ダブルキンパネルの接合継手及び構造体
【課題】生産性を向上させるダブルスキンパネルの接合継手及構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】ダブルスキンパネル11A,11B同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合するための接合継手であって、上面板21および下面板22のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部25,26が、第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、接合部同士が幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて摩擦攪拌接合用工具1の荷重を支える端部リブ24a,24bが、第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成された接合継手。
【解決手段】ダブルスキンパネル11A,11B同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合するための接合継手であって、上面板21および下面板22のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部25,26が、第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、接合部同士が幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて摩擦攪拌接合用工具1の荷重を支える端部リブ24a,24bが、第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成された接合継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面板と下面板が複数のリブで連結された形状のダブルスキンパネル同士を接合するダブルキンパネルの接合継手および、その接合継手によって複数のダブルスキンパネルが接合して構成された構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、鉄道車両や航空機などの外板接合に、アーク溶接などに比べて入熱量が少なく溶接ひずみを抑える摩擦攪拌接合が注目されている。図11は、ダブルスキンパネルについて従来の接合継手を示した概念図である。被接合部材であるダブルスキンパネル100A,100Bは、上面板101と下面板102が複数の傾斜したリブ103によって連結され、接合端部には垂直な端部リブ104が設けられている。そして、ダブルスキンパネル100A,100Bが、図示するように上面板101と下面板102の接合端面同士突き合わせて配置され、それぞれ摩擦攪拌接合用工具1によって接合される。
【0003】
固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1は、上面板101同士或いは下面板102同士を突き合わせた接合部を、回転体2から突設された攪拌軸(プローブ)3が回転しながら押し込まれ、接合部が連続する接合線に沿って移動する。それにより、ダブルスキンパネル100A,100Bの接合部は、機械的攪拌によって周囲の材料が塑性流動し、移動するプローブ3の後方に流れる。そして、互いに混じり合った可塑性材は摩擦熱を失って急速に冷却固化して接合が完結する。ダブルスキンパネル100A,100Bは、上面板101同士が接合され後、反転して下面板102同士の接合が同様に行われる。
【特許文献1】特開2004−042115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図12は、鉄道車両用構体の外観を示した図である。この鉄道車両用構体200は、側構体201、屋根構体202そして台枠203が周方向に接合され、長手方向端部には妻構体204を接合して構成されている。側構体201や屋根構体202は、複数の長尺なダブルスキンパネル210が幅方向(周方向)に突き合わされ、隣り合うもの同士が車体長さの20〜25mもの距離にわたって摩擦攪拌接合されている。従って、鉄道車両用構体200の側構体201や屋根構体202が、図11に示すようなダブルスキンパネル100A,100Bなどによって構成される。
【0005】
しかし、従来のダブルスキンパネル100A,100Bの接合継手は、その接合継手が面内方向(接合する板材を水平に置いた場合の水平方向)に直交する面同士を突き合わせるよう構成されたものであるため、長い距離にわたって接合するには問題があった。すなわち、摩擦攪拌接合時には、突き合わせ面同士が隙間無く、ずれないようにダブルスキンパネル100A,100Bを押さえるための治具が必要である。そのため、面内方向に押し付け合うための治具とともに、面外方向(接合する板材を水平に置いた場合の垂直方向)にずれないようするための治具が必要であり、接合作業が繁雑になって作業性を低下させてしまっていた。また、多くの治具を使ったとしても、長い距離にわたって接合する接合端面の寸法管理は厳しく、その点で鉄道車両用構体のコストアップとなってしまっていた。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、生産性を向上させるダブルスキンパネルの接合継手及構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合するための接合継手であって、前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記接合部の傾斜面が平面又は円弧面であることが好ましい。
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記接合部の傾斜面の傾斜角は、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に、10度から60度の範囲内にあることが好ましい。
