ダンパー装置
【課題】ピストンダンパーを構成するシリンダに充填された粘性流体の漏れだしが生じた場合でもそれをダンパー装置外に流れ出させない。
【解決手段】ホルダーSの保持部8はシリンダ1をその軸線に直交する向きから納め入れ可能な保持凹部8aから構成されている。ケースHは開放された前端からホルダーSを保持部8を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーSの保持凹部8aに連通する側方開放部16を有している。ケースHには側方開放部16における開口前縁からホルダーSの移動方向に交叉する向きに沿ってケースHの底部21内に形成された粘性流体の前側流れ止め部と、この前側流れ止め部と後壁との間に亘って側方開放部16の開口下縁を縁取る横側流れ止め部23とが形成されている。
【解決手段】ホルダーSの保持部8はシリンダ1をその軸線に直交する向きから納め入れ可能な保持凹部8aから構成されている。ケースHは開放された前端からホルダーSを保持部8を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーSの保持凹部8aに連通する側方開放部16を有している。ケースHには側方開放部16における開口前縁からホルダーSの移動方向に交叉する向きに沿ってケースHの底部21内に形成された粘性流体の前側流れ止め部と、この前側流れ止め部と後壁との間に亘って側方開放部16の開口下縁を縁取る横側流れ止め部23とが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制動対象物を可動可能に支持する基本対象物に備えられて、この制動対象物の移動又は相対的な移動に、これを構成するピストンダンパーのシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように用いられるダンパー装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンロッドの押し込みに対しシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されたピストンダンパーを含んで構成されるダンパー装置がある。かかるピストンダンパーではピストンロッドの突きだし側からの粘性流体の漏れだしの可能性が零ではない。したがって、かかるピストンダンパーが利用される対象物によってはこうした漏れだしが生じた場合の対策が求められるところである。
【0003】
ピストンダンパーを用いたものではないが、シャフトを回転可能に支持するケースに粘性流体を充填させてなるドアチェック装置がある。(特許文献1参照)この装置を構成するケースは、ケース本体とその開口を塞ぐ蓋とからなる。この装置では粘性流体の液漏れを防ぐために、ケースをさらにベースに納めて前記蓋の浮き上がりを阻止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−102859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、ピストンダンパーを含んで構成されるダンパー装置において、ピストンダンパーを構成するシリンダに充填された粘性流体の漏れだしが生じた場合でも、漏れだした粘性流体をダンパー装置外に流れ出させることのないようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ダンパー装置を、ピストンロッドの押し込みに対しシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されたピストンダンパーと、
このピストンダンパーをピストンロッドを後方に突き出させるようにして保持する保持部と、この保持部より前方に制動対象物に対する連係部を備えたホルダーと、
このホルダーを前後動可能に支持するケースとを備えてなり、
ホルダーの保持部は、前記シリンダをその軸線に直交する向きから納め入れ可能に左右のいずれか一方の側において開放された前記シリンダの保持凹部から構成されており、
ケースは、開放された前端からホルダーを前記保持部を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーの保持凹部に連通する側方開放部と、ホルダーに保持されたピストンダンパーのピストンロッドが当接される後壁とを有しており、
しかも、ケースには、側方開放部における開口前縁からホルダーの移動方向に交叉する向きに沿ってケースの底部内に形成された前記粘性流体の前側流れ止め部と、この前側流れ止め部と前記後壁との間に亘って側方開放部の開口下縁を縁取る横側流れ止め部とが形成されているものとした。
【0007】
かかる構成によれば、ピストンダンパーのシリンダに充填された粘性流体がこのシリンダにおけるピストンロッドの突きだし側から外部に漏れだした場合でも、ケースにおける前側流れ止め部によりケースの開放された前端からケース外に流れ出させることはなく、かつ、横側流れ止め部によりケースの側方開放部からもケース外に流れ出させることはない。
【0008】
前記ホルダーの最前進位置において、このホルダーの保持凹部の形成箇所の外面であって、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝を形成させておけば、ピストンダンパーのシリンダから前記のように漏れだしてホルダーの保持凹部の形成箇所の外面とケースの内面との間に入り込んだ粘性流体を、この縦溝によって案内してケースの前側流れ止め部と横側流れ止め部とにより囲われた底部内に留めることができる。この場合さらに、ホルダーの移動方向において隣り合う縦溝との間に間隔を開けて複数の縦溝を設けておくと共に、ホルダーの外面であって、前記複数の縦溝のうち最も後方に位置される縦溝よりも後方に位置される箇所に、この縦溝に溝前端を連通させてホルダーの移動方向に続く横溝を形成させておけば、ピストンダンパーのシリンダから前記のように漏れだしてホルダーの保持凹部の形成箇所の外面とケースの内面との間に入り込んだ粘性流体を、かかる複数の縦溝によって前記のように案内できると共に、かかる横溝によってホルダーの後端側に案内してケースの前側流れ止め部と横側流れ止め部とにより囲われた底部内に留めることができる。
【0009】
