説明

ダンプトラック

【課題】荷台に働く慣性力のうち少なくとも前方向の慣性力をヒンジピン以外の部材で支持することができるようにする。
【解決手段】本発明は、フレーム(2)と、このフレーム(2)の後部に配置されたヒンジピン(4)と、このヒンジピン(4)を介してフレーム(2)に回動自在に取り付けられた荷台(1)とを備えたダンプトラックにおいて、フレーム(2)に着座した状態の荷台(1)の前面部と当接して、荷台(1)に働く前方向の慣性力を支持するためのフロント用ストッパ構造(Sf)をフレーム(2)に設けた構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂等の運搬対象物を運搬するダンプトラックに関し、特に、荷台とフレームを連結するヒンジピンに作用する荷重を低減するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械用の大型のダンプトラックは、図12に示すように、本体となるフレーム2と、土砂等を積み込むための荷台1とを備えており、フレーム2と荷台1はホイストシリンダ3とヒンジピン4で連結されている。そして、ホイストシリンダ3を伸縮動作させると、荷台1がフレーム2に対してヒンジピン4を支点に上下方向に回動するようになっている。
【0003】
ダンプトラックを発進および停止させると、その際に発生する前後方向の加速度によって、荷台には加速度の向きと逆向きの慣性力が働くこととなる。また、フレームと荷台の接触面は前方に下り傾斜しているため、荷台は重力によって常に前方に引っ張られた状態となっている。さらに、ダンプトラックが旋回する際は、荷台には遠心力(慣性力)が働くこととなる。
【0004】
従来のダンプトラックでは、荷台に働く慣性力の殆どをヒンジピンで支持している。そのため、ヒンジピンに過大な荷重が作用することとなり、ダンプトラックの長期間使用により、ヒンジピンが挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材(例えば、荷台の底面のうち、ヒンジピンが取り付けられる箇所とその周辺の部分など)に不具合が生じる可能性がある。このような不具合を防止するためには、ヒンジピンに掛かる荷重を小さくすることが重要である。
【0005】
ところで、ダンプトラックは、荷台に積まれた土砂等を下ろす作業を行っている時間よりも走行している時間の方が長く、この走行中にダンプトラックに働く慣性力は、旋回時による左右方向のもの、加速時による後方向のものよりも、減速時による前方向のものが最も大きいことが一般に知られている。さらに、ダンプトラックの場合、前述の通りフレームが後方から前方に向かって下り傾斜するような形状を成しているので、ヒンジピンには常に荷台の重力により前方向への荷重が掛かっている状態である。従って、ヒンジピンに作用する荷重は前方向のものが最大であり、このヒンジピンに作用する荷重を小さくするためには、荷台に働く前方向の慣性力を如何にヒンジピン以外の部分で支持するかが肝要であると言える。
【0006】
ここで、荷台の底面には、通常、ゴム等の弾性材料からなるパッド(図12の符号6参照)が取り付けられている。このパッドは、荷台が走行中の振動するのを防止したり、荷台に土砂を積み込む際のフレームに対する衝撃を吸収したりするために設けられているものであるが、荷台がフレームに着座しているときには、パッドとフレームとの間に摩擦力が発生する。この摩擦力によって、荷台に働く前方向へ慣性力を若干ではあるが支持することは可能である。
【0007】
また、荷台の前方下部には、下方に突出する形状のガイド(図12の符号5a参照)が、ダンプトラックの正面側から見て左右に2つ設けられている。また、フレームには、2つのガイドのそれぞれと当接するガイド当て(図12の符号5b参照)が2箇所設けられている。この構成により、荷台がフレームに着座する倒伏姿勢の時には、ガイドがガイド当てと対面した状態となる。そして、例えば旋回走行中において、荷台がフレームに対して左右方向(鉛直方向を軸にして回転する方向)に移動した場合には、ガイドがガイド当てに当接することによって、荷台が左右方向に移動することが制限される。よって、このガイドとガイド当ての構成により、ある程度は荷台に働く遠心力を支持することはできるため、ヒンジピンに掛かる左右方向の荷重を低減することはできる。
【0008】
