説明

ダスト処理装置

【課題】サイクロン装置等の集塵機を省略して装置構成の簡素化を実現しながら、重金属を含む気化状物質を効率よく発生可能なダスト処理装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波を、内側ケーシング3の側部3aと外側ケーシング5とで囲繞されて形成される空間4、及び内側ケーシング3の側部3aに形成されたマイクロ波透過性材料20を介して、内側ケーシング3内の充填層2に存在するダストDに照射し、当該ダストDを加熱して気化状物質を発生させるダスト処理装置1であって、気化状物質が透過可能でダストDが透過不能な多孔性セラミックフィルタ21でマイクロ波透過性材料20が構成され、空間4内の気体を外部空間側から吸引する吸引手段11を備え、吸引手段11が、内側ケーシング3内で発生した気化状物質を多孔性セラミックフィルタ21にてろ過しながら、内側ケーシング3内から空間4を介して外部空間に吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象ダストを加熱して気化状物質を発生させるダスト処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所、製鋼所、ごみ処理場等の電気炉や焼却炉等のダスト発生源で発生したダストには、有害物質となり得る重金属が含まれていることがある。このダストを再利用するためには重金属を取り除く必要があり、従来から、ダストを加熱し当該ダスト中の重金属を気化させて、当該重金属を含む気化状物質を発生させるダスト処理装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この気化状物質には、一酸化炭素、二酸化炭素のほか、亜鉛等の重金属の気体が含まれる。
【0003】
特許文献1に記載のダスト処理装置では、筒状の筐体内部において下部が伝熱蒸留室とされ、上部が燃焼室とされており、さらに、伝熱蒸留室の上部と下部にはそれぞれ炭素電極が配設されている。そして、ダスト発生源で発生したダストを筐体の上部から伝熱蒸留室内に投入して充填させた後、伝熱蒸留室内の両炭素電極間に存在するダストをジュール熱で1000℃以上に加熱し当該ダスト中の重金属を気化させて、当該重金属を含む気化状物質を発生させるように構成されている。
【0004】
一方、特許文献2に記載のダスト処理装置では、内部にダストの充填層を形成可能な筒状の内側ケーシングと、内側ケーシングを囲繞する外側ケーシングと、外側ケーシングの側部に、内側ケーシングの側部に対してマイクロ波を照射可能なマイクロ波照射手段とが配設されている。また、内側ケーシングの側部のうちマイクロ波の照射される部位がマイクロ波を透過可能なマイクロ波透過性材料であるセラミックで形成されている。そして、充填層に充填されているダストにマイクロ波を照射することで1000℃以上に加熱し当該ダスト中の重金属を気化させて、当該重金属を含む気化状物質を発生させるように構成されている。
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に記載のダスト処理装置では、発生した気化状物質中の重金属は、空気が導入される酸化室にて当該空気と接触して酸化され、酸化亜鉛等の酸化物となる。そして、酸化物となった重金属を含む気化状物質はサイクロン装置等の集塵機に導入され、続いて、バグフィルタ装置等の回収装置により回収される。
【0006】
従って、上記特許文献1及び特許文献2に記載のダスト処理装置では、加熱されたダストから発生した気化状物質中の重金属は、酸化室にて酸化された後、そのままサイクロン装置等の集塵装置に導入され、続いてバグフィルタ装置等の回収装置によりろ過されて回収される構成とされている。よって、炭素電極やマイクロ波照射手段によりダストを加熱して、ダスト中に含まれる亜鉛等の重金属を気化させ、当該重金属を含む気化状物質を発生させることができ、重金属を分離回収してダストの再利用を図ることが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭57−5861号公報