前記ホルダーの保持凹部内にピストンダンパーのシリンダに対する係合突部を、このホルダーの移動方向に間隔を開けて前後にそれぞれ形成させておくと共に、このホルダーにおける保持凹部の形成箇所に、ホルダーの外面側から前側の前記係合突部を臨める大きさの前側窓穴と、ホルダーの外面側から後側の前記係合突部を臨める大きさの後側窓穴とを形成させておくこともある。このようにした場合、ホルダーに対しピストンダンパーをワンタッチで組み合わせることができると共に、そのために機能する前記係合突部を前記前側窓穴及び後側窓穴を利用して保持凹部内の前後二箇所にホルダーを合成樹脂により成形する金型の構造を複雑にすることなく容易に形成させることができる。この場合に、前記ホルダーの最前進位置において、前側窓穴が前側流れ止め部よりも前方に位置されるようにしておくと共に、ホルダーにおける前側窓穴と後側窓穴との間であって、ホルダーの最前進位置において、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、保持凹部を内外に連通させる貫通孔を形成し、少なくとも、この貫通孔と前側窓穴との間において、ホルダーの保持凹部の形成箇所の外面に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝を形成させておくこともある。このようにした場合、ホルダーの保持凹部内の前後二箇所に前記係合突部を成形し易くする前側窓穴と後側窓穴を形成させておきながら、ホルダーの最前進位置において前側流れ止め部よりも前方に位置される前側窓穴に前記のように漏れだした粘性流体が至る前に貫通孔からホルダー外に流れ出させることができ、そして、この貫通孔から流れ出させた粘性流体をケースの前側流れ止め部と横側流れ止め部とにより囲われた底部内に留めることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ピストンダンパーを構成するシリンダに充填された粘性流体の漏れだしが生じた場合でも、漏れだした粘性流体のダンパー装置外への流れ出しを効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は実施の形態にかかるダンパー装置の分解斜視図である。
【図2】図2はダンパー装置を構成するケースの斜視図である。
【図3】図3はダンパー装置を構成するホルダーの斜視図である。
【図4】図4はホルダーが最も前進した状態におけるダンパー装置の側面図である。
【図5】図5はホルダーの連係部に制動対象物が突き当てられてホルダーが最も後退した状態におけるダンパー装置の側面図である。
【図6】図6はダンパー装置を構成するピストンダンパーの断面構成図である。
【図7】図7はケースの右側面図である。
【図8】図8は図7におけるA−A線断面図である。
【図9】図9は図7におけるB−B線断面図である。
【図10】図10はホルダーの右側面図である。
【図11】図11はホルダーの左側面図である。
【図12】図12は図10におけるC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図12に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるダンパー装置は、制動対象物Mを可動可能に支持する基本対象物(図示は省略する。)に備えられて、この制動対象物Mの移動又は相対的な移動に、これを構成するピストンダンパーDのシリンダ1内に充填された粘性流体(図示は省略する。)の抵抗を作用させるように用いられるものである。
【0013】
より具体的には、かかるダンパー装置は、例えば、制動対象物Mとしての扉によって閉塞される開口を備えた基本対象物としての収納体に備えられて、この扉を閉じるときのこの扉の動きを緩慢にするように用いられる。
【0014】
かかるダンパー装置は、ピストンダンパーDと、そのホルダーSと、このホルダーSを支持するケースHとを組み合わせて構成されている。図示の例では、ケースHが前記基本対象物に取り付けられ、ホルダーSが前記制動対象物Mに連係されるようになっている。
【0015】
ピストンダンパーDは、ピストンロッド3の押し込みに対しシリンダ1内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されている。
【0016】
図示の例では、シリンダ1は、筒一端を閉塞し、筒他端を開放した、円筒状をなしている。シリンダ1内には、その軸線に沿って往復動されるピストン体2が納められている。ピストンロッド3はその一端側をピストン体2に固定されて、ピストン体2と組み合わされている。シリンダ1の筒他端は、中央にピストンロッド3の通し孔4aを備えたキャップ4により閉塞されている。図6中、符号5はアキュームレータであり、このアキュームレータ5とキャップ4との間には符号6で示すシール部材が介在されている。ピストン体2とシリンダ1の閉塞された筒一端との間には圧縮コイルバネ7が介在されている。ピストンロッド3をシリンダ1内に押し込む向きの力が作用されると、前記バネ7を圧縮させながらシリンダ1の筒一端に近づく向きにピストン体2が往動される。図示の例では、この往動時にはピストン体2を構成するスライダ2aが図6の右側に移動して粘性流体の流路を狭めるようになっており、これによりピストンロッド3の押し込みに対しシリンダ1内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるようになっている。ピストンロッド3に対する前記力の作用がなくなると前記バネ7の付勢によりピストン体2は往動前の位置まで復動され、ピストンロッド3も押し込み前の位置まで突き出される。シリンダ1内に充填される粘性流体としては、典型的にはシリコンオイルやグリスオイルなどを用いることができる。
【0017】
ホルダーSは、前記ピストンダンパーDをピストンロッド3を後方に突き出させるようにして保持する保持部8と、この保持部8より前方に制動対象物Mに対する連係部9を備えている。
【0018】
かかるホルダーSの保持部8は、前記シリンダ1をその軸線に直交する向きから納め入れ可能に左右のいずれか一方の側において開放された前記シリンダ1の保持凹部8aによって構成されている。
【0019】
図示の例では、ホルダーSは、全体として棒状を呈している。前記連係部9と保持部8とは、中間部10により一体化されている。中間部10は、ホルダーSの長さ方向に沿った上面部10a及び下面部10bと、この両面10a、10b部に対し直角に交わる右側面部10cと、この右側面部10c側を湾曲内側とするように弧状に湾曲した左側面部10dとを備えている。連係部9は、中間部10の前端面部10eの上下方向略中程の位置から前方に突き出す突出部により構成されている。前記保持部8は、中間部10の後端に筒前端を一体に連接させた略角筒状体の右側面部を切り欠いて開放させたような形態となっている。保持部8の内部が前記保持凹部8aとなっている。
【0020】