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記接合部の傾斜した円弧面は、その傾斜角が、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に10度から60度の範囲内にあり、かつ、当該円弧面の曲率が、円弧面の長さをLとした場合に0.7L以上であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に張出し部が形成され、その張出し部をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具で挟み込んで摩擦攪拌接合するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に突設部が形成され、重ね合わせた当該突設部をアーク溶接、レーザ溶接またはレーザハイブリッド溶接によって接合するものであることが好ましい。
【0010】
本発明に係る構造体は、上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合されたものであって、前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
よって、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手によれば、傾斜した接合部を突き合わせるので、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込む。そのため、面内方向に押し付け合うことで、第1及び第2ダブルスキンパネルが面外方向へずれなくなって、ダブルスキンパネルを面内方向に押さえつける治具があれば十分であり、面外方向のずれを防止する治具を使用しなくても、接合継手の適切な突き合わせ状態で摩擦攪拌接合することができる。また、傾斜した接合部を突き合わせるようにしたことで、寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。よって、寸法公差の精度を下げて生産性を向上させたダブルスキンパネルそれ自体のみならず、治具を簡略化でき、ダブルスキンパネルからなる構造体の生産コストを下げることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手及びダブルスキンパネルが接続された構造体について、その実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、ダブルスキンパネルの接合用継手について第1実施形態を示した図である。
本実施形態のダブルスキンパネル11A,11Bは押出し中空形材であり、上面板21と下面板22および、その上面板21と下面板22を連結する複数の傾斜したリブ23によってトラス構造になっている。ダブルスキンパネル11A,11Bは同じように構成されたものであって、幅方向(図面左右方向)両端に、図示するような一組の接合継手が形成されたものである。
【0013】
このダブルスキンパネル11A,11Bは、図12に示す鉄道車両用構体200を構成するためのものであって、特にその接合継手は、固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合するための形状をしたものである。そして、図示するように突き合わせた接合部が摩擦攪拌接合用工具1によって上下両側から接合され、例えば上面板21が鉄道車両用構体200の車体外側になり、下面板22がその車体内側になる。摩擦攪拌接合用工具1は、回転体2から同軸に攪拌軸(プローブ)3が突設され、そのプローブ3が接合部に回転しながら押し込まれ、材料を軟化させ塑性流動化して接合するようにしたものである。
【0014】
ダブルスキンパネル11A,11Bの接合継手には、ほぼ平行な上面板21と下面板22に垂直な端部リブ24a,24bが設けられている。そして、その上面板21及び下面板22と、端部リブ24a,24bとの各接続部分には、傾斜面の形成された上下に鏡対称形状の接合部25,25と26,26が形成されている。端部リブ24a側に形成された上下の接合部25は、対向する接合部26を受けるように、面外方向外側を向いた傾斜面が形成されている。一方、端部リブ24b側に形成された上下の接合部26は、ダブルスキンパネル11Bの上面及び下面が張り出すように突き出し、面外方向内側を向いた傾斜面が形成されている。
【0015】
こうして、接合部25,26は、互いに端部リブ24a,24bから面内方向に同じ角度の傾斜面をもって突き出し、上下一対の接合部26,26の間の接合部25,25が面内方向に嵌り込むよう構成されている。そして、嵌め合わされたダブルスキンパネル11A,11Bの接合部には、図示するように端部リブ24a,24bとの間には隙間28が構成される。
【0016】
ダブルスキンパネル11A,11Bの接合継手は、端部リブ24a,24bの肉厚が異なっており、接合部25の形成された端部リブ24a側の肉厚が厚くなっている。これは、摩擦攪拌接合用工具1の中心軸が端部リブ24a側に偏った位置で摩擦攪拌接合するためである。ダブルスキンパネル11A,11Bの表面に現れる継ぎ目を摩擦攪拌しなければならないからである。
【0017】
図9に示すように、摩擦攪拌接合用工具1の中心軸を基準にして、接合部25,26の傾斜面の傾斜角θを考えた場合、この傾斜角θが大きいと、摩擦攪拌接合用工具1のプローブ3の直径に対して接合部の面内方向幅Tが大きすぎてしまう。一方で、接合部25,26の傾斜角が小さいと、面内方向に嵌り込んで安定した接合を可能とする効果が十分に得られなくなってしまう。そこで、検討したところ、傾斜角θは10度から60度の間である場合に好ましい結果がえられた。
【0018】
よって、以上のように構成されたダブルスキンパネル11A,11Bの接合継手は、従来の問題点を解消し、生産性を向上させたものとなった。
先ず、傾斜面を有する接合部25,26が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うことで、ダブルスキンパネル11A,11Bが面外方向へずれなくなる。そのため、ダブルスキンパネル11A,11Bを面内方向に押さえつける治具があれば十分であり、面外方向のずれを防止する治具を使用しなくても、接合継手の適切な突き合わせ状態で摩擦攪拌接合することができるようになった。特に、ダブルスキンパネル11A,11Bによって鉄道車両用構体を構成する場合には、20m以上にわたって図1に示すような突き合わせ状態を維持しなければならないが、本実施形態では面内方向の押さえつけだけで可能になるため、極めて作業性の易いものとなった。
【0019】