さらには、特許文献1に示すような荷台の着座装置などもこれまでに考案されている。これは荷台前端を車体左右方向に傾斜した着座装置で受け、フレームに対して荷台が左右方向へ移動することを抑えるものである。この特許文献1によっても、荷台に作用する遠心力を支持できるので、ヒンジピンに掛かる左右方向の荷重を低減することはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−176251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、パッドを荷台の底面に設けた上記従来の公知技術では、走行時の振動によって摩擦力が弱まってしまう現象がこれまでに確認されている。また、フレームに土砂などが降りかかると、パッドとフレームの間の摩擦力が低減してしまうという現象も確認されている。従って、この従来技術では、長期間に亘ってヒンジピンに掛かる前方向の荷重を低減することはできない。
【0011】
また、荷台の下方にガイドを設けた上記従来の公知技術では、荷台に働く前後方向の慣性力は依然としてヒンジピンによって支持しなければならないため、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重を低減することはできない。
【0012】
さらに、特許文献1に示す着座装置においても、荷台に働く前後方向の慣性力を支持しているのはヒンジピンである。よって、特許文献1を用いたとしても、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重を低減することはできない。
【0013】
このように、いずれの上記従来の技術を用いても、荷台に働く前後方向の慣性力の殆どをヒンジピンで支持しているので、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重を低減することはできないといった課題に直面しているのが実情である。
【0014】
本発明は、上記した実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、荷台に働く慣性力のうち少なくとも前方向の慣性力をヒンジピン以外の部材で支持することにより、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重を低減することができるダンプトラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、フレームと、このフレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記フレームに回動自在に取り付けられた荷台とを備えたダンプトラックにおいて、前記フレームに着座した状態の前記荷台の前面部と当接して、前記荷台に働く前方向の慣性力を支持するためのフロント用ストッパ構造を前記フレームに設けたことを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、荷台に働く前方向の慣性力をフロント用ストッパ構造とヒンジピンの両方で支持できるため、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重を低減できる。よって、ダンプトラックの長期間使用により、ヒンジピンが挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材(例えば、荷台の底面のうち、ヒンジピンが取り付けられる箇所とその周辺の部分など)に不具合が生じる可能性は低減する。また、荷台とフレームとの連結部(ヒンジピンが挿入されるフレーム側連結穴が設けられたブラケットなど)とその周囲の部材の構造の長寿命化および軽量化が可能となる。
【0017】
また、本発明は、上記構成において、前記フロント用ストッパ構造は、前記フレームに設置されるフロント用基台と、このフロント用基台に変位可能に取り付けられ、前記荷台の前面部と当接するフロント用当接板と、このフロント用当接板を前記荷台が前記フレームに着座する方向に抗する方向に付勢するフロント用付勢部材とを備え、前記荷台の回動位置が、前記荷台の回動途中にある第1の位置から前記荷台が前記フレームと着座する第2の位置までの範囲にあるときに、前記フロント用当接板は、前記荷台の前面部と当接した状態で前記荷台の回動に従動することを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、フロント用当接板が、荷台の前面部と当接した状態で荷台の回動に伴って変位することができるため、ダンプトラックの長期間の使用により荷台にガタつきが生じたとしても、フロント用当接板と荷台の前面部との当接状態は良好に保たれることとなる。しかも、フロント用付勢部材があることにより、フロント用当接板は荷台の前面部に当接した状態に保持される。よって、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重をより長期間に亘って低減することができる。
【0019】