【特許文献2】特開2008−249189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載のダスト処理装置では、発生した気化状物質は、ダストが存在する伝熱蒸留室や充填層内からそのままの状態で排出される構成であるため、この排出される気化状物質には、重金属のみならずダストも少なからず含まれることとなる。従って、当該気化状物質中の重金属を最終的にバクフィルタ装置等にて回収する前に、サイクロン装置等の集塵機にて気化状物質中のダストを除去することが必要となる。サイクロン装置等の集塵機は構造上、比較的大型化しやすく大きな設置スペースが必要となり、また、当該集塵機を採用することで構成が複雑化する。従って、構成の大型化・複雑化を防止する観点から改善の余地がある。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイクロン装置等の集塵機を省略して装置構成の簡素化を実現しながら、重金属を含む気化状物質を効率よく発生可能なダスト処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るダスト処理装置は、内部に処理対象ダストの充填層を形成可能な筒状の内側ケーシングと、前記内側ケーシングの側部に空間を形成する形態で、前記内側ケーシングを囲繞する外側ケーシングと、前記外側ケーシングの側部に、前記空間を通過して前記内側ケーシングの側部に対してマイクロ波を照射可能なマイクロ波照射手段とを備え、
前記内側ケーシングの側部のうち前記マイクロ波の照射される部位が前記マイクロ波を透過可能なマイクロ波透過性材料で形成され、
前記マイクロ波照射手段が、前記マイクロ波を前記空間及び前記マイクロ波透過性材料を介して前記充填層に存在する前記処理対象ダストに照射し、当該処理対象ダストを加熱して気化状物質を発生させるダスト処理装置であって、その特徴構成は、
前記気化状物質が透過可能で前記処理対象ダストが透過不能な多孔性セラミックフィルタで、前記マイクロ波透過性材料が構成され、
前記空間内の気体を外部空間側から吸引する吸引手段を備え、前記吸引手段が、前記内側ケーシング内で発生した前記気化状物質を、前記多孔性セラミックフィルタにてろ過しながら、前記内側ケーシング内から前記空間を介して前記外部空間に吸引する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、内側ケーシングの内部の充填層に充填された処理対象ダストにマイクロ波を照射し加熱して、有価物である重金属を含む気化状物質を発生させるダスト処理装置において、発生した気化状物質に少なからず含まれる処理対象ダストを多孔性セラミックフィルタでろ過した上で、外部空間に排出(吸引)することができるので、当該気化状物質中の重金属を最終的にバグフィルタ装置等で回収する前に、サイクロン装置等の集塵機を設けて処理対象ダストを集塵する必要が無くなる。加えて、内側ケーシングの側部の一部を、多孔性セラミックフィルタとして形成できるので、別途、フィルタを設ける構成と比較してより簡便な構成となる。これらより、サイクロン装置等の集塵機を省略して構成の簡素化を実現することができる。
また、照射されたマイクロ波は、内側ケーシングの側部と外側ケーシングとで囲繞される空間及びマイクロ波透過性材料を介して、内側ケーシング内の処理対象ダストを加熱する。この際には、重金属を含む気体状物質が発生するが、この気化状物質は、主として、内側ケーシング内のマイクロ波透過性材料の内面近傍に発生することとなる。一方で、マイクロ波透過性材料が、気化状物質を透過可能で処理対象ダストを透過不能な多孔性セラミックフィルタで構成されている。従って、この多孔性セラミックフィルタの外面側に隣接する上記空間内の気体を外部空間から吸引手段を用いて吸引して負圧状態とすることにより、内側ケーシング内のマイクロ波透過性材料(多孔性セラミックフィルタ)の内面近傍に発生した気化状物質を多孔性セラミックフィルタに通過させることができる。従って、内側ケーシング内で発生した気化状物質を即座に多孔性セラミックフィルタに通過させ、上記空間を介して外部空間に排出させることができるので、気化状物質の迅速な排出を行うことができる。加えて、内側ケーシング内で発生した気化状物質に含まれるダストを多孔性セラミックフィルタでろ過した上で、重金属を含む気化状物質を上記空間を介して外部空間に排出させ、バグフィルタ装置等の回収装置で回収することが可能となる。なお、多孔性セラミックフィルタは、内側(充填層側)と外側(空間側)とを貫通する複数の微細な貫通孔を備えており、上述の通り、重金属を含む気化状物質を透過可能で、ダスト自体は透過不能に構成されている。
よって、サイクロン装置等の集塵機を省略して装置構成の簡素化を実現しながら、重金属を含む気化状物質を効率よく発生可能なダスト処理装置を得ることができた。
【0012】