また、接合部25,26の接合端面を傾斜させたことにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がる。そのため、摩擦攪拌接合用工具1で摩擦攪拌接合を行う場合に、ダブルスキンパネル11A,11Bの接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性の向上を図ることが可能になった。
よって、寸法公差の精度を下げて生産コストを低下させたダブルスキンパネル11A,11Bそれ自体のみならず、治具を簡略化して製造可能な鉄道車両用構体の生産コストを抑えることが可能になった。
【0020】
続いて、接合継手の他の実施形態について説明する。図2乃至図8は、ダブルスキンパネルの接合用継手について第2乃至第8実施形態を示した図である。ダブルスキンパネルは、いずれも第1実施形態と同様に押出し中空形材であり、上面板21と下面板22および、複数の傾斜したリブ23によって構成されている。そして、幅方向(図面左右方向)両端に、それぞれ図示するような一組の接合継手が形成されている。そのため、ダブルスキンパネルは、その接合継手が摩擦攪拌接合され、図11に示す鉄道車両用構体200を構成する。
【0021】
図2に示す、ダブルスキンパネル12A,12Bに形成された第2実施形態の接合用継手は、第1実施形態と同様に、肉厚の異なる端部リブ31a,31bが設けられ、面内方向に突き出るように接合部32,33が形成されている。ただし、本実施形態では、接合部32,33に傾斜した円弧面が形成され、上下の接合部32,32及び33,33はそれぞれ鏡対称形状に形成されている。傾斜方向は、前記第1実施形態と同様であり、接合部32は、面外方向外側を向いて形成され、接合部33は、面外方向内側を向いて形成されている。従って、接合部32,33は、上下一対の接合部33,33の間の接合部32,32が面内方向に嵌り込むよう構成されている。
【0022】
ここで、図10に示すように、接合部32,33の円弧面を直線とし、摩擦攪拌接合用工具1の中心軸を基準にしてその傾斜角θを考えた場合、第1実施形態と同様に、斜角θは10度から60度の間であることが好ましい。また、円弧面の曲率Rは、図示するように円弧面の長さをLとした場合に、0.7L以上であることが好ましかった。
【0023】
本実施形態によれば、円弧面を有する接合部32,33が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル12A,12Bが面外方向へずれなくなる。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にできるので、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。よって、寸法公差の精度を下げて生産コストを低下させたダブルスキンパネル12A,12Bそれ自体のみならず、治具を簡略化して製造可能な鉄道車両用構体の生産コストを抑えることが可能になった。
【0024】
図3に示す、ダブルスキンパネル13A,13Bに形成された第3実施形態の接合用継手は、一方にのみ端部リブ35を設け、摩擦攪拌接合用工具1(図1参照)による摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。他方の接端部は端部リブのない解放端になっている。そして、接合部36,37には第1実施形態と同様に傾斜面が形成され、上下の接合部36,36及び37,37はそれぞれ鏡対称形状に形成されている。従って、接合時には、上下一対の接合部37,37の間に接合部36,36が面内方向に嵌り込むことになる。
【0025】
また、図4に示す、ダブルスキンパネル14A,14Bに形成された第4実施形態の接合用継手も、一方にのみ端部リブ41を設け、摩擦攪拌接合用工具1(図1参照)による摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。他方の接端部は端部リブのない解放端になっている。そして、接合部42,43には第2実施形態と同様に傾斜した円弧面が形成され、上下の接合部42,42及び43,43はそれぞれ鏡対称形状に形成されている。従って、接合時には、上下一対の接合部43,43の間に接合部42,42が面内方向に嵌り込むことになる。
【0026】
よって、第3及び第4実施形態によれば、傾斜面や円弧面を有する接合部が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル13A,13B又は14A,14Bが面外方向へずれなくなった。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にでき、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。更に、接合部の端部リブを1本にしたため、ダブルスキンパネル13B,14Bの面外方向の寸法精度は低下するが、その分軽量化することが可能になった。
【0027】
図5に示す、ダブルスキンパネル15A,15Bに形成された第5実施形態の接合用継手は、一方にのみ端部リブ45を設け、摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。また、本実施形態では、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具によって接合するようにしている。そして、上面板21側には、第1実施形態と同様に傾斜面をもった接合部46,47が形成され、下面板22側には、張出し部48,49が形成され、傾斜面同士が突き当てられている。
【0028】
また、図6に示す、ダブルスキンパネル16A,16Bに形成された第6実施形態の接合用継手も、一方にのみ端部リブ51を設け、摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。そして、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具によって接合するようにしている。上面板21側には、第2実施形態と同様に傾斜した円弧面をもった接合部52,53が形成され、下面板22側には張出し部54,55が形成され、円弧面同士が突き当てられている。
【0029】
