説明

ダウンホール回転掘削システムの液圧操縦方法及び装置

ドリルビット或るいはドリルを含む坑底組立体の方向を液圧で制御する方法は、横オリフィスを含み、横オリフィスは選択的に開閉され、掘削流体の一部を、ドリル掘削装置から横オリフィスとボアホール横面又は壁との間の狭い隙間の中に流入させ、この掘削流体の一部が横液圧力を生じさせ、それによって、ドリルビット或いは坑底組立体を横オリフィスの中を通る流体流れと反対方向に押す。この液圧操縦を果たすための装置は、オリフィスの先端をボアホール面とごく接近するように移動させ、それによって、生じた横液圧力を増大させる。この方法は、また、プッシュザビットボアホールパッドに適合され、それらの係合によって得られた横力を増大させながら、パッドとボアホールとの接触を最小にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向回転掘削方法及び装置に関し、特に、横液圧力を加え、且つ機械的なガイドでボアホールとの接触を最小にするために、ドリルビット本体に隣接して配置されたオリフィスの中を通る掘削流体流れの一部分を選択的に調整することによってドリルビットを所望経路に移動させるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人に知られている全ての方法は、掘削工具の所望の操縦を達成するために、井戸ボアとの機械的接触のいくつかの方法を用い、或いは、ポイントザビット方法におけるように、操縦は、ドリル工具の残部に対してドリルビット軸線の角度をオフセットさせることによって達成される。一般に圧力損失として記述される、変化する流れの幾何学構造(オリフィス、ベンド、狭い通路、導管等)を通して流体流れを生じさせるために必要な流体圧力は、それが代替的な設計要件をしばしば要求とするので、変化する流れ状態の負の効果と典型的に考えられている。その同じ変化する流体流れ状態を記述した方法及び装置に用いて、掘削工具の2つの側面の間に差圧を生じさせ、それによって、工具を所定の方向に操縦するために使用できる掘削工具に及ぼす所望の横力を達成する。本発明とは異なり、且つ工具を好ましい方向に操縦するために掘削工具の周りに液圧圧力差を使用しないようにした変化する方向の流体流れを用いる試みがあった。これらのタイプの差向けシステムの例示として米国特許第4,836,301号明細書を参照し、この米国特許第4,836,301号明細書は、掘削工具内側に掘削流体流れの変化する方向を使用して、ドリルビット軸線をポイントザビット操縦方法及びシステムを用いて所定の方向に傾ける流体力学力を発生させる。
【発明の概要】
【0003】
ドリルビットを設けた坑底組立体の長手方向軸線から角度方向を設定するステップと、選択された間隔に1つ或いは2つ以上の横オリフィスを開放し、ドリルビットから掘削流体を分流させ、設定方向に向かうドリルビットの前進に必要とされる角度方向と反対の角度方向に原動液圧力をもたらすステップとを備えるドリルビットの液圧操縦のための方法を記載する。本発明方法は、さらに、オリフィスの遠位先端とユニバーサルジョイントスリーブの間の隙間を調整し、坑底組立体を反対の方向に移動させるのに適用できる力を増大させる、ステップをさらに含むことができる。
【0004】
本発明方法は、さらに、ドリルビットの前進方向を決定するステップと、掘削流体の流れを、方向掘削プログラムで現在実施される方法でオリフィスから井戸ボアの横面に差向けさせるステップを更に備える。
【0005】
ポイントザビット方向掘削装置が使用される場合、この方法は、ドリルビットの前進のための方向を決定し、掘削流体の流れをオリフィスから、ドリルビットに連結されたユニバーサルジョイントスリーブに差向け、ドリルビットを設定方向に移動させることを含むことができる。横オリフィスの中を通る掘削流体流れによって加えられる横液圧力が、オリフィスの遠位先端から対向する井戸ボア面までの距離の関数であるので、この方法は、また、オリフィスの遠位先端と井戸ボア面の間の隙間を調整して、坑底組立体を反対方向に移動させるために適用できる液圧力を増大させ、或いは、回転操縦可能なドリルビットシステムの横パッドの中を通る、掘削流体の一部を分流させ、追加の力を抗井横壁に向って差向けることを備えることができる。
【0006】
本発明の方法を実施するために用いられる方向掘削坑底組立体は、坑底組立体の周りに円周方向に間隔をへだてた1つ又は2つ以上の横オリフィスと、方向掘削坑底組立体に及ぼす横液圧力をもたらすために、横オリフィスを選択的に開閉する、作動バルブと、を有する坑底組立体である。方向掘削坑底組立体は、ドリルビット及び掘削しながら組立体の移動を制御する横オリフィスの中を通る掘削流体流れを検知し且つ制御するための制御ユニットを坑底組立体に更に備えることができる。これは、センサー入力に基づいて方向を制御するため、データの収集及び伝達によって地上からか自動操縦技術を使用するかのいずれかで制御されてもよい。