ここで、例えば、運転を制御する制御手段が、マイクロ波照射手段及び吸引手段を同時に作動させ、充填層に存在する処理対象ダストにマイクロ波を照射させながら、充填層内に気化状物質を発生させるとともに、この充填層内に発生した気化状物質の多孔性セラミックフィルタによるろ過を同時に実行させると、制御手段の制御により、内側ケーシング内の処理対象ダストから気化状物質を発生させると同時に、当該気化状物質中に含まれる処理対象ダストをろ過して、処理対象ダストが存在しない状態で、重金属を含む気化状物質を上記空間を介して外部空間に迅速かつ確実に排出(吸引)させることができる。
【0013】
本発明に係るダスト処理装置の更なる特徴構成は、前記空間内の一部が、前記内側ケーシングから前記多孔性セラミックフィルタを介して前記空間内に吸引された前記気化状物質を、空気導入部から導入される空気に接触させて酸化する酸化室に形成されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、内側ケーシングの側部と外側ケーシングとで囲繞される空間内の一部を、充填層内で発生した気化状物質の酸化室とすることができるので、多孔性セラミックフィルタを通過してろ過され当該空間内の酸化室に吸引された重金属を含む気化状物質に、空気を接触させて酸化することができる。これにより、マイクロ波が通過する空間の一部を、気化状物質を酸化する酸化室に兼用することができ、装置の簡素化を図ることができる。また、酸化室にて酸化して、重金属が酸化亜鉛等の酸化物の状態で含まれる気化状物質を直接、バグフィルタ装置に導入することができる。
【0015】
本発明に係るダスト処理装置の更なる特徴構成は、前記空間内には、前記外側ケーシング内の上面部から垂下するマイクロ波透過性材料で形成された筒状隔壁を備え、
前記空間内は、前記筒状隔壁により少なくとも前記筒状隔壁よりも内側の内側空間と外側の外側空間との2つに、両空間の下部が連通した状態で区画され、前記内側空間は、前記内側ケーシング内の前記充填層から前記多孔性セラミックフィルタを介して前記空間内に吸引された前記気化状物質の導入室とされ、前記外側空間は、前記導入室から導入された前記気化状物質を、空気導入部から導入される空気に接触させて酸化する酸化室とされている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、内側ケーシングの側部と外側ケーシングとで囲繞される空間内は、外側ケーシング内の上面部から垂下するマイクロ波透過性材料で形成された筒状隔壁により、少なくとも筒状隔壁よりも内側の内側空間と外側の外側空間との2つに、両空間の下部が連通した状態で区画される。これにより、内側ケーシング内で発生した気化状物質は、当該空間内が吸引手段により吸引され負圧状態とされることにより、多孔性セラミックフィルタを介して当該空間内の内側空間(導入室)に導入され、内側空間(導入室)の下部から外側空間(酸化室)に導入されて、その後、外部空間に排出されるように通流する。一方で、内側空間(導入室)は、多孔性セラミックフィルタの外面側近傍に形成されているため、マイクロ波により加熱された気化状物質が導入されて還元雰囲気とすることができ、また、外側空間(酸化室)は、空気導入部から空気を導入することで酸化雰囲気とすることができる。
従って、気化状物質が上記空間内を内側空間(導入室)から外側空間(酸化室)へと通流する際において、多孔性セラミックフィルタの外面側近傍である内側空間(導入室)では酸化されることがなく、筒状隔壁により多孔性セラミックフィルタと隔離された外側空間(酸化室)で酸化されることとなる。これにより、多孔性セラミックフィルタ近傍で酸化亜鉛等の酸化物が発生してフィルタの目詰まりが生じることを良好に防止することができる。また、マイクロ波が通過する空間の一部を、気化状物質を酸化する酸化室に兼用することができ、装置の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るダスト処理装置の概略縦断面視図
【図2】第2実施形態に係るダスト処理装置の概略縦断面視図
【図3】第3実施形態に係るダスト処理装置の概略縦断面視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のダスト処理装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、ダスト処理装置1は、内部に処理対象ダストD(以下、ダストDという。)の充填層2を形成可能な筒状の内側ケーシング3と、内側ケーシング3の側部3aに空間4を形成する形態で、内側ケーシング3を囲繞する外側ケーシング5と、外側ケーシング5の側部5aに、空間4を通過して内側ケーシング3の側部3aに対してマイクロ波を照射可能なマイクロ波照射手段6と、運転を制御する制御手段7とを備えている。