よって、第5及び第6実施形態によれば、傾斜面や円弧面を有する接合部が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル15A,15B/16A,16Bが面外方向へずれなくなる。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にでき、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。更に、接合部の端部リブを1本にしたため、ダブルスキンパネル15B,16Bの面外方向の寸法精度は低下するが、その分軽量化することが可能になった。
【0030】
図7に示す、ダブルスキンパネル17A,17Bに形成された第7実施形態の接合用継手は、肉厚の異なる端部リブ56a,56bが設けられている。そして、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側は、MIG溶接やTIG溶接等のアーク溶接、或いはレーザ溶接やレーザハイブリッド溶接によって接合するようにしたものである。そこで、上面板21側には、第1実施形態と同様に傾斜面をもった接合部57,58が形成され、傾斜面同士が突き当てられている。また、下面板22側には突設部59,60が形成され、図示するように突設部59側が突設部60の内側に入り込むように構成されている。
【0031】
また、図8に示す、ダブルスキンパネル18A,18Bに形成された第8実施形態の接合用継手は、肉厚の異なる端部リブ61a,61bが設けられている。そして、本実施形態でも、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側は、MIG溶接やTIG溶接等のアーク溶接、或いはレーザ溶接やレーザハイブリッド溶接によって接合するようにしたものである。そこで、上面板21側には、第2実施形態と同様に傾斜した円弧面をもった接合部62,63が形成され、円弧面同士が突き当てられている。また、下面板22側には突設部64,65が形成され、図示するように突設部64側が突設部65の内側に入り込むように構成されている。
【0032】
よって、第7及び第8実施形態によれば、上下の一方を重ね合わせにし、他方を傾斜面や円弧面を有する接合部が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル17A,17B/18A,18Bが面外方向へずれなくなった。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にでき、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができる。更に、後から接合する下面板22側をアーク溶接などによるため、この点でも寸法精度を下げることができ、生産性を向上させることが可能になった。
【0033】
以上、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手及び構造体について実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ダブルスキンパネルの接合用継手について第1実施形態を示した図である。
【図2】ダブルスキンパネルの接合用継手について第2実施形態を示した図である。
【図3】ダブルスキンパネルの接合用継手について第3実施形態を示した図である。
【図4】ダブルスキンパネルの接合用継手について第4実施形態を示した図である。
【図5】ダブルスキンパネルの接合用継手について第5実施形態を示した図である。
【図6】ダブルスキンパネルの接合用継手について第6実施形態を示した図である。
【図7】ダブルスキンパネルの接合用継手について第7実施形態を示した図である。
【図8】ダブルスキンパネルの接合用継手について第8実施形態を示した図である。
【図9】接合部に形成した傾斜面の傾斜角を示した図である。
【図10】接合部に形成した円弧面の曲率について示した図である。
【図11】ダブルスキンパネルについて従来の接合継手を示した概念図である。
【図12】鉄道車両用構体の外観を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 摩擦攪拌接合用工具
2 回転体
3 攪拌軸(プローブ)
11A,11B ダブルスキンパネル
21 上面板
22 下面板
23 リブ
24a,24b 端部リブ
25,26 接合部
200 鉄道車両用構体
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面板と下面板が複数のリブで連結された形状のダブルスキンパネル同士を接合するダブルキンパネルの接合継手および、その接合継手によって複数のダブルスキンパネルが接合して構成された構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、鉄道車両や航空機などの外板接合に、アーク溶接などに比べて入熱量が少なく溶接ひずみを抑える摩擦攪拌接合が注目されている。図11は、ダブルスキンパネルについて従来の接合継手を示した概念図である。被接合部材であるダブルスキンパネル100A,100Bは、上面板101と下面板102が複数の傾斜したリブ103によって連結され、接合端部には垂直な端部リブ104が設けられている。そして、ダブルスキンパネル100A,100Bが、図示するように上面板101と下面板102の接合端面同士突き合わせて配置され、それぞれ摩擦攪拌接合用工具1によって接合される。
【0003】
固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1は、上面板101同士或いは下面板102同士を突き合わせた接合部を、回転体2から突設された攪拌軸(プローブ)3が回転しながら押し込まれ、接合部が連続する接合線に沿って移動する。それにより、ダブルスキンパネル100A,100Bの接合部は、機械的攪拌によって周囲の材料が塑性流動し、移動するプローブ3の後方に流れる。そして、互いに混じり合った可塑性材は摩擦熱を失って急速に冷却固化して接合が完結する。ダブルスキンパネル100A,100Bは、上面板101同士が接合され後、反転して下面板102同士の接合が同様に行われる。