【0007】
方向掘削坑底組立体は、掘削モータに隣接して配置された制御ユニット内に完全に配置することができる。変形例として、方向掘削坑底組立体は、方向制御を達成するパッドの磨耗を最小にするため、掘削流体を抗井に向かって選択的に且つ力強く横移動させるオリフィスを各制御パッド内に設けることによって標準のプッシュザビット掘削組立体に適合できる。
【0008】
加えて本発明の方法は、さらに、掘削流体の一部を回転操縦ドリルビットシステムの横のパッドの中を通して分流させ、追加の力を抗井横壁に向かって差し向け、或いは、前記掘削流体の一部を、1つ又は2つ以上の横オリフィスの中を通して分流させ、ドリルビット及び全体の掘削BHAを、掘削BHAの長手方向軸線に沿ってまっすぐ前に差し向けること、をさらに含むことができる。本発明の方法は、さらに、BHAの掘削のパラメータ、方向及び向きを測定し且つ処理する制御モジュール/ユニットを使用することによって、及び所望の掘削方向を達成するためにその情報を使用して、横オリフィスの開閉を制御する、ことによって達成することができる。
【0009】
本発明は、また、方向掘削坑底組立体を包含し、方向掘削坑底組立体は、坑底組立体と;坑底組立体の周りに円周方向に間隔を隔てた1つ又は2つ以上の横オリフィスと;前記方向掘削坑底組立体に及ぼす横液圧力をもたらすために、横オリフィスを選択的に開閉する作動バルブとを含む。この実施形態は、また、坑底組立体が、ドリルビット及び制御ユニットを含み、或いは坑底組立体が、掘削モータに隣接して配置された制御ユニットを含み、或いは横オリフィスがドリルビット本体に配置される点で実現される。
【0010】
本実施形態の装置は、また、ドリルビット組立体のホールゲージセクション内に、或いはドリルビットと制御ユニットの間の別のBHAセクション内に、或いは制御ユニットの一体部分であるセクション内にのいずれかに配置される横オリフィスを備えてもよい。さらに、本装置は、ポイントザビット掘削組立体のドリルビットに連結されたユニバーサルジョイントスリーブ内側に横オリフィスを設け、それによって液圧力がスリーブを所望の方向に移動させる。方向掘削坑底組立体は、坑底組立体がプッシュザビット掘削組立体を含み、且つ横オリフィスが制御パッド内にあり、或いは坑底組立体が坑底組立体を反対方向に移動させるために適用できる力を増大させるために、横オリフィスの遠位先端と井戸ボア面又はユニバーサルジョイントスリーブとの間の隙間を調整するための機構を含む点で達成できる。
【0011】
本発明の方向坑底組立体装置は、また、ドリルビット及び全体の掘削BHAを掘削BHAの長手方向軸線に沿ってまっすぐ前に差し向けるために横オリフィスの中を通る掘削流体の一部を分流させる機構を設ける坑底組立体を提供することができる。最後に、本発明の坑底組立体は、BHAの掘削のパラメータ、方向及び向きを測定し且つ処理する制御モジュール/ユニットを含み、その情報を使用して、所望の掘削方向を達成するために横オリフィスの開閉を制御する。
【0012】
より簡単な工具設計、すなわち、提案された掘削工具操縦方法及び装置の可能性のある利益/利点は、
掘削工具を操縦するために用いられるプッシュザビット力を達成するために現在必要とされる、クランププレートサブアセンブリ、キッカー、パッド、ピストン、トロイダルボア、表面硬化物、ナット及びボルト、並びに他の部品のような多くの部品、サブアセンブリ及び製造工程の除去、
研磨ボアホールとの流体のみの接触により、外側バイアス或いは操縦ユニット部品の磨耗の除去或いは最小化、
横液圧力を生じさせるために用いられる流体が多くの衝撃荷重を吸収し、それによってBHAの信頼性を増大させるので、掘削坑底組立体(BHA)に加えられる衝撃荷重のかなりの減少、
部品及び製造工程がより少ないので、新しいバイアス或いは操縦ユニットの実質的なより低コスト、
ボアホールとの接触にさらされるバイアス或いは操縦ユニット部品がない(現在定期的に交換する必要があるクランププレートサブアセンブリ、キッカー、パッド、ピストン、トロイダルボア、ナット及びボルト等がない)ので、修理及び保守費用のある程度の大きな減少、
より平滑なボアホール、すなわち、ボアホールをこするパッドがない、
より早い貫入速度及び掘削時間の減少、即ち、BHAを操縦しながらトルクを消費する、ボアホールとバイアス或いは操縦ユニットとの機械的な接触がほとんどない或いは全くないので、より多くのトルクが掘削に利用でき、