また、ダスト処理装置1は、製鉄所、製鋼所、ごみ処理場等の電気炉や焼却炉等のダスト発生源XからのダストDを、一定量ずつ内側ケーシング3内に供給する定量供給機構8と、内側ケーシング3内に供給されたダストDを、一定量ずつ排出させる定量排出機構9と、定量排出機構9から排出されたダストDを装置外に搬送するコンベア等の搬送手段10を備えている。
従って、ダスト処理装置1は、内側ケーシング3の充填層2内に充填されたダストDにマイクロ波を照射して加熱し、当該ダストDに含まれる重金属を気化させて、当該重金属を含む還元蒸留ガス(気化状物質の一例)を発生させることで、ダストDの処理を行うものである。なお、当該ダストDは、粉体そのものであってもよいし、ダストDをコークス等のカーボンを練り混ぜて造粒機によって造粒したものであってもよい。このダストDが粉体で存在する場合の平均粒子径は、6〜60μm程度である。
そして、ダスト処理装置1にて、ダストDを加熱処理することで発生した重金属を含む還元蒸留ガスは、吸引ポンプ11(吸引手段の一例)によりバグフィルタ装置12(回収装置の一例)を介して外部空間に吸引され、当該バグフィルタ装置12に回収される。
【0019】
以下、ダスト処理装置1の各部の構成について説明する。
内側ケーシング3は、円筒状、多角筒状等の筒状に形成されており、その上部に供給口3bが設けられ、下部に排出口3cが設けられている。供給口3bの上部には定量供給機構8が接続され、排出口3cの下部には定量排出機構9が設けられており、内側ケーシング3の内部の充填層2に供給されて充填層2から排出されるダストDの量が、所定量となるように調整可能に構成されている。
【0020】
外側ケーシング5は、円筒状、多角筒状等の筒状に形成されており、内側ケーシング3の側部3aに空間4を形成する形態で、内側ケーシング3を囲繞するように配設されている。また、外側ケーシング5の側部5aには、後述するマイクロ波照射手段6が配設されている。さらに、外側ケーシング5の上部(図1では、後述する酸化室4Bの上部)には、空間4内のガスを排出することができるガス排出口5bが配設されている。
【0021】
マイクロ波照射手段6は、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器6aを備えて構成される。このマイクロ波発振器6aは外側ケーシング5の側部5aに複数個配設され、入射導波管6bを介して内側ケーシング3の側部3aに向けて(図1上、左から右、或いは右から左方向に)マイクロ波を照射可能に配置されている。マイクロ波発振器6aとしては、例えば、マイクロ波を照射可能なマグネトロン等を用いることができる。ここで、マイクロ波とは、周波数が300MHz〜3THz程度であり、波長が100μm〜1m程度の電磁波であり、例えば、950MHz、2.45GHz、5.8GHz程度の周波数が含まれる。
【0022】
制御手段7は、公知の演算処理手段であり、吸引ポンプ11、マイクロ波発振器6a等の作動状態を制御可能に構成されている。
【0023】
定量供給機構8は、内側ケーシング3内の充填層2にダストDを一定量ずつ供給できる公知の機構を採用することができる。例えば、定量供給機構8として、錐体(円錐体や多角錐体)の内部にダストDを貯留可能な供給ホッパ8aを設け、この供給ホッパ8aの下部にロータリーバルブ(図示せず)を設ける構成とすることができる。この場合、供給ホッパ8aの下部が内側ケーシング3の上部の供給口3bに接続され、ロータリーバルブにより供給ホッパ8a内から充填層2に供給されるダストDの量を一定に調節することができる。
【0024】
定量排出機構9は、内側ケーシング3内に供給されたダストDを、一定量ずつ排出できる公知の機構を採用することができる。例えば、定量排出供給9として、内側ケーシング3の下部の排出口3cにロータリーバルブ(図示せず)を設ける構成とすることができる。この場合、内側ケーシング3の下部が、ロータリーバルブを介して搬送手段10に接続され、ロータリーバルブにより内側ケーシング3の充填層2から排出されるダストDの量を一定に調節することができる。
従って、定量供給機構8及び定量排出機構9の作動を調整することにより、ダストDが充填層2内に滞留する時間を適切に調整することが可能となる。
【0025】