また、本発明は、上記構成において、前記フロント用ストッパ構造は、ダンプトラックの正面側から見て左右方向に間隔を空けて複数設けられ、前記複数のフロント用ストッパ構造は、それぞれの前記フロント用当接板のうち前記荷台の前面部と当接する面に直交する方向が前記フレームの前後方向と上面視で平行となる向きに設置されていることを特徴としている。この構成によれば、複数のフロント用ストッパ構造で荷台に働く前方向の慣性力を支持できるため、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重をより一層低く抑えることができる。しかも、フロント用ストッパ構造を複数設けているため、例えば1つのフロント用ストッパ構造が故障して荷台に働く前方向の慣性力を支持できない状態になったとしても、残りのフロント用ストッパ構造で荷台に働く前方向の慣性力を支持することができるので、ヒンジピンが挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材に不具合が生じる可能性は少ない。
【0020】
また、本発明は、上記構成において、前記フロント用ストッパ構造は、ダンプトラックの正面側から見て左右方向に間隔を空けて複数設けられ、前記複数のフロント用ストッパ構造は、それぞれの前記フロント用当接板のうち前記荷台の前面部と当接する面に直交する方向が前記フレームの前後方向と上面視で交差する向きに設置されていることを特徴としている。この構成によっても、複数のフロント用ストッパ構造で荷台に働く前方向の慣性力を支持できるため、ヒンジピンに掛かる前方向の荷重をより一層低く抑えることができる。しかも、フロント用ストッパ構造を複数設けているため、例えば1つのフロント用ストッパ構造が故障して荷台に働く前方向の慣性力を支持できない状態になったとしても、残りのフロント用ストッパ構造で荷台に働く前方向の慣性力を支持することができるので、ヒンジピンが挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材に不具合が生じる可能性は少ない。さらに、この構成では、フロント用当接板のうち荷台の前面部と当接する面に直交する方向がフレームの前後方向と上面視で交差する向きにフロント用ストッパ構造が設置されているため、荷台に働く横方向の慣性力も支持できる。
【0021】
また、本発明は、上記構成において、前記フレームに着座した状態の前記荷台の底部と当接して、前記荷台に働く後方向の慣性力を支持するためのリア用ストッパ構造を前記フレームに設け、前記リア用ストッパ構造は、前記フレームのうち前記ヒンジピンが設けられた位置よりも前方であって、かつ前記フロント用基台が設置された位置よりも後方の位置に設置されるリア用基台と、このリア用基台に変位可能に取り付けられ、前記荷台の底部と当接するリア用当接板と、このリア用当接板を前記荷台が前記フレームに着座する方向に抗する方向に付勢するリア用付勢部材とを備え、前記荷台の回動位置が、前記荷台の回動途中にある第3の位置から前記第2の位置までの範囲にあるときに、前記リア用当接板は、前記荷台の底部と当接した状態で前記荷台の回動に従動することを特徴としている。
【0022】
本発明によれば、さらに、荷台に働く後方向の慣性力をリア用ストッパ構造とヒンジピンとで受けることができるため、荷台とフレームの連結部に掛かる荷重の負担が大幅に低減される。また、リア用当接板が、荷台の底部と当接した状態で荷台の回動に伴って変位することができるため、ダンプトラックの長期間の使用により荷台にガタつきが生じたとしても、リア用当接板と荷台の底部との当接状態は良好に保たれることとなる。しかも、リア用付勢部材があることにより、リア用当接板は荷台の底部に当接した状態に保持される。このように、本発明では、荷台に作用する前方向の慣性力をフロント用ストッパ構造とヒンジピンとで支持でき、しかも、荷台に作用する後方向の慣性力をリア用ストッパ構造とヒンジピンとで支持できるので、ダンプトラックを長期間使用しても、ヒンジピンに掛かる荷重を低減できることとなる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明によれば、ダンプトラックの荷台に働く慣性力をストッパ構造によって支持することができるので、ヒンジピンに掛かる荷重(特に、前方向の荷重)を低減することができる。よって、不具合が生じることなく、ダンプトラックを長期間に亘って使用することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係るダンプトラックの側面図である。
【図2】図1に示すフロント用ストッパ構造の詳細を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図3】図1に示すダンプトラックの要部を拡大した側面図であり、荷台が起立姿勢にある状態を示した図である。
