説明

ダクト入りシートパッド及びその製造方法

【課題】ダクト経路にエア噴出口がある配風用ダクトを埋設してシートパッドを一体発泡成形する際、発泡原料がエア噴出口からダクト内に侵入するのを阻止できるようにしたダクト入りシートパッドを提供する。
【解決手段】エア導入部61が設けられると共にダクト経路にエア噴出口64が設けられる配風用ダクト6と、クッション性を有する緩衝部材8と、乗員当接側の表面1aに窪み21を形成し、その窪み21がエア噴出口64に連通する空気吹き出し口20になるようにして、配風用ダクト6、さらに緩衝部材8をインサートして一体発泡成形されるシートパッド1と、を具備し、緩衝部材8がシートパッド1の裏面1b側に埋設され、且つ緩衝部材8が、エア噴出口64が形成されるダクト部66で、そのエア噴出口64の反対側にあたるダクト背面部分66bに当接してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートを構成するシートクッション用シートパッドで、ダクトをインサート成形で一体化したダクト入りシートパッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される座席シートの座部や背もたれを構成するシートクッションは乗員が座って直かに接する部分であり、暑い季節になると乗員はその箇所が汗ばむ一方、冬の季節を向かえると冷たく感じることがある。こうしたことから、シートパッド内部に配風ダクトを設けて温度調整される座席シートが提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−297414号公報
【特許文献2】特開2005−95343号公報
【特許文献3】特開2005−287532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3は、配風用ダクトをインサートしてシートパッドが一体発泡成形される発明を開示する。しかし、いずれもシートパッドの発泡成形時にエア噴出口から発泡原料がダクト内へ侵入する問題があるが、この対策記述がない。特許文献1には、「エアダクト18,19は、たとえば、シートクッション14、シートバック16の形状にそれぞれ対応して、パイプ等から形成され、エアダクト(本発明でいう配風用ダクト)に連通した通気口30(本発明でいうエア噴出口)が、所定間隔離反した複数箇所で、シート表面に延出して設けられている。」とあるが、いかに通気口を塞いで、シートクッション14、シートバック16の発泡成形を行うのか開示されていない。特許文献2,3についても、通気口をどのように塞いで発泡成形を行うのか開示がない。
シートクッション14、シートバック16等のシートパッドがエアダクトを埋設して一体発泡成形される際、通気口を型面に当て単に塞ぐだけでは、発泡原料がダクト内へリークする。さらに、発泡成形時の発泡圧の上昇もあることから、通気口をよほどうまく塞がないと、発泡成形時に通気口から発泡原料がパイプ内へ侵入してしまう不具合を招く。パイプ内に入り込んだ発泡原料は後加工で取り除くにしても、シートパッドの成形後であり、シートパッド表面から通気口までの距離が遠くて困難になっている。取り除くことができなければ製品が不良品となるのを余儀なくされる。ダクト内に発泡原料の硬化部分を残せば、通気抵抗が増し、快適性を追求するダクト入りシートパッドに適合しないからである。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、ダクト経路にエア噴出口がある配風用ダクトを埋設してシートパッドを一体発泡成形する際、発泡原料がエア噴出口からダクト内に侵入するのを阻止できるようにして、歩留まり向上を果たし、またパイプ内に入り込んだ発泡原料の取除き作業を解消できるようにしたダクト入りシートパッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、エア導入部(61)が設けられると共にダクト経路にエア噴出口(64)が設けられる配風用ダクト(6)と、クッション性を有する緩衝部材(8)と、乗員当接側の表面(1a)に窪み(21)を形成し、その窪み(21)が前記エア噴出口(64)に連通する空気吹き出し口(20)になるようにして、前記配風用ダクト(6)、さらに前記緩衝部材(8)をインサートして一体発泡成形されるシートパッド(1)と、を具備し、前記緩衝部材(8)が前記シートパッド(1)の裏面(1b)側に埋設され、且つ該緩衝部材(8)が、前記エア噴出口(64)が形成されるダクト部(66)で、そのエア噴出口(64)の反対側にあたるダクト背面部分(66b)に当接してなることを特徴とするダクト入りシートパッドにある。
請求項2の発明たるダクト入りシートパッドは、請求項1で、緩衝部材(8)は含浸性を有した板状を呈し、その一の板面が前記ダクト背面部分(66b)に当接する一方、反対側の他の板面が前記シートパッド(1)の裏面(1b)と一様な面を形成することを特徴とする。請求項3の発明たるダクト入りシートパッドは、請求項1又は2で、不織布(91)をさらに具備し、該不織布(91)が、前記緩衝部材(8)及び前記ダクト背面部分(66b)を含めたダクト(6)を覆って、前記シートパッド(1)の発泡成形で、該シートパッド(1)の裏面(1b)に被着一体化されることを特徴とする。請求項4の発明たるダクト入りシートパッドは、請求項1〜3で、緩衝部材(8)がプレスフェルトであることを特徴とする。請求項5の発明たるダクト入りシートパッドは、請求項1〜4で、エア噴出口(64)が形成されるダクト部(66)で、そのダクト表面部分(66a)に、前記エア噴出口(64)を囲む環状凹所(662)がさらに形成されることを特徴とする。
