説明

ダプトマイシン製剤

長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物が開示されている。該組成物は、約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩及びカルシウム源を含有する薬理学的に許容される液体を含む。該製剤は、驚くべきことに、冷蔵されている条件下で少なくとも約18ヶ月の貯蔵期間が経過した後で、ダプトマイシン加水分解生成物、ダプトマイシンβ異性体及び無水ダプトマイシンなどの分解生成物を含んでいない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2009年11月23日に出願された表題が「ダプトマイシン製剤」である米国仮出願No.61/,263,695、及び2010年8月9日に出願された表題が「ダプトマイシン製剤」である米国仮出願No.61/371,802に対し、35 U.S.C.§119(e)の利益を主張し、これらの開示の全体をそれぞれ参照として組み入れるものとする。
【0002】
ダプトマイシンは、下記構造式(I)
【化1】

【0003】
で表されるリポペプチド抗生物質であり、そして、例えば、米国特許第4,537,717号(この特許の内容は、参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0004】
ダプトマイシンは、併発皮膚感染症及び血流感染症(菌血症)〔これは、右心系感染性心内膜炎を包含する〕におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)及びメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus)(MSSA)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ジスガラクチアエ・亜種エクイシミリス(Streptococcus dysgalactiae subspecies equisimilis)及びエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(バンコマイシン感受性分離株のみ)の処置において使用される。ダプトマイシンは、静脈内投与用に「CubicinTM」として市販されている。
【0005】
ダプトマイシンは、凍結乾燥された製品の再構成時に、早期分解を示す。再構成されたダプトマイシンは、再構成後に分解が促進され、従って、液体形態での長期貯蔵には適さない。ダプトマイシンの主要な分解生成物としては、ダプトマイシンの加水分解生成物、ダプトマイシンのβ異性体及び無水ダプトマイシンがある。該加水分解生成物(開環化合物)は、約0.66の相対保持時間(RRT)において主要な不純物として出現し、ダプトマイシンのβ異性体は、約0.97のRRTにおいて主要な不純物として出現し、及び、無水ダプトマイシンは、約1.1のRRTにおいて主要な不純物として出現する。向上した安定性を有するダプトマイシン製剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,537,717号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、概すると、長期貯蔵において安定な、即ち、少なくとも約18ヶ月以上の期間にわたって安定なダプトマイシン含有組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの態様においては、該組成物は、塩化カルシウム及び乳酸カルシウムの中から選択されるカルシウム源を含み、そして、ダプトマイシンの濃度は、約25mg/mL以下である。本発明の別の態様においては、該組成物のpHは、約6〜約7である。本発明の別の態様においては、該組成物は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの中から選択されるアルカリ性水酸化物を含有する。本発明のさらに別の態様は、治療方法、該組成物を調製する方法及びキットを包含する。
【0009】
本発明の別の態様においては、該組成物は、該組成物のpHを約6〜約7に維持するのに充分な量のアミノ酸を含有する。本発明の別の態様においては、該組成物は、トレハロースを含有する。
【0010】
本発明の液体組成物が有している有利点のうちの1つは、それらが、少なくとも18ヶ月経過した後に、不純物を実質的に含んでいないということである。「不純物を実質的に含んでいない」は、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月の期間が経過した後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、総不純物が約10%未満(これは、約5未満%のダプトマイシン加水分解生成物、約5%未満のダプトマイシンβ異性体及び5%未満の無水ダプトマイシンを含む)の曲線下面積(“AUC”)であるダプトマイシン含有組成物を意味する。該製剤は、直ぐに使用可能であるか、又は、さらに希釈する;凍結乾燥された粉末として貯蔵することは、該薬物の商業的用途にとってもはや必要ではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に別途定義されていない限り、本明細書中で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中の用語に関して複数の定義が存在する場合、特に別途示されていない限り、本節内における定義が優先する。
【0012】
本明細書中で使用されている場合、「RRT」は、目的のピークの保持時間を主ピークの保持時間で除することによって計算される。RRTが1よりも小さいピークは、主ピークより先に溶出し、RRTが1よりも大きいピークは、主ピークの後で溶出する。
【0013】
本明細書中で使用されている場合、「不純物を実質的に含んでいない」は、該組成物又は製剤の中に存在しているダプトマイシン(又は、その塩)の最初の量に基づいて計算して、総不純物が約10%未満であるダプトマイシン含有組成物を意味する。好ましくは、不純物の総量(即ち、>10%)は、約5%(即ち、その約1/3以下)未満のダプトマイシン加水分解生成物、約5%(即ち、その約1/3以下)未満のダプトマイシンβ異性体及び5%(即ち、その約1/3以下)未満の無水ダプトマイシンを含む。不純物の量は、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月の貯蔵期間が経過した後に、高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合における、曲線下面積(“AUC”)として計算される。好ましい態様においては、該組成物が長期貯蔵安定性を示す期間は、少なくとも約2年である。
【0014】