【図4】図1に示すダンプトラックの要部を拡大した側面図であり、荷台が回動途中の第1の位置にある状態を示した図である。
【図5】図1に示すダンプトラックの要部を拡大した側面図であり、荷台がフレームに着座した第2の位置にある状態を示した図である。
【図6】図1に示すフロント用ストッパ構造の動作を説明するための図であって、(a)は荷台が図4の状態にあるときの動作を示した図であり、(b)は荷台が図5の状態にあるときの動作を示した図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態例に係るダンプトラックのストッパ構造の配置を説明するための図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態例に係るダンプトラックのストッパ構造の配置を説明するための図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態例に係るダンプトラックのストッパ構造の配置を説明するための図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態例に係るダンプトラックのストッパ構造の配置を説明するための図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態例に係るダンプトラックの側面図である。
【図12】従来例に係るダンプトラックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1の実施の形態例について図面を参照して説明する。本発明の第1の実施の形態例に係るダンプトラックは、図1に示すように、本体を形成するフレーム2と、このフレーム2の前側位置に配置される運転室30と、前輪31及び後輪32と、フレーム2の後方部分に設けられたヒンジピン4を回動中心として上下方向に回動可能な荷台1と、この荷台1を上下方向に回動させる左右一対のホイストシリンダ3とを備えて構成されている。そして、オペレータが運転室30からホイストシリンダ3を駆動すると、荷台1は、ホイストシリンダ3の伸縮動作に伴って、フレーム2に着座する倒伏姿勢と土砂などを放土する起立姿勢との間をヒンジピン4回りに回動するようになっている。なお、ヒンジピン4は、フレーム2に設けられたフレーム側連結穴(不図示)に挿通されている。
【0026】
また、図1には示していないが、荷台1にはガイド5a(図12参照)が設けられ、フレーム2にはガイド5aと当接するガイド当て5b(図12参照)が設けられている。荷台1がフレーム2に着座した倒伏姿勢の状態で、荷台1が鉛直方向を軸として回転した(別言すれば、ダンプトラックの正面から見て左右方向に移動した)際には、ガイド5aがガイド当て5bに当接することにより荷台1の左右方向への移動は防止される。
【0027】
荷台1の前面部のうち下部には、ゴム系材料から成るストッパパッド10が設けられている。また、荷台1の底面には、フレーム2に着座したときの衝撃を緩和するためのパッド6が複数個取り付けられている。このパッド6はゴム系材料から成り、方形の板状に形成されている。パッド6とフレーム2との間の摩擦力により、荷台1がフレーム2上に安定した姿勢で着座できるようになっている。
【0028】
次に、フロント用ストッパ構造Sfについて説明する。フロント用ストッパ構造Sfは、フレーム2上に1つ設けられており、その設置位置は、荷台1の前面部よりやや前方の位置である。そして、荷台1がフレーム2に着座した状態では、荷台1のストッパパッド10とフロント用ストッパ構造Sfとは当接した状態となる(詳しくは後述する)。
【0029】
このフロント用ストッパ構造Sfは、図1および図2に示すように、フレーム2に設置される一対のストッパブラケット(フロント用基台)8と、このストッパブラケット8に変位可能に取り付けられ、荷台1の前面部に設けられたストッパパッド10と当接するストッパプレート(フロント用当接板)7と、このストッパプレート7を荷台1がフレーム2に着座する方向(C方向)に抗する方向(A方向)に付勢するスプリング(フロント用付勢部材)11とを備えて構成されている。
【0030】
ストッパプレート7は方形の板状に形成されており、ストッパプレート7の裏面には、一対のアジャスタプレート9が取り付けられている。アジャスタプレート9の端部とストッパブラケット8とはアジャスタピン12によって連結されており、アジャスタプレート9は、このアジャスタピン12を軸として回動する。従って、ストッパプレート7は、アジャスタピン12を軸として回動することとなる。また、一対のストッパブラケット8の上部を貫通するようにスプリングピン13aが設けられている。同様に、一対のアジャスタプレート9の端部のうちアジャスタピン12と連結した端部と反対側の端部を貫通するようにスプリングピン13bが設けられている。そして、スプリングピン13aとスプリングピン13bとはスプリング11によって繋がれている。これにより、ストッパプレート7は、アジャスタピン12を中心としてA方向に常時付勢された状態となる。