請求項6に記載の発明の要旨は、エア導入部(61)が設けられると共にダクト経路にエア噴出口(64)が設けられた配風用ダクト(6)を、発泡型(7)にセットし、次いで、発泡原料(m)の注入及び型閉じを経て、該ダクト(6)が埋設されるシートパッド(1)を発泡成形し、その発泡成形で、乗員当接側のシートパッド表面(1a)に形成する窪み(21)を前記エア噴出口(64)に合わせて空気吹き出し口(20)にするダクト入りシートパッドの製造方法であって、前記発泡型(7)への配風用ダクト(6)のセットと共に、これと相前後して、クッション性を有する緩衝部材(8)を該発泡型(7)にセットし、次いで、型閉じにより、前記エア噴出口(64)が形成されるダクト部(66)で、前記緩衝部材(8)を該エア噴出口(64)の反対側にあたるダクト背面部分(66b)に圧縮状態で当接させて、前記窪み(21)を形成する該発泡型(7)の隆起部(72)で該エア噴出口(64)を塞ぎ、しかる後、前記シートパッド(1)の発泡成形で、該緩衝部材(8)が該シートパッド(1)の裏面(1b)側に埋設一体化されることを特徴とするダクト入りシートパッドの製造方法にある。
請求項7の発明たるダクト入りシートパッドの製造方法は、請求項6で、前記エア噴出口(64)を取り巻くダクト表面部分(66a)に、エア噴出口(64)を囲む環状凹所(662)がさらに設けられ、型閉じにより、前記隆起部(72)の上端面(722)が該環状凹所(662)を塞ぐようにしてダクト表面部分(66a)に当接することを特徴とする。請求項8の発明たるダクト入りシートパッドの製造方法は、請求項6で、エア噴出口(64)を取り巻く前記ダクト表面部分(66a)に当接する前記隆起部(72)の上端面(722)に、環状溝(723)がさらに形成され、型閉じにより、ダクト表面部分(66a)が該環状溝(723)を塞ぐようにして、隆起部(72)の上端面(722)に当接することを特徴とする。
【0007】
請求項1,6の発明のごとく、クッション性を有する緩衝部材(8)が、エア噴出口(64)が形成されるダクト部(66)で、そのエア噴出口(64)の反対側にあたるダクト背面部分(66b)に当接するように設けられると、該緩衝部材のクッション性を活用してエア噴出口(64)の口をより確実に塞ぐことができるようになる。シートパッドの発泡成形時に、発泡原料のエア噴出内からダクト内への侵入を阻むことができる。
請求項2の発明のごとく、緩衝部材(8)の一の板面がダクト背面部分(66b)に当接する一方、反対側の他の板面がシートパッド(1)の裏面(1b)と一様な面を形成すると、該シートパッドの発泡成形の際、型閉じで、発泡型とダクトに挟着される緩衝部材を容易に圧縮状態にでき、この復元力を活用してエア噴出口を塞ぐことが比較的簡単になし得る。緩衝部材(8)が含浸性を有すると、シートパッドの発泡成形で発泡原料を適度に吸収,含浸して、緩衝部材とシートパッドとの一体強化が図れる。また、シートパッド裏面側で、ダクトを覆う板状の緩衝部材はダクトへ加わる衝突や衝撃をやわらげてこれを保護することもできる。
請求項3の発明のごとく、不織布(91)をさらに具備し、該不織布(91)が、前記緩衝部材(8)及び前記ダクト背面部分(66b)を含めたダクト(6)を覆って、前記シートパッド(1)の発泡成形で、該シートパッド(1)の裏面(1b)に被着一体化されると、緩衝部材が含浸性を有してなくても、不織布がこれらを覆って一体化されるので、緩衝部材やダクトがシートパッドからもげ落ちない効果がある。請求項4の発明のごとく、緩衝部材(8)がプレスフェルトであると、クッション性,含浸性を有するだけでなく、本ダクトへの裏当て部材に必要な適度な柔軟性,追従性とコシがあり、ダクト入りシートパッドの作製に極めて有効となる。請求項5,7の発明のごとく、ダクト表面部分(66a)に、エア噴出口(64)を囲む環状凹所(662)がさらに形成されると、該環状凹所がシートパッドの発泡成形時のバッファ空間になるので、発泡原料がエア噴出口からダクト内へ侵入するのをうまく阻止できる。
請求項6の発明のごとく、型閉じにより、緩衝部材(8)を該エア噴出口(64)の反対側にあたるダクト背面部分(66b)に圧縮状態で当接させて、隆起部(72)で該エア噴出口(64)を塞ぐと、圧縮状態にある緩衝部材が、その弾性復元力でダクト部を隆起部に押しつけるので、隆起部(72)で該エア噴出口(64)をより効果的に塞ぐことができる。請求項8の発明のごとく、エア噴出口(64)を取り巻くダクト表面部分(66a)に当接する隆起部(72)の上端面(722)に、環状溝(723)がさらに形成され、型閉じにより、ダクト表面部分(66a)が該環状溝(723)を塞ぐようにして、隆起部(72)の上端面(722)に当接すると、該環状溝がシートパッドの発泡成形時のバッファ空間になるので、発泡原料がエア噴出口からダクト内へ侵入するのをうまく阻止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダクト入りシートパッド及びその製造方法は、シートパッドの発泡成形時に発泡原料がエア噴出口からダクト内へ侵入するのを阻止でき、歩留まりを向上させて作業効率,生産性を高め、さらに品質向上にも貢献できるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のダクト入りシートパッドの一形態で、シートパッドを鎖線で示しての表面側から見た全体斜視図である。
【図2】図1とは異なる角度から見たダクト入りシートパッドの表面側から見た全体斜視図である。