本発明の一態様によれば、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 塩化カルシウム及び乳酸カルシウムの中から選択されるカルシウム源;
を含む長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物が提供される。該組成物は、約6〜約7のpHを有し、及び、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、総不純物は、約10%未満の曲線下面積(“AUC”)である。
【0015】
本明細書中に記載されている殆どの実施形態において、本明細書中に記載されているダプトマイシン含有組成物の総不純物が約10%未満と言及されている場合、該組成物が、本明細書中に記載されている条件下において同じ長期貯蔵期間(即ち、約18ヶ月以上)が経過した後、約5%未満のダプトマイシン加水分解生成物、約5%未満のダプトマイシンβ異性体及び5%未満の無水ダプトマイシン(これらは、ダプトマイシンの最初の出発時の量に対して計算されている)も含むということもまた理解されるであろう。
【0016】
本発明の一態様においては、該カルシウム源は、塩化カルシウムである。一実施形態では、塩化カルシウムの量は、1mg/mLよりも多い。本発明の別の態様においては、塩化カルシウムの濃度は、約1.5mg/mL〜約17mg/mLである。一実施形態では、塩化カルシウムの濃度は、約4mg/mL〜約16.2mg/mLである。別の実施形態では、塩化カルシウムの濃度は、約8mg/mL〜約12mg/mLである。塩化カルシウムの何種類かの好ましい濃度としては、例えば、8mg/mL、12mg/mL又は16.2mg/mLなどを挙げることができる。
【0017】
本発明の別の態様においては、該カルシウム源は、乳酸カルシウムである。一実施形態では、乳酸カルシウムの濃度は、約0.05M〜約0.3Mである。好ましくは、乳酸カルシウムの濃度は、約0.1M〜約0.25Mである。さらに好ましくは、乳酸カルシウムの濃度は、約0.1Mである。
【0018】
本発明の組成物は、約6.25〜約6.75のpHに維持され得る。好ましくは、該組成物は、約6.5〜約6.75のpHに維持される。一実施形態では、該pHは、約6.5である。別の実施形態では、該pHは、約6.75である。
【0019】
本発明の別の態様においては、長期貯蔵において安定な該ダプトマイシン含有組成物は、該組成物のpHを上記範囲(即ち、約6.25〜約6.75)又はその間の特定の点(約6.5若しくは約6.75など)に調節するのに充分な量で存在するpH調節剤を含む。好ましいpH調節剤の一例は、水酸化ナトリウムである。別の好ましいpH調節剤は、水酸化カルシウムである。代替的なpH調節剤は、HCl及びTRISなどの、当技術分野において一般的に使用されているpH調節剤である。
【0020】
どのような理論又は仮説にも拘束されるものではないが、驚くべきことに、ダプトマイシンは大部分が約6.5〜約7.0のpHにおいてイオン化されるということが見いだされている。結果として、該分子は、著しく安定であり、かくして、その自己会合及び分解は、長期間にわたって、予想外に且つ実質的に低減される。
【0021】
本発明の一態様においては、本発明の組成物は、貯蔵中及び/又は使用前、約5℃〜約15℃の温度に維持される。別の実施形態では、該組成物は、約5℃〜約10℃の温度に維持される。さらに好ましくは、該組成物は、約5℃の温度(即ち、ほぼ冷蔵されている温度及び状態)に維持される。
【0022】
本発明の組成物の中に含まれているのダプトマイシン量は、一般に、約1mg/mL〜約25mg/mLの濃度内にある。本発明の別の実施形態では、ダプトマイシンの濃度は、約5mg/mL〜約20mg/mLである。さらに別の実施形態では、ダプトマイシンの濃度は、約7.5mg/mL〜約15mg/mLである。本発明のさらなる実施形態では、ダプトマイシンの濃度は、約10mg/mL〜約15mg/mLである。好ましくは、ダプトマイシンの濃度は、約10mg/mLである。
【0023】
本発明の組成物は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの中から選択されるアルカリ性水酸化物も含むことができる。好ましくは、該アルカリ性水酸化物は、水酸化カルシウムである。一態様においては、該アルカリ性水酸化物の濃度は、約0.5mg/mL〜約1mg/mLである。好ましくは、該アルカリ性水酸化物の濃度は、約0.68mg/mLである。
【0024】
どのような理論又は仮説にも拘束されるものではないが、対イオン、即ち、カルシウム源、アルカリ性水酸化物、アミノ酸の存在が、ダプトマイシンを安定化させ、分解の速度を遅くすると考えられる。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 1mg/mLよりも高い濃度の塩化カルシウム;
を含む長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物を包含する。これらの組成物は、約6〜約7のpHを有し、及び、上記と同じ安定性プロフィールを有している(即ち、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、総不純物が約10%未満の曲線下面積(“AUC”)であり、ダプトマイシン加水分解生成物が約5%AUC未満であり、ダプトマイシンβ異性体が約5%AUC未満であり、及び無水ダプトマイシンが約5%AUC未満である)。
【0026】
本発明による別の組成物は、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 0.1Mの乳酸カルシウム;
を含む。直前に挙げられているpH範囲とは異なって、この実施形態における組成物のpHは、約6.5である。その安定性プロフィールは、先に記載されているものと同じである(即ち、総不純物が約10%未満など)。
【0027】
本発明のさらなる実施形態は、同様の長期安定性プロフィールを有しているが、しかしながら、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;
(b) 約16.2mg/mLの濃度の塩化カルシウム;及び、
(c) 水酸化カルシウム;
を含む、ダプトマイシン含有組成物を包含する。これらの組成物のpHは約6〜約7であり、その不純物プロフィールは、上記と同様である。
【0028】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物におけるダプトマイシン感受性疾患を治療する方法を包含する。該方法は、その方法を必要としている哺乳動物に、本明細書中に記載されているダプトマイシン含有組成物の有効量を投与することを含む。本発明の組成物の活性成分部分はFDAによって承認された薬物であるので、当業者は、本発明のこの態様において使用されるダプトマイシンの用量が「CubicinTM」の商品名で販売されているダプトマイシンのために設計された治療計画において用いられている用量と同様であるということを理解するであろう。用量情報を含む該患者用医薬品添付文書は、参照により本明細書に組み入れる。該治療方法は、さらにまた、ダプトマイシンが有用であることが示されている目的又は健康状態に対して本発明の製剤を投与することも包含する。