【0031】
次に、フロント用ストッパ構造Sfの作用について図3〜図6を参照しながら説明する。荷台1が図3に示す起立姿勢から徐々に倒伏姿勢になるようにC方向に回動していき、図4に示す第1の位置まで荷台1が回動すると、ストッパパッド10がフロント用ストッパ構造Sfのストッパプレート7との当接を開始する。このとき、ストッパプレート7は図6(a)に示すように、スプリング11でA方向に付勢された状態となっている。荷台1が図4に示す第1の位置からさらにC方向に回動すると、ストッパプレート7は、スプリング11によってストッパパッド10と当接した状態を保持しながら、荷台1のC方向への回動に伴ってアジャスタピン12を軸としてB方向に受動的に回動する。そして、荷台1が図5に示すようにフレーム2に着座すると、荷台1の自重によって、ストッパプレート7は、図6(b)に示すようにスプリング11の付勢力に抗してB方向に回動した状態に保持される。そして、図5の状態において、荷台1は、フロント用ストッパ構造Sfによって前方向への移動が阻止されるようになる。
【0032】
このように、第1の実施の形態例に係るダンプトラックによれば、急ブレーキ等により荷台1に前方向の慣性力が働いても、フロント用ストッパ構造Sfがその慣性力を受けているので、ヒンジピン4に大きな荷重が掛かることはない。よって、ダンプトラックを長期間使用しても、ヒンジピン4が挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材に不具合が生じることは少ない。また、ストッパプレート7がアジャスタピン12を中心に回動するため、荷台1にガタつきが生じても荷台1の回動にストッパプレート7が従動しながら好適な角度でストッパパッド10と当接することができる。しかも、ストッパプレート7はスプリング11によってA方向に常時付勢されているので、ストッパプレート7は常にストッパパッド10と当接した状態になる。よって、荷台1にガタつきが生じても、フロント用ストッパ構造Sfが、荷台1に作用する前方向の慣性力を確実に支持できるのである。
【0033】
なお、上記した第1の実施の形態例ではスプリング11は引きバネを採用しているが、押しバネ、ねじりバネに代替しても良い。また、スプリング11の構成に代えて永久磁石を用いてアジャスタプレート9を受動的に回転動作させるようにしても良い。また、アクチュエータを設置してアジャスタプレート9を能動的に回転させても良い。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態例に係るダンプトラックについて説明するが、第1の実施の形態例に係るダンプトラックと同一構成のものについては、同一符号を付して、その説明は省略する。第2の実施の形態例に係るダンプトラックのフレーム2には、図7に示すように、フロント用ストッパ構造Sfが、ダンプトラックの正面側から見て左右方向(図7における上下方向)に間隔を空けて2つ設けられている。2つのフロント用ストッパ構造Sfは、ストッパプレート7の表面のうち荷台1のストッパパッド10と当接する面に直交する方向(図7の矢印Dの方向)がダンプトラックの前後方向(図7では左右方向)と上面視で平行となるようにストッパプレート7を後ろに向けて、それぞれ配置されている。
【0035】
この第2の実施の形態例によれば、急ブレーキ等により荷台1に前方向の慣性力が働いても、2つのフロント用ストッパ構造Sfが荷台1に作用する前方向の慣性力を支持しているので、ヒンジピン4に掛かる荷重は大幅に低減されることとなる。よって、ダンプトラックを長期間使用しても、ヒンジピン4が挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材に不具合が生じることは少ない。しかも、フロント用ストッパ構造Sfが2つ設けられているので、一方のフロント用ストッパ構造Sfが故障した場合であっても、他方のフロント用ストッパ構造Sfによって荷台1に働く前方向の慣性力を支持することができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態例に係るダンプトラックについて説明するが、第1の実施の形態例に係るダンプトラックと同一構成のものについては、同一符号を付して、その説明は省略する。