吸引手段としては、公知の吸引ポンプ11やファン等を用いることができる。吸引ポンプ11は、図1に示すように、外側ケーシング5の上部に配設されたガス排出口5bに、後述するバグフィルタ装置12を介して接続される。従って、吸引ポンプ11は、外側ケーシング5内に形成された空間4内の気体を吸引して、当該空間4内を負圧状態とすることが可能に構成されている。
【0026】
回収装置としては、公知のバグフィルタ装置12を用いることができる。バグフィルタ装置12は、ガス排出口5bと吸引ポンプ11との間に配設されて、吸引ポンプ11による吸引により、外側ケーシング5内に形成された空間4内から重金属を含んだガス(後述する排出ガスなど)が導入される。当該ガスをバグフィルタでろ過して、亜鉛等の重金属を回収(捕集)するように構成されている。
【0027】
次に、本願のダスト処理装置1の特徴構成について説明する。
〔内側ケーシング3の側部3aのマイクロ波透過性材料20〕
上述のとおり、筒状の内側ケーシング3の内部には充填層2が形成されているが、この内側ケーシング3の側部3aのうち上記マイクロ波発振器6aによりマイクロ波の照射される部位が、マイクロ波を透過可能なセラミック等からなるマイクロ波透過性材料20で形成されている。従って、マイクロ波発振器6aから照射されたマイクロ波は、内側ケーシング3の側部3aのうちマイクロ波透過性材料20で形成された部位を透過して充填層2内のダストDに照射され、このダストDを良好に加熱することができる。この加熱温度は、例えば、1000℃〜1400℃程度である。
【0028】
〔内側ケーシング3の側部3aの多孔性セラミックフィルタ21〕
さらに、内側ケーシング3の側部3aにおけるマイクロ波透過性材料20は、多孔性セラミックフィルタ21で構成されている。この多孔性セラミックフィルタ21は、マイクロ波を透過できることに加えて、内側(充填層2側)と外側(空間4側)とを貫通する複数の微細な貫通孔を備えており、重金属を含む還元蒸留ガスを透過可能で、ダストD自体は透過不能に構成されている。ここで、ダストD自体を透過不能とは、多孔性セラミックフィルタ21の貫通孔の平均細孔径が、ダストDが粉体で存在する場合の平均細孔径よりも小さいことを意味する。このような多孔性セラミックフィルタ21としては、例えば、シリカ、アルミナ等から構成され、平均細孔径が1〜5μm程度の微細な貫通孔を備えた多孔性セラミックフィルタを採用することができる。従って、この多孔性セラミックフィルタ21を通過させることにより、充填層2内で発生した気化状物質中に含まれるダストDをろ過してから、当該気化状物質を空間4内に導入することが可能となる。
【0029】
〔筒状隔壁30〕
外側ケーシング5内に形成された空間4内には、外側ケーシング5内の上面部から垂下するマイクロ波透過性材料(例えば、アルミナ)で形成された筒状隔壁30が配設されている。筒状隔壁30は、円筒状、多角筒状等の筒状に形成されており、空間4内は、筒状隔壁30により筒状隔壁30よりも内側の内側空間と外側の外側空間との2つに区画される。筒状隔壁30の下部は外側ケーシング5の底面に対して所定距離だけ離間した位置にまで配設されており、内側空間と外側空間との下部が連通されている。
この内側空間は、内側ケーシング3内の充填層2から多孔性セラミックフィルタ21を介して空間4内に吸引された還元蒸留ガスの導入室4Aとされ、外側空間は、導入室4Aから導入された還元蒸留ガスを、減圧弁31(空気導入部の一例)から導入される空気に接触させて酸化する酸化室4Bとされている。
なお、減圧弁31は、外側ケーシング5の側部3aの下部において、空間4内の筒状壁部30の下部と略同じ高さに配設され、筒状壁部30により区画された酸化室4Bの下部近傍に空気を導入可能に構成されている。そして、減圧弁31は、吸引ポンプ11により空間4内が負圧状態とされると、酸化室4B内に空気を導入可能に構成されている。
従って、内側ケーシング3内で発生した還元蒸留ガスは、当該空間4内が吸引ポンプ11により吸引され負圧状態とされることにより、多孔性セラミックフィルタ21を介して当該空間4内の導入室4Aに導入され、導入室4Aの下部から酸化室4Bに導入されて、その後、外部空間に排出されるように通流することとなる。
【0030】
次に、本願のダスト処理装置1によりダストDを処理する動作について説明する。
ダスト発生源XからのダストDを供給ホッパ8a内に供給し、制御手段7がロータリーバルブを作動させて、内側ケーシング3の充填層2内に所定量ずつダストDを供給する。充填層2内に所定高さ(例えば、多孔性セラミックフィルタ21の上端程度)までダストDが供給されると、制御手段7は、マイクロ波発振器6aに内側ケーシング3の側部3aに向けてマイクロ波を照射させる。このマイクロ波は、筒状壁部30及び多孔性セラミックフィルタ21を透過して、充填層2内のダストDを加熱する。これにより、ダストDが1000℃〜1400℃程度に加熱されて、充填層2内で還元蒸留ガスが発生する。この還元蒸留ガス中には、一酸化炭素や二酸化炭素のほか、ダストDに含まれていた亜鉛等の重金属が気化した物質も含まれる。