掘削操作の信頼性の改善、即ち、部品がより少なく、ならびにBHAの外側に部品が動かない、穴の中に失われる部品がない等、
操縦に用いられる横力が、圧力のみとして且つ大変大きいボアホール領域に分布されるので、より軟質の地質の中での操縦の改善、
エラストマー部品の除去のために、より高温で作動する機会の改善、である。
【0013】
掘削工具の操縦は、液圧力を工具の一方側に加えることによって達成され、かくして、反対側の方向に工具の操縦を達成する。掘削流体(泥水)の一部は、多数の横オリフィスの中を通り、且つ工具操縦セクションとボアホールとの間の狭い隙間の中を通って分流される。工具の一方側のオリフィスのみが、ボアホールと工具の反対側との間の工具ーボアホール環状部内に差圧をもたらす時に開かれ、かくして、工具を反対側方向に操縦する工具に及ぼす側液圧力を生じさせる。差圧は、主として、工具とボアホールの間の狭い隙間に通す或る量(流量)の掘削流体を押すのに必要とされる圧力によって達成される。流体を狭い工具ーボアホール隙間に通すために必要とされる圧力は、掘削工具の内側と外側の間の圧力差によって提供される。新しい方法は、操縦システム掘削から狭い環状隙間を通して工具ーボアホール環状部に流入する掘削泥水の一部の一定流量を要求する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ドリルビットに配置された横オリフィス配置の概略図である。
【図2】坑底組立体に配置された横オリフィス配置の概略図である。
【図3】オリフィスの遠位先端を井戸ボア横面により近く移動させる調整オリフィス本体の概略図である。
【図4】流体をビットの枢動アームに向かって移動させるために、オリフィスからの液圧力を使用するポイントザビット回転操縦システム"の概略図である。
【図5】方向掘削制御パッドの本体のオリフィス配置の概略図である。
【図6】種々の流量で、環状隙間と横液圧力の間の期待された関係を示す図である。
【図7】種々の隙間間隔で、横流量と横液圧力の間の期待された関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、掘削工具操縦セクションとボアホール100との機械的接触なしに、ダウンホール掘削工具の液圧操縦方法をここに示す。ダウンホール工具に加えられるかなりの横液圧力は、工具の一方の側で、工具10の側縁とボアホール100の間の比較的小さな環状隙間hに強制的に流出させる掘削流体の一部の分流によって達成される。図1の概略図により完全に示されるように、工具−ボアホール環状部110内で工具/ビット50の周りに生じた圧力差は、流路の幾何学形状(隙間の幅h及び長さ、横流体出口穴の寸法等)、工具の内側と工具の外側の間の圧力差、流体特性及び他の因子により、大きな横力を生じさせることができる。このように生じた工具及び/又はビット50に加えられる横力は、ダウンホール掘削システムの操縦を行うのに十分である。液圧横力は、現在のバイアス或いは操縦ユニット設計と同様であるが、現在のパッド−ピストン組立体の代わりに、複数の横オリフィス40(これらのうち1つのみこの断面図に示す)を有する設計を使用することによって達成される。横オリフィス40の出口領域は、十分な差圧を工具−ボアホール環状部110内で工具の周りにもたらすために、横オリフィス40が配置される工具本体10の側縁とボアホール100の間に十分に小さい隙間hを確保するべく、ボアホール壁すなわち面100に十分接している必要がある。工具50とボアホール110の間のより小さい隙間hが、掘削中維持しやすい(隙間が小さければ小さいほど、横液圧力が大きくなる)場合には、横力は、また、横オリフィス40をドリルビット50それ自体の近くでホールゲージ10に配置することで達成することができる。
【0016】
横オリフィスを含む掘削BHA全体が掘削中回転されるので、1つ又は2つ以上の横オリフィスが、掘削方向の所望の変化とほぼ反対であるときにのみ、開き、BHA全体がその長手方向軸線を中心に回転するので、他の全ての横オリフィスは、掘削方向の所望の変化とほぼ反対になるまで、閉じられている。横オリフィスの対応する開閉、すなわちこれら横オリフィスへの掘削流体経路の開閉は、伝統的なバイアスの又は操縦ユニットの操縦パッドへの流体経路を開閉するための、及び、必要な測定を行い且つ制御機能及び操縦機能を提供する伝統的な制御ユニットで工程を制御するための、既存の方法を用いることによって達成され且つ制御される。例えば、掘削BHAと同じ回転速度で、しかし、反対方向に回転する逆回転バルブは、横オリフィスへの掘削流体経路を開閉するために用いることができ、かくして、横オリフィスの中を通る流体流を、静止状態に、すなわち地面に対して同じ相対方向/向きに、保ち、掘削BHAの残部は地面に対して回転する。横オリフィスの中を通る掘削流体流れは、掘削方向の所望の変化と反対である横方向に静止状態に保たれている。