【0029】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載されているダプトマイシン含有組成物を調製する方法を包含する。該方法は、凍結乾燥されたダプトマイシンを塩化カルシウム及び乳酸カルシウムの中から選択されるカルシウム源を含む薬理学的に許容される液体の中で約25mg/mL以下の濃度に再構成すること、並びに、得られた組成物のpHを約6.0〜約7.0に調節することを含む。上記ステップは、無菌性及び製造に関して製薬上許容される条件の下で実施される。該ダプトマイシンの再構成は、緩衝液と充分な量の水溶液を用いて実施することも可能である。
【0030】
本発明のさらなる態様においては、長期間貯蔵されている間にダプトマイシン含有組成物の中で不純物が形成されるのを抑制又は防止する方法が提供される。該方法は、その中に含まれているダプトマイシン又はその製薬上許容される塩の量が約25mg/mL以下の濃度であり且つ得られた製剤のpHが約6.0〜約7.0である製剤又は組成物が形成されるように、特定量のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩を塩化カルシウムと乳酸カルシウムの中から選択されるカルシウム源を含む充分な量の薬理学的に許容される液体と合することを含む。本発明に従う、場合により実施されるさらなるステップは、該製剤の1以上の製薬上許容される用量を適切な密封可能容器の中に移すこと及びその密封された容器を約5℃〜約25℃の温度で貯蔵することを含む。これらのステップを実施する結果として、さもなければ長期間貯蔵されている間に起こるダプトマイシン含有組成物における不純物の形成を抑制することが可能であるか又は実質的に防止することが可能であり、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に約10%未満の曲線下面積(“AUC”)の総不純物を有するダプトマイシン含有製剤が当業者に対して提供される。本明細書中に記載されている方法によって、組成物又は製剤(ここで、該組成物に含まれているダプトマイシンの最初の量に基づいて、約10%未満の総不純物は、約5%AUC未満のダプトマイシン加水分解生成物と約5%AUC未満のダプトマイシンβ異性体と約5%AUC未満の無水ダプトマイシンで構成されている)が提供される。
【0031】
本発明の組成物は、ダプトマイシンなどの医薬品を無菌で貯蔵するのに適している任意の適切な無菌のバイアル又は容器の中に入れることができる。適切な容器は、ガラス製バイアル、ポリプロピレン製若しくはポリエチレン製のバイアル又は別の特殊用途用の容器であってよく、そして、ダプトマイシンの1以上の用量を保持するのに充分な寸法のものでありうる。
【0032】
本発明のさらなる態様は、本明細書中に記載されているダプトマイシン含有組成物を含むキットを包含する。当業者には理解されるように、該キットは、該ダプトマイシン含有組成物の1以上の用量を含む少なくとも1の製薬上許容されるバイアル又は容器、並びに、該薬物を貯蔵及び/又は投与するための別の製薬上必要な物質(これは、貯蔵及び使用に関する取扱説明書、標準的な生理食塩水又はD5Wが入った輸液用のバッグ又は容器、必用に応じて、付加的な希釈剤などを包含する)を含む。
【0033】
本発明の別の態様によれば、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 該組成物を約6〜約7のpHに維持するのに充分な量のアルカリ性水酸化物(ここで、該アルカリ性水酸化物は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの中から選択される);
を含む長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物が提供される。ダプトマイシン含有組成物の総不純物は、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月間貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に約10%未満の曲線下面積(“AUC”)である。上記実施形態と同様に、本明細書中に記載されているダプトマイシン含有組成物の総不純物が約10%未満と言及されている場合、該組成物が、本明細書中に記載されている条件下において同じ長期貯蔵期間(即ち、約18ヶ月以上)が経過した後、約5%AUC未満のダプトマイシン加水分解生成物、約5%AUC未満のダプトマイシンβ異性体及び約5%AUC未満の無水ダプトマイシン(これらは、ダプトマイシンの最初の出発時の量に対して計算されている)も含むということもまた理解されるであろう。
【0034】
本発明の一態様においては、アルカリ性水酸化物の量は、pHを約6.5〜約6.75に維持するのに充分である。好ましくは、アルカリ性水酸化物の量は、pHを約6.75に維持するのに充分である。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 該組成物のpHを約6〜約7に維持するのに充分な量のアミノ酸;
を含む長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物が提供される。これらの組成物は、上記と同じ安定性プロフィールを有している(即ち、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、約10%未満の曲線下面積(“AUC”)を有している)。
【0036】
本発明の一態様においては、該アミノ酸は、アルギニン、グリシン、アラニン、バリン、メチオニン及びヒスチジンの中から選択される。さらに好ましくは、該アミノ酸は、アルギニンである。
【0037】
本発明の別の態様においては、該アミノ酸は、該組成物のpHを上記範囲内(即ち、約6.5〜約6.75)に維持するのに充分な量で存在している。好ましくは、アミノ酸の量は、約6.75のpJHを維持するのに充分である。
【0038】
本発明の一態様においては、本発明の組成物は、貯蔵中及び/又は使用前、約5℃〜約15℃の温度に維持される。好ましくは、該組成物は、約5℃〜約10℃の温度に維持される。さらに好ましくは、該組成物は、約5℃の温度(即ち、ほぼ冷蔵されている状態)に維持される。
【0039】