【図3】図2のIII-III線矢視図である。
【図4】本発明のダクト入りシートパッドの製造方法で、発泡型に配風用ダクト,緩衝部材をセットし、発泡原料を注入する説明断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図5に代わる他態様の拡大図である。
【図7】図4から型閉じ工程へと進んだ説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るダクト入りシートパッド及びその製造方法について詳述する。図1〜図7は本発明のダクト入りシートパッド及びその製造方法の一形態で、図1はシートパッドを二点鎖線で表すダクト入りシートパッドの表面側から見た全体斜視図、図2はダクト入りシートパッドの表面側から見た全体斜視図、図3は図2のIII-III線矢視図、図4は発泡型に配風用ダクト,緩衝部材をセットし、発泡原料を注入する説明断面図、図5は図4の部分拡大図、図6は図5に代わる他態様図、図7は図4から型閉じ工程へと進んだ説明断面図を示す。尚、ダクト6に図1のごとくの舌片状クリップ67,取付孔671を設けるが、他図はそれらの図示を省略する。
【0011】
(1)ダクト入りシートパッドの製造方法
ダクト入りシートパッドの製造方法は、発泡型7を用いて、該発泡型7に配風用ダクト6(以下、単に「ダクト」という。)及び緩衝部材8をセットした後、発泡原料mの注入及び型閉じを経て、図1〜図3のようなシートパッド1を発泡成形する。ダクト6入りシートパッド1は、車両用座席シートの座部やバックレストのシートクッションに使用される。ここでは、車両用座席シート用座部向けのダクト6入りシートパッド1に適用する。発泡成形に先立ち、ダクト6,緩衝部材8,発泡型7が用意される。
【0012】
ダクト6はポリプロピレン樹脂等からなる樹脂製管状部材である。ダクト6には、エア導入部61が設けられると共にダクト経路にエア噴出口64が設けられる。本実施形態は図1,図2のような平面視略H字状した配風流路60を有するブロー成形ダクト6で、車幅方向に配される横筒部6bの両端から一対の縦筒部6aが車両前後方向へ延びる。
【0013】
ダクト6の表面側には、エア噴出口64が複数開設される。本発明の「表面側」とは乗員が座部に腰掛ける時に当接する面の側をいう。ここでのダクト6は、その表面側に短管からなるエア噴出口64用のノズル部65を複数立設する。
エア噴出口64を取り巻くダクト部66は、断面形状が円形でなく、図3,図5ごとく扁平化したオーバル状になっている。該ダクト部66に係るダクト表面部分66aや、流路60を介して該ダクト表面部分66aに対向するダクト背面部分66bは平坦面を形成して、両者を弧面状のダクト側面部分66cで結合する。このダクト表面部分66aには、図1,図5のごとくエア噴出口64周りで、細幅リング溝状に凹んで、該エア噴出口64を囲む環状凹所662がさらに形成される。環状凹所662は図1に示すように縦筒部6aの四方角部に位置するエア噴出口64の四箇所にとどめるが、全てのエア噴出口64に設けることができる。尚、本実施形態は、エア噴出口64を取り巻くダクト部66に係るダクト背面部分66bを平坦面に形成するだけでなく、ダクト縦筒部6a,横筒部6bの裏面側ほぼ全域を図1のごとく平坦面に形成し、ダクト6の裏面側に配設される緩衝部材8が該平坦面全体に当接し易くしている。
【0014】
一方、ダクト6の裏面側には、エア導入部61が設けられる。シートパッド1の発泡成形で、ダクト主要部が埋設されるインサート用ダクト6であるが、シートパッド裏面1bから筒状エア導入部61が突出する。ダクト6入りシートパッド1が完成した段階で、シートパッド裏面1bのほぼ中央から、先端口がエア導入口eになるエア導入部61が突出する(図3)。詳しくは、横筒部6bの略中央で膨出部6bが張出す(図1)。膨出部6bはその先端部で裏面側へと屈曲、延設されてエア導入口eを形成する円筒状のエア導入部61となる。略同一平面上にあるダクト6の主要部に対し、エア導入部61が起立する。
【0015】
緩衝部材8は、エア噴出口64が形成されるダクト部66で、図3に示すように、そのエア噴出口64とは反対側にあたるダクト背面部分66b上に配設される板状(シート状を含む)の裏当て部材である。該緩衝部材8は、含浸性且つクッション性を有して、ダクト6と共に発泡型7にセットされる。ダクト6と上型7bの間に緩衝部材8が介在して、型閉じにより該緩衝部材8が圧縮される。緩衝部材8は当初厚みtのクッション性を有する板状体であるが(図4)、型閉じで上型7bとダクト6とに挟まれて圧縮し、厚みtになる(図7)。その結果、緩衝部材8がダクト6を押圧して、エア噴出口64は、窪み21を成形する発泡型7の隆起部72でその口を封じるように塞がれる。本実施形態では、ダクト表面部分66aと、窪み21を形成する発泡型7に係る隆起部72との密着シール力を高め、エア噴出口64の口を覆うシール性を確かなものにしている。
本実施形態の緩衝部材8は、各エア噴出口64の反対側にあたるダクト背面部分66bだけでなく、縦筒部6a,横筒部6bに係るダクト6の裏面側全てをカバーするシートパッドメイン部2のほぼ全域に広げながらも、該メイン部よりもやや小さめの平面視大きさとする(図3)。縦筒部6aの四方角部で環状凹所662が在るエア噴出口64の四箇所を覆う大きさの平面視略長方形の緩衝部材8とする。尚、緩衝部材8の中央にはエア導入部61が貫通する孔81が設けられる。
【0016】