【特許文献1】特開2004−042115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図12は、鉄道車両用構体の外観を示した図である。この鉄道車両用構体200は、側構体201、屋根構体202そして台枠203が周方向に接合され、長手方向端部には妻構体204を接合して構成されている。側構体201や屋根構体202は、複数の長尺なダブルスキンパネル210が幅方向(周方向)に突き合わされ、隣り合うもの同士が車体長さの20〜25mもの距離にわたって摩擦攪拌接合されている。従って、鉄道車両用構体200の側構体201や屋根構体202が、図11に示すようなダブルスキンパネル100A,100Bなどによって構成される。
【0005】
しかし、従来のダブルスキンパネル100A,100Bの接合継手は、その接合継手が面内方向(接合する板材を水平に置いた場合の水平方向)に直交する面同士を突き合わせるよう構成されたものであるため、長い距離にわたって接合するには問題があった。すなわち、摩擦攪拌接合時には、突き合わせ面同士が隙間無く、ずれないようにダブルスキンパネル100A,100Bを押さえるための治具が必要である。そのため、面内方向に押し付け合うための治具とともに、面外方向(接合する板材を水平に置いた場合の垂直方向)にずれないようするための治具が必要であり、接合作業が繁雑になって作業性を低下させてしまっていた。また、多くの治具を使ったとしても、長い距離にわたって接合する接合端面の寸法管理は厳しく、その点で鉄道車両用構体のコストアップとなってしまっていた。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、生産性を向上させるダブルスキンパネルの接合継手及構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合するための接合継手であって、前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記接合部の傾斜面が平面又は円弧面であることが好ましい。
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記接合部の傾斜面の傾斜角は、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に、10度から60度の範囲内にあることが好ましい。
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記接合部の傾斜した円弧面は、その傾斜角が、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に10度から60度の範囲内にあり、かつ、当該円弧面の曲率が、円弧面の長さをLとした場合に0.7L以上であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に張出し部が形成され、その張出し部をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具で挟み込んで摩擦攪拌接合するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手は、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に突設部が形成され、重ね合わせた当該突設部をアーク溶接、レーザ溶接またはレーザハイブリッド溶接によって接合するものであることが好ましい。
【0010】
本発明に係る構造体は、上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合されたものであって、前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
よって、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手によれば、傾斜した接合部を突き合わせるので、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込む。そのため、面内方向に押し付け合うことで、第1及び第2ダブルスキンパネルが面外方向へずれなくなって、ダブルスキンパネルを面内方向に押さえつける治具があれば十分であり、面外方向のずれを防止する治具を使用しなくても、接合継手の適切な突き合わせ状態で摩擦攪拌接合することができる。また、傾斜した接合部を突き合わせるようにしたことで、寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。よって、寸法公差の精度を下げて生産性を向上させたダブルスキンパネルそれ自体のみならず、治具を簡略化でき、ダブルスキンパネルからなる構造体の生産コストを下げることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手及びダブルスキンパネルが接続された構造体について、その実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、ダブルスキンパネルの接合用継手について第1実施形態を示した図である。
本実施形態のダブルスキンパネル11A,11Bは押出し中空形材であり、上面板21と下面板22および、その上面板21と下面板22を連結する複数の傾斜したリブ23によってトラス構造になっている。ダブルスキンパネル11A,11Bは同じように構成されたものであって、幅方向(図面左右方向)両端に、図示するような一組の接合継手が形成されたものである。
【0013】
このダブルスキンパネル11A,11Bは、図12に示す鉄道車両用構体200を構成するためのものであって、特にその接合継手は、固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合するための形状をしたものである。そして、図示するように突き合わせた接合部が摩擦攪拌接合用工具1によって上下両側から接合され、例えば上面板21が鉄道車両用構体200の車体外側になり、下面板22がその車体内側になる。摩擦攪拌接合用工具1は、回転体2から同軸に攪拌軸(プローブ)3が突設され、そのプローブ3が接合部に回転しながら押し込まれ、材料を軟化させ塑性流動化して接合するようにしたものである。
【0014】
ダブルスキンパネル11A,11Bの接合継手には、ほぼ平行な上面板21と下面板22に垂直な端部リブ24a,24bが設けられている。そして、その上面板21及び下面板22と、端部リブ24a,24bとの各接続部分には、傾斜面の形成された上下に鏡対称形状の接合部25,25と26,26が形成されている。端部リブ24a側に形成された上下の接合部25は、対向する接合部26を受けるように、面外方向外側を向いた傾斜面が形成されている。一方、端部リブ24b側に形成された上下の接合部26は、ダブルスキンパネル11Bの上面及び下面が張り出すように突き出し、面外方向内側を向いた傾斜面が形成されている。