第3の実施の形態例に係るダンプトラックのフレーム2には、図8に示すように、フロント用ストッパ構造Sfが、ダンプトラックの正面側から見て左右方向(図8における上下方向)に間隔を空けて2つ設けられている。2つのフロント用ストッパ構造Sfのうち一方は、ストッパプレート7の表面のうち荷台1のストッパパッド10と当接する面に直交する方向(図8の矢印E1の方向)がダンプトラックの前後方向(図8では左右方向)と上面視で交差する方向、別言すれば、ストッパプレート7の表面がダンプトラックの後方、かつ、内側の方向を向くように配置されている。他方のフロント用ストッパ構造Sfは、ストッパプレート7の表面のうち荷台1のストッパパッド10と当接する面に直交する方向(図8の矢印E2の方向)がダンプトラックの前後方向(図8では左右方向)と上面視で交差する方向、別言すれば、ストッパプレート7の表面がダンプトラックの後方、かつ、内側の方向を向くように配置されている。このストッパプレート7の向きが、第2の実施の形態例と相違する。
【0037】
この第3の実施の形態例によれば、ストッパプレート7が互いに内側に傾いて取り付けられているため、急ブレーキ等により荷台1に前方向の慣性力が働いても、2つのフロント用ストッパ構造Sfが荷台1に働く慣性力を支持できる。しかも、ストッパプレート7が内側を向いているので、ダンプトラックが旋回走行中に荷台1に遠心力が働いても、その遠心力をフロントストッパ構造Sfによって支持できる。よって、ヒンジピン4に掛かる荷重は大幅に低減されることとなる。
【0038】
次に、本発明の第4の実施の形態例に係るダンプトラックについて説明するが、第1の実施の形態例に係るダンプトラックと同一構成のものについては、同一符号を付して、その説明は省略する。第4の実施の形態例に係るダンプトラックのフレーム2には、図9に示すように、フロント用ストッパ構造Sfが、ダンプトラックの正面側から見て左右方向(図9における上下方向)に間隔を空けて2つ設けられている。2つのフロント用ストッパ構造Sfのうち一方は、ストッパプレート7の表面のうち荷台1のストッパパッド10と当接する面に直交する方向(図9の矢印F1の方向)がダンプトラックの前後方向(図9では左右方向)と上面視で交差する方向、別言すれば、ストッパプレート7の表面がダンプトラックの後方、かつ、外側の方向を向くように配置され、他方のフロント用ストッパ構造Sfは、ストッパプレート7の表面のうち荷台1のストッパパッド10と当接する面に直交する方向(図9の矢印F2の方向)がダンプトラックの前後方向(図9では左右方向)と上面視で交差する方向、別言すれば、ストッパプレート7の表面がダンプトラックの後方、かつ、外側の方向を向くように配置されている。このストッパプレート7の向きが、第3の実施の形態例とは逆向きである。
【0039】
この第4の実施の形態例についても、第3の実施の形態例と同等の効果が得られる。即ち、ストッパプレート7が互いに外側に傾いて取り付けられているため、急ブレーキ等により荷台1に前方向の慣性力が働いても、2つのフロント用ストッパ構造Sfが荷台1に働く慣性力を支持できる。しかも、ストッパプレート7が外側を向いているので、ダンプトラックが旋回走行中に荷台1に遠心力が働いても、その遠心力をフロントストッパ構造Sfによって支持できる。よって、ヒンジピン4に掛かる荷重は大幅に低減されることとなる。
【0040】
次に、本発明の第5の実施の形態例に係るダンプトラックについて説明するが、第1の実施の形態例に係るダンプトラックと同一構成のものについては、同一符号を付して、その説明は省略する。第5の実施の形態例に係るダンプトラックのフレーム2には、図10に示すように、フロント用ストッパ構造Sfが、ダンプトラックの正面側から見て左右方向(図10における上下方向)に間隔を空けて2つ設けられている。2つのフロント用ストッパ構造Sfは、ストッパプレート7の表面のうち荷台1のストッパパッド10と当接する面に直交する方向(図10の矢印Dの方向)がダンプトラックの前後方向(図10では左右方向)と上面視で平行となるようにストッパプレート7を後に向けて、それぞれ設けられている。
【0041】
さらに、第5の実施の形態例では、リア用ストッパ構造Srが、ダンプトラックの正面側から見て左右方向(図10における上下方向)に間隔を空けてフレーム2上に2つ設けられており、この点が、第2の実施の形態例(図7参照)と相違する部分である。2つのリア用ストッパ構造Srが取り付けられている位置は、フロント用ストッパ構造Sfとヒンジピン4との間の略中央である。2つのリア用ストッパ構造Srは、ストッパプレート107の表面のうち荷台1の底面に設けられたストッパパッドと当接する面に直交する方向(図10の矢印Gの方向)がダンプトラックの前後方向(図10では左右方向)と上面視で平行となるように、ストッパプレート107を前に向けて、それぞれ設けられている。なお、フロント用ストッパ構造Sfとリア用ストッパ構造Srとは、ストッパプレートの向きが互いに逆向きである。そして、荷台1がフレーム2に着座した状態では、荷台1の底面に設けられたストッパパッド(図示せず)とリア用ストッパ構造Srとは当接した状態となる(詳しくは後述する)。