緩衝部材8は、既述のごとく型閉じで圧縮して、ダクト表面部分66aと隆起部72との密着シールに寄与するクッション性を有する。且つ発泡成形で発泡原料mがしみ込む材料で形成される。緩衝部材8は、含浸性且つクッション性を構造特性として有し、不織布やプレスフェルトが適合するが、プレスフェルトがより好ましい。プレスフェルトとは、元々は羊毛などの毛を縮絨した繊維製品で、羊毛などの繊維の特殊なウロコ状表面形状を利用して、水分,熱,圧力により繊維同士を絡めてしっかりしたシート状に仕上げられる。プレスフェルトは、そのクッション性に基づく圧縮で、ダクト表面部分66aと隆起部72との密着シールに威力を発揮し、また発泡原料mを適度に吸収する含浸性がシートパッド1との一体性(結合性)を高め、ダクト6の異音防止に役立つ(後述)。さらに、羊毛等でふとん綿状にした積層物に湿度,圧力を加えて強固なシート状体をつくるその製法から、ダクト6への裏当て部材として必要なある程度の柔軟性,追随性とコシがあり、本緩衝部材8として打ってつけとなっている。本実施形態の緩衝部材8もプレスフェルトで造られている。
【0017】
本ダクト入りシートパッドの製造方法に用いる発泡型7は、図4のごとくの分割型で、下型7a(一の分割型)と上型7b(他の分割型)とを備える。下型7aと上型7bは図示しないヒンジにより開閉可能に接続されている。前記ヒンジを支点にして図7のごとく型閉じすると、全体が椀状にへこむ下型7aの型面71と、一部に凹み73を有するものの全体的に平坦な上型7bの型面76とで、ダクト6入りシートパッド1のキャビティ70をつくる。図1〜図7に示す本製法では、下型7aの型面71でシートパッド表面1a側を成形し、上型7bの型面76でシートパッド裏面1b側が成形される(図3,図4)。シートパッド裏面1bはその一部が緩衝部材裏面8bに占有される。緩衝部材裏面8b側の板面がシートパッド裏面1bと一様な面を形成するよう、両裏面形成用の上型7bのメイン部用型面76aはほぼ平坦面にして、滑らかで一様とする。
下型7aには、メイン部2の上半部用型面を中央にして、その両脇にサイド部3の上半部用型面が形成される。そして、下型7aにはメイン部用型面71aの各所を柱状に盛り上げて、各窪み21を形成するための隆起部72が複数設けられる。各隆起部72は、下部72bが窪み21の形成を担い、上部72aがさらにエア噴出口64を封止する役目を担う。各隆起部72の上端面722は、中央にすり鉢状穴721が掘られ、該穴721の外周に平坦面が帯状に残る環状上端面722となっている(図5)。型閉じ時には、該穴721に前記ノズル部65が収納され、さらにエア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aが、隆起部上端面722に当接して、エア噴出口64の口を覆って塞ぐようになる(図5,図7)。型閉じ後の発泡成形で、シートパッド1が成形されると、この隆起部72が乗員当接側のシートパッド表面1aに窪み21を形成し、該窪み21が前記エア噴出口64に連通する空気吹き出し口20となる。図4〜図7中、符号661は環状凹所662の形成に伴うダクト内面側の段部、符号74は型閉じでエア導入部61が当接するくぼみ、符号79は吊溝41(縦溝41a)を形成する凸部を示す。
【0018】
前記発泡型7,ダクト6,緩衝部材8を用いて、ダクト6入りシートパッド1が例えば次のように製造される。
まず、発泡型7を図4の型開状態とする。この型開状態の下型7aにダクト6をセットする。各ノズル部65を下方側に向け穴721内に収容して、エア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aが隆起部上端面722に当接するようダクト6を下型7aにセットする。ダクト6は、ほぼ同一平面上に形成されたダクト主部を水平に配して、起立するノズル部65が穴721に納められる一方、該ダクト主部からエア導入部61が上方へ突出する。本実施形態は、さらに環状凹所662の内周側及び外周側に在るダクト表面部分66aが隆起部上端面722に当接するようにしている(図5)。
【0019】
ダクト6のセットと相前後して、緩衝部材8を発泡型7にセットする。緩衝部材8は、エア噴出口64周りのダクト部66で、該エア噴出口64とは反対側に在るダクト背面部分66bに載るよう配設される。ここでは、ダクト6のセット後、ダクト背面部分66bに緩衝部材8を載置する。ダクト6は緩衝部材8を介してシートパッド1の裏面沿いに配設される。シートパッド表面1aからエア噴出口64,ダクト縦筒部6a,横筒部6bまでの距離をできるだけ大きくとって、シートパッド1のクッション性を確保するためである。
【0020】
本実施形態はさらにダクト6のセットと相前後して、図4のごとく上型7bの型面76に不織布91をセットする。ダクト6入りシートパッド1が成形された時点で、不織布91がダクト6,緩衝部材8を覆って、シートパッド裏面1bに該不織布91を一体被着させるためである(図3)。不織布91は、緩衝部材8及びダクト背面部分66bを含めたダクト6を覆って、シートパッド1の発泡成形で、シートパッド裏面1bに被着一体化する。図5〜図7は不織布91の図示を省く。尚、緩衝部材8は、上型7bの型面にセットしてもよい。上型7bに不織布91をセットする場合は、不織布91を上型7bにセット後、緩衝部材8を不織布91に重ねて上型7bにセットしてもよい。
【0021】
次に、図4の型開状態のまま、下型7aのキャビティ70(図7)を形成する椀状へこみの型面71に、注入ホースh等を使用してシートパッド成形用ウレタン発泡原液等の発泡原料mを所定量注入する。
【0022】
続いて、上型7bを作動させ型閉じする(図7)。上型7bと下型7aとの型閉じで、ダクト6,緩衝部材8がインサートセットされたシートパッド1用キャビティ70ができる。型閉じに伴い、緩衝部材8が、エア噴出口64の反対側にあたるダクト背面部分66bに圧縮状態で当接する。