中間部10には左側面部10dにおいて開放されて右側面部10cを穴底とする方形穴10fが形成されていると共に、この穴底にはホルダーSの移動方向に沿った上横割溝10g及び下横割溝10hと、この上横割溝10g及び下横割溝10hの溝前端間に亘る縦割溝10iとが形成されており、これらの割溝10g、10h、10iにより中間部10の右側面部の一部が弾性片部11となっている。弾性片部11の縦割溝10iに臨んだ自由端には隆起部11aが形成されている。
【0021】
保持凹部8a内には、前記ピストンダンパーDのシリンダ1に対する係合突部8dが、このホルダーSの移動方向に間隔を開けて前後にそれぞれ形成されている。それと共に、このホルダーSにおける保持凹部8aの形成箇所に、ホルダーSの外面側から前側の前記係合突部8dを臨める大きさの前側窓穴8eと、ホルダーSの外面側から後側の前記係合突部8dを臨める大きさの後側窓穴8fとが形成されている。
【0022】
図示の例では、係合突部8dは、保持凹部8aの上壁8bと下壁8cとにそれぞれ形成されている。上下の係合突部8d、8d間の距離はピストンダンパーDのシリンダ1の外径よりもやや小さく、保持凹部8aにシリンダ1を前記のように納めるようにするとシリンダ1の周面に上下の係合突部8d、8dが接して保持凹部8aの側が上壁8bと下壁8cとの間の距離をやや広げる向きに弾性変形し、シリンダ1の最大径部分の係合突部8dの乗り越えが許容され、この乗り越え後の弾性復帰により保持部8の左側面部と係合突部8dとの間で納められたシリンダ1を保持するようになっている。保持部8の後端8gには、このように保持凹部8aに納められたピストンダンパーDのピストンロッド3をホルダーSの後方に突き出させる割溝8hが形成されている。
【0023】
これにより、この実施の形態にあっては、ホルダーSに対しピストンダンパーDをワンタッチで組み合わせることができると共に、そのために機能する前記係合突部8dを前記前側窓穴8e及び後側窓穴8fを利用して保持凹部8a内の前後二箇所にホルダーSを合成樹脂により成形する金型の構造を複雑にすることなく容易に形成させることができるようになっている。
【0024】
ケースHは、前記ホルダーSを前後動可能に支持する。かかるケースHは、開放された前端15から前記ホルダーSを前記保持部8を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーSの保持凹部8aに連通する側方開放部16と、ホルダーSに保持されたピストンダンパーDのピストンロッド3が当接される後壁17とを有している。
【0025】
図示の例では、ケースHは、筒前端を開放させると共に筒後端を閉塞させた筒状体の右側部を、この筒前端から後方に向けた一定の範囲を残して切り欠くようにして構成されている。この切り欠かれた箇所により前記側方開放部16が形成され、閉塞された筒後端により前記後壁17が形成されている。
【0026】
ケースHにおけるホルダーSの移動方向に直交する向きの断面内郭形状は同じ向きでのホルダーSの断面外郭形状に倣っている。これによりケースHは、第一に、前記保持凹部8aの開放側をケースHの側方開放部16側に向けた向きでケースH内に納められるようになっている。また、第二に、ホルダーSはその外面をケースHの内面に摺接させるようにしてケースHに前後動可能に支持されている。
【0027】
図示の例では、ケースHにおける前端15と側方開放部16との間に残された右側面部18には、ホルダーSの移動方向に長い長穴18aが形成されている。ホルダーSはケースHへの前記納め入れをケースHの前記右側面部18に対する前記中間部10に形成された弾性片部11の隆起部11aの当接によるこの弾性片部11の撓み込みにより許容すると共に、ケースHとホルダーSとの組み合わせ状態はこの隆起部11aが長穴18aに入り込む位置でのこの弾性片部11の撓み戻しによりこの隆起部11aを長穴18aに入り込ませることで維持されるようになっている。ケースHに納められたホルダーSの保持部8の後端8gとケースHの後壁17との間には前記のように突き出されたピストンロッド3により間隔が形成され、(図4)この状態においてホルダーSの連係部9側はケースHの前端15から前方に突きだし、隆起部11aは長穴18aの穴前端側に位置される。図示の例では、ケースHを基本対象物に取り付けた状態から、ホルダーSの連係部9に前方から移動してくる制動対象物Mが突き当たると、前記長穴18aの範囲内でピストンロッド3をシリンダ1内に押し込みながらホルダーSが後退され、これにより前記粘性流体の抵抗力をピストンダンパーDの制動力として制動対象物Mに作用させるようになっている。(図5)この状態から制動対象物Mが復動されると、前記バネ7の作用により押し込み前の位置に復帰されるピストンロッド3によりホルダーSは前記後退前の位置まで前進する。なお、図示の例では、ケースHは、前記右側面部18における長穴18aを挟んだ上下にそれぞれ形成された取り付け用突部19と、後端から後方に突き出す取り付け用耳部20によって、基本対象物に取り付けられるようになっている。
【0028】
また、ケースHには、側方開放部16における開口前縁からホルダーSの移動方向に交叉する向きに沿ってケースHの底部21内に形成された前記粘性流体の前側流れ止め部22と、この前側流れ止め部22と前記後壁17との間に亘って側方開放部16の開口下縁を縁取る横側流れ止め部23とが形成されている。図示の例では、前側流れ止め部22は、ホルダーSの移動方向に直交する向きに、ケースHの底部21の内側に形成されたリブ状体として構成されている。横側流れ止め部23はケースHの後壁17と右側面部18との間に亘って形成され、前側流れ止め部22はその右端をこの横側流れ止め部23に一体に連接させると共にその左端をケースHの左側面部24の下部内面に一体に連接されている。
【0029】
これにより、この実施の形態にあっては、ピストンダンパーDのシリンダ1に充填された粘性流体がこのシリンダ1におけるピストンロッド3の突きだし側から外部に漏れだした場合でも、ケースHにおける前側流れ止め部22によりケースHの開放された前端15からケースH外に流れ出させることはなく、かつ、横側流れ止め部23によりケースHの側方開放部16からもケースH外に流れ出させることはない。
【0030】
また、この実施の形態にあっては、ホルダーSの最前進位置において、このホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面であって、前側流れ止め部22よりも後方に位置される箇所に、ホルダーSの移動方向に交叉する向きに続く縦溝12が形成されている。この実施の形態にあっては、ホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面に、ホルダーSの移動方向において隣り合う縦溝12との間に間隔を開けて複数の縦溝12、12…が設けられている。かかる縦溝12は、ホルダーSの保持部8の上壁8bの外面から下壁8cの外面に亘るように形成されている。