【0042】
次に、リア用ストッパ構造Srの詳細について説明するが、リア用ストッパ構造Srはフロント用ストッパ構造Sfと同じ構成であるため、図2を流用して説明することにする。リア用ストッパ構造Srは、図2に示すように、フレーム2に設置される一対のストッパブラケット(リア用基台)108と、このストッパブラケット108に変位可能に取り付けられ、荷台1の底面に設けられたストッパパッドと当接するストッパプレート(リア用当接板)107と、このストッパプレート107を荷台1がフレーム2に着座する方向(C方向)に抗する方向(A方向)に付勢するスプリング(リア用付勢部材)111とを備えて構成されている。
【0043】
ストッパプレート107は方形の板状に形成されており、ストッパプレート107の裏面には、一対のアジャスタプレート109が取り付けられている。アジャスタプレート109の端部とストッパブラケット108とはアジャスタピン112によって連結されており、アジャスタプレート109は、このアジャスタピン112を軸として回動する。従って、ストッパプレート107は、アジャスタピン112を軸として回動することとなる。また、一対のストッパブラケット108の上部を貫通するようにスプリングピン113aが設けられており、同様に、一対のアジャスタプレート109の端部のうちアジャスタピン112と連結した端部と反対側の端部を貫通するようにスプリングピン113bが設けられている。そして、スプリングピン113aとスプリングピン113bとはスプリング111によって繋がれている。これにより、ストッパプレート107は、アジャスタピン112を中心としてA方向に常時付勢された状態となる。
【0044】
この第5の実施の形態例によれば、荷台1が起立した姿勢から徐々に倒伏姿勢に回動していき、荷台1が、図4に示す第1の位置よりやや起立した姿勢の状態の第3の位置にあるときに、荷台1の底面に設けられたストッパパッドがリア用ストッパ構造Srのストッパプレート107と当接を開始する。その後、荷台1が倒伏する姿勢になるまで回動していくのに従い、リア用ストッパ構造Srのストッパプレート107は荷台1の底面に設けられたストッパパッドと当接した状態でアジャスタピン112を軸に回動する。そして、荷台1が第1の位置まで回動すると、荷台1の前面部のストッパパッド10がフロント用ストッパ構造Sfのストッパプレート7と当接する。その後は、荷台1の回動に従ってフロント用ストッパ構造Sfのストッパプレート7およびリア用ストッパ構造Srのストッパプレート107が共に回動しながら荷台1はフレーム2に着座することとなる。そして、荷台1がフレーム2に着座した状態では、荷台1の前面部はフロント用ストッパ構造Sfと当接し、荷台1の底面はリア用ストッパ構造Srと当接した状態に保持されている。
【0045】
このように、第5の実施の形態例に係るダンプトラックによれば、急ブレーキ等により荷台1に前方向の慣性力が働いても、フロント用ストッパ構造Sfがその慣性力を受けているので、ヒンジピン4に大きな荷重が掛かることはない。さらに、急発進等により荷台に後方向の慣性力が働いても、リア用ストッパ構造Srがその慣性力を受けているので、ヒンジピン4に大きな荷重が掛かることはない。よって、ダンプトラックを長期間使用しても、ヒンジピン4が挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材に不具合が生じることは少ない。
【0046】
次に、本発明の第6の実施の形態例に係るダンプトラックについて説明するが、第1の実施の形態例に係るダンプトラックと同一構成のものについては、同一符号を付して、その説明は省略する。第6の実施の形態例に係るダンプトラックは、そのフレーム2に、図11に示すようにフロント用ストッパ構造Sf−1が1つ設けられている。このフロント用ストッパ構造Sf−1は、荷台1がフレーム2に着座した状態で、荷台1の前面部に設けたストッパパッド10とちょうど当接する位置に設けられている。
【0047】
本実施形態に係るフロント用ストッパ構造Sf−1は、ストッパプレート7とストッパブラケット8を備えている点では、第1の実施の形態例で説明したフロント用ストッパ構造Sfと同じであるが、ストッパプレート7がストッパブラケット8に直接固定されており、回動できない構成となっている点が相違している。
【0048】