詳しくは、下型7aにダクト6をセットし、ダクト背面部分66bに緩衝部材8を図5のように配設セットして型閉じに進む。型閉じ後のシートパッド用キャビティ70で、図7のごとく上型型面76とダクト背面部分66bとの間隔がtになるのに対し、図5で配設される緩衝部材8の厚みtは間隔tよりも厚く設定されている。したがって、エア噴出口64の反対側にあたるダクト背面部分66b上に緩衝部材8を配設セットした後、型閉じへ移行すると、上型7bが図5の白抜き矢印のごとく、緩衝部材8をダクト背面部分66b側へ向けて押さえ付ける。ダクト6を下型7aに単にセットしただけでは、図5の円内拡大図にある矢印のごとく、ダクト6のエア噴出口64周りが浮き上がり、発泡成形時に発泡原料mがエア噴出口64からダクト6内へ入り込む虞がある。これを防止すべく、型閉じで、ダクト6と発泡型7により緩衝部材8を圧縮する。該圧縮の弾性復元力で、緩衝部材8がダクト背面部分66bを押圧する。さらに、この押圧がエア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aと隆起部上端面722との圧接につながり、発泡成形時の発泡原料mがエア噴出口64へ入り込むのを阻止する。緩衝部材8の圧縮に伴うエア噴出口64周りのダクト部66を隆起部72へ押さえる力が、発泡成形時の発泡圧の上昇にも打ち勝つ構成になっている。
尚、本実施形態は発泡型7へのダクト6のセット後、発泡原料mを注入し、その後、型閉じしたが、発泡型7にダクト6をセットした後、型閉じし、その後、発泡原料mを注入することもできる。
【0023】
前記型閉じの後、主工程の発泡成形に移る。図7の型閉じ状態を所定時間維持し、図3ごとくのダクト6,緩衝部材8が埋設一体化されるシートパッド1を発泡成形する。
ここで、下型7aにダクト6をセットし、型閉じしても、ダクト6に反りや変形などが存在し、既述のごとく下型7aとダクト6間に隙やダクト6の浮きが発生する場合がある。エア噴出口64をシールできないケースも起こり得る。しかし、本発明は、緩衝部材8を圧縮する構成にして、エア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aが隆起部上端面722に圧接するよう促し、エア噴出口64の口を確実にシールする。エア噴出口64の反対側にあたるダクト背面部分66bに、圧縮状態にした緩衝部材8を当接させて、隆起部72でエア噴出口64を効果的に塞ぐ。
【0024】
本実施形態は、さらにエア導入口64を取り巻くダクト表面部分66aに、エア噴出口64を囲む前記環状凹所662を設けている。型閉じにより、隆起部上端面722が該環状凹所662を塞いでダクト表面部分66aに当接する。型閉じで、環状凹所662をまたいで、その内周側及び外周側に在るダクト表面部分66aが隆起部上端面722に当接する。万一、隆起部上端面722へのダクト表面部分66aの圧接が何らかの理由で弱くなり、図5の円内拡大図に示す矢印ごとく発泡原料mがエア噴出口64へ向かって侵入したとしても、環状凹所662に入り込むと、そこがバッファになり、発泡原料mが該環状凹所662に滞留する。滞留と同時に、発泡原料mの硬化も始まり、さらなる後続発泡原料mの侵入を妨げる。加えて、その先で、ノズル部65を設けたことにより、穴721を形成する隆起部72の内壁とノズル部65の外壁とが狭まる。その隙間εを発泡原料mが通過することが困難で、発泡原料mがエア噴出口64に到達するのをほぼ完璧に阻止する。
【0025】
斯かる発泡型7へのダクト6,緩衝部材8のセット下で、ダクト6及び緩衝部材8をインサートしてシートパッド1を発泡成形する。隆起部72で乗員当接側のシートパッド表面1aに形成する窪み21を形成し、且つ該窪み21をエア噴出口64に合わせて空気吹き出し口20にするダクト6入りシートパッド1が発泡成形される。圧縮状態の緩衝部材8がダクト6の裏面側略全体を覆って、緩衝部材裏面8bがシートパッド裏面1bとほぼ面一になる。緩衝部材裏面8bがシートパッド裏面1bと一様な面を形成する。ダクト背面部分66bに載るよう配設された緩衝部材8はダクト6と上型7bに挟着され、該緩衝部材8がその板状裏面8bをシートパッド1の裏面1bに合わせるようにしてシートパッド1に埋設一体化される。さらに、緩衝部材8は、発泡成形時に発泡原料mが含浸して、シートパッド1との一体化が強化される。符号5はエア導入部61に巻き付く弾性シール部で、発泡成形時に発泡原料mが凹み73内に侵入して、該弾性シール部5がシートパッド1と同時成形される。
【0026】
シートパッド1の発泡成形を終え、脱型すれば、所望のダクト6入りシートパッド1が得られる(図1〜図3)。ダクト6入りシートパッド1に表皮を被せると、車両用座席シートの座部用シートクッションになる。
【0027】
ちなみに、本実施形態は図5のごとくダクト6側に環状凹所662を設けたが、発泡型7側に図6に示すような環状溝723を設けることもできる。図6の発泡型7は、エア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aに当接する隆起部上端面722に、環状凹所662に代わる環状溝723を形成する。型閉じにより、ダクト表面部分66aが該環状溝723を塞ぐようにして、隆起部72の上端面722に当接する構成とする。環状溝723も前記環状凹所662と同様の作用,効果を発揮する。
【0028】
(2)ダクト入りシートパッド
