説明

ダイヤフラム隔膜

【課題】 弁軸部の上下動により発生する応力に抗して耐久性に富み、弁体の大きなストロークを実現できるダイヤフラム隔膜を提供する。
【解決手段】
液体製品が流通する管路内に設けられた弁座部を閉止又は開放する弁体部に接合された弁軸部の下端部において、弁軸部側と管路内部側とを隔離可能に被覆する隔膜本体部と、上記隔膜本体部の上端部に形成され、上記弁軸部が内装される弁軸支持部に固定される固定部と、上記隔膜本体部の中央部に形成され、上記弁軸が挿通され、上記弁体部が上記弁座部を閉止した際には上記固定部よりも下方に配置される弁軸貫通孔部とを備えたダイヤフラム隔膜であって、上記隔膜本体部において、弁軸貫通孔の周囲には、下方へ膨出する第一の膨出部が形成されると共に、上記第一の膨出部の上方には上方へ膨出する第二の膨出部が形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤフラム隔膜に係り、特に、各種の液体製品を製造し処理するサニタリープラントにおける管路の弁栓部に使用されるダイヤフラム隔膜に関する。
【0002】
一般に、液体食品又は医薬品を製造するサニタリープラントにおいては、殺菌工程以後の工程にあっては、製品の二次的な細菌汚染を防止するために、液体通路に配設された弁栓部に隔膜が用いられている。
【0003】
このような弁栓部に使用される弁栓装置は、一方の管路と他方の管路との間の接合部又は、上方管路と下方管路との間に設けられた連通路に、弁座部を設け、上記弁座部の下部内周側部に密接しうる弁体と、上記管路内から上方へ突出して配置され、上記弁体に接合された弁軸とを備え、上記弁軸が弁開閉駆動機構に接続され、上記弁開閉駆動機構により弁体が駆動されて上記弁座部を閉止又は開放されるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成された弁栓装置にあっては、上記弁軸は上記管路から上方へ突出して大気開放状態で配置されていることから、上記弁軸を上下動させた場合には、弁軸が大気に接触して大気中の菌が付着し、その後、弁座部を閉止するために下降した場合には管路内を流通する液体製品に触れることから、上記菌により2次汚染される可能性があり、弁栓部においてはこのような弁軸の上下動による液体製品への2次汚染を確実に防止する必要がある。
【0005】
このような観点から、一般に、上記弁軸の下端部にバックプレート部を介して隔膜を設け、弁軸の下端部と弁栓部のボディ接合部との間を被覆し、弁軸側と管路内部とを隔離しうるように構成されている。
【0006】
このような隔膜としては、耐久性の観点から、従来よりダイヤフラム隔膜が使用されてきており、図5に示すように、このダイヤフラム隔膜70は、例えば、全体略逆截頭円錐台形状に形成され、周縁上端部には固定部71が形成されると共に、中央下部には弁軸貫通孔部72が開設され、上記固定部71と上記貫通孔72との間には均一な厚さ寸歩の斜面部73が形成されている。
【0007】
このようなダイヤフラム隔膜70にあっては、弁軸が駆動され弁体が上方へ移動し、弁座を開放する際には、管路内を流通する液体製品の圧力損失を低減するためには弁体のストロークを大きくとる必要があり、そのためには、ダイヤフラム隔膜70も弁体の大きなストロークに追随して大きく屈曲できるようにする必要がある。
この場合、従来の隔膜70にあっては、弁体の大ストロークに対応できるようにするためには、上記斜面部73の傾斜角度αを大きくする必要がある。
【0008】
しかしながら、このように斜面部73の傾斜角度αを大きく形成した場合には、弁体が弁座部開放のために弁軸部により上方へ移動した場合には弁軸部(図示せず)と共に上記弁軸貫通孔部72も上方へ移動し、その結果、上記貫通孔72の周縁部74が大きく上方へ屈曲することから、斜面部73と貫通孔72との接合部位である上記周縁部74付近に大きな応力が作用し、経年時には当該部分の強度が劣化し耐久性が低下することから、斜面部73の傾斜角度αを余り大きくとることはできず、その結果、弁体の大きなストロークを実現することが困難となる、という不具合があった。
【0009】
本願発明はこのような従来の不具合を解消するためになされたものであって、弁軸部の上下動により発生する応力に抗して耐久性に富み、弁体の大きなストロークを実現できるダイヤフラム隔膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題達成のため、請求項1記載の発明にあっては、液体製品が流通する管路内に設けられた弁座部を閉止又は開放する弁体部に接合された弁軸部の下端部において、弁軸部側と管路内部側とを隔離可能に被覆する隔膜本体部と、上記隔膜本体部の上端部に形成され、上記弁軸部が内装される弁軸支持部に固定される固定部と、上記隔膜本体部の中央部に形成され、上記弁軸が挿通され、上記弁体部が上記弁座部を閉止した際には上記固定部よりも下方に配置される弁軸貫通孔部とを備えたダイヤフラム隔膜であって、上記隔膜本体部において、弁軸貫通孔の周囲には下方へ膨出する第一の膨出部が形成されると共に、上記第一の膨出部の上方には上方へ膨出する第二の膨出部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