本発明の組成物の中に含まれているダプトマイシンの量は、一般に、約1mg/mL〜約25mg/mLの濃度である。本発明の別の実施形態では、ダプトマイシンの濃度は、約10mg/mL〜約25mg/mLである。あるいは、ダプトマイシンの濃度は、約5mg/mL〜約20mg/mLでありうる。さらに別の実施形態では、ダプトマイシンの濃度は、約7.5mg/mL〜約15mg/mLである。好ましくは、ダプトマイシンの濃度は、約10mg/mLである。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態は、不純物の総量が約5℃〜約25℃の温度で約18ヶ月の貯蔵期間が経過した後で高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に約8%未満(さらに好ましくは、約6%未満)の曲線下面積(“AUC”)であるダプトマイシン含有組成物を包含する。
【0041】
本発明の組成物は、安定性及び無菌性を維持するために、自己保存可能である。あるいは、該組成物は、そのような目的に対して有効であると一般に認識されている量の、当技術分野において承認されている1種類以上の安定剤及び/又は防腐剤を含有しうる。該安定剤は、トレハロース、スクロースヘタスターチの中から選択できる。好ましくは、該安定剤は、トレハロースである。本発明の一態様においては、該安定剤の含有量は、4g/mL未満である。好ましくは、該安定剤の含有量は、約10mg/mL〜約200mg/mLである。さらに好ましくは、該安定剤の含有量は、約10mg/mL〜約50mg/mLである。
【0042】
本発明の別の態様においては、該組成物は、好ましくは該組成物を等張又は実質的に等張にする量の等張剤を含む。好ましい等張剤としては、グリセリン、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)400、プロピレングリコール又は注射グレードのポリビニルピロリドン(PVP)などがある。さらに好ましくは、該等張剤は、ポリエチレングリコール(PEG)400である。本発明の一態様においては、該組成物の中の該等張剤の含有量は、約2.5%(v/v)〜約5.0%(v/v)である。好ましくは、該等張剤の含有量は、約5%(v/v)である。
【0043】
本発明のさらなる実施形態は、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;
(b) 該組成物を約6〜約7のpHに維持するのに充分な量の、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの中から選択されるアルカリ性水酸化物;及び、
(c) 該組成物のpHを約6〜約7に維持するのに充分な量のアミノ酸;
を含む長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物を包含する。その安定性プロフィールは、先に挙げられているもの同様である(即ち、総不純物が約10%未満など)。
【0044】
本発明のさらなる実施形態は、
(a) 約10mg/mLの濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;
(b) 該組成物を約6.75のpHに維持するのに充分な量の水酸化カルシウム;
(c) 該組成物を約6.75のpHに維持するのに充分な量のアルギニン;及び、
(d) 5%のトレハロース;
を含有する薬理学的に許容される液体を含む長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物を提供する。その不純物プロフィールは、上記に記載されているものと同様である。
【0045】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物におけるダプトマイシン感受性疾患を治療する方法を包含する。該方法は、その方法を必要としている哺乳動物に、有効量の本明細書中に記載されているダプトマイシン含有組成物を投与することを含む。上記のように、該治療方法は、さらにまた、ダプトマイシンが有用であることが示されている目的又は健康状態に対して本発明の製剤を投与することも包含する。
【0046】
本発明の別の態様は、凍結乾燥されているダプトマイシン及び薬理学的に適切な液体(ここで、該薬理学的に適切な液体は、該組成物を約6.75に維持するのに充分な量の水酸化カルシウム、該組成物を約6.75に維持するのに充分な量のアルギニン及び約5%のトレハロースを含む)を含むキットを提供する。
【0047】
ダプトマイシンの凍結乾燥物及び約5%のトレハロースは、本発明の別の実施形態において提供される。さらなる実施形態において、キットは、ダプトマイシンの凍結乾燥物及び約5%のトレハロース及び薬理学的に適切な液体(ここで、該薬理学的に適切な液体は、該組成物を約6.75に維持するのに充分な量の水酸化カルシウム及び該組成物を約6.75に維持するのに充分な量のアルギニンを含む)を含む。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、ダプトマイシン含有組成物を調製する方法が提供され、ここで、該方法は、凍結乾燥されているダプトマイシンを薬理学的に適切な液体(ここで、該薬理学的に適切な液体は、該組成物を約6〜約7のpHに維持するのに充分な量の、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの中から選択されるアルカリ性水酸化物並びに/又は該組成物のpHを約6〜約7に維持するのに充分な量のアミノ酸を含む)の中で約25mg/mL以下の濃度に再構成することを含む。一態様においては、該凍結乾燥物は、ダプトマイシンと5%のトレハロースを含む。本発明の別の態様においては、該薬理学的に適切な液体もトレハロースを含む。上記ステップは、無菌性及び製造に関して製薬上許容される条件の下で実施される。該ダプトマイシンの再構成は、緩衝液と充分な量の水溶液を用いて実施することも可能である。
【0049】
本発明のさらなる態様においては、長期間貯蔵されている間にダプトマイシン含有組成物の中で不純物が形成されるのを抑制又は防止する方法が提供される。該方法は、その中に含まれているダプトマイシン又はその製薬上許容される塩の量が約25mg/mL以下の濃度である製剤又は組成物が形成されるように、特定量のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩を充分な量の薬理学的に適切な液体(ここで、該薬理学的に適切な液体は、該組成物を約6〜約7のpHに維持するのに充分な量の、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの中から選択されるアルカリ性水酸化物並びに/又は該組成物のpHを約6〜約7に維持するのに充分な量のアミノ酸を含む)と合することを含む。本発明に従う、場合により実施されるさらなるステップは、該製剤の1以上の製薬上許容される用量を適切な密封可能容器の中に移すこと及びその密封された容器を約5℃〜約25℃の温度で貯蔵することを含む。これらのステップを実施する結果として、さもなければ長期間貯蔵されている間にダプトマイシン含有組成物において起こる不純物の形成を抑制することが可能であるか又は実質的に防止することが可能であり、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に約10%未満の曲線下面積(“AUC”)の総不純物を有するダプトマイシン含有製剤が当業者に対して提供される。本明細書中に記載されている方法によって、組成物又は製剤(ここで、該組成物に含まれているダプトマイシンの最初の量に基づいて、約10%未満の総不純物は、約5%未満のAUCのダプトマイシン加水分解生成物と約5%未満のAUCのダプトマイシンβ異性体と約5%未満のAUCの無水ダプトマイシンで構成されている)が提供される。