上記製造方法等で得られるダクト6入りシートパッド1は、ダクト6,緩衝部材8をインサートして一体発泡成形されるシートパッド1である(図1〜図3)。ダクト6にはエア導入部61が設けられると共にダクト経路にエア噴出口64が設けられる。緩衝部材8は、該エア噴出口64が形成されるダクト部66で、そのエア噴出口64とは反対側にあたるダクト背面部分66b上に配設される。シートパッド1は、乗員当接側の表面1aに窪み21を形成し、該窪み21がエア噴出口64に連通する空気吹き出し口20になるようにして、ダクト6,緩衝部材8をインサートして一体発泡成形される。さらに、シートパッド1の発泡成形で、図3のごとく不織布91がダクト6及び緩衝部材8を覆って、シートパッド裏面1bに被着一体化される。
【0029】
そして、板状の前記緩衝部材8がシートパッド裏面1b側に埋設される。緩衝部材8の一の板面がダクト背面部分66bに当接する一方、反対側の他の板面が前記シートパッド1の裏面1bと一様な面を形成する。該ダクト背面部分66bに当接する面と反対側の緩衝部材8の面は、もし不織布91がなければ、シートパッド1の発泡樹脂に覆われることなく、シートパッド裏面1b側で露出する。シートパッド1の発泡成形で、下型7aにセットしたダクト6に緩衝部材8が載置され、発泡型7の型閉じでクッション性を有する該緩衝部材8が圧縮されて、ダクト背面部分66bに圧接する構成になっている。この圧接が、シートパッド1の発泡成形時にダクト6と下型7aとの密着を保つ。シートパッド1の成形時、エア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aと窪み21を形成する隆起部72との当接,密着を確かなものにする。
その結果、ダクト6入りシートパッド1には、エア噴出口64を取り巻くダクト部66のダクト表面部分66aが、シートパッド1に覆われることなく露出する(図2,図3)。該露出部分は、シートパッド1の発泡成形時にエア噴出口64の口を覆うべく、ダクト表面部分66aが窪み21を形成する隆起部72に当接,密着した痕跡部分を示す。エア噴出口64よりも一回り大きな円形になる。型閉じで、環状凹所662をまたいで、その内周側及び外周側に在るダクト表面部分66aが隆起部上端面722に当接することから、該環状凹所662もシートパッド1の平面視で露出する構成のダクト6入りシートパッド1になっている(図2)。
ダクト6,緩衝部材8,シートパッド1,不織布91等の他の構成は、ダクト6入りシートパッド1の製造方法で述べた構成と同様で、その説明を省く。
【0030】
(3)効果
このように構成したダクト入りシートパッド及びその製造方法によれば、型閉じにより、エア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aが、窪み21を形成する隆起部72とでエア噴出口64の口を覆い、且つエア噴出口64が形成されるダクト部66で、エア噴出口64の反対側にあたるダクト背面部分66bに、緩衝部材8が圧縮状態で当接するので、ダクト表面部分66aと隆起部72との密着シール性を高める。圧縮に伴う緩衝部材8の復元力が、ダクト表面部分66aを隆起部72側へと押圧し、ダクト表面部分66aと隆起部72との接合力を高める。従って、その後の発泡成形で発泡原料mがエア噴出口64からダクト6内に侵入するのを阻止できる。そして、緩衝部材8がダクト背面部分66bに圧縮状態で当接する構成も、型閉じによって、上型7bと、下型7aに配設されたダクト6とに緩衝部材8が挟着されて圧縮状態になるので、何ら新たな装置等を要しない。上型7bや、下型7aに配設されたダクト6の型閉じに伴う自律作用で、緩衝部材8を圧縮し、該圧縮を利用してダクト表面部分66aと隆起部72との密着シール性を高めることができる。
【0031】
これまで、ダクト6のエア噴出口64を型面に当てて塞ぎ、該ダクト6を発泡型7にインサートセットしてシートパッド1を発泡成形しても、発泡原料mがエア噴出口64からダクト6内へ侵入する問題があった。特に車両用座席シートのダクト6入りシートパッド1には、図1のごとくエア噴出口64がダクト6の端部に分散して複数配設されており、各エア噴出口64をそれぞれ塞いで発泡型7にセットしたつもりでも、どこかが浮いてしまう不具合が生じやすかった。ダクト6を埋設したシートパッド1を一体発泡成形するのは至難を極めた。
こうした問題に対し、本ダクト6入りシートパッド及びその製造方法は、型閉じにより、エア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aが、前記窪み21を形成する隆起部72とでエア噴出口64の口を覆う構成とする。そして、本緩衝部材8がその構造特性として有するクッション性でもって、ダクト6の各端部に分散配設されるエア噴出口64(具体的にはエア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66a)が有する寸法誤差を解消する。ダクト表面部分66aと隆起部72との当接具合に微妙な寸法誤差が生じても、型閉じで、緩衝部材8が、そのクッション特性で各部の寸法誤差に合わせて順応圧縮して、該寸法誤差を吸収解決する。次工程のシートパッド1の発泡成形で、発泡原料mがエア噴出口64からダクト6内に侵入するのをうまく阻止できる。
【0032】