従って、請求項1記載の発明に係るダイヤフラム隔膜にあっては、弁体部が弁座の閉止状態から弁軸駆動部の作動により弁軸が上方へ駆動されることにより弁座から離間し、弁体部が完全に管路内の流路を開放した場合には、上記弁軸挿通孔部も追随して上方へ移動し、上記隔膜本体部は上方へ大きく折曲されることになるが、上記第一の膨出部が折曲された場合に発生する応力を受ける。
【0012】
請求項2記載の発明にあっては、全体逆截頭円錐台形状に形成され、上記隔膜本体部の厚さ寸法は均一に形成され、上記第一の膨出部及び第二の膨出部は上記隔膜本体部を膨出形成することにより構成され、上記第一の膨出部は、上記弁体部が上記弁座部から離間して上昇し、隔膜本体部が変形し最大の応力が作用した状態の形状と同一に形成され、上記弁軸貫通孔部は、上記隔膜本体部の厚さ寸法よりも大きな厚さ寸法に形成され、上記第一の膨出部は上記弁軸貫通孔部に連続して形成され、上記第二の膨出部は上記第一の膨出部に連続して形成されると共に、上記第二の膨出部と上記上端固定部との間は平坦な斜面部が形成され、上記第二の膨出部は、弁体が弁座部を閉止している状態においては裏面側に配設されたバックプレートに当接することを特徴とする。
【0013】
従って、請求項2記載の発明にあっては、上記弁体部が弁座部から離間して上昇し、その結果、隔膜本体部が大きく変形し、厚さ方向に最大の応力が作用した場合であっても、上記第一の膨出部は上記弁体部が上記弁座部から離間して上昇し、隔膜本体部が変形し最大の応力が作用した状態の形状と同一に形成されていることから、弁軸貫通孔の周囲の部位における隔膜本体部の厚さ方向における変形を抑止することができる。
【0014】
また、上記第二の膨出部は、弁体が弁座部を閉止している状態においては裏面側に配設されたバックプレートに当接することから、上記のように単に第一の膨出部を形成した場合には、バックプレートから離間してしまい、隔膜自体で形状を支えねばならないが、本請求項記載の発明にあっては、上記第一の膨出部の周縁部位に応力が集中した場合であっても、当該応力を支持することができる。
【0015】
請求項3記載の発明に係るダイヤフラム隔膜にあっては、上記第一の膨出部及び第二の膨出部は、全周に亘ってリング状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明に係るダイアフラム隔膜にあっては、上記弁軸貫通孔部は短円筒状に形成され、上記第一の膨出部は上記弁軸貫通孔部の軸方向上端部に接合され、上記弁軸貫通孔部の軸方向下端部に向かって膨出するように形成され、上記弁軸貫通孔部の側面部と上記第一の膨出部の上面傾斜部との間は50度の角度であって、上記弁軸貫通孔部の上端部と上記第一の膨出部の裏面部との間は45度の角度に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明に係るダイアフラム隔膜にあっては、上記弁軸貫通孔部の上面部と上記第二の膨出部の下面部の下方傾斜部との間は70度の角度であると共に、上記第二の膨出部の上方傾斜部との間は20度の角度に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、4及び5記載の発明にあっては、弁体部が弁座部の閉止状態から弁軸駆動部の作動により弁軸が上方へ駆動されることにより弁座部から離間し、弁体部が完全に管路内の流路を開放した場合には、上記弁軸挿通孔部は上方へ移動し、上記隔膜本体部の上記弁軸駆動部の周辺部は上方へ折曲されるが、上記第一の膨出部が折曲された場合に発生する応力を受ける。
【0019】
その結果、従来のように隔膜本体部が均一の厚さ寸法に形成されている場合とは異なり、上記応力は上記第一の膨出部により受け止められることから、弁体部の大きな上下動のストロークに対応でき、計年時においても耐久性を有するダイヤフラム隔膜を提供することができる。
【0020】
請求項2記載の発明にあっては、従って、請求項2記載の発明にあっては、上記弁体部が弁座部から離間して上昇し、その結果、隔膜本体部が大きく変形し、厚さ方向に最大の応力が作用した場合であっても、上記第一の膨出部は上記弁体部が上記弁座部から離間して上昇し、隔膜本体部が変形し最大の応力が作用した状態の形状と同一に形成されていることから、弁軸貫通孔の周囲の部位における隔膜本体部の厚さ方向における変形を抑止することができ、弁軸貫通孔周辺部位の変形により作用する応力の発生を防止することができるため、隔膜本体部の弁軸挿通後部の周縁における強度を向上させることができる。