【0031】
これにより、この実施の形態にあっては、ピストンダンパーDのシリンダ1から前記のように漏れだしてホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面とケースHの内面との間に入り込んだ粘性流体を、この縦溝12によって案内してケースHの前側流れ止め部22と横側流れ止め部23とにより囲われた底部21内に留めるようにしている。
【0032】
また、この実施の形態にあっては、ホルダーSの外面であって、前記複数の縦溝12、12…のうち最も後方に位置される縦溝12よりも後方に位置される箇所に、この縦溝12に溝前端を連通させてホルダーSの移動方向に続く横溝13が形成されている。図示の例では、ホルダーSの保持凹部8aの形成箇所であって、前記上壁8b及び下壁8cを除いた箇所に、上下に隣り合う横溝13との間に間隔を開けて、複数の横溝13、13…が形成されている。各横溝13の溝後端はホルダーSの後端に位置し、そこで開放されている。
【0033】
これにより、この実施の形態にあっては、ピストンダンパーDのシリンダ1から前記のように漏れだしてホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面とケースHの内面との間に入り込んだ粘性流体を、かかる横溝13によってホルダーSの後端側に案内してケースHの前側流れ止め部22と横側流れ止め部23とにより囲われた底部21内に留めるようにしている。図示の例では特に、前記横溝13はケースHの内面との間に粘性流体を毛細管現象により誘引する深さを持つように構成されている。
【0034】
また、この実施の形態にあっては、ホルダーSの最前進位置において、前側窓穴8eが前側流れ止め部22よりも前方に位置されるようになっている。それとと共に、ホルダーSにおける前側窓穴8eと後側窓穴8fとの間であって、ホルダーSの最前進位置において、前側流れ止め部22よりも後方に位置される箇所に、保持凹部8aを内外に連通させる貫通孔14が形成されている。図示の例では、かかる貫通孔14はホルダーSの下部側に形成されている。そして、この貫通孔14と前側窓穴8eとの間であってホルダーSの最前進位置において前側流れ止め部22よりも後方に位置される箇所において、ホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面に、ホルダーSの移動方向に交叉する向きに続く縦溝12が形成されている。図示の例では、貫通孔14は収納部の前後方向略中程の位置に形成されており、この貫通孔14と前側窓穴8eとの間に二条の縦溝12、12が形成され、かつ、この貫通孔14と後側窓穴8fとの間に二条の縦溝12、12が形成されている。
【0035】
これにより、この実施の形態にあっては、ホルダーSの保持凹部8a内の前後二箇所に前記係合突部8dを成形し易くする前側窓穴8eと後側窓穴8fを形成させておきながら、ホルダーSの最前進位置において前側流れ止め部22よりも前方に位置される前側窓穴8eに前記のように漏れだした粘性流体が至る前に貫通孔14からホルダーS外に流れ出させることができ、そして、この貫通孔14から流れ出させた粘性流体をケースHの前側流れ止め部22と横側流れ止め部23とにより囲われた底部21内に留めるようにしている。
【0036】
なお、前記ケースHにおける前側流れ止め部22と横側流れ止め部23と左側面部と後壁17とに囲われた底部に、図1において想像線で示すような粘性流体を吸収保持可能なスポンジなどからなるシート状体25を張り込むようにしておいても良い。
【符号の説明】
【0037】
S ホルダー
H ケース
1 シリンダ
8 保持部
8a 保持凹部
16 側方開放部
17 後壁
21 底部
22 前側流れ止め部
23 横側流れ止め部
【技術分野】
【0001】
この発明は、制動対象物を可動可能に支持する基本対象物に備えられて、この制動対象物の移動又は相対的な移動に、これを構成するピストンダンパーのシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように用いられるダンパー装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンロッドの押し込みに対しシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されたピストンダンパーを含んで構成されるダンパー装置がある。かかるピストンダンパーではピストンロッドの突きだし側からの粘性流体の漏れだしの可能性が零ではない。したがって、かかるピストンダンパーが利用される対象物によってはこうした漏れだしが生じた場合の対策が求められるところである。
【0003】
ピストンダンパーを用いたものではないが、シャフトを回転可能に支持するケースに粘性流体を充填させてなるドアチェック装置がある。(特許文献1参照)この装置を構成するケースは、ケース本体とその開口を塞ぐ蓋とからなる。この装置では粘性流体の液漏れを防ぐために、ケースをさらにベースに納めて前記蓋の浮き上がりを阻止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−102859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、ピストンダンパーを含んで構成されるダンパー装置において、ピストンダンパーを構成するシリンダに充填された粘性流体の漏れだしが生じた場合でも、漏れだした粘性流体をダンパー装置外に流れ出させることのないようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ダンパー装置を、ピストンロッドの押し込みに対しシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されたピストンダンパーと、
このピストンダンパーをピストンロッドを後方に突き出させるようにして保持する保持部と、この保持部より前方に制動対象物に対する連係部を備えたホルダーと、
このホルダーを前後動可能に支持するケースとを備えてなり、
ホルダーの保持部は、前記シリンダをその軸線に直交する向きから納め入れ可能に左右のいずれか一方の側において開放された前記シリンダの保持凹部から構成されており、