【0017】
また、横オリフィス又はこれらの横オリフィスへの流体経路の所望の開閉は、リアルタイムで相対的なBHA位置及び向きを測定する制御ユニットで或いは他の手段によって制御されるピストン又はバルブ機構のような他の手段によって達成することができる。
【0018】
記述した方法及び機構は、また、掘削BHAを、その長手方向軸線に沿って直線にまっすぐ前方に掘削するように差し向けるために用いることができる。例えば、上述した回転バルブは、所望の横液圧力及び反対方向の対応するドリルビット移動を達成するために、掘削流体流れを1つ又は2つ以上の横オリフィスに差し向けるために使用することができる。回転バルブが静止状態に保たれないが、その代わり、回転バルブがBHAの残部と共に完全に又は部分的に回転され、或いはBHAに対して部分的に逆に回転されるときには、横オリフィスが地面に対してさまざまな向きにある間、掘削流体は、横オリフィスに効果的に差し向けられ、かくして、ボアホールの周りのあらゆる方向に横液圧力を加え、かくして、掘削BHAをその長手方向軸線に沿ってまっすぐ前方に差し向ける。まっすぐ前に掘削するようにBHAを差し向けるもう1つの方法は、同時に全ての横オリフィスを開き、或いはまっすぐに掘削しながら全ての横オリフィスを閉じ、BHAがまっすぐの経路からはずれ始めるとき、操縦モードに戻すことである。
【0019】
図4に示すような他の実施形態では、提案された方法は、掘削流体の一部をダウンホール工具自体の2つの一体部品間、例えば、ユニバーサルジョイントUJでともに連結された工具内側本体52と外側スリーブ53との間の、掘削工具の一方の側の工具−ボアホール環状部に排出させることによって掘削工具51の操縦を達成するために使用することができ、外側スリーブ53がビットシャフト54に連結され、ビットの所望の操縦をもたらす、工具内側本体軸線に対するスリーブ53及びビット軸線の角度オフセットが、同様の液圧力によって達成される。BHAが回転するとき、横オリフィスが、掘削方向の所望の変化と対向するときにのみ、横オリフィスを開放することによって、及び横オリフィスの開閉を制御するための、上述した方法の1つを用いることによって、外側スリーブ53及びドリルビット軸線は、BHAの残部に対して角度オフセットに保たれ、工具を、所望の掘削方向に静止状態に保たれる角度オフセットの方向に操縦する。
【0020】
現在の方向掘削システムは、2−D又は3−D井戸ボア軌道を生じさせる操縦セクションを有するベンドサブ或いは回転操縦可能システム(RSS)を有するダウンホール泥水モータを使用する。RSSシステムは、泥水モータシステムを超える多くの利点を有し、今日ほとんどの掘削用途に使用される。現在のRSSシステムは、掘削工具の所望の操縦を達成するために、プッシュザビット”push-the-bit”或いはポイントザビット”point-the-bit”方法を使用する。
【0021】
プッシュザビット技術を使用するシステムが、今日の掘削市場の大部分をにない、該システムは、図5に部分的に例示されている、機械的なパッド200を使用し、該機械的パッドは、掘削工具から半径方向に延び、且つボアホール100に押しつけて工具に加える横力を達成し、この横力は、ビットを押して工具に作用する横力と同じ方向に掘削させる。これらのパッドシステムの主な問題は、ボアホール100との接触から高い磨耗が生じ、この高い磨耗により高い製造コスト及び修理コストをもたらし、従って、サービス提供の全体のコストをより高くする。ここで提案された新規なアプローチは、操縦目的のためにボアホールとの機械的な接触を最小にする。
【0022】
圧力降下試験データは、大きな差圧、かくして、大きな横力が、掘削工具の内側と外側の間に今用いられている圧力差で、且つ掘削流体の今の全体流量の一部で達成されることを示す。図6及び図7はこの関係を要約している。
【0023】