【0050】
本発明の組成物は、ダプトマイシンなどの医薬品を無菌で貯蔵するのに適している任意の適切な無菌のバイアル又は容器の中に入れることができる。適切な容器は、ガラス製バイアル、ポリプロピレン製若しくはポリエチレン製のバイアル又は別の特殊用途用の容器であってよく、そして、ダプトマイシンの1以上の用量を保持するのに充分な寸法のものでありうる。
【0051】
本発明のさらなる態様は、本明細書中に記載されているダプトマイシン含有組成物を含むキットを包含する。当業者には理解されるように、該キットは、該ダプトマイシン含有組成物の1以上の用量を含む少なくとも1の製薬上許容されるバイアル又は容器、並びに、該薬物を貯蔵及び/又は投与するための別の製薬上必要な物質(これは、貯蔵及び使用に関する取扱説明書、標準的な生理食塩水又はD5Wが入った輸液用のバッグ又は容器、必用に応じて、付加的な希釈剤などを包含する)を含む。
【実施例】
【0052】
下記実施例によって本発明についてのさらなる理解を提供するが、下記実施例は、決して本発明の有効な範囲を限定するものではない。
【0053】
実施例1
ダプトマイシンを蒸留水に溶解させてダプトマイシンの濃度を10mg/mLとすることにより、ダプトマイシン含有組成物を調製した。「対照」サンプルは、充分な量のNaOHを添加してpHを6.75とすることにより調製した。「Ca(OH)2」サンプルは、充分な量の0.5% Ca(OH)2分散液を添加してpHを6.75とすることにより調製した。「アルギニン」サンプルは、充分な量のアルギニンを添加してpHを6.75とすることにより調製した。「5%トレハロース」サンプルは、上記対照と同じ方法で調製されたサンプルにトレハロースを添加して5%(v/v)溶液とすることにより調製した。「5% PEG 400」サンプルは、上記対照と同じ方法で調製されたサンプルにPEG 400を添加して5%(v/v)溶液とすることにより調製した。これらのサンプルは、5℃で貯蔵した。
【0054】
サンプルは、不純物について、最初に調製した後で試験し、及び、表1に示されているように、再度試験した。サンプルは、HPLCによって223nmの波長で試験し、初期サンプル中のダプトマイシンの量、並びに、開環生成物、β-ダプトマイシン及び総分解生成物に対する面積%を測定して、貯蔵後の曲線下面積(“AUC”)を得た。総分解生成物の面積%を用いて、面積%における変化を求めた。試験データは、下記表1に記載されている。
【表1】

【0055】
表1に示されているように、該ダプトマイシン製剤は、水酸化カルシウムを含む溶液の中で安定である。表1は、ダプトマイシンが、該組成物を約6.75のpHに維持するのに充分な量のアルカリ性水酸化物(例えば、水酸化カルシウム)を含む溶液の中で約10mg/mLの濃度で再構成され、5℃で貯蔵された場合、総分解生成物は実質的に増加しなかったということを示している。表1は、該組成物を約6.75のpHに維持するのに充分な量のアルカリ性水酸化物(例えば、水酸化カルシウム)を用いて製剤されたサンプルが、5℃で4ヶ月後の分析で1.46%の総不純物を有していたということを示している。表1に示されているデータは、アルカリ性水酸化物を含むダプトマイシン含有組成物が、冷蔵されている条件下において、本発明で求められるレベルの範囲内にある不純物のレベルで少なくとも約18ヶ月の貯蔵寿命を有しているということを意味している。
【0056】
該ダプトマイシン製剤は、アルギニンを含む溶液の中においても安定である。5%トレハロース溶液でも、充分な長期安定化効果が得られた。表1は、アルギニンとトレハロースを用いて作られた製剤では、5℃で4ヶ月の分析の終わりにおいて総分解生成物の増加が3%未満であったということを示している。表1に示されているデータは、アミノ酸又はトレハロースを含むダプトマイシン含有組成物が、冷蔵されている条件下において、本発明で求められるレベルの範囲内にある不純物のレベルで少なくとも約18ヶ月の貯蔵寿命を有しているということを意味している。
【0057】
表1において示されているように、NaOHを用いてpHが調節された対照サンプル及びPEG 400を含むサンプルでは、上記のような安定化効果は得られなかった。これらのサンプルは、5℃で4ヶ月の分析の後において、初期との比較で3.5%を超える総分解生成物ピーク面積の増加を示した。そのような高いレベルの分解を伴うダプトマイシン含有組成物は、長期貯蔵には適さないであろう。
【0058】
実施例2
ダプトマイシン(“DPT”)を蒸留水に溶解させてダプトマイシンの濃度を10mg/mLとし、及び、表2に示されているように、充分な量の0.5% Ca(OH)2分散液を添加してpHを6.75又は6.5とすることにより、ダプトマイシン含有組成物を調製した。サンプルは、下記表2に示されている温度で貯蔵した。
【0059】
サンプルは、不純物について、最初に調製した後で試験し、及び、表2に示されているように、再度試験した。サンプルは、HPLCによって223nmの波長で試験し、初期サンプル中のダプトマイシンの量、並びに、ダプトマイシン加水分解生成物(0.66)、ダプトマイシンβ異性体(0.97)及び無水ダプトマイシン(1.1)のそれぞれに対する相対保持時間(“RRT”)を加えて、貯蔵後の総不純物曲線下面積(“AUC”)を得た。試験データは、下記表2に記載されている。
【表2】

【0060】
表2に示されているように、Ca(OH)2は、pH 6.5〜6.75のダプトマイシン含有溶液を安定化した。総不純物の面積%は、5℃で3ヶ月にわたる分析で、6.75のpHで約0.95%増加した。そのような増加から、冷蔵されている条件下、本発明で求められるレベルの範囲内において、約24ヶ月の貯蔵寿命が予想される。
【0061】
総不純物の面積%は、5℃で3ヶ月にわたる分析で、6.5のpHで約2.04%増加したが、この増加からは、冷蔵されている条件下において、本発明で求められるレベルの範囲内にある不純物のレベルで約18ヶ月の貯蔵寿命が予想される。
【0062】
実施例3