さらに、エア噴出口64を取り巻くダクト表面部分66aに、エア噴出口64を囲む環状凹所662が設けられ、型閉じにより、隆起部上端面722が環状凹所662を塞ぐようにしてダクト表面部分66aに当接すると、何らかの理由で隆起部上端面722とダクト表面部分66aとに隙間ができたとしても、発泡成形時にエア噴出口64への発泡原料mの侵入阻止に簡単に対処できる。発泡成形時に発泡原料mがエア噴出口64へ向かって侵入したとしても(図5の円内拡大図)、環状凹所662に一旦入り込み、そこで発泡原料mが硬化して後続侵入を絶つ。環状凹所662がバッファ空間ptになって、侵入してきた発泡原料mをここに停滞させる。発泡原料mの停滞に伴って時間経過と共に硬化も始まり、さらなる後続発泡原料mの侵入を妨げる。さらにいえば、その先で、ノズル部65が穴721を形成する隆起部72の内壁に近接するよう配され、その隙間εを発泡原料mが通過するのが難しくなっており、エア噴出口64へ発泡原料mが到達するのをほぼ完璧に阻止できる。緩衝部材8の圧縮が不十分であったり、発泡成形時に発泡圧が上昇したりして、隆起部上端面722とダクト表面部分66aとの間に隙ができたとしても、何ら問題ない。
該環状凹所662に代えて、発泡型7の隆起部72の上端面722に環状溝723を形成しても、環状凹所662と同様の効果を得る。
【0033】
もし、仮に発泡原料mがエア噴出口64からダクト6内に侵入すると、エア噴出口64は、シートパッド1のクッション性を得るためにシートパッド表面1aから相当の距離があり、ダクト6内に入り込んだ発泡原料mの取り除き作業は困難を極める。従来のエア噴出口64を型面に当接させるだけで成形されるダクト6入りシートパッド1は、歩留まり低下を余儀なくされていた。ダクト6内の発泡原料m硬化を放置すれば、ダクト6の通気抵抗を上昇させて、快適性を求めて温度調整する座席シートに支障をきたす。
これに対し、本ダクト6入りシートパッド1及びその製法においては、既述のごとく緩衝部材8、さらに環状凹所662や環状溝723によって、シートパッド発泡成形時の発泡原料mがエア噴出口64内に侵入するのを完全阻止でき、ダクト6内に入り込んだ発泡原料mの取除き作業を解消し、歩留まり向上を果たす。緩衝部材8や環状凹所662,環状溝723によって、発泡成形時におけるエア噴出口64のシール性が高まることから、ダクト6の寸法精度もある程度許容できるようになる。製品の低コスト化にもつながる。
【0034】
ところで、本ダクト6入りシートパッド1は、シートパッド1の一体発泡成形で、エア噴出口64周りのダクト表面部分66aと隆起部上端面722との当接により、エア噴出口64を取り巻くダクト部66のダクト表面部分66aが露出するが、特に支障ない。ダクト6入りシートパッド1は表皮を被せて、車両用座席シートの座部用シートクッションになるので、意匠面として現れず問題とならない。また、発泡成形時の発泡圧上昇などで、環状凹所662や環状溝723に侵入した発泡原料mの硬化部分が存在しても、前記ダクト表面部分66aの露出箇所と同様、表皮を被せて、車両用座席シートの座部用シートクッションになるので、全く問題とならない。逆に、環状凹所662や環状溝723に侵入した発泡原料mの硬化部分の存在が確認できたら、緩衝部材8に係る厚みやクッション性等の設計数値を変更して、早期対策を講じることができる。環状凹所662や環状溝723の形成が品質維持にも効果を発揮する。
【0035】
また、緩衝部材8はダクト6に裏当てし、これを覆っているので、ダクト6の破損防止に役立つ。シートパッド1のクッション性を確保するため、ダクト6はシートパッド裏面1b沿いに配設されるが、シートパッド裏面1bにダクト6がむきだしであると、シートパッド1の発泡成形における型閉じ時や、車両に取付ける場合などで、発泡型7やフレームと干渉して破損する虞がある。緩衝部材8の板状裏面8bとシートパッド1の裏面1bとで一様な面を形成して、ダクト背面部分66bに緩衝部材8が当接するダクト6入りシートパッド1であれば、衝撃を少なくするクッション性を有する緩衝部材8がダクト6を保護して破損防止に貢献する。実施形態のごとく、緩衝部材8がダクト6の裏面側全体を覆ってシートパッド裏面1b側に設けられると、ダクト6全体を保護して破損防止に一層貢献する。
【0036】
加えて、緩衝部材8が存在することで、ダクト6による異音防止を抑える優れた効果を発揮する。緩衝部材8がなければ、ダクト6がシートパッド裏面1b側に露出するか、不織布91の裏面材がシートパッド裏面1bになるが、このダクト6入りシートパッド1を車両に取着し、位置調整や走行等をすると、ダクト6又は該裏面材が車両側フレーム(又はワイヤ)と接触し擦ることから異音が発生する場合がある。不織布91の裏面材があっても、不織布91の裏側(シートパッド側)には、硬いダクト6が存在するので、異音が発生し易い。
これに対し、本緩衝部材8は、クッション性を有して板状の厚みがあり、圧縮状態でシートパッド裏面1b側に配設されるので、上記異音発生を効果的に静めることができる。緩衝部材8は、クッション性を有し、且つシートパッド1の発泡成形で発泡原料mを適度に吸収,含浸して、ダクト背面部分66bに当接して介在するので、該緩衝部材8が車両側フレーム(又はワイヤ)側からダクト6側への衝突や衝撃をゆるめやわらげる役目を果たす。異音発生を効率良く抑えることができる。さらに、本緩衝部材8がプレスフェルトであれば、前記シール性確保や異音防止等に機能する含浸性且つクッション性だけでなく、ダクト6への裏当て部材として必要な柔軟性,可撓性とコシがあり、品質的により好ましいダクト6入りシートパッド1が出来るようになる。