掘削工具或いはドリルビットの操縦は、液圧力を工具の一方の側に付与することによって達成することができ、かくして、その反対方向に工具の操縦を達成する。提案された発明の概念は、図2を用いることによって説明できる。掘削流体(マッド)の一部は、横オリフィス(Qs)の中を通り、工具操縦セクション11とボアホール100の間の狭い隙間(h)に分流される。工具の一方側のオリフィス40だけが、工具の一方側と工具の反対側との間の差圧(p1-p2)をもたらす時に横流体流れ(Qs)のために開かれ、かくして、工具とビットに加えられる横液圧力(Fs)を生じさせ、横液圧力が工具及びビットを横流れQsと反対方向に操縦する。差圧は、主として、工具とボアホールの間の狭い隙間(図2の寸法h)の中を通る或る量の掘削流体(流量Qsで)を押すのに必要な圧力によって達成される。流体を狭い工具−ボアホール隙間hの中に押すのに必要な圧力は、掘削工具の内側p0と外側p2の間の圧力差によって提供される。
【0024】
他の実施形態では、掘削流体Qsの一部の横排出は、図1に示すように、ビットホールゲージセクション10とドリルビット50の隣接した横側のボアホール100との間のさらに狭い環状隙間hに押し込まれる。この方法では、ビットを操縦するためのより高い横液圧力Fsを、より少ない流体損失で達成することができる。また、このシステムは、ダウンホール工具の完全に別々の操縦セクション/モジュールの必要を除去するので、複雑でない。例えば、流体制御機構、例えば回転バルブは、制御ユニットの一部であり、操縦するために用いられる横オリフィスは、ドリルビット組立体の一部である。伝統的には、ドリルビットと制御ユニットとの間に、別々の操縦セクション/モジュール、例えばバイアスユニットがある。もし図1の工具50或いは図2の参照番号11と、ボアホール100との間の環状隙間(h)が大きすぎる、或いは掘削中著しく変化する場合には、図3に例示する変形オリフィス本体を、自動調整の狭い環状隙間(h)を設けるために使用される。調整可能なアダプターの内側端に及ぼす流体圧力P0は、アダプタ300を半径方向外方に押して、工程中環状隙間(h)を減少させる。環状隙間(h)が、内側流体圧力からアダプタに及ぼす外方力に等しい、アダプタ端に及ぼす内方力を生じさせる(隙間h内の)アダプタ300の外側端に及ぼす流体圧力を生じさせる程に小さいときには、内部方向への力はアダプタが平衡状態に達し、その結果、環状隙間(h)は、前例に記載された環状隙間よりも小さくなる。環状隙間(h)の寸法は、主として、アダプタの幾何学形状、流体流れの幾何学形状及び掘削工具の内側と外側の間の圧力差に依存する。かくして、これらのパラメータを慎重に特定すること及び制御することによって所望の自動調整環状隙間hを達成且つ維持することができる。アダプタ300が操縦目的のために用いられないときには、アダプタがBHAの半径方向にあんまり押し出しされないようにするため、ばね、エラストマー或いは他の手段が、図3に例示されるように、アダプタをBHAの内側のアダプタの最内位置に保持するために用いられる。他の実施形態では、提案された方法は、掘削流体の一部を、掘削工具の一方の側で、ダウンホール工具自体の2つの一体部品の間、例えば、外側スリーブ53はビットシャフト54に連結され、ビットの所望の操縦をもたらす工具内側本体軸線に対する外側スリーブ及びビット軸線の角度オフセットが、同様の液圧力によって達成される場合、図4に示すように、ユニバーサルジョイント(UJ)で互いに連結された工具内側本体52と外側スリーブ53の間に排出することによって、掘削工具の操縦を達成するために用いることができる。図4の特定の設計概念は、2つの部品間の圧力(p1)を増加させ、かくして圧力差(p1-p2)を増加させ且つ操縦のために用いられる横液圧力Fsを増加させるために、スリーブと工具内側本体の間の流体の流出をさらに制限するのに最適化することができる。
【0025】
提案した方法は、また、図5に示すように、磨耗及び、工具衝撃と振動、を最小にするために既存の掘削工具設計とともに使用することができる。少量の掘削流体が、パッド−ボアホール接面210でパッド200の中を通って圧力下で排出され、パッドに及ぼす液圧力Fsを生じさせ、パッド200とボアホール100の間の機械的な接触を減少させ或いは除去する。パッドがボアホールに押しつけている間、作用パッドとボアホールの間の隙間がとても小さい或いは基本的に存在しないので、パッド200とボアホール100との間に比較的大きな横液圧力を達成し、従って、パッド200とボアホール100との機械的な接触を最小にし或いは除去するために少量の掘削流体を、排出されるだけでよい。
【0026】