【0031】
制御手段7は、マイクロ波発振器6aによりマイクロ波を照射させると同時に(或いは、その後所定時間経過してから)、吸引ポンプ11を所定の出力で作動させ、空間4内を吸引させて負圧状態とする。この場合、内側ケーシング3内の圧力が大気圧程度であれば、空間4内を大気圧よりも低圧の負圧状態とする。これにより、負圧状態となった空間4の導入室4A内に内側ケーシング3の充填層2で発生した還元蒸留ガスが導入される。この際には、多孔性セラミックフィルタ21を通過してダストDがろ過された状態で導入室4A内に導入されるので、導入室4A内の還元蒸留ガス中にはダストDは存在しない状態である。なお、導入室4A内は当該還元蒸留ガスの存在により還元雰囲気に維持される。
【0032】
続いて、導入室4Aの還元蒸留ガスは、吸引ポンプ11による吸引により導入室4Aの下部から酸化室4Bに導入される。一方で、酸化室4B(空間4)内が負圧状態となることで、酸化室4Bの下部に配設された減圧弁31を介して外部から空気が導入される。従って、酸化室4B内に導入された還元蒸留ガスは、減圧弁31からの空気により酸化されて排出ガス(気化状物質の一例)となる。この排出ガスには、上記亜鉛等の重金属が気化した物質が酸化されて酸化亜鉛等の酸化物となった重金属が含まれる。なお、減圧弁31から導入される空気により酸化室4B内は酸化雰囲気に維持される。
【0033】
そして、排出ガスは、酸化室4Bの上部に配設されているガス排出口5bを介してバグフィルタ装置12に導入されて、当該排ガス中に含まれる酸化亜鉛等の酸化物となった重金属がバグフィルタにより捕集される。従って、当該重金属をバグフィルタ装置12のバグフィルタにて良好に回収することができる。
よって、ダストDに含まれる重金属を気化させてダストDの無害化処理を行うことができるとともに、発生した重金属を含む気化状物質を良好に回収することができる。
【0034】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、空間4内に筒状壁部30を配設して当該空間4内を導入室4Aと酸化室4Bとして構成したが、内側ケーシング3の充填層2内で発生した還元蒸留ガスを、内側ケーシング3の側部3aの一部を構成する多孔性セラミックフィルタ21によりろ過して、バグフィルタ装置12等の回収装置に導入することができる構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。
例えば、上記第1実施形態におけるダスト処理装置1において、空間4内の筒状壁部30(特に空間4内の酸化室4A)、及び減圧弁31を省略して、本願に係る第2実施形態とすることができる。基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、適宜省略して、以下に当該第2実施形態について説明する。
【0035】
第2実施形態に係るダスト処理装置は、図2に示すように、内側ケーシング3の側部3aと外側ケーシング5とで囲繞される空間4が形成されており、当該空間4内は特に区画されること無く一つの筒状空間として構成されている。
また、外側ケーシング5のガス排出口5bとバグフィルタ装置12との間には、還元蒸留ガスを酸化する酸化室Sが配設されている。
なお、内側ケーシング3の側部3aのうちマイクロ波が照射される部位が、マイクロ波透過性材料20及び多孔性セラミックフィルタ21で構成されている点、吸引ポンプ11により上記空間4が負圧状態とされる点等は第1実施形態と同様である。
【0036】
当該構成のダスト処理装置によりダストDを処理する動作について、適宜省略して説明する。
制御手段7は、マイクロ波発振器6aに内側ケーシング3の側部3aに向けてマイクロ波を照射させる。このマイクロ波は、多孔性セラミックフィルタ21を透過して、充填層2内のダストDを加熱する。これにより還元蒸留ガスが発生する。
制御手段7は、マイクロ波発振器6aによりマイクロ波を照射させると同時に(或いは、その後所定時間経過してから)、吸引ポンプ11を所定の出力で作動させ、空間4内を吸引させて負圧状態とする。これにより、負圧状態となった空間4内に内側ケーシング3の充填層2で発生した還元蒸留ガスが導入される。この際には、多孔性セラミックフィルタ21を通過してダストDがろ過された状態で空間4内に導入されるので、空間4内の還元蒸留ガス中にはダストDは存在しない状態である。なお、空間4内は当該還元蒸留ガスの存在により還元雰囲気に維持される。