【0015】
こうして、接合部25,26は、互いに端部リブ24a,24bから面内方向に同じ角度の傾斜面をもって突き出し、上下一対の接合部26,26の間の接合部25,25が面内方向に嵌り込むよう構成されている。そして、嵌め合わされたダブルスキンパネル11A,11Bの接合部には、図示するように端部リブ24a,24bとの間には隙間28が構成される。
【0016】
ダブルスキンパネル11A,11Bの接合継手は、端部リブ24a,24bの肉厚が異なっており、接合部25の形成された端部リブ24a側の肉厚が厚くなっている。これは、摩擦攪拌接合用工具1の中心軸が端部リブ24a側に偏った位置で摩擦攪拌接合するためである。ダブルスキンパネル11A,11Bの表面に現れる継ぎ目を摩擦攪拌しなければならないからである。
【0017】
図9に示すように、摩擦攪拌接合用工具1の中心軸を基準にして、接合部25,26の傾斜面の傾斜角θを考えた場合、この傾斜角θが大きいと、摩擦攪拌接合用工具1のプローブ3の直径に対して接合部の面内方向幅Tが大きすぎてしまう。一方で、接合部25,26の傾斜角が小さいと、面内方向に嵌り込んで安定した接合を可能とする効果が十分に得られなくなってしまう。そこで、検討したところ、傾斜角θは10度から60度の間である場合に好ましい結果がえられた。
【0018】
よって、以上のように構成されたダブルスキンパネル11A,11Bの接合継手は、従来の問題点を解消し、生産性を向上させたものとなった。
先ず、傾斜面を有する接合部25,26が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うことで、ダブルスキンパネル11A,11Bが面外方向へずれなくなる。そのため、ダブルスキンパネル11A,11Bを面内方向に押さえつける治具があれば十分であり、面外方向のずれを防止する治具を使用しなくても、接合継手の適切な突き合わせ状態で摩擦攪拌接合することができるようになった。特に、ダブルスキンパネル11A,11Bによって鉄道車両用構体を構成する場合には、20m以上にわたって図1に示すような突き合わせ状態を維持しなければならないが、本実施形態では面内方向の押さえつけだけで可能になるため、極めて作業性の易いものとなった。
【0019】
また、接合部25,26の接合端面を傾斜させたことにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がる。そのため、摩擦攪拌接合用工具1で摩擦攪拌接合を行う場合に、ダブルスキンパネル11A,11Bの接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性の向上を図ることが可能になった。
よって、寸法公差の精度を下げて生産コストを低下させたダブルスキンパネル11A,11Bそれ自体のみならず、治具を簡略化して製造可能な鉄道車両用構体の生産コストを抑えることが可能になった。
【0020】
続いて、接合継手の他の実施形態について説明する。図2乃至図8は、ダブルスキンパネルの接合用継手について第2乃至第8実施形態を示した図である。ダブルスキンパネルは、いずれも第1実施形態と同様に押出し中空形材であり、上面板21と下面板22および、複数の傾斜したリブ23によって構成されている。そして、幅方向(図面左右方向)両端に、それぞれ図示するような一組の接合継手が形成されている。そのため、ダブルスキンパネルは、その接合継手が摩擦攪拌接合され、図11に示す鉄道車両用構体200を構成する。
【0021】
図2に示す、ダブルスキンパネル12A,12Bに形成された第2実施形態の接合用継手は、第1実施形態と同様に、肉厚の異なる端部リブ31a,31bが設けられ、面内方向に突き出るように接合部32,33が形成されている。ただし、本実施形態では、接合部32,33に傾斜した円弧面が形成され、上下の接合部32,32及び33,33はそれぞれ鏡対称形状に形成されている。傾斜方向は、前記第1実施形態と同様であり、接合部32は、面外方向外側を向いて形成され、接合部33は、面外方向内側を向いて形成されている。従って、接合部32,33は、上下一対の接合部33,33の間の接合部32,32が面内方向に嵌り込むよう構成されている。
【0022】
ここで、図10に示すように、接合部32,33の円弧面を直線とし、摩擦攪拌接合用工具1の中心軸を基準にしてその傾斜角θを考えた場合、第1実施形態と同様に、斜角θは10度から60度の間であることが好ましい。また、円弧面の曲率Rは、図示するように円弧面の長さをLとした場合に、0.7L以上であることが好ましかった。
【0023】
本実施形態によれば、円弧面を有する接合部32,33が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル12A,12Bが面外方向へずれなくなる。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にできるので、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。よって、寸法公差の精度を下げて生産コストを低下させたダブルスキンパネル12A,12Bそれ自体のみならず、治具を簡略化して製造可能な鉄道車両用構体の生産コストを抑えることが可能になった。
【0024】
図3に示す、ダブルスキンパネル13A,13Bに形成された第3実施形態の接合用継手は、一方にのみ端部リブ35を設け、摩擦攪拌接合用工具1(図1参照)による摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。他方の接端部は端部リブのない解放端になっている。そして、接合部36,37には第1実施形態と同様に傾斜面が形成され、上下の接合部36,36及び37,37はそれぞれ鏡対称形状に形成されている。従って、接合時には、上下一対の接合部37,37の間に接合部36,36が面内方向に嵌り込むことになる。
【0025】