ダプトマイシン(“DPT”)を蒸留水に溶解させてダプトマイシンの濃度を10mg/mLとし、及び、0.7mg/mL Mg(OH)2溶液の濾液を添加することにより、ダプトマイシン含有組成物を調製した。その溶液に0.1M Ca(OH)2を添加して、表3に示されているpHとした。サンプルは、下記表3に示されている温度で貯蔵した。
【0063】
サンプルは、不純物について、最初に調製した後で試験し、及び、表3に示されている時点で試験した。サンプルは、HPLCによって223nmの波長で試験し、初期サンプル中のダプトマイシンの量、並びに、ダプトマイシン加水分解生成物(0.66)、ダプトマイシンβ異性体(0.97)及び無水ダプトマイシン(1.1)のそれぞれに対する相対保持時間(“RRT”)を加えて、貯蔵後の総不純物曲線下面積(“AUC”)を得た。試験データは、下記表3に記載されている。
【表3】

【0064】
表3に示されているように、Mg(OH)2を添加することは、pH 6.5〜6.75のダプトマイシン含有溶液を安定化した。総不純物の面積%は、6.75のpHで5℃で3ヶ月にわたる貯蔵で約1.61%増加し、6ヶ月の貯蔵の後で2.61%増加した。そのような増加から、冷蔵されている条件下において、約18ヶ月の貯蔵寿命が予想される。
【0065】
総不純物の面積%は、6.5のpHで5℃で3ヶ月にわたる貯蔵で約1.82%増加し、6ヶ月の貯蔵の後で3.18%増加したが、この増加からも、約18ヶ月の貯蔵寿命が予想される。
【0066】
従って、これらの製剤も、25℃未満の温度で少なくとも約18ヶ月の期間貯蔵されたときに長期安定性を有すること及び低レベルの不純物しか有しないことが期待されるので、本発明の範囲内にあることがわかる。
【0067】
実施例4
ダプトマイシン(“DPT”)を蒸留水に溶解させてダプトマイシンの濃度を10mg/mLとし、及び、Ca(OH)2を添加してCa(OH)2の濃度を0.68mg/mLとした。0.1N NaOHを用いてpHを調節して下記表4に示されているpHとした。サンプルは、下記表4に示されているように、塩化カルシウム二水和物又はトレハロース二水和物を添加することによって等張とした。サンプルは、下記表4に示されている温度で貯蔵した。
【0068】
サンプルは、不純物について、最初に調製した後で試験し、及び、表4に示されている時点で試験した。サンプルは、HPLCによって223nmの波長で試験し、初期サンプル中のダプトマイシンの量、並びに、ダプトマイシン加水分解生成物(0.66)、ダプトマイシンβ異性体(0.97)及び無水ダプトマイシン(1.1)のそれぞれに対する相対保持時間(“RRT”)を加えて、貯蔵後の総不純物曲線下面積(“AUC”)を得た。試験データは、下記表4に記載されている。
【表4】

【0069】

【0070】
表4に示されているように、Ca(OH)2及びCaCl2を含み、NaOHでpHが6.75にされているサンプルでは、総不純物の面積%が、5℃で3ヶ月にわたる分析で約1.93%増加し、及び、5ヶ月にわたる分析で2.16%増加していることが示された。そのような増加から、冷蔵されている条件下において、本発明で求められるレベルの範囲内にある不純物のレベルで約18ヶ月の貯蔵寿命が予想される。このサンプルでは、pHは殆ど変動しなかった。
【0071】
Ca(OH)2を含み、NaOHでpHが7にされているサンプルでは、総不純物の面積%が、5℃で3ヶ月にわたる貯蔵で約2.46%増加し、及び、5ヶ月にわたる貯蔵で3.98%増加していることが示された。Ca(OH)2を含み、NaOHでpHが6.75にされているサンプルでは、総不純物の面積%が、5℃で3ヶ月にわたる貯蔵で約2.4%増加し、及び、5ヶ月にわたる貯蔵で3.5%増加していることが示された。Ca(OH)2及びトレハロースを含み、NaOHでpHが6.75にされているサンプルでは、総不純物の面積%が、5℃で3ヶ月にわたる貯蔵で約2.51%増加し、及び、5ヶ月にわたる貯蔵で3.55%増加していることが示された。そのような高いレベルの分解を伴うダプトマイシン含有組成物は、長期貯蔵には適さないであろう。
【0072】
実施例5
ダプトマイシン(“DPT”)を蒸留水に溶解させてダプトマイシンの濃度を10mg/mLとした。そのダプトマイシン含有溶液に、下記表5に示されている量の塩化カルシウムを添加した。そのpHは、下記表5に示されているように、NaOHを用いて6.75に調節した。該溶液の体積は、水を用いて1mLに調節した。サンプルは、下記表5に示されている温度で貯蔵した。
【0073】
サンプルは、不純物について、最初に調製した後で試験し、及び、表5に示されている時点で試験した。サンプルは、HPLCによって223nmの波長で試験し、初期サンプル中のダプトマイシンの量、並びに、ダプトマイシン加水分解生成物(0.66)、ダプトマイシンβ異性体(0.97)及び無水ダプトマイシン(1.1)のそれぞれに対する相対保持時間(“RRT”)を加えて、貯蔵後の総不純物曲線下面積(“AUC”)を得た。試験データは、下記表5に記載されている。
【表5】

【0074】
表5に示されているように、1mg/mLよりも多いCaCl2を含み且つpHがNaOHで約6.75に調節されているダプトマイシン含有製剤は、長期貯蔵安定性を示した。4mg/mLのCaCl2を含む製剤では、総不純物の面積%は、6.75のpHで5℃で3ヶ月にわたる分析で約1.34%増加した。8mg/mLのCaCl2を含む製剤では、総不純物の面積%は、6.75のpHで5℃で3ヶ月にわたる分析で約0.94%増加した。12mg/mLのCaCl2を含む製剤では、総不純物の面積%は、6.75のpHで5℃で3ヶ月にわたる分析で約1.06%増加した。そのような増加から、冷蔵されている条件下において、本発明で求められるレベルの範囲内にある不純物のレベルで少なくとも約24ヶ月の貯蔵寿命が予想される。さらに、これら3種類のサンプルでは、pHは僅かしか変動しなかった。
【0075】
表5に示されているように、0.5mg/mLのCaCl2を含む製剤では、総不純物の面積%は、6.75のpHで5℃で3ヶ月にわたる分析で約4.34%増加した。1mg/mLのCaCl2を含む製剤では、総不純物の面積%は、6.75のpHで5℃で3ヶ月にわたる分析で約3.8%増加した。そのような高いレベルの分解を伴うダプトマイシン含有組成物は、長期貯蔵には適さないであろう。
【0076】
実施例6
ダプトマイシン(“DPT”)を蒸留水に溶解させてダプトマイシンの濃度を10mg/mLとした。そのダプトマイシン含有溶液に塩化カルシウムを添加して塩化カルシウムの濃度を1.5mg/mLとした。そのpHは、表6に示されているように、1N NaOHを用いて調節した。該溶液の体積は、水を用いて1mLに調節した。サンプルは、下記表6に示されている温度で貯蔵した。
【0077】
サンプルは、不純物について、最初に調製した後で試験し、及び、表6に示されているように試験した。サンプルは、HPLCによって223nmの波長で試験し、初期サンプル中のダプトマイシンの量、並びに、ダプトマイシン加水分解生成物(0.66)、ダプトマイシンβ異性体(0.97)及び無水ダプトマイシン(1.1)のそれぞれに対する相対保持時間(“RRT”)を加えて、貯蔵後の総不純物曲線下面積(“AUC”)を得た。試験データは、下記表6に記載されている。