この第6の実施の形態例においても、フロント用ストッパ構造Sf−1が荷台1に働く前方向の慣性力を支持できるため、急ブレーキを掛けたとしてもヒンジピン4に掛かる荷重は低減される。よって、ダンプトラックを長期間使用しても、ヒンジピン4が挿入されるフレーム側連結穴やその周囲の部材に不具合が生じることは少ない。
【0049】
なお、上記した実施の形態例ではフロント用ストッパ構造Sfおよびリア用ストッパ構造Srはフレーム2に設け、これらのストッパ構造Sf、Srと当接するストッパパッドは荷台1に設けたが、ストッパパッドをフレーム2に設け、ストッパ構造Sf、Srを荷台1に設けるようにしても良い。また、荷台1の回動途中の位置である第1の位置と第3の位置とが同じ位置になるように、フロント用ストッパ構造Sfとリア用ストッパ構造Srの形状や荷台1の形状を工夫するようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 荷台
2 フレーム
3 ホイストシリンダ
4 ヒンジピン
7 ストッパプレート(フロント用当接板)
8 ストッパブラケット(フロント用基台)
11 スプリング(フロント用付勢部材)
107 ストッパプレート(リア用当接板)
108 ストッパブラケット(リア用基台)
111 スプリング(リア用付勢部材)
Sf、Sf−1 フロント用ストッパ構造
Sr リア用ストッパ構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、このフレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記フレームに回動自在に取り付けられた荷台とを備えたダンプトラックにおいて、
前記フレームに着座した状態の前記荷台の前面部と当接して、前記荷台に働く前方向の慣性力を支持するためのフロント用ストッパ構造を前記フレームに設けたことを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記フロント用ストッパ構造は、前記フレームに設置されるフロント用基台と、このフロント用基台に変位可能に取り付けられ、前記荷台の前面部と当接するフロント用当接板と、このフロント用当接板を前記荷台が前記フレームに着座する方向に抗する方向に付勢するフロント用付勢部材とを備え、
前記荷台の回動位置が、前記荷台の回動途中にある第1の位置から前記荷台が前記フレームと着座する第2の位置までの範囲にあるときに、前記フロント用当接板は、前記荷台の前面部と当接した状態で前記荷台の回動に従動する
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項2の記載において、
前記フロント用ストッパ構造は、ダンプトラックの正面側から見て左右方向に間隔を空けて複数設けられ、前記複数のフロント用ストッパ構造は、それぞれの前記フロント用当接板のうち前記荷台の前面部と当接する面に直交する方向が前記フレームの前後方向と上面視で平行となる向きに設置されていることを特徴とするダンプトラック。
【請求項4】
請求項2の記載において、
前記フロント用ストッパ構造は、ダンプトラックの正面側から見て左右方向に間隔を空けて複数設けられ、前記複数のフロント用ストッパ構造は、それぞれの前記フロント用当接板のうち前記荷台の前面部と当接する面に直交する方向が前記フレームの前後方向と上面視で交差する向きに設置されていることを特徴とするダンプトラック。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項の記載において、
前記フレームに着座した状態の前記荷台の底部と当接して、前記荷台に働く後方向の慣性力を支持するためのリア用ストッパ構造を前記フレームに設け、
前記リア用ストッパ構造は、
前記フレームのうち前記ヒンジピンが設けられた位置よりも前方であって、かつ前記フロント用基台が設置された位置よりも後方の位置に設置されるリア用基台と、このリア用基台に変位可能に取り付けられ、前記荷台の底部と当接するリア用当接板と、このリア用当接板を前記荷台が前記フレームに着座する方向に抗する方向に付勢するリア用付勢部材とを備え、
前記荷台の回動位置が、前記荷台の回動途中にある第3の位置から前記第2の位置までの範囲にあるときに、前記リア用当接板は、前記荷台の底部と当接した状態で前記荷台の回動に従動する
ことを特徴とするダンプトラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−240818(P2011−240818A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114559(P2010−114559)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】