本発明に記載の操縦方法と関連した横液圧力の見積もりを、図6及び図7に示す。これらの横液圧力を計算するために用いられていた工具とボアホールの間の環状隙間h内の圧力は、水が同等の全体の流体排出面積(全てのノズルオリフィスの全面積)を有するダウンホールノズルを通して圧送されたとき測定された圧力降下データに基づいて見積もられていた。環状隙間内の圧力分布は、同じ全流れ面積用のダウンホールノズルを通る測定された圧力損失に相当すると仮定されており、すなわち、環状隙間h内の流体流れは、同じ流れ面積(全ノズルオリフィス面積)のためにノズルを通る流体流れと同じ流量を達成するために同じ圧力を必要とする。環状隙間h内の流れ面積は、横オリフィスからの距離とともに累進的に増大するので、隙間内の圧力は、横オリフィスからの種々の半径方向の距離で見積もられ、さらに横力は、各個別の圧力と対応する工具面積の積の合計として計算される。これらの圧力ー力の見積もりは、異なる流れシステムからの試験データに基づくが、圧力ー力の見積もりは、環状隙間h内の圧力分布及び考慮中の掘削システムに及ぼす横液圧力Fsの近似値を提供する。
【0027】
図6及び図7からわかるように、図6及び図7に標準パッドシステムとして示される、比較可能な商業用掘削システムのパッド力よりも高い横液圧力は、なかんずく、掘削された穴寸法に依存する、多くの実際の流量及び環状隙間について達成できる。図6及び図7の例のために、横オリフィスの中を通る実際の流量(横流量)は、100gpmの程度であり、実際の環状隙間hは、2mmの程度であるが、他の横流量及び環状隙間も、実施することができる。例えば、より狭い環状隙間hは、図3に示す方法及び機構で実施することができ、かくして、横液圧力をさらに増大させ、且つ掘削BHAの効果的な操縦に必要な横流量を減少させる。
【0028】
さらに、環状隙間h内のより高い圧力、その結果、掘削工具の液圧操縦のためのより高い横力Fsを達成するために、同じ公称環状隙間h及び同じ横流体流量Qsのために、横オリフィスに近い及びオリフィスから遠い両方の環状隙間内により高い圧力降下が達成されるように、環状流れの幾何学的形状を変化させることができる。例えば、横流れを、より大きな環状隙間面積内により高い圧力降下及びより高い圧力を生じさせて、大きな横力を生じさせるために多数の箇所で異なる方向に局部環状隙間内に排出させることができ、(例えば、同じ環状隙間内の多数の横流れが互いに向かって流れ、かくして、おそらく、流体が環状隙間領域を出る前により高い圧力降下を生じさせる)。例えば、限定されない他の方法は、流れ及び工具幾何学形状を変えることを含み、掘削工具上に及ぼすより最適な横液圧力の代りに、流体特性及び差圧を用い、それによって、ドリルビットの中を通る流体流れに対して最小の混乱で適切な操縦を行うことができる。
【0029】
これらの多数の実施形態及び変形例を開示した。上述の開示は、発明者によって予想されたように本発明を実施する上で信じられたベストモードを含むが、全ての可能な変形例が開示されているわけではない。その理由で、本発明の範囲及び限定は、上記開示に制限されるものではないが、その代わり、添付の請求の範囲によって定義され且つ解釈されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルビットの液圧操縦のための方法であって、前記ドリルビットを設けた坑底組立体の長手方向軸線から角度方向を設定し、選択された間隔で1つ或いは2つ以上の横オリフィスを開いて、前記ドリルビットから掘削流体を分流させ、前記設定方向に向かう前記ドリルビットの前進に必要とされる前記角度方向と反対の角度方向に原動液圧力を提供すること、を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
ドリルビットの前進の方向を決定し、前記掘削流体の流れを前記オリフィスから井戸ボアの横面に向かって差し向けることをさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
ドリルビットの前進の方向を決定し、前記掘削流体の流れをオリフィスから、ドリルビットに連結されたユニバーサルジョイントスリーブに差し向けて、前記ドリルビットを設定方向に移動させること、をさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項4】
前記オリフィスの遠位先端と井戸ボア面との間の隙間を調整して、前記坑底組立体を反対の方向に移動させるのに適用できる力を増大させる、ことを含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項5】
前記オリフィスの遠位先端とユニバーサルジョイントスリーブとの間の隙間を調整して、前記坑底組立体を反対方向に移動させるのに適用できる力を増大させる、ことをさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項6】