ケースは、開放された前端からホルダーを前記保持部を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーの保持凹部に連通する側方開放部と、ホルダーに保持されたピストンダンパーのピストンロッドが当接される後壁とを有しており、
しかも、ケースには、側方開放部における開口前縁からホルダーの移動方向に交叉する向きに沿ってケースの底部内に形成された前記粘性流体の前側流れ止め部と、この前側流れ止め部と前記後壁との間に亘って側方開放部の開口下縁を縁取る横側流れ止め部とが形成されているものとした。
【0007】
かかる構成によれば、ピストンダンパーのシリンダに充填された粘性流体がこのシリンダにおけるピストンロッドの突きだし側から外部に漏れだした場合でも、ケースにおける前側流れ止め部によりケースの開放された前端からケース外に流れ出させることはなく、かつ、横側流れ止め部によりケースの側方開放部からもケース外に流れ出させることはない。
【0008】
前記ホルダーの最前進位置において、このホルダーの保持凹部の形成箇所の外面であって、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝を形成させておけば、ピストンダンパーのシリンダから前記のように漏れだしてホルダーの保持凹部の形成箇所の外面とケースの内面との間に入り込んだ粘性流体を、この縦溝によって案内してケースの前側流れ止め部と横側流れ止め部とにより囲われた底部内に留めることができる。この場合さらに、ホルダーの移動方向において隣り合う縦溝との間に間隔を開けて複数の縦溝を設けておくと共に、ホルダーの外面であって、前記複数の縦溝のうち最も後方に位置される縦溝よりも後方に位置される箇所に、この縦溝に溝前端を連通させてホルダーの移動方向に続く横溝を形成させておけば、ピストンダンパーのシリンダから前記のように漏れだしてホルダーの保持凹部の形成箇所の外面とケースの内面との間に入り込んだ粘性流体を、かかる複数の縦溝によって前記のように案内できると共に、かかる横溝によってホルダーの後端側に案内してケースの前側流れ止め部と横側流れ止め部とにより囲われた底部内に留めることができる。
【0009】
前記ホルダーの保持凹部内にピストンダンパーのシリンダに対する係合突部を、このホルダーの移動方向に間隔を開けて前後にそれぞれ形成させておくと共に、このホルダーにおける保持凹部の形成箇所に、ホルダーの外面側から前側の前記係合突部を臨める大きさの前側窓穴と、ホルダーの外面側から後側の前記係合突部を臨める大きさの後側窓穴とを形成させておくこともある。このようにした場合、ホルダーに対しピストンダンパーをワンタッチで組み合わせることができると共に、そのために機能する前記係合突部を前記前側窓穴及び後側窓穴を利用して保持凹部内の前後二箇所にホルダーを合成樹脂により成形する金型の構造を複雑にすることなく容易に形成させることができる。この場合に、前記ホルダーの最前進位置において、前側窓穴が前側流れ止め部よりも前方に位置されるようにしておくと共に、ホルダーにおける前側窓穴と後側窓穴との間であって、ホルダーの最前進位置において、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、保持凹部を内外に連通させる貫通孔を形成し、少なくとも、この貫通孔と前側窓穴との間において、ホルダーの保持凹部の形成箇所の外面に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝を形成させておくこともある。このようにした場合、ホルダーの保持凹部内の前後二箇所に前記係合突部を成形し易くする前側窓穴と後側窓穴を形成させておきながら、ホルダーの最前進位置において前側流れ止め部よりも前方に位置される前側窓穴に前記のように漏れだした粘性流体が至る前に貫通孔からホルダー外に流れ出させることができ、そして、この貫通孔から流れ出させた粘性流体をケースの前側流れ止め部と横側流れ止め部とにより囲われた底部内に留めることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ピストンダンパーを構成するシリンダに充填された粘性流体の漏れだしが生じた場合でも、漏れだした粘性流体のダンパー装置外への流れ出しを効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は実施の形態にかかるダンパー装置の分解斜視図である。
【図2】図2はダンパー装置を構成するケースの斜視図である。
【図3】図3はダンパー装置を構成するホルダーの斜視図である。
【図4】図4はホルダーが最も前進した状態におけるダンパー装置の側面図である。
【図5】図5はホルダーの連係部に制動対象物が突き当てられてホルダーが最も後退した状態におけるダンパー装置の側面図である。
【図6】図6はダンパー装置を構成するピストンダンパーの断面構成図である。
【図7】図7はケースの右側面図である。
【図8】図8は図7におけるA−A線断面図である。
【図9】図9は図7におけるB−B線断面図である。
【図10】図10はホルダーの右側面図である。
【図11】図11はホルダーの左側面図である。
【図12】図12は図10におけるC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図12に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるダンパー装置は、制動対象物Mを可動可能に支持する基本対象物(図示は省略する。)に備えられて、この制動対象物Mの移動又は相対的な移動に、これを構成するピストンダンパーDのシリンダ1内に充填された粘性流体(図示は省略する。)の抵抗を作用させるように用いられるものである。
【0013】
より具体的には、かかるダンパー装置は、例えば、制動対象物Mとしての扉によって閉塞される開口を備えた基本対象物としての収納体に備えられて、この扉を閉じるときのこの扉の動きを緩慢にするように用いられる。
【0014】
かかるダンパー装置は、ピストンダンパーDと、そのホルダーSと、このホルダーSを支持するケースHとを組み合わせて構成されている。図示の例では、ケースHが前記基本対象物に取り付けられ、ホルダーSが前記制動対象物Mに連係されるようになっている。
【0015】
ピストンダンパーDは、ピストンロッド3の押し込みに対しシリンダ1内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されている。
【0016】