その結果、従来のダイアフラム隔膜にあっては、数回の作動で凹みが発生し、5万回程度の作動で上記凹み部にクラックが発生していたが、本発明により強度が向上し、100万回程度の作動あっても、凹みやクラックの発生もないことが確認されている。
【0021】
また、上記第二の膨出部は、弁体が弁座部を閉止している状態においては裏面側に配設されたバックプレートに当接することから、単に第一の膨出部を形成した場合には、バックプレートから離間してしまい隔膜自体で形状を支えねばならないことから、上記第一の膨出部の周縁部位に応力が集中し、使用の過程において上記第一の膨出部の周縁部位にクラックが発生する、という事態に至る可能性があるが、本発明においては上記第二の膨出部が形成され、強度が確保されていることから、このような事態を有効に防止することができる。
【0022】
請求項3記載の発明にあっては、上記弁軸部の上方への移動に伴い弁体部が上方へ移動した場合には上記弁軸挿通孔は上方へ移動し、上記隔膜本体部の上記弁軸駆動部の周辺部は、上方へ折曲されるが、上記第一の膨出部が、折曲された場合に発生する応力を全周に亘って受けることから、上記弁軸挿通孔部周縁部の強度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るダイアフラム隔膜を二重弁栓装置に使用した場合の一実施の形態を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係るダイアフラム隔膜を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係るダイアフラム隔膜の弁軸貫通孔部及びその近傍を一部拡大して示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係るダイアフラム隔膜を通常の弁栓装置に適用した例を示す断面図である。
【図5】従来のダイアフラム隔膜の形状を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るダイアフラム隔壁を二重弁栓装置に適用した場合を例に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る二重弁栓装置10は、液体製品が流通する上方管路11及び下方管路12の間に設けられた連通路13内には弁座部14が設けられ、上記弁座部14の上部に圧接する上方弁体15と、上記上方弁体15の下方に同軸上で独立して上下動可能に配設された下方弁体16とを有している。
【0025】
上記上方弁体15は、上方管路11を径方向に貫通して配置された上方弁軸部17を介して弁軸駆動部18により駆動されると共に、下方弁体16は上記弁軸部17内に設けられた下方弁軸部24により上方弁体15とは独立して駆動されるように構成されている。
【0026】
二重弁栓装置10の弁軸接合部25の下端部には径方向に膨出して接合固定部26が形成され、二重弁栓装置10は上記接合固定部26を介してクランプ部27により上方管路11及び連通路13に固定されている。
上記接合固定部26の内方にはバックプレート28が、上記上方弁軸部17の下端部に、バックプレート固定部29により固定されている。
そして、上記のように構成された本実施の形態に係る二重弁栓装置10において、上記弁軸部17の下端部には、上記バックプレート28に当接してダイアフラム隔膜19が配設されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、ダイアフラム隔膜19は、弁軸部17側と上方管路11内部側とを隔離可能に被覆する隔膜本体部20と、上記隔膜本体部20の上端部に形成され、上記弁軸部17が内装される弁軸支持部としての接合固定部26に固定される固定部22と、上記隔膜本体部20の中央部に形成されて上方弁軸部17が挿通され、上記上方弁体15が上記弁座部14を閉止した際には上記固定部22よりも下方に配置される弁軸貫通孔部23とを備えている。
【0028】
図2に示すように、本実施の形態に係るダイアフラム隔膜19は、上記隔膜本体部20において、弁軸貫通孔部23の周囲には、下方へ膨出する第一膨出部31が形成されると共に上記第一膨出部31の上方には上方へ膨出する第二膨出部32が形成されている。
即ち、本実施の形態に係るダイアフラム隔膜19は、全体逆截頭円錐台形状であって、上記隔膜本体部20の厚さ寸法は均一に形成され、上記第一膨出部31及び第二膨出部32は上記隔膜本体部20を膨出形成することにより構成され、上記第一膨出部31及び第二膨出部32は、全周に亘ってリング状に形成されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、上記第一膨出部31は、上記上方弁体15が上記弁座部14から離間して上昇し、その結果、固定部22が接合固定部26に固定されていることから、上記弁軸貫通孔部23は上方弁軸部17と共に上昇することから、隔膜本体20は大きく屈曲することとなるが、上記隔膜本体部20が屈曲変形し最大の応力が作用した状態の形状と同一に形成されている。