回転操縦可能なドリルビットシステムの横パッドの中を通る掘削流体の一部を分流させ、追加の力をボアホール横壁に向って差し向けることをさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項7】
掘削流体の一部を1つ又は2つ以上の横オリフィスの中を通して分流させ、前記ドリルビット及び前記全体の掘削BHAを前記掘削BHAの長手方向軸線に沿ってまっすぐ前に差し向けることをさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項8】
前記BHAの掘削のパラメータ、方向及び向きを測定し且つ処理する、制御モジュール/ユニットを使用し、その情報を使用して、前記横オリフィスの開閉を制御し、前記所望の掘削方向を達成することをさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項9】
方向掘削坑底組立体であって、坑底組立体と;前記坑底組立体の周りに円周方向に間隔をへだてた1つ又は2つ以上の横オリフィスと;方向掘削坑底組立体に及ぼす横液圧力を提供するために、前記横オリフィスを選択的に開閉する作動バルブと、を含むことを特徴とする、前記方向掘削坑底組立体。
【請求項10】
前記坑底組立体が、ドリルビット及び制御ユニットを含む、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項11】
前記坑底組立体が、掘削モータに隣接して配置された制御ユニットを含む、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項12】
前記横オリフィスが前記ドリルビット本体に配置される、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項13】
前記横オリフィスは、前記ドリルビット組立体の前記ホールゲージセクションに配置される、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項14】
前記横オリフィスは、ドリルビットと制御ユニットの間の別のBHAセクションに配置される、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項15】
前記横オリフィスは、制御ユニットの一体部分であるセクションに配置される、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項16】
前記横オリフィスは、ポイントザビット掘削組立体のドリルビットに連結されたユニバーサルジョイントスリーブ内側に配置される、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項17】
前記坑底組立体は、プッシュザビット掘削組立体からなり、前記横オリフィスが制御パッド内にある、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項18】
前記坑底組立体が、前記坑底組立体を反対方向に移動させるのに適用できる力を増大させるために、前記横オリフィスの遠位先端と井戸ボア面或いはユニバーサルジョイントスリーブとの間の隙間を調整するための機構を含む、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項19】
前記坑底組立体は、前記ドリルビット及び前記全体の掘削BHAを、前記掘削BHAの長手方向軸線に沿ってまっすぐ前に差し向けるために、横オリフィスの中を通る掘削流体の一部を分流させるための機構を含む、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。
【請求項20】
前記坑底組立体は、BHAの掘削パラメータ、方向及び向きを測定し且つ処理する制御モジュール/ユニットを含み、且つその情報を使用して、前記横オリフィスの開閉を制御し、前記所望の掘削方向を達成する、請求項9に記載の前記方向掘削坑底組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−518967(P2011−518967A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536089(P2010−536089)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/084486
【国際公開番号】WO2009/070521
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】