図示の例では、シリンダ1は、筒一端を閉塞し、筒他端を開放した、円筒状をなしている。シリンダ1内には、その軸線に沿って往復動されるピストン体2が納められている。ピストンロッド3はその一端側をピストン体2に固定されて、ピストン体2と組み合わされている。シリンダ1の筒他端は、中央にピストンロッド3の通し孔4aを備えたキャップ4により閉塞されている。図6中、符号5はアキュームレータであり、このアキュームレータ5とキャップ4との間には符号6で示すシール部材が介在されている。ピストン体2とシリンダ1の閉塞された筒一端との間には圧縮コイルバネ7が介在されている。ピストンロッド3をシリンダ1内に押し込む向きの力が作用されると、前記バネ7を圧縮させながらシリンダ1の筒一端に近づく向きにピストン体2が往動される。図示の例では、この往動時にはピストン体2を構成するスライダ2aが図6の右側に移動して粘性流体の流路を狭めるようになっており、これによりピストンロッド3の押し込みに対しシリンダ1内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるようになっている。ピストンロッド3に対する前記力の作用がなくなると前記バネ7の付勢によりピストン体2は往動前の位置まで復動され、ピストンロッド3も押し込み前の位置まで突き出される。シリンダ1内に充填される粘性流体としては、典型的にはシリコンオイルやグリスオイルなどを用いることができる。
【0017】
ホルダーSは、前記ピストンダンパーDをピストンロッド3を後方に突き出させるようにして保持する保持部8と、この保持部8より前方に制動対象物Mに対する連係部9を備えている。
【0018】
かかるホルダーSの保持部8は、前記シリンダ1をその軸線に直交する向きから納め入れ可能に左右のいずれか一方の側において開放された前記シリンダ1の保持凹部8aによって構成されている。
【0019】
図示の例では、ホルダーSは、全体として棒状を呈している。前記連係部9と保持部8とは、中間部10により一体化されている。中間部10は、ホルダーSの長さ方向に沿った上面部10a及び下面部10bと、この両面10a、10b部に対し直角に交わる右側面部10cと、この右側面部10c側を湾曲内側とするように弧状に湾曲した左側面部10dとを備えている。連係部9は、中間部10の前端面部10eの上下方向略中程の位置から前方に突き出す突出部により構成されている。前記保持部8は、中間部10の後端に筒前端を一体に連接させた略角筒状体の右側面部を切り欠いて開放させたような形態となっている。保持部8の内部が前記保持凹部8aとなっている。
【0020】
中間部10には左側面部10dにおいて開放されて右側面部10cを穴底とする方形穴10fが形成されていると共に、この穴底にはホルダーSの移動方向に沿った上横割溝10g及び下横割溝10hと、この上横割溝10g及び下横割溝10hの溝前端間に亘る縦割溝10iとが形成されており、これらの割溝10g、10h、10iにより中間部10の右側面部の一部が弾性片部11となっている。弾性片部11の縦割溝10iに臨んだ自由端には隆起部11aが形成されている。
【0021】
保持凹部8a内には、前記ピストンダンパーDのシリンダ1に対する係合突部8dが、このホルダーSの移動方向に間隔を開けて前後にそれぞれ形成されている。それと共に、このホルダーSにおける保持凹部8aの形成箇所に、ホルダーSの外面側から前側の前記係合突部8dを臨める大きさの前側窓穴8eと、ホルダーSの外面側から後側の前記係合突部8dを臨める大きさの後側窓穴8fとが形成されている。
【0022】
図示の例では、係合突部8dは、保持凹部8aの上壁8bと下壁8cとにそれぞれ形成されている。上下の係合突部8d、8d間の距離はピストンダンパーDのシリンダ1の外径よりもやや小さく、保持凹部8aにシリンダ1を前記のように納めるようにするとシリンダ1の周面に上下の係合突部8d、8dが接して保持凹部8aの側が上壁8bと下壁8cとの間の距離をやや広げる向きに弾性変形し、シリンダ1の最大径部分の係合突部8dの乗り越えが許容され、この乗り越え後の弾性復帰により保持部8の左側面部と係合突部8dとの間で納められたシリンダ1を保持するようになっている。保持部8の後端8gには、このように保持凹部8aに納められたピストンダンパーDのピストンロッド3をホルダーSの後方に突き出させる割溝8hが形成されている。
【0023】
これにより、この実施の形態にあっては、ホルダーSに対しピストンダンパーDをワンタッチで組み合わせることができると共に、そのために機能する前記係合突部8dを前記前側窓穴8e及び後側窓穴8fを利用して保持凹部8a内の前後二箇所にホルダーSを合成樹脂により成形する金型の構造を複雑にすることなく容易に形成させることができるようになっている。
【0024】
ケースHは、前記ホルダーSを前後動可能に支持する。かかるケースHは、開放された前端15から前記ホルダーSを前記保持部8を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーSの保持凹部8aに連通する側方開放部16と、ホルダーSに保持されたピストンダンパーDのピストンロッド3が当接される後壁17とを有している。
【0025】
図示の例では、ケースHは、筒前端を開放させると共に筒後端を閉塞させた筒状体の右側部を、この筒前端から後方に向けた一定の範囲を残して切り欠くようにして構成されている。この切り欠かれた箇所により前記側方開放部16が形成され、閉塞された筒後端により前記後壁17が形成されている。
【0026】
ケースHにおけるホルダーSの移動方向に直交する向きの断面内郭形状は同じ向きでのホルダーSの断面外郭形状に倣っている。これによりケースHは、第一に、前記保持凹部8aの開放側をケースHの側方開放部16側に向けた向きでケースH内に納められるようになっている。また、第二に、ホルダーSはその外面をケースHの内面に摺接させるようにしてケースHに前後動可能に支持されている。
【0027】