【表6】

【0078】
表6に示されているように、1mg/mLよりも多いCaCl2を含み且つpHがNaOHで約6.0〜7.0に調節されているダプトマイシン含有製剤は、長期貯蔵安定性を示した。
【0079】
総不純物の面積%は、6.0のpHで5℃で1ヶ月にわたる分析で約1.11%増加した。総不純物の面積%は、6.25のpHで5℃で1ヶ月にわたる分析で約1.03%増加した。総不純物の面積%は、6.5のpHで5℃で1ヶ月にわたる分析で約0.91%増加した。総不純物の面積%は、7のpHで5℃で1ヶ月にわたる分析で約0.78%増加した。これらの増加は、上記実施例6において観察された増加と同程度である。そのような増加から、冷蔵されている条件下において、本発明で求められるレベルの範囲内にある不純物のレベルで少なくとも約18ヶ月の貯蔵寿命が予想される。さらに、これらのサンプルでは、pHは僅かしか変動しなかった。
【0080】
実施例7
ダプトマイシン(“DPT”)を0.1M 乳酸カルシウムに溶解させてダプトマイシンの濃度を10mg/mLとした。pHは、1N NaOHを用いて、表7に示されているように調節した。サンプルは、下記表7に示されている温度で貯蔵した。
【0081】
サンプルは、不純物について、最初に調製した後で試験し、及び、表7に示されているように試験した。サンプルは、HPLCによって223nmの波長で試験し、初期サンプル中のダプトマイシンの量、並びに、ダプトマイシン加水分解生成物(0.66)、ダプトマイシンβ異性体(0.97)及び無水ダプトマイシン(1.1)のそれぞれに対する相対保持時間(“RRT”)を加えて、貯蔵後の総不純物曲線下面積(“AUC”)を得た。試験データは、下記表7に記載されている。
【表7】

【0082】
表7に示されているように、0.1M 乳酸カルシウムを含み且つpHがNaOHで約6.5に調節されているダプトマイシン含有製剤は、長期貯蔵安定性を示した。0.1M 乳酸カルシウムを含み且つpHがNaOHで約6.5に調節されている製剤では、総不純物の面積%は、5℃で3ヶ月にわたる分析で約1.81%増加し、4ヶ月にわたる分析で約2.22%増加した。そのような増加から、冷蔵されている条件下において、本発明で求められるレベルの範囲内にある不純物のレベルで約18ヶ月の貯蔵寿命が予想される。
【0083】
0.1M 乳酸カルシウムを含み且つpHがNaOHで約6.25に調節されている製剤では、総不純物の面積%は、5℃で3ヶ月にわたる分析で約2.93%増加し、4ヶ月にわたる貯蔵で約3.41%増加した。そのような高いレベルの分解を伴うダプトマイシン含有組成物は、長期貯蔵には適さないであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物であって、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 塩化カルシウム及び乳酸カルシウムからなる群から選択されるカルシウム源;
を含有する薬理学的に許容される液体を含み、並びに、該ダプトマイシン含有組成物は約6〜約7のpHを有し、並びに、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、総不純物は、約10%未満の曲線下面積(“AUC”)である、前記組成物。
【請求項2】
前記約10%未満の総不純物が、該組成物に含まれているダプトマイシンの量に基づいて、約5%未満のダプトマイシン加水分解生成物、約5%未満のダプトマイシンβ異性体及び約5%未満の無水ダプトマイシンを含む、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項3】
前記カルシウム源が塩化カルシウムであり、且つ、該塩化カルシウムの濃度が1mg/mLよりも高い、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項4】
前記塩化カルシウムの濃度が、約1.5mg/mL〜約17mg/mLである、請求項3に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項5】
前記塩化カルシウムの濃度が、約4mg/mL〜約16.2mg/mLである、請求項4に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項6】
前記塩化カルシウムの濃度が、約8mg/mL〜約12mg/mLである、請求項5に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項7】
前記塩化カルシウムの濃度が、約8mg/mLである、請求項6に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項8】
前記塩化カルシウムの濃度が、約12mg/mLである、請求項6に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項9】
前記塩化カルシウムの濃度が、約16.2mg/mLである、請求項5に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項10】
前記カルシウム源が乳酸カルシウムであり、且つ、該乳酸カルシウムの濃度が約0.05M〜約0.3Mである、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項11】
前記カルシウム源が乳酸カルシウムであり、且つ、該乳酸カルシウムの濃度が約0.1M〜約0.25Mである、請求項10に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項12】
前記カルシウム源が乳酸カルシウムであり、且つ、該乳酸カルシウムの濃度が約0.1Mである、請求項11に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項13】
さらにpH調節剤を含む、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項14】
前記pH調節剤が、水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される、請求項13に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項15】
前記組成物のpHが約6.25〜約6.75である、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項16】
前記組成物のpHが約6.5〜約6.75である、請求項15に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項17】