また、図4に示す、ダブルスキンパネル14A,14Bに形成された第4実施形態の接合用継手も、一方にのみ端部リブ41を設け、摩擦攪拌接合用工具1(図1参照)による摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。他方の接端部は端部リブのない解放端になっている。そして、接合部42,43には第2実施形態と同様に傾斜した円弧面が形成され、上下の接合部42,42及び43,43はそれぞれ鏡対称形状に形成されている。従って、接合時には、上下一対の接合部43,43の間に接合部42,42が面内方向に嵌り込むことになる。
【0026】
よって、第3及び第4実施形態によれば、傾斜面や円弧面を有する接合部が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル13A,13B又は14A,14Bが面外方向へずれなくなった。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にでき、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。更に、接合部の端部リブを1本にしたため、ダブルスキンパネル13B,14Bの面外方向の寸法精度は低下するが、その分軽量化することが可能になった。
【0027】
図5に示す、ダブルスキンパネル15A,15Bに形成された第5実施形態の接合用継手は、一方にのみ端部リブ45を設け、摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。また、本実施形態では、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具によって接合するようにしている。そして、上面板21側には、第1実施形態と同様に傾斜面をもった接合部46,47が形成され、下面板22側には、張出し部48,49が形成され、傾斜面同士が突き当てられている。
【0028】
また、図6に示す、ダブルスキンパネル16A,16Bに形成された第6実施形態の接合用継手も、一方にのみ端部リブ51を設け、摩擦攪拌時の荷重を受けるようにしている。そして、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具によって接合するようにしている。上面板21側には、第2実施形態と同様に傾斜した円弧面をもった接合部52,53が形成され、下面板22側には張出し部54,55が形成され、円弧面同士が突き当てられている。
【0029】
よって、第5及び第6実施形態によれば、傾斜面や円弧面を有する接合部が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル15A,15B/16A,16Bが面外方向へずれなくなる。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にでき、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができ、そのことによって生産性を向上させることが可能になった。更に、接合部の端部リブを1本にしたため、ダブルスキンパネル15B,16Bの面外方向の寸法精度は低下するが、その分軽量化することが可能になった。
【0030】
図7に示す、ダブルスキンパネル17A,17Bに形成された第7実施形態の接合用継手は、肉厚の異なる端部リブ56a,56bが設けられている。そして、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側は、MIG溶接やTIG溶接等のアーク溶接、或いはレーザ溶接やレーザハイブリッド溶接によって接合するようにしたものである。そこで、上面板21側には、第1実施形態と同様に傾斜面をもった接合部57,58が形成され、傾斜面同士が突き当てられている。また、下面板22側には突設部59,60が形成され、図示するように突設部59側が突設部60の内側に入り込むように構成されている。
【0031】
また、図8に示す、ダブルスキンパネル18A,18Bに形成された第8実施形態の接合用継手は、肉厚の異なる端部リブ61a,61bが設けられている。そして、本実施形態でも、上面板21側を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具1によって接合する一方で、下面板22側は、MIG溶接やTIG溶接等のアーク溶接、或いはレーザ溶接やレーザハイブリッド溶接によって接合するようにしたものである。そこで、上面板21側には、第2実施形態と同様に傾斜した円弧面をもった接合部62,63が形成され、円弧面同士が突き当てられている。また、下面板22側には突設部64,65が形成され、図示するように突設部64側が突設部65の内側に入り込むように構成されている。
【0032】
よって、第7及び第8実施形態によれば、上下の一方を重ね合わせにし、他方を傾斜面や円弧面を有する接合部が楔のように嵌り合って、面内方向に押し付け合うので、ダブルスキンパネル17A,17B/18A,18Bが面外方向へずれなくなった。そのため、鉄道車両用構体を構成するように接合部の距離が長くても、面内方向の押さえつけだけで接合可能な状態にでき、極めて作業性の易いものとなった。また、傾斜した円弧面の突き合わせにより、面内方向の開口寸法許容量が、垂直な接合端面の突き合わせに比べて広がるため、接合端面について寸法公差の精度を下げることなどができる。更に、後から接合する下面板22側をアーク溶接などによるため、この点でも寸法精度を下げることができ、生産性を向上させることが可能になった。
【0033】
以上、本発明に係るダブルスキンパネルの接合継手及び構造体について実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ダブルスキンパネルの接合用継手について第1実施形態を示した図である。
【図2】ダブルスキンパネルの接合用継手について第2実施形態を示した図である。
【図3】ダブルスキンパネルの接合用継手について第3実施形態を示した図である。
【図4】ダブルスキンパネルの接合用継手について第4実施形態を示した図である。
【図5】ダブルスキンパネルの接合用継手について第5実施形態を示した図である。
【図6】ダブルスキンパネルの接合用継手について第6実施形態を示した図である。
【図7】ダブルスキンパネルの接合用継手について第7実施形態を示した図である。
【図8】ダブルスキンパネルの接合用継手について第8実施形態を示した図である。
【図9】接合部に形成した傾斜面の傾斜角を示した図である。
【図10】接合部に形成した円弧面の曲率について示した図である。