図示の例では、ケースHにおける前端15と側方開放部16との間に残された右側面部18には、ホルダーSの移動方向に長い長穴18aが形成されている。ホルダーSはケースHへの前記納め入れをケースHの前記右側面部18に対する前記中間部10に形成された弾性片部11の隆起部11aの当接によるこの弾性片部11の撓み込みにより許容すると共に、ケースHとホルダーSとの組み合わせ状態はこの隆起部11aが長穴18aに入り込む位置でのこの弾性片部11の撓み戻しによりこの隆起部11aを長穴18aに入り込ませることで維持されるようになっている。ケースHに納められたホルダーSの保持部8の後端8gとケースHの後壁17との間には前記のように突き出されたピストンロッド3により間隔が形成され、(図4)この状態においてホルダーSの連係部9側はケースHの前端15から前方に突きだし、隆起部11aは長穴18aの穴前端側に位置される。図示の例では、ケースHを基本対象物に取り付けた状態から、ホルダーSの連係部9に前方から移動してくる制動対象物Mが突き当たると、前記長穴18aの範囲内でピストンロッド3をシリンダ1内に押し込みながらホルダーSが後退され、これにより前記粘性流体の抵抗力をピストンダンパーDの制動力として制動対象物Mに作用させるようになっている。(図5)この状態から制動対象物Mが復動されると、前記バネ7の作用により押し込み前の位置に復帰されるピストンロッド3によりホルダーSは前記後退前の位置まで前進する。なお、図示の例では、ケースHは、前記右側面部18における長穴18aを挟んだ上下にそれぞれ形成された取り付け用突部19と、後端から後方に突き出す取り付け用耳部20によって、基本対象物に取り付けられるようになっている。
【0028】
また、ケースHには、側方開放部16における開口前縁からホルダーSの移動方向に交叉する向きに沿ってケースHの底部21内に形成された前記粘性流体の前側流れ止め部22と、この前側流れ止め部22と前記後壁17との間に亘って側方開放部16の開口下縁を縁取る横側流れ止め部23とが形成されている。図示の例では、前側流れ止め部22は、ホルダーSの移動方向に直交する向きに、ケースHの底部21の内側に形成されたリブ状体として構成されている。横側流れ止め部23はケースHの後壁17と右側面部18との間に亘って形成され、前側流れ止め部22はその右端をこの横側流れ止め部23に一体に連接させると共にその左端をケースHの左側面部24の下部内面に一体に連接されている。
【0029】
これにより、この実施の形態にあっては、ピストンダンパーDのシリンダ1に充填された粘性流体がこのシリンダ1におけるピストンロッド3の突きだし側から外部に漏れだした場合でも、ケースHにおける前側流れ止め部22によりケースHの開放された前端15からケースH外に流れ出させることはなく、かつ、横側流れ止め部23によりケースHの側方開放部16からもケースH外に流れ出させることはない。
【0030】
また、この実施の形態にあっては、ホルダーSの最前進位置において、このホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面であって、前側流れ止め部22よりも後方に位置される箇所に、ホルダーSの移動方向に交叉する向きに続く縦溝12が形成されている。この実施の形態にあっては、ホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面に、ホルダーSの移動方向において隣り合う縦溝12との間に間隔を開けて複数の縦溝12、12…が設けられている。かかる縦溝12は、ホルダーSの保持部8の上壁8bの外面から下壁8cの外面に亘るように形成されている。
【0031】
これにより、この実施の形態にあっては、ピストンダンパーDのシリンダ1から前記のように漏れだしてホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面とケースHの内面との間に入り込んだ粘性流体を、この縦溝12によって案内してケースHの前側流れ止め部22と横側流れ止め部23とにより囲われた底部21内に留めるようにしている。
【0032】
また、この実施の形態にあっては、ホルダーSの外面であって、前記複数の縦溝12、12…のうち最も後方に位置される縦溝12よりも後方に位置される箇所に、この縦溝12に溝前端を連通させてホルダーSの移動方向に続く横溝13が形成されている。図示の例では、ホルダーSの保持凹部8aの形成箇所であって、前記上壁8b及び下壁8cを除いた箇所に、上下に隣り合う横溝13との間に間隔を開けて、複数の横溝13、13…が形成されている。各横溝13の溝後端はホルダーSの後端に位置し、そこで開放されている。
【0033】
これにより、この実施の形態にあっては、ピストンダンパーDのシリンダ1から前記のように漏れだしてホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面とケースHの内面との間に入り込んだ粘性流体を、かかる横溝13によってホルダーSの後端側に案内してケースHの前側流れ止め部22と横側流れ止め部23とにより囲われた底部21内に留めるようにしている。図示の例では特に、前記横溝13はケースHの内面との間に粘性流体を毛細管現象により誘引する深さを持つように構成されている。
【0034】
また、この実施の形態にあっては、ホルダーSの最前進位置において、前側窓穴8eが前側流れ止め部22よりも前方に位置されるようになっている。それとと共に、ホルダーSにおける前側窓穴8eと後側窓穴8fとの間であって、ホルダーSの最前進位置において、前側流れ止め部22よりも後方に位置される箇所に、保持凹部8aを内外に連通させる貫通孔14が形成されている。図示の例では、かかる貫通孔14はホルダーSの下部側に形成されている。そして、この貫通孔14と前側窓穴8eとの間であってホルダーSの最前進位置において前側流れ止め部22よりも後方に位置される箇所において、ホルダーSの保持凹部8aの形成箇所の外面に、ホルダーSの移動方向に交叉する向きに続く縦溝12が形成されている。図示の例では、貫通孔14は収納部の前後方向略中程の位置に形成されており、この貫通孔14と前側窓穴8eとの間に二条の縦溝12、12が形成され、かつ、この貫通孔14と後側窓穴8fとの間に二条の縦溝12、12が形成されている。
【0035】
これにより、この実施の形態にあっては、ホルダーSの保持凹部8a内の前後二箇所に前記係合突部8dを成形し易くする前側窓穴8eと後側窓穴8fを形成させておきながら、ホルダーSの最前進位置において前側流れ止め部22よりも前方に位置される前側窓穴8eに前記のように漏れだした粘性流体が至る前に貫通孔14からホルダーS外に流れ出させることができ、そして、この貫通孔14から流れ出させた粘性流体をケースHの前側流れ止め部22と横側流れ止め部23とにより囲われた底部21内に留めるようにしている。
【0036】
なお、前記ケースHにおける前側流れ止め部22と横側流れ止め部23と左側面部と後壁17とに囲われた底部に、図1において想像線で示すような粘性流体を吸収保持可能なスポンジなどからなるシート状体25を張り込むようにしておいても良い。
【符号の説明】
【0037】
S ホルダー
H ケース
1 シリンダ
8 保持部
8a 保持凹部
16 側方開放部
17 後壁
21 底部
22 前側流れ止め部
