫設している。貫孔31は、吐出孔9の吐出半径寸法R2 より小さい内周半径寸法r2 に設定されて、絞り流路51を形成する。消音ブロック30の外周面30bは、迂回するような通路を形成せず、円形凹部90の内壁92に密着する。一方の平面30aは、段差面91に接触する。貫孔31は、吐出孔9に同心状に配設される。
【0021】
吐出流体(吐出すべき気体)は、絞り流路51(貫孔31)を介して吐出孔9から外部に吐出される。
開閉音は、消音ブロック30に衝突することで、ポンプ本体1内部に反射され閉じ込められて消音される。また、絞り流路51(貫孔31)を通過する開閉音は、極めて小さな音量となってポンプ本体1の外部で雑音とはならない。
【0022】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、吐出孔9に円形凹部90を形成せずに、消音ブロック30を介装させても良い。この場合に、吐出孔9を外部に吐出しないように、吐出孔9側に雌ネジ部を形成し、消音ブロック30に雄ネジ部を形成して螺着による抜け止め手段を設けるのが望ましい。また、吐出孔9に消音ブロック30を圧入のみで介装しても良い。
【0023】
以上のように、本発明は、円筒状膜弁体13が弁座14の円筒外周面14aに開閉自在に接触するように設けられた吐出弁11と、吐出孔9と、を有するダイヤフラムポンプに於て、吐出孔9に消音ブロック30を介装し、吐出弁11の開閉音を、消音するように構成したので、吐出孔9から吐出弁11の開閉音が漏れるのを防止できる。静粛性に優れたダイヤフラムポンプとすることができる。
【0024】
また、消音ブロック30は、吐出孔9を通過する吐出流体を迂回させる迂回流路52を吐出孔9内に形成するように構成されているので、吐出孔9から吐出弁11の開閉音が漏れるのを防止できる。開閉音が漏れる迄に多数の反射を繰り返させ確実に開閉音を消音できる。反射や閉じ込めることで音を減衰させ消音させるので、吸音材等の特殊な材料を用いなくとも容易に消音できる。
【0025】
また、消音ブロック30は、吐出孔9を通過する吐出流体を絞る絞り流路51を、吐出孔9内に形成するように構成されているので、開閉音を確実に消音できる。吐出流体の流量を大きく減少せることなく開閉音を消音できる。反射や閉じ込めることで音を減衰させ消音させるので、吸音材等の特殊な材料を用いなくとも容易に消音できる。
【0026】
また、消音ブロック30は、吐出孔9よりも小さい貫孔31を有する円筒状に形成されているので消音ブロック30を容易かつ安価に製作できる。吐出孔9に同心状に絞り流路51を形成でき吐出流体の流れ抵抗を大きく増加させずに消音できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のダイヤフラムポンプの第1の実施の形態を示す側面断面図である。
【図2】作用を説明する要部断面図である。
【図3】消音ブロックの一例を示す平面図である。
【図4】要部拡大図である。
【図5】消音ブロックの別の一例を示す平面図である。
【図6】第2の実施の形態の作用を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0028】
9 吐出孔
11 吐出弁
13 円筒状膜弁体
14 弁座
14a 円筒外周面
30 消音ブロック
31 貫孔
51 絞り流路
52 迂回流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状膜弁体(13)が弁座(14)の円筒外周面(14a)に開閉自在に接触するように設けられた吐出弁(11)と、吐出孔(9)と、を有するダイヤフラムポンプに於て、
上記吐出孔(9)に消音ブロック(30)を介装し、上記吐出弁(11)の開閉音を、消音するように構成したことを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
上記消音ブロック(30)は、上記吐出孔(9)を通過する吐出流体を迂回させる迂回流路(52)を上記吐出孔(9)内に形成するように構成されている請求項1記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
上記消音ブロック(30)は、上記吐出孔(9)を通過する吐出流体を絞る絞り流路(51)を、上記吐出孔(9)内に形成するように構成されている請求項1記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
上記消音ブロック(30)は、上記吐出孔(9)よりも小さい貫孔(31)を有する円筒状に形成されている請求項1又は3記載のダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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