【0037】
続いて、空間4内の還元蒸留ガスは、吸引ポンプ11による吸引によりガス排出口5bを介して酸化室Sに導入される。この酸化室Sには、適宜手段により外部から空気が導入される。従って、酸化室S内に導入された還元蒸留ガスは、空気と接触して酸化される。この酸化されたガス(気化状物質の一例)には、上記亜鉛等の重金属が気化した物質が酸化されて酸化亜鉛等の酸化物となった重金属が含まれる。そして、当該ガスは、バグフィルタ装置12に導入されて、当該ガス中に含まれる酸化亜鉛等の酸化物となった重金属がバグフィルタにより捕集される。従って、当該重金属をバグフィルタ装置12のバグフィルタにて良好に回収することができる。
よって、ダストDに含まれる重金属を気化させてダストDの無害化処理を行うことができるとともに、発生した重金属を含む気化状物質を良好に回収することができる。
【0038】
〔第3実施形態〕
上記第2実施形態と同様に、本願に係るダスト処理装置は上記第1実施形態の構成に限定されるものではない。
例えば、上記第1実施形態におけるダスト処理装置において、筒状隔壁30を省略し、空間4内の酸化室4B及び減圧弁31に相当する構成の配置を変更して、本願に係る第3実施形態とすることができる。基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、適宜省略して、以下に当該第3実施形態について説明する。
【0039】
第3実施形態に係るダスト処理装置は、図3に示すように、内側ケーシング3の側部3aと外側ケーシング5とで囲繞される空間4が形成されており、当該空間4内は、当該空間4内を横断する方向(図3の左右方向)に区画する区画部材50が配設されている。区画部材50は、多孔性セラミックフィルタ21の上端と外側ケーシング5の側部とを横断するように配設されている。空間4内において区画部材50よりも下部が多孔性セラミックフィルタ21を介して導入される還元蒸留ガスの導入室4Cとされ、区画部材50よりも上部が減圧弁51から導入された空気と接触して還元蒸留ガスを酸化する酸化室4Dとされる。なお、区画部材50は、導入室4Cから吸引された還元蒸留ガスを通過させることが可能な、比較的大きな複数の貫通穴を備えたパンチングメタル等の部材で構成される。
なお、内側ケーシング3の側部3aのうちマイクロ波が照射される部位が、マイクロ波透過性材料20及び多孔性セラミックフィルタ21で構成されている点、吸引ポンプ11により上記空間4が負圧状態とされる点等は第1実施形態と同様である。
【0040】
当該構成のダスト処理装置によりダストDを処理する動作について、適宜省略して説明する。
制御手段7は、マイクロ波発振器6aに内側ケーシング3の側部3aに向けてマイクロ波を照射させる。このマイクロ波は、多孔性セラミックフィルタ21を透過して、充填層2内のダストDを加熱する。これにより還元蒸留ガスが発生する。
制御手段7は、マイクロ波発振器6aによりマイクロ波を照射させると同時に(或いは、その後所定時間経過してから)、吸引ポンプ11を所定の出力で作動させ、空間4内を吸引させて負圧状態とする。これにより、負圧状態となった空間4の導入室4C内に内側ケーシング3の充填層2で発生した還元蒸留ガスが導入される。この際には、多孔性セラミックフィルタ21を通過してダストDがろ過された状態で導入室4C内に導入されるので、導入室4C内の還元蒸留ガス中にはダストDは存在しない状態である。なお、導入室4C内は当該還元蒸留ガスの存在により還元雰囲気に維持される。
【0041】
続いて、空間4内の還元蒸留ガスは、吸引ポンプ11による吸引により区画部材50を介して酸化室4Dに導入される。この酸化室4D内に導入された還元蒸留ガスは、減圧弁51を介して外部から空気が導入される。従って、酸化室4D内に導入された還元蒸留ガスは、空気と接触して酸化される。この酸化されたガス(気化状物質の一例)には、上記亜鉛等の重金属が気化した物質が酸化されて酸化亜鉛等の酸化物となった重金属が含まれる。そして、当該ガスは、ガス排出口5bを介してバグフィルタ装置12に導入されて、当該ガス中に含まれる酸化亜鉛等の酸化物となった重金属がバグフィルタにより捕集される。従って、当該重金属をバグフィルタ装置12のバグフィルタにて良好に回収することができる。