23 横側流れ止め部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドの押し込みに対しシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されたピストンダンパーと、
このピストンダンパーをピストンロッドを後方に突き出させるようにして保持する保持部と、この保持部より前方に制動対象物に対する連係部を備えたホルダーと、
このホルダーを前後動可能に支持するケースとを備えてなり、
ホルダーの保持部は、前記シリンダをその軸線に直交する向きから納め入れ可能に左右のいずれか一方の側において開放された前記シリンダの保持凹部から構成されており、
ケースは、開放された前端からホルダーを前記保持部を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーの保持凹部に連通する側方開放部と、ホルダーに保持されたピストンダンパーのピストンロッドが当接される後壁とを有しており、
しかも、ケースには、側方開放部における開口前縁からホルダーの移動方向に交叉する向きに沿ってケースの底部内に形成された前記粘性流体の前側流れ止め部と、この前側流れ止め部と前記後壁との間に亘って側方開放部の開口下縁を縁取る横側流れ止め部とが形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
ホルダーの最前進位置において、このホルダーの保持凹部の形成箇所の外面であって、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
ホルダーの移動方向において隣り合う縦溝との間に間隔を開けて複数の縦溝が設けられていると共に、
ホルダーの外面であって、前記複数の縦溝のうち最も後方に位置される縦溝よりも後方に位置される箇所に、この縦溝に溝前端を連通させてホルダーの移動方向に続く横溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
ホルダーの保持凹部内にピストンダンパーのシリンダに対する係合突部が、このホルダーの移動方向に間隔を開けて前後にそれぞれ形成されていると共に、
このホルダーにおける保持凹部の形成箇所に、ホルダーの外面側から前側の前記係合突部を臨める大きさの前側窓穴と、ホルダーの外面側から後側の前記係合突部を臨める大きさの後側窓穴とが形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項5】
ホルダーの最前進位置において、前側窓穴が前側流れ止め部よりも前方に位置されるようになっていると共に、
ホルダーにおける前側窓穴と後側窓穴との間であって、ホルダーの最前進位置において、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、保持凹部を内外に連通させる貫通孔が形成されており、
少なくとも、この貫通孔と前側窓穴との間において、ホルダーの保持凹部の形成箇所の外面に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のダンパー装置。
【請求項1】
ピストンロッドの押し込みに対しシリンダ内に充填された粘性流体の抵抗を作用させるように構成されたピストンダンパーと、
このピストンダンパーをピストンロッドを後方に突き出させるようにして保持する保持部と、この保持部より前方に制動対象物に対する連係部を備えたホルダーと、
このホルダーを前後動可能に支持するケースとを備えてなり、
ホルダーの保持部は、前記シリンダをその軸線に直交する向きから納め入れ可能に左右のいずれか一方の側において開放された前記シリンダの保持凹部から構成されており、
ケースは、開放された前端からホルダーを前記保持部を先にして納め入れ可能に構成されると共に、納められたホルダーの保持凹部に連通する側方開放部と、ホルダーに保持されたピストンダンパーのピストンロッドが当接される後壁とを有しており、
しかも、ケースには、側方開放部における開口前縁からホルダーの移動方向に交叉する向きに沿ってケースの底部内に形成された前記粘性流体の前側流れ止め部と、この前側流れ止め部と前記後壁との間に亘って側方開放部の開口下縁を縁取る横側流れ止め部とが形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
ホルダーの最前進位置において、このホルダーの保持凹部の形成箇所の外面であって、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
ホルダーの移動方向において隣り合う縦溝との間に間隔を開けて複数の縦溝が設けられていると共に、
ホルダーの外面であって、前記複数の縦溝のうち最も後方に位置される縦溝よりも後方に位置される箇所に、この縦溝に溝前端を連通させてホルダーの移動方向に続く横溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
ホルダーの保持凹部内にピストンダンパーのシリンダに対する係合突部が、このホルダーの移動方向に間隔を開けて前後にそれぞれ形成されていると共に、
このホルダーにおける保持凹部の形成箇所に、ホルダーの外面側から前側の前記係合突部を臨める大きさの前側窓穴と、ホルダーの外面側から後側の前記係合突部を臨める大きさの後側窓穴とが形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項5】
ホルダーの最前進位置において、前側窓穴が前側流れ止め部よりも前方に位置されるようになっていると共に、
ホルダーにおける前側窓穴と後側窓穴との間であって、ホルダーの最前進位置において、前側流れ止め部よりも後方に位置される箇所に、保持凹部を内外に連通させる貫通孔が形成されており、
少なくとも、この貫通孔と前側窓穴との間において、ホルダーの保持凹部の形成箇所の外面に、ホルダーの移動方向に交叉する向きに続く縦溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のダンパー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−177396(P2012−177396A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39738(P2011−39738)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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