【0037】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。シートパッド1,ダクト6,環状凹所662,発泡型7,隆起部72,環状溝723等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態はエア噴出口64用のノズル部65を設けたが、ノズル部65を設けずに、ダクト6に孔を直接開けて、これをエア噴出口64とすることもできる。本実施形態は、緩衝部材8に含浸性を有するプレスフェルトを用いたが、緩衝材8は、型閉じ時にダクト6を隆起部72に押し付ける効果が得られるクッション性を有すれば足りる。含浸性を有しない場合でも、シートパッド裏面1bに設けた不織布91によって、シートパッド1に保持しておくことができる。したがって、ゲル状部材を緩衝部材8として使用することもできる。また、本実施形態は、緩衝部材8を板状としたが、エア噴出口64が形成されるダクト部66のみに配設されるブロック状のものでもよい。更に、エア噴出口64を塞ぐために、エア噴出口64周りのダクト表面部分66aと隆起部上端面722とを直接当接させたが、両者間に発泡ウレタン等のシール材を挟んでもよい。緩衝部材8によるダクト6を押しつける力が、該シール材を押し潰すことにもなり、シール性をより一層確かなものにする。
【符号の説明】
【0038】
1 シートパッド
1a 表面(シートパッド表面)
1b 裏面(シートパッド裏面)
20 空気吹き出し口
21 窪み
6 配風用ダクト(ダクト)
61 エア導入部
64 エア噴出口
66 ダクト部
66a ダクト表面部分
66b ダクト背面部分
662 環状凹所
7 発泡型
72 隆起部
722 上端面
8 緩衝部材
8b 板状裏面
m 発泡原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア導入部(61)が設けられると共にダクト経路にエア噴出口(64)が設けられる配風用ダクト(6)と、
クッション性を有する緩衝部材(8)と、
乗員当接側の表面(1a)に窪み(21)を形成し、その窪み(21)が前記エア噴出口(64)に連通する空気吹き出し口(20)になるようにして、前記配風用ダクト(6)、さらに前記緩衝部材(8)をインサートして一体発泡成形されるシートパッド(1)と、を具備し、
前記緩衝部材(8)が前記シートパッド(1)の裏面(1b)側に埋設され、且つ該緩衝部材(8)が、前記エア噴出口(64)が形成されるダクト部(66)で、そのエア噴出口(64)の反対側にあたるダクト背面部分(66b)に当接してなることを特徴とするダクト入りシートパッド。
【請求項2】
前記緩衝部材(8)は含浸性を有した板状を呈し、その一の板面が前記ダクト背面部分(66b)に当接する一方、反対側の他の板面が前記シートパッド(1)の裏面(1b)と一様な面を形成する請求項1記載のダクト入りシートパッド。
【請求項3】
不織布(91)をさらに具備し、該不織布(91)が、前記緩衝部材(8)及び前記ダクト背面部分(66b)を含めたダクト(6)を覆って、前記シートパッド(1)の発泡成形で、該シートパッド(1)の裏面(1b)に被着一体化される請求項1又は2に記載のダクト入りシートパッド。
【請求項4】
前記緩衝部材(8)がプレスフェルトである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダクト入りシートパッド。
【請求項5】
前記エア噴出口(64)が形成されるダクト部(66)で、そのダクト表面部分(66a)に、前記エア噴出口(64)を囲む環状凹所(662)がさらに形成される請求項1乃至4のいずれか一項に記載のダクト入りシートパッド。
【請求項6】
エア導入部(61)が設けられると共にダクト経路にエア噴出口(64)が設けられた配風用ダクト(6)を、発泡型(7)にセットし、次いで、発泡原料(m)の注入及び型閉じを経て、該ダクト(6)が埋設されるシートパッド(1)を発泡成形し、その発泡成形で、乗員当接側のシートパッド表面(1a)に形成する窪み(21)を前記エア噴出口(64)に合わせて空気吹き出し口(20)にするダクト入りシートパッドの製造方法であって、
前記発泡型(7)への配風用ダクト(6)のセットと共に、これと相前後して、クッション性を有する緩衝部材(8)を該発泡型(7)にセットし、次いで、型閉じにより、前記エア噴出口(64)が形成されるダクト部(66)で、前記緩衝部材(8)を該エア噴出口(64)の反対側にあたるダクト背面部分(66b)に圧縮状態で当接させて、前記窪み(21)を形成する該発泡型(7)の隆起部(72)で該エア噴出口(64)を塞ぎ、しかる後、前記シートパッド(1)の発泡成形で、該緩衝部材(8)が該シートパッド(1)の裏面(1b)側に埋設一体化されることを特徴とするダクト入りシートパッドの製造方法。
【請求項7】
前記エア噴出口(64)を取り巻くダクト表面部分(66a)に、エア噴出口(64)を囲む環状凹所(662)がさらに設けられ、型閉じにより、前記隆起部(72)の上端面(722)が該環状凹所(662)を塞ぐようにしてダクト表面部分(66a)に当接する請求項6記載のダクト入りシートパッドの製造方法。
【請求項8】
前記エア噴出口(64)を取り巻く前記ダクト表面部分(66a)に当接する前記隆起部(72)の上端面(722)に、環状溝(723)がさらに形成され、型閉じにより、ダクト表面部分(66a)が該環状溝(723)を塞ぐようにして、隆起部(72)の上端面(722)に当接する請求項6記載のダクト入りシートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81161(P2012−81161A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231294(P2010−231294)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】