よって、ダストDに含まれる重金属を気化させてダストDの無害化処理を行うことができるとともに、発生した重金属を含む気化状物質を良好に回収することができる。
【0042】
(別実施形態)
(1)上記実施形態では、制御手段7を用いてマイクロ波照射手段6や吸引手段等の制御を集中して自動的に行ったが、それぞれの手段や装置等に設けられたスイッチ等により個別に制御する構成とすることもできる。
【0043】
(2)上記の第1又は第3実施形態では、空間4内の一部に酸化室を設ける構成に関して、酸化室4B、酸化室4Dを設ける構成を示したが、空間4内に酸化室を設ける構成としては、その他種々変更することができる。
【0044】
(3)上記実施形態では、バグフィルタ装置12等の回収装置に関しては、ダスト処理装置に含まれないものとして説明したが、本願に係るダスト処理装置は、当該回収装置に好適に用いられるものである。従って、本願に係るダスト処理装置をバグフィルタ装置12等の回収装置に適用することで、ダストDの重金属を処理できることに加えて、加熱により発生した気化状物質中の重金属を良好に回収する構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、サイクロン装置等の集塵機を省略して装置構成の簡素化を実現しながら、重金属を含む気化状物質を効率よく発生可能なダスト処理装置を提供できた。
【符号の説明】
【0046】
1 ダスト処理装置
2 充填層(内部)
3 内側ケーシング
3a 側部
4 空間
4A 導入室(内側空間)
4B 酸化室(外側空間)
4C 導入室
4D 酸化室
5 外側ケーシング
5a 側部
6 マイクロ波照射手段
6a マイクロ波発振器(マイクロ波照射手段)
7 制御手段
11 吸引ポンプ(吸引手段)
20 マイクロ波透過性材料
21 多孔性セラミックフィルタ(マイクロ波透過性材料)
30 筒状隔壁(マイクロ波透過性材料)
31 減圧弁(空気導入部)
51 減圧弁(空気導入部)
D 処理対象ダスト
S 酸化室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に処理対象ダストの充填層を形成可能な筒状の内側ケーシングと、前記内側ケーシングの側部に空間を形成する形態で、前記内側ケーシングを囲繞する外側ケーシングと、前記外側ケーシングの側部に、前記空間を通過して前記内側ケーシングの側部に対してマイクロ波を照射可能なマイクロ波照射手段とを備え、
前記内側ケーシングの側部のうち前記マイクロ波の照射される部位が前記マイクロ波を透過可能なマイクロ波透過性材料で形成され、
前記マイクロ波照射手段が、前記マイクロ波を前記空間及び前記マイクロ波透過性材料を介して前記充填層に存在する前記処理対象ダストに照射し、当該処理対象ダストを加熱して気化状物質を発生させるダスト処理装置であって、
前記気化状物質が透過可能で前記処理対象ダストが透過不能な多孔性セラミックフィルタで、前記マイクロ波透過性材料が構成され、
前記空間内の気体を外部空間側から吸引する吸引手段を備え、前記吸引手段が、前記内側ケーシング内で発生した前記気化状物質を、前記多孔性セラミックフィルタにてろ過しながら、前記内側ケーシング内から前記空間を介して前記外部空間に吸引するダスト処理装置。
【請求項2】
前記空間内の一部が、前記内側ケーシングから前記多孔性セラミックフィルタを介して前記空間内に吸引された前記気化状物質を、空気導入部から導入される空気に接触させて酸化する酸化室に形成されている請求項1に記載のダスト処理装置。
【請求項3】
前記空間内には、前記外側ケーシング内の上面部から垂下するマイクロ波透過性材料で形成された筒状隔壁を備え、
前記空間内は、前記筒状隔壁により少なくとも前記筒状隔壁よりも内側の内側空間と外側の外側空間との2つに、両空間の下部が連通した状態で区画され、前記内側空間は、前記内側ケーシング内の前記充填層から前記多孔性セラミックフィルタを介して前記空間内に吸引された前記気化状物質の導入室とされ、前記外側空間は、前記導入室から導入された前記気化状物質を、空気導入部から導入される空気に接触させて酸化する酸化室とされている請求項1に記載のダスト処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−206618(P2011−206618A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73813(P2010−73813)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】