【図11】ダブルスキンパネルについて従来の接合継手を示した概念図である。
【図12】鉄道車両用構体の外観を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 摩擦攪拌接合用工具
2 回転体
3 攪拌軸(プローブ)
11A,11B ダブルスキンパネル
21 上面板
22 下面板
23 リブ
24a,24b 端部リブ
25,26 接合部
200 鉄道車両用構体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合するための接合継手において、
前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、
その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項2】
請求項1に記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記接合部の傾斜面が、平面又は円弧面であることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記接合部の傾斜面の傾斜角は、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に、10度から60度の範囲内にあることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記接合部の傾斜した円弧面は、その傾斜角が、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に10度から60度の範囲内にあり、かつ、当該円弧面の曲率が、円弧面の長さをLとした場合に0.7L以上であることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に張出し部が形成され、その張出し部をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具で挟み込んで摩擦攪拌接合するようにしたものであることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に突設部が形成され、重ね合わせた当該突設部をアーク溶接、レーザ溶接またはレーザハイブリッド溶接によって接合するものであることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項7】
上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合された構造体において、
前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とするダブルスキンパネルからなる構造体。
【請求項1】
上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合するための接合継手において、
前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、
その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項2】
請求項1に記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記接合部の傾斜面が、平面又は円弧面であることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記接合部の傾斜面の傾斜角は、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に、10度から60度の範囲内にあることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記接合部の傾斜した円弧面は、その傾斜角が、前記上面板又は下面板と直交する面外方向をゼロ度とした場合に10度から60度の範囲内にあり、かつ、当該円弧面の曲率が、円弧面の長さをLとした場合に0.7L以上であることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に張出し部が形成され、その張出し部をボビンツール式の摩擦攪拌接合用工具で挟み込んで摩擦攪拌接合するようにしたものであることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載するダブルスキンパネルの接合継手において、
前記第1及び第2ダブルスキンパネルの上面板又は下面板の一方には、その上面板又は下面板の延長上に突設部が形成され、重ね合わせた当該突設部をアーク溶接、レーザ溶接またはレーザハイブリッド溶接によって接合するものであることを特徴とするダブルスキンパネルの接合継手。
【請求項7】
上面板と下面板とが幅方向に並んだ複数のリブによって連結されたダブルスキンパネルであって、そのダブルスキンパネル同士を幅方向に突き合わせ、上面板側又は下面板側の少なくとも一方を固定ピン式の摩擦攪拌接合用工具によって摩擦攪拌接合された構造体において、
前記ダブルスキンパネルの上面板および下面板のそれぞれ延長上に形成された上下の接合部が、一方の第1ダブルスキンパネルでは、面外方向外側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、他方の第2ダブルスキンパネルでは、面外方向内側を向いて傾斜した傾斜面が形成され、第1ダブルスキンパネルの接合部が第2ダブルスキンパネルの接合部に対して幅方向に嵌り込むようにしたものであり、その接合部の間に連結されて前記摩擦攪拌接合用工具の荷重を支える端部リブが、前記第1及び第2ダブルスキンパネルの一方又は両方に形成されたものであることを特徴とするダブルスキンパネルからなる構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−272768(P2008−272768A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116382(P2007−116382)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】
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