上記弁軸貫通孔部23は短円筒状に形成され、上記第一膨出部31は上記弁軸貫通孔部23に隣接して連続して形成され、上記弁軸貫通孔部23の軸方向上端部33に接合され、上記弁軸貫通孔部23の軸方向下端部34に向かって凸状に膨出するように形成され、上記弁軸貫通孔部23の側面部35と上記第一膨出部31の上面傾斜部36との間の角度αは50度であって、上記弁軸貫通孔部23の下端面部37と上記第一膨出部の下面傾斜部38との間の角度Bは45度に形成されている。また、上記下端面部37と隔膜本体部20の裏面部との間の角度Eは55度に形成されている。
【0030】
一方、上記第二膨出部32と上端の固定部22との間は平坦斜面部40が形成され、上記弁軸貫通孔部23の下端面部37と上記第二膨出部32の裏面部の下方傾斜部41との間の角度は70度の角度に形成されると共に上記第二膨出部の上方傾斜部42の水平面に対する角度Dは20度に形成されている。
【0031】
本実施の形態にあっては、上記バックプレート28の表面部形状は、上記第一膨出部31の断面形状と同一に形成されると共に、バックプレート固定部29は第二膨出部32の上方傾斜部42の断面形状と同一に形成されており、その結果、図1に示すように、上第一膨出部31及び第二膨出部32は、上方弁体15が弁座部14を閉止している状態においては上記バックプレート28に当接している。
【0032】
以下、本実施の形態に係るダイアフラム隔膜19の作用について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るダイアフラム隔膜19にあっては、上方弁体15が弁座部14に圧接して閉止状態にある場合には、ダイアフラム隔膜19の第一膨出部31及び第二膨出部32は、バックプレート28に密接した状態にあり、ダイアフラム隔膜19はバックプレート28により裏面側から支持された状態にある。
【0033】
その後、上方弁体15及び下方弁体16が弁軸駆動部18により弁軸部17を介して駆動され上昇した場合には、ダイアフラム隔膜19の弁軸貫通孔部23は弁軸部17と共に上方へ移動し、隔膜本体部20は大きく屈曲することとなる。
【0034】
この場合、上記のように弁軸部17により上方へ引張され、弁軸貫通孔部23と隔膜本体部20との接合部位43に最も大きな屈曲応力が作用するが、本実施の形態にあっては、上記部位には第一膨出部31が形成され、この第一膨出部31は、上記上方弁体15が上記弁座部14から離間して上昇し、その結果、上記隔膜本体部20が変形し最大の応力が作用した状態の形状と同一に形成されていることから、弁軸貫通孔部23に隣接する部位における屈曲応力に充分に対抗することができ、長年月に亘って使用した場合であっても、応力による破断等を起こすことがなく、耐久性を向上させることができる。
【0035】
その結果、上方管路11内の液体製品の圧力損失を回避するために、上方弁体15の大きなストロークを確保する必要があるが、上方弁体15の大きなストロークを確保するためには、上述のように、隔膜本体部20と固定部22の一般面との間の角度α1を大きく形成して隔膜本体部20を立ち上げる必要があり、隔膜本体部20と弁軸貫通孔部23との接合部位に大きな応力の発生が予想されるが、本実施の形態に係るダイアフラム隔膜19にあっては、第一の膨出部31によりそのような応力に充分に対抗することができることから、幕面積を変えることなく弁体の大きなストロークを得ることができる。
【0036】
また、弁軸部17により上方へ引張され、弁軸開口孔部23が固定部22と略同一の高さ位置に至った場合には、上記のように隔膜本体部20と弁軸貫通孔部23の接合部位に大きな応力が作用すると共に、隔膜本体部20の斜面方向の中間部は大きく下方に屈曲することから、当該中間部にも大きな応力が作用し負荷がかかる。
【0037】
しかしながら、本実施の形態に係るダイアフラム隔膜19にあっては、上記の屈曲する方向とは反対の方向へ、上記のように所定の角度を以て突出する形状の第二膨出部32が形成されていることから、隔膜本体部20の斜面方向の中間部へ作用する応力の集中を防ぐことができ、隔膜本体部20の折曲強度を向上させることができる。
【0038】
さらに、一般に、弁軸部の上下動に追随して隔膜が屈曲した場合、単なる平坦な傾斜面部からなる従来の隔膜本体部にあっては、5万回程度の上下動により上記中間部に放射状のくぼみが発生し、その結果、破断することとなる場合が多かった。
【0039】