前記組成物のpHが約6.5である、請求項16に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項18】
前記組成物のpHが約6.75である、請求項16に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項19】
前記組成物が、約5℃〜約15℃の温度で維持される、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項20】
前記組成物が、約5℃〜約10℃の温度で維持される、請求項19に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項21】
前記組成物が、約5℃の温度で維持される、請求項20に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項22】
前記ダプトマイシンの濃度が、約1mg/mL〜約25mg/mLである、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項23】
前記ダプトマイシンの濃度が、約5mg/mL〜約20mg/mLである、請求項22に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項24】
前記ダプトマイシンの濃度が、約7.5mg/mL〜約15mg/mLである、請求項23に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項25】
前記ダプトマイシンの濃度が約10mg/mLである、請求項24に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項26】
前記長期貯蔵が少なくとも約2年である、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項27】
水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択されるアルカリ性水酸化物をさらに含む、請求項1に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項28】
前記アルカリ性水酸化物が、約0.5mg/mL〜約1mg/mLの濃度の水酸化カルシウムである、請求項27に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項29】
前記水酸化カルシウムの濃度が約0.68mg/mLである、請求項28に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項30】
長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物であって、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 1mg/mLよりも高い濃度の塩化カルシウム;
を含有する薬理学的に許容される液体を含み、並びに、該ダプトマイシン含有組成物は約6〜約7のpHを有し、並びに、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、総不純物は、約10%未満の曲線下面積(“AUC”)である、前記組成物。
【請求項31】
約10%未満の総不純物が、該組成物に含まれているダプトマイシンの量に基づいて、約5%未満のダプトマイシン加水分解生成物、約5%未満のダプトマイシンβ異性体及び約5%未満の無水ダプトマイシンを含む、請求項30に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項32】
長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物であって、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;及び、
(b) 0.1Mの乳酸カルシウム;
を含有する薬理学的に許容される液体を含み、並びに、該ダプトマイシン含有組成物は約6.5のpHを有し、並びに、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、総不純物は、約10%未満の曲線下面積(“AUC”)である、前記組成物。
【請求項33】
約10%未満の総不純物が、該組成物に含まれているダプトマイシンの量に基づいて、約5%未満のダプトマイシン加水分解生成物、約5%未満のダプトマイシンβ異性体及び約5%未満の無水ダプトマイシンを含む、請求項32に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項34】
長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物であって、
(a) 約25mg/mL以下の濃度のダプトマイシン又はその製薬上許容される塩;
(b) 約16.2mg/mLの濃度の塩化カルシウム;及び、
(c) 約0.68mg/mLの濃度の水酸化カルシウム;
を含有する薬理学的に許容される液体を含み、並びに、該ダプトマイシン含有組成物は約6〜約7のpHを有し、並びに、約5℃〜約25℃の温度で少なくとも約18ヶ月貯蔵された後に高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)で223nmの波長で測定した場合に、総不純物は、約10%未満の曲線下面積(“AUC”)である、前記組成物。
【請求項35】
約10%未満の総不純物が、該組成物に含まれているダプトマイシンの量に基づいて、約5%未満のダプトマイシン加水分解生成物、約5%未満のダプトマイシンβ異性体及び約5%未満の無水ダプトマイシンを含む、請求項34に記載の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物。
【請求項36】
哺乳動物におけるダプトマイシン感受性疾患を治療する方法であって、有効量の請求項1の長期貯蔵において安定なダプトマイシン含有組成物をそれを必要としている哺乳動物に投与することを含む、前記方法。

【公表番号】特表2013−511522(P2013−511522A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539887(P2012−539887)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/049322
【国際公開番号】WO2011/062676
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(509085984)イーグル・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】