しかしながら、本実施の形態に係るダイアフラム隔膜19にあっては、第二膨出部32が設けられていることから、隔膜本体部20の強度を向上させて、屈曲応力に対して有効に対抗することができ、100万回の作動であっても、凹みや、クラック等が発生する可能性はないことが確認されている。
なお、上記実施の形態にあっては、本発明に係るダイアフラム隔膜を二重弁栓装置に適用した場合を例に説明したが、上記実施の形態に限定されず、例えば、通常の単一の弁体を備えた弁栓装置50にダイアフラム隔膜51を適用することは可能である。他の構成は前記実施の形態と同一である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、広く内部を流体が流通する管路内に設けられた弁栓装置に広く使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 二重弁栓装置
11 上方管路
12 下方管路
13 連通路
14 弁座部
15 上方弁体
16 下方弁体
17 弁軸部
18 弁軸駆動部
19 ダイアフラム隔膜
20 隔膜本体部
21
22 固定部
23 弁軸貫通部
24 下方弁軸部
25 弁軸接合部
26 接合固定部
27 クランプ
28 バックプレート
29 バックプレート固定部
31 第一の膨出部
32 第二の膨出部
33 軸方向上端部
34 軸方向下端部
35 側面部
36 上面傾斜部
37 下端面部
38 下面傾斜部
39 上端固定部
40 平坦斜面部
41 下方傾斜部
42 上方傾斜部
43 接合部位
50 弁栓装置
51 ダイアフラム隔膜
70 ダイアフラム隔膜
71 固定部
72 弁軸貫通孔部
73 斜面部
74 周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体製品が流通する管路内に設けられた弁座部を閉止又は開放する弁体部に接合された弁軸部の下端部において、弁軸部側と管路内部側とを隔離可能に被覆する隔膜本体部と、上記隔膜本体部の上端部に形成され、上記弁軸部が内装される弁軸支持部に固定される固定部と、上記隔膜本体部の中央部に形成されて上記弁軸が挿通され、上記弁体部が上記弁座部を閉止した際には上記固定部よりも下方に配置される弁軸貫通孔部とを備えたダイヤフラム隔膜であって、
上記隔膜本体部において弁軸貫通孔の周囲には、下方へ膨出する第一の膨出部が形成されると共に、上記第一の膨出部の上方には上方へ膨出する第二の膨出部が形成されたことを特徴とするダイヤフラム隔膜。
【請求項2】
全体逆截頭円錐台形状に形成され、上記隔膜本体部の厚さ寸法は均一に形成され、上記第一の膨出部及び第二の膨出部は上記隔膜本体部を膨出形成することにより構成され、
上記第一の膨出部は、上記弁体部が上記弁座部から離間して上昇し、隔膜本体部が変形し最大の応力が作用した状態の形状と同一に形成され、
上記第一の膨出部は上記弁軸貫通孔部に連続して形成され、上記第二の膨出部は上記第一の膨出部に連続して形成されると共に、上記第二の膨出部と上記上端固定部との間は平坦な斜面部が形成され、上記第二の膨出部は、弁体が弁座部を閉止している状態においては裏面側に配設されたバックプレートに当接することを特徴とする請求項1記載のダイヤフラム隔膜。
【請求項3】
上記第一の膨出部及び第二の膨出部は、全周に亘ってリング状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のダイヤフラム隔膜。
【請求項4】
上記弁軸貫通孔部は短円筒状に形成され、上記第一の膨出部は上記弁軸貫通孔部の軸方向上端部に接合され、上記弁軸貫通孔部の軸方向下端部に向かって膨出するように形成され、上記弁軸貫通孔部の側面部と上記第一の膨出部の上面傾斜部との間は50度の角度であって、上記弁軸貫通孔部の上端部と上記第一の膨出部の裏面部との間は45度の角度に形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3のいずれか1項に記載のダイヤフラム隔膜。
【請求項5】
上記弁軸貫通孔部の上面部と上記第二の膨出部の下面部の下方傾斜部との間は70度の角度であると共に、上記第二の膨出部の上方傾斜部との間は20度の角度に形成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれか1項記載のダイヤフラム隔膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−31951(P2012−31951A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172859(P2010−172859)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000157946